説明

走行ミッション装置

【課題】 比較的安価でしかもコンパクトで操向用デフ機構を用いる旋回制御が可能な前記走行ミッション装置をさらに小型化した走行ミッション装置を提供すること。
【解決手段】走行ミッション装置14内のエンジン動力入力軸27で得られた動力を複数の変速段にそれぞれ変速する複数の径を有するギアを備えたカウンタ軸33において、その最大径のギア34の径方向の先端がサイドクラッチ軸41の軸方向におけるセンタギア40と第三ギア40cとの間に位置するように配置した。こうしてカウンタ軸33のある部分のミッションケース12の幅方向の長さを小さくすることができ、入力軸27の低速ギア30とカウンタ軸33の最大径のギア34のギア比が容易に設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの走行車両の走行ミッション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばクローラを走行装置とする作業車両として、農業用のコンバインを例に従来の技術を説明する。コンバインは無端帯状のクローラを有し、水田など軟弱な圃場でも自由に走行して刈取作業などの農業作業を可能としている。
【0003】
コンバインは動力源としてエンジンを搭載し、エンジンの発生する動力をコンバインの走行、刈取、脱穀などに使用するが、そのクローラは、エンジンの動力を走行トランスミッション装置により変速して駆動する。走行トランスミッション装置は、静油圧式無段変速装置、歯車列機械的変速手段、差動歯車装置、クラッチ手段、ブレーキ手段などにより構成され、また、操向操作レバーを左右に傾斜させる操作で緩旋回機構とブレーキ旋回機構と急旋回機構を選択できる機構を備えている。
【0004】
前記差動歯車装置を用いる走行ミッション装置としては例えば特開平6−264976号公報に開示されている。
【特許文献1】特開平6−264976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術のデフ機構を用いる旋回制御が可能な走行ミッション装置は比較的安価であるが、走行ミッション装置の上下方向、前後方向の長さが比較的大きく、コンパクトな走行ミッション装置とはいえず、また地上高を十分確保できないので、特に、湿田での走行性能(泥押し防止)に改善の余地があった。
【0006】
そこで本出願人は、比較的安価でしかもコンパクトで操向用デフ機構を用いる旋回制御が可能な新規走行ミッション装置を開発し、その構成などに関する出願を既に行っている。
【0007】
しかし前記本出願人の新規走行ミッション装置は、十分小型化されているが、さらに小型化を望む声もある。しかし、むやみに走行トランスミッションの小型化はできず、特に回転軸の径を小さくしていくと、その小径部には応力が集中するので小型化には限界がある。
【0008】
本発明の課題は、比較的安価でしかもコンパクトで操向用デフ機構を用いる旋回制御が可能な前記走行ミッション装置をさらに小型化した走行ミッション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、エンジン駆動力を入力して変速した後、左右一対の走行装置3,3に伝達する走行ミッション装置14であって、前記走行ミッション装置14は、
エンジン駆動力を入力する入力軸(第一副変速軸)27と、
該入力軸27で得られた駆動力を複数の変速段にそれぞれ変速するために互いに異なる径を有する複数のギアを備えたカウンタ軸33と、
カウンタ軸33の複数のギアのいずれかのギアに伝達された駆動力を正転方向に伝達するセンタギア40と該センタギア40と一体的に同軸上に設けられ、旋回時に利用される第三ギア40cを備えたサイドクラッチ軸41と、
該サイドクラッチ軸41の駆動力を前記センタギア40と係合可能なクラッチギア43L,43Rからそれぞれ伝達される左右一対のサイドギア55L,55Rと、該サイドギア55L,55Rとそれぞれ一体回転するベベルギア51L,51Rと、該ベベルギア51L,51Rにそれぞれ噛合するベベルギア52、52と、該ベベルギア52、52と一体回転するデフケース54とデフケース54に固着したデフケースギア53とを支持軸50の外周に有する差動歯車機構6と、
直進時にサイドクラッチ軸41、センタギア40の前記駆動力を左右一対の走行装置3,3に均等に伝達する直進クラッチ81と旋回時にサイドクラッチ軸41の第三ギア40cを介して前記駆動力を旋回内側の走行装置3に伝達する旋回クラッチ82を有し、前記差動歯車機構6のデフケースギア53と常時係合しているクラッチ出力ギア78を固着したクラッチ軸70と
前記差動歯車機構6の一対のサイドギア55L,55Rからの駆動力がそれぞれ伝達される減速ギア64L,64Rを有する減速軸63L,63Rと、
該減速軸63L,63Rの駆動力がそれぞれ伝達され、左右一対の走行装置3,3を駆動する走行軸11L,11Rを備え、さらに、
カウンタ軸33の複数のギアのうちの最大径のギア(ギア34)の径方向の先端がサイドクラッチ軸41の軸方向におけるセンタギア40と第三ギア40cとの間に位置するように配置した走行ミッション装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、エンジン駆動力を入力して変速した後、左右一対の走行装置3,3に伝達する走行ミッション装置14であって、前記走行ミッション装置14は、
エンジン駆動力を入力する入力軸(第一副変速軸)27と、
該入力軸27で得られた駆動力を複数の変速段にそれぞれ変速するために互いに異なる径を有する複数のギアを備えたカウンタ軸33と、
カウンタ軸33の複数のギアのいずれかのギアに伝達された駆動力を正転方向に伝達するセンタギア40と該センタギア40と一体的に同軸上に設けられ、旋回時に利用される第三ギア40cを備えたサイドクラッチ軸41と、
該サイドクラッチ軸41の駆動力を前記センタギア40と係合可能なクラッチギア43L,43Rからそれぞれ伝達される左右一対のサイドギア55L,55Rと、該サイドギア55L,55Rとそれぞれ一体回転するベベルギア51L,51Rと、該ベベルギア51L,51Rにそれぞれ噛合するベベルギア52、52と、該ベベルギア52、52と一体回転するデフケース54とデフケース54に固着したデフケースギア53とを支持軸50の外周に有する差動歯車機構6と、
直進時にサイドクラッチ軸41、センタギア40の前記駆動力を左右一対の走行装置3,3に均等に伝達する直進クラッチ81と旋回時にサイドクラッチ軸41の第三ギア40cを介して前記駆動力を旋回内側の走行装置3に伝達する旋回クラッチ82を有し、前記差動歯車機構6のデフケースギア53と常時係合しているクラッチ出力ギア78を固着したクラッチ軸70と
前記差動歯車機構6の一対のサイドギア55L,55Rからの駆動力がそれぞれ伝達される減速ギア64L,64Rを有する減速軸63L,63Rと、
該減速軸63L,63Rの駆動力がそれぞれ伝達され、左右一対の走行装置3,3を駆動する走行軸11L,11Rを備え、さらに、
減速軸63L,63R上にそれぞれ遊嵌された減速ギア64L,64Rが対向する側である走行ミッション装置14の中央部側の端部にカラー67L,67Rをそれぞれ設け、
該カラー67L,67Rの内径部の前記中央側の径を減速ギア側の径より大とし、該カラー67L,67Rの外径部の前記中央側の径を減速ギア側の径より小とし、該カラー67L,67Rの外径部の減速ギア側の端部を減速ギア64L,64Rの基部の軸方向の幅内に収めた
ことを特徴とする走行ミッション装置である。
【0011】
請求項3記載の発明は、エンジン駆動力を入力して変速した後、左右一対の走行装置3,3に伝達する走行ミッション装置14であって、前記走行ミッション装置14は、
エンジン駆動力を入力してする入力軸(第一副変速軸)27と、
該入力軸27で得られた駆動力を複数の変速段にそれぞれ変速するために互いに異なる径を有する複数のギアを備えたカウンタ軸33と、
カウンタ軸33の複数のギアのいずれかのギアに伝達された駆動力を正転方向に伝達するセンタギア40と該センタギア40と一体的に同軸上に設けられ、旋回時に利用される第三ギア40cを備えたサイドクラッチ軸41と、
該サイドクラッチ軸41の駆動力を前記センタギア40と係合可能なクラッチギア43L,43Rからそれぞれ伝達される左右一対のサイドギア55L,55Rと、該サイドギア55L,55Rとそれぞれ一体回転するベベルギア51L,51Rと、該ベベルギア51L,51Rにそれぞれ噛合するベベルギア52、52と、該ベベルギア52、52と一体回転するデフケース54とデフケース54に固着したデフケースギア53とを支持軸50の外周に有する差動歯車機構6と、
直進時にサイドクラッチ軸41、センタギア40の前記駆動力を左右一対の走行装置3,3に均等に伝達する直進クラッチ81と旋回時にサイドクラッチ軸41の第三ギア40cを介して前記駆動力を旋回内側の走行装置3に伝達する旋回クラッチ82を有し、前記差動歯車機構6のデフケースギア53と常時係合しているクラッチ出力ギア78を固着したクラッチ軸70と
前記差動歯車機構6の一対のサイドギア55L,55Rからの駆動力がそれぞれ伝達される減速ギア64L,64Rを有する減速軸63L,63Rと、
該減速軸63L,63Rの駆動力がそれぞれ伝達され、左右一対の走行装置3,3を駆動する走行軸11L,11Rを備え、さらに、
クラッチ軸70の一方の先端部にクラッチ支持部70aを設け、該クラッチ支持部70aの先端近傍を支持する軸受け79を走行ミッション装置14を収納するケース12に設け、
クラッチ出力ギア78の前記ケース12側の端面Eとデフケースギア53の前記ケース12の左右方向の中央側の端面Fとの距離(E−F)よりクラッチ支持部70aの先端面Hと軸受け79の前記ケース12の左右方向の中央側の端面Gとの距離(H−G)を大きくしたことを特徴とする走行ミッション装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、カウンタ軸33の複数のギアのうちの最大径のギア(ギア34)の径方向の先端がサイドクラッチ軸41の軸方向におけるセンタギア40と第三ギア40cとの間に位置するように配置することで、カウンタ軸33のある部分のミッションケース12の幅方向の長さを小さくすることができ、入力軸(第一副変速軸)27の低速ギア30とカウンタ軸33の最大径のギア(ギア34)のギア比が容易に設定できる。また、入力軸(第一副変速軸)27とカウンタ軸33との軸間を短くでき、ミッションケース12の幅方向の小型化が可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、減速ギア64L,64Rのスラスト方向の固定にカラー67L,67Rをそれぞれ使用することで、減速軸63L,63Rの径を徐々に変化させることが可能となり、減速軸63L,63Rの小径部における応力集中が防止でき、減速軸63L,63R及び減速ギア64L,64Rの小型化が可能となる。その結果、走行ミッションケース12もその上下、前後方向における小型化が可能になる。
【0014】
また、カラー67L,67Rの外径部の減速ギア側の端部を減速ギア64L,64Rの基部の軸方向の幅内に収めたことで、デフケースギア53と減速ギア64L,64Rの軸方向の隙間を狭く構成でき、走行ミッションケース12の幅方向の小型化も可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、クラッチ出力ギア78のケース12側の端面Eとデフケースギア53のケース12の左右方向の中央側の端面Fとの距離(E−F)よりクラッチ支持部70aの先端面Hと軸受け79のケース12の左右方向の中央側の端面Gとの距離(H−G)を大きくしたので、センタギア40、クラッチ出力ギア78及びデフケースギア53の位相合わせ時に、クラッチ支持部70aの先端部が軸受け79により支持されるので、クラッチ軸70の傾きが軽減され、位相合わせが容易となり、前記各部材のケース12内への組み付け性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて具体的に説明する。
図1は本発明のコンバインの左側面図である。
図1に示すように、コンバイン1の車体フレーム2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行装置(以下、走行クローラと称す。)3を有する走行装置本体4を配設し、車体フレーム2の前端側に分草杆8を備えた刈取装置9が設けられている。該刈取装置9は車体フレーム2の上方の支点を中心にして上下動する刈取装置支持フレーム7で支持されているので、コンバイン1に搭乗したオペレータが操縦席20の操向レバー21を前後に傾倒操作することにより、刈取装置支持フレーム7と共に上下に昇降する構成である。
【0017】
車体フレーム2の上方には、刈取装置9から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送して脱穀、選別する脱穀装置10と該脱穀装置10で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク13が載置され、該グレンタンク13の後部にオーガ15を連接して、グレンタンク13内の穀粒をコンバイン1の外部に排出する構成としている。
なおM本明細書ではコンバインの前進方向に向かって左右方向(幅方向)をそれぞれ左右とし、前進方向を前、後進方向を後とする。
【0018】
すなわち、コンバイン1はオペレータが操縦席20において主変速HSTレバー23および副変速レバー22を操作し、エンジン(図示せず)の動力を図2に示す走行トランスミッションケース12内の主変速機の走行用HST18および副変速装置24の歯車変速手段を介して変速し、左右の走行クローラ3,3に伝動して任意の速度で走行する。
【0019】
また、コンバイン1は、オペレータが操縦席20において操向レバー21を左右に傾倒操作することにより各種旋回走行することができる。すなわち、操向レバー21をコンバイン1を旋回させようとする方向に傾倒操作することにより、図2に示す走行ミッションケース12内のサイドクラッチ44と旋回クラッチ82が作動し、左右のクローラ駆動スプロケット16L,16Rに選択的に伝動されるので、左右の走行クローラ3,3に速度差が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。
【0020】
本実施の形態のコンバイン1の走行ミッション装置14を展開して示す断面図を図2に示す。また、図3に差動歯車装置のギアの回転数の関係図を示す。図4にはクラッチ軸70部分の拡大図を示す。
【0021】
走行ミッション装置14は、図2に示す油圧式無段変速装置(走行用HST)18の出力軸17、ミッション入力軸27、ミッションカウンタ軸33、サイドクラッチ軸41、走行軸11L,11Rからなる走行トランスミッション基本伝動系と、クラッチ軸70及び差動歯車機構支持軸50を備えた走行ミッション差動伝動系(補助伝動系)を備えている。
【0022】
まず、走行ミッション装置14の走行トランスミッション基本伝動系を主に図2で説明する。
図示しないエンジンからの回転駆動力が走行用HST18に伝動され、正・逆転の切換えや変速回転動力が出力軸17から出力される構成としている。そして、主変速レバー23により走行用HST18の増減速の変速と前後進(正・逆転の切換え)の切換えができる構成としている。
そして、操向レバー21を操作して、後述のサイドクラッチ44の「入」・「切」と差動歯車装置6を変速させて旋回走行ができる構成としている。
【0023】
走行ミッションケース12内には、副変速装置24とサイドクラッチ装置25と差動歯車装置6が設けられ、これらの装置の伝動下手側の左右の走行軸11L,11Rから駆動スプロケット16L,16Rを介して左右の走行クローラ3,3を駆動する構成になっている。
【0024】
走行用HST18の出力軸17の広幅伝動ギア26からの動力はHSTカウンタ軸60のカウンタギア61に伝達され、該カウンタギア61から副変速装置24のミッション入力軸27上の伝動ギア62に動力が伝動される。
【0025】
副変速装置24のミッション入力軸27上に一体に設けられた大ギア28と中ギア29と小ギア30とミッションカウンタ軸33上に設けられた変速大ギア34、変速中ギア35及び変速小ギア36から構成される。ミッション入力軸27上に、一体に設けられたギア28〜30は副変速レバー22の操作でミッション入力軸27の軸方向に摺動自在に軸装して変速可能に構成している。そして、上記ミッション入力軸27は、端部を走行ミッションケース12から外側に延長して刈取伝動プーリ(図示せず)を軸着して車速に同調した回転動力を刈取装置9などの回転各部に入力できる構成としている。
【0026】
また、ミッションカウンタ軸33は、前記ミッション入力軸27の伝動下手側に軸架し、変速大ギア34、変速中ギア35、変速小ギア36及び伝動ギア37をそれぞれ軸着している。ミッションカウンタ軸33のギア34〜37は不動で、ミッション入力軸27上に、一体に設けられた大ギア28と中ギア29と小ギア30が図示しないシフタにより摺動するので、ミッションカウンタ軸33の変速大ギア34は前記ミッション入力軸27の小ギア30に噛合し、変速中ギア35はミッション入力軸27の中ギア29に噛合し、変速小ギア36はミッション入力軸27の大ギア28にそれぞれ噛合する。さらに伝動ギア37はサイドクラッチ装置25のセンタギア40に常時噛合している。
【0027】
サイドクラッチ装置25は、センタギア40を略中心として、その左右に伸びるサイドクラッチ軸41を一体で備えている。該サイドクラッチ軸41上にはそれぞれスリーブ42L,42Rが遊嵌しており、前記センタギア40にはクラッチギア43L,43Rが係合、解放可能な爪40bL,40bRを備えている。また、クラッチギア43L,43Rはスリーブ42L,42Rと一体的に設けられている。
【0028】
クラッチギア43L,43Rは左右の減速軸63L,63Rにそれぞれ遊嵌している減速ギア64L,64Rに常時噛合しているので、クラッチギア43L,43Rからの動力は減速ギア64L,64Rからギア63aL,63aRを経由してホイールシャフトギア48L,48Rに伝達され、ホイールシャフトギア48L,48Rから走行軸11L,11Rを経由し、駆動スプロケット16L,16Rから左右の走行クローラ3,3に伝達される。
【0029】
爪クラッチ式に噛合したクラッチギア43L,43Rとセンタギア40の爪部40bL,40bRからなる構成をそれぞれサイドクラッチ44L,44Rと呼ぶことにする。
【0030】
また、スリーブ42L,42Rと走行ミッションケース12との間にそれぞれベアリングスペーサー(図示せず)を介してスプリング46L,46Rが設けられ、このスプリング46L,46Rによりスリーブ42L,42Rとクラッチギア43L,43Rは常時センタギア40側に付勢されている。そして、旋回時に油圧力でシフタ47L,47Rのいずれかを作動させて対応する前記スプリング46L,46Rのいずれかの付勢力に打ち勝つ方向に移動可能な構成になっている。これにより、旋回内側のサイドクラッチ44L又は44Rが切れる。
【0031】
シフタ47L,47Rは直進走行時には作動せず、サイドクラッチ44L,44Rが共に係合した状態であるので、後述の伝達経路で左右の走行クローラ3,3が等速回転する。また所望の旋回方向に操向レバー21を操作することでシフタ47L又は47Rが作動して、旋回内側のサイドクラッチ44L又は44Rの係合と解放が選択される。
【0032】
センタギア40の外周ギア40aはクラッチ軸70上に遊嵌している円筒状回転体72のギア72aと常時噛合している。該円筒状回転体72と爪係合している円筒体72bとクラッチ軸70にスプライン係合している円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる直進用クラッチ81を構成している。
【0033】
また、円筒状回転体72の外周には円筒状回転体74が遊嵌しており、該円筒状回転体74にはセンタギア40の第三のギア40cに常時係合しているギア74aを備えている。また円筒状回転体74と円筒状回転体71との間で多板式摩擦板からなる旋回用クラッチ82を構成している。直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82との間には圧縮バネ75が配置され、該圧縮バネ75の付勢力は直進用クラッチ81が「入」となるように設置されている。
【0034】
また、円筒状回転体71の外周には直進用クラッチ81と圧縮バネ75と旋回用クラッチ82の間をそれぞれ仕切る円盤状プレート76a,76bを備えた円筒体76が一体化して設けられている。
【0035】
油口77から圧油の導入がない場合には圧縮バネ75によって円筒状回転体71と円筒状回転体72との間で常時直進用クラッチ81が係合する「入」方向に付勢されている。直進用クラッチ81は常時「入」状態を保ち、旋回用クラッチ82は常時「切」状態を保っている。
【0036】
油口77から圧油の導入があると、ピストン73と円筒体76の円盤状プレート76aと76bがバネ75の付勢力に打ち勝って図2の左側方向にシフトし、直進用クラッチ81は解放(「切」状態)となり、旋回用クラッチ82が係合(「入」状態)になる。
【0037】
直進用クラッチ81が「入」の場合は副変速装置24からの駆動力がサイドクラッチ軸41のセンタギア40の外周ギア40aと円筒状回転体72のギア72aを経由して円筒状回転体72、円筒体72b、円筒体76、円筒状回転体71、直進用クラッチ81及びクラッチ軸70を回転させ、該クラッチ軸70と一体のクラッチ出力ギア78と、該クラッチ出力ギア78に常時係合している差動歯車機構6のデフケースギア53を回転させる。このとき旋回用クラッチ82が「切」であるのでセンタギア40の第三ギア40cに常時噛合している円筒状回転体74のギア74aの回転動力はクラッチ軸70には伝達されないで円筒状回転体74は空回りする。
【0038】
また、旋回用クラッチ82が「入」の場合は、直進用クラッチ81が「切」となり、クラッチ軸70に遊嵌している円筒状回転体72を空回りさせるが、このときセンタギア40の第三ギア40cからの駆動力が円筒状回転体74のギア74aを経由して円筒状回転体74から旋回用クラッチ82と円筒体76を経由して円筒状回転体71を回転させ、該回転体71の回転でクラッチ軸70を駆動させる。この結果、クラッチ軸70に固定されたクラッチ出力ギア78が回転して、該クラッチ出力ギア78に常時係合している差動歯車装置6のデフケースギア53を回転させる。
【0039】
差動歯車装置6には、中間ベベルギア52、52の外周に設けたデフケース54と一体のデフケースギア53が設けられており、また、支持軸50には側部ベベルギア51L,51Rが回転可能に支持されており、また、側部ベベルギア51L,51Rの外側には左右のサイドギア55L,55Rがそれぞれ固定している。
【0040】
サイドギア55Lは減速ギア64Lに常噛し、サイドギア55Rは減速ギア64Rに常噛しており、また減速ギア64Lとギア63aLは一体であり、減速ギア64Rとギア63aRは一体である。
【0041】
図2から明らかなように、直進用クラッチ81と旋回用クラッチ82を同一軸であるクラッチ軸70に設けることにより両クラッチ81、82を択一的に操作できるので、構成が簡素化でき、安価になる。また両クラッチ81、82の切り替えのタイミングを機械的に調整できるので複雑な制御が不要となる。
【0042】
上記構成からなる走行ミッション装置14のギア機構において、コンバイン1の直進時はサイドクラッチ装置25の左右のサイドクラッチ44L,44Rが共に係合したままであり、エンジン動力は副変速装置24のミッションカウンタ軸33に伝達され、該ミッションカウンタ軸33の出力ギア37を経由してセンタギア40に伝達される。該センタギア40にはサイドクラッチ軸41が共に係合しているので、センタギア40の回転力はクラッチ44L,44Rを介してクラッチギア43L,43Rに伝達され、該クラッチギア43L,43Rに常時係合している減速ギア64L,64Rに伝達され、減速ギア64L,64Rから減速軸63L,63Rの各ギア63aL,63aRとホイールギア48L,48Rをそれぞれ経由して左右の走行クローラ3が共に回転する。
【0043】
副変速レバー22の作動で副変速シフタステー32が副変速装置24のミッション入力軸27のギア28、29、30とそれぞれ対応するミッションカウンタ軸33のギア36、35、34のいずれかの組のギア同士を噛合させて、適切な速度段で直進走行ができる。
【0044】
このとき直進用クラッチ81は「入」で、旋回用クラッチ82は「切」であり、直進時の差動歯車装置6の状態は次の通りである。
(イ)ミッションカウンタ軸33の駆動力がセンタギア40の爪ギア40bL,40bRとを経由してサイドクラッチ装置25のサイドクラッチ44L,44R及びサイドクラッチ軸41のクラッチギア43L,43Rを経由して減速ギア64L,64Rが共に回転しているので、減速ギア64L,64Rがそれぞれ噛合している差動歯車装置6のサイドギア55L,55Rは同じ方向に共に等速回転する。従って、サイドギア55L,55Rとそれぞれ一体回転する側部ベベルギア51L,51Rを介してデフケース54と該デフケース54と一体のデフケースギア53も同じ方向に回転し、前記側部ベベルギア51L,51Rに噛み合っている中間ベベルギア52、52が支持軸50を中心に回転する。
【0045】
(ロ)ミッションカウンタ軸33の駆動力がセンタギア40の外周ギア40aから回転円筒体72に伝達され回転円筒体72と爪係合する円筒体72b、直進用クラッチ81、円筒体76のプレート76a、円筒状回転体71、クラッチ軸70、クラッチ出力ギア78及びデフケースギア53に順次動力伝達され、デフケースギア53と同じ回転方向にベベルギア52も回転する。
【0046】
このようにデフケースギア53は上記(イ)、(ロ)の二系統から回動されるので上記(イ)、(ロ)の二系統からのデフケースギア53への変速比を同じに設定する。従ってサイドクラッチ44L又は44Rを「切」にしたとき、上記(ロ)の伝動系統からの動力がデフケースギア53からサイドギア55L,55Rと減速ギア64L,64R、カウンタギア63aL,63aR、ホイールシャフトギア48L,48Rにそれぞれ伝わるので、ショックが防止される。また、センタギア40と一体の第三ギア40cから、ギア74a、円筒状回転体74に伝達される旋回用の動力は、旋回用クラッチ82で回転している。
【0047】
次に前記ギア機構の左旋回時の作動について説明する。
操向レバー21を左側に傾斜させることで、シフタ47Lを作動させ、サイドクラッチ44Lを「切」にすると、図示しない機構により油口77から圧油が導入され、ピストン73と円筒体76が図2の左方向に移動する。この移動により直進用クラッチ81を「切」として、旋回用クラッチ82を「入」とする。溶接で一体構成されたセンタギア40と第三のギア40cの回転力は旋回用クラッチ82の円筒状回転体74の外周に設けられた対応するギア74a、旋回用クラッチ82、円筒体76、円筒状回転体71、クラッチ軸70、クラッチ出力ギア78、デフケースギア53、側部ベベルギア51L、サイドギア55L、減速軸63Lの減速ギア64L、ギア63aL、ホイールシャフトギア48L、クローラ駆動スプロケット16Lをそれぞれ経由して左の走行クローラ3を駆動させる。この時、センタギア40の動力はクラッチギア43Rから減速軸63Rの減速ギア64R、ギア63aR、ホイールギア48R、クローラ駆動スプロケット16Rをそれぞれ経由して旋回外側の右の走行クローラ3を駆動する。
【0048】
旋回用クラッチ82は、その多板式摩擦板を油圧力を無段階的(連続的)に設定した旋回モードまで制御することができる。なお、この旋回用クラッチ82の摩擦板の油圧力の制御は操縦席20に設けた操向レバー21に付属するポテンショメータ(図示せず)で検出される傾動角度の制御で行うことができる。
【0049】
センタギア40の第三のギア40cと円筒状回転体74のギア74aの変速比の関係により、例えば旋回用クラッチ82を完全に接続させた場合にサイドギア55Lの回転数はサイドクラッチ44R側のサイドギア55Rの回転数の−1/3になり、急旋回(スピンターン)状態になるように設定しているので、緩旋回からブレーキ旋回と急旋回への移行が可能になっている。
【0050】
すなわち、左旋回時には旋回外側であるサイドクラッチ44Rが「入」状態であるので、ホイールシャフトギア48Rの回転がクラッチギア43Rから一定回転で伝動されるとともに、クラッチギア43Rの回転はサイドギア55Rを一定回転で伝動する。一方、デフケースギア53の回転数が旋回用クラッチ82の摩擦力が強くなるに従い減速されていくと、それに比例してサイドギア55Lの回転数が減少していく。デフケースギア53の回転数がサイドギア55Rの1/2になると、サイドギア55Lはゼロ回転となり、サイドギア55Lからホイールシャフトギア48Lを経由する回転数がゼロになり、左走行クローラ3にブレーキが利いているのではないが左走行クローラ3が回転しない、いわゆるブレーキ旋回が行われる。
【0051】
さらにデフケースギア53が減速していくと、サイドギア55Rの回転方向に対してサイドギア55Lは逆転回転をして左走行クローラ3が逆回転し、いわゆる急旋回が行われる。
【0052】
サイドギア55Rの回転数に対してサイドギア55Lの逆転回転数は、ギア40cとギア74aの変速比を図3の点Xに設定していると、サイドギア55Lがサイドギア55Rに対して−1/3スピンターンまで実行可能な逆転回転数まで設定が可能である。
また、右旋回選択時はサイドクラッチ44Rを「切」にすることで、前記左旋回と全く逆の作動が走行ミッション装置14で行われる。
【0053】
上記したような副変速装置24と旋回用クラッチ82との間に比較的簡単な構成のギア変速装置19を介装し、旋回用クラッチ82の摩擦板の係合圧を調整することで、緩旋回からブレーキ旋回及び−1/3の急旋回まで実行可能な状態に切り替えられるようにした。上記ミッション入力軸27には刈取装置への出力軸65がスプライン係合している。
【0054】
上記変速装置において、差動歯車機構6の差動歯車機構支持軸(デフ軸)50と走行軸11L,11Rの間にそれぞれ減速軸63L,63Rを設け、デフケースギア53よりミッションケース12の左右それぞれ外側位置に減速ギア64L,64Rを設ける。そして、本実施例では図5に示すように減速軸63L,63Rのミッションケース12の中央部側であって、減速ギア64L,64Rの内側(ミッションケース12内の左右方向の中央部側)にカラー67L,67Rをそれぞれ設けている。
【0055】
該カラー67L,67Rの内径部については、カラー67L,67Rの内径部の減速ギア64L,64R側の径(A)をR1とし、中央側の径(B)をR2とすると、R1<R2とする。また、カラー67L,67Rの外径部について、減速ギア64L,64R側の径(C)をR3とし、中央側の径(D)をR4とすると、R3>R4とする。そして、カラー外径部67L,67Rの外径部の大径部(C)の端部を減速ギア64L,64Rの基部の軸方向の幅内に収めた構成である。
【0056】
減速ギア64L,64Rのスラスト方向の固定にカラー67L,67Rを使用することで、減速軸63L,63Rの径を徐々に変化させることが可能となり、減速軸63L,63Rの小径部における応力集中が防止でき、減速軸63L,63R及び減速ギア64L,64Rを小型化が可能となる。その結果、走行ミッションケース12もコンバイン1に組み付けたときの上下、前後方向における小型化が可能になる。また、カラー67L,67Rの外径部の大径部(C)を減速ギア64L,64R内に収めることで、デフケースギア53と減速ギア64L,64Rの幅方向隙間を狭く構成でき、ミッションケース12の幅方向も小型化が可能となる。
【0057】
また、本実施例では、図6に示すようにクラッチ軸70の一方の先端部を延長して、走行ミッション装置14の組み立て時に軸受け79によりクラッチ軸70を支持できるようにして走行ミッション装置14の組み立て性を従来より向上させた。
【0058】
図6において、クラッチ出力ギア78の走行ミッションケース12の壁面側に位置する外側端面(E)とデフケース54の内側端面(F)の間の長さ(E−F)がクラッチ軸70の先端(H)とクラッチ支持軸受け79の前記ケース12の軸方向中央側に位置する内側端面(G)との間の長さ(H−G)とした場合に長さ(E−F)<長さ(H−G)とする。
【0059】
上記した寸法関係にすることで、図7に示すように、組み付けたときにクラッチ軸70の先端が軸受け79で支持され、同時にセンタギア40とクラッチ出力ギア78が噛み合い、またクラッチ出力ギア78とデフケースギア53の位相合わせが容易となり、片側から緩旋回変速装置19部分を走行ミッションケース12内に容易に組み付けができる。
【0060】
従来は、センタギア40、クラッチ出力ギア78及びデフケースギア53の位相合わせ時にクラッチ軸70が傾き、位相合わせが困難であったが、上記構成にすると、クラッチ軸70の先端部が軸受け79により支持されることで、クラッチ軸70の傾きが軽減され、位相合わせが容易となり、組み立て性が向上する。
【0061】
また、図2に示すようにカウンタ軸33の変速大ギア(低速用ギア)34をサイドクラッチ軸41の軸方向において、センタギア40と第三ギア(スピン出力ギア)40cの間に配置した。径の大きい変速大ギア34を第三ギア40cと抵触させないためには、上記したように配置することで第一副変速軸(入力軸)27とカウンタ軸33のミッション幅方向を狭くすることができ、走行ミッション装置14の幅方向の小型化が可能になった。
【0062】
また、本実施例では、図8に示すように走行ミッションケース12の本体部分とHST18からの出力を走行ミッションケース12の本体部分に伝達するカウンタケース57を一体化した。前記カウンタケース57とは出力軸17部分と刈取出力軸65部分を収納したケース部分である。
【0063】
そして、走行ミッションケース12の本体内のオイルをカウンタケース57内でのオイルとしても利用するために、オイルを循環させることができるように、走行ミッションケース12の本体部とカウンタケース57の隣接部の側壁部に貫通孔を設けた。
【0064】
こうして図9に示すようにミッションオイルを走行ミッションケース12の本体側からフィルター85を介してポンプ86で吸引して、冷却装置87で冷却した後、カウンタケース57内へ流し、また貫通部を通過させて走行ミッションケース12の本体部へ循環させるオイルの循環路を構成することができる。
【0065】
従来は、ミッションケース12とカウンタケース57とに分かれていたため、両ケース12,57の取り付け部品が必要であった。またそれぞれに給油口、検油口が必要であった。さらに走行ミッションケース12にはオイルの吸入部と戻し部とが必要であった。
【0066】
しかし、上記した走行ミッションケース12の本体とカウンタケース57を一体化した構成により、これらの2つのケース12,57を取り付けるための部品やシール部材が不要になるだけでなく、オイルを2つのケース12,57で共有することで、潤滑に関する部品を削減することができ、また2つのケース12,57の加工と組み立て時間を少なくすることができる。
【0067】
本実施例の走行ミッション装置14の緩旋回変速装置19はグレンタンク13内の籾量によりクローラ3のブレーキ圧が変化する制御装置を備えている。また前記制御装置は左右クローラ3を独立してブレーキ圧を自動的に調整することができる。
【0068】
籾量が少ない時はグレンタンク13の側が脱穀装置10の側より軽く、籾量が多い時はグレンタンク13の側が脱穀装置10の側より重くなる。そのため、左右のクローラ3の駆動力に差が生じブレーキ力が異なる。
【0069】
そこで、グレンンタンク13内の籾量により車体の左右バランスが変化するので、左右クローラ3を独立してブレーキ圧を調整して旋回することができる。また、籾量により自動的にブレーキ圧が調整されることで、左右クローラ3は、均一なブレーキ力を得ることができるため、旋回性が向上する。また作業者によるブレーキ力の調整が不要となるため、操作性も向上する。
【0070】
また、本実施例のコンバイン1は車体のピッチング制御とローリング制御により常時車体を水平に維持する機能を備えている。図10には車体水平制御用のピッチングシリンダ88とローリングシリンダ89を車体フレーム2に設けた側面図(図10(a))とローリング支点支持部材91,91の正面図(図10(b))を示している。車体フレーム2は前後のローリング支点支持部材91,91を介して転輪支持クローラフレーム90に支持されている。
【0071】
ローリング支点支持部材91の両下端部の支持軸92,92は車体の前後方向に一対設けられ、それぞれ左右一対のクローラフレーム90,90に回動自在に支持され、前記前後一対の両支持軸92,92に直交する方向に固着した左右のアーム部94,94は繋ぎ部材95で繋がれている。また前記繋ぎ部材95の下方部が湾曲した形をしている。
【0072】
左右のアーム部94,94は支持軸92,92を中心にクローラフレーム90に回動自在に支持されているが、繋ぎ部材95の湾曲部分は、コンバイン1が湿田などの走行中に沈下した場合にも繋ぎ部材が湿田中に浸かることを防止するためである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、コンバインなどの走行車両の走行ミッション装置に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態のコンバインの左側面図である。
【図2】図1のコンバインの走行トランスミッション装置の展開断面図の一部を示す図である。
【図3】図2の走行ミッション装置の差動歯車装置のギアの回転数の関係図である。
【図4】図2の走行トランスミッション装置のクラッチ軸70部分の拡大図である。
【図5】図1のコンバインの走行トランスミッション装置の展開断面図の一部拡大図である。
【図6】図1のコンバインの走行トランスミッション装置の展開断面図の一部拡大図である。
【図7】図6の組み立て時の図である。
【図8】図1の走行トランスミッション装置へのオイル循環をする装置の外観図である。
【図9】図1のコンバインの走行トランスミッション装置の展開断面図の一部拡大図である。
【図10】図1のコンバインの車体水平制御用のピッチングシリンダとローリングシリンダを車体フレーム2に設けた側面図(図10(a))とコンバインのローリング支点支持部材の正面図(図10(b))である。
【符号の説明】
【0075】
1 コンバイン 2 車体フレーム
3 走行装置(走行クローラ) 4 走行装置本体
6 差動歯車機構 7 刈取装置支持フレーム
8 分草杆 9 刈取装置
10 脱穀装置 11L、11R 走行軸
12 走行トランスミッションケース
13 グレンタンク 14 走行ミッション装置
15 オーガ 16L、16R クローラ駆動スプロケット
17 出力軸 18 走行用HST
19 緩旋回変速装置 20 操縦席
21 操向レバー 22 副変速レバー
23 主変速レバー 24 副変速装置
25 サイドクラッチ装置 26 広幅伝動ギア
27 第一副変速軸 28 大ギア
29 中ギア 30 小ギア
32 副変速シフタステー 33 ミッションカウンタ軸
34 変速大ギア 35 変速中ギア
36 変速小ギア 37 伝動ギア
40 センタギア 40a 外周ギア
40bL、40bR 爪ギア 40c 第三ギア
41 サイドクラッチ軸 42L、42R スリーブ
43L、43R クラッチギア 44、44L、44R サイドクラッチ
46L、46R スプリング 47L、47R シフタ
48L、48R ホイールシャフトギア
50 差動歯車機構支持軸 51L、51R 側部ベベルギア
52 中間ベベルギア 53 デフケースギア
54 デフケース 55L、55R サイドギア
57 カウンタケース 60 カウンタ軸
61 カウンタギア 62 伝動ギア
63L、63R 減速軸 63aL、63aR カウンタギア
64L、64R 減速ギア 65 刈取出力軸
70 クラッチ軸 71、72、74 円筒状回転体
72a 円筒状回転体ギア 72b 円筒体
73 ピストン 74a ギア
75 圧縮バネ 76 円筒体
76a、76b プレート 78 クラッチ出力ギア
77 油口 79 軸受け
81 直進用クラッチ 82 旋回用クラッチ
85 フィルター 86 ポンプ
87 冷却装置 88 ピッチングシリンダ
89 ローリングシリンダ 90 転輪支持クローラフレーム
91 ローリング支点支持部材 92 支持軸
94 アーム部 95 繋ぎ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動力を入力して変速した後、左右一対の走行装置3,3に伝達する走行ミッション装置14であって、前記走行ミッション装置14は、
エンジン駆動力を入力する入力軸27と、
該入力軸27で得られた駆動力を複数の変速段にそれぞれ変速するために互いに異なる径を有する複数のギアを備えたカウンタ軸33と、
カウンタ軸33の複数のギアのいずれかのギアに伝達された駆動力を正転方向に伝達するセンタギア40と該センタギア40と一体的に同軸上に設けられ、旋回時に利用される第三ギア40cを備えたサイドクラッチ軸41と、
該サイドクラッチ軸41の駆動力を前記センタギア40と係合可能なクラッチギア43L,43Rからそれぞれ伝達される左右一対のサイドギア55L,55Rと、該サイドギア55L,55Rとそれぞれ一体回転するベベルギア51L,51Rと、該ベベルギア51L,51Rにそれぞれ噛合するベベルギア52、52と、該ベベルギア52、52と一体回転するデフケース54とデフケース54に固着したデフケースギア53とを支持軸50の外周に有する差動歯車機構6と、
直進時にサイドクラッチ軸41、センタギア40の前記駆動力を左右一対の走行装置3,3に均等に伝達する直進クラッチ81と旋回時にサイドクラッチ軸41の第三ギア40cを介して前記駆動力を旋回内側の走行装置3に伝達する旋回クラッチ82を有し、前記差動歯車機構6のデフケースギア53と常時係合しているクラッチ出力ギア78を固着したクラッチ軸70と
前記差動歯車機構6の一対のサイドギア55L,55Rからの駆動力がそれぞれ伝達される減速ギア64L,64Rを有する減速軸63L,63Rと、
該減速軸63L,63Rの駆動力がそれぞれ伝達され、左右一対の走行装置3,3を駆動する走行軸11L,11Rを備え、さらに、
カウンタ軸33の複数のギアのうちの最大径のギア(ギア34)の径方向の先端がサイドクラッチ軸41の軸方向におけるセンタギア40と第三ギア40cとの間に位置するように配置した
ことを特徴とする走行ミッション装置。
【請求項2】
エンジン駆動力を入力して変速した後、左右一対の走行装置3,3に伝達する走行ミッション装置14であって、前記走行ミッション装置14は、
エンジン駆動力を入力する入力軸27と、
該入力軸27で得られた駆動力を複数の変速段にそれぞれ変速するために互いに異なる径を有する複数のギアを備えたカウンタ軸33と、
カウンタ軸33の複数のギアのいずれかのギアに伝達された駆動力を正転方向に伝達するセンタギア40と該センタギア40と一体的に同軸上に設けられ、旋回時に利用される第三ギア40cを備えたサイドクラッチ軸41と、
該サイドクラッチ軸41の駆動力を前記センタギア40と係合可能なクラッチギア43L,43Rからそれぞれ伝達される左右一対のサイドギア55L,55Rと、該サイドギア55L,55Rとそれぞれ一体回転するベベルギア51L,51Rと、該ベベルギア51L,51Rにそれぞれ噛合するベベルギア52、52と、該ベベルギア52、52と一体回転するデフケース54とデフケース54に固着したデフケースギア53とを支持軸50の外周に有する差動歯車機構6と、
直進時にサイドクラッチ軸41、センタギア40の前記駆動力を左右一対の走行装置3,3に均等に伝達する直進クラッチ81と旋回時にサイドクラッチ軸41の第三ギア40cを介して前記駆動力を旋回内側の走行装置3に伝達する旋回クラッチ82を有し、前記差動歯車機構6のデフケースギア53と常時係合しているクラッチ出力ギア78を固着したクラッチ軸70と
前記差動歯車機構6の一対のサイドギア55L,55Rからの駆動力がそれぞれ伝達される減速ギア64L,64Rを有する減速軸63L,63Rと、
該減速軸63L,63Rの駆動力がそれぞれ伝達され、左右一対の走行装置3,3を駆動する走行軸11L,11Rを備え、さらに、
減速軸63L,63R上にそれぞれ遊嵌された減速ギア64L,64Rが対向する側である走行ミッション装置14の中央部側の減速ギア64L,64Rの端部にカラー67L,67Rをそれぞれ設け、
該カラー67L,67Rの内径部の前記中央側の径を減速ギア側の径より大とし、該カラー67L,67Rの外径部の前記中央側の径を減速ギア側の径より小とし、該カラー67L,67Rの外径部の減速ギア側の端部を減速ギア64L,64Rの基部の軸方向の幅内に収めた
ことを特徴とする走行ミッション装置。
【請求項3】
エンジン駆動力を入力して変速した後、左右一対の走行装置3,3に伝達する走行ミッション装置14であって、前記走行ミッション装置14は、
エンジン駆動力を入力する入力軸27と、
該入力軸27で得られた駆動力を複数の変速段にそれぞれ変速するために互いに異なる径を有する複数のギアを備えたカウンタ軸33と、
カウンタ軸33の複数のギアのいずれかのギアに伝達された駆動力を正転方向に伝達するセンタギア40と該センタギア40と一体的に同軸上に設けられ、旋回時に利用される第三ギア40cを備えたサイドクラッチ軸41と、
該サイドクラッチ軸41の駆動力を前記センタギア40と係合可能なクラッチギア43L,43Rからそれぞれ伝達される左右一対のサイドギア55L,55Rと、該サイドギア55L,55Rとそれぞれ一体回転するベベルギア51L,51Rと、該ベベルギア51L,51Rにそれぞれ噛合するベベルギア52、52と、該ベベルギア52、52と一体回転するデフケース54とデフケース54に固着したデフケースギア53とを支持軸50の外周に有する差動歯車機構6と、
直進時にサイドクラッチ軸41、センタギア40の前記駆動力を左右一対の走行装置3,3に均等に伝達する直進クラッチ81と旋回時にサイドクラッチ軸41の第三ギア40cを介して前記駆動力を旋回内側の走行装置3に伝達する旋回クラッチ82を有し、前記差動歯車機構6のデフケースギア53と常時係合しているクラッチ出力ギア78を固着したクラッチ軸70と
前記差動歯車機構6の一対のサイドギア55L,55Rからの駆動力がそれぞれ伝達される減速ギア64L,64Rを有する減速軸63L,63Rと、
該減速軸63L,63Rの駆動力がそれぞれ伝達され、左右一対の走行装置3,3を駆動する走行軸11L,11Rを備え、さらに、
クラッチ軸70の一方の先端部にクラッチ支持部70aを設け、該クラッチ支持部70aの先端近傍を支持する軸受け79を走行ミッション装置14を収納するケース12に設け、
クラッチ出力ギア78の前記ケース12側の端面Eとデフケースギア53の前記ケース12の左右方向の中央側の端面Fとの距離(E−F)よりクラッチ支持部70aの先端面Hと軸受け79の前記ケース12の左右方向の中央側の端面Gとの距離(H−G)を大きくしたことを特徴とする走行ミッション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−69281(P2006−69281A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252649(P2004−252649)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】