説明

走行制御装置

【課題】レーダ装置の発熱および劣化が生じることを的確に抑制する。
【解決手段】走行制御装置10は、先行車両に対する追従走行と渋滞追従走行とを制御する制御ステート決定部34と、追従走行の実行時に自車両の進行方向に向けて発信する電磁波の出力を増大させる出力増大モードを実行し、かつ出力増大モードよりも電磁波の出力を低減させる出力低減モードを所定時間間隔毎に一時的に出力増大モードから切り替えて実行し、渋滞追従走行の実行時には、出力低減モードを実行する発信部11aと、追従走行の実行時に、出力増大モードの反射波の反射レベルと出力低減モードの反射波の反射レベルとの比較結果に基づき、出力増大モードと出力低減モードとの切り替えの異常の有無を判定する切替異常判定部36とを備え、制御ステート決定部34は、切替異常判定部36の判定結果において異常が有る場合に渋滞追従動作の実行を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば渋滞時での停車を含む低速走行時から高速走行時に亘ってレーダ装置により検知した先行車両に追従して走行する際に、レーダ装置の劣化を抑制するために、例えば先行車両が存在しない場合や、先行車両までの車間距離が短くなる低速走行時などにおいて、レーダ装置の発信周期を長くすることで、レーダ装置の発熱およびレーダ素子の劣化を抑制する物体検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−122664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る物体検知装置によれば、単に、レーダ装置の発信周期を切り替えることを指示する指令信号が所定のタイミングで出力されるだけであり、例えば先行車両が存在しない場合や、先行車両までの車間距離が短くなる低速走行時などにおいて、レーダ装置の発熱および劣化が生じることを的確に抑制することが望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、レーダ装置の発熱および劣化が生じることを的確に抑制することが可能な走行制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る走行制御装置は、自車両の進行方向の予め設定された領域に向けて電磁波を発信する発信手段(例えば、実施の形態での発信部11a)と、前記電磁波が物体により反射された反射波を受信する受信手段(例えば、実施の形態での受信部11b)と、前記発信手段による発信結果および前記受信手段による受信結果に基づき、前記物体の存在を検知する物体検知手段(例えば、実施の形態での物体検出部31)と、前記物体検知手段により検知された前記物体は前記自車両が追従する先行車両であるか否かを判定する先行車両判定手段(例えば、実施の形態でのターゲット決定部33)と、目標車速および目標車間距離および自車両の走行速度に基づき、前記先行車両に対する追従走行を制御する追従走行手段(例えば、実施の形態での走行制御部50)と、前記自車両が停車しているときに、前記自車両を前記先行車両に追従して少なくとも発進させる渋滞追従走行手段(例えば、実施の形態での走行制御部50が兼ねる)とを備え、前記発信手段は、前記追従走行手段による前記追従走行の実行時には、前記電磁波の出力を増大させる出力増大モードを実行し、かつ前記出力増大モードよりも前記電磁波の出力を低減させる出力低減モードを所定時間間隔毎に一時的に前記出力増大モードから切り替えて実行することにより前記電磁波の出力を制御し、前記渋滞追従走行手段による前記渋滞追従走行の実行時には、前記出力低減モードを実行する走行制御装置であって、前記追従走行手段による前記追従走行の実行時に、前記出力増大モードでの前記反射波の反射レベルと前記出力低減モードでの前記反射波の反射レベルとを比較する反射レベル比較手段(例えば、実施の形態での反射レベル比較部35)と、前記反射レベル比較手段による比較結果に基づき、前記出力増大モードと前記出力低減モードとの切り替えの異常の有無を判定する切替異常判定手段(例えば、実施の形態での切替異常判定部36)と、前記切替異常判定手段の判定結果において前記異常が有る場合に、前記渋滞追従走行手段による渋滞追従動作の実行を禁止する禁止手段(例えば、実施の形態での走行制御部50が兼ねる)とを備える。
【0006】
さらに、本発明の第2態様に係る走行制御装置は、前記追従走行手段による追従走行の実行時に前記物体検知手段により前記物体が所定の時間以上に亘って検知されない場合には、前記発信手段または前記受信手段の異常であると判定する検知異常判定手段(例えば、実施の形態での検知異常判定部32)を備え、前記禁止手段は、前記検知異常判定手段の判定結果おいて前記発信手段または前記受信手段が異常である場合に、前記渋滞追従走行手段による渋滞追従動作の実行を禁止する。
【0007】
さらに、本発明の第3態様に係る走行制御装置は、前記物体は、少なくとも前記発信手段または前記受信手段の前方に配置された電磁波カバー(例えば、実施の形態でのレーダーカバー11c)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様に係る走行制御装置によれば、追従走行手段による追従走行の実行時、つまり出力低減モードの実行が必要とされる渋滞追従走行手段による渋滞追従走行の実行以前において、出力増大モードと出力低減モードとの切り替えの異常の有無を判定し、異常が有る場合には渋滞追従走行手段による渋滞追従走行の実行を禁止する。これにより、出力低減モードの実行が必要とされる渋滞追従走行手段による渋滞追従走行の実行時に出力増大モードが実行されてしまうことを防止することができ、例えばレーダ装置などからなる発信手段の発熱および劣化が生じることを的確に抑制することができる。
しかも、出力増大モードでの反射波の反射レベルと出力低減モードでの反射波の反射レベルとの比較結果に基づき、各モードの切り替えの異常の有無を判定することから、例えば特別の機構を備える必要無しに、演算処理のみによって判定を行なうことができ、装置構成に要する費用の増大を防止することができる。
【0009】
さらに、本発明の第2態様に係る走行制御装置によれば、所定の時間以上に亘って物体が検知されない場合に渋滞追従走行手段による渋滞追従動作の実行を禁止する。これにより、例えばレーダ装置などからなる発信手段の不必要な発熱および劣化が生じることを防止することができる。
【0010】
さらに、本発明の第3態様に係る走行制御装置によれば、先行車両などの物体が電磁波の発信領域に存在しない場合であっても、電磁波カバーからの反射波に基づき、出力増大モードと出力低減モードとの切り替えの異常の有無を的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る走行制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る走行制御装置のレーダ装置の作動モード(出力増大モードと出力低減モード)の切替の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る走行制御装置のレーダ装置の作動モード(出力増大モードと出力低減モード)に応じた送信パワーと受信パワーの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の第1変形例に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態の第1変形例に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態の第1変形例に係る走行制御装置のレーダ装置の作動モード(出力増大モードと出力低減モード)に応じた送信パワーと受信パワーの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態の第2変形例に係る走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る走行制御装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による走行制御装置10は、例えば内燃機関(図示略)の駆動力をトランスミッション(図示略)を介して駆動輪(図示略)に伝達する車両に搭載され、図1に示すように、レーダ装置11と、ヨーレートセンサ12と、車速センサ13と、処理装置14と、ブレーキスイッチ15と、アクセルスイッチ16と、キャンセルスイッチ17と、セット・リジュームスイッチ18と、車間設定スイッチ19と、スロットルアクチュエータ20と、ブレーキアクチュエータ21と、ブレーキランプ22と、表示部23と、ブザー24とを備えて構成されている。
【0013】
レーダ装置11は、発信部11aと受信部11bとを備え、自車両の外界に設定された検出対象領域を複数の角度領域に分割し、各角度領域を走査するようにして、赤外光レーザやミリ波などの電磁波の発信信号を発信部11aにより発信する。そして、各発信信号が自車両の外部の物体(例えば、他車両や構造物など)によって反射されることで生じた反射信号を受信部11bにより受信する。そして、発信信号および反射信号に係る信号を、処理装置14に出力する。
【0014】
ヨーレートセンサ12は、ヨーレートつまり車両重心の上下方向軸回りの回転角速度を検知し、この検知結果の信号を出力する。
車速センサ13は、自車両の速度(車速)を検知し、この検知結果の信号を出力する。
【0015】
処理装置14は、例えば、物体検出部31と、検知異常判定部32と、ターゲット決定部33と、制御ステート決定部34と、反射レベル比較部35と、切替異常判定部36と、目標車速決定部37と、目標車間決定部38と、スロットル制御部39と、ブレーキ液圧決定部40と、ブレーキ制御部41と、報知処理部42とを備えて構成されている。
【0016】
そして、この処理装置14には、ブレーキスイッチ15と、アクセルスイッチ16と、キャンセルスイッチ17と、セット・リジュームスイッチ18と、車間設定スイッチ19とから出力される各信号が入力されている。
なお、ブレーキスイッチ15は、運転者によるブレーキペダル(図示略)の操作状態に係る信号を出力する。アクセルスイッチ16は、運転者によるアクセルペダル(図示略)の操作状態に係る信号を出力する。キャンセルスイッチ17は、運転者の入力操作に応じて追従制御の実行停止を指示する信号を出力する。セット・リジュームスイッチ18は、運転者の入力操作に応じて自車両の発進(例えば、後述する渋滞追従走行制御の実行時の停止状態からの発進)またはセット車速(目標車速)の増減を指示する信号を出力する。車間設定スイッチ19は、運転者の入力操作に応じて追従走行制御の実行時における自車両と先行車両との間の距離に対する目標値(目標車間)を設定する信号を出力する。
【0017】
物体検出部31は、レーダ装置11から出力される信号に基づき、車両外部の物体の位置およびレーダ装置11から物体までの距離を検出する。
検知異常判定部32は、レーダ装置11による物体検出の異常、例えば自車両の走行中にレーダ装置11に付着した遮蔽物などに起因して検出感度が低下した場合などのように、連続して物体検出が不可となった状態が生じたか否かを判定し、この判定結果の信号を出力する。
【0018】
ターゲット決定部33は、自車両のヨーレートおよび車速に基づき自車両の走行軌跡(自車軌跡)を算出し、この自車軌跡に基づき、物体検出部31により検出された自車両の前方を走行する車両が、自車両が追従する先行車両であるか否かを判定し、さらに、先行車両と自車両との車間距離および相対速度などの情報を算出する。
【0019】
制御ステート決定部34は、各スイッチ15,…,18から出力される信号と、検知異常判定部32から出力される信号と、切替異常判定部36から出力される信号とに応じて、例えば追従制御の実行および停止などの走行制御、レーダ装置11の作動モード(発信部11aの出力を増大させる出力増大モードと、発信部11aの出力を低減させる出力低減モードと)の切替制御などの各種制御を行なう。
【0020】
なお、制御ステート決定部34による走行制御の状態は、例えば、走行制御が実行されていないオフ状態Aと、走行制御が実行されている追従状態Bと、先行車両の停止に応じて自車両が停止状態を保持する停止保持状態Cとの3つの状態とされている。
【0021】
例えばオフ状態Aにおいて、ターゲット決定部33により先行車両が検知され、セット・リジュームスイッチ18が運転者により操作されると、制御ステート決定部34は、走行制御の状態をオフ状態Aから追従状態Bへと遷移させる。
また、例えば追従状態Bにおいて、キャンセルスイッチ17が運転者により操作される、あるいはブレーキペダルが運転者により踏み込まれると、制御ステート決定部34は、走行制御の状態を追従状態Bからオフ状態Aへと遷移させる。
【0022】
また、例えば追従状態Bにおいて、先行車両が停止中であり、かつ自車両が先行車両の後方の所定の位置に停止すると、制御ステート決定部34は、走行制御の状態を追従状態Bから停止保持状態Cへと遷移させる。
また、例えば停止保持状態Cにおいて、セット・リジュームスイッチ18が運転者により操作される、あるいはアクセルペダルが運転者により踏み込まれると、制御ステート決定部34は、走行制御の状態を停止保持状態Cから追従状態Bへと遷移させる。
【0023】
また、例えばオフ状態Aにおいて、先行車両が停止中であり、かつ自車両が先行車両の後方の所定の位置に停止しているときに、セット・リジュームスイッチ18が運転者により操作されると、制御ステート決定部34は、走行制御の状態をオフ状態Aから停止保持状態Cへと遷移させる。
また、例えば停止保持状態Cにおいて、キャンセルスイッチ17が運転者により操作される、あるいはブレーキペダルが運転者により踏み込まれると、制御ステート決定部34は、走行制御の状態を停止保持状態Cからオフ状態Aへと遷移させる。
【0024】
なお、追従状態Bは、例えば自車両および先行車両の速度などに応じて切り替えられる2つの状態、つまり追従走行制御が実行される状態と渋滞追従走行制御が実行される状態とされている。
追従走行制御は、自車両および先行車両が、自車両を先行車両に追従して停止あるいは発進させる必要が生じない速度で走行している時に、自車両と先行車両との間の車間距離を自車両の速度(車速)に応じて一定に保ちながら自車両を先行車両に追従して走行させる制御である。
渋滞追従走行制御は、自車両および先行車両が、自車両を先行車両に追従して停止あるいは発進させる必要が生じる速度で走行している時に、自車両を先行車両に追従して走行および停止および発進させる制御である。
このため、上述した追従状態Bと停止保持状態Cとの間の状態遷移は、渋滞追従走行制御の実行時に発生する。
【0025】
そして、制御ステート決定部34は、例えば、追従走行の実行時には、電磁波の出力を増大させる出力増大モードを発信部11aにより実行させ、かつ出力増大モードよりも電磁波の出力を低減させる出力低減モードを所定時間(例えば、所定値#Ta=1分など)間隔毎に一時的に出力増大モードから切り替えて発信部11aにより実行させる。
また、制御ステート決定部34は、例えば、渋滞追従走行の実行時には、出力低減モードを発信部11aにより実行させる。
そして、制御ステート決定部34は、後述する切替異常判定部36から出力増大モードと出力低減モードとの切替動作に異常が生じていることを示す信号が出力されている場合には、渋滞追従動作の実行を禁止する。
また、制御ステート決定部34は、検知異常判定部32からレーダ装置11による物体検出の異常が生じていることを示す信号が出力されている場合には、渋滞追従動作の実行を禁止する。
【0026】
反射レベル比較部35は、後述する出力切替FS(フェールセーフ)処理において、レーダ装置11の出力増大モードで受信部11bにより受信された反射信号の受信レベルと、出力低減モードで受信部11bにより受信された反射信号の受信レベルとを比較し、この比較結果(例えば、差分値など)の信号を出力する。
切替異常判定部36は、反射レベル比較部35から出力された比較結果の信号に基づき、レーダ装置11の出力切替動作、つまり出力増大モードと出力低減モードとの切替動作に異常が生じているか否かを判定し、この判定結果の信号を出力する。
【0027】
目標車速決定部37は、制御ステート決定部34による制御状態と、目標車間決定部38により決定された目標車間距離とに基づいて目標車速を算出し、自車両が目標車速で走行するようにして、スロットル制御部39とブレーキ液圧決定部40とを制御する指令信号を出力する。
目標車間決定部38は、車間設定スイッチ19から出力された信号と制御ステート決定部34による制御状態と、自車両の速度とに基づき、自車両と先行車両との間の車間距離の目標値(目標車間距離)を決定する。
ブレーキ液圧決定部40は、目標車速決定部37により決定された目標車速に応じたブレーキ液圧の目標液圧を決定する。
【0028】
スロットル制御部39は、目標車速決定部37により決定された目標車速に応じてスロットルアクチュエータ20のスロットル開度を制御する。
ブレーキ制御部41は、ブレーキ液圧決定部40により決定された目標液圧に応じてブレーキアクチュエータ21の動作を制御する。
なお、ブレーキランプ22は、ブレーキ液圧決定部40により決定された目標液圧に基づいて点灯制御される。
【0029】
なお、自車両の先行車両に対する追従走行および渋滞追従走行での走行制御は、例えば、ターゲット決定部33と、制御ステート決定部34と、目標車速決定部37と、目標車間決定部38と、スロットル制御部39と、ブレーキ液圧決定部40と、ブレーキ制御部41とを備えて構成される走行制御部50により実行される。
報知処理部42は、制御ステート決定部34による制御状態に応じて表示部23およびブザー24の動作を制御し、例えば制御ステート決定部34による制御状態を運転者に認知可能に報知する。
【0030】
本実施の形態による走行制御装置10は上記構成を備えており、次に、この走行制御装置10の動作について説明する。
【0031】
先ず、例えば図2に示すステップS01においては、自車両のヨーレートおよび車速などの車両状態を取得する。
次に、ステップS02においては、取得した車両状態に基づき、自車両が走行中であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS06に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進む。
そして、ステップS03においては、レーダ装置11の作動モードを発信部11aから発信される電磁波の出力(パワー)を増大させる出力増大モードとする。
そして、ステップS04においては、第1タイマーTaの計数を開始する。
次に、ステップS05においては、後述する出力切替FS(フェールセーフ)処理を実行し、リターンに進む。
【0032】
また、ステップS06においては、レーダ装置11の作動モードの切替が異常であることを示す出力切替FS(フェールセーフ)フラグのフラグ値に「1」が設定されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述ステップS09に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
次に、ステップS07においては、レーダ装置11の作動モードの切替が異常である場合の制御指令である出力切替FS(フェールセーフ)信号を出力する。
次に、ステップS08においては、レーダ装置11の作動を停止し、これに伴い、自車両の停止状態での渋滞追従走行制御の実行が停止される。そして、表示部23およびブザー24により警報を出力し、リターンに進む。
【0033】
また、ステップS09においては、所定時間#Tb(例えば、10分など)に亘ってレーダ装置11による物体検出が連続して不可であることを示す無検知FS(フェールセーフ)フラグのフラグ値に「1」が設定されているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS10に進み、このステップS10においては、レーダ装置11による物体検出の異常、例えば自車両の走行中にレーダ装置11に付着した遮蔽物などに起因して検出感度が低下した場合の制御指令である感度低下FS(フェールセーフ)信号を出力し、ステップS08に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、例えば図3に示す車速がゼロである時刻t7から時刻t8の期間のように、レーダ装置11の作動モードを発信部11aから発信される電磁波の出力(パワー)を低減させる出力低減モードとし、リターンに進む。
【0034】
以下に、上述したステップS05での出力切替FS(フェールセーフ)処理について説明する。
先ず、例えば図4に示すステップS21においては、自車両が追従する先行車両を検知したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS22に進む。
次に、ステップS22においては、第2タイマーTbの計数値を初期化する。
次に、ステップS23においては、無検知FS(フェールセーフ)フラグのフラグ値に「0」を設定する。
次に、ステップS24においては、第1タイマーTaの計数値が所定値#Ta(例えば、1分など)以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS25に進む。
次に、ステップS25においては、後述する出力切替FS(フェールセーフ)判定処理を実行する。
次に、ステップS26においては、第1タイマーTaの計数値を初期化し、リターンに進む。
【0035】
また、ステップS27においては、第2タイマーTbの計数を開始する。
次に、ステップS28においては、第2タイマーTbの計数値が所定値#Tb(例えば、10分など)未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS29に進み、このステップS29においては、無検知FS(フェールセーフ)フラグのフラグ値に「1」を設定して、リターンに進む。
【0036】
以下に、上述したステップS25での出力切替FS(フェールセーフ)判定処理について説明する。
先ず、例えば図5に示すステップS31においては、例えば図3に示す各時刻t1,…,t6,t9,…,t12のように、レーダ装置11の作動モードを発信部11aの出力を低減させる出力低減モードとする。
次に、ステップS32においては、自車両が追従する先行車両を検知したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS36に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS33に進む。
次に、ステップS33においては、上述したステップS21の「YES」側において検知した先行車両と同一の先行車両を検知したかを判定する。
次に、ステップS34においては、上述したステップS21の「YES」側において検知した先行車両と同一の先行車両が、ステップS32の「YES」側において検知されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS35に進む。
【0037】
次に、ステップS35においては、上述したステップS03において設定された出力増大モードで受信部11bにより受信された反射信号の受信レベル(受信パワー)と、上述したステップS31において設定された出力低減モードで受信部11bにより受信された反射信号の受信レベル(受信パワー)とを比較し、差分値(受信レベル差)が第1所定差#ΔP1(例えば、3dBなど)以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合、つまり、例えば図6に示すように出力増大モードと出力低減モードとの切替動作が正常であって、受信レベル差(図6での6dB)が第1所定差#ΔP1(例えば、3dBなど)以上である場合には、ステップS36に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS37に進む。
次に、ステップS36に出力切替FS(フェールセーフ)フラグのフラグ値に「0」を設定し、出力切替FS(フェールセーフ)カウンタの計数値を初期化し、リターンに進む。
【0038】
また、ステップS37においては、出力増大モードと出力低減モードとの切替動作が異常であると判断し、出力切替FS(フェールセーフ)カウンタをカウントアップする。
次に、ステップS38においては、出力切替FS(フェールセーフ)カウンタの計数値が所定値N(例えば、3など)未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS39に進む。
次に、ステップS39においては、出力切替FS(フェールセーフ)フラグのフラグ値に「1」を設定し、リターンに進む。
【0039】
上述したように、本実施の形態による走行制御装置10によれば、追従走行の実行時、つまり出力低減モードの実行が必要とされる渋滞追従走行の実行以前において、出力増大モードと出力低減モードとの切り替えの異常の有無を判定し、異常が有る場合には渋滞追従走行の実行を禁止する。これにより、出力低減モードの実行が必要とされる渋滞追従走行の実行時に出力増大モードが実行されてしまうことを防止することができ、例えばレーダ装置11の発信部11aの発熱および劣化が生じることを的確に抑制することができる。
しかも、出力増大モードでの反射信号の受信レベルと出力低減モードでの反射信号の受信レベルとの比較結果に基づき、各モードの切り替えの異常の有無を判定することから、例えばレーダ装置11の出力を直接検知して、モード切替の異常を検知する場合などに比べて、特別の機構を備える必要無しに、演算処理のみによって判定を行なうことができ、装置構成に要する費用の増大を防止することができる。
しかも、各モードの切り替えの異常の有無を車両の走行中に検知し、この検知結果に応じて、渋滞追従走行での停車時のレーダ装置11の作動を制御することから、停車時に出力増大モードが設定されてしまうことを的確に防止することができる。
【0040】
さらに、所定の時間(所定値#Tb)以上に亘って物体が検知されない場合には、各モードの切替異常の有無を精度良く判定することが困難であることから、渋滞追従走行の実行を禁止する。これにより、例えばレーダ装置11の発信部11aの不必要な発熱および劣化が生じることを防止することができる。
【0041】
なお、上述した実施の形態では、自車両の走行中であれば、各モードの切替異常が検知されたとしても、レーダ装置11の作動は継続される。
【0042】
なお、上述した実施の形態においては、先行車両で反射された反射信号の受信レベルに基づき、各モードの切替異常の有無を判定したが、これに限定されず、レーダ装置11の前面に設けられ、発信部11aから発信される電磁波の発信信号に対して所定の透過率を有するレーダーカバー11cで反射された反射信号の受信レベルに基づき、各モードの切替異常の有無を判定してもよい。
この上述した実施の形態の第1変形例では、例えば図7,8に示すように、上述した実施の形態でのステップS33,34の処理を省略し、上述した実施の形態でのステップS21,25,32,35の処理の代わりに、ステップS41,45,52,55の処理を実行する。
【0043】
例えば、図7に示すステップS41においては、レーダーカバー11cからの反射信号が受信部11bにより受信されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS27に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS22に進む。
また、例えば図7に示すステップS45においては、出力切替FS(フェールセーフ)判定処理(レーダーカバー)を実行する。
【0044】
また、例えば図8に示すステップS52においては、レーダーカバー11cからの反射信号が受信部11bにより受信されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS36に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS55に進む。
次に、ステップS55においては、上述したステップS03において設定された出力増大モードで受信部11bにより受信された反射信号の受信レベル(受信パワー)と、上述したステップS31において設定された出力低減モードで受信部11bにより受信された反射信号の受信レベル(受信パワー)とを比較し、差分値(受信レベル差)が第2所定差#ΔP2(例えば、1dBなど)以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合、つまり、例えば図9に示すように出力増大モードと出力低減モードとの切替動作が正常であって、受信レベル差(図9での2dB)が第2所定差#ΔP2(例えば、1dBなど)以上である場合には、ステップS36に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS37に進む。
【0045】
この第1変形例によれば、先行車両などの物体がレーダ装置11の電磁波の発信領域に存在しない場合であっても、レーダーカバー11cからの反射波に基づき、出力増大モードと出力低減モードとの切替異常の有無を的確に判定することができる。
【0046】
なお、上述した実施の形態においては、先行車両で反射された反射信号の受信レベルに基づき、各モードの切替異常の有無を判定したが、これに限定されず、さらに、先行車両などの物体がレーダ装置11の電磁波の発信領域に存在しない場合に、レーダーカバー11cで反射された反射信号の受信レベルに基づき、各モードの切替異常の有無を判定してもよい。
この上述した実施の形態の第2変形例では、例えば図10に示すように、上述した実施の形態でのステップS29の処理の代わりに、上述したステップS45の処理を実行する。
この第2変形例によれば、より一層、的確に各モードの切替異常の有無を判定することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 走行制御装置
11a 発信部(発信手段)
11b 受信部(受信手段)
11c レーダーカバー(電磁波カバー)
31 物体検出部(物体検知手段)
32 検知異常判定部(検知異常判定手段)
33 ターゲット決定部(先行車両判定手段)
35 反射レベル比較部(反射レベル比較手段)
36 切替異常判定部(切替異常判定手段)
50 走行制御部(追従走行手段、渋滞追従走行手段、禁止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向の予め設定された領域に向けて電磁波を発信する発信手段と、
前記電磁波が物体により反射された反射波を受信する受信手段と、
前記発信手段による発信結果および前記受信手段による受信結果に基づき、前記物体の存在を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段により検知された前記物体は前記自車両が追従する先行車両であるか否かを判定する先行車両判定手段と、
目標車速および目標車間距離および自車両の走行速度に基づき、前記先行車両に対する追従走行を制御する追従走行手段と、
前記自車両が停車しているときに、前記自車両を前記先行車両に追従して少なくとも発進させる渋滞追従走行手段とを備え、
前記発信手段は、
前記追従走行手段による前記追従走行の実行時には、前記電磁波の出力を増大させる出力増大モードを実行し、かつ前記出力増大モードよりも前記電磁波の出力を低減させる出力低減モードを所定時間間隔毎に一時的に前記出力増大モードから切り替えて実行することにより前記電磁波の出力を制御し、
前記渋滞追従走行手段による前記渋滞追従走行の実行時には、前記出力低減モードを実行する走行制御装置であって、
前記追従走行手段による前記追従走行の実行時に、前記出力増大モードでの前記反射波の反射レベルと前記出力低減モードでの前記反射波の反射レベルとを比較する反射レベル比較手段と、
前記反射レベル比較手段による比較結果に基づき、前記出力増大モードと前記出力低減モードとの切り替えの異常の有無を判定する切替異常判定手段と、
前記切替異常判定手段の判定結果において前記異常が有る場合に、前記渋滞追従走行手段による渋滞追従動作の実行を禁止する禁止手段と
を備えることを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記追従走行手段による追従走行の実行時に前記物体検知手段により前記物体が所定の時間以上に亘って検知されない場合には、前記発信手段または前記受信手段の異常であると判定する検知異常判定手段を備え、
前記禁止手段は、前記検知異常判定手段の判定結果おいて前記発信手段または前記受信手段が異常である場合に、前記渋滞追従走行手段による渋滞追従動作の実行を禁止することを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記物体は、少なくとも前記発信手段または前記受信手段の前方に配置された電磁波カバーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−51523(P2011−51523A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203688(P2009−203688)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】