説明

超合金部材内の残留応力を最小限に抑える方法、超合金部材の修理方法、および超合金部材

【課題】 鉄−ニッケル−コバルト基超合金ガスタービンエンジン部材を修理するためのシステムおよび方法が提供される。
【解決手段】 方法は、部材10を約2000°F±25°Fに加熱し、部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することにより、部材を溶体化熱処理し; 部材を約1325°F±25°Fに加熱し、部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、部材を所定の冷却速度で冷却することにより、部材を析出熱処理することで、溶接修理された鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材内の溶接後残留応力を最小限に抑える。十分に機械加工されかつ溶接修理された部材の寸法は、特注設計の炉器具によって溶体化熱処理および析出熱処理中、維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスタービンエンジンの修理に関する。より詳細には、本発明は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)ガスタービンエンジン部材を修理する方法に関し、この方法では、修理後、十分に機械加工された部材を溶体化熱処理して、その内部の残留溶接応力を解放し、次いで析出熱処理して、材料の微細構造および機械的性質をその通常の十分に熱処理した状態に戻す。
【背景技術】
【0002】
航空機用途に使用される比較的新しい合金として、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料として商業的に知られておりカーペンターテクノロジー社(Carpenter Technology Corporation)から入手できる、鉄−ニッケル−コバルト基超合金があり、これは、広い温度範囲に亘って特に低い熱膨張特性を有する。サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料は、航空機用途に通常使用される主要部の合金に対するいくつかの利点を与えるので、この超合金は、例えば圧縮機の効率および安定性を保証するため圧縮機ブレードおよびウェアストリップ(wear strip)材料の精密な制御が必要となるさまざまなガスタービンエンジンの高圧圧縮機セクションおよび低圧圧縮機セクション内の部材などのためのさまざまな航空機用途にとって非常に魅力的である。この超合金は、従来の膨張の制御された鉄−ニッケル−コバルト基合金に比較して、より良好な耐食性、向上した熱安定性、良好な引張り特性、優れたクリープ抵抗性、およびより良好な微細構造安定性を与えるけれども、この超合金はいくつかの欠点も有する。すなわち、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料は、高温において切欠き機械的性質(すなわち、応力破壊、ドエル低サイクル疲労(dwell low cycle fatigue)、その他)が比較的不十分であり、通常は、環境の影響から保護するためにその上に被覆(すなわち、低温拡散アルミニド(aluminide)被覆)を必要とする。このような被覆が存在すると、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料の切欠き特性がさらに低下してしまい、使用中にサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材に割れが入る可能性がある。この割れの生成は通常、応力集中特性が孔の位置などにおいて材料の切欠き敏感性を悪化させる高応力領域で観察される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の主要部の合金で作成されたガスタービンエンジン部材を修理するさまざまな方法が存在するけれども、現在、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料で作成されたガスタービンエンジン部材を修理するのに利用できる方法は存在しない。従って、損傷したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材は、全く新しい部材と交換する必要があり、損傷したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材は、製造業者に返却されているか、あるいは、それらを回収する適切な修理方法が利用可能になるまで保管されている。損傷したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材の数は、増加し続けているので、これらの損傷部材に関連する費用も同様に上昇し続けている。従って、損傷したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)ガスタービンエンジン部材を有用な使用に戻すことができるように、損傷したそのような部材を修理できるのが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、上述した短所は、損傷したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)ガスタービンエンジン部材を修理するためのシステムおよび方法に関連する本発明の実施態様によって克服される。これらのシステムおよび方法は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)ガスタービンエンジン部材を修理するさまざまな方法を提供し、その後、十分に機械加工された部品の溶体化熱処理および析出熱処理が続き、それによって、損傷したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材を修理して有用な使用に戻すことができる。
【0005】
本発明の実施態様は、溶接修理された部材内の溶接後残留応力を最小限に抑える方法を含む。この方法は、溶接修理された部材を約2000°F±25°Fに加熱し、溶接修理された部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、溶接修理された部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することにより、溶接修理された部材を溶体化熱処理し; 溶接修理された部材を約1325°F±25°Fに加熱し、溶接修理された部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、溶接修理された部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、溶接修理された部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、溶接修理された部材を所定の冷却速度で冷却することにより、溶接修理された部材を析出熱処理する、ことを含み、溶接修理された部材は、鉄−ニッケル−コバルト基超合金で作成されている。鉄−ニッケル−コバルト基超合金は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料として商業的に知られており、約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40wt.%のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成る。これらの溶接修理された部材は、ガスタービンエンジン部材を含むことができる。
【0006】
十分に機械加工されかつ溶接修理された部材の寸法は、特注設計された炉の器具(tool)によって溶体化熱処理および析出熱処理中、維持される。
【0007】
溶体化熱処理後、溶接修理された部材内の実質的に全ての残留溶接応力が除去される(すなわち、溶接修理された部材は、約30ksi以下の残留応力を含む)。析出熱処理後、溶接修理された部材の微細構造は、受け入れたままの鉄−ニッケル−コバルト基超合金の微細構造と実質的に同等である。析出熱処理後、溶接修理された部材の機械的性質は、受け入れたままの鉄−ニッケル−コバルト基超合金の機械的性質と実質的に同等である。
【0008】
この方法はさらに、部材を溶接修理する前に、部材上に存在するどのような被覆も除去し; 溶接修理された部材を溶体化熱処理しかつ析出熱処理した後に、溶接修理された部材の所定の表面をショットピーニングし、かつ/あるいは、ショットピーニング後に所定の被覆で、溶接修理された部材の所定の表面を被覆する、ことを含む。所定の被覆は好ましくは、孔および孔を取り囲む領域などの重要な切欠き位置などの所定の位置には施されない。
【0009】
本発明の実施態様はまた、鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材を溶接修理する方法を含む。この方法は、部材上に存在するどのような被覆も除去し; 所定の方法で部材を溶接修理し; 部材を約2000°F±25°Fに加熱し、部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することにより、部材を溶体化熱処理し; 部材を約1325°F±25°Fに加熱し、部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、部材を所定の冷却速度で冷却することにより、部材を析出熱処理し; 部材の所定の表面をショットピーニングし; 所定の被覆で部材の所定の表面を被覆する、ことを含み、部材の寸法は、炉の器具により溶体化熱処理および析出熱処理中、維持され、鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材は、約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40wt.%のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成る。
【0010】
所定の方法で部材を溶接修理することは、例えば溶接線材(wire)を用いたその内部の少なくとも一つの割れの溶接修理、くさび(wedge)交換溶接修理によるその内部の少なくとも一つの割れの溶接修理、および完全フランジ交換溶接修理によるその内部の少なくとも一つの割れの溶接修理などの任意の適切な溶接修理技術を含むことができる。
【0011】
本発明の実施態様はまた、(a)溶接修理と; (b)部材を約2000°F±25°Fに加熱し、部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することを含む、溶体化熱処理と; (c)部材を約1325°F±25°Fに加熱し、部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、部材を所定の冷却速度で冷却することを含む、析出熱処理と、を受けた、修理された鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材を含み、鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材は、約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40wt.%のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成る。
【0012】
本発明のさらなる特徴、態様、および利点は、本発明のいくつかの好ましい形態を例示する添付の図面が参照され、かつ、参照符号の同様の文字が図面の全体を通して同様の部品を示している以下の説明の間に、当業者には容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のシステムおよび方法は、さまざまな図面を参照して以下に説明する。
【0014】
本発明の理解を促進する目的で、図1〜図6に例示される本発明のいくつかの好ましい実施態様と、本発明を記載するのに使用される特定の用語とをここで参照する。ここで使用する用語は、限定ではなく説明の目的のためのものである。ここに開示する特定の構造上および機能上の詳細は、限定として解釈されるものではなく、本発明をさまざまに利用するのを当業者に教示するための代表的な基礎としての請求項のための単なる基礎として解釈する必要がある。説明した構造および方法における任意の変更または変形、および、当業者には通常浮かぶであろうような、ここに例示した本発明の原理のさらなる適用は、本発明の精神および範囲内にあると考えられる。
【0015】
本発明は、損傷したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)ガスタービンエンジン部材を有用な使用に戻すことができるように、損傷したそのような部材を修理するためのシステムおよび方法に関連する。サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材のための適切な溶接後応力解放サイクルは存在しないので、十分に機械加工されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材が、溶接修理された後に、完全な熱処理を受けることが必要である。これは、十分に機械加工された部品を溶体化熱処理温度に曝すのを避ける従来のやり方からの大きな逸脱を示している。しかしながら、本発明は、特注設計された炉の器具を用いており、これによって、本発明の完全な熱処理サイクル中に、十分に機械加工されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部品の適切な寸法制御を維持することができる。
【0016】
サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料は、膨張の制御された鉄−ニッケル−コバルト基超合金である。サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料は一般に、約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40wt.%のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成る。この超合金は、通常の溶体化処理および時効硬化処理の使用を用いた再結晶化状態において引張り特性および応力破壊強度の優れた組み合わせを有する。従来の膨張の制御された鉄−ニッケル−コバルト基合金に比較して、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料は、微細な結晶粒径(grain size)へと処理される場合、より良好な耐食性、向上した熱安定性、良好な引張り特性、および耐水素脆性を与える。サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料はまた、さまざまなエンジン圧縮機の全作動温度範囲に亘って、優れたクリープ抵抗性および微細構造安定性を与える。さらに、他の膨張の制御された鉄−ニッケル−コバルト基合金とは異なり、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料は、以前には低熱膨張と共には達成できなかったレベルの耐酸化性を与える、クロムを含有する。要するに、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)ガスタービンエンジン部材によって、向上した性能、より長い部材寿命、およびより低い寿命サイクル費用が実現される。
【0017】
先に述べたように、ガスタービンエンジン部材は、日常的に修理して、重要なおよび/または高価な部材を有用な使用に戻している。さまざまな種類の溶接修理をしばしばこのような部材を修理するのに使用するとはいえ、溶接によって、溶接部内の凝固反応に起因して修理された部材内に非常に高い残留応力が生じる。これらの残留応力は、部材合金の降伏応力とほぼ同じくらい高いものとなることがあり、応力破壊、平滑(smooth)および切欠き低サイクル疲労、および割れ伝播特性などを含むさまざまな性質に否定的な影響を及ぼすことがある。修理はしばしば疲労割れ開始および伝播技術によって分析的に確認されるので、残留応力の存在は、修理の許容可能性を決定するのに重要な役割を果たす。従って、残留応力を低減することは、鍵となる工学上の配慮である。
【0018】
部品内の溶接に関連する応力を低減する通常の方法は、溶接修理が行われた後に、部品の応力を解放することである。溶接修理されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部品に使用できた応力解放サイクルを生成する試みは、成功しなかった。最初に、インコネル合金718(Inconel Alloy 718)の溶接後応力解放に通常使用されている短縮析出熱処理を、溶接修理されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部品を応力解放する試みに用いてみた。この熱処理サイクルは、部品を約1350°F±25°Fに加熱し、部品を約4時間約1350±25°Fに保持し、部品を最大約125°F/時の速度で約1200±25°Fに冷却し、部品を1350±25°Fからの冷却時間を含めて合計で約3時間約1200±25°Fに保持し、次いでその後、部品を室温に冷却する、ことから成っていた。この熱処理サイクルは、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料およびインコネル合金718(Inconel Alloy 718)両方が、類似した析出熱処理サイクルを有するので、選択した。しかしながら、この熱処理サイクルは、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料の機械的性質に非常に否定的な影響を有するのが見出された。
【0019】
ちょうど今述べた短縮析出熱処理に掛けたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材は、低ひずみクリープおよび低サイクル疲労において大きな低減(debit)を示した。切欠き低サイクル疲労試験は、基準となる未修理のサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料では破壊まで10,800サイクルの平均寿命を示したが、これに対し、修理しかつ応力解放したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料では破壊まで8,400サイクルの平均寿命を示した。これは、22%の寿命の低減を示す。平滑低サイクル疲労試験は、基準となる未修理のサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料では破壊まで18,200サイクルの平均寿命を示したが、これに対し、修理しかつ応力解放したサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料では破壊まで8,000サイクルの平均寿命を示した。これは、56%の寿命の低減を示す。これらの低減は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料の過時効(overaging)により生じたと思われた。ほとんどまたは全く害を受けずに繰り返してこの短縮析出熱処理に掛けることができるインコネル合金718(Inconel Alloy 718)と異なり、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料は、最初の析出(すなわち時効)熱処理サイクル中に十分に時効が進む。従って、溶接後応力解放のためにこの短縮析出熱処理にさえサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料を掛けても、材料は過時効となり、上述した低減が生じた。これらの低減は、特定の高圧圧縮機の最も後ろの段などといった多くの用途に使用するには構造上許容できないと考えられた。
【0020】
従って、溶接修理されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材のための効果的な応力解放サイクルを開発する試みにおいてさらなる努力が行われた。効果的な応力解放サイクルは、(1)許容可能なレベルの残留応力(すなわち、最大で約30ksi)を生成するであろうし、(2)許容できない程度までは合金の性質を損なわないであろう。応力緩和試験は、許容可能なレベルの約30ksi以下の残留応力を生成するであろう最低応力解放温度を決定するために、約1200〜1350°Fの温度範囲に亘って実施した。図2に示す結果は、試験した最高温度である1350°Fにおいてさえも、約30ksiの許容可能な最大残留応力が達成されなかったことを示している。1350°Fより上に応力解放温度を上昇させると、さらなる性質の低減を生成するだけであろうから、効果的な溶接後応力解放サイクルは、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材では実行できない。従って、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材をガスタービンエンジンにおける有用な使用に戻すことができるように、そのような部材のための修理を確立するために新規な方法が必要であった。
【0021】
先に述べたように、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材を溶接修理した後に、溶接後応力解放が、部材を有用な使用に戻すことができる前に必要である。その点に関しては、本発明の実施態様は、十分に機械加工されかつ溶接修理されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材を溶体化熱処理して、その内部の残留溶接応力を解放し、次いで部材を析出熱処理して、材料の微細構造および機械的性質をその通常の受け入れたままの状態に戻すことにより、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材内の溶接後残留応力解放を達成することができる新規な熱処理を含む。
【0022】
本発明の溶体化熱処理は、部品を約2000±25°Fに加熱し、部品を約1時間約2000±25°Fに保持し、部品を空冷と同等の速度で約700°Fより下に冷却することを含む。これは、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料のための標準的な溶体化熱処理であり、これによって、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材内の実質的に全ての残留溶接応力が除去される。その後、部材は、析出熱処理する。
【0023】
本発明の析出熱処理は、部品を約1325±25°Fに加熱し、部品を約8時間約1325±25°Fに保持し、部品を最大約100°F/時の速度で約1150±25°Fに冷却し、部品を約8時間約1150±25°Fに保持し、次いでその後、部品を任意の所望の冷却速度で室温に冷却することを含む。これは、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料のための標準的な析出熱処理であり、これによって、材料の微細構造および機械的性質がその通常の受け入れたままの状態に戻される。
【0024】
本発明の熱処理は、熱処理中に、十分に機械加工されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部品の適切な寸法制御を維持するのに特注設計された炉の器具の使用を必要とする。これらの固定具は好ましくは、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材とは異なる熱膨張係数を有し、それによって、固定具は、部材を所定の大きさにすることができる。この大きさの決定は好ましくは、冷却中でなく加熱中に生じる。この熱膨張差に基づく固定の考えは、部材が歪むのを防止するように適切な温度において部材と固定具とが一緒になることができるように、これら部材と固定具との相対的な大きさを計算することを含む。
【0025】
さまざまな種類の溶接修理をサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材に行うことができる。これらの修理は、小さな割れの溶接線材修理、より重大な割れのためのくさび交換修理、および最も重大な割れのための完全フランジ交換修理を含む。これらの修理は、例えば図1、図3〜図6に示すような高圧圧縮機ケースアッセンブリの完全フープリング(full hoop ring)部材10などのさまざまなサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材を修理するのに使用できる。
【0026】
溶接線材は、図3に示す割れ15などといったサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材内の小さな割れを修理するのに使用できる。これらの割れ15は一般に、敏感な領域内へと伸びない深刻でない表面割れ(すなわち、例示的な完全フープリング部材10の内側の半径部20内へ伸びない割れ)である。このような割れ15は一般に、(1)部材10上に存在するどのような被覆も除去し、(2)割れ15を除去するのに溝かんな(router)または他の適切な工具を使用し、割れ15を除去する際にできる限り最小量の材料を除去するように配慮し、(3)割れ15が完全に除去されたかを確認するように領域を検査し、(4)溶接することになる領域を清浄化し、(5)領域を溶接するのに溶接線材を利用し、次いで、(6)その内部の残留溶接応力を解放するように、溶接修理された部材を熱処理する、ことによって修理する。
【0027】
くさび交換修理は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材内のより重大な割れを修理するのに使用できる。本発明のくさび交換修理方法によって修理できるそのような割れ16の一つを図4に示す。これらの割れ16は一般に、より深い割れまたは孔位置に生じる割れなどといったより深刻な割れである。このような割れ16は一般に、(1)部材10上に存在するどのような被覆も除去し、(2)割れ16を含む部材10のくさび形部分30を除去し、(3)新しく作製したくさび交換部分を清浄化しかつ溶接することになるどのような領域も清浄化し、(4)損傷したくさび形部分30を新しく作製したくさび交換部分と交換し、(5)必要または所望ならば溶接線材を用いて、くさび交換部分を所定の位置に溶接し、次いで、(6)その内部の残留溶接応力を解放するように、溶接修理された部材を熱処理することによって修理する。
【0028】
完全フランジ交換修理は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材内の最も重大な割れを修理するのに使用できる。本発明の完全フランジ交換修理方法によって修理できるそのような割れ17のいくつかを図5に示す。これらの割れ17は一般に、それらが部品上に径方向内向きに伝播しているか、あるいは、くさび修理が可能となるにはあまりにも多くの割れが部品の所定の領域内に存在しているので、最も深刻な割れである。このような割れ17は一般に、(1)部材10上に存在するどのような被覆も除去し、(2)割れ17を含む部材10の完全なフランジ40を除去し(すなわち、切断線42に沿ってフランジ40を除去し)、(3)新しく作製したフランジ交換部品を清浄化しかつ溶接することになるどのような領域も清浄化し、(4)損傷したフランジ40を新しく作製したフランジ交換部品と交換し、(5)必要または所望ならば溶接線材を用いて、フランジ交換部品を所定の位置に溶接し、次いで、(6)その内部の残留溶接応力を解放するように、溶接修理された部材を熱処理することによって修理する。
【0029】
上述した溶接修理または任意の他の適切な溶接修理の一つをサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材に行った後に、本発明の新規な熱処理工程は、十分に機械加工されかつ溶接修理された部品を上述した溶体化熱処理に掛けることを含み、この溶体化熱処理は、部品を約2000±25°Fに加熱し、部品を約1時間約2000±25°Fに保持し、部品を空冷と同等の速度で約700°Fより下に冷却することを含む。その後、部品を、上述した析出熱処理に掛け、この析出熱処理は、部品を約1325±25°Fに加熱し、部品を約8時間約1325±25°Fに保持し、部品を最大約100°F/時の速度で約1150±25°Fに冷却し、部品を約8時間約1150±25°Fに保持し、次いでその後、部品を任意の所望の冷却速度で室温に冷却することを含む。特注設計された炉の器具を、本発明の溶体化熱処理および析出熱処理の工程の際に、十分に機械加工されたサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部品の適切な寸法制御を維持するのに使用する。本発明の二工程熱処理は、上述した溶接修理のうちの一つの後に使用するのに限定されない。この二工程熱処理は、溶接修理された部品内の残留溶接応力を解放するように任意の種類の溶接修理をサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材に行った後に、実施することができる。さらに、ここでは、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料で作成された高圧圧縮機ケースアッセンブリの完全フープリング部材に対する修理を説明したとはいえ、本発明は、このような部材の修理に限定されない。任意のサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材を溶接修理し、次いで、本発明の精神および範囲から逸脱せずに本発明の新規な二工程熱処理に従って熱処理することができる。また、本発明の二工程熱処理、または他の類似の熱処理は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料のほかに、他の低熱膨張係数の鉄−ニッケル−コバルト基合金に施すことができる。
【0030】
本発明の修理に溶接線材を使用するときは、任意の適切な溶接線材を使用できる。サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)溶接線材が最も好ましい溶接線材となるであろうが、そのような溶接線材は現在存在せずまた計画もされていない。従って、他の適切な溶接線材を使用する必要がある。熱処理可能なニッケル基超合金の大部分は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料と適合しない熱処理を必要とするので、この溶接線材は、硬化可能でないニッケル基合金から選択してもよい。実施態様においては、熱処理可能なインコネル合金909(Inconel Alloy 909)溶接線材が、その熱膨張特性がサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料の熱膨張特性に近く、また、熱処理可能でない合金より大きな機械的強度を与えるであろうから、好ましくなり得る。他の実施態様においては、熱処理可能なインコネル合金718(Inconel Alloy 718)溶接線材が、熱処理可能でない合金より大きな機械的強度を同様に与えるであろうし、また、使用する限られた量の溶接材料が部材の全体の熱膨張特性に最小の影響を有するであろうから、好ましくなり得る。いくつかの他の適切で非限定的な溶接線材としては、インコネル合金625(Inconel Alloy 625)およびヘインズ合金242(Haynes Alloy 242)が挙げられる。
【0031】
本発明の溶接修理は、例えば、手作業のガスタングステンアーク溶接、手作業のプラズマアーク溶接、電子ビーム溶接、その他などの任意の適切な溶接技術を含むことができる。
【0032】
本発明の修理および熱処理を実施した後に、部材の表面のショットピーニングを、部材の切欠きおよび平滑低サイクル疲労強度ばかりでなく切欠き応力破壊強度を向上させるのに、実施できる。疲労は、エンジンの振動により生成され、疲労割れは一般に、部材の表面で引張り応力の位置において開始する。ショットピーニングは、部材の表面に圧縮残留応力を生成し、部材の疲労寿命を延ばす。従って、ショットピーニングは有利である。従って、十分なショットピーニングは理想的には、任意の孔の内部において、孔の入口/出口半径部において、溶接部それ自体に亘って、および隣接する熱影響部に亘って、さらには、任意の他の所望の位置において存在する。元のサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材は一般に、ショットピーニングされた表面を備えていないとはいえ、そのような部品を溶接修理した後のショットピーニングは実際に、元のサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材には存在しない向上した低サイクル疲労のレベルをそれに与えることができる。
【0033】
約1000°Fを超える温度におけるサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)材料の耐酸化性は限られているので、このような部材をそのような温度を超えて作動する場合は、このような部材上に被覆を使用する必要がある。多くのさまざまな被覆が可能であるとはいえ、好ましい被覆の一つは、低温拡散アルミニド被覆である。この被覆は一般に、溶接修理、熱処理、およびショットピーニング後、約17時間約950〜1025°Fの間の温度における拡散制御処理によって部材に施す。このようなアルミニウム基被覆が存在すると、部材の切欠きドエル疲労強度ポテンシャルが大幅に低減する。サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)部材は、不十分な切欠き特性に起因して使用中に割れる傾向があるので、これらの被覆は、例えば孔の位置などといった重要な切欠き位置に施すべきではない。ボルトなどの取り付け形状構成が存在すると、そのような孔の中のエンジン作動温度および酸素の接近が部分的に低減する。従って、酸化は、被覆されていない孔の中では問題とならないであろう。
【0034】
上述したように、本発明は、サーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)ガスタービンエンジン部材を修理するためのシステムおよび方法を提供する。有利なことには、本発明の熱処理方法は、このような溶接修理された部材を有用な使用に戻すことができる。特注設計された炉の器具は、熱処理サイクル中に、十分に機械加工された部材の適切な寸法制御を維持することができる。多くの他の実施態様および利点は、当業者には明らかであろう。
【0035】
本発明が満足するさまざまな必要を果たす、本発明のさまざまな実施態様を説明した。これらの実施態様は、本発明のさまざまな実施態様の原理の単なる例示であることを理解する必要がある。本発明の多数の変形および適合は、本発明の精神および範囲から逸脱せずに当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の請求項およびそれらの均等物の範囲に含まれる全ての適切な変形および変更を含むことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の方法に従って修理できる例示的なサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)高圧圧縮機ケースアッセンブリを示す概略図である。
【図2】さまざまな応力解放時間および温度におけるサーモ・スパン(Thermo−Span)(登録商標)の応力緩和データを示すグラフである。
【図3】本発明の溶接線材修理方法により溶接修理できるいくつかの例示的な割れを示す、図1に示される高圧圧縮機ケースアッセンブリの一部の上面斜視図を示す概略図である。
【図4】本発明のくさび交換修理方法により修理できる例示的な割れを示す、図1に示される高圧圧縮機ケースアッセンブリの一部の上面分解斜視図を示す概略図である。
【図5】本発明の完全フランジ交換修理方法により修理できる複数の例示的な割れを示す、図1に示される高圧圧縮機ケースアッセンブリの一部の上面斜視図を示す概略図である。
【図6】6−6線に沿ってとった図1に示される高圧圧縮機ケースアッセンブリの断面図を示す概略図である。
【符号の説明】
【0037】
10…完全フープリング部材
15、16、17…割れ
20…内側の半径部
30…くさび形部分
40…完全なフランジ
42…切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接修理された部材内の溶接後残留応力を最小限に抑える方法であって、
溶接修理された部材を約2000°F±25°Fに加熱し、溶接修理された部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、溶接修理された部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することにより、溶接修理された部材を溶体化熱処理し、
溶接修理された部材を約1325°F±25°Fに加熱し、溶接修理された部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、溶接修理された部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、溶接修理された部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、溶接修理された部材を所定の冷却速度で冷却することにより、溶接修理された部材を析出熱処理する、
ことを含み、
溶接修理された部材は、鉄−ニッケル−コバルト基超合金で作成されている、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
溶接修理された部材の寸法は、炉の器具によって溶体化熱処理および析出熱処理中、維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶接修理された部材は、十分に機械加工された部材であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
鉄−ニッケル−コバルト基超合金は、約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40wt.% のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
溶体化熱処理および析出熱処理後、溶接修理された部材は、約30ksi以下の残留応力を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
析出熱処理後、溶接修理された部材の微細構造は、受け入れたままの鉄−ニッケル−コバルト基超合金の微細構造と実質的に同等であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
析出熱処理後、溶接修理された部材の機械的性質は、受け入れたままの鉄−ニッケル−コバルト基超合金の機械的性質と実質的に同等であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
溶接修理された部材を溶体化熱処理しかつ析出熱処理した後に、溶接修理された部材の所定の表面をショットピーニングすることをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
ショットピーニング後に所定の被覆で、溶接修理された部材の所定の表面を被覆することをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記所定の被覆は、所定の位置には施されないことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記所定の位置は、孔および孔を取り囲む所定の領域を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
溶接修理された部材は、ガスタービンエンジン部材を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材を修理する方法であって、
所定の方法で部材を溶接修理し、
部材を約2000°F±25°Fに加熱し、部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することにより、部材を溶体化熱処理し、
部材を約1325°F±25°Fに加熱し、部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、部材を所定の冷却速度で冷却することにより、部材を析出熱処理する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
部材の寸法は、炉の器具により溶体化熱処理および析出熱処理中、維持されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
部材は、十分に機械加工された部材であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材は、約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40wt.%のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成ることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項17】
部材を溶接修理することは、以下の方法すなわち、溶接線材を用いてその内部の少なくとも一つの割れを溶接修理すること、くさび交換溶接修理によりその内部の少なくとも一つの割れを溶接修理すること、および完全フランジ交換溶接修理によりその内部の少なくとも一つの割れを溶接修理することのうちの少なくとも一つの方法を含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項18】
部材を溶体化熱処理しかつ析出熱処理した後に、部材の所定の表面をショットピーニングすることをさらに含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項19】
ショットピーニング後に所定の被覆で、部材の所定の表面を被覆することをさらに含むことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記所定の被覆は、所定の位置には施されないことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記所定の位置は、孔および孔を取り囲む所定の領域を含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
溶体化熱処理および析出熱処理後、部材は、約30ksi以下の残留応力を含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項23】
析出熱処理後、部材の微細構造は、受け入れたままの鉄−ニッケル−コバルト基超合金の微細構造と実質的に同等であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項24】
析出熱処理後、部材の機械的性質は、受け入れたままの鉄−ニッケル−コバルト基超合金の機械的性質と実質的に同等であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項25】
部材を溶接修理する前に、部材上に存在するどのような被覆も除去することをさらに含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項26】
部材は、ガスタービンエンジン部材を含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項27】
鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材を溶接修理する方法であって、
部材からどのような被覆も除去し、
所定の方法で部材を溶接修理し、
部材を約2000°F±25°Fに加熱し、部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することにより、部材を溶体化熱処理し、
部材を約1325°F±25°Fに加熱し、部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、部材を所定の冷却速度で冷却することにより、部材を析出熱処理し、
部材の所定の表面をショットピーニングし、
所定の被覆で部材の所定の表面を被覆する、
ことを含み、
部材の寸法は、炉の器具により溶体化熱処理および析出熱処理中、維持され、
鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材は、約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40 wt.%のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成る、
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
部材は、ガスタービンエンジン部材を含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
(a)溶接修理と、
(b)部材を約2000°F±25°Fに加熱し、部材を約1時間約2000°F±25°Fに保持し、部材を空気中での冷却と同等の速度で約700°Fより下に冷却することを含む、溶体化熱処理と、
(c)部材を約1325°F±25°Fに加熱し、部材を約8時間約1325°F±25°Fに保持し、部材を約100°F/時の最大速度で約1150°F±25°Fに冷却し、部材を約8時間約1150°F±25°Fに保持し、部材を所定の冷却速度で冷却することを含む、析出熱処理と、
を受けた、修理された鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材であって、
約27.00〜31.00wt.%のコバルトと、23.00〜26.00wt.%のニッケルと、5.00〜6.00wt.%のクロムと、4.40〜5.30wt.%のコロンビウム/ニオブと、0.65〜1.10wt.%のチタンと、0.30〜0.70wt.%のアルミニウムと、0.20〜0.40wt.%のケイ素と、0.50wt.%以下のマンガンと、0.50wt.%以下の銅と、0.05wt.%以下の炭素と、0.015wt.%以下のリンと、0.015wt.%以下の硫黄と、0.010wt.%以下のホウ素と、鉄から成る残部と、から成る、
ことを特徴とする、修理された鉄−ニッケル−コバルト基超合金部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−15408(P2006−15408A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161220(P2005−161220)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】