走行装置
【課題】自律歩行が困難な歩行者を安全に先導することができる歩行支援装置を提供する。
【解決手段】移動方向を入力する操作入力部17を有するとともに、走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体2と、前記操作入力部で入力された移動方向に基づいて前記自走体の走行を制御する走行制御手段51と、前記自走体の周囲の障害物の位置を検出する障害物検出手段52と、前記障害物検出手段で検出した障害物の位置情報と前記走行制御手段の指令値とに基づいて自走体の前記障害物への接触の有無を判定する障害物接触判定手段53と、該障害物接触判定手段の判定結果に基づいて前記走行制御手段の走行方向を補正する走行方向補正手段54とを備えている。
【解決手段】移動方向を入力する操作入力部17を有するとともに、走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体2と、前記操作入力部で入力された移動方向に基づいて前記自走体の走行を制御する走行制御手段51と、前記自走体の周囲の障害物の位置を検出する障害物検出手段52と、前記障害物検出手段で検出した障害物の位置情報と前記走行制御手段の指令値とに基づいて自走体の前記障害物への接触の有無を判定する障害物接触判定手段53と、該障害物接触判定手段の判定結果に基づいて前記走行制御手段の走行方向を補正する走行方向補正手段54とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、色弱者等の自律歩行が困難な歩行者の歩行を支援する走行支援装置、高齢者等の移動を支援するシニアカー、配膳車等の移動をパワーアシストするパワーアシストカート等の走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の走行支援装置としては、大別すると歩行者を目的地に案内する案内ロボットと、盲導犬の変わりになるような盲導装置とに分類される。
案内ロボットとしては、目的地に移動する際の方向指示等、被案内者が目的地へ移動する際に必要な情報をディスプレイに表示し、且つ被案内者を先導しながら目的地へ案内する案内ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の案内ロボットとして、被案内者が目的へ移動する際に必要な情報を、ディスプレイに表示するとともにスピーカから音声で出力し、且つ被案内者を先導しながら目的地へ案内する案内ロボットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、他の案内ロボットとして、カメラ等の撮像手段を用いた画像処理により、被案内者の特徴部位を抽出して被案内者を特定し、特定した被案内者に対して特徴部位を参照しつつ、被案内者を先導しながら目的地へ案内する案内用自律移動ロボットが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0004】
一方、盲導装置としては、障害物や使用者に接近してくるもの、段差などの使用者にとって回避対象となるものを検出して、進行方向に対する進路の修正を行うか、進行方向に対してブレーキをかけることで使用者の誘導を行うようにした盲導装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
また、他の盲導装置として、モニターテレビの画像をメモリーチップに記憶した画像と照合することにより、モニターテレビで撮像した画像が何であるかを判断して使用者に音声で知らせるとともに、突発的に入った画像であるときにはブレーキに信号を送るようにした盲導犬ロボットが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
さらに、目が不自由な飼い主と盲導犬のように接触して誘導するロボットであって、飼い主を認識する手段と、飼い主がロボットに接触していることを認知する手段を備え、飼い主がロボットから離れると飼い主を探して接触する機能を備えたロボットが提案されている(例えは、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−152504号公報
【特許文献2】特開2007−276080号公報
【特許文献3】特開2003−280739号公報
【特許文献4】特開平11−221259号公報
【特許文献5】特開2003−225266号公報
【特許文献6】特開2006−345960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された案内ロボットにあっては、被案内者を画像や音声で目的地まで案内することは可能であるが、目が不自由な歩行者に対して案内誘導することはできないという未解決の課題がある。
これに対して、特許文献1〜3に記載された盲導装置では、予め目的地が入力されている場合には、目が不自由な歩行者に対して案内誘導し、直前の障害物に対しては回避することはできるが、具体的にどのように障害物を検知して判別して視覚障害者を誘導するかについては具体的な記載がなく、盲導犬の変わりになる盲導装置を形成することは不可能であるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、障害物を検知して安全に走行することができる走行装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る走行装置の第1の態様は、移動方向を入力する操作入力部を有するとともに、走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体と、前記操作入力部で入力された移動方向に基づいて前記自走体の走行を制御する走行制御手段と、前記自走体の周囲の障害物の位置を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段で検出した障害物の位置情報と前記走行制御手段の指令値とに基づいて自走体の前記障害物への接触の有無を判定する障害物接触判定手段と、該障害物接触判定手段の判定結果に基づいて前記走行制御手段の走行方向を補正する走行方向補正手段とを備えている。
【0009】
また、本発明に係る走行装置の第2の態様は、前記走行方向補正手段が、障害物との走行軌跡と距離とに基づいて算出される危険度を前記移動速度及び旋回速度の関係で表す危険度マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記危険度マップを参照して走行方向を補正する。
また、本発明に係る走行装置の第3の態様は、前記走行方向補正手段は、障害物に対する到達時間に基づいて危険領域及び斡旋領域を設定した到達時間マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記到達時間マップを参照して走行方向を補正する。
【0010】
また、本発明に係る走行装置の第4の態様は、前記走行制御手段は、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の移動速度を演算する移動速度検出手段と、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の旋回速度を検出する旋回速度検出手段とを備え、前記障害物接触判定手段は、前記自走体の移動速度及び旋回速度に基づいて前記障害物との接触を判定する。
【0011】
また、本発明に係る走行装置の第5の態様は、前記自走体が、基台の前方側上面に後方側に傾斜しながら延長する支持腕が形成された構成を有し、該支持腕の上部に歩行者が把持して移動方向を入力する操作入力部が形成されている。
また、本発明に係る走行装置の第6の態様は、前記自走体が、前記歩行者の肩幅以上の幅を有し、後方側に歩行支援する歩行者の下肢を収める凹部が形成され、前記歩行者を後方に従えて先導して走行する。
【0012】
また、本発明に係る走行装置の第7の態様は、前記操作入力部が、歩行者が把持するグリップ部と、該グリップ部に連結された6軸力センサとで構成されている。
また、本発明に係る走行装置の第8の態様は、前記障害物検出手段が、前記自走体の前方側に水平方向に走査するスキャナ式レンジセンサを有し、該スキャナ式レンジセンサで少なくとも自走体の前方側の所定角度範囲を走査して障害物の位置を検出する。
【0013】
また、本発明に係る走行装置の第9の態様は、前記自走体が、キャスター構造の前輪と、前記走行制御装置によって正逆転駆動される電動モータによって駆動される左右一対の駆動後輪とを備えている。
また、本発明に係る走行装置の第10の態様は、前記障害物検出手段が、前記自走体の走行方向に先行する走行面との距離を計測する走行面距離検出部と、該走行面距離検出部で検出した計測データに基づいて走行面の段差を障害物として検出する床面判定部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動方向を入力する操作入力部を有するとともに走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体を有するので、歩行者又は運転者が操作入力部を操作することにより、歩行者又は運転者の意志に応じた方向に自走体が走行制御される。そして、自走体の走行方向について障害物を検出したときに、走行制御手段の走行方向を補正するので、例えば視覚障害者の意志による方向への歩行を先導しながら安全確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る歩行支援装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】図1の底面図である。
【図5】レーザレンジセンサの検出範囲を示す説明図である。
【図6】走行制御装置を示すブロック図である。
【図7】演算処理装置を示すブロック図である。
【図8】走行制御部で実行する走行制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】自走体と障害物との位置関係を示す模式図である。
【図10】自走体と障害物の位置関係及び危険度マップを示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す障害物への到達時間マップの説明に供する図であり、(a)は障害物と走行体との位置関係を示す図、(b)は到達時間マップを示す特性線図である。
【図12】本発明の他の実施形態における走行制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】図12の修正処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る歩行支援装置の一実施形態を示す斜視図、図2は正面図、図3は右側面図、図4は底面図である。
図中、1は走行装置としての歩行支援装置であって、この歩行支援装置1は、任意の方向に走行する自走体2を有する。この自走体2は、底面から見て前端部が尖った流線形状に形成され且つ例えば歩行を支援する歩行者の膝程度の高さを有する基台3を備えている。この基台3は、その後端面側の幅が歩行者の肩幅以上に形成され、且つ後端面に前方側に凹む歩行者の下肢を収容する凹部4が形成されている。
【0017】
基台3の底面には、前端側にキャスター5が旋回自在に配置され、後方端側の左右位置に駆動輪6L及び6Rが車軸7L及び7Rを左右方向に延長させて回転自在に支持されている。これら駆動輪6L及び6Rの夫々は、車軸7L及び7Rの内側にプーリ8L及び8Rが固定されている。
そして、これらプーリ8L及び8Rと、各駆動輪6L及び6Rの前方側に配置した電動モータ9L及び9Rの回転軸に固定したプーリ10L及び10Rとの間に無端のタイミングベルト11L及び11Rが巻回されて、電動モータ9L及び9Rの回転軸の回転速度と同一回転速度で駆動輪6L及び6Rが回転駆動される。ここで、各電動モータ9L及び9Rには、無励磁状態でブレーキが作動する無励磁作動形ブレーキ12L及び12Rが設けられている。
【0018】
このとき、電動モータ9L及び9Rの回転軸の回転速度を等しくすると、回転軸の回転方向に応じて基台3が前後方向に移動し、左側の駆動輪6Lの回転速度を右側の駆動輪6Rの回転速度より遅い回転速度(又は速い回転速度)で駆動すると基台3が左旋回(又は右旋回)する。
また、左側の駆動輪6L(又は右側の駆動輪6R)を停止させた状態で、右側の駆動輪6R(又は左側の駆動輪6L)を正回転駆動すると信地左(又は右)旋回状態となる。
さらに、左側の駆動輪6L(又は右側の駆動輪6R)を逆回転駆動し、右側の駆動輪6R(又は左側の駆動輪6L)を正回転駆動すると超信地左(又は右)旋回状態となる。
【0019】
このように、左右の駆動輪6L及び6Rの回転速度を制御することにより、基台3を任意の方向に走行させることができる。
また、基台3には、その上面における前端側から後方側に傾斜延長する支持腕15が固定されている。この支持腕15の上端部には、基台3と平行に後方に基台3の凹部4の近傍位置まで延長する水平腕16が形成されている。この水平腕16の上面における後端側には、走行方向を入力する操作入力部17が配置されている。この操作入力部17は、歩行者が一方の手指で把持することが可能なグリップ18と、このグリップ18を連結支持して、グリップ18に加えられたXYZ軸方向の入力を検出する六軸力センサ19とで構成されている。
【0020】
また、基台3の先端側の側面に例えば300度の角度範囲に渡って帯状の開口部21が形成され、この開口部21の先端部に対応する内側に水平方向に後方側の90度の角度範囲を除く270度の角度範囲でレーザ光を使用して障害物までの距離を計測するスキャナ式レンジセンサ22が設けられている。また、水平腕16の前端側に同様に、水平方向に後方側の90度の角度範囲を除く270度の角度範囲でレーザ光を使用して障害物までの距離を計測するスキャナ式レンジセンサ23が設けられている。
【0021】
また、支持腕15の上端側における裏面側には、例えば上方側の120度の角範囲を除く240度の角度範囲で斜め下側の障害物までの距離を計測するスキャナ式レンジセンサ24が設けられ、さらに、支持腕15のスキャナ式レンジセンサ24と対向する前端側に斜め下前方の障害物の画像情報を取得するカメラ25が設けられている。
そして、電動モータ9L及び9Rが、図6に示すように、走行制御装置30によって、駆動制御される。
【0022】
この走行制御装置30は、図6に示すように、自走体2に内蔵するバッテリによって駆動される例えばマイクロコンピュータ等の演算処理装置31を備えている。この演算処理装置31は、機能ブロック図で表すと図7に示すように、走行制御部51と、障害物検出部52と、障害物接触判定部53と、走行方向補正部54とを備えている。また、演算処理装置31は、図6に示すように、センサ信号入力I/F61と、速度指令値出力I/F62と、回転角度位置入力I/F63と、音声出力I/F64とを備えている。
【0023】
センサ信号入力I/F61には、前述した操作入力部17の六軸力センサ19と、各スキャナ式レンジセンサ22〜24と、カメラ25とが接続されている。そして、センサ信号I/F61では、六軸力センサ19から出力されるX,Y,Z軸の3軸方向に付与される力Fx、Fy及びFzと、X,Y.Z軸の3軸回りのモーメントMx、My及びMzとを読込む。また、センサ信号入力I/F61では、スキャナ式レンジセンサ22〜24から出力される障害物位置情報と、カメラ25で撮像した画像情報とを読込む。
【0024】
速度指令値出力I/F62は、走行制御部51で生成した速度指令値を、電動モータ9L及び9Rを駆動する自走体2に内蔵するバッテリから電力が供給されたモータドライバ65L及び65Rに出力する。回転角度位置入力I/F63は、電動モータ9L及び9Rの回転角度位置を検出するエンコーダ66L及び66Rから出力される回転角度位置情報を読込み、走行制御部51へ出力する。
【0025】
音声出力I/F64は、例えば、障害物検出部52で障害物の接近を検出したときに出力される音声を含む警報情報をスピーカ67へ出力する。
走行制御部51では、図示しない始動スイッチをオン状態とすることにより、図8に示す走行制御処理を実行して、電動モータ9L及び9Rに対する速度指令値を生成する。
この走行制御処理は、先ず、ステップS1で、操作入力部17の六軸力センサ19から出力されるX,Y,Z軸に付与される力Fx,Fy及びFzと、X,Y,Z軸回りのモーメントMx,My及びMzを読込む。
【0026】
次いで、ステップS2に移行して、ステップS1で入力した力Fz〜Fzのうち先導を要する歩行者がグリップ18を把持したか否かを検出するためのZ軸に付与される力Fzを抽出し、抽出した力Fzが予め設定した把持力閾値Fzth以上であるか否かを判定する。このステップS2の判定結果が、Fz<Fzthであるときには、先導を要する歩行者がグリップ18を把持していないと判断して、前記ステップS1に戻り、Fz≧Fzthとなるまで待機する。一方、ステップS2の判定結果が、Fz≧FzthであるときにはステップS3に移行する。
【0027】
このステップS3では、各電動モータ9L及び9Rの無励磁作動形ブレーキ12L及び12Rに対して電力を供給してブレーキを解除してからステップS4に移行する。このステップS4では、ステップS1で入力した力Fx〜Fz及びモーメントMx〜Mzのうち、自走体2の前後進走行に関与する前後方向の力であるY軸方向の力Fyと自走体2の旋回走行に関与するZ軸回りのモーメントMzを算出する。
【0028】
次いで、ステップS5に移行して、自走体2の仮想質量をMとしたときに、Y軸方向の力Fyに基づいて下記(1)式の演算を行って自走体2の前後進速度V〔m/s〕を算出し、算出した前後進速度VをRAM等に形成した前後進速度記憶部に更新記憶してからステップS6に移行する。
V=∫(Fy/M)dt …………(1)
【0029】
ステップS6では、自走体2のZ軸回りの仮想慣性モーメントをIrzとしたときに、Z軸回りのモーメントMzに基づいて下記(2)式の演算を行って旋回速度ω〔rad/s〕を算出し、算出した旋回速度ωをRAM等に形成した旋回速度記憶部に更新記憶してからステップS7に移行する。
ω=∫(Mz/Irz)dt …………(2)
【0030】
このステップS7では、算出した前後進速度V及び旋回速度ωをもとに、図10に示す危険度マップを参照して後述する修正処理を行ってからステップS8に移行する。
ステップS8では、ステップS5で算出した前後進速度V及びステップS6で算出した旋回速度ωとに基づいて下記(3)式及び(4)式の演算を行って駆動輪6L及び6Rの車輪周速度VL〔m/s〕及びVR〔m/s〕を算出する。
VL=V+Lw・ω/2 …………(3)
VR=V−Lw・ω/2 …………(4)
ここで、Lwは、左右の駆動輪6L及び6Rの車輪間距離〔m〕である。
【0031】
次いで、ステップS9に移行して、算出した駆動輪6L及び6Rの車輪周速度VL及びVRに基づいて電動モータ9L及び9Rの速度指令値VML及びVMRを算出し、算出した速度指令値VML及びVMRを速度指令値出力I/F62を介してモータドライバ65L及び65Rに出力する。
障害物検出部52では、スキャナ式レンジセンサ22及び23で測定したスキャン角度及び距離検出値を読込み、障害物の位置及び障害物までの距離を算出する。ここで、障害物が複数存在する場合には、各障害物について位置及び障害物までの距離を算出する。
【0032】
障害物接触判定部53では、前後進速度記憶部に更新記憶されている前後進速度V及び旋回速度記憶部に更新記憶されている旋回速度ωを読込むと共に、障害物検出部52で検出した障害物の位置及び距離に基づいて自走体2が障害物に接触するか可能性を判定する。この障害物接触判定部53では、障害物の位置及び距離と、自走体2の前後進速度V及び旋回速度ωを変化させた場合の様々な走行軌跡を演算し、演算した走行軌跡のなかで障害物と接触する可能性のある走行軌跡を抽出し、抽出した走行軌跡についてこの走行軌跡上の自走体2と障害物までの距離dを例えば図9に示すように算出する。
【0033】
そして、算出した距離dと予め設定した危険度を決定する閾値距離Duとに基づいてd>Duであるときには、危険度uを0に設定し、d≦Duであるときには、下記(5)式の演算を行って危険度uを算出する。
u=(Du−d)/Du …………(5)
【0034】
また、障害物と接触する可能性のある走行軌跡と危険度uとに基づいて図10(b)に示す危険度マップを算出して、RAM等に形成した危険度マップ記憶部に記憶する。この危険度マップは、自走体2が図10(a)に示すように自走体2の走行方向の両側にポール等の複数の障害物が存在する場合に、前後進速度Vと旋回速度ωとの比で形成する。すなわち、横軸に旋回速度ωをとり、縦軸に前後進速度Vをとったときに、図10(b)で、白地の範囲は危険度uが低い領域を表し、ハッチング部分は危険度uが高い領域を表している。この危険度マップでは、前後進速度V及び旋回速度ωの比で設定されたため、原点を中心として放射状の線上の各点では危険度が同じ値となる。このため、危険度は原点を中心とする円周方向の角度θによって調整することが可能となる。
【0035】
走行方向補正部54では、前後進速度記憶部に更新記憶されている前後進速度V及び旋回速度記憶部に更新記憶されている旋回速度ωを読込むと共に、危険度マップ記憶部に記憶されている危険度マップを読込んで、危険度に応じて前後進速度V及び旋回速度ωを修正する修正処理を行って走行方向を変更する。
この走行方向の修正処理は、操作入力部17から入力される指示情報に基づいて算出される前後進速度V及び旋回速度ωで表される危険度マップ上の点が危険度の低い領域内にある場合には、前後進速度V及び旋回速度ωでの走行が可能であり、そのままの走行を許容するが、危険度の高い領域内にある場合には、前後進速度V及び旋回速度ωでの走行が不可能であり、危険度の低い速度に補正する。
【0036】
すなわち、図10(b)の状態では、前後進速度V及び旋回速度ωによってB点が指示された場合には、このB点が進行方向左側の危険度が高い領域に位置するため、角度θを大きくして危険度が小さい領域となるように旋回速度ωを補正する。逆に、前後進速度V及び旋回速度ωによってC点が指示された場合には、このC点が進行方向右側の危険度が高い領域に位置するため、角度θを小さくして危険度が小さい領域となるように旋回速度ωを補正する。
【0037】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、図示しない始動スイッチがオフ状態であるときには、自走体2に内蔵するバッテリの電力が走行制御装置30及びモータドライバ65L及び65Rに供給されず、電動モータ9L及び9Rは停止状態となっていると共に、無励磁作動形ブレーキ12L及び12Rが電力が供給されることなくブレーキ作動状態となっており、自走体2の走行が停止されている。
この自走体2の走行停止状態から、始動スイッチをオン状態とすると、走行制御装置30及びモータドライバ65L及び65Rに自走体2に内蔵するバッテリから電力が供給されて自走体2が走行可能状態となる。
【0038】
このとき、走行制御装置30に電力が供給されて、走行制御部51で図8に示す走行制御処理を実行開始する。このとき、先導を要する歩行者が操作入力部17のグリップ18を把持していないときには、この操作入力部17の六軸力センサ19から出力されるZ軸方向の力Fzが略“0”であり、把持力閾値Fzth未満となるので、ステップS2でFz≧Fzthとなるまで待機する。このため、電動モータ9L及び9Rに対する速度指令値は出力されることがなく、自走体2は停止状態を維持する。
【0039】
この自走体2の停止状態で、先導を要する色弱者等の自律歩行が困難な歩行者が自走体2の後方側の凹部4に下肢収納するようにして自走体2の後方に立ち、手で操作入力部17のグリップ18を把持すると、これにより、六軸力センサ19から少なくとも手の重さに応じた把持力閾値Fzthより大きな値のZ軸方向の力Fzが出力される。
このため、図8の走行制御処理で、ステップS2からステップS3に移行して、実際の走行制御が開始される。このとき、障害物検出部52で障害物を検出していない場合について説明する。
【0040】
歩行者がグリップ18を把持しながら、進みたい方向を入力すると、これに応じたX,Y,Z軸に付与される力Fz,Fy及びFzが出力されると共に、Z,Y,Z軸回りのモーメントMx,My及びMzが出力される。
このとき、歩行者が前進した場合には、グリップ18を前方に押すことにより、Y軸方向の力Fyが出力される。このため、力Fzに基づいて前出した(1)式にしたがって正値の前後進速度Vが算出される(ステップS5)。このとき、グリップ18が回動されていないので、Z軸回りのモーメントMzは発生せず、前述した(2)式にしたがって算出される旋回速度ωは“0”となる(ステップS6)。
【0041】
この場合には、旋回速度ωが“0”であるので、前述した(3)式及び(4)式で算出される駆動輪6L及び6Rの車輪周速度VL及びVRは互いに等しい前後進速度Vとなり、これら車輪周速度VL及びVRに基づいて電動モータ9L及び9Rに対する互いに等しい速度指令値が算出され、この速度指令値が速度指令値出力I/F62を介してモータドライバ65L及び65Rに出力される(ステップS7)。
【0042】
このため、モータドライバ65L及び65Rによって、電動モータ9L及び9Rが互いに等しい速度指令値に応じて回転駆動されることにより、自走体2が前方に直進する。
一方、歩行者がグリップ18を前方に傾倒させながら例えば時計方向に回動させる力を付与すると、これに応じたY軸方向に付与される力FyとZ軸回りのモーメントMzが六軸力センサ19から出力される。
【0043】
このため、ステップS7で、Z軸回りのモーメントMzに基づいて正値の旋回速度ωが算出されることになり、この旋回速度ωとステップS6で算出される前後進速度Vとに基づいて前述した(3)式及び(4)式の演算を行うことにより、左駆動輪6Lの車輪周速度VLが前後進速度Vより速くなり、右駆動輪6Rの車輪周速度VRが前後進速度Vより遅くなる。そして、これら車輪周速度VL及びVRに応じた速度指令値が速度指令値出力I/F62を介してモータドライバ65L及び65Rに出力される。このため、電動モータ9Lが電動モータ9Rに比較して速い回転速度で駆動されることにより、自走体2が右旋回しながら前進する。
このように、自走体2の進行方向に障害物が存在しない場合には、上述したように、グリップ18に入力される進行方向指示及び旋回指示に応じて自走体2が自由に走行することができる。
【0044】
しかしなから、自走体2には、基台3の先端部にスキャナ式レンジセンサ22が配設され、支持腕15の上端にもスキャナ式レンジセンサ23が配置されている。このため、スキャナ式レンジセンサ22では、走行面に近い水平方向の図5で扇状領域A1の障害物を検出し、スキャナ式レンジセンサ23では、歩行者の胸部位置に近い水平方向の図5で扇状領域A2の障害物を検出する。このように、スキャナ式レンジセンサ22及び23では、レーザ光で水平面を走査するので、レーザ光の出射角度と出射時間から障害物で反射して戻るまでの時間を計測することにより、障害物までの距離を検出することができる。したがって、スキャナ式レンジセンサ22及び23によって、自走体2から見た障害物の幅も検出することができる。
【0045】
そして、障害物検出部52で障害物を検出すると、障害物接触判定部53で、障害物が自走体2に接触するか否かを判定する。すなわち、例えばスキャナ式レンジセンサ22で、図9に示すように、例えば自走体2の進行方向の右側に例えばポール状の障害物P1を検出した場合には、自走体2の前後進速度Vと旋回速度ωとから自走体2の走行軌跡を予測することができ、逆に自走体2から見た障害物P1の軌道L1を予測することができる。そして、障害物P1の軌道L1が自走体2の形状と交差する場合には、自走体2に障害物P1が接触する可能性があり、軌道L1が自走体2の形状と交差しない場合には障害物P1が接触する可能性はない。
【0046】
そして、障害物P1が自走体2に接触する可能性がある場合には、軌道L1上における障害物P1と自走体2との距離dを算出する。そして、算出した距離dが予め設定した閾値距離Du以上であるときには、危険度uを“0”に設定し、距離dが閾値距離Du未満となると、前述した(5)式にしたがって、危険度uを算出する。このときの危険度uは、距離dが閾値距離Duより短くなり零に近づくにしたがって“1”に近づく。このため、危険度uが“1”となる前に、前後進速度V及び旋回速度ωを補正することにより、障害物P1と自走体2との接触を回避する。この場合、前後進速度Vを“0”に設定することにより、自走体2の走行を停止させることができ、旋回速度ωを補正することにより、自走体2の走行方向を変更して自走体2と障害物P1との接触を回避して走行することができる。
【0047】
一方、障害物検出部52で、図10(a)に示すように、自走体2の走行方向の両側に例えばポール状の複数の障害物が存在する場合には、それぞれの障害物に対して危険度を算出し、その最大値を危険度とする。このとき、障害物接触判定部53の危険度演算部53aで、自走体2の様々な前後進速度Vと旋回速度ωについて演算することにより、図10(b)に示す危険度マップを算出し、算出した危険度マップを危険度マップ記憶部に記憶する。
【0048】
この図10(b)示す危険度マップでは、横軸に旋回速度ωをとり、縦軸に前後進速度Vをとって自走体2の速度に応じた危険度を表している。図10(a)に示すように、自走体2の側面が左側の障害物P2に比較的短い距離で接近し、自走体2の右側では右側の障害物P3に対して比較的広い距離がある状態では、自走体2が左側の障害物P2に対しては僅かに接近することは可能であり、右側の障害物P3に対して今のとこと右斜め前方に進むことは可能であるので、危険度マップとしては図10(b)に示すように、自走体2の重心位置の原点Oを中心として、左斜め前方には僅かな角度で危険度が少ない領域A11が形成され、右斜め前方には比較的大きな角度で危険度が少ない領域A12が形成される。
【0049】
この状態で、グリップ18から自走体を旋回させることなく前進させる操作入力があったときには、算出される前後進速度Vが正値であり、算出される旋回速度ωが0であるので、これらによって表される座標は領域A11及びA12の境界位置となる。このため、走行方向補正部54では、前後進速度Vに対する補正値ΔV及び旋回速度ωに対する補正値Δωをともに“0”に設定することにより、グリップ18から入力された方向指示にしたがって自走体2が直進走行される。
【0050】
ところが、グリップ18から自走体を左旋回させながら走行させる入力があり、これに基づいて算出される前後進速度V及び旋回速度ωの座標が図10(b)でB点であるものとすると、このB点は危険度uが大きい領域A11内に存在するので、危険度を回避する角度θを大きな値として旋回速度ωに対する補正値Δωを大きな値として旋回速度ωを略零に近い値に補正する。これにより、左側の障害物P2を回避しながら直進走行をすることができる。
【0051】
逆に、グリップ18から自走体を右旋回させながら走行させる入力があり、これに基づいて算出される前後進速度V及び旋回速度ωの座標が図10(b)でC点であるものとすると、このC点は危険度uが大きい領域A12内に存在するので、危険度を回避する角度θを小さな値として旋回速度ωに対する補正値Δωを負の値として旋回速度ωを許容範囲内となるように補正する。これにより、左側の障害物P2を回避しながら右斜め全方向に走行をすることができる。
【0052】
そして、自走体2が移動するごとに、新たな危険度マップが算出されることにより、この新たな危険度マップにしたがって、走行方向の補正が行われる。したがって、図10(a)に示すように、自走体2の走行方向の両側沿って複数の障害物が存在する場合でも、自走体2を障害物に接触することなく走行させることができる。このため、自走体2に先導される歩行者も障害物に接触することなく歩行することができる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、前後進車速Vと旋回速度ωを変化させた場合の走行軌跡を抽出し、走行軌跡上の自走体2と障害物P1までの距離dを算出し、算出した距離dと危険度を決定する閾値距離Duとに基づいて危険度uを算出する危険度マップを参照して前後進速度V及び旋回速度ωを補正して走行方向を変更するようにしている。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、図11(a)に示すように、走行体2がその前方に進行方向と直行する方向に複数の障害物Paが存在するものとしたときに、図11(b)に示す到達時間マップを算出するようにしてもよい。
【0054】
この到達時間マップは、各障害物Paとの間の走行軌跡上の距離dを前後進速度Vで除すことにより、衝突までの時間t(=d/V)を算出し、算出した衝突時間tが衝突回避可能な閾値時間tTH以下であるときに危険領域とし、衝突時間が閾値時間tTHを超えているときに安全領域として設定することを様々な前後進車速V及び旋回速度ωに基づいて繰り返すことにより、図11(b)に示す到達時間マップを算出する。
【0055】
そして、走行中の前後進速度V及び旋回速度ωに基づいて到達時間マップを参照して、斜線図示の危険領域A21内であるか白地図示の安全領域A22内であるかを判定し、前後進速度V及び旋回速度ωで表される到達時間マップ上の点Aが危険領域A21内にあるときには、最近傍の安全領域A22の点A′を選択する。
このとき、選択した点A′の前後進車速V′が危険領域A21内の点Aより下がり過ぎる場合には、選択した点A′に対して前後進車速Vが一定で旋回速度ωを増加させる点A″を選択する。
【0056】
このように、点A″を選択することにより、前後進速度Vの危険領域A21までの余裕が増えることになり、より滑らかに危険領域A21への走行を回避することができる。
具体的には、図7に示す走行制御部51では、図12に示す走行制御処理を実行する。
この走行制御処理では、前述した図8の走行制御処理におけるステップS7の処理が算出した前後進速度V及び旋回速度ωに基づいて図11(b)に示す到達時間マップを参照し、前後進速度V及び旋回速度ωの修正が必要であるか否かを判定し、修正が必要なときには、前後進速度V及び旋回速度ωを修正するステップS10に変更されている。
【0057】
このステップS10の修正処理は、図13に示すように、先ず、ステップS11で、算出された前後進速度V及び旋回速度ωの交点Aが危険領域A21内であるか否かを判定し、交点Aが安全領域A22にあるときにはそのまま修正処理を終了してステップS8に移行する。
一方、ステップS11の判定結果が、交点Aが危険領域A21にあるときには、ステップS12に移行して、交点Aから最近傍の安全領域A22の点A′を選択してからステップS13に移行する。
【0058】
このステップS13では、交点A及び点A′の前後進速度Vの偏差ΔVを算出し、次いでステップS14に移行して、算出した速度偏差ΔVが設定値ΔVs以上であるか否かを判定し、ΔV<ΔVsであるときにはステップS15に移行して、点A′の前後進速度V′及び旋回速度ω′を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定してからステップS8に移行する。
【0059】
一方、ステップS14の判定結果がΔV≧ΔVsであるときにはステップS16に移行して、現在の旋回速度ω′により安全方向となる所定値Δωを加減算した点(V′,ω′±Δω)を新たな修正点A″として選択し、次いでステップS17に移行して、修正点A″の前後進速度V″及び旋回速度ω″を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定してからステップS8に移行する。
【0060】
したがって、上記図13の修正処理を実行することにより、ステップS5及びS6で算出した前後進速度V及び旋回速度ωをもとに到達時間マップを参照したときに、図11(b)に示すように、交点Aが危険領域A21内に存在するときには、最近傍の安全領域A22の点A′を選択する。このとき、選択した点A′の前後進速度V′と最初の交点Aの前後進速度Vとの速度偏差ΔVが設定値ΔVs未満であるときにはそのまま点A′を修正点として設定し、この修正点A′の前後進速度V′及び旋回速度ω′を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定する。
【0061】
しかしながら、図11(b)に示すように、修正点A′の前後進速度V′の低下が大きく速度偏差ΔVが設定値ΔVs以上となるときには修正点A′の旋回速度ω′により安全側となる符号の所定値Δωを加算した修正点A″を選択し、この選択点A″の前後進速度V′及び旋回速度ω′を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定する。
このように、修正点A″を選択することにより、前後進速度Vの危険領域A21までの余裕が増えることになり、より滑らかに危険領域A21への走行を回避することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、自走体2の水平方向の障害物を回避しながら走行する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示すように、自走体2の前方に垂直面に対してレーザ光をスキャンするスキャナ式レンジセンサ70を配置し、このスキャナ式レンジセンサ70で床面を走査する。そして、スキャナ式レンジセンサ70で検出した距離情報を床面判定部71に入力する。この床面判定部71では、床面が平面であるか否かを判定する。すなわち、スキャナ式レンジセンサ70で検出される走査角度θ(センサの真下をθ=90度とする)と検出距離との正弦関係から床面との距離を算出し、算出した床面距離が長くなったときに、下がる段差があるものと判断することができる。このときの測定距離を床面高さに修正し、修正した点を障害物として判断することにより、水平面での障害物を回避する上述した実施形態と同様に段差を回避する走行制御を行うことができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、自走体2として、前側にキャスター5を設置し、後輪側に駆動輪6L及び6Rを設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前側の左右位置に駆動輪を配置し、後輪側にキャスターを配置するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、自走体2を2輪駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、自動車のように前後に2輪ずつ配置し、前後の一方を転舵輪とすることにより、走行方向を制御するようにしてもよい。この場合でも転舵輪の転舵角に基づいて走行軌跡を算出することができ、障害物との接触を判定することができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、障害物検出部52としてスキャナ式レンジセンサ22,23を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、超音波式センサ等の他の測距センサを適用することができる。また、スキャナ式レンジセンサに代えて、1方向にレーザ光を出射する測距センサをZ軸方向に回動させて走査するようにしてもよい。
さらに、本発明は、上述した歩行支援装置に適用する場合に限らず、配膳車などにパワーアシスト機能を付加したパワーアシストカートや高齢者向けの一人乗り電動車両であるシニアカー等の任意の走行装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…歩行支援装置、2…自走体、3…基台、4…凹部、5…キャスター、6L,6R…駆動輪、11L,11R…タイミングベルト、12L,12R…無励磁作動形ブレーキ、15…支持腕、16…水平腕、17…操作入力部、18…グリップ、19…六軸力センサ、22〜24…スキャナ式レンジセンサ、30…走行制御装置、31…演算処理装置、51…走行制御部、52…障害物検出部、53…障害物接触判定部、54…走行方向補正部、65L,65R…モータドライバ、70…スキャナ式レンジセンサ、71…床判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、色弱者等の自律歩行が困難な歩行者の歩行を支援する走行支援装置、高齢者等の移動を支援するシニアカー、配膳車等の移動をパワーアシストするパワーアシストカート等の走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の走行支援装置としては、大別すると歩行者を目的地に案内する案内ロボットと、盲導犬の変わりになるような盲導装置とに分類される。
案内ロボットとしては、目的地に移動する際の方向指示等、被案内者が目的地へ移動する際に必要な情報をディスプレイに表示し、且つ被案内者を先導しながら目的地へ案内する案内ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の案内ロボットとして、被案内者が目的へ移動する際に必要な情報を、ディスプレイに表示するとともにスピーカから音声で出力し、且つ被案内者を先導しながら目的地へ案内する案内ロボットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、他の案内ロボットとして、カメラ等の撮像手段を用いた画像処理により、被案内者の特徴部位を抽出して被案内者を特定し、特定した被案内者に対して特徴部位を参照しつつ、被案内者を先導しながら目的地へ案内する案内用自律移動ロボットが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0004】
一方、盲導装置としては、障害物や使用者に接近してくるもの、段差などの使用者にとって回避対象となるものを検出して、進行方向に対する進路の修正を行うか、進行方向に対してブレーキをかけることで使用者の誘導を行うようにした盲導装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
また、他の盲導装置として、モニターテレビの画像をメモリーチップに記憶した画像と照合することにより、モニターテレビで撮像した画像が何であるかを判断して使用者に音声で知らせるとともに、突発的に入った画像であるときにはブレーキに信号を送るようにした盲導犬ロボットが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
さらに、目が不自由な飼い主と盲導犬のように接触して誘導するロボットであって、飼い主を認識する手段と、飼い主がロボットに接触していることを認知する手段を備え、飼い主がロボットから離れると飼い主を探して接触する機能を備えたロボットが提案されている(例えは、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−152504号公報
【特許文献2】特開2007−276080号公報
【特許文献3】特開2003−280739号公報
【特許文献4】特開平11−221259号公報
【特許文献5】特開2003−225266号公報
【特許文献6】特開2006−345960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された案内ロボットにあっては、被案内者を画像や音声で目的地まで案内することは可能であるが、目が不自由な歩行者に対して案内誘導することはできないという未解決の課題がある。
これに対して、特許文献1〜3に記載された盲導装置では、予め目的地が入力されている場合には、目が不自由な歩行者に対して案内誘導し、直前の障害物に対しては回避することはできるが、具体的にどのように障害物を検知して判別して視覚障害者を誘導するかについては具体的な記載がなく、盲導犬の変わりになる盲導装置を形成することは不可能であるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、障害物を検知して安全に走行することができる走行装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る走行装置の第1の態様は、移動方向を入力する操作入力部を有するとともに、走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体と、前記操作入力部で入力された移動方向に基づいて前記自走体の走行を制御する走行制御手段と、前記自走体の周囲の障害物の位置を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段で検出した障害物の位置情報と前記走行制御手段の指令値とに基づいて自走体の前記障害物への接触の有無を判定する障害物接触判定手段と、該障害物接触判定手段の判定結果に基づいて前記走行制御手段の走行方向を補正する走行方向補正手段とを備えている。
【0009】
また、本発明に係る走行装置の第2の態様は、前記走行方向補正手段が、障害物との走行軌跡と距離とに基づいて算出される危険度を前記移動速度及び旋回速度の関係で表す危険度マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記危険度マップを参照して走行方向を補正する。
また、本発明に係る走行装置の第3の態様は、前記走行方向補正手段は、障害物に対する到達時間に基づいて危険領域及び斡旋領域を設定した到達時間マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記到達時間マップを参照して走行方向を補正する。
【0010】
また、本発明に係る走行装置の第4の態様は、前記走行制御手段は、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の移動速度を演算する移動速度検出手段と、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の旋回速度を検出する旋回速度検出手段とを備え、前記障害物接触判定手段は、前記自走体の移動速度及び旋回速度に基づいて前記障害物との接触を判定する。
【0011】
また、本発明に係る走行装置の第5の態様は、前記自走体が、基台の前方側上面に後方側に傾斜しながら延長する支持腕が形成された構成を有し、該支持腕の上部に歩行者が把持して移動方向を入力する操作入力部が形成されている。
また、本発明に係る走行装置の第6の態様は、前記自走体が、前記歩行者の肩幅以上の幅を有し、後方側に歩行支援する歩行者の下肢を収める凹部が形成され、前記歩行者を後方に従えて先導して走行する。
【0012】
また、本発明に係る走行装置の第7の態様は、前記操作入力部が、歩行者が把持するグリップ部と、該グリップ部に連結された6軸力センサとで構成されている。
また、本発明に係る走行装置の第8の態様は、前記障害物検出手段が、前記自走体の前方側に水平方向に走査するスキャナ式レンジセンサを有し、該スキャナ式レンジセンサで少なくとも自走体の前方側の所定角度範囲を走査して障害物の位置を検出する。
【0013】
また、本発明に係る走行装置の第9の態様は、前記自走体が、キャスター構造の前輪と、前記走行制御装置によって正逆転駆動される電動モータによって駆動される左右一対の駆動後輪とを備えている。
また、本発明に係る走行装置の第10の態様は、前記障害物検出手段が、前記自走体の走行方向に先行する走行面との距離を計測する走行面距離検出部と、該走行面距離検出部で検出した計測データに基づいて走行面の段差を障害物として検出する床面判定部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動方向を入力する操作入力部を有するとともに走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体を有するので、歩行者又は運転者が操作入力部を操作することにより、歩行者又は運転者の意志に応じた方向に自走体が走行制御される。そして、自走体の走行方向について障害物を検出したときに、走行制御手段の走行方向を補正するので、例えば視覚障害者の意志による方向への歩行を先導しながら安全確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る歩行支援装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】図1の底面図である。
【図5】レーザレンジセンサの検出範囲を示す説明図である。
【図6】走行制御装置を示すブロック図である。
【図7】演算処理装置を示すブロック図である。
【図8】走行制御部で実行する走行制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】自走体と障害物との位置関係を示す模式図である。
【図10】自走体と障害物の位置関係及び危険度マップを示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す障害物への到達時間マップの説明に供する図であり、(a)は障害物と走行体との位置関係を示す図、(b)は到達時間マップを示す特性線図である。
【図12】本発明の他の実施形態における走行制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】図12の修正処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る歩行支援装置の一実施形態を示す斜視図、図2は正面図、図3は右側面図、図4は底面図である。
図中、1は走行装置としての歩行支援装置であって、この歩行支援装置1は、任意の方向に走行する自走体2を有する。この自走体2は、底面から見て前端部が尖った流線形状に形成され且つ例えば歩行を支援する歩行者の膝程度の高さを有する基台3を備えている。この基台3は、その後端面側の幅が歩行者の肩幅以上に形成され、且つ後端面に前方側に凹む歩行者の下肢を収容する凹部4が形成されている。
【0017】
基台3の底面には、前端側にキャスター5が旋回自在に配置され、後方端側の左右位置に駆動輪6L及び6Rが車軸7L及び7Rを左右方向に延長させて回転自在に支持されている。これら駆動輪6L及び6Rの夫々は、車軸7L及び7Rの内側にプーリ8L及び8Rが固定されている。
そして、これらプーリ8L及び8Rと、各駆動輪6L及び6Rの前方側に配置した電動モータ9L及び9Rの回転軸に固定したプーリ10L及び10Rとの間に無端のタイミングベルト11L及び11Rが巻回されて、電動モータ9L及び9Rの回転軸の回転速度と同一回転速度で駆動輪6L及び6Rが回転駆動される。ここで、各電動モータ9L及び9Rには、無励磁状態でブレーキが作動する無励磁作動形ブレーキ12L及び12Rが設けられている。
【0018】
このとき、電動モータ9L及び9Rの回転軸の回転速度を等しくすると、回転軸の回転方向に応じて基台3が前後方向に移動し、左側の駆動輪6Lの回転速度を右側の駆動輪6Rの回転速度より遅い回転速度(又は速い回転速度)で駆動すると基台3が左旋回(又は右旋回)する。
また、左側の駆動輪6L(又は右側の駆動輪6R)を停止させた状態で、右側の駆動輪6R(又は左側の駆動輪6L)を正回転駆動すると信地左(又は右)旋回状態となる。
さらに、左側の駆動輪6L(又は右側の駆動輪6R)を逆回転駆動し、右側の駆動輪6R(又は左側の駆動輪6L)を正回転駆動すると超信地左(又は右)旋回状態となる。
【0019】
このように、左右の駆動輪6L及び6Rの回転速度を制御することにより、基台3を任意の方向に走行させることができる。
また、基台3には、その上面における前端側から後方側に傾斜延長する支持腕15が固定されている。この支持腕15の上端部には、基台3と平行に後方に基台3の凹部4の近傍位置まで延長する水平腕16が形成されている。この水平腕16の上面における後端側には、走行方向を入力する操作入力部17が配置されている。この操作入力部17は、歩行者が一方の手指で把持することが可能なグリップ18と、このグリップ18を連結支持して、グリップ18に加えられたXYZ軸方向の入力を検出する六軸力センサ19とで構成されている。
【0020】
また、基台3の先端側の側面に例えば300度の角度範囲に渡って帯状の開口部21が形成され、この開口部21の先端部に対応する内側に水平方向に後方側の90度の角度範囲を除く270度の角度範囲でレーザ光を使用して障害物までの距離を計測するスキャナ式レンジセンサ22が設けられている。また、水平腕16の前端側に同様に、水平方向に後方側の90度の角度範囲を除く270度の角度範囲でレーザ光を使用して障害物までの距離を計測するスキャナ式レンジセンサ23が設けられている。
【0021】
また、支持腕15の上端側における裏面側には、例えば上方側の120度の角範囲を除く240度の角度範囲で斜め下側の障害物までの距離を計測するスキャナ式レンジセンサ24が設けられ、さらに、支持腕15のスキャナ式レンジセンサ24と対向する前端側に斜め下前方の障害物の画像情報を取得するカメラ25が設けられている。
そして、電動モータ9L及び9Rが、図6に示すように、走行制御装置30によって、駆動制御される。
【0022】
この走行制御装置30は、図6に示すように、自走体2に内蔵するバッテリによって駆動される例えばマイクロコンピュータ等の演算処理装置31を備えている。この演算処理装置31は、機能ブロック図で表すと図7に示すように、走行制御部51と、障害物検出部52と、障害物接触判定部53と、走行方向補正部54とを備えている。また、演算処理装置31は、図6に示すように、センサ信号入力I/F61と、速度指令値出力I/F62と、回転角度位置入力I/F63と、音声出力I/F64とを備えている。
【0023】
センサ信号入力I/F61には、前述した操作入力部17の六軸力センサ19と、各スキャナ式レンジセンサ22〜24と、カメラ25とが接続されている。そして、センサ信号I/F61では、六軸力センサ19から出力されるX,Y,Z軸の3軸方向に付与される力Fx、Fy及びFzと、X,Y.Z軸の3軸回りのモーメントMx、My及びMzとを読込む。また、センサ信号入力I/F61では、スキャナ式レンジセンサ22〜24から出力される障害物位置情報と、カメラ25で撮像した画像情報とを読込む。
【0024】
速度指令値出力I/F62は、走行制御部51で生成した速度指令値を、電動モータ9L及び9Rを駆動する自走体2に内蔵するバッテリから電力が供給されたモータドライバ65L及び65Rに出力する。回転角度位置入力I/F63は、電動モータ9L及び9Rの回転角度位置を検出するエンコーダ66L及び66Rから出力される回転角度位置情報を読込み、走行制御部51へ出力する。
【0025】
音声出力I/F64は、例えば、障害物検出部52で障害物の接近を検出したときに出力される音声を含む警報情報をスピーカ67へ出力する。
走行制御部51では、図示しない始動スイッチをオン状態とすることにより、図8に示す走行制御処理を実行して、電動モータ9L及び9Rに対する速度指令値を生成する。
この走行制御処理は、先ず、ステップS1で、操作入力部17の六軸力センサ19から出力されるX,Y,Z軸に付与される力Fx,Fy及びFzと、X,Y,Z軸回りのモーメントMx,My及びMzを読込む。
【0026】
次いで、ステップS2に移行して、ステップS1で入力した力Fz〜Fzのうち先導を要する歩行者がグリップ18を把持したか否かを検出するためのZ軸に付与される力Fzを抽出し、抽出した力Fzが予め設定した把持力閾値Fzth以上であるか否かを判定する。このステップS2の判定結果が、Fz<Fzthであるときには、先導を要する歩行者がグリップ18を把持していないと判断して、前記ステップS1に戻り、Fz≧Fzthとなるまで待機する。一方、ステップS2の判定結果が、Fz≧FzthであるときにはステップS3に移行する。
【0027】
このステップS3では、各電動モータ9L及び9Rの無励磁作動形ブレーキ12L及び12Rに対して電力を供給してブレーキを解除してからステップS4に移行する。このステップS4では、ステップS1で入力した力Fx〜Fz及びモーメントMx〜Mzのうち、自走体2の前後進走行に関与する前後方向の力であるY軸方向の力Fyと自走体2の旋回走行に関与するZ軸回りのモーメントMzを算出する。
【0028】
次いで、ステップS5に移行して、自走体2の仮想質量をMとしたときに、Y軸方向の力Fyに基づいて下記(1)式の演算を行って自走体2の前後進速度V〔m/s〕を算出し、算出した前後進速度VをRAM等に形成した前後進速度記憶部に更新記憶してからステップS6に移行する。
V=∫(Fy/M)dt …………(1)
【0029】
ステップS6では、自走体2のZ軸回りの仮想慣性モーメントをIrzとしたときに、Z軸回りのモーメントMzに基づいて下記(2)式の演算を行って旋回速度ω〔rad/s〕を算出し、算出した旋回速度ωをRAM等に形成した旋回速度記憶部に更新記憶してからステップS7に移行する。
ω=∫(Mz/Irz)dt …………(2)
【0030】
このステップS7では、算出した前後進速度V及び旋回速度ωをもとに、図10に示す危険度マップを参照して後述する修正処理を行ってからステップS8に移行する。
ステップS8では、ステップS5で算出した前後進速度V及びステップS6で算出した旋回速度ωとに基づいて下記(3)式及び(4)式の演算を行って駆動輪6L及び6Rの車輪周速度VL〔m/s〕及びVR〔m/s〕を算出する。
VL=V+Lw・ω/2 …………(3)
VR=V−Lw・ω/2 …………(4)
ここで、Lwは、左右の駆動輪6L及び6Rの車輪間距離〔m〕である。
【0031】
次いで、ステップS9に移行して、算出した駆動輪6L及び6Rの車輪周速度VL及びVRに基づいて電動モータ9L及び9Rの速度指令値VML及びVMRを算出し、算出した速度指令値VML及びVMRを速度指令値出力I/F62を介してモータドライバ65L及び65Rに出力する。
障害物検出部52では、スキャナ式レンジセンサ22及び23で測定したスキャン角度及び距離検出値を読込み、障害物の位置及び障害物までの距離を算出する。ここで、障害物が複数存在する場合には、各障害物について位置及び障害物までの距離を算出する。
【0032】
障害物接触判定部53では、前後進速度記憶部に更新記憶されている前後進速度V及び旋回速度記憶部に更新記憶されている旋回速度ωを読込むと共に、障害物検出部52で検出した障害物の位置及び距離に基づいて自走体2が障害物に接触するか可能性を判定する。この障害物接触判定部53では、障害物の位置及び距離と、自走体2の前後進速度V及び旋回速度ωを変化させた場合の様々な走行軌跡を演算し、演算した走行軌跡のなかで障害物と接触する可能性のある走行軌跡を抽出し、抽出した走行軌跡についてこの走行軌跡上の自走体2と障害物までの距離dを例えば図9に示すように算出する。
【0033】
そして、算出した距離dと予め設定した危険度を決定する閾値距離Duとに基づいてd>Duであるときには、危険度uを0に設定し、d≦Duであるときには、下記(5)式の演算を行って危険度uを算出する。
u=(Du−d)/Du …………(5)
【0034】
また、障害物と接触する可能性のある走行軌跡と危険度uとに基づいて図10(b)に示す危険度マップを算出して、RAM等に形成した危険度マップ記憶部に記憶する。この危険度マップは、自走体2が図10(a)に示すように自走体2の走行方向の両側にポール等の複数の障害物が存在する場合に、前後進速度Vと旋回速度ωとの比で形成する。すなわち、横軸に旋回速度ωをとり、縦軸に前後進速度Vをとったときに、図10(b)で、白地の範囲は危険度uが低い領域を表し、ハッチング部分は危険度uが高い領域を表している。この危険度マップでは、前後進速度V及び旋回速度ωの比で設定されたため、原点を中心として放射状の線上の各点では危険度が同じ値となる。このため、危険度は原点を中心とする円周方向の角度θによって調整することが可能となる。
【0035】
走行方向補正部54では、前後進速度記憶部に更新記憶されている前後進速度V及び旋回速度記憶部に更新記憶されている旋回速度ωを読込むと共に、危険度マップ記憶部に記憶されている危険度マップを読込んで、危険度に応じて前後進速度V及び旋回速度ωを修正する修正処理を行って走行方向を変更する。
この走行方向の修正処理は、操作入力部17から入力される指示情報に基づいて算出される前後進速度V及び旋回速度ωで表される危険度マップ上の点が危険度の低い領域内にある場合には、前後進速度V及び旋回速度ωでの走行が可能であり、そのままの走行を許容するが、危険度の高い領域内にある場合には、前後進速度V及び旋回速度ωでの走行が不可能であり、危険度の低い速度に補正する。
【0036】
すなわち、図10(b)の状態では、前後進速度V及び旋回速度ωによってB点が指示された場合には、このB点が進行方向左側の危険度が高い領域に位置するため、角度θを大きくして危険度が小さい領域となるように旋回速度ωを補正する。逆に、前後進速度V及び旋回速度ωによってC点が指示された場合には、このC点が進行方向右側の危険度が高い領域に位置するため、角度θを小さくして危険度が小さい領域となるように旋回速度ωを補正する。
【0037】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、図示しない始動スイッチがオフ状態であるときには、自走体2に内蔵するバッテリの電力が走行制御装置30及びモータドライバ65L及び65Rに供給されず、電動モータ9L及び9Rは停止状態となっていると共に、無励磁作動形ブレーキ12L及び12Rが電力が供給されることなくブレーキ作動状態となっており、自走体2の走行が停止されている。
この自走体2の走行停止状態から、始動スイッチをオン状態とすると、走行制御装置30及びモータドライバ65L及び65Rに自走体2に内蔵するバッテリから電力が供給されて自走体2が走行可能状態となる。
【0038】
このとき、走行制御装置30に電力が供給されて、走行制御部51で図8に示す走行制御処理を実行開始する。このとき、先導を要する歩行者が操作入力部17のグリップ18を把持していないときには、この操作入力部17の六軸力センサ19から出力されるZ軸方向の力Fzが略“0”であり、把持力閾値Fzth未満となるので、ステップS2でFz≧Fzthとなるまで待機する。このため、電動モータ9L及び9Rに対する速度指令値は出力されることがなく、自走体2は停止状態を維持する。
【0039】
この自走体2の停止状態で、先導を要する色弱者等の自律歩行が困難な歩行者が自走体2の後方側の凹部4に下肢収納するようにして自走体2の後方に立ち、手で操作入力部17のグリップ18を把持すると、これにより、六軸力センサ19から少なくとも手の重さに応じた把持力閾値Fzthより大きな値のZ軸方向の力Fzが出力される。
このため、図8の走行制御処理で、ステップS2からステップS3に移行して、実際の走行制御が開始される。このとき、障害物検出部52で障害物を検出していない場合について説明する。
【0040】
歩行者がグリップ18を把持しながら、進みたい方向を入力すると、これに応じたX,Y,Z軸に付与される力Fz,Fy及びFzが出力されると共に、Z,Y,Z軸回りのモーメントMx,My及びMzが出力される。
このとき、歩行者が前進した場合には、グリップ18を前方に押すことにより、Y軸方向の力Fyが出力される。このため、力Fzに基づいて前出した(1)式にしたがって正値の前後進速度Vが算出される(ステップS5)。このとき、グリップ18が回動されていないので、Z軸回りのモーメントMzは発生せず、前述した(2)式にしたがって算出される旋回速度ωは“0”となる(ステップS6)。
【0041】
この場合には、旋回速度ωが“0”であるので、前述した(3)式及び(4)式で算出される駆動輪6L及び6Rの車輪周速度VL及びVRは互いに等しい前後進速度Vとなり、これら車輪周速度VL及びVRに基づいて電動モータ9L及び9Rに対する互いに等しい速度指令値が算出され、この速度指令値が速度指令値出力I/F62を介してモータドライバ65L及び65Rに出力される(ステップS7)。
【0042】
このため、モータドライバ65L及び65Rによって、電動モータ9L及び9Rが互いに等しい速度指令値に応じて回転駆動されることにより、自走体2が前方に直進する。
一方、歩行者がグリップ18を前方に傾倒させながら例えば時計方向に回動させる力を付与すると、これに応じたY軸方向に付与される力FyとZ軸回りのモーメントMzが六軸力センサ19から出力される。
【0043】
このため、ステップS7で、Z軸回りのモーメントMzに基づいて正値の旋回速度ωが算出されることになり、この旋回速度ωとステップS6で算出される前後進速度Vとに基づいて前述した(3)式及び(4)式の演算を行うことにより、左駆動輪6Lの車輪周速度VLが前後進速度Vより速くなり、右駆動輪6Rの車輪周速度VRが前後進速度Vより遅くなる。そして、これら車輪周速度VL及びVRに応じた速度指令値が速度指令値出力I/F62を介してモータドライバ65L及び65Rに出力される。このため、電動モータ9Lが電動モータ9Rに比較して速い回転速度で駆動されることにより、自走体2が右旋回しながら前進する。
このように、自走体2の進行方向に障害物が存在しない場合には、上述したように、グリップ18に入力される進行方向指示及び旋回指示に応じて自走体2が自由に走行することができる。
【0044】
しかしなから、自走体2には、基台3の先端部にスキャナ式レンジセンサ22が配設され、支持腕15の上端にもスキャナ式レンジセンサ23が配置されている。このため、スキャナ式レンジセンサ22では、走行面に近い水平方向の図5で扇状領域A1の障害物を検出し、スキャナ式レンジセンサ23では、歩行者の胸部位置に近い水平方向の図5で扇状領域A2の障害物を検出する。このように、スキャナ式レンジセンサ22及び23では、レーザ光で水平面を走査するので、レーザ光の出射角度と出射時間から障害物で反射して戻るまでの時間を計測することにより、障害物までの距離を検出することができる。したがって、スキャナ式レンジセンサ22及び23によって、自走体2から見た障害物の幅も検出することができる。
【0045】
そして、障害物検出部52で障害物を検出すると、障害物接触判定部53で、障害物が自走体2に接触するか否かを判定する。すなわち、例えばスキャナ式レンジセンサ22で、図9に示すように、例えば自走体2の進行方向の右側に例えばポール状の障害物P1を検出した場合には、自走体2の前後進速度Vと旋回速度ωとから自走体2の走行軌跡を予測することができ、逆に自走体2から見た障害物P1の軌道L1を予測することができる。そして、障害物P1の軌道L1が自走体2の形状と交差する場合には、自走体2に障害物P1が接触する可能性があり、軌道L1が自走体2の形状と交差しない場合には障害物P1が接触する可能性はない。
【0046】
そして、障害物P1が自走体2に接触する可能性がある場合には、軌道L1上における障害物P1と自走体2との距離dを算出する。そして、算出した距離dが予め設定した閾値距離Du以上であるときには、危険度uを“0”に設定し、距離dが閾値距離Du未満となると、前述した(5)式にしたがって、危険度uを算出する。このときの危険度uは、距離dが閾値距離Duより短くなり零に近づくにしたがって“1”に近づく。このため、危険度uが“1”となる前に、前後進速度V及び旋回速度ωを補正することにより、障害物P1と自走体2との接触を回避する。この場合、前後進速度Vを“0”に設定することにより、自走体2の走行を停止させることができ、旋回速度ωを補正することにより、自走体2の走行方向を変更して自走体2と障害物P1との接触を回避して走行することができる。
【0047】
一方、障害物検出部52で、図10(a)に示すように、自走体2の走行方向の両側に例えばポール状の複数の障害物が存在する場合には、それぞれの障害物に対して危険度を算出し、その最大値を危険度とする。このとき、障害物接触判定部53の危険度演算部53aで、自走体2の様々な前後進速度Vと旋回速度ωについて演算することにより、図10(b)に示す危険度マップを算出し、算出した危険度マップを危険度マップ記憶部に記憶する。
【0048】
この図10(b)示す危険度マップでは、横軸に旋回速度ωをとり、縦軸に前後進速度Vをとって自走体2の速度に応じた危険度を表している。図10(a)に示すように、自走体2の側面が左側の障害物P2に比較的短い距離で接近し、自走体2の右側では右側の障害物P3に対して比較的広い距離がある状態では、自走体2が左側の障害物P2に対しては僅かに接近することは可能であり、右側の障害物P3に対して今のとこと右斜め前方に進むことは可能であるので、危険度マップとしては図10(b)に示すように、自走体2の重心位置の原点Oを中心として、左斜め前方には僅かな角度で危険度が少ない領域A11が形成され、右斜め前方には比較的大きな角度で危険度が少ない領域A12が形成される。
【0049】
この状態で、グリップ18から自走体を旋回させることなく前進させる操作入力があったときには、算出される前後進速度Vが正値であり、算出される旋回速度ωが0であるので、これらによって表される座標は領域A11及びA12の境界位置となる。このため、走行方向補正部54では、前後進速度Vに対する補正値ΔV及び旋回速度ωに対する補正値Δωをともに“0”に設定することにより、グリップ18から入力された方向指示にしたがって自走体2が直進走行される。
【0050】
ところが、グリップ18から自走体を左旋回させながら走行させる入力があり、これに基づいて算出される前後進速度V及び旋回速度ωの座標が図10(b)でB点であるものとすると、このB点は危険度uが大きい領域A11内に存在するので、危険度を回避する角度θを大きな値として旋回速度ωに対する補正値Δωを大きな値として旋回速度ωを略零に近い値に補正する。これにより、左側の障害物P2を回避しながら直進走行をすることができる。
【0051】
逆に、グリップ18から自走体を右旋回させながら走行させる入力があり、これに基づいて算出される前後進速度V及び旋回速度ωの座標が図10(b)でC点であるものとすると、このC点は危険度uが大きい領域A12内に存在するので、危険度を回避する角度θを小さな値として旋回速度ωに対する補正値Δωを負の値として旋回速度ωを許容範囲内となるように補正する。これにより、左側の障害物P2を回避しながら右斜め全方向に走行をすることができる。
【0052】
そして、自走体2が移動するごとに、新たな危険度マップが算出されることにより、この新たな危険度マップにしたがって、走行方向の補正が行われる。したがって、図10(a)に示すように、自走体2の走行方向の両側沿って複数の障害物が存在する場合でも、自走体2を障害物に接触することなく走行させることができる。このため、自走体2に先導される歩行者も障害物に接触することなく歩行することができる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、前後進車速Vと旋回速度ωを変化させた場合の走行軌跡を抽出し、走行軌跡上の自走体2と障害物P1までの距離dを算出し、算出した距離dと危険度を決定する閾値距離Duとに基づいて危険度uを算出する危険度マップを参照して前後進速度V及び旋回速度ωを補正して走行方向を変更するようにしている。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、図11(a)に示すように、走行体2がその前方に進行方向と直行する方向に複数の障害物Paが存在するものとしたときに、図11(b)に示す到達時間マップを算出するようにしてもよい。
【0054】
この到達時間マップは、各障害物Paとの間の走行軌跡上の距離dを前後進速度Vで除すことにより、衝突までの時間t(=d/V)を算出し、算出した衝突時間tが衝突回避可能な閾値時間tTH以下であるときに危険領域とし、衝突時間が閾値時間tTHを超えているときに安全領域として設定することを様々な前後進車速V及び旋回速度ωに基づいて繰り返すことにより、図11(b)に示す到達時間マップを算出する。
【0055】
そして、走行中の前後進速度V及び旋回速度ωに基づいて到達時間マップを参照して、斜線図示の危険領域A21内であるか白地図示の安全領域A22内であるかを判定し、前後進速度V及び旋回速度ωで表される到達時間マップ上の点Aが危険領域A21内にあるときには、最近傍の安全領域A22の点A′を選択する。
このとき、選択した点A′の前後進車速V′が危険領域A21内の点Aより下がり過ぎる場合には、選択した点A′に対して前後進車速Vが一定で旋回速度ωを増加させる点A″を選択する。
【0056】
このように、点A″を選択することにより、前後進速度Vの危険領域A21までの余裕が増えることになり、より滑らかに危険領域A21への走行を回避することができる。
具体的には、図7に示す走行制御部51では、図12に示す走行制御処理を実行する。
この走行制御処理では、前述した図8の走行制御処理におけるステップS7の処理が算出した前後進速度V及び旋回速度ωに基づいて図11(b)に示す到達時間マップを参照し、前後進速度V及び旋回速度ωの修正が必要であるか否かを判定し、修正が必要なときには、前後進速度V及び旋回速度ωを修正するステップS10に変更されている。
【0057】
このステップS10の修正処理は、図13に示すように、先ず、ステップS11で、算出された前後進速度V及び旋回速度ωの交点Aが危険領域A21内であるか否かを判定し、交点Aが安全領域A22にあるときにはそのまま修正処理を終了してステップS8に移行する。
一方、ステップS11の判定結果が、交点Aが危険領域A21にあるときには、ステップS12に移行して、交点Aから最近傍の安全領域A22の点A′を選択してからステップS13に移行する。
【0058】
このステップS13では、交点A及び点A′の前後進速度Vの偏差ΔVを算出し、次いでステップS14に移行して、算出した速度偏差ΔVが設定値ΔVs以上であるか否かを判定し、ΔV<ΔVsであるときにはステップS15に移行して、点A′の前後進速度V′及び旋回速度ω′を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定してからステップS8に移行する。
【0059】
一方、ステップS14の判定結果がΔV≧ΔVsであるときにはステップS16に移行して、現在の旋回速度ω′により安全方向となる所定値Δωを加減算した点(V′,ω′±Δω)を新たな修正点A″として選択し、次いでステップS17に移行して、修正点A″の前後進速度V″及び旋回速度ω″を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定してからステップS8に移行する。
【0060】
したがって、上記図13の修正処理を実行することにより、ステップS5及びS6で算出した前後進速度V及び旋回速度ωをもとに到達時間マップを参照したときに、図11(b)に示すように、交点Aが危険領域A21内に存在するときには、最近傍の安全領域A22の点A′を選択する。このとき、選択した点A′の前後進速度V′と最初の交点Aの前後進速度Vとの速度偏差ΔVが設定値ΔVs未満であるときにはそのまま点A′を修正点として設定し、この修正点A′の前後進速度V′及び旋回速度ω′を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定する。
【0061】
しかしながら、図11(b)に示すように、修正点A′の前後進速度V′の低下が大きく速度偏差ΔVが設定値ΔVs以上となるときには修正点A′の旋回速度ω′により安全側となる符号の所定値Δωを加算した修正点A″を選択し、この選択点A″の前後進速度V′及び旋回速度ω′を目標とする前後進速度V及び旋回速度ωとして設定する。
このように、修正点A″を選択することにより、前後進速度Vの危険領域A21までの余裕が増えることになり、より滑らかに危険領域A21への走行を回避することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、自走体2の水平方向の障害物を回避しながら走行する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示すように、自走体2の前方に垂直面に対してレーザ光をスキャンするスキャナ式レンジセンサ70を配置し、このスキャナ式レンジセンサ70で床面を走査する。そして、スキャナ式レンジセンサ70で検出した距離情報を床面判定部71に入力する。この床面判定部71では、床面が平面であるか否かを判定する。すなわち、スキャナ式レンジセンサ70で検出される走査角度θ(センサの真下をθ=90度とする)と検出距離との正弦関係から床面との距離を算出し、算出した床面距離が長くなったときに、下がる段差があるものと判断することができる。このときの測定距離を床面高さに修正し、修正した点を障害物として判断することにより、水平面での障害物を回避する上述した実施形態と同様に段差を回避する走行制御を行うことができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、自走体2として、前側にキャスター5を設置し、後輪側に駆動輪6L及び6Rを設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前側の左右位置に駆動輪を配置し、後輪側にキャスターを配置するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、自走体2を2輪駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、自動車のように前後に2輪ずつ配置し、前後の一方を転舵輪とすることにより、走行方向を制御するようにしてもよい。この場合でも転舵輪の転舵角に基づいて走行軌跡を算出することができ、障害物との接触を判定することができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、障害物検出部52としてスキャナ式レンジセンサ22,23を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、超音波式センサ等の他の測距センサを適用することができる。また、スキャナ式レンジセンサに代えて、1方向にレーザ光を出射する測距センサをZ軸方向に回動させて走査するようにしてもよい。
さらに、本発明は、上述した歩行支援装置に適用する場合に限らず、配膳車などにパワーアシスト機能を付加したパワーアシストカートや高齢者向けの一人乗り電動車両であるシニアカー等の任意の走行装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…歩行支援装置、2…自走体、3…基台、4…凹部、5…キャスター、6L,6R…駆動輪、11L,11R…タイミングベルト、12L,12R…無励磁作動形ブレーキ、15…支持腕、16…水平腕、17…操作入力部、18…グリップ、19…六軸力センサ、22〜24…スキャナ式レンジセンサ、30…走行制御装置、31…演算処理装置、51…走行制御部、52…障害物検出部、53…障害物接触判定部、54…走行方向補正部、65L,65R…モータドライバ、70…スキャナ式レンジセンサ、71…床判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行支援を行う歩行者が把持して移動方向を入力する操作入力部を有するとともに、走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体と、前記操作入力部で入力された移動方向に基づいて前記自走体の走行を制御する走行制御手段と、前記自走体の周囲の障害物の位置を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段で検出した障害物の位置情報と前記走行制御手段の指令値とに基づいて自走体の前記障害物への接触の有無を判定する障害物接触判定手段と、該障害物接触判定手段の判定結果に基づいて前記走行制御手段の走行方向を補正する走行方向補正手段とを備えたことを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記走行方向補正手段は、障害物との走行軌跡と距離とに基づいて算出される危険度を前記移動速度及び旋回速度の関係で表す危険度マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記危険度マップを参照して走行方向を補正することを特徴とする請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記走行方向補正手段は、障害物に対する到達時間に基づいて危険領域及び斡旋領域を設定した到達時間マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記到達時間マップを参照して走行方向を補正することを特徴とする請求項1に記載の走行装置。
【請求項4】
前記走行制御手段は、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の移動速度を演算する移動速度検出手段と、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の旋回速度を検出する旋回速度検出手段とを備え、前記障害物接触判定手段は、前記自走体の移動速度及び旋回速度に基づいて前記障害物との接触を判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項5】
前記自走体は、基台の前方側上面に後方側に傾斜しながら延長する支持腕が形成された構成を有し、該支持腕の上部に前記歩行支援を行う歩行者が把持して移動方向を入力する操作入力部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項6】
前記自走体は、前記歩行支援する歩行者の肩幅以上の幅を有し、後方側に歩行支援する歩行者の下肢を収める凹部が形成され、前記歩行者を後方に従えて先導して走行することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項7】
前記操作入力部は、歩行者が把持するグリップ部と、該グリップ部に連結された6軸力センサとで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の走行装置。
【請求項8】
前記障害物検出手段は、前記自走体の前方側に水平方向に走査するスキャナ式レンジセンサを有し、該スキャナ式レンジセンサで少なくとも自走体の前方側の所定角度範囲を走査して障害物の位置を検出することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項9】
前記自走体は、キャスター構造の前輪と、前記走行制御装置によって正逆転駆動される電動モータによって駆動される左右一対の駆動後輪とを備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項10】
前記障害物検出手段は、前記自走体の走行方向に先行する走行面との距離を計測する走行面距離検出部と、該走行面距離検出部で検出した計測データに基づいて走行面の段差を障害物として検出する床面判定部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項1】
歩行支援を行う歩行者が把持して移動方向を入力する操作入力部を有するとともに、走行部を有して任意の方向に走行可能な自走体と、前記操作入力部で入力された移動方向に基づいて前記自走体の走行を制御する走行制御手段と、前記自走体の周囲の障害物の位置を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段で検出した障害物の位置情報と前記走行制御手段の指令値とに基づいて自走体の前記障害物への接触の有無を判定する障害物接触判定手段と、該障害物接触判定手段の判定結果に基づいて前記走行制御手段の走行方向を補正する走行方向補正手段とを備えたことを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記走行方向補正手段は、障害物との走行軌跡と距離とに基づいて算出される危険度を前記移動速度及び旋回速度の関係で表す危険度マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記危険度マップを参照して走行方向を補正することを特徴とする請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記走行方向補正手段は、障害物に対する到達時間に基づいて危険領域及び斡旋領域を設定した到達時間マップを有し、前記移動速度及び旋回速度をもとに前記到達時間マップを参照して走行方向を補正することを特徴とする請求項1に記載の走行装置。
【請求項4】
前記走行制御手段は、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の移動速度を演算する移動速度検出手段と、前記操作入力部の入力に応じて前記自走体の旋回速度を検出する旋回速度検出手段とを備え、前記障害物接触判定手段は、前記自走体の移動速度及び旋回速度に基づいて前記障害物との接触を判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項5】
前記自走体は、基台の前方側上面に後方側に傾斜しながら延長する支持腕が形成された構成を有し、該支持腕の上部に前記歩行支援を行う歩行者が把持して移動方向を入力する操作入力部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項6】
前記自走体は、前記歩行支援する歩行者の肩幅以上の幅を有し、後方側に歩行支援する歩行者の下肢を収める凹部が形成され、前記歩行者を後方に従えて先導して走行することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項7】
前記操作入力部は、歩行者が把持するグリップ部と、該グリップ部に連結された6軸力センサとで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の走行装置。
【請求項8】
前記障害物検出手段は、前記自走体の前方側に水平方向に走査するスキャナ式レンジセンサを有し、該スキャナ式レンジセンサで少なくとも自走体の前方側の所定角度範囲を走査して障害物の位置を検出することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項9】
前記自走体は、キャスター構造の前輪と、前記走行制御装置によって正逆転駆動される電動モータによって駆動される左右一対の駆動後輪とを備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の走行装置。
【請求項10】
前記障害物検出手段は、前記自走体の走行方向に先行する走行面との距離を計測する走行面距離検出部と、該走行面距離検出部で検出した計測データに基づいて走行面の段差を障害物として検出する床面判定部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−101602(P2013−101602A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229822(P2012−229822)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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