超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜及びその製造方法
【課題】超低誘電率及び高硬度の特性を有するラメラ構造薄膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のラメラ構造薄膜は、シリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成される。また、ラメラ構造薄膜の製造方法は、超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法であって、シリカと界面活性剤の自己組立構造の形成を誘導するために、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液を攪拌する段階と、前記溶液をシリコンウェハにスピンコーティングする段階と、前記ウェハをエージングする段階と、界面活性剤と有機物を前記ウェハから除去する熱処理段階とから構成される。
【解決手段】本発明のラメラ構造薄膜は、シリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成される。また、ラメラ構造薄膜の製造方法は、超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法であって、シリカと界面活性剤の自己組立構造の形成を誘導するために、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液を攪拌する段階と、前記溶液をシリコンウェハにスピンコーティングする段階と、前記ウェハをエージングする段階と、界面活性剤と有機物を前記ウェハから除去する熱処理段階とから構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超低誘電率、高硬度の特性を有するラメラ構造薄膜及びその製造方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低い誘電定数を有する新たな材料(low−k物質)に関する研究が活発に進められている。これは、集積回路の形状大きさ(feature dimensions)を減少させて集積度を高めるためにはlow−k物質が欠かせないためである。既存の半導体パッケージ及び層間絶縁材料としては、シリカ酸化物(SiO2)フィルムが主に用いられてきたが、その誘電率が4程度で相対的に高いため、特に超低誘電率を要する次世代チップ間パッケージの材料としては限界がある。
【0003】
一方、シリカ酸化物フィルムの代替物質として注目されているナノ多孔性シリカは、ナノメートルサイズの孔を有する多孔性構造を通じてその材料の内部に誘電定数1の空気を注入することによって、比較的に低い誘電率(k)を有することができるように試みられたものである。特に、ナノ多孔性シリカとして、テトラメトキシシラン(TMOS)及び/又はテトラエトキシシラン(TEOS)などの置換型有機シランを含む類似の前駆体がスピン−オン−グラス(SOG、spin−on glass)及び化学的蒸着(CVD)法で合成されて用いられている。このようなナノ多孔性シリカは、孔隙の大きさ及びそれによる孔隙の密度、材料の強度及び最終膜材料の誘電率を制御でき、低いkに加えて、900℃までの熱安全性及び実質的に小さな孔隙の大きさ、即ち、少なくとも集積回路のマイクロエレクトロニクス形態よりも小さな大きさを有し、前述したように、半導体において広く用いられるシリカ及びTEOSのような材料として製作可能であり、広い範囲にわたった誘電率の「調節(tune)」能力及びナノ多孔性膜の蒸着を通常のスピン−オン−グラス工程に用いられる類似の機構を用いることができるという長所がある。従って、従来技術として、ナノ多孔性シリカ膜は多様な方法で製造された。
【0004】
しかし、従来のシリカ薄膜の場合には、誘電率を下げるための試みとして、誘電率の低い気孔の比重を高めるようになるが、これは膜の機械的強度を大幅に低下させてしまうという問題を引き起こす。
【0005】
特に、半導体素子製造用の低誘電物質はその種類が半導体の配線構造及び適用分野によって異なるため、特性標準が確定してはいないが、一般には安定した電気的、化学的、機械的及び熱的特性が要求される。即ち、配線密度を増加させ、信号遅延を減少させるために低い誘電率を有さなければならず、配線の設計及び工程性が容易でなければならない。また、金属配線物質との低い反応性及び低いイオン遷移性、CMPなどの工程に耐えられるのに十分な機械的強度が維持されなければならない。熱的及び化学的特性で剥離又は誘電率の上昇を防止できる低吸湿率、工場の加工温度による耐熱性、低誘電体/金属界面で発生し得る各種応力及び剥離を最小化する接着力、低いストレス、熱膨張係数など様々な特性条件を満たさなければ、金属配線の層間物質として利用されることができない。
【0006】
このように、低い誘電率と高い機械的強度を含む適切な熱的、化学的、機械的特性は、低誘電率(low−k)物質の研究において同時に求めなければならない課題であるが、従来の物質パラダイムではこのような細部課題が互いに相反するので、有効な解決策を見出すことができなかった。
【0007】
そこで、本発明者は様々な低誘電物質の中でもシリカ薄膜の特性をそのまま有していながらも既存の誘電物質よりさらに低い誘電定数を有し、適切な電気的、化学的、機械的及び熱的特性を多様に備えたラメラ構造薄膜の製造のために研究するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、超低誘電率及び高硬度の特性を有するラメラ構造薄膜を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、超低誘電率、高硬度の特性を有するラメラ構造薄膜を製造する方法として、工程が簡単であり、かつ経済的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のラメラ構造薄膜は、シリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成される。
好ましい実施形態においては、0.1〜10nm厚さのシリカ層及び0.1〜10nm厚さの空気層が0.2〜20nmの繰り返し周期で積層される。
好ましい実施形態においては、1〜8nm厚さのシリカ層及び1〜5nm厚さの空気層が2〜13nmの繰り返し周期で積層される。
好ましい実施形態においては、ラメラ構造薄膜は、1.0〜2.5の低い誘電率及び0.2〜3.0GPaの高い硬度を有する超低誘電率、高硬度である。
本発明の別の局面によれば、超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法が提供される。このラメラ構造薄膜の製造方法は、超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法であって、シリカと界面活性剤の自己組立(self−assembly)構造の形成を誘導するために、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液を攪拌する段階と、前記溶液をシリコンウェハにスピンコーティングする段階と、前記ウェハの上のスピンコーティングされた薄膜をエージングする段階と、界面活性剤と有機物を前記ウェハから除去する熱処理段階とから構成される。
好ましい実施形態においては、シリカゾル溶液は溶液全体の重量に対して、5重量%〜20重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.8重量%の界面活性剤を含む。
好ましい実施形態においては、上記界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、化学式EOmPOnEOm(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)又はEOmPOnを有するブロック共重合体(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)、又は化学式CmH2m+1EOn(EOはエチレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体(ブリジ(Brij)タイプ)からなるメゾポーラス構造を実現できる界面活性剤群より選択される。
好ましい実施形態においては、上記界面活性剤は、化学式EO106PO70EO106を有するブロック共重合体(F−127)である。
好ましい実施形態においては、上記攪拌段階は、20〜30℃の温度で行われる。
好ましい実施形態においては、上記攪拌段階は、18〜40%の湿度で行われる。
好ましい実施形態においては、上記スピンコーティングは、25〜35℃の温度及び55〜80%の湿度で行われる。
好ましい実施形態においては、上記エージングは、50〜100℃で12〜24時間行われる。
好ましい実施形態においては、ウェハを300〜800℃で2〜6時間熱処理させ、再び徐々に冷却させることで上記熱処理段階が行われる。
好ましい実施形態においては、シリカ前駆体は、トリエトキシシラン(TES)、トリメトキシシラン(TMOS)、ビニールトリメトキシシラン(VTMOS)及びテトラエトキシシラン(TEOS)からなるメゾポーラス構造を実現できるシリカ前駆体群より選択される。
好ましい実施形態においては、上記シリカゾル溶液が水、ブタノール、メタノール、エタノール、及びプロパノールより選択される有機溶媒及びHNO3、HCl、HBr、HI、H2SO4、及びHClO4からなる群より選択される酸性触媒、又は溶媒及び触媒を更に含む。
好ましい実施形態においては、誘電率が1.0〜2.5の値を有する。
好ましい実施形態においては、硬度が0.2〜3.0GPaの値を有する。
好ましい実施形態においては、有機溶媒がエタノールであり、酸性触媒がHClである。
好ましい実施形態においては、シリカゾル溶液がシリカ前駆体としてTEOS、界面活性剤としてF127、酸触媒としてHCl、溶媒としてH2O及びEtOHを含み、TEOS:F127:HCl:H2O:EtOHのモル濃度の比率が1:1.65×10-3−6.60×10-3:2.08×10-3−7.03×10-3:2.31−4.62:22.6−93.90である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のラメラ構造薄膜によれば、以下のような効果が得られる。
第1に、高硬度薄膜としての可能性を見れば、類似の構造的特性を有するいわゆる超高硬度のコーティング(Superhard coating)と比較できる。超高硬度のコーティング又は超高硬度の薄膜は通常、真空蒸着装置を活用して硬度が非常に高い物質と、相対的に硬度が低い物質をそれぞれ数nmの厚さを有し、積層構造となるようにして合成される。即ち、硬度の高い物質と、硬度の低い物質が10nm前後の繰り返し周期で交互に積層された構造を形成する。このようなラメラ構造薄膜になれば、外部からの機械的な衝撃に対する抵抗が2つの物質の硬度の平均値より遥かに高くなる。硬度の高い物質のみからなる膜では外部の衝撃が与える衝撃波が物質の内部まで効率的に伝達されるのに対し、ラメラ構造薄膜では衝撃波が硬度の高い物質と、硬度の低い物質との間の界面で広がるようになるので、結果として、外部の衝撃が膜の内側に伝達されるのを防止する。本発明の薄膜は相対的に硬度の高いシリカと、硬度の非常に低い空気層とが交互に積層されている構造を有しているので、高硬度ラメラ構造薄膜で衝撃波を分散させるのと同様の効果を示すようになる。従って、本発明はたとえ硬度の低いシリカからなっても、純粋なシリカよりは非常に硬度の高い特性を示す。
【0012】
第2に、相対的に誘電率の高いシリカと、誘電率の低い空気が数nmの範囲で繰り返される薄膜は誘電率を効率的に下げるメカニズムを提供する。これは互いに異なる誘電率を有する2つの誘電体の配列方法に応じて誘電率全体がどのように変化するかを比較すれば、説明が可能である。2つの誘電体を並列に連結する場合、図12に示すように、直列と並列の2種類の方法がある。
【0013】
図12を参照すれば、並列連結の場合には総キャパシタンスは2つの誘電体の容量の和となり、従って2つの誘電体の誘電率の算術平均値が全体誘電率となる。即ち、全体誘電率は2つの誘電物質の相対的比重の変移に線形的に変化する。それに対し、直列連結の場合には総誘電率の逆数が各誘電体の誘電率の逆数の平均となる。従って、膜を構成するシリカと空気の量が同一の場合、全体誘電率は直列連結の場合の方が並列連結の場合よりさらに低くなる。本発明のラメラ構造薄膜は、シリカ層と空気層を互いに異なる種類の誘電体と見れば、これらの誘電体を直列に連結した場合と同一になる。反面、従来のシリカ薄膜誘電体はいずれも並列連結に該当する。
【0014】
既存のシリカ薄膜の場合には誘電率を下げるために、無条件に気孔の比重を高めなければならないが、これは膜の機械的強度を大幅に低下させる。これに対し、本発明は相対的に気孔の比重を少なくしながら、誘電率を既存のシリカ薄膜と類似に、又はそれ以下に下げることができ、膜の機械的強度を大幅に低下させなくなる。さらに、ラメラ構造が薄膜の硬度を高めるメカニズムを示すようになるので、むしろ膜の硬度を増加させることができるという効果を奏する。
【0015】
従って、従来技術では解決できなかった低い誘電率と同時に、高い機械的強度を提供する薄膜を提供することで、本発明はこれらの2つの問題を解決できる原理と共に、実際に活用可能な物質の製法を提供する。
【0016】
本発明のその他の長所は既存の多孔性低誘電体薄膜の研究では気孔が膜の外部と連結されており、誘電率を急激に高める水分が容易に侵入し得る経路を根本的に遮断したという点にある。本発明のラメラ構造薄膜の気孔は稠密なシリカ層の間にある空気層により、シリカ層が空気層と外部とが連結されないように遮断しており、水分が浸透できない。これは、吸湿により誘電率が急激に増加する従来の問題点が解消され得ることを意味する。
【0017】
従って、本発明によって製造されるラメラ構造薄膜は機械的強度、化学的な安全性及び低い誘電率(好ましくは、k=2.5以下、より好ましくは、k=2.0以下)を有するシリカ物質である。
【0018】
また、本発明に係る製造方法は純粋なシリカのみを原料とし、工程が簡単であり、他の表面処理が不要であるため、半導体製造工程において、非常に経済的であるという利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜を製造する方法に関する順序図である。
【図2】本発明に係るラメラ構造薄膜のXRD分析結果を示す図である。
【図3】追加的に高温処理過程を経た本発明に係るラメラ構造薄膜のXRDの分析結果を示す図である。
【図4】本発明に係るラメラ構造薄膜のIR分析結果を示す図である。
【図5】本発明に係るラメラ構造薄膜の構造を観察するためのTEM写真である。
【図6】本発明に係るラメラ構造薄膜の空気層及びシリカ層を観察するためのTEM写真である。
【図7】本発明に係るラメラ構造薄膜の厚さを観察するためのSEM写真である。
【図8】本発明に係るラメラ構造薄膜のナノインデンテーション(nanoindentation)の分析結果を示す図である。
【図9】本発明に係るラメラ構造薄膜の誘電定数を求めるための電気容量(Cp)分析結果を示す図である。
【図10】本発明に係るラメラ構造薄膜のIRスペクトラム分析結果を示す図である。
【図11】本発明に係るラメラ構造薄膜のNMRスペクトラム分析結果を示す図である。
【図12】本発明に係るラメラ構造薄膜の超低誘電率を説明する参考図であって、2つの誘電体を連結する2種類の方法を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明はシリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成されるラメラ構造薄膜を提供する。
【0021】
即ち、本発明は0.1〜10nmの厚さ、好ましくは1〜8nm厚さのシリカ層及び0.1〜10nmの厚さ、好ましくは1〜5nm厚さの空気層が、コーティングされるウェハ表面に垂直方向に、0.2〜20nmの繰り返し周期、好ましくは2〜13nm、より好ましくは7〜9nmの繰り返し周期で積層されることを特徴とするラメラ構造薄膜を提供する。
【0022】
しかし、前記ラメラ構造薄膜の厚さ及び繰り返し単位はこれに限定されるものではない。例えば、シリカゾル溶液の組成や攪拌時間の変化により、多様にシリカ層及び空気層の厚さの調節が可能である。
【0023】
また、本発明では超低誘電率、高硬度ラメラ構造薄膜の製造方法として、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液の攪拌段階と、スピンコーティング段階と、エージング段階と、界面活性剤と有機物を除去する熱処理段階とからなるラメラ構造薄膜の製造方法を提供する。
【0024】
本発明において、ラメラ構造薄膜は、前駆体溶液を蒸発させて、構造誘導物質である界面活性剤が特定の濃度で自ら構造を形成するEvaporation−Induced
Self−Assembly(EISA)というメカニズムに基づく方法により形成される。
【0025】
即ち、シリカゾルの粒径及び大きさの分布、シリカゾル粒子の量、界面活性剤の量などを調節すれば、シリカ粒子と界面活性剤が周期的に繰り返される層構造、即ち、ラメラ(lamella)構造をなすようにすることができる。このような薄膜を高い温度で熱処理すれば、有機物である界面活性剤は燃焼してなくなるので、界面活性剤が占めていた空間がなくなり、隣接するシリカ層が互いに当接して(即ち、空気層が形成されなくなり)、結果的には、ナノメートルサイズの範囲で何の内容物のない構造が現れ得る。このとき、本発明ではシリカゾル溶液の組成、スピンコーティング又は蒸着過程後の処理などの条件を変化させることで、本来に界面活性剤が存在していた跡が完全になくならず、その代わりに、シリカ層に比べて密度が非常に低い層、即ち、「空気層」が生成される。
【0026】
そのためには、界面活性剤の濃度が特定値の範囲にあることが重要である。即ち、界面活性剤の組成範囲が特定値を超えると、ラメラ構造ではなく、他の構造の薄膜が形成される。そのようになれば、ラメラ構造の薄膜で確認される超低誘電率、高い表面強度のような物性が得られない。例えば、キュービック構造の薄膜は誘電率が3〜4程度であり、硬度値は概ね0.3GPaとなり、ラメラ薄膜でのように、低誘電、高硬度の物性効果を得ることができない。シリカゾル溶液中の好適な界面活性剤の濃度は、0.1重量%〜0.8重量%であることが好ましい。この場合、シリカゾル溶液中のシリカ濃度は5重量%〜20重量%が好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、化学式EOmPOnEOm(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)とEOmPOn(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体、又は化学式CmH2m+1EOn(EOはエチレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体(ブリジ(Brij)タイプ)、ツイン(Tween)系、トライトン(Triton)系、テルギトール(Tergitol)系など、いわゆる「メゾポーラス構造物質」を合成するのに用いられるあらゆる種類の界面活性剤が使用され得る。特に、化学式EO106PO70EO106(商標名:F−127、Sigma−Aldrich社提供)が好ましく使用され得る。
【0028】
シリカ前駆体としては、トリエトキシシラン(TES)、トリメトキシシラン(TMOS)、ビニールトリメトキシシラン(VTMOS)が用いられることができ、特に、テトラエトキシシラン(TEOS)が好ましく用いられることができる。
【0029】
シリカゾル溶液は、溶媒、触媒、又は溶媒及び触媒を更に含むことができる。溶媒としては、水、ブタノール、メタノール、エタノール、プロパノールなど、いわゆる「メゾポーラス構造物質」を合成するのに用いられるあらゆる種類の溶媒、特に有機溶媒が用いられることができ、特にエタノールが好ましい。触媒としては、HNO3、HCl、HBr、HI、H2SO4、HClO4のような触媒、特に酸性触媒が用いられることができ、特にHClが好ましい。
【0030】
シリカゾル溶液は溶液全体の重量に基づいて、5重量%〜20重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.8重量%の界面活性剤を含み、好ましくは8重量%〜15重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.6重量%の界面活性剤を含む。選択的に、70重量%〜87重量%の溶媒及び5.04×10-5重量%〜1.97×10-4重量%の触媒を更に含むことができる。
【0031】
本発明の好適な一実施例において、シリカゾル溶液はシリカ前駆体としてTEOS、界面活性剤としてF127、酸触媒としてHCl、溶媒としてH2O及びEtOHを含むことができ、TEOS:F127:HCl:H2O:EtOHのモル濃度の比率が1:1.65×10-3−6.60×10-3:2.08×10-3−7.03×10-3:2.31−4.62:22.6−93.90であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0032】
攪拌段階は10〜60時間、好ましくは10〜30時間行われることができる。このとき、10℃程度の攪拌温度ではラメラ構造薄膜が形成されないので、約20〜30℃の温度で攪拌を行うことが好ましい。また、攪拌時の湿度は18〜40%程度が好ましい。
一方、エージングは50〜100℃で12〜24時間行われることが好ましい。
【0033】
本発明によって生成される薄膜は、空気層とシリカ層がウェハ表面に垂直方向に規則的に配列されているラメラ構造を示すという特徴がある。実際にはこの薄膜は、ウェハ表面に対して垂直方向に、シリカの密度が周期的に大きくなったり、小さくなったりすることが繰り返される構造を有する。密度の高低は断続的に及び/又は連続的に変化し得る。また、シリカ層と空気層との境界が明確に限定されるものではない。
【0034】
従って、本明細書及び特許請求の範囲において、「シリカ層」は前記シリカ密度の高低による繰り返し構造のうち、シリカの密度が高い部分であり、大部分、即ち50体積%以上、好ましくは70体積%以上、より好ましくは90体積%以上がシリカからなる層を意味し、「空気層」は前記繰り返し構造のうち、シリカの密度が低く、相対的に空気の比重が高くて大部分、即ち50体積%以上、好ましくは70体積%以上が空気からなる層を意味する。
【0035】
「スピンコーティング段階」はウェハを所定の回転数で回転させながら、ウェハの中心付近にシリカゾル溶液を落とし、ウェハ上に落とされたシリカゾル溶液は遠心力により周辺に均一に広がりながら、ウェハ表面に塗布される。本発明において、スピンコーティングは25〜35℃の温度及び55〜80%の湿度で行われることが好ましい。
【0036】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、このような実施例は本発明の範疇を限定するものではない。従って、該当技術分野における熟練した当業者は特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更できることが理解できる。
【0037】
ラメラ構造薄膜の製造
シリカ壁の原料であるテトラエトキシシラン(TEOS 99.999%、Sigma−Aldrich社製)の量は1.0gに固定させ、構造誘導物質である界面活性剤F−127(Sigma−Aldrich社製)及び溶媒EtOH、触媒HClの量を表1のように調節して4種類のラメラ構造薄膜の溶液を準備した。表1における数字はTEOS 1モルに対するモル濃度比である。
【0038】
【表1】
【0039】
溶液を15℃の温度、11%以下の湿度条件で表1に示した攪拌時間に従って攪拌させて合成した。合成した溶液を1×1cm大きさのシリコンウェハに28〜29℃、60%の湿度条件で4500rpmの速度で1分間スピンコーティングでコーティングした。このとき、シリコンウェハはピラナ(1:1=H2SO4:H2O2の混合)に2時間程度浸漬した後、蒸留水とエタノールで洗浄してシリコン表面にOH基を付着させる過程を予め行って準備した。80℃のオーブンで12〜24時間エージングを施した。後続して炉(furnace)に入れて1℃/minの速度で450℃まで上昇させた後、450℃で5時間燃焼させ、10℃/minの速度で40℃まで温度を下げた。界面活性剤と有機物を除去して多孔性薄膜を製作した。
【0040】
X−ray回折分析
図2に示すように、D/MAX−2200 Ultima(Rigaku社製)を用いてX−ray回折分析を行った。光源の波長は1.5406ÅのCuKαを用い、格子間隔(d value)はブラッグ(Bragg)の法則(2dsinθ=nλ)で計算した。
【0041】
高温処理後のX−ray回折分析
実施例1において、450℃で5時間熱処理過程を行って収得した薄膜に対して、後続して800℃で30分間高温処理を施してX線回折分析を行った(図3参照)。その結果、本発明に係る多孔性薄膜は高温でもその構造が維持されることが確認された。450℃で熱処理した結果と比較したとき、格子間隔が減少した理由は高温処理により構造は維持されるが、450℃でよりも空気層が崩れることにより、格子間隔が減少したことが分かり、高温処理によって格子間隔を調節できることが分かる。
【0042】
IR分析
実施例1で収得した薄膜に対して、TENSOR27(BRUKER社製)を用いてIR分析を行った(図4参照)。多孔性薄膜がH2Oを含有する場合、H2O自体の誘電率が高いため(〜80)、誘電率が増加する。従って、低誘電物質に適用されるためには吸湿性が低いか、H2Oを含有してはならない。IRにおけるH2Oピークは3400〜3600cm-1で現れるが、本発明に係る多孔性薄膜はこのようなH2Oピークが観察されなかった。従って、本発明に係るラメラ構造薄膜は吸湿性が低く、水を含有していないので、誘電率が相対的に低いことが確認された(表2)。
【0043】
TEM分析
図5は、高解像TEM(HRTEM;JSM−3011、300kV)及び高−電圧電子顕微鏡(HVEM;JEM−ARM 1300S、1250kV)を用いた結果である。本発明に係るラメラ構造薄膜は、シリカ壁と空気層とから構成されたラメラ構造であることが明らかになった。
図6のTEM写真は、本発明に係るラメラ構造薄膜(SKULシリーズ)のシリカ壁と空気層の厚さがXRDで求めた格子間隔(d値)と一致することを示す(表2)。
【0044】
【表2】
【0045】
SEM分析
図7は、FESEM(JEOL、7000F)を用いた結果である。表3に示すように、本発明に係るラメラ構造薄膜は74〜207nmの厚さを有する。
【0046】
【表3】
【0047】
ナノインデンテーション(ナノ押込)
図8のナノインデンテーションは、ナノインデンタ(MTS社製)を用いて本発明に係る多孔性薄膜の硬度とモジュラスを測定した結果を示す。従来の低誘電物質が0.5GPa以下の硬度と、3.0GPa以下のモジュラスを有するのに対し、本発明に係るラメラ構造薄膜の硬度及びモジュラス値は非常に高い値であることが分かる(表3)。
【0048】
誘電定数(k)
誘電定数(k)値をHP 4248A Precision LCR meterで測定し、以下の公式で計算した。
Cp=ε0εA/d
ここで、ε0は真空での誘電率、εは本発明に係る薄膜の誘電率、Aは電極の面積、dは低誘電物質の厚さである。
【0049】
図9に示すように、既存の低誘電物質のうち、2.0以下の誘電定数値を有する物質が殆どないことから、本発明に係るラメラ構造薄膜の誘電率値は非常に低い値であることが分かる(表3)。
【0050】
蒸気処理に対する耐性試験
本発明によってラメラ構造の低誘電薄膜の吸湿性をテストするために、以下のような分析実験を実施した。100℃の沸騰水の蒸気環境、即ち、非常に多湿な条件で製造したラメラ構造の低誘電薄膜を30分間放置した後にIR分析を行った。図10の左側グラフは、シリコンウェハのみを測定したグラフであり、図10の右側グラフは、本発明に係る実験片SKUL−1、2を測定したグラフである。図10を参照すれば、本発明に係る実験片SKUL−1、2のIRデータで水ピークが観察されなかった。本発明によって製造されたラメラ構造の低誘電薄膜が非常に多湿な環境でも水を吸着しない非常に低い吸湿性を有することを確認することができた。
【0051】
29Si MAS NMRスペクトラムの分析
本発明によって製造したラメラ構造薄膜のNMRスペクトラム分析を行い、これを図11に示した。メゾポーラスの構造と大きさはシリカ種のオリゴマー化反応(oligomerization)の次数と関連があり、従ってNMRスペクトラムの分析を通じて本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜の大きさと構造を確認した。
【0052】
比較実施例
本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜を従来の低誘電と比較するために、参考文献に基づいて比較実験を行い、これに対する物性を測定及び比較した。
【0053】
比較実施例1)
参考文献(Adv. Mater. 2000,12,1769)に記載されたようなポリマーと有機溶媒を用いてスピンコーティング法で製作した低誘電物質であるSiLKを製作した。しかし、この物質のk値は2.65であり、ヤングモジュラスは2.45GPa、硬度は0.38GPaの値を有することによって、本発明に係る低誘電ラメラ構造のシリカ薄膜より高い誘電定数値と顕著に低いヤングモジュラス及び硬度値を有することが分かる。これにより、本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜が従来技術に比べて、非常に優れた性能を有することが確認できた。
【0054】
比較実施例2)
参考文献(Chem. Mater. 2002,14,1845−1852)によって、ハイドロゲンシルセスキオキサン(Hydrogen silsesquioxane)を基礎としたシリカソースと、メチルプロピルキトンのような低い沸騰点を有する溶媒を用いてスピンコーティング方法によりメゾポーラスを有する低誘電薄膜を製造した。
【0055】
比較実施例3)
参考文献(Langmuir 2001, 17,6683−6691)によって、PMSSQ/BTMSEプレポリマー(prepolymer)とビス(1、2−トリメトキシシラン)エタン(BTMSE)[Bis(1、2−trimethoxysilyl)ethane(BTMSE)]、そしてメチルトリメトキシシラン[methyltrimethoxysilane(MSSQ)]を用いてスピンコーティングにより低誘電薄膜を製造した。
【0056】
比較実施例1及び比較実施例3から生成される薄膜の誘電率を測定した結果、いずれも2.5〜3.5程度の誘電率を示し、本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜より遥かに高いk値を有することが確認された。
【0057】
上述した通り、本発明に係るラメラ構造薄膜は適切な機械的強度と化学的安全性を提供し、特に2.5以下の非常に低い誘電率及び高い硬度を有する。また、本発明に係るラメラ構造薄膜の製造方法は、純粋なシリカのみを原料とし、特別な表面処理を施さないようにするため、半導体工程自体を簡単かつ経済的にするという利点がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は超低誘電率、高硬度の特性を有するラメラ構造薄膜及びその製造方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低い誘電定数を有する新たな材料(low−k物質)に関する研究が活発に進められている。これは、集積回路の形状大きさ(feature dimensions)を減少させて集積度を高めるためにはlow−k物質が欠かせないためである。既存の半導体パッケージ及び層間絶縁材料としては、シリカ酸化物(SiO2)フィルムが主に用いられてきたが、その誘電率が4程度で相対的に高いため、特に超低誘電率を要する次世代チップ間パッケージの材料としては限界がある。
【0003】
一方、シリカ酸化物フィルムの代替物質として注目されているナノ多孔性シリカは、ナノメートルサイズの孔を有する多孔性構造を通じてその材料の内部に誘電定数1の空気を注入することによって、比較的に低い誘電率(k)を有することができるように試みられたものである。特に、ナノ多孔性シリカとして、テトラメトキシシラン(TMOS)及び/又はテトラエトキシシラン(TEOS)などの置換型有機シランを含む類似の前駆体がスピン−オン−グラス(SOG、spin−on glass)及び化学的蒸着(CVD)法で合成されて用いられている。このようなナノ多孔性シリカは、孔隙の大きさ及びそれによる孔隙の密度、材料の強度及び最終膜材料の誘電率を制御でき、低いkに加えて、900℃までの熱安全性及び実質的に小さな孔隙の大きさ、即ち、少なくとも集積回路のマイクロエレクトロニクス形態よりも小さな大きさを有し、前述したように、半導体において広く用いられるシリカ及びTEOSのような材料として製作可能であり、広い範囲にわたった誘電率の「調節(tune)」能力及びナノ多孔性膜の蒸着を通常のスピン−オン−グラス工程に用いられる類似の機構を用いることができるという長所がある。従って、従来技術として、ナノ多孔性シリカ膜は多様な方法で製造された。
【0004】
しかし、従来のシリカ薄膜の場合には、誘電率を下げるための試みとして、誘電率の低い気孔の比重を高めるようになるが、これは膜の機械的強度を大幅に低下させてしまうという問題を引き起こす。
【0005】
特に、半導体素子製造用の低誘電物質はその種類が半導体の配線構造及び適用分野によって異なるため、特性標準が確定してはいないが、一般には安定した電気的、化学的、機械的及び熱的特性が要求される。即ち、配線密度を増加させ、信号遅延を減少させるために低い誘電率を有さなければならず、配線の設計及び工程性が容易でなければならない。また、金属配線物質との低い反応性及び低いイオン遷移性、CMPなどの工程に耐えられるのに十分な機械的強度が維持されなければならない。熱的及び化学的特性で剥離又は誘電率の上昇を防止できる低吸湿率、工場の加工温度による耐熱性、低誘電体/金属界面で発生し得る各種応力及び剥離を最小化する接着力、低いストレス、熱膨張係数など様々な特性条件を満たさなければ、金属配線の層間物質として利用されることができない。
【0006】
このように、低い誘電率と高い機械的強度を含む適切な熱的、化学的、機械的特性は、低誘電率(low−k)物質の研究において同時に求めなければならない課題であるが、従来の物質パラダイムではこのような細部課題が互いに相反するので、有効な解決策を見出すことができなかった。
【0007】
そこで、本発明者は様々な低誘電物質の中でもシリカ薄膜の特性をそのまま有していながらも既存の誘電物質よりさらに低い誘電定数を有し、適切な電気的、化学的、機械的及び熱的特性を多様に備えたラメラ構造薄膜の製造のために研究するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、超低誘電率及び高硬度の特性を有するラメラ構造薄膜を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、超低誘電率、高硬度の特性を有するラメラ構造薄膜を製造する方法として、工程が簡単であり、かつ経済的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のラメラ構造薄膜は、シリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成される。
好ましい実施形態においては、0.1〜10nm厚さのシリカ層及び0.1〜10nm厚さの空気層が0.2〜20nmの繰り返し周期で積層される。
好ましい実施形態においては、1〜8nm厚さのシリカ層及び1〜5nm厚さの空気層が2〜13nmの繰り返し周期で積層される。
好ましい実施形態においては、ラメラ構造薄膜は、1.0〜2.5の低い誘電率及び0.2〜3.0GPaの高い硬度を有する超低誘電率、高硬度である。
本発明の別の局面によれば、超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法が提供される。このラメラ構造薄膜の製造方法は、超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法であって、シリカと界面活性剤の自己組立(self−assembly)構造の形成を誘導するために、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液を攪拌する段階と、前記溶液をシリコンウェハにスピンコーティングする段階と、前記ウェハの上のスピンコーティングされた薄膜をエージングする段階と、界面活性剤と有機物を前記ウェハから除去する熱処理段階とから構成される。
好ましい実施形態においては、シリカゾル溶液は溶液全体の重量に対して、5重量%〜20重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.8重量%の界面活性剤を含む。
好ましい実施形態においては、上記界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、化学式EOmPOnEOm(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)又はEOmPOnを有するブロック共重合体(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)、又は化学式CmH2m+1EOn(EOはエチレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体(ブリジ(Brij)タイプ)からなるメゾポーラス構造を実現できる界面活性剤群より選択される。
好ましい実施形態においては、上記界面活性剤は、化学式EO106PO70EO106を有するブロック共重合体(F−127)である。
好ましい実施形態においては、上記攪拌段階は、20〜30℃の温度で行われる。
好ましい実施形態においては、上記攪拌段階は、18〜40%の湿度で行われる。
好ましい実施形態においては、上記スピンコーティングは、25〜35℃の温度及び55〜80%の湿度で行われる。
好ましい実施形態においては、上記エージングは、50〜100℃で12〜24時間行われる。
好ましい実施形態においては、ウェハを300〜800℃で2〜6時間熱処理させ、再び徐々に冷却させることで上記熱処理段階が行われる。
好ましい実施形態においては、シリカ前駆体は、トリエトキシシラン(TES)、トリメトキシシラン(TMOS)、ビニールトリメトキシシラン(VTMOS)及びテトラエトキシシラン(TEOS)からなるメゾポーラス構造を実現できるシリカ前駆体群より選択される。
好ましい実施形態においては、上記シリカゾル溶液が水、ブタノール、メタノール、エタノール、及びプロパノールより選択される有機溶媒及びHNO3、HCl、HBr、HI、H2SO4、及びHClO4からなる群より選択される酸性触媒、又は溶媒及び触媒を更に含む。
好ましい実施形態においては、誘電率が1.0〜2.5の値を有する。
好ましい実施形態においては、硬度が0.2〜3.0GPaの値を有する。
好ましい実施形態においては、有機溶媒がエタノールであり、酸性触媒がHClである。
好ましい実施形態においては、シリカゾル溶液がシリカ前駆体としてTEOS、界面活性剤としてF127、酸触媒としてHCl、溶媒としてH2O及びEtOHを含み、TEOS:F127:HCl:H2O:EtOHのモル濃度の比率が1:1.65×10-3−6.60×10-3:2.08×10-3−7.03×10-3:2.31−4.62:22.6−93.90である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のラメラ構造薄膜によれば、以下のような効果が得られる。
第1に、高硬度薄膜としての可能性を見れば、類似の構造的特性を有するいわゆる超高硬度のコーティング(Superhard coating)と比較できる。超高硬度のコーティング又は超高硬度の薄膜は通常、真空蒸着装置を活用して硬度が非常に高い物質と、相対的に硬度が低い物質をそれぞれ数nmの厚さを有し、積層構造となるようにして合成される。即ち、硬度の高い物質と、硬度の低い物質が10nm前後の繰り返し周期で交互に積層された構造を形成する。このようなラメラ構造薄膜になれば、外部からの機械的な衝撃に対する抵抗が2つの物質の硬度の平均値より遥かに高くなる。硬度の高い物質のみからなる膜では外部の衝撃が与える衝撃波が物質の内部まで効率的に伝達されるのに対し、ラメラ構造薄膜では衝撃波が硬度の高い物質と、硬度の低い物質との間の界面で広がるようになるので、結果として、外部の衝撃が膜の内側に伝達されるのを防止する。本発明の薄膜は相対的に硬度の高いシリカと、硬度の非常に低い空気層とが交互に積層されている構造を有しているので、高硬度ラメラ構造薄膜で衝撃波を分散させるのと同様の効果を示すようになる。従って、本発明はたとえ硬度の低いシリカからなっても、純粋なシリカよりは非常に硬度の高い特性を示す。
【0012】
第2に、相対的に誘電率の高いシリカと、誘電率の低い空気が数nmの範囲で繰り返される薄膜は誘電率を効率的に下げるメカニズムを提供する。これは互いに異なる誘電率を有する2つの誘電体の配列方法に応じて誘電率全体がどのように変化するかを比較すれば、説明が可能である。2つの誘電体を並列に連結する場合、図12に示すように、直列と並列の2種類の方法がある。
【0013】
図12を参照すれば、並列連結の場合には総キャパシタンスは2つの誘電体の容量の和となり、従って2つの誘電体の誘電率の算術平均値が全体誘電率となる。即ち、全体誘電率は2つの誘電物質の相対的比重の変移に線形的に変化する。それに対し、直列連結の場合には総誘電率の逆数が各誘電体の誘電率の逆数の平均となる。従って、膜を構成するシリカと空気の量が同一の場合、全体誘電率は直列連結の場合の方が並列連結の場合よりさらに低くなる。本発明のラメラ構造薄膜は、シリカ層と空気層を互いに異なる種類の誘電体と見れば、これらの誘電体を直列に連結した場合と同一になる。反面、従来のシリカ薄膜誘電体はいずれも並列連結に該当する。
【0014】
既存のシリカ薄膜の場合には誘電率を下げるために、無条件に気孔の比重を高めなければならないが、これは膜の機械的強度を大幅に低下させる。これに対し、本発明は相対的に気孔の比重を少なくしながら、誘電率を既存のシリカ薄膜と類似に、又はそれ以下に下げることができ、膜の機械的強度を大幅に低下させなくなる。さらに、ラメラ構造が薄膜の硬度を高めるメカニズムを示すようになるので、むしろ膜の硬度を増加させることができるという効果を奏する。
【0015】
従って、従来技術では解決できなかった低い誘電率と同時に、高い機械的強度を提供する薄膜を提供することで、本発明はこれらの2つの問題を解決できる原理と共に、実際に活用可能な物質の製法を提供する。
【0016】
本発明のその他の長所は既存の多孔性低誘電体薄膜の研究では気孔が膜の外部と連結されており、誘電率を急激に高める水分が容易に侵入し得る経路を根本的に遮断したという点にある。本発明のラメラ構造薄膜の気孔は稠密なシリカ層の間にある空気層により、シリカ層が空気層と外部とが連結されないように遮断しており、水分が浸透できない。これは、吸湿により誘電率が急激に増加する従来の問題点が解消され得ることを意味する。
【0017】
従って、本発明によって製造されるラメラ構造薄膜は機械的強度、化学的な安全性及び低い誘電率(好ましくは、k=2.5以下、より好ましくは、k=2.0以下)を有するシリカ物質である。
【0018】
また、本発明に係る製造方法は純粋なシリカのみを原料とし、工程が簡単であり、他の表面処理が不要であるため、半導体製造工程において、非常に経済的であるという利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜を製造する方法に関する順序図である。
【図2】本発明に係るラメラ構造薄膜のXRD分析結果を示す図である。
【図3】追加的に高温処理過程を経た本発明に係るラメラ構造薄膜のXRDの分析結果を示す図である。
【図4】本発明に係るラメラ構造薄膜のIR分析結果を示す図である。
【図5】本発明に係るラメラ構造薄膜の構造を観察するためのTEM写真である。
【図6】本発明に係るラメラ構造薄膜の空気層及びシリカ層を観察するためのTEM写真である。
【図7】本発明に係るラメラ構造薄膜の厚さを観察するためのSEM写真である。
【図8】本発明に係るラメラ構造薄膜のナノインデンテーション(nanoindentation)の分析結果を示す図である。
【図9】本発明に係るラメラ構造薄膜の誘電定数を求めるための電気容量(Cp)分析結果を示す図である。
【図10】本発明に係るラメラ構造薄膜のIRスペクトラム分析結果を示す図である。
【図11】本発明に係るラメラ構造薄膜のNMRスペクトラム分析結果を示す図である。
【図12】本発明に係るラメラ構造薄膜の超低誘電率を説明する参考図であって、2つの誘電体を連結する2種類の方法を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明はシリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成されるラメラ構造薄膜を提供する。
【0021】
即ち、本発明は0.1〜10nmの厚さ、好ましくは1〜8nm厚さのシリカ層及び0.1〜10nmの厚さ、好ましくは1〜5nm厚さの空気層が、コーティングされるウェハ表面に垂直方向に、0.2〜20nmの繰り返し周期、好ましくは2〜13nm、より好ましくは7〜9nmの繰り返し周期で積層されることを特徴とするラメラ構造薄膜を提供する。
【0022】
しかし、前記ラメラ構造薄膜の厚さ及び繰り返し単位はこれに限定されるものではない。例えば、シリカゾル溶液の組成や攪拌時間の変化により、多様にシリカ層及び空気層の厚さの調節が可能である。
【0023】
また、本発明では超低誘電率、高硬度ラメラ構造薄膜の製造方法として、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液の攪拌段階と、スピンコーティング段階と、エージング段階と、界面活性剤と有機物を除去する熱処理段階とからなるラメラ構造薄膜の製造方法を提供する。
【0024】
本発明において、ラメラ構造薄膜は、前駆体溶液を蒸発させて、構造誘導物質である界面活性剤が特定の濃度で自ら構造を形成するEvaporation−Induced
Self−Assembly(EISA)というメカニズムに基づく方法により形成される。
【0025】
即ち、シリカゾルの粒径及び大きさの分布、シリカゾル粒子の量、界面活性剤の量などを調節すれば、シリカ粒子と界面活性剤が周期的に繰り返される層構造、即ち、ラメラ(lamella)構造をなすようにすることができる。このような薄膜を高い温度で熱処理すれば、有機物である界面活性剤は燃焼してなくなるので、界面活性剤が占めていた空間がなくなり、隣接するシリカ層が互いに当接して(即ち、空気層が形成されなくなり)、結果的には、ナノメートルサイズの範囲で何の内容物のない構造が現れ得る。このとき、本発明ではシリカゾル溶液の組成、スピンコーティング又は蒸着過程後の処理などの条件を変化させることで、本来に界面活性剤が存在していた跡が完全になくならず、その代わりに、シリカ層に比べて密度が非常に低い層、即ち、「空気層」が生成される。
【0026】
そのためには、界面活性剤の濃度が特定値の範囲にあることが重要である。即ち、界面活性剤の組成範囲が特定値を超えると、ラメラ構造ではなく、他の構造の薄膜が形成される。そのようになれば、ラメラ構造の薄膜で確認される超低誘電率、高い表面強度のような物性が得られない。例えば、キュービック構造の薄膜は誘電率が3〜4程度であり、硬度値は概ね0.3GPaとなり、ラメラ薄膜でのように、低誘電、高硬度の物性効果を得ることができない。シリカゾル溶液中の好適な界面活性剤の濃度は、0.1重量%〜0.8重量%であることが好ましい。この場合、シリカゾル溶液中のシリカ濃度は5重量%〜20重量%が好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、化学式EOmPOnEOm(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)とEOmPOn(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体、又は化学式CmH2m+1EOn(EOはエチレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体(ブリジ(Brij)タイプ)、ツイン(Tween)系、トライトン(Triton)系、テルギトール(Tergitol)系など、いわゆる「メゾポーラス構造物質」を合成するのに用いられるあらゆる種類の界面活性剤が使用され得る。特に、化学式EO106PO70EO106(商標名:F−127、Sigma−Aldrich社提供)が好ましく使用され得る。
【0028】
シリカ前駆体としては、トリエトキシシラン(TES)、トリメトキシシラン(TMOS)、ビニールトリメトキシシラン(VTMOS)が用いられることができ、特に、テトラエトキシシラン(TEOS)が好ましく用いられることができる。
【0029】
シリカゾル溶液は、溶媒、触媒、又は溶媒及び触媒を更に含むことができる。溶媒としては、水、ブタノール、メタノール、エタノール、プロパノールなど、いわゆる「メゾポーラス構造物質」を合成するのに用いられるあらゆる種類の溶媒、特に有機溶媒が用いられることができ、特にエタノールが好ましい。触媒としては、HNO3、HCl、HBr、HI、H2SO4、HClO4のような触媒、特に酸性触媒が用いられることができ、特にHClが好ましい。
【0030】
シリカゾル溶液は溶液全体の重量に基づいて、5重量%〜20重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.8重量%の界面活性剤を含み、好ましくは8重量%〜15重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.6重量%の界面活性剤を含む。選択的に、70重量%〜87重量%の溶媒及び5.04×10-5重量%〜1.97×10-4重量%の触媒を更に含むことができる。
【0031】
本発明の好適な一実施例において、シリカゾル溶液はシリカ前駆体としてTEOS、界面活性剤としてF127、酸触媒としてHCl、溶媒としてH2O及びEtOHを含むことができ、TEOS:F127:HCl:H2O:EtOHのモル濃度の比率が1:1.65×10-3−6.60×10-3:2.08×10-3−7.03×10-3:2.31−4.62:22.6−93.90であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0032】
攪拌段階は10〜60時間、好ましくは10〜30時間行われることができる。このとき、10℃程度の攪拌温度ではラメラ構造薄膜が形成されないので、約20〜30℃の温度で攪拌を行うことが好ましい。また、攪拌時の湿度は18〜40%程度が好ましい。
一方、エージングは50〜100℃で12〜24時間行われることが好ましい。
【0033】
本発明によって生成される薄膜は、空気層とシリカ層がウェハ表面に垂直方向に規則的に配列されているラメラ構造を示すという特徴がある。実際にはこの薄膜は、ウェハ表面に対して垂直方向に、シリカの密度が周期的に大きくなったり、小さくなったりすることが繰り返される構造を有する。密度の高低は断続的に及び/又は連続的に変化し得る。また、シリカ層と空気層との境界が明確に限定されるものではない。
【0034】
従って、本明細書及び特許請求の範囲において、「シリカ層」は前記シリカ密度の高低による繰り返し構造のうち、シリカの密度が高い部分であり、大部分、即ち50体積%以上、好ましくは70体積%以上、より好ましくは90体積%以上がシリカからなる層を意味し、「空気層」は前記繰り返し構造のうち、シリカの密度が低く、相対的に空気の比重が高くて大部分、即ち50体積%以上、好ましくは70体積%以上が空気からなる層を意味する。
【0035】
「スピンコーティング段階」はウェハを所定の回転数で回転させながら、ウェハの中心付近にシリカゾル溶液を落とし、ウェハ上に落とされたシリカゾル溶液は遠心力により周辺に均一に広がりながら、ウェハ表面に塗布される。本発明において、スピンコーティングは25〜35℃の温度及び55〜80%の湿度で行われることが好ましい。
【0036】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、このような実施例は本発明の範疇を限定するものではない。従って、該当技術分野における熟練した当業者は特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更できることが理解できる。
【0037】
ラメラ構造薄膜の製造
シリカ壁の原料であるテトラエトキシシラン(TEOS 99.999%、Sigma−Aldrich社製)の量は1.0gに固定させ、構造誘導物質である界面活性剤F−127(Sigma−Aldrich社製)及び溶媒EtOH、触媒HClの量を表1のように調節して4種類のラメラ構造薄膜の溶液を準備した。表1における数字はTEOS 1モルに対するモル濃度比である。
【0038】
【表1】
【0039】
溶液を15℃の温度、11%以下の湿度条件で表1に示した攪拌時間に従って攪拌させて合成した。合成した溶液を1×1cm大きさのシリコンウェハに28〜29℃、60%の湿度条件で4500rpmの速度で1分間スピンコーティングでコーティングした。このとき、シリコンウェハはピラナ(1:1=H2SO4:H2O2の混合)に2時間程度浸漬した後、蒸留水とエタノールで洗浄してシリコン表面にOH基を付着させる過程を予め行って準備した。80℃のオーブンで12〜24時間エージングを施した。後続して炉(furnace)に入れて1℃/minの速度で450℃まで上昇させた後、450℃で5時間燃焼させ、10℃/minの速度で40℃まで温度を下げた。界面活性剤と有機物を除去して多孔性薄膜を製作した。
【0040】
X−ray回折分析
図2に示すように、D/MAX−2200 Ultima(Rigaku社製)を用いてX−ray回折分析を行った。光源の波長は1.5406ÅのCuKαを用い、格子間隔(d value)はブラッグ(Bragg)の法則(2dsinθ=nλ)で計算した。
【0041】
高温処理後のX−ray回折分析
実施例1において、450℃で5時間熱処理過程を行って収得した薄膜に対して、後続して800℃で30分間高温処理を施してX線回折分析を行った(図3参照)。その結果、本発明に係る多孔性薄膜は高温でもその構造が維持されることが確認された。450℃で熱処理した結果と比較したとき、格子間隔が減少した理由は高温処理により構造は維持されるが、450℃でよりも空気層が崩れることにより、格子間隔が減少したことが分かり、高温処理によって格子間隔を調節できることが分かる。
【0042】
IR分析
実施例1で収得した薄膜に対して、TENSOR27(BRUKER社製)を用いてIR分析を行った(図4参照)。多孔性薄膜がH2Oを含有する場合、H2O自体の誘電率が高いため(〜80)、誘電率が増加する。従って、低誘電物質に適用されるためには吸湿性が低いか、H2Oを含有してはならない。IRにおけるH2Oピークは3400〜3600cm-1で現れるが、本発明に係る多孔性薄膜はこのようなH2Oピークが観察されなかった。従って、本発明に係るラメラ構造薄膜は吸湿性が低く、水を含有していないので、誘電率が相対的に低いことが確認された(表2)。
【0043】
TEM分析
図5は、高解像TEM(HRTEM;JSM−3011、300kV)及び高−電圧電子顕微鏡(HVEM;JEM−ARM 1300S、1250kV)を用いた結果である。本発明に係るラメラ構造薄膜は、シリカ壁と空気層とから構成されたラメラ構造であることが明らかになった。
図6のTEM写真は、本発明に係るラメラ構造薄膜(SKULシリーズ)のシリカ壁と空気層の厚さがXRDで求めた格子間隔(d値)と一致することを示す(表2)。
【0044】
【表2】
【0045】
SEM分析
図7は、FESEM(JEOL、7000F)を用いた結果である。表3に示すように、本発明に係るラメラ構造薄膜は74〜207nmの厚さを有する。
【0046】
【表3】
【0047】
ナノインデンテーション(ナノ押込)
図8のナノインデンテーションは、ナノインデンタ(MTS社製)を用いて本発明に係る多孔性薄膜の硬度とモジュラスを測定した結果を示す。従来の低誘電物質が0.5GPa以下の硬度と、3.0GPa以下のモジュラスを有するのに対し、本発明に係るラメラ構造薄膜の硬度及びモジュラス値は非常に高い値であることが分かる(表3)。
【0048】
誘電定数(k)
誘電定数(k)値をHP 4248A Precision LCR meterで測定し、以下の公式で計算した。
Cp=ε0εA/d
ここで、ε0は真空での誘電率、εは本発明に係る薄膜の誘電率、Aは電極の面積、dは低誘電物質の厚さである。
【0049】
図9に示すように、既存の低誘電物質のうち、2.0以下の誘電定数値を有する物質が殆どないことから、本発明に係るラメラ構造薄膜の誘電率値は非常に低い値であることが分かる(表3)。
【0050】
蒸気処理に対する耐性試験
本発明によってラメラ構造の低誘電薄膜の吸湿性をテストするために、以下のような分析実験を実施した。100℃の沸騰水の蒸気環境、即ち、非常に多湿な条件で製造したラメラ構造の低誘電薄膜を30分間放置した後にIR分析を行った。図10の左側グラフは、シリコンウェハのみを測定したグラフであり、図10の右側グラフは、本発明に係る実験片SKUL−1、2を測定したグラフである。図10を参照すれば、本発明に係る実験片SKUL−1、2のIRデータで水ピークが観察されなかった。本発明によって製造されたラメラ構造の低誘電薄膜が非常に多湿な環境でも水を吸着しない非常に低い吸湿性を有することを確認することができた。
【0051】
29Si MAS NMRスペクトラムの分析
本発明によって製造したラメラ構造薄膜のNMRスペクトラム分析を行い、これを図11に示した。メゾポーラスの構造と大きさはシリカ種のオリゴマー化反応(oligomerization)の次数と関連があり、従ってNMRスペクトラムの分析を通じて本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜の大きさと構造を確認した。
【0052】
比較実施例
本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜を従来の低誘電と比較するために、参考文献に基づいて比較実験を行い、これに対する物性を測定及び比較した。
【0053】
比較実施例1)
参考文献(Adv. Mater. 2000,12,1769)に記載されたようなポリマーと有機溶媒を用いてスピンコーティング法で製作した低誘電物質であるSiLKを製作した。しかし、この物質のk値は2.65であり、ヤングモジュラスは2.45GPa、硬度は0.38GPaの値を有することによって、本発明に係る低誘電ラメラ構造のシリカ薄膜より高い誘電定数値と顕著に低いヤングモジュラス及び硬度値を有することが分かる。これにより、本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜が従来技術に比べて、非常に優れた性能を有することが確認できた。
【0054】
比較実施例2)
参考文献(Chem. Mater. 2002,14,1845−1852)によって、ハイドロゲンシルセスキオキサン(Hydrogen silsesquioxane)を基礎としたシリカソースと、メチルプロピルキトンのような低い沸騰点を有する溶媒を用いてスピンコーティング方法によりメゾポーラスを有する低誘電薄膜を製造した。
【0055】
比較実施例3)
参考文献(Langmuir 2001, 17,6683−6691)によって、PMSSQ/BTMSEプレポリマー(prepolymer)とビス(1、2−トリメトキシシラン)エタン(BTMSE)[Bis(1、2−trimethoxysilyl)ethane(BTMSE)]、そしてメチルトリメトキシシラン[methyltrimethoxysilane(MSSQ)]を用いてスピンコーティングにより低誘電薄膜を製造した。
【0056】
比較実施例1及び比較実施例3から生成される薄膜の誘電率を測定した結果、いずれも2.5〜3.5程度の誘電率を示し、本発明によって製造したラメラ構造の低誘電薄膜より遥かに高いk値を有することが確認された。
【0057】
上述した通り、本発明に係るラメラ構造薄膜は適切な機械的強度と化学的安全性を提供し、特に2.5以下の非常に低い誘電率及び高い硬度を有する。また、本発明に係るラメラ構造薄膜の製造方法は、純粋なシリカのみを原料とし、特別な表面処理を施さないようにするため、半導体工程自体を簡単かつ経済的にするという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成されるラメラ構造薄膜。
【請求項2】
0.1〜10nm厚さのシリカ層及び0.1〜10nm厚さの空気層が0.2〜20nmの繰り返し周期で積層されることを特徴とする請求項1に記載のラメラ構造薄膜。
【請求項3】
1〜8nm厚さのシリカ層及び1〜5nm厚さの空気層が2〜13nmの繰り返し周期で積層されることを特徴とする請求項2に記載のラメラ構造薄膜。
【請求項4】
1.0〜2.5の低い誘電率及び0.2〜3.0GPaの高い硬度を有する超低誘電率、高硬度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラメラ構造薄膜。
【請求項5】
超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法であって、
シリカと界面活性剤の自己組立(self−assembly)構造の形成を誘導するために、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液を攪拌する段階と、
前記溶液をシリコンウェハにスピンコーティングする段階と、
前記ウェハの上のスピンコーティングされた薄膜をエージングする段階と、
界面活性剤と有機物を前記ウェハから除去する熱処理段階と
から構成されるラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項6】
シリカゾル溶液は溶液全体の重量に対して、5重量%〜20重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.8重量%の界面活性剤を含むことを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、化学式EOmPOnEOm(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)又はEOmPOnを有するブロック共重合体(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)、又は化学式CmH2m+1EOn(EOはエチレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体(ブリジ(Brij)タイプ)からなるメゾポーラス構造を実現できる界面活性剤群より選択されることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記界面活性剤は、化学式EO106PO70EO106を有するブロック共重合体(F−127)であることを特徴とする請求項6に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記攪拌段階は、20〜30℃の温度で行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記攪拌段階は、18〜40%の湿度で行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記スピンコーティングは、25〜35℃の温度及び55〜80%の湿度で行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記エージングは、50〜100℃で12〜24時間行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項13】
ウェハを300〜800℃で2〜6時間熱処理させ、再び徐々に冷却させることで前記熱処理段階が行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項14】
シリカ前駆体は、トリエトキシシラン(TES)、トリメトキシシラン(TMOS)、ビニールトリメトキシシラン(VTMOS)及びテトラエトキシシラン(TEOS)からなるメゾポーラス構造を実現できるシリカ前駆体群より選択されることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項15】
前記シリカゾル溶液が水、ブタノール、メタノール、エタノール、及びプロパノールより選択される有機溶媒及びHNO3、HCl、HBr、HI、H2SO4、及びHClO4からなる群より選択される酸性触媒、又は溶媒及び触媒を更に含むことを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項16】
誘電率が1.0〜2.5の値を有することを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項17】
硬度が0.2〜3.0GPaの値を有することを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項18】
有機溶媒がエタノールであり、酸性触媒がHClであることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項19】
シリカゾル溶液がシリカ前駆体としてTEOS、界面活性剤としてF127、酸触媒としてHCl、溶媒としてH2O及びEtOHを含み、TEOS:F127:HCl:H2O:EtOHのモル濃度の比率が1:1.65×10-3−6.60×10-3:2.08×10-3−7.03×10-3:2.31−4.62:22.6−93.90であることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項1】
シリカ層及び空気層がコーティングされるウェハ表面に垂直方向に交互に繰り返し積層されて構成されるラメラ構造薄膜。
【請求項2】
0.1〜10nm厚さのシリカ層及び0.1〜10nm厚さの空気層が0.2〜20nmの繰り返し周期で積層されることを特徴とする請求項1に記載のラメラ構造薄膜。
【請求項3】
1〜8nm厚さのシリカ層及び1〜5nm厚さの空気層が2〜13nmの繰り返し周期で積層されることを特徴とする請求項2に記載のラメラ構造薄膜。
【請求項4】
1.0〜2.5の低い誘電率及び0.2〜3.0GPaの高い硬度を有する超低誘電率、高硬度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラメラ構造薄膜。
【請求項5】
超低誘電率、高硬度のラメラ構造薄膜の製造方法であって、
シリカと界面活性剤の自己組立(self−assembly)構造の形成を誘導するために、界面活性剤及びシリカ前駆体を含むシリカゾル溶液を攪拌する段階と、
前記溶液をシリコンウェハにスピンコーティングする段階と、
前記ウェハの上のスピンコーティングされた薄膜をエージングする段階と、
界面活性剤と有機物を前記ウェハから除去する熱処理段階と
から構成されるラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項6】
シリカゾル溶液は溶液全体の重量に対して、5重量%〜20重量%のシリカ及び0.1重量%〜0.8重量%の界面活性剤を含むことを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、化学式EOmPOnEOm(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)又はEOmPOnを有するブロック共重合体(EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)、又は化学式CmH2m+1EOn(EOはエチレンオキサイド、n及びmは整数を意味する。)を有するブロック共重合体(ブリジ(Brij)タイプ)からなるメゾポーラス構造を実現できる界面活性剤群より選択されることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記界面活性剤は、化学式EO106PO70EO106を有するブロック共重合体(F−127)であることを特徴とする請求項6に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記攪拌段階は、20〜30℃の温度で行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記攪拌段階は、18〜40%の湿度で行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記スピンコーティングは、25〜35℃の温度及び55〜80%の湿度で行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記エージングは、50〜100℃で12〜24時間行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項13】
ウェハを300〜800℃で2〜6時間熱処理させ、再び徐々に冷却させることで前記熱処理段階が行われることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項14】
シリカ前駆体は、トリエトキシシラン(TES)、トリメトキシシラン(TMOS)、ビニールトリメトキシシラン(VTMOS)及びテトラエトキシシラン(TEOS)からなるメゾポーラス構造を実現できるシリカ前駆体群より選択されることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項15】
前記シリカゾル溶液が水、ブタノール、メタノール、エタノール、及びプロパノールより選択される有機溶媒及びHNO3、HCl、HBr、HI、H2SO4、及びHClO4からなる群より選択される酸性触媒、又は溶媒及び触媒を更に含むことを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項16】
誘電率が1.0〜2.5の値を有することを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項17】
硬度が0.2〜3.0GPaの値を有することを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項18】
有機溶媒がエタノールであり、酸性触媒がHClであることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【請求項19】
シリカゾル溶液がシリカ前駆体としてTEOS、界面活性剤としてF127、酸触媒としてHCl、溶媒としてH2O及びEtOHを含み、TEOS:F127:HCl:H2O:EtOHのモル濃度の比率が1:1.65×10-3−6.60×10-3:2.08×10-3−7.03×10-3:2.31−4.62:22.6−93.90であることを特徴とする請求項5に記載のラメラ構造薄膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−170923(P2009−170923A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7152(P2009−7152)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(509017594)成均館大学校 産学協力団 (10)
【氏名又は名称原語表記】SUNGKYUNKWAN UNIVERSITY Foundation for Corporate Collaboration
【住所又は居所原語表記】300 Cheoncheon−dong, Jangan−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do 440−746, Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(509017594)成均館大学校 産学協力団 (10)
【氏名又は名称原語表記】SUNGKYUNKWAN UNIVERSITY Foundation for Corporate Collaboration
【住所又は居所原語表記】300 Cheoncheon−dong, Jangan−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do 440−746, Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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