走行支援装置
【課題】車両の後退時において、障害物と車両との距離が至近距離となった場合でも、より精緻に車両の走行を制御することが可能な走行支援装置を提供する。
【解決手段】走行支援装置10は、車両11後方の障害物Oaを検知するソナー12を有し、後退時に障害物Oaとの接触を防止するように車両11の走行を制御するPCS ECU20を備える。PCS ECU20は、障害物Oaがソナー12により検知不可能な範囲に接近したときは、ソナー12により障害物Oaを検知可能であった位置からの車両11の走行距離に基づいて推定される障害物Oaとの距離に基づいて車両11の走行を制御する。障害物Oaが接近し過ぎてソナー12により検知不可能な範囲に入ってしまい、障害物Oaをロストしてしまった状況でも、障害物Oaとの距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物Oaとの接触を防止することができる。
【解決手段】走行支援装置10は、車両11後方の障害物Oaを検知するソナー12を有し、後退時に障害物Oaとの接触を防止するように車両11の走行を制御するPCS ECU20を備える。PCS ECU20は、障害物Oaがソナー12により検知不可能な範囲に接近したときは、ソナー12により障害物Oaを検知可能であった位置からの車両11の走行距離に基づいて推定される障害物Oaとの距離に基づいて車両11の走行を制御する。障害物Oaが接近し過ぎてソナー12により検知不可能な範囲に入ってしまい、障害物Oaをロストしてしまった状況でも、障害物Oaとの距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物Oaとの接触を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置に関し、特に車両の後退時に障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する装置が提案されている。例えば、特許文献1には、ドライバーが制動操作を行なうつもりで誤って加速操作を行なってしまったような場合であっても安全性を確保することができるようにした装置が提案されている。この装置では、車両の前進時又は後退時に進行方向に存在する障害物と車両との距離および相対速度を検出する前方超音波センサ及び後方超音波センサと、車両のドライバーによる加速要求量を検出する手段と、前方超音波センサ及び後方超音波センサにより検出された車両と障害物との距離および相対速度に基づいて車両と障害物との衝突可能性の有無を判定する衝突可能性判定部と、衝突可能性判定部により衝突可能性が有ると判定された場合に、検出された加速要求をドライバーによる制動要求とみなして車両を制動する手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の車速が比較的に低速となる後退時には、検知対象とすべき障害物と車両との距離が至近距離となる場合があり、より精緻に車両の走行を制御することが求められている。
【0005】
本発明は、このような実情を考慮してなされたものであり、その目的は、車両の後退時において、障害物と車両との距離が至近距離となった場合でも、より精緻に車両の走行を制御することが可能な走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の後方の障害物を検知する後方センサを有し、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する後退接触防止手段を備え、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な範囲に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御する走行支援装置である。
【0007】
この構成によれば、車両の後方の障害物を検知する後方センサを有し、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する後退接触防止手段を備えるため、後退時に障害物と車両との接触を防止することが可能となる。また、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な範囲に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御する。このため、障害物が接近し過ぎて後方センサにより検知不可能な範囲に入ってしまい、障害物をロストしてしまった状況でも、障害物と車両との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物と車両との接触を防止する制御を行なうことができる。
【0008】
この場合、後方センサはソナーであることが好適である。
【0009】
この構成によれば、後退接触防止手段は後方センサとしてソナーを有するため、比較的に低速で走行する後退時には、近距離の広い範囲に存在する人間等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0010】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な距離に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御することが好適である。
【0011】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な距離に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御する。車両に設けられたソナー等のセンサは距離が近過ぎると障害物を検知不可能となり、障害物をロストしてしまうことがある。このため、この構成によれば、障害物が接近し過ぎて後方センサにより検知不可能な距離に入ってしまい、障害物をロストしてしまった状況でも、障害物と車両との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物と車両との接触を防止する制御を行なうことができる。
【0012】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくすることが好適である。
【0013】
この構成によれば、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくする。このため、後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられた後に、車両のドライバーがさらに障害物に接近したい等の理由で車両を加速させたいような状況に対応することができる。また、いつまでも後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられることにより、車両のドライバーが走行支援装置のシステムを過信することを防止することができる。
【0014】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物が車両に接近したときは、障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくすることが好適である。
【0015】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物が車両に接近したときは、障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくする。このため、車両に接近し接触の可能性が高い障害物に対して走行制御を行ない、接触を防止することができる。また、後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられた後に、車両のドライバーがさらに障害物に接近したい等の理由で車両を加速させたいような状況に対応することができる。また、いつまでも後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられることにより、車両のドライバーが走行支援装置のシステムを過信することを防止することができる。
【0016】
また、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は走行制御を中止することが好適である。
【0017】
この構成によれば、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は走行制御を中止する。このため、条件を適宜設定することにより、ドライバーが車両を加速させたい状況に対応でき、ドライバーのシステムへの過信を防止することができる。
【0018】
また、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に走行制御の操作量を徐々に小さくしつつ走行制御を中止することが好適である。
【0019】
この構成によれば、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に走行制御の操作量を徐々に小さくしつつ走行制御を中止する。このため、走行制御の中止時にドライバーがアクセルペダルを踏み込んでいたときに、車両が急発進及び急加速をすることを防止することができる。
【0020】
また、後退接触防止手段は、走行制御を行なっているときに車両のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて走行制御の操作量を小さくすることが好適である。
【0021】
この構成によれば、後退接触防止手段は、走行制御を行なっているときに車両のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて走行制御の操作量を小さくする。このため、ドライバーが後方に障害物がある状況を理解した上で車両を加速させたいような状況や、上り勾配の後退時や操舵角が極めて大きいときのように走行制御により車両が停止しそうな状況にドライバーのアクセルペダル操作により対応することができる。
【0022】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された第1の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後に、後方センサにより第2の障害物が検知されたときは、第2の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なうことが好適である。
【0023】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された第1の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後に、後方センサにより第2の障害物が検知されたときは、第2の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なう。このため、第1の障害物に対する走行制御の操作量が小さくされているときでも、新たに検知された第2の障害物に対する走行制御が行なわれ、車両のドライバーがその存在に気付いていないか、走行支援装置のシステムが走行制御をすることを望んでいる場合に、第2の障害物と車両との接触を防止することができる。
【0024】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後は、障害物についての走行制御を行なわないことが好適である。
【0025】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後は、障害物についての走行制御を行なわない。このため、一度走行制御が行なわれた障害物に対して車両のドライバーがさらに後退したいような状況に対応することができる。
【0026】
また、車両の前方の障害物を検知する前方センサを有し、車両の前進時に前方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する前進接触防止手段をさらに備え、前進接触防止手段の前方センサは、後退接触防止手段の後方センサとは異なる種類のセンサであり、後方センサよりも車両から長距離に位置する障害物を検知することが可能であることが好適である。
【0027】
この構成によれば、車両の前方の障害物を検知する前方センサを有し、車両の前進時に前方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する前進接触防止手段をさらに備えるため、前進時及び後退時の両方で障害物と車両との接触を防止することが可能となる。また、前進接触防止手段の前方センサは、後退接触防止手段の後方センサとは異なる種類のセンサであり、後方センサよりも車両から長距離に位置する障害物を検知することが可能であるため、後退時の比較的に低速な速度域と、前進時の比較的に高速な速度域とに応じて、検知対象とすべき障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0028】
この場合、車両から等距離において、後方センサの検知可能な範囲は前方センサの検知可能な範囲以上であることが好適である。
【0029】
この構成によれば、車両から等距離において、後方センサの検知可能な範囲は前方センサの検知可能な範囲以上である。このため、比較的に高速で走行する前進時には、指向性を高めて遠距離の狭い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき他車両等の障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。また、比較的に低速で走行する後退時には、指向性を低めて近距離の広い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき人間等の障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0030】
また、車両の前方の障害物を検知する前方センサとしてレーダ、カメラ及びレーザレーダのいずれかを有することが好適である。
【0031】
この構成によれば、前進接触防止手段は前方センサとしてレーダ、カメラ及びレーザレーダのいずれかを有するため、比較的に高速で走行する前進時には、遠距離の狭い範囲に存在する他車両等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の走行支援装置によれば、障害物が接近し過ぎて後方センサにより検知不可能な範囲に入ってしまい、障害物をロストしてしまった状況でも、障害物と車両との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物と車両との接触を防止する制御を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る走行支援装置の動作の概略を示すフローチャートである。
【図3】車両と障害物との距離に対する車両の速度及び目標減速度の関係を示す図である。
【図4】図2の障害物を検出する際の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図5】(a)は障害物をソナーにより検知可能な状態を示す側面図であり、(b)は障害物に接近し過ぎて障害物をソナーにより検知不可能な状態を示す側面図である。
【図6】図2の車両が停止した後の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれていない場合の車速とブレーキペダル操作とを示すグラフである。
【図8】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれている場合の車速とブレーキペダル操作とを示すグラフである。
【図9】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれておらず、時間Tの間に障害物をロストしたか新たな障害物を検知した場合の車速とブレーキペダル操作とを示すグラフである。
【図10】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれており、時間Tの間に障害物をロストしたか新たな障害物を検知した場合の車速とブレーキペダル操とを示すグラフである。
【図11】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際の車速と目標Gとシステム状態とを示すグラフである。
【図12】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際の車速に対する目標Gを示すグラフである。
【図13】図2の障害物を検出した後の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図14】後退時に複数の障害物を検知した状況を示す平面図である。
【図15】図2の減速制御後及び図6の後退を再開した後の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図16】登坂路や路面抵抗が大きい道路を後退する際のドライバーのアクセルペダル操作と車両の速度とを示すグラフである。
【図17】下り勾配を後退する状況を示す側面図である。
【図18】障害物として輪止めとその手前に乗り越えるべき路上物が存在する場合の車速、アクセルペダル踏量及び加速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る走行支援装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の走行支援装置10は、ソナー12、レーダ14、車輪速センサ15、シフトセンサ16、ブレーキペダルセンサ17、アクセルペダルセンサ18、傾斜センサ19、PCS ECU20、メモリ22、エンジンECU24、ブレーキECU26及び表示装置28を車両11内に備えている。本実施形態の走行支援装置10は、車両11の前進時や、駐車時に限らず車両11の後退時において、障害物との接触を避けるように車両11の走行を制御する。つまり、本実施形態の走行支援装置10は、駐車時に限らず、例えば車両11を後退させつつ、ドライバーが車両11で希望の場所に移動したいような場合に、途中の障害物との接触を回避するために用いられる。なお、本実施形態の車両11は、一般的な自動車と同様にトランスミッションの変速比は前進時の方が後退時よりも低い。つまり、車両11は前進時の方が後退時よりも高速で走行する。
【0035】
ソナー12は、車両の後退時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を超音波により検出し、当該障害物と車両との距離を検出する。車両の後退時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を検出する装置としては、補助的に車両から遠距離に位置する障害物を検出可能なレーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ及びレーザレーダ(ライダ)でも良い。
【0036】
レーダ14は、車両の前進時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を電波により検出し、当該障害物と車両との距離を検出する。車両の前進時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を検出する装置としては、単眼カメラ、ステレオカメラ及びレーザレーダでも良い。車両11の前方の障害物を検知するレーダ14は、車両11の後方の障害物を検知するソナー12よりも車両11から遠距離に位置する障害物を検知可能である。また、車両11から等距離において、車両11の前方の障害物を検知するレーダ14の検知範囲は、車両11の後方の障害物を検知するソナー12の検知範囲以下と狭く、より高い指向性を有するものである。車両の前進時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を検出する装置としては、補助的に車両から近距離に位置する人間等の障害物を検出可能なソナーを備えていても良い。
【0037】
車輪速センサ15は、車両11の車輪の回転角度を検出し、当該回転角度と車輪の直径から車両11の移動距離を算出するためのものである。また、車輪速センサ15は単位時間当りの車両11の移動距離から車両11の車速を検出するためのものである。車輪速センサ15は、車輪のハブベアリング等に取り付けられS極とN極とが交互に配置された磁気ロータが回転すると磁界の変化が生まれ、それをステアリングナックル等に取り付けられたセンサで検出して車速パルスとして出力するものである。例えば、磁気ロータの極の総数をN、車輪直径をR、単位時間内に検出されたパルス数をPnとすると、単位時間当りの車両移動距離Dpulseは、Dpulse=Pn・πR/Nで表される。
【0038】
シフトセンサ16は、車両11のトランスミッションのシフトが後退「R」の位置にあるのか、前進「D」の位置にあるのかを検出する。ブレーキペダルセンサ17は、ドライバーの操作により車両11のブレーキペダルが踏まれているか否かやブレーキペダルの踏量を検出する。アクセルペダルセンサ18は、ドライバーの操作により車両11のアクセルペダルが踏まれているか否かやアクセルペダルの踏量を検出する。傾斜センサ19は、車両11が登坂路を前進中あるいは後退中であるか、下り勾配を前進中あるいは後退中であるのかを検出する。
【0039】
PCS ECU(Pre-Crash Safety Electronic Control Unit)20は、車輪速センサ15、シフトセンサ16、ブレーキペダルセンサ17、アクセルペダルセンサ18及び傾斜センサ19により検出された情報に基づいて、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止するようにエンジンECU24及びブレーキECU26を動作させて車両11の走行を制御し、表示装置28に各種の情報を表示させる。
【0040】
メモリ22は、レーダ14及びソナー12により検知された障害物それぞれについて、車両11との距離や、後述する減速制御及び制動制御を既に行ったか否かの情報を記憶する。
【0041】
エンジンECU24は、PCS ECU20からの指令信号により車両11のアクセル開度を制御し、車両11のエンジンの出力を制限することにより、車両11の前進時及び後退時にドライバーの操作によらずにレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。なお、車両11が電動機の出力により走行する電気自動車である場合は、エンジンECU24は、電動機の出力を制限する。あるいは、エンジンECU24は、トランスミッションの減速比を変更することにより、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。
【0042】
ブレーキECU26は、PCS ECU20からの指令信号により車両11の減速度を制御することにより、車両11の前進時及び後退時にドライバーの操作によらずにレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。なお、車両11が電動機の出力により走行する電気自動車である場合は、ブレーキECU26は、回生による制動により、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。
【0043】
表示装置28は、ディスプレイ、警告灯、スピーカ及びブザー等から構成される。表示装置28は、PCS ECU20からの指令信号により、ドライバーに各種の情報を表示することにより、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。あるいは表示装置28は、車両11のシートベルトの張力を高めることにより、車両11のドライバーにレーダ14及びソナー12により検知された障害物に対して警告を与え、且つ当該障害物と車両11との接触の際の影響を低減する。なお、本実施形態では、PCS ECU20は、エンジンECU24及びブレーキECU26により車両11の加速度や減速度を制御することなく、表示装置28からドライバーにレーダ14及びソナー12により検知された障害物に対して警告のみを与えるものでも良い。
【0044】
以下、本実施形態の走行支援装置10の動作について説明する。まず、車両11の後退時における本実施形態の走行支援装置10の動作の概略について説明する。図2に示すように、走行支援装置10のPCS ECU20は、シフトセンサ16により、車両11のトランスミッションのシフト位置が後退「R」の位置にあることを検出する(S11)。図2及び図3に示すように、PCS ECU20は、ソナー12により車両11後方に存在する車両11との接触の可能性がある障害物Oa又は障害物(輪止め)Obが検知されたか否かを判定する(S12)。
【0045】
障害物Oa等が検知された場合は(S12)、PCS ECU20は、ソナー12により得られた障害物Oa等と車両11との距離LXが、所定の停止目標距離LD以下となっているか否かについて判定する(S13)。停止目標距離LDは、障害物Oa等と車両11とが接触せずに安全に近接可能な距離として設定される。距離LXが、所定の停止目標距離LD以下となっているときは(S14)、PCS ECU20はブレーキECU26を動作させて車両11に大きな減速度を与え、車両11を停止させる(S14)。以下、この動作を制動制御又は停止制御と呼ぶ。
【0046】
距離LXが所定の停止目標距離LD以下とはなっていないが(S14)、距離LXが停止目標距離LDよりも長い制動対象距離LT未満となっているときは(S15)、PCS ECU20はブレーキECU26を動作させて車両11に停止制御よりも小さな減速度を与え、車両11を障害物Oaから停止目標距離LDの位置で停止させる(S16)。制動対象距離LTは、車両11を障害物Oaから停止目標距離LDの位置で比較的に小さな減速度により停止させることが可能な距離として設定される。以下、この動作を減速制御と呼ぶ。
【0047】
以下、障害物を検出する動作の詳細について説明する。図2のS12において、図4に示すように、ソナー12により障害物Oa等を検出し続けているときは(S121)、PCS ECU20は、ソナー12により検出した距離を距離LXとして(S122)、上述した処理を続行する。障害物Obのように地上からの高さが低い障害物については、図5(a)に示すように車両11に搭載されたソナー12の検知範囲AD内に障害物Obが存在するときは検知可能である。しかし、図5(b)に示すように後退する車両11が障害物Obに接近し過ぎると、ソナー12の検知範囲ADから障害物Obが外れてしまい、障害物Obをロストすることがある。
【0048】
そこで、本実施形態では、ソナー12により検出していた障害物Ob等を検出していないときであって(S121)、それまでソナー12により検出していたとき、すなわち、近距離で障害物Ob等をロストしたときは(S123)、PCS ECU20は、車輪速センサ15により検出された車両11の移動距離により推定される障害物Ob等と車両11との距離Lxを真値として更新し(S124)、上述した処理を続行する。
【0049】
すなわち、ソナー12が外挿許可距離LP(LD<LP<LT)以下で障害物Ob等をロストした(検出していたものを検出しなくなった)場合に、PCS ECU20は、車両11の車輪直径と車輪速センサ15により検出された車輪の単位時間当りの回転角度から車両11の移動距離を算出し、ロスト直前の障害物Ob等までの距離LXから当該移動距離を減算することにより、障害物Ob等までの距離LXの真値を算出する。なお、外挿許可距離LPの値は、ソナー12の最小検出距離Dminに応じて設定される。例えば、LP=Dmin+ΔD(ΔD>0)とする。
【0050】
一般にソナー12や画像カメラ、レーダ、ライダ等のセンサは上述したように極近い距離では障害物Ob等を検出することができず、ロストしてしまうことがある。本実施形態では、ソナー12が最小検知距離Dminで障害物Ob等をロストした場合にも、車両11の移動距離に基づいて障害物Obまでの距離LXを推定し、当該距離LXに基づいて制御を継続するため、ソナー12が障害物Obを検出できない距離以下での制御が可能となる。
【0051】
以下、図2における停止制御(S14)及び減速制御(S16)を行なった後の処理について説明する。図6に示すように、停止制御(S14)及び減速制御(S16)後に車両11が停止したときは(S201)、PCS ECU20は、ブレーキECU26を駆動させて停止状態を保持する(S202)。停止状態は、T秒間保持される(S203)。
【0052】
T秒間において、ソナー12により検知していた障害物Oa等をロストしたとき、又はソナー12により新規の障害物を発見したときは(S204)、さらに安全性を高めるため、PCS ECU20は、停止状態をさらにTADD秒間だけ続行する(S205)。つまり、車両11の停止中に距離LX<制動対象距離LT以内に新たな障害物を検出した場合は、ドライバーに急な加速をされると、距離の余裕がないため、新たな障害物に対して十分な減速ができない可能性がある。そこで、車両11の停止中に距離LX<制動対象距離LT以内に新たな障害物を検出した場合は、停止状態をさらにTADD秒間だけ続行することで、安全性を高める。
【0053】
ただし、この場合の停止状態の強制的な続行は後述するTB秒以外は、T秒間に加えて所定のTADD秒間を最大限度とし、新たな障害物がソナー12により検知され続けていたとしても、停止状態は解除される。ただし、ドライバーの操作によりブレーキペダルが踏まれている間は停止状態が維持される。これにより、ドライバーが例えば駐車スペースが狭い等の理由で、意図的に停止目標距離LDよりもさらに障害物Oa等に接近したいような場合に対応することができる。また、停止状態を保持し続けないことにより、ドライバーの走行支援装置10のシステムへの過信を防止することができる。
【0054】
PCS ECU20は、シフトセンサ16及びブレーキペダルセンサ17の検出値により、ドライバーがトランスミッションのシフト位置を駐車「P」に入れていない後に、ブレーキペダルを踏んでいない状態であるか否かを判定する(S206)。ドライバーがトランスミッションのシフト位置を駐車「P」に入れていない後に、ブレーキペダルを踏んでいない状態であるときは、ドライバーは障害物Oa等に十分に注意を払っていないことが予想される。
【0055】
そのため、ドライバーがトランスミッションのシフト位置を駐車「P」に入れていない後に、ブレーキペダルを踏んでいない状態であるときは(S206)、PCS ECU20は、表示装置28によりドライバーにブレーキペダルを踏み、周囲の安全確認を促す注意喚起を行なう(S207)。また、PCS ECU20は、停止状態をドライバーに注意喚起を行なう時間であるTB秒だけさらに継続する(S208)。TB秒経過後には(S208)、ソナー12により障害物が検知されているか否かに関わらず、PCS ECU20は、エンジンECU24及びブレーキECU26を駆動させて、車両11の速度を抑制しつつ、車両11を徐々に後退させる(S209)。
【0056】
つまり、時間Tの経過後に即座に停止制御を終了すると、ドライバーがアクセルペダルを踏んでいる場合に急発進を招き、安全性を損なう可能性がある。そこで、停止制御の終了後にドライバーがブレーキペダルを踏んでいない場合には、PCS ECU20は、さらに時間TBだけ停止制御を継続しつつ、ドライバーに注意喚起を行なう。時間TB経過後もブレーキペダルが踏まれなかった場合は、目標減速度をゆるやかに減少させて速度抑制を行いながら車両11を後退させる。なお、この速度を抑制する制御は、停止制御を終了した時点で検出されていた障害物のうち、最も遠い障害物までの距離を車両11が移動するまで継続される。
【0057】
以上の動作をまとめると、車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられずにブレーキペダルが踏まれていない場合は、図7に示すように、停止制御後にT+TB秒間だけ停止状態が保持され、T+TB秒後に後退が再開される。
【0058】
車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられなかった後にブレーキペダルが踏まれている場合は、図8に示すように、停止制御後にT秒が経過した後もブレーキペダルが踏まれている間は停止状態が維持される。ブレーキペダルがOFFとなってからTB秒間だけ停止状態が保持された後に後退が再開される。
【0059】
車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられなかった後にブレーキペダルが踏まれておらず、時間Tの間に障害物Oa等をロストしたか新たな障害物を検知した場合は、図9に示すように、停止制御後にT+TADD+TB秒間だけ停止状態が保持され、T+TADD+TB秒後に後退が再開される。
【0060】
車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられなかった後にブレーキペダルが踏まれており、時間Tの間に障害物Oaをロストしたか新たな障害物を検知した場合は、ブレーキペダルがOFFとなってからTB秒間だけ停止状態が保持された後に後退が再開される。
【0061】
なお、後退の再開時には、図11に示すように、例えばT+TB秒間の停止時間だけ停止保持がなされた後、PCS ECU20は、後退準備としてブレーキECU26に所定の目標Gの傾きαとなるようにブレーキの強度を減少させる。目標G(制動力)がある値となると、車両11が動き始め、後退が再開される。このとき、PCS ECU20は、ブレーキECU26に一定の制動力をかけさせて、車両11の車速を抑える。
【0062】
車両が動き始めた後は、例えば図12に示すように、PCS ECU20は、目標車速となるまでは、エンジンECU24及びブレーキECU26に車両11を加速させるように目標Gを設定して制御を行なう。PCS ECU20は、目標車速となった後は、エンジンECU24及びブレーキECU26に車両11に一定の制動力がかかるように目標Gを設定して制御を行なう。
【0063】
以下、ソナー12により複数の障害物が検知されていた場合の動作について詳述する。図13に示すように、図2のS12において障害物を検出後、PCS ECU20はメモリ22を参照する(S301)。PCS ECU20は、ソナー12により検知された障害物Oa等に対して図2のS14における停止制御やS16の減速制御後に車両11が停止させられたときは、当該障害物Oa等を停止制御済みの物標としてメモリ22に登録してある。ソナー12により検知された障害物に対して未だに車両11を停止させていないときは(S302)、PCS ECU20は、図2のS13以下の処理を続行する。一方、ソナー12により検知された障害物に対して既に車両11を停止させているときは(S302)、PCS ECU20は、当該障害物に対しては、停止制御や減速制御を行なわない。
【0064】
上記の制御について、図14に示すように複数の障害物O1,O2がソナー12により検出されている場合は、PCS ECU20は、L1<Xのときに、障害物O1に対して減速制御を行なう。PCS ECU20は、X<L1のときに、障害物O1に対して停止制御制御を行なう。PCS ECU20は、L3<Xのときに、障害物O2に対して減速制御を行なう。PCS ECU20は、X<L3のときに、障害物O2に対して停止制御制御を行なう。PCS ECU20は、X<L4のときに、制御を終了する。
【0065】
図14において、障害物O1に対して停止制御を行なった後、再び後退を始めたとき、障害物O1と車両11との距離LXは停止目標距離LDよりも小さいため、図2の処理をそのまま行なうと、走行支援装置10のシステムは再び停止制御を行なうこととなり、後退できない可能性がある。そこで、本実施形態では、ソナー12により検知された障害物ごとに過去に停止制御後や減速制御後に車両11が停止されたか否かを記憶しておき、車両11が停止された対象物に対しては、再び停止制御は行なわないことで、さらなる後退が可能となる。一方、過去に車両11が停止されていない障害物が停止制御をすべき距離内に入ってきたときは、PCS ECU20は、停止制御を行なう。
【0066】
つまり、一度、車両11が停止された障害物に対しては、ドライバーは、さらに後退することを望んでいると判断され、再度の後退が可能とされる。一方、未だ車両11が停止されていない障害物に対しては、ドライバーは、その存在に気付いていないか、走行支援装置10のシステムが停止制御を行なうことを期待していると判断され、停止制御が行なわれる。
【0067】
以下、図2のS16の減速制御後及び図6のS209の後退再開後における動作について詳述する。図15に示すように、図2のS16の減速制御後及び図6のS209の後退再開後に、PCS ECU20は、傾斜センサ19により検出された勾配の傾斜角に応じて上限車速VTmaxを変更する(S401)。例えば、上り勾配の場合には、上限車速VTmaxは増大される。アクセルペダルセンサ18によりアクセルペダルが踏まれていることが検出されるときは(S402)、PCS ECU20は、エンジンECU24及びブレーキECU26を駆動させて、上限車速VTmaxを超えない範囲の速度に車両11を加速させる(S404)。この場合、PCS ECU20は、上限車速VTmaxの代わりに、目標減速度の下限値である下限減速度ATminを設定し、減速度が下限減速度ATminを下回らないように制御しても良い。あるいは、PCS ECU20は、上限車速VTmax及び下限減速度ATminを併用しても良い。
【0068】
図2のS16の減速制御後及び図6のS209の後退再開後において、ドライバーの意思によらず車両11は減速したり、極低速走行を行なう。この場合、ドライバーによっては、後方に障害物Oa等が存在するという状況を理解した上で、なお、もう少し加速したと感じることも考えられる。また、上り勾配の場合や、操舵角が左右に限界まで大きくされたフルロックの状態では、平坦路や操舵角が小さい場合に比べて車両11にかかる抵抗が大きくなるため、減速制御や後退再開後の速度を抑制する制御によっては、車両11が停止してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んでいるときは、ドライバーは加速をしたいと考えていると判断し、アクセル開度を非線形に目標減速度をゆっくりと漸減する。これにより、上り勾配の場合や、操舵角が左右に限界まで大きくされたフルロックの状態においても、車両11を加速させることができる。
【0069】
図16に示すように、登坂路や路面抵抗が大きい場所に車両11が接近している状況で、ドライバーがアクセルペダルをONとした場合、PCS ECU20は、目標減速度を漸減させて車速を緩やかに増加させる(P1)。ドライバーがアクセルペダルから足を放すと、PCS ECU20は、目標減速度を漸増させて、本来の速度抑制制御車速に戻す(P2)。PCS ECU20は、上限車速VTmaxを超えないように車速を制御する。
【0070】
図17に示すような下り勾配の場合も同様であり、PCS ECU20は、傾斜センサ19により検出された勾配の傾斜角に応じて上限車速VTmaxを補正する。下り勾配の場合は、上限車速VTmaxは減少される。これにより、勾配によらず車両11を障害物Ob等に対して適切に減速させることが可能となる。
【0071】
図18に示すように、障害物Obの手前に乗り越えるべき障害物(路上物)Ocが存在する場合、図中Aに示すように、車両11が障害物Ocに当接し、車速が低下する。この場合、ドライバーによりアクセルペダルが踏まれる。PCS ECU20は、障害物Ocの勾配に従って、上限車速VTmaxを微増していく。図中Bに示すように、アクセルペダル踏量の増加に従い、車速も増大する。図中Cに示すように、障害物Ocを乗り越え、車速が上限車速VTmaxを超えようとする。PCS ECU20は、上限車速VTmaxを元に戻し、エンジンECU24及びブレーキECU26を駆動させて、減少させた上限車速VTmaxを超えない範囲に車両11の車速を制御する。これにより、車両11は障害物Obの手前で停止することが可能となる。
【0072】
本実施形態では、走行支援装置10は、PCS ECU20は、車両11の後退時に障害物Oaがソナー12により検知不可能な距離に接近したときは、ソナー12により障害物Oaを検知可能であった位置からの車両11の走行距離に基づいて推定される障害物Oaと車両11との距離に基づいて車両11の走行を制御する。車両11に設けられたソナー12等のセンサは距離が近過ぎると障害物Oaを検知不可能となり、障害物Oaをロストしてしまうことがある。このため、本実施形態によれば、障害物Oaが接近し過ぎてソナー12により検知不可能な距離に入ってしまい、障害物Oaをロストしてしまった状況でも、障害物Oaと車両11との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物Oaと車両11との接触を防止する制御を行なうことができる。
【0073】
また、本実施形態では、後方センサとしてソナー12を有するため、比較的に低速で走行する後退時には、近距離の広い範囲に存在する人間等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、車両11の後退時にソナー12により検知された障害物Oaと車両11との接触を防止するように、車両11のドライバーの操作によらずに車両11の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの減速制御又は停止制御を行ない、その後に減速制御又は停止制御の操作量を小さくする。このため、PCS ECU20によって車両11が障害物Oaに対して減速させられた後に、車両11のドライバーがさらに障害物Oaに接近したい等の理由で車両11を加速させたいような状況に対応することができる。また、いつまでもPCS ECU20によって車両11が障害物Oaに対して減速させられることにより、車両11のドライバーが走行支援装置10のシステムを過信することを防止することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、減速制御又は停止制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は減速制御又は停止制御を中止する。このため、条件を適宜設定することにより、ドライバーが車両11を加速させたい状況に対応でき、ドライバーのシステムへの過信を防止することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、減速制御又は停止制御を行なった後に減速制御又は停止制御の操作量を徐々に小さくしつつ減速制御又は停止制御を中止する。このため、減速制御又は停止制御の中止時にドライバーがアクセルペダルを踏み込んでいたときに、車両が急発進及び急加速をすることを防止することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、減速制御を行なっているときに車両11のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて減速制御の操作量を小さくする。このため、ドライバーが後方に障害物Oaがある状況を理解した上で車両11を加速させたいような状況や、上り勾配の後退時や操舵角が極めて大きいときのように減速制御により車両が停止しそうな状況にドライバーのアクセルペダル操作により対応することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、車両11の後退時にソナー12により検知された障害物O1と車両11との接触を防止するように減速制御又は停止制御を行なった後に、ソナー12により障害物O2が検知されたときは、障害物O2と車両11との接触を防止するように減速制御又は停止制御を行なう。このため、障害物O1に対する減速制御又は停止制御の操作量が小さくされているときでも、新たに検知された障害物O2に対する減速制御又は停止制御が行なわれ、車両11のドライバーがその存在に気付いていないか、走行支援装置10のシステムにより減速制御又は停止制御が行なわれることを望んでいる場合に、障害物O2と車両11との接触を防止することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、車両11の後退時にソナー12により検知された障害物O1と車両11との接触を防止するように減速制御又は停止制御を行なった後は、障害物O1についての減速制御又は停止制御を行なわない。このため、一度減速制御又は停止制御が行なわれた障害物に対して車両のドライバーがさらに後退したいような状況に対応することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、車両11の前方の障害物を検知するレーダ14と後方の障害物を検知するソナー12とを備え、車両の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止するように車両11の走行を制御するPCS ECU20を備えるため、前進時及び後退時の両方で障害物と車両11との接触を防止することが可能となる。また、レーダ14は、ソナー12とは異なる種類のセンサであり、ソナー12よりも車両11から長距離に位置する障害物を検知することが可能であるため、後退時の比較的に低速な速度域と、前進時の比較的に高速な速度域とに応じて、検知対象とすべき障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。また、センサについてのコストを低減することも可能となる。
【0081】
また、本実施形態によれば、車両11から等距離において、ソナー12の検知可能な範囲はレーダ14の検知可能な範囲以上である。このため、比較的に高速で走行する前進時には、指向性を高めて遠距離の狭い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき他車両等の障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。また、比較的に低速で走行する後退時には、指向性を低めて近距離の広い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき人間等の障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0082】
また、本実施形態によれば、前方センサとしてレーダ14あるいはカメラ及びレーザレーダのいずれかを有するため、比較的に高速で走行する前進時には、遠距離の狭い範囲に存在する他車両等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0083】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、車両11の後退時の動作について主に説明したが、車両11の前進時においても同様の動作が行われる。
【符号の説明】
【0084】
10…走行支援装置、11…車両、12…ソナー、14…レーダ、15…車輪速センサ、16…シフトセンサ、17…ブレーキペダルセンサ、18…アクセルペダルセンサ、19…傾斜センサ、20…PCS ECU、22…メモリ、24…エンジンECU、26…ブレーキECU、28…表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置に関し、特に車両の後退時に障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する装置が提案されている。例えば、特許文献1には、ドライバーが制動操作を行なうつもりで誤って加速操作を行なってしまったような場合であっても安全性を確保することができるようにした装置が提案されている。この装置では、車両の前進時又は後退時に進行方向に存在する障害物と車両との距離および相対速度を検出する前方超音波センサ及び後方超音波センサと、車両のドライバーによる加速要求量を検出する手段と、前方超音波センサ及び後方超音波センサにより検出された車両と障害物との距離および相対速度に基づいて車両と障害物との衝突可能性の有無を判定する衝突可能性判定部と、衝突可能性判定部により衝突可能性が有ると判定された場合に、検出された加速要求をドライバーによる制動要求とみなして車両を制動する手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の車速が比較的に低速となる後退時には、検知対象とすべき障害物と車両との距離が至近距離となる場合があり、より精緻に車両の走行を制御することが求められている。
【0005】
本発明は、このような実情を考慮してなされたものであり、その目的は、車両の後退時において、障害物と車両との距離が至近距離となった場合でも、より精緻に車両の走行を制御することが可能な走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の後方の障害物を検知する後方センサを有し、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する後退接触防止手段を備え、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な範囲に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御する走行支援装置である。
【0007】
この構成によれば、車両の後方の障害物を検知する後方センサを有し、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する後退接触防止手段を備えるため、後退時に障害物と車両との接触を防止することが可能となる。また、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な範囲に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御する。このため、障害物が接近し過ぎて後方センサにより検知不可能な範囲に入ってしまい、障害物をロストしてしまった状況でも、障害物と車両との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物と車両との接触を防止する制御を行なうことができる。
【0008】
この場合、後方センサはソナーであることが好適である。
【0009】
この構成によれば、後退接触防止手段は後方センサとしてソナーを有するため、比較的に低速で走行する後退時には、近距離の広い範囲に存在する人間等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0010】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な距離に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御することが好適である。
【0011】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に障害物が後方センサにより検知不可能な距離に接近したときは、後方センサにより障害物を検知可能であった位置からの車両の走行距離に基づいて推定される障害物と車両との距離に基づいて車両の走行を制御する。車両に設けられたソナー等のセンサは距離が近過ぎると障害物を検知不可能となり、障害物をロストしてしまうことがある。このため、この構成によれば、障害物が接近し過ぎて後方センサにより検知不可能な距離に入ってしまい、障害物をロストしてしまった状況でも、障害物と車両との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物と車両との接触を防止する制御を行なうことができる。
【0012】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくすることが好適である。
【0013】
この構成によれば、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくする。このため、後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられた後に、車両のドライバーがさらに障害物に接近したい等の理由で車両を加速させたいような状況に対応することができる。また、いつまでも後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられることにより、車両のドライバーが走行支援装置のシステムを過信することを防止することができる。
【0014】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物が車両に接近したときは、障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくすることが好適である。
【0015】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物が車両に接近したときは、障害物と車両との接触を防止するように、車両のドライバーの操作によらずに車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に走行制御の操作量を小さくする。このため、車両に接近し接触の可能性が高い障害物に対して走行制御を行ない、接触を防止することができる。また、後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられた後に、車両のドライバーがさらに障害物に接近したい等の理由で車両を加速させたいような状況に対応することができる。また、いつまでも後退接触防止手段によって車両が障害物に対して減速させられることにより、車両のドライバーが走行支援装置のシステムを過信することを防止することができる。
【0016】
また、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は走行制御を中止することが好適である。
【0017】
この構成によれば、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は走行制御を中止する。このため、条件を適宜設定することにより、ドライバーが車両を加速させたい状況に対応でき、ドライバーのシステムへの過信を防止することができる。
【0018】
また、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に走行制御の操作量を徐々に小さくしつつ走行制御を中止することが好適である。
【0019】
この構成によれば、後退接触防止手段は、走行制御を行なった後に走行制御の操作量を徐々に小さくしつつ走行制御を中止する。このため、走行制御の中止時にドライバーがアクセルペダルを踏み込んでいたときに、車両が急発進及び急加速をすることを防止することができる。
【0020】
また、後退接触防止手段は、走行制御を行なっているときに車両のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて走行制御の操作量を小さくすることが好適である。
【0021】
この構成によれば、後退接触防止手段は、走行制御を行なっているときに車両のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて走行制御の操作量を小さくする。このため、ドライバーが後方に障害物がある状況を理解した上で車両を加速させたいような状況や、上り勾配の後退時や操舵角が極めて大きいときのように走行制御により車両が停止しそうな状況にドライバーのアクセルペダル操作により対応することができる。
【0022】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された第1の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後に、後方センサにより第2の障害物が検知されたときは、第2の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なうことが好適である。
【0023】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された第1の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後に、後方センサにより第2の障害物が検知されたときは、第2の障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なう。このため、第1の障害物に対する走行制御の操作量が小さくされているときでも、新たに検知された第2の障害物に対する走行制御が行なわれ、車両のドライバーがその存在に気付いていないか、走行支援装置のシステムが走行制御をすることを望んでいる場合に、第2の障害物と車両との接触を防止することができる。
【0024】
また、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後は、障害物についての走行制御を行なわないことが好適である。
【0025】
この構成によれば、後退接触防止手段は、車両の後退時に後方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように走行制御を行なった後は、障害物についての走行制御を行なわない。このため、一度走行制御が行なわれた障害物に対して車両のドライバーがさらに後退したいような状況に対応することができる。
【0026】
また、車両の前方の障害物を検知する前方センサを有し、車両の前進時に前方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する前進接触防止手段をさらに備え、前進接触防止手段の前方センサは、後退接触防止手段の後方センサとは異なる種類のセンサであり、後方センサよりも車両から長距離に位置する障害物を検知することが可能であることが好適である。
【0027】
この構成によれば、車両の前方の障害物を検知する前方センサを有し、車両の前進時に前方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する前進接触防止手段をさらに備えるため、前進時及び後退時の両方で障害物と車両との接触を防止することが可能となる。また、前進接触防止手段の前方センサは、後退接触防止手段の後方センサとは異なる種類のセンサであり、後方センサよりも車両から長距離に位置する障害物を検知することが可能であるため、後退時の比較的に低速な速度域と、前進時の比較的に高速な速度域とに応じて、検知対象とすべき障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0028】
この場合、車両から等距離において、後方センサの検知可能な範囲は前方センサの検知可能な範囲以上であることが好適である。
【0029】
この構成によれば、車両から等距離において、後方センサの検知可能な範囲は前方センサの検知可能な範囲以上である。このため、比較的に高速で走行する前進時には、指向性を高めて遠距離の狭い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき他車両等の障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。また、比較的に低速で走行する後退時には、指向性を低めて近距離の広い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき人間等の障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0030】
また、車両の前方の障害物を検知する前方センサとしてレーダ、カメラ及びレーザレーダのいずれかを有することが好適である。
【0031】
この構成によれば、前進接触防止手段は前方センサとしてレーダ、カメラ及びレーザレーダのいずれかを有するため、比較的に高速で走行する前進時には、遠距離の狭い範囲に存在する他車両等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の走行支援装置によれば、障害物が接近し過ぎて後方センサにより検知不可能な範囲に入ってしまい、障害物をロストしてしまった状況でも、障害物と車両との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物と車両との接触を防止する制御を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る走行支援装置の動作の概略を示すフローチャートである。
【図3】車両と障害物との距離に対する車両の速度及び目標減速度の関係を示す図である。
【図4】図2の障害物を検出する際の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図5】(a)は障害物をソナーにより検知可能な状態を示す側面図であり、(b)は障害物に接近し過ぎて障害物をソナーにより検知不可能な状態を示す側面図である。
【図6】図2の車両が停止した後の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれていない場合の車速とブレーキペダル操作とを示すグラフである。
【図8】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれている場合の車速とブレーキペダル操作とを示すグラフである。
【図9】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれておらず、時間Tの間に障害物をロストしたか新たな障害物を検知した場合の車速とブレーキペダル操作とを示すグラフである。
【図10】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際にブレーキペダルが踏まれており、時間Tの間に障害物をロストしたか新たな障害物を検知した場合の車速とブレーキペダル操とを示すグラフである。
【図11】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際の車速と目標Gとシステム状態とを示すグラフである。
【図12】車両が停止させられた後に車両が後退を再開する際の車速に対する目標Gを示すグラフである。
【図13】図2の障害物を検出した後の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図14】後退時に複数の障害物を検知した状況を示す平面図である。
【図15】図2の減速制御後及び図6の後退を再開した後の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図16】登坂路や路面抵抗が大きい道路を後退する際のドライバーのアクセルペダル操作と車両の速度とを示すグラフである。
【図17】下り勾配を後退する状況を示す側面図である。
【図18】障害物として輪止めとその手前に乗り越えるべき路上物が存在する場合の車速、アクセルペダル踏量及び加速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る走行支援装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の走行支援装置10は、ソナー12、レーダ14、車輪速センサ15、シフトセンサ16、ブレーキペダルセンサ17、アクセルペダルセンサ18、傾斜センサ19、PCS ECU20、メモリ22、エンジンECU24、ブレーキECU26及び表示装置28を車両11内に備えている。本実施形態の走行支援装置10は、車両11の前進時や、駐車時に限らず車両11の後退時において、障害物との接触を避けるように車両11の走行を制御する。つまり、本実施形態の走行支援装置10は、駐車時に限らず、例えば車両11を後退させつつ、ドライバーが車両11で希望の場所に移動したいような場合に、途中の障害物との接触を回避するために用いられる。なお、本実施形態の車両11は、一般的な自動車と同様にトランスミッションの変速比は前進時の方が後退時よりも低い。つまり、車両11は前進時の方が後退時よりも高速で走行する。
【0035】
ソナー12は、車両の後退時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を超音波により検出し、当該障害物と車両との距離を検出する。車両の後退時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を検出する装置としては、補助的に車両から遠距離に位置する障害物を検出可能なレーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ及びレーザレーダ(ライダ)でも良い。
【0036】
レーダ14は、車両の前進時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を電波により検出し、当該障害物と車両との距離を検出する。車両の前進時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を検出する装置としては、単眼カメラ、ステレオカメラ及びレーザレーダでも良い。車両11の前方の障害物を検知するレーダ14は、車両11の後方の障害物を検知するソナー12よりも車両11から遠距離に位置する障害物を検知可能である。また、車両11から等距離において、車両11の前方の障害物を検知するレーダ14の検知範囲は、車両11の後方の障害物を検知するソナー12の検知範囲以下と狭く、より高い指向性を有するものである。車両の前進時に車両の進行軌跡上に存在する障害物を検出する装置としては、補助的に車両から近距離に位置する人間等の障害物を検出可能なソナーを備えていても良い。
【0037】
車輪速センサ15は、車両11の車輪の回転角度を検出し、当該回転角度と車輪の直径から車両11の移動距離を算出するためのものである。また、車輪速センサ15は単位時間当りの車両11の移動距離から車両11の車速を検出するためのものである。車輪速センサ15は、車輪のハブベアリング等に取り付けられS極とN極とが交互に配置された磁気ロータが回転すると磁界の変化が生まれ、それをステアリングナックル等に取り付けられたセンサで検出して車速パルスとして出力するものである。例えば、磁気ロータの極の総数をN、車輪直径をR、単位時間内に検出されたパルス数をPnとすると、単位時間当りの車両移動距離Dpulseは、Dpulse=Pn・πR/Nで表される。
【0038】
シフトセンサ16は、車両11のトランスミッションのシフトが後退「R」の位置にあるのか、前進「D」の位置にあるのかを検出する。ブレーキペダルセンサ17は、ドライバーの操作により車両11のブレーキペダルが踏まれているか否かやブレーキペダルの踏量を検出する。アクセルペダルセンサ18は、ドライバーの操作により車両11のアクセルペダルが踏まれているか否かやアクセルペダルの踏量を検出する。傾斜センサ19は、車両11が登坂路を前進中あるいは後退中であるか、下り勾配を前進中あるいは後退中であるのかを検出する。
【0039】
PCS ECU(Pre-Crash Safety Electronic Control Unit)20は、車輪速センサ15、シフトセンサ16、ブレーキペダルセンサ17、アクセルペダルセンサ18及び傾斜センサ19により検出された情報に基づいて、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止するようにエンジンECU24及びブレーキECU26を動作させて車両11の走行を制御し、表示装置28に各種の情報を表示させる。
【0040】
メモリ22は、レーダ14及びソナー12により検知された障害物それぞれについて、車両11との距離や、後述する減速制御及び制動制御を既に行ったか否かの情報を記憶する。
【0041】
エンジンECU24は、PCS ECU20からの指令信号により車両11のアクセル開度を制御し、車両11のエンジンの出力を制限することにより、車両11の前進時及び後退時にドライバーの操作によらずにレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。なお、車両11が電動機の出力により走行する電気自動車である場合は、エンジンECU24は、電動機の出力を制限する。あるいは、エンジンECU24は、トランスミッションの減速比を変更することにより、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。
【0042】
ブレーキECU26は、PCS ECU20からの指令信号により車両11の減速度を制御することにより、車両11の前進時及び後退時にドライバーの操作によらずにレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。なお、車両11が電動機の出力により走行する電気自動車である場合は、ブレーキECU26は、回生による制動により、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。
【0043】
表示装置28は、ディスプレイ、警告灯、スピーカ及びブザー等から構成される。表示装置28は、PCS ECU20からの指令信号により、ドライバーに各種の情報を表示することにより、車両11の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止する。あるいは表示装置28は、車両11のシートベルトの張力を高めることにより、車両11のドライバーにレーダ14及びソナー12により検知された障害物に対して警告を与え、且つ当該障害物と車両11との接触の際の影響を低減する。なお、本実施形態では、PCS ECU20は、エンジンECU24及びブレーキECU26により車両11の加速度や減速度を制御することなく、表示装置28からドライバーにレーダ14及びソナー12により検知された障害物に対して警告のみを与えるものでも良い。
【0044】
以下、本実施形態の走行支援装置10の動作について説明する。まず、車両11の後退時における本実施形態の走行支援装置10の動作の概略について説明する。図2に示すように、走行支援装置10のPCS ECU20は、シフトセンサ16により、車両11のトランスミッションのシフト位置が後退「R」の位置にあることを検出する(S11)。図2及び図3に示すように、PCS ECU20は、ソナー12により車両11後方に存在する車両11との接触の可能性がある障害物Oa又は障害物(輪止め)Obが検知されたか否かを判定する(S12)。
【0045】
障害物Oa等が検知された場合は(S12)、PCS ECU20は、ソナー12により得られた障害物Oa等と車両11との距離LXが、所定の停止目標距離LD以下となっているか否かについて判定する(S13)。停止目標距離LDは、障害物Oa等と車両11とが接触せずに安全に近接可能な距離として設定される。距離LXが、所定の停止目標距離LD以下となっているときは(S14)、PCS ECU20はブレーキECU26を動作させて車両11に大きな減速度を与え、車両11を停止させる(S14)。以下、この動作を制動制御又は停止制御と呼ぶ。
【0046】
距離LXが所定の停止目標距離LD以下とはなっていないが(S14)、距離LXが停止目標距離LDよりも長い制動対象距離LT未満となっているときは(S15)、PCS ECU20はブレーキECU26を動作させて車両11に停止制御よりも小さな減速度を与え、車両11を障害物Oaから停止目標距離LDの位置で停止させる(S16)。制動対象距離LTは、車両11を障害物Oaから停止目標距離LDの位置で比較的に小さな減速度により停止させることが可能な距離として設定される。以下、この動作を減速制御と呼ぶ。
【0047】
以下、障害物を検出する動作の詳細について説明する。図2のS12において、図4に示すように、ソナー12により障害物Oa等を検出し続けているときは(S121)、PCS ECU20は、ソナー12により検出した距離を距離LXとして(S122)、上述した処理を続行する。障害物Obのように地上からの高さが低い障害物については、図5(a)に示すように車両11に搭載されたソナー12の検知範囲AD内に障害物Obが存在するときは検知可能である。しかし、図5(b)に示すように後退する車両11が障害物Obに接近し過ぎると、ソナー12の検知範囲ADから障害物Obが外れてしまい、障害物Obをロストすることがある。
【0048】
そこで、本実施形態では、ソナー12により検出していた障害物Ob等を検出していないときであって(S121)、それまでソナー12により検出していたとき、すなわち、近距離で障害物Ob等をロストしたときは(S123)、PCS ECU20は、車輪速センサ15により検出された車両11の移動距離により推定される障害物Ob等と車両11との距離Lxを真値として更新し(S124)、上述した処理を続行する。
【0049】
すなわち、ソナー12が外挿許可距離LP(LD<LP<LT)以下で障害物Ob等をロストした(検出していたものを検出しなくなった)場合に、PCS ECU20は、車両11の車輪直径と車輪速センサ15により検出された車輪の単位時間当りの回転角度から車両11の移動距離を算出し、ロスト直前の障害物Ob等までの距離LXから当該移動距離を減算することにより、障害物Ob等までの距離LXの真値を算出する。なお、外挿許可距離LPの値は、ソナー12の最小検出距離Dminに応じて設定される。例えば、LP=Dmin+ΔD(ΔD>0)とする。
【0050】
一般にソナー12や画像カメラ、レーダ、ライダ等のセンサは上述したように極近い距離では障害物Ob等を検出することができず、ロストしてしまうことがある。本実施形態では、ソナー12が最小検知距離Dminで障害物Ob等をロストした場合にも、車両11の移動距離に基づいて障害物Obまでの距離LXを推定し、当該距離LXに基づいて制御を継続するため、ソナー12が障害物Obを検出できない距離以下での制御が可能となる。
【0051】
以下、図2における停止制御(S14)及び減速制御(S16)を行なった後の処理について説明する。図6に示すように、停止制御(S14)及び減速制御(S16)後に車両11が停止したときは(S201)、PCS ECU20は、ブレーキECU26を駆動させて停止状態を保持する(S202)。停止状態は、T秒間保持される(S203)。
【0052】
T秒間において、ソナー12により検知していた障害物Oa等をロストしたとき、又はソナー12により新規の障害物を発見したときは(S204)、さらに安全性を高めるため、PCS ECU20は、停止状態をさらにTADD秒間だけ続行する(S205)。つまり、車両11の停止中に距離LX<制動対象距離LT以内に新たな障害物を検出した場合は、ドライバーに急な加速をされると、距離の余裕がないため、新たな障害物に対して十分な減速ができない可能性がある。そこで、車両11の停止中に距離LX<制動対象距離LT以内に新たな障害物を検出した場合は、停止状態をさらにTADD秒間だけ続行することで、安全性を高める。
【0053】
ただし、この場合の停止状態の強制的な続行は後述するTB秒以外は、T秒間に加えて所定のTADD秒間を最大限度とし、新たな障害物がソナー12により検知され続けていたとしても、停止状態は解除される。ただし、ドライバーの操作によりブレーキペダルが踏まれている間は停止状態が維持される。これにより、ドライバーが例えば駐車スペースが狭い等の理由で、意図的に停止目標距離LDよりもさらに障害物Oa等に接近したいような場合に対応することができる。また、停止状態を保持し続けないことにより、ドライバーの走行支援装置10のシステムへの過信を防止することができる。
【0054】
PCS ECU20は、シフトセンサ16及びブレーキペダルセンサ17の検出値により、ドライバーがトランスミッションのシフト位置を駐車「P」に入れていない後に、ブレーキペダルを踏んでいない状態であるか否かを判定する(S206)。ドライバーがトランスミッションのシフト位置を駐車「P」に入れていない後に、ブレーキペダルを踏んでいない状態であるときは、ドライバーは障害物Oa等に十分に注意を払っていないことが予想される。
【0055】
そのため、ドライバーがトランスミッションのシフト位置を駐車「P」に入れていない後に、ブレーキペダルを踏んでいない状態であるときは(S206)、PCS ECU20は、表示装置28によりドライバーにブレーキペダルを踏み、周囲の安全確認を促す注意喚起を行なう(S207)。また、PCS ECU20は、停止状態をドライバーに注意喚起を行なう時間であるTB秒だけさらに継続する(S208)。TB秒経過後には(S208)、ソナー12により障害物が検知されているか否かに関わらず、PCS ECU20は、エンジンECU24及びブレーキECU26を駆動させて、車両11の速度を抑制しつつ、車両11を徐々に後退させる(S209)。
【0056】
つまり、時間Tの経過後に即座に停止制御を終了すると、ドライバーがアクセルペダルを踏んでいる場合に急発進を招き、安全性を損なう可能性がある。そこで、停止制御の終了後にドライバーがブレーキペダルを踏んでいない場合には、PCS ECU20は、さらに時間TBだけ停止制御を継続しつつ、ドライバーに注意喚起を行なう。時間TB経過後もブレーキペダルが踏まれなかった場合は、目標減速度をゆるやかに減少させて速度抑制を行いながら車両11を後退させる。なお、この速度を抑制する制御は、停止制御を終了した時点で検出されていた障害物のうち、最も遠い障害物までの距離を車両11が移動するまで継続される。
【0057】
以上の動作をまとめると、車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられずにブレーキペダルが踏まれていない場合は、図7に示すように、停止制御後にT+TB秒間だけ停止状態が保持され、T+TB秒後に後退が再開される。
【0058】
車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられなかった後にブレーキペダルが踏まれている場合は、図8に示すように、停止制御後にT秒が経過した後もブレーキペダルが踏まれている間は停止状態が維持される。ブレーキペダルがOFFとなってからTB秒間だけ停止状態が保持された後に後退が再開される。
【0059】
車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられなかった後にブレーキペダルが踏まれておらず、時間Tの間に障害物Oa等をロストしたか新たな障害物を検知した場合は、図9に示すように、停止制御後にT+TADD+TB秒間だけ停止状態が保持され、T+TADD+TB秒後に後退が再開される。
【0060】
車両11が停止させられた後に車両11が後退を再開する際にトランスミッションのシフト位置が「P」に入れられなかった後にブレーキペダルが踏まれており、時間Tの間に障害物Oaをロストしたか新たな障害物を検知した場合は、ブレーキペダルがOFFとなってからTB秒間だけ停止状態が保持された後に後退が再開される。
【0061】
なお、後退の再開時には、図11に示すように、例えばT+TB秒間の停止時間だけ停止保持がなされた後、PCS ECU20は、後退準備としてブレーキECU26に所定の目標Gの傾きαとなるようにブレーキの強度を減少させる。目標G(制動力)がある値となると、車両11が動き始め、後退が再開される。このとき、PCS ECU20は、ブレーキECU26に一定の制動力をかけさせて、車両11の車速を抑える。
【0062】
車両が動き始めた後は、例えば図12に示すように、PCS ECU20は、目標車速となるまでは、エンジンECU24及びブレーキECU26に車両11を加速させるように目標Gを設定して制御を行なう。PCS ECU20は、目標車速となった後は、エンジンECU24及びブレーキECU26に車両11に一定の制動力がかかるように目標Gを設定して制御を行なう。
【0063】
以下、ソナー12により複数の障害物が検知されていた場合の動作について詳述する。図13に示すように、図2のS12において障害物を検出後、PCS ECU20はメモリ22を参照する(S301)。PCS ECU20は、ソナー12により検知された障害物Oa等に対して図2のS14における停止制御やS16の減速制御後に車両11が停止させられたときは、当該障害物Oa等を停止制御済みの物標としてメモリ22に登録してある。ソナー12により検知された障害物に対して未だに車両11を停止させていないときは(S302)、PCS ECU20は、図2のS13以下の処理を続行する。一方、ソナー12により検知された障害物に対して既に車両11を停止させているときは(S302)、PCS ECU20は、当該障害物に対しては、停止制御や減速制御を行なわない。
【0064】
上記の制御について、図14に示すように複数の障害物O1,O2がソナー12により検出されている場合は、PCS ECU20は、L1<Xのときに、障害物O1に対して減速制御を行なう。PCS ECU20は、X<L1のときに、障害物O1に対して停止制御制御を行なう。PCS ECU20は、L3<Xのときに、障害物O2に対して減速制御を行なう。PCS ECU20は、X<L3のときに、障害物O2に対して停止制御制御を行なう。PCS ECU20は、X<L4のときに、制御を終了する。
【0065】
図14において、障害物O1に対して停止制御を行なった後、再び後退を始めたとき、障害物O1と車両11との距離LXは停止目標距離LDよりも小さいため、図2の処理をそのまま行なうと、走行支援装置10のシステムは再び停止制御を行なうこととなり、後退できない可能性がある。そこで、本実施形態では、ソナー12により検知された障害物ごとに過去に停止制御後や減速制御後に車両11が停止されたか否かを記憶しておき、車両11が停止された対象物に対しては、再び停止制御は行なわないことで、さらなる後退が可能となる。一方、過去に車両11が停止されていない障害物が停止制御をすべき距離内に入ってきたときは、PCS ECU20は、停止制御を行なう。
【0066】
つまり、一度、車両11が停止された障害物に対しては、ドライバーは、さらに後退することを望んでいると判断され、再度の後退が可能とされる。一方、未だ車両11が停止されていない障害物に対しては、ドライバーは、その存在に気付いていないか、走行支援装置10のシステムが停止制御を行なうことを期待していると判断され、停止制御が行なわれる。
【0067】
以下、図2のS16の減速制御後及び図6のS209の後退再開後における動作について詳述する。図15に示すように、図2のS16の減速制御後及び図6のS209の後退再開後に、PCS ECU20は、傾斜センサ19により検出された勾配の傾斜角に応じて上限車速VTmaxを変更する(S401)。例えば、上り勾配の場合には、上限車速VTmaxは増大される。アクセルペダルセンサ18によりアクセルペダルが踏まれていることが検出されるときは(S402)、PCS ECU20は、エンジンECU24及びブレーキECU26を駆動させて、上限車速VTmaxを超えない範囲の速度に車両11を加速させる(S404)。この場合、PCS ECU20は、上限車速VTmaxの代わりに、目標減速度の下限値である下限減速度ATminを設定し、減速度が下限減速度ATminを下回らないように制御しても良い。あるいは、PCS ECU20は、上限車速VTmax及び下限減速度ATminを併用しても良い。
【0068】
図2のS16の減速制御後及び図6のS209の後退再開後において、ドライバーの意思によらず車両11は減速したり、極低速走行を行なう。この場合、ドライバーによっては、後方に障害物Oa等が存在するという状況を理解した上で、なお、もう少し加速したと感じることも考えられる。また、上り勾配の場合や、操舵角が左右に限界まで大きくされたフルロックの状態では、平坦路や操舵角が小さい場合に比べて車両11にかかる抵抗が大きくなるため、減速制御や後退再開後の速度を抑制する制御によっては、車両11が停止してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んでいるときは、ドライバーは加速をしたいと考えていると判断し、アクセル開度を非線形に目標減速度をゆっくりと漸減する。これにより、上り勾配の場合や、操舵角が左右に限界まで大きくされたフルロックの状態においても、車両11を加速させることができる。
【0069】
図16に示すように、登坂路や路面抵抗が大きい場所に車両11が接近している状況で、ドライバーがアクセルペダルをONとした場合、PCS ECU20は、目標減速度を漸減させて車速を緩やかに増加させる(P1)。ドライバーがアクセルペダルから足を放すと、PCS ECU20は、目標減速度を漸増させて、本来の速度抑制制御車速に戻す(P2)。PCS ECU20は、上限車速VTmaxを超えないように車速を制御する。
【0070】
図17に示すような下り勾配の場合も同様であり、PCS ECU20は、傾斜センサ19により検出された勾配の傾斜角に応じて上限車速VTmaxを補正する。下り勾配の場合は、上限車速VTmaxは減少される。これにより、勾配によらず車両11を障害物Ob等に対して適切に減速させることが可能となる。
【0071】
図18に示すように、障害物Obの手前に乗り越えるべき障害物(路上物)Ocが存在する場合、図中Aに示すように、車両11が障害物Ocに当接し、車速が低下する。この場合、ドライバーによりアクセルペダルが踏まれる。PCS ECU20は、障害物Ocの勾配に従って、上限車速VTmaxを微増していく。図中Bに示すように、アクセルペダル踏量の増加に従い、車速も増大する。図中Cに示すように、障害物Ocを乗り越え、車速が上限車速VTmaxを超えようとする。PCS ECU20は、上限車速VTmaxを元に戻し、エンジンECU24及びブレーキECU26を駆動させて、減少させた上限車速VTmaxを超えない範囲に車両11の車速を制御する。これにより、車両11は障害物Obの手前で停止することが可能となる。
【0072】
本実施形態では、走行支援装置10は、PCS ECU20は、車両11の後退時に障害物Oaがソナー12により検知不可能な距離に接近したときは、ソナー12により障害物Oaを検知可能であった位置からの車両11の走行距離に基づいて推定される障害物Oaと車両11との距離に基づいて車両11の走行を制御する。車両11に設けられたソナー12等のセンサは距離が近過ぎると障害物Oaを検知不可能となり、障害物Oaをロストしてしまうことがある。このため、本実施形態によれば、障害物Oaが接近し過ぎてソナー12により検知不可能な距離に入ってしまい、障害物Oaをロストしてしまった状況でも、障害物Oaと車両11との距離を推定し、推定された距離に基づいて障害物Oaと車両11との接触を防止する制御を行なうことができる。
【0073】
また、本実施形態では、後方センサとしてソナー12を有するため、比較的に低速で走行する後退時には、近距離の広い範囲に存在する人間等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、車両11の後退時にソナー12により検知された障害物Oaと車両11との接触を防止するように、車両11のドライバーの操作によらずに車両11の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの減速制御又は停止制御を行ない、その後に減速制御又は停止制御の操作量を小さくする。このため、PCS ECU20によって車両11が障害物Oaに対して減速させられた後に、車両11のドライバーがさらに障害物Oaに接近したい等の理由で車両11を加速させたいような状況に対応することができる。また、いつまでもPCS ECU20によって車両11が障害物Oaに対して減速させられることにより、車両11のドライバーが走行支援装置10のシステムを過信することを防止することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、減速制御又は停止制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は減速制御又は停止制御を中止する。このため、条件を適宜設定することにより、ドライバーが車両11を加速させたい状況に対応でき、ドライバーのシステムへの過信を防止することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、減速制御又は停止制御を行なった後に減速制御又は停止制御の操作量を徐々に小さくしつつ減速制御又は停止制御を中止する。このため、減速制御又は停止制御の中止時にドライバーがアクセルペダルを踏み込んでいたときに、車両が急発進及び急加速をすることを防止することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、減速制御を行なっているときに車両11のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて減速制御の操作量を小さくする。このため、ドライバーが後方に障害物Oaがある状況を理解した上で車両11を加速させたいような状況や、上り勾配の後退時や操舵角が極めて大きいときのように減速制御により車両が停止しそうな状況にドライバーのアクセルペダル操作により対応することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、車両11の後退時にソナー12により検知された障害物O1と車両11との接触を防止するように減速制御又は停止制御を行なった後に、ソナー12により障害物O2が検知されたときは、障害物O2と車両11との接触を防止するように減速制御又は停止制御を行なう。このため、障害物O1に対する減速制御又は停止制御の操作量が小さくされているときでも、新たに検知された障害物O2に対する減速制御又は停止制御が行なわれ、車両11のドライバーがその存在に気付いていないか、走行支援装置10のシステムにより減速制御又は停止制御が行なわれることを望んでいる場合に、障害物O2と車両11との接触を防止することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、PCS ECU20は、車両11の後退時にソナー12により検知された障害物O1と車両11との接触を防止するように減速制御又は停止制御を行なった後は、障害物O1についての減速制御又は停止制御を行なわない。このため、一度減速制御又は停止制御が行なわれた障害物に対して車両のドライバーがさらに後退したいような状況に対応することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、車両11の前方の障害物を検知するレーダ14と後方の障害物を検知するソナー12とを備え、車両の前進時及び後退時にレーダ14及びソナー12により検知された障害物と車両11との接触を防止するように車両11の走行を制御するPCS ECU20を備えるため、前進時及び後退時の両方で障害物と車両11との接触を防止することが可能となる。また、レーダ14は、ソナー12とは異なる種類のセンサであり、ソナー12よりも車両11から長距離に位置する障害物を検知することが可能であるため、後退時の比較的に低速な速度域と、前進時の比較的に高速な速度域とに応じて、検知対象とすべき障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。また、センサについてのコストを低減することも可能となる。
【0081】
また、本実施形態によれば、車両11から等距離において、ソナー12の検知可能な範囲はレーダ14の検知可能な範囲以上である。このため、比較的に高速で走行する前進時には、指向性を高めて遠距離の狭い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき他車両等の障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。また、比較的に低速で走行する後退時には、指向性を低めて近距離の広い範囲に存在する障害物を検知することにより、検知対象とすべき人間等の障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0082】
また、本実施形態によれば、前方センサとしてレーダ14あるいはカメラ及びレーザレーダのいずれかを有するため、比較的に高速で走行する前進時には、遠距離の狭い範囲に存在する他車両等の障害物を確実に検知することができ、検知対象とすべき障害物と車両11との位置関係に応じた適切な検知が可能となる。
【0083】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、車両11の後退時の動作について主に説明したが、車両11の前進時においても同様の動作が行われる。
【符号の説明】
【0084】
10…走行支援装置、11…車両、12…ソナー、14…レーダ、15…車輪速センサ、16…シフトセンサ、17…ブレーキペダルセンサ、18…アクセルペダルセンサ、19…傾斜センサ、20…PCS ECU、22…メモリ、24…エンジンECU、26…ブレーキECU、28…表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方の障害物を検知する後方センサを有し、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記車両の走行を制御する後退接触防止手段を備え、
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記障害物が前記後方センサにより検知不可能な範囲に接近したときは、前記後方センサにより前記障害物を検知可能であった位置からの前記車両の走行距離に基づいて推定される前記障害物と前記車両との距離に基づいて前記車両の走行を制御する、走行支援装置。
【請求項2】
前記後方センサはソナーである、請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記障害物が前記後方センサにより検知不可能な距離に接近したときは、前記後方センサにより前記障害物を検知可能であった位置からの前記車両の走行距離に基づいて推定される前記障害物と前記車両との距離に基づいて前記車両の走行を制御する、請求項1又は2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物と前記車両との接触を防止するように、前記車両のドライバーの操作によらずに前記車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に前記走行制御の操作量を小さくする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物が前記車両に接近したときは、前記障害物と前記車両との接触を防止するように、前記車両のドライバーの操作によらずに前記車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に前記走行制御の操作量を小さくする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項6】
前記後退接触防止手段は、前記走行制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は前記走行制御を中止する、請求項4又は5に記載の走行支援装置。
【請求項7】
前記後退接触防止手段は、前記走行制御を行なった後に前記走行制御の操作量を徐々に小さくしつつ前記走行制御を中止する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項8】
前記後退接触防止手段は、前記走行制御を行なっているときに前記車両のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて前記走行制御の操作量を小さくする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項9】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された第1の前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記走行制御を行なった後に、前記後方センサにより第2の前記障害物が検知されたときは、第2の前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記走行制御を行なう、請求項4〜8のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項10】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記走行制御を行なった後は、前記障害物についての前記走行制御を行なわない、請求項4〜9のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項11】
車両の前方の障害物を検知する前方センサを有し、車両の前進時に前方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する前進接触防止手段をさらに備え、
前記前進接触防止手段の前記前方センサは、前記後退接触防止手段の前記後方センサとは異なる種類のセンサであり、前記後方センサよりも前記車両から長距離に位置する前記障害物を検知することが可能である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項12】
前記車両から等距離において、前記後方センサの検知可能な範囲は前記前方センサの検知可能な範囲以上である、請求項11に記載の走行支援装置。
【請求項13】
前記車両の前方の障害物を検知する前方センサとしてレーダ、カメラ及びレーザレーダのいずれかを有する、請求項11又は12に記載の走行支援装置。
【請求項1】
車両の後方の障害物を検知する後方センサを有し、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記車両の走行を制御する後退接触防止手段を備え、
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記障害物が前記後方センサにより検知不可能な範囲に接近したときは、前記後方センサにより前記障害物を検知可能であった位置からの前記車両の走行距離に基づいて推定される前記障害物と前記車両との距離に基づいて前記車両の走行を制御する、走行支援装置。
【請求項2】
前記後方センサはソナーである、請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記障害物が前記後方センサにより検知不可能な距離に接近したときは、前記後方センサにより前記障害物を検知可能であった位置からの前記車両の走行距離に基づいて推定される前記障害物と前記車両との距離に基づいて前記車両の走行を制御する、請求項1又は2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物と前記車両との接触を防止するように、前記車両のドライバーの操作によらずに前記車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に前記走行制御の操作量を小さくする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物が前記車両に接近したときは、前記障害物と前記車両との接触を防止するように、前記車両のドライバーの操作によらずに前記車両の速度の制限及び減速の少なくともいずれかの走行制御を行ない、その後に前記走行制御の操作量を小さくする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項6】
前記後退接触防止手段は、前記走行制御を行なった後に所定の条件を満たした場合は前記走行制御を中止する、請求項4又は5に記載の走行支援装置。
【請求項7】
前記後退接触防止手段は、前記走行制御を行なった後に前記走行制御の操作量を徐々に小さくしつつ前記走行制御を中止する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項8】
前記後退接触防止手段は、前記走行制御を行なっているときに前記車両のドライバーによるアクセルペダル操作に応じて前記走行制御の操作量を小さくする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項9】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された第1の前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記走行制御を行なった後に、前記後方センサにより第2の前記障害物が検知されたときは、第2の前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記走行制御を行なう、請求項4〜8のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項10】
前記後退接触防止手段は、前記車両の後退時に前記後方センサにより検知された前記障害物と前記車両との接触を防止するように前記走行制御を行なった後は、前記障害物についての前記走行制御を行なわない、請求項4〜9のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項11】
車両の前方の障害物を検知する前方センサを有し、車両の前進時に前方センサにより検知された障害物と車両との接触を防止するように車両の走行を制御する前進接触防止手段をさらに備え、
前記前進接触防止手段の前記前方センサは、前記後退接触防止手段の前記後方センサとは異なる種類のセンサであり、前記後方センサよりも前記車両から長距離に位置する前記障害物を検知することが可能である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の走行支援装置。
【請求項12】
前記車両から等距離において、前記後方センサの検知可能な範囲は前記前方センサの検知可能な範囲以上である、請求項11に記載の走行支援装置。
【請求項13】
前記車両の前方の障害物を検知する前方センサとしてレーダ、カメラ及びレーザレーダのいずれかを有する、請求項11又は12に記載の走行支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−144157(P2012−144157A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4312(P2011−4312)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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