説明

超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法

【課題】超高分子量ポリエチレン繊維織物同士を強固に接合することを可能とする、新規の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法を提供する。
【解決手段】超高分子量ポリエチレン繊維からなる織物2,4の端部と、プリプレグ1,3,5とを、交互に重ね合わせる重ね合わせ工程と、織物2,4とプリプレグ1,3,5とを縫合する縫合工程と、プリプレグ1,3,5を構成する熱硬化性樹脂を熱硬化させる熱硬化工程とを備えた。プリプレグ1,3,5としては、炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させたものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレンは、100〜700万の分子量を有するポリエチレンであり、ポリカーボネートを上回る非常に高い耐衝撃性を有するほか、耐摩耗性、耐薬品性、寸法安定性などにも優れている。
【0003】
しかし、どのような接着剤を用いても超高分子量ポリエチレン繊維織物同士を強固に接合することができないという、大きな欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−8328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、超高分子量ポリエチレン繊維織物同士を強固に接合することを可能とする、新規の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法は、超高分子量ポリエチレン繊維からなる織物と、プリプレグとを、交互に重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記織物と前記プリプレグとを縫合する縫合工程と、前記プリプレグを構成する熱硬化性樹脂を熱硬化させる熱硬化工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記プリプレグは、炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法によれば、超高分子量ポリエチレン繊維織物同士を簡単な工程で強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1における超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法を示す説明図である。
【図2】実施例1における引張強度試験の方法を示す説明図である。
【図3】実施例1における引張強度試験後の試験片の写真である。
【図4】比較例における引張強度試験後の試験片の写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法は、超高分子量ポリエチレン繊維からなる織物と、プリプレグとを、交互に重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記織物と前記プリプレグとを縫合する縫合工程と、前記プリプレグを構成する熱硬化性樹脂を熱硬化させる熱硬化工程とを備えたものである。
【0011】
本発明の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法は、100〜700万の分子量を有する超高分子量ポリエチレン繊維からなる織物を対象としている。超高分子量ポリエチレン繊維は、国内では、東洋紡績株式会社から「ダイニーマ(登録商標)」という商品名で販売されている。
【0012】
はじめの重ね合わせ工程において、超高分子量ポリエチレン繊維からなる織物と、プリプレグとを、交互に重ね合わせる。ここで使用されるプリプレグは、繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたものである。プリプレグを構成する繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが挙げられる。また、プリプレグを構成する熱硬化樹脂としては、特定の樹脂に限定されるものではなく、公知のものが使用可能であるが、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などが用いられる。また、織物とプリプレグは、交互に重ね合わせればよく、織物−プリプレグ−織物と3層に重ねてもよく、織物−プリプレグ−織物−プリプレグと4層に、プリプレグ−織物−プリプレグ−織物−プリプレグと5層、或いは、プリプレグ−織物−プリプレグ−プリプレグ−織物−プリプレグと6層に重ねてもよい。さらに、プリプレグとしては、織物と重ね合わせる際に繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたもの、又は織物と重ね合わせる際に繊維に熱硬化性樹脂を塗布したものを使用してもよい。或いは、例えば、織物−熱硬化性樹脂−繊維−熱硬化性樹脂−織物と重ねて、繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグとしてもよい。また、例えば、織物−熱硬化性樹脂−繊維−熱硬化性樹脂−織物と重ねる場合には、織物に熱硬化性樹脂を塗布してもよい。
【0013】
つぎの縫合工程において、重ね合わせ工程において重ね合わせた織物とプリプレグとを縫合する。この縫合はミシン等を用いて行うことができ、縫合に用いる糸の種類は特に限定されず、天然繊維、合成繊維のいずれでも用いることができる。また、金属製の糸や、ステープラーなどの金具を用いて縫合してもよい。
【0014】
熱硬化工程においては、縫合工程において織物と縫合されたプリプレグの熱硬化性樹脂を熱硬化させる。熱硬化性樹脂を熱硬化させる際には、織物とプリプレグを密着させるのが好ましく、織物とプリプレグを密着させるために圧力を加えなから加熱するのが好ましい。
【0015】
以上の工程により、超高分子量ポリエチレン繊維織物同士を簡単な工程で強固に接合することができる。
【0016】
以下、本発明の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法について、具体的な実施例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【実施例1】
【0017】
超高分子量ポリエチレン繊維からなる織物として、東洋紡績株式会社製ダイニーマ(登録商標)を使用した織物(品番DD1312 経糸緯糸ともに440dtx)を用いて接合試験を行った。
【0018】
プリプレグとしては、株式会社ジーエイチクラフトから入手したカーボン繊維とエポキシ樹脂からなるプリプレグ(品番CF−3K 平織り 333g/m 繊維:樹脂=200:133)を用いた。
【0019】
幅30mm、長さ500mmの織物1枚と、幅30mm、長さ70mmのプリプレグ3枚を用意した。そして、図1(a)から図1(b)に示すように、織物の両端が70mmの長さで重なるようにして、プリプレグ1−織物2−プリプレグ3−織物4−プリプレグ5と5層に重ね合わせた(重ね合わせ工程)。
【0020】
つぎに、図1(c)に示すように、超高分子量ポリエチレン繊維からなる糸を用いて、重ね合わせた部分6の全面にほぼ均一に縫い目が分布するようにして、縫い目7の間隔を3〜5mmとして縫合した(縫合工程)。
【0021】
最後に、アイロンを用いて、重ね合わせた部分6の全面を略均一に押圧しながら、プリプレグを構成する熱硬化性樹脂が熱硬化するまで加熱して(熱硬化工程)、図1(d)に示すような接合部8を有する試験片を得た。
【0022】
引き続き、この試験片を用いた引張強度試験を行った。引張強度試験においては、インストロジャパンカンパニイリミテッド製の万能材料試験機(機番5582)を用い、図2に示す方法で試験片に引張強度を加え、最大荷重を測定した。
【0023】
また、比較例として、プリプレグを用いずに織物同士を重ね合わせて縫合した試験片(比較例1)と、縫合工程を省略して作製した試験片(比較例2)とを、その他の条件は上記と同様にして作製し、上記と同様の引張強度試験を行った。
【0024】
これらの結果を表1に示す。本実施例は、比較例よりも大きい最大荷重を示した。また、本実施例の引張強度試験後の試験片の写真を図3に、比較例1、2の引張強度試験後の試験片の写真を図4(a)、(b)にそれぞれ示す。比較例1では、接合部において織物の繊維がほつれ(図4(a))、比較例2では、接合部が剥がれた(図4(b))が、本実施例では、最大荷重時においても接合部が破断することはなかった(図3)。
【0025】
以上の結果より、本発明の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法によれば、超高分子量ポリエチレン繊維織物同士を極めて強固に接合することができることが確認された。
【0026】
【表1】

【符号の説明】
【0027】
1,3,5 プリプレグ
2,4 織物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高分子量ポリエチレン繊維からなる織物と、プリプレグとを、交互に重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記織物と前記プリプレグとを縫合する縫合工程と、前記プリプレグを構成する熱硬化性樹脂を熱硬化させる熱硬化工程とを備えたことを特徴とする超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法。
【請求項2】
前記プリプレグは、炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させたものであることを特徴とする請求項1記載の超高分子量ポリエチレン繊維織物の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−946(P2013−946A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132871(P2011−132871)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(511145627)
【Fターム(参考)】