説明

貫通電極の形成方法

【課題】 アスペクト比の大きいスルーホール内にメッキ法で導体部材を埋め込際に生じるボイドの発生を防止するものである。
【解決手段】 本発明は、基板を貫通する貫通孔(以下、スルーホールと称す)を有する第1の基板と基板表面に第1の基板に形成した貫通孔を、第2の基板表面に形成されたシード膜上に第1の基板を載置し、第2の電極をシード膜と対向するように配置しメッキ液中でメッキすることでスルーホール内に金属が埋め込むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に形成される貫通電極の形成方法に関するものであり、特に、半導体基板に形成されたスルーホールへの金属充填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板にスルーホールを形成しその内部を導体部材で埋め込み、半導体基板の表裏面の導通をとる事で三次元的な配線を形成し、高密度配線を実現した半導体装置が知られている。特許文献1に記載されている製造方法は、まず半導体基板の表面に保護膜と、保護膜の形成されていない開口部を形成する。次に、開口部をエッチングする事でスルーホールを形成する。次に、熱酸化法もしくは化学的気相成長法を用いて半導体基板の表面及びスルーホールの内側表面に絶縁層を形成する。次に、メッキ法あるいは化学気相成長法によりスルーホールを導電物で埋め込み、且つ、半導体基板の表面及び裏面に導電体層を形成する。次に、半導体基板の表裏面の導電体層をエッチバックし、スルーホールに導電体層を残して半導体基板の表裏面の導電体層を除去する。この様にして、半導体基板に形成されたスルーホールを導電物で埋め込む事により、半導体基板の表裏面の導通をとっている。
【0003】
特許文献1に記載されている製造方法は。開口部周辺のメッキ速度が溝内のメッキ速度よりも速いために穴の入口となる開口部が閉塞する場合があるという問題があり、この点を改善する提案が特許文献2で行われている。特許文献2には、メッキ液中でのメッキ金属の還元電位よりも貴な電位で還元される添加剤を加えたメッキ液を用いて、メッキ反応の電流効率を、表面の電流効率に比べ穴や溝内の電流効率を大きくすることにより、入口の閉塞を防止し、信頼性の高い基板を得る方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9−092675号公報
【特許文献2】特開平11−335888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら近年半導体装置は、更なる高密度配線が要求されており、スルーホールの内径はより小さく、アスペクト比はより大きくなってきている。また、単に表裏面の導通が取れているだけではなく、スルーホールを埋め込んだ導体部材をより均質に形成する事が必要となっている。
【0005】
特許文献1に記載の半導体装置の製造方法は、半導体基板にスルーホールを形成後、絶縁層を設けた後、化学的気相成長法もしくはメッキ法により、導電体材料で基板スルーホールを埋める構成が開示されている。本構成では、絶縁層上に効率よくメッキ層を設けるためには、導電性を備えたシード層を形成する必要がある。また、シード層を形成した後、メッキを施したとしても、微小穴、溝の側壁部には電界がかかりにくいため絶縁層表面や穴,溝の上面エッジ部に比べ、穴、溝の側壁部のメッキ膜厚が小さくなる。この場合、穴、溝が充填される前に穴、溝の入口が塞がり、穴、溝内部に空洞が残る、いわゆるボイドの発生が問題となる場合がある。
【0006】
一方、特許文献2は、シリコン基板上に形成した絶縁層(酸化膜)に、通常の方法でスルーホールまたは溝を形成し、次いで、メッキ金属と絶縁層との反応やメッキ金属が絶縁層内へ拡散することを防止するため、絶縁層表面にバリヤー層を形成する。その後、電気メッキを施すためのシード層を絶縁膜表面とスルーホールまたは溝の壁面とスルーホールまたは溝の底部に露出したシリコン基板上とに形成する。シード層の形成には、一般的にスパッタ法が用いられる。その後、このシード層を種に、電気メッキにより穴,溝を埋め込むに十分な厚みだけメッキを行う。この時、通常の電気メッキ法では穴,溝のエッジ部に電界が集中し、穴,溝が充填される以前に穴,溝の入口が塞がり、十分に充填されずボイドが残ることになる。しかし、この方法では、開示のメッキ液を用いることによりボイドの発生は回避することができる。
【0007】
しかし、この方法では、スパッタ法によりシード層を形成するため、アスペクト比の大きいスルーホールや幅が狭い深い溝の壁面にシード層を均一に形成することは難しい。更に、スルーホールまたは溝がシリコン基板上に形成された絶縁膜中に形成されているので、例えば、基板の両面にスルーホールの開孔が露出した基板が必要な場合には、ベースとなるシリコン基板を全て取り除かなくてはならない。
【0008】
また、ハンダのリフロー技術を応用した場合、低抵抗に出来ない。低抵抗にするには融点が1000℃以上の金属を用いなければならない。このような高温では、スルーホールを形成した基板の耐久が問題となる。
【0009】
以上のように、本発明の目的は、スルーホール内にボイドが発生することなく導電体が充填した状態の基板を、簡単に提供する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、貫通孔を有する第1の基板に、シード膜を有する第2の基板を、第1の基板の貫通孔の底部にシード層が露出するように接触させ、シード膜を起点に電気メッキにより貫通孔の内部に導電体を充填する貫通電極の形成方法である。
【0011】
本発明は更に、貫通孔を有する第1の基板に、シード膜を有する第2の基板を接触させ、シード膜を起点に電気メッキにより貫通孔の内部に導電体を充填する貫通電極の形成方法において、第2の基板とシード膜との間にシード膜よりも融点の低い中間層を有し、メッキにより貫通孔に導電体を充填した後、中間層において、第1の基板と第2の基板を分離することを特徴とする貫通電極の形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高アスペクト比の、スルーホール内のボイド発生を低減させて、導電体が充填した状態の基板を提供することが可能になる。また、基板を貫通する複数のスルーホールを高歩留まりで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、基板を貫通する貫通孔(以下、スルーホールと称す場合がある)を有する第1の基板と、基板表面に第1の基板に形成した貫通孔をメッキ法を用いて埋め込む際のシード膜となる導電性の膜が形成された第2の基板を用いて第1の基板に形成されたスルーホールに金属を埋め込むものである。
【0014】
第2の基板表面に形成されたシード膜上に第1の基板を載置する。この状態で第1の基板上に形成されたスルーホールの第2の基板を接する部位にはシード層がスルーホール底部に露出している。
【0015】
この状態でシード膜を第1の電極とし、第2の電極をシード膜と対向するように配置しメッキ液中でメッキすることでスルーホール内に金属が埋め込まれる。
【0016】
スルーホール中に導電体を埋め込んだ後、不要な第2の基板およびシード膜と第1の基板貫通孔に埋め込まれ第1の基板から突出した導電体を除去することでスルーホールに導電体が埋め込まれた基板を得ることができる。
【0017】
除去する工程は、通常のCMP研磨(化学機械研磨)等を用いて行うことができるが、スルーホールに埋め込む導電体の融点をシード膜よりも高融点な材料を使用すれば第1の基板と第2の基板とをシード膜の融点以上に加熱することで第1の基板から第2の基板を分離することができる。このように、第1の基板から第2の基板を分離することで、第2の基板を研磨により除去する必要がなくなり、研磨時間を短縮することができる。
【0018】
更に、第2の基板上に少なくともシード膜となる第2の層と第2の層の下層に第1の層とを形成し、第1の層の融点を第2の層の融点よりも低くすれば、温度を第1の層の融点以上に上げることで第1の基板と第2の基板とを簡単に分離することができる。
【0019】
第1の層は融点の低い金属が好ましく、融点が200℃以下の金属(金属合金を含む)であることがより好ましい。このような特性を持つ金属として、インジウムあるいはスズ−ビスマス(57wt%)合金のような金属が第1の金属層に用いる金属材料として好ましく用いられる。
【0020】
第2の層は、メッキ液に対し耐性のある金属が好ましい。耐酸性および耐アルカリ性を有するAu、PtおよびPdまたは、これらの合金はメッキ液が酸性の場合でもアルカリ性の場合でも使えるので好ましい。メッキ液が酸性の場合、タングステン等の耐酸性のある金属を用いることができる。
【0021】
第2の基板から分離された貫通孔を有する第1の基板を、例えばCMP研磨することで基板に形成された貫通孔のみに導電体が埋め込まれた基板が形成される。第1の層の下層に、第2の基板との密着力を強化する膜を形成してもよい。密着力を強化する密着力強化層は、Cr、Ti、Ni等を用いることが好ましい。
【0022】
シード層となる第2の層の下層に設ける第1の層は積層構造にすることもできることは言うまでもない。
【0023】
第1の基板と第2の基板とは、第1の基板と第2の基板とを第1の層の融点以上の温度に加熱することで分離することができる。更に、分離された第1の基板の表面から突出した導電体および/または第1の基板の表面に残存する第1の層・第2の層を例えばCMP研磨等を用いて除去することが好ましい。
【0024】
更に本発明は、貫通孔を有する第1の基板に、シード膜を有する第2の基板を接触させ、シード膜を起点に電気メッキにより前記貫通孔の内部に導電体を充填する貫通電極の形成方法において、第2の基板とシード膜となる金属膜と第2の基板との間に中間層となる金属膜とを有しており、メッキにより貫通孔に導電体を充填した後、中間層となる金属膜において、第1の基板と第2の基板とを分離することを特徴とする貫通電極の形成方法である。
【0025】
第1の基板と第2の基板とは、第1の基板と第2の基板とを加熱することで分離することができる。この場合中間層はシード膜となる金属膜よりも低融点の金属材料であることが好ましい。
【0026】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のウエハに形成されたスルーホールへの金属充填方法を説明する模式的工程断面図である。
【0027】
図1(a)における、シード膜が形成された基板5aは、基板1上に、第1の膜2を設けその上層にシード層となる第2の膜3が設けられている。
【0028】
第1の膜2は、第2の膜3よりも融点が低い。本構成においては第1の膜2は融点が200℃以下の金属で構成されており、後述のスルーホールへ金属が充填された基板と分離する(分離工程)際の分離層として機能する。また、シード膜となる第2の膜3は、メッキ液に対して耐性のある、耐酸性、または、耐アルカリ性を有する金属であり、スルーホールへメッキを施す場合、メッキ液による腐食を防止するよう機能する。さらに、効率よくメッキを施す場合、低抵抗であることが好ましい。
【0029】
これらの膜は、従来から使用されている通常の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的成膜法を用いて形成することが出来る。
【0030】
また、第1の膜2の材料は、インジウムが好ましい。インジウムは常温で固体の金属元素の中で、比較的融点が低く、また、化学的にも比較的安定で、取り扱いが容易い。この他、融点が200℃以下の金属として、スズ−ビスマス(57wt%)合金なども使用可能である。
【0031】
第1の膜2の膜厚は後述の分離工程で基板1と、加熱後速やかに分離できる膜厚であればよい。例えばシード膜がインジウムの場合、20nm程度の膜厚でも機能するが、より好ましくは100nm以上の膜厚が有ればよい。
【0032】
また、第2の膜3の材料は、金、白金、パラジウム、または、これらの合金で構成することが好ましい。これら貴金属は、耐酸性、耐アルカリ性の両耐性を有しており、且、低抵抗率であるため、薄膜化することが出来る。また、メッキ液が酸性の場合、タングステンなど比較的耐酸性のある金属も使用可能である。但し、抵抗率が高いため、膜厚を厚くしなければならない。
【0033】
第2の膜3の膜厚は、金属によって異なるが、金の場合、約50nm有ればよい。その他の金属を用いる場合の目安としては、シート抵抗の値で0.5Ω/□以下であれば良い。この程度の抵抗値であれば、効率よくホール内部に金属を充填することが可能である。
【0034】
さらに、基板1と第1の膜2の密着力が得られない場合、密着強化層をウエハ基板1と第1の膜2の間に設けることも可能である。密着強化層としては、Cr、Ti、Niなどが良い。
【0035】
次に、スルーホールを形成した基板4を、シード基板5aのシード膜となる第2の膜が形成された面に接触させ、隙間の無いように配置する。
【0036】
スルーホールを形成した基板4の厚さは10μm以上が望ましく、さらに、ハンドリング性を考慮すると100μm以上が好ましい。
【0037】
スルーホールの形成方法としては、RIE(リアクティブイオンエッチング)や、ICP(誘導結合性プラズマ)を用いたドライエッチング法、レーザ穴あけ加工機によるレーザパンチング法、基板がシリコンウエハの場合異方性ウエットエッチング技術、等を用いることが可能である。
【0038】
スルーホールの形状は、任意であるが、高密度にスルーホールを実装するためには、アスペクト比が1以上、すなわち、ホールの開口部の最長部が基板の厚さ以下の形状が好ましい。
【0039】
図1(b)は、メッキ工程の模式図である。前述のシード基板5aに、スルーホールを形成したウエハ基板4を隙間がないように接触させた後、メッキ槽8に配置し、基板1のスルーホールが形成されている表面に対向させて対向電極6を配置する。そして、メッキ液7をメッキ槽8に充填し、第2のシード膜3と対向電極6の間に所望の電流が得られるよう電圧を加える。電流密度としては、スルーホール内に形成される金属の表面が荒れず、且、適当なメッキ速度が得られるものが好ましい。充填される金属が銅の場合、0.5A/dm2から2.0A/dm2が好ましい。
【0040】
図1(c)は、メッキ工程が完了した後の処理基板10の断面模式図である。メッキにより充填金属9がスルーホールに埋め込まれた状態を示している。図中では、充填金属9がウエハ基板より突出しているが、突出する前にメッキを終了しても良い。
【0041】
処理基板10を、第1の膜2の融点以上に加熱することにより、図1(d)に示すように、第1の膜2が溶融し、スルーホールに金属が充填された基板11とシード基板5bとに分離される。処理基板の加熱方法は、ホットプレート、雰囲気炉、IRヒーターなど、第1の膜2が溶融する温度まで加熱可能な方法であれば、特に前述の方法に限定されるものではない。但し、スルーホールに金属が充填された基板11に与えるダメージが少なく、且、第2のシード膜3を効率よく過熱する方法としては、ホットプレートによるウエハ基板1側からの加熱が好ましい。
【0042】
図1(d)は、分離工程が完了した後のスルーホールに金属が充填された基板11とシード基板5bの断面模式図である。分離された、スルーホールに金属が充填された基板11は、第2の膜3及び第1の膜2の一部が、充填された金属の底部に付着するため、スルーホールに金属が充填された基板側に付着した状態で剥離される。また、充填金属がウエハ基板より突出する場合もある。このような場合CMP研磨、両面ラップ、電解研磨など、従来から用いられている通常の技術により、平滑化を行うことができる。
【0043】
図1(e)は、スルーホールに金属が充填された基板8を、例えば、通常のCMP法で両面平滑化を行ったときの断面模式図である。このようにして、平滑な、スルーホールに金属が充填された基板12が得られた。
(実施例1)
まずスルーホールを形成したウエハ基板の形成法を説明する。直径4インチ、厚さ200μmのシリコンウエハを準備し、内径20μmの複数のスルーホールをICPにより形成した。したがってスルーホールのアスペクト比は10である。シリコンウエハの表面及びスルーホールの内周面に絶縁膜となる厚さ2μmの熱酸化膜を形成した。
【0044】
次にシード基板の形成法を説明する。直径5インチ、厚さ0.7mmのガラス基板を準備する。ガラス基板の表面に、インジウム膜を厚さ200nmになるよう、真空蒸着法で形成した。真空度は1×10-3Paで、タングステンボートによる加熱を行い、水晶振動子による膜厚制御法を用いて、第1シード層を形成した。次に、同様の形成方法で、金膜を100nmになるように第2シード層を形成した。このようにして、シード基板を得た。
【0045】
次にメッキによるスルーホールへ銅を充填する方法を、図2を用いて説明する。この実施例では銅をメッキにより充填しているが、銅以外の金属、例えば金・銀等をメッキ法により充填することができることは言うまでもない。
【0046】
シード基板の上にスルーホールを形成したウエハ基板を乗せ、シード基板の周辺に金製の電極13を配置する。この電極上にオーリング15a、シード基板裏面に対向するように、オーリング15bを配置し、基板ホルダー14a及び14bで両基板を挟み込み、ボルトナット16で両基板を基板間の隙間が出来ないように締め付ける。
【0047】
次に、スルーホールに銅をメッキするため、メッキ液は硫酸銅5水和物200g/リットル、塩素50mg/リットル、硫酸120g/リットル、その他微量添加剤を用い、対向電極には、リンを0.04〜0.06wt%含有した銅金属で形成された厚さ2mm、150mm□の板を用いた。メッキ液を満たしたメッキ浴に、メッキ対象物と対向電極を浸漬し、メッキ浴外部から金製の電極13と対向電極とに電圧を印加した。このとき、電圧を調整し、電流密度が1.5A/dm2になるようした。このような条件で、6時間メッキを施した後、メッキ対象物を取り出し、基板ホルダーからシード基板とスルーホールを形成したウエハ基板取り出し、純水で洗浄をした後、窒素ブローで乾燥させた。
【0048】
ここで、スルーホールに形成された銅とシード基板の金膜との間で、強固に付着しているため、シード基板とスルーホールを形成したウエハ基板は、一体となっている。
【0049】
次にシード基板を分離する方法を説明する。
【0050】
一体となった、シード基板とスルーホールを形成したウエハ基板を、160℃に加熱したホットプレート上に、5分間吸着加熱をした後、スルーホールに銅を形成したウエハ基板をスライドさせ、シード基板のガラス部と金膜の間で分離させた。分離後のスルーホールに銅が形成されたウエハ基板は、2分間空冷の後、コールドプレートで30秒冷却して室温にした。
【0051】
分離した、スルーホールに銅が形成されたウエハ基板をCMPにより平滑化した。
【0052】
以上のようにして、銅がスルーホールに充填されたウエハ基板を得た。
【0053】
このウエハ基板を、FIB(集束イオンビーム)でスルーホール部を垂直に切断し、断面を観察した結果、ボイドが無く、良好な形状をしていた。また、スルーホールに形成された銅の上部と下部の抵抗を測定した結果、0.11Ωであった。
(実施例2)
本実施例においては、シード基板の形成を、第1の膜に、実施例1のインジウムの代わりに、スズ43wt%−ビスマス57wt%合金を用い、スパッタリング法を用いて400nm成膜し、シード基板分離において、ホットプレートの温度を、140℃とした以外、実施例1と同様にして、銅がスルーホールに充填されたウエハ基板を得た。
【0054】
このウエハ基板を、FIB(集束イオンビーム)でスルーホール部を垂直に切断し、断面を観察した結果、ボイドが無く、良好な形状をしていた。また、スルーホールに形成された銅の上部と下部の抵抗を測定した結果、0.11Ωであった。
(実施例3)
本実施例は、シード基板の形成を、第2の膜に、実施例1の金に変えて白金を用いた以外は実施例1と同じ条件を用い、銅がスルーホールに充填されたウエハ基板を得た。
【0055】
尚、白金膜は真空蒸着法でカーボン性の坩堝を用い、電子ビーム加熱で形成した。
【0056】
このウエハ基板を、FIB(集束イオンビーム)でスルーホール部を垂直に切断し、断面を観察した結果、ボイドが無く、良好な形状をしていた。また、スルーホールに形成された銅の上部と下部の抵抗を測定した結果、0.11Ωであった。
(実施例4)
本実施例は、実施例3の白金をパラジウムとした以外は、実施例1と同じ条件である。
【0057】
このウエハ基板を、FIB(集束イオンビーム)でスルーホール部を垂直に切断し、断面を観察した結果、ボイドが無く、良好な形状をしていた。また、スルーホールに形成された銅の上部と下部の抵抗を測定した結果、0.11Ωであった。
(比較例1)
まず、スルーホールを形成したウエハ基板の形成に関して説明する。
【0058】
直径4インチ、厚さ100μmと200μmのシリコンウエハを準備し、厚さ100μmのシリコンウエハには、内径10μm(アスペクト比:10)の複数のスルーホールを、厚さ200μmのシリコンウエハには、内径20μm(アスペクト比:10)の複数のスルーホールを、ICPにより形成した。したがってスルーホールのアスペクト比は両方のシリコンウエハともに10である。シリコンウエハの表面及びスルーホールの内周面に絶縁膜である2μmの熱酸化膜を形成した。
【0059】
次に、実施例1で使用したサンプルホルダーを使用し、裏面に直径5インチ、厚さ0.625mmのシリコン基板を密着させた。
【0060】
次にシード基板の形成に関して説明する。図3に比較例の断面模式図を示した。前記サンプルホルダーにセットした基板に、スパッタ法によりTaのバリヤー層17を、スルーホール側壁で30nmになるように形成し、さらにスパッタ法で銅シード層18を、スルーホール側壁で30nmになるように形成した。
【0061】
次にメッキ工程である。メッキの給電は、基板ホルダーより行った。スルーホールに銅をメッキするため、メッキ液は硫酸銅5水和物200g/リットル、塩素50mg/リットル、硫酸120g/リットル、その他微量添加剤を用いた。対向電極には、リンを0.04〜0.06wt%含有した銅金属で形成された厚さ2mm、150mm□の板を用いた。メッキ液を満たしたメッキ浴に、メッキ対象物と対向電極を浸漬し、メッキ浴外部でメッキ対象物の基板ホルダーと対向電極間に電圧を掛けた。このとき、電流密度を1.5A/dm2になるよう電圧を調整した。このような条件で、6時間メッキを施した後、メッキ対象物を取り出し、基板ホルダーからシード基板とスルーホールを形成したウエハ基板取り出し、純水で洗浄をした後、窒素ブローで乾燥させた。
【0062】
ここで、スルーホールに形成された銅と裏面シリコン基板は、一体となっている。
【0063】
次に裏面ポリッシングでシリコン基板が無くなるまで研磨をした後、CMPで表面に析出した銅膜を除去して、銅がスルーホールに充填されたウエハ基板を得た。
【0064】
尚本例では、メッキで形成された銅は基板と接着されている。この場合、ホットプレート上で、序々に吸着加熱をしても、350℃で厚さ100μmの基板も200μmの基板も割れてしまった。
【0065】
更に、メッキ液と接触していない側のスルーホールの開口部には銅が未充填であることが目視で確認できた。
(比較例2)
スルーホールのアスペクト比を下げるために、本例では、直径4インチ、厚さ200μmのシリコンウエハに、内径50μmの複数のスルーホールをICPにより形成し点を除き比較例2と同様行った。
【0066】
このウエハ基板を、FIB(集束イオンビーム)でスルーホール部を垂直に切断し、断面を観察した結果、ボイドが多く発生していた。その断面模式図を図4に示した。20a、20b、20cはその一例である。また、スルーホールに金属が完全に充填される前に、表面のメッキ金属19が、形成されてしまう個所もあった。これは、アスペクト比が高いため、スルーホール入口部が低部よりも電解が集中するため、入り口付近のメッキの成長速度が速いために起こっていると考えられる。また、スルーホールに形成された銅の上部と下部の抵抗を測定した結果、80%の確率で断線していることが確認できた。
(実施例5)
図5は本発明の実施例1〜4のいずれかの貫通電極の形成方法を用いて形成した液体吐出用の半導体装置の外部回路との接続例である。図5において、100は吐出面、101、102はそれぞれ液滴を吐出させるための半導体装置と該半導体装置を駆動するための外部回路等とを接続するための配線である。このように、本発明の貫通電極の形成方法を用いることによって、基板側部近傍での接続箇所を別途設ける必要がなくなり、液体吐出装置用の半導体装置を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態を示すウエハに形成されたスルーホールへの金属充填方法の説明図。
【図2】本発明の基板セット方法を示す断面模式図。
【図3】比較例の基板セット方法を示す断面模式図。
【図4】比較例の不良部を示す断面模式図。
【図5】本発明の液体吐出用の半導体装置の外部回路との接続例。
【符号の説明】
【0068】
1 ウエハ基板
2 第1の膜
3 第2の膜
4 スルーホールを形成したウエハ基板
5a シード基板
5b シード基板
6 対向電極
7 メッキ液
8 メッキ槽
9 充填金属
10 処理基板
11 スルーホールに金属が充填された基板11
12 平滑化したスルーホールに金属が充填された基板
13 電極
14a 基板ホルダー
14b 基板ホルダー
15a オーリング
15b オーリング
16 ボルトナット
17 Taバリヤー層
18 銅シード層
19 メッキ金属
20a ボイドの一形態
20b ボイドの一形態
20c ボイドの一形態



【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する第1の基板に、シード膜を有する第2の基板を、前記第1の基板の前記貫通孔の底部に前記シード層が露出するように接触させ、前記シード膜を起点に電気メッキにより前記貫通孔の内部に導電体を充填する貫通電極の形成方法。
【請求項2】
前記シード膜は前記第2の基板上に少なくともシード層となる第2の層と前記第2の層の下層に第1の層とを有し、前記第1の層は前記第2の層よりも融点が低いことを特徴とする請求項1に記載の貫通電極の形成方法。
【請求項3】
前記第1の層は、インジウムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の貫通電極の形成方法。
【請求項4】
前記第2の層は、メッキ液に耐性のあるAu、PtおよびPdまたは、これらの合金であることを特徴とする請求項1または3のいずれか1項に記載の貫通電極の形成方法。
【請求項5】
前記第1の基板上に更に第3の層を有することを特徴とする請求項1または4のいずれか1項に記載の貫通電極の形成方法。
【請求項6】
前記貫通孔に導電体を充填後、前記第1の基板と前記第2の基板とを分離する工程と、前記第1の基板表面のシード層由来の導電体を除去する工程とを有することを特徴とする請求項1または5のいずれか1項に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基板と前記第2の基板との分離が、前記第1の層の融点以上の温度に加熱することで行われることを特徴とする請求項6に記載の貫通電極の形成方法。
【請求項8】
貫通孔を有する第1の基板に、シード膜を有する第2の基板を接触させ、前記シード膜を起点に電気メッキにより前記貫通孔の内部に導電体を充填する貫通電極の形成方法において、
前記第2の基板と前記シード膜との間に前記シード膜よりも融点の低い中間層を有し、メッキにより前記貫通孔に導電体を充填した後、前記中間層において、前記第1の基板と第2の基板を分離することを特徴とする貫通電極の形成方法。
【請求項9】
前記第1の基板と第2の基板の分離を、前記中間層の融点以上の温度に加熱することで行なう請求項8に記載の貫通電極の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−161124(P2006−161124A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356791(P2004−356791)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】