説明

路面保護材

【課題】雨天時に滑り易くならず、雨降り上がりにはサラッと乾燥して黒黴が発生し難く、芝生の観を長期維持し、足に疲れを感じさせず、歩き易い路面保護材を得る。
【解決手段】基布21に総繊度が1500〜3000dtexのパイル22を植設したタフテッドパイル布帛の裏面に樹脂エマルジョン組成物23を塗布してパイルを接着固定して路面保護材を構成する。基布は、カーボンブラックの練り込まれたプラスチック・テープヤーンを用いた織物とする。樹脂エマルジョンにはカーボンブラックを配合する。パイル糸は、緑色顔料の練り込まれたプラスチックに成り、幅が0.2〜0.6mmであり、厚みが幅の4分の1以下の扁平断面形状を成し、単繊維繊度が50〜120dtexであり、長さ方向に曲折した捲縮を有する複数条のテープヤーンによって構成する。パイル層の目付けを240〜400g/m2 とし、パイル層の厚みを4〜8mmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は路面に拡布して積層される路面保護材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緑色に彩られた路面は緑の牧場のイメージがあって心を和ませ解放感を与えると言う心理的効果が認められ、路面保護材には緑色顔料を配合した塗料が使用されることが多い。しかし、顔料の塗膜は、路面の下地を構成する砂利や小石等の鉱物質素材に比して極めて摩耗し易く、その摩耗によって砂利や小石が露顕し、砂利や小石の間の隙間に残った塗料が疲弊して汚れたかの如く見苦しい外観を呈しがちになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明者は、内部繊維間に隙間があり、その隙間の容積の全体に占める比率が30容積%以上であり、厚みが2mm以上の厚手布帛の表面に樹脂組成物の表面層を積層した路面保護材を開発した(例えば、特許文献1参照)。
しかし、ニードルパンチングフェルト等の内部空隙率の大きい厚手布帛に樹脂組成物による表面層を積層した歩行面保護マットは、内部空隙率が大きいが故にクッション性に富み、踏み心地もよいが、そのようにクッション性に富むものは、踏み込んだ時に発生する表面の窪みも大きく、布団の上を踏み歩くように窪みから窪みへと飛び越えて歩く格好になるので、歩行者に疲れを感じさせることにもなる。
路面保護材としては人工芝生も考えられるが、歩行頻度の多い路面では葉茎を成すパイル片が踏み倒され、そのままセットされパイル面が平滑になり、芝生としての体を失い易い。
人工芝生の施工法には、パイル層に土砂を充填し、パイル片の根元を補強して踏み倒され難くする方法も知られているが(例えば、特許文献2参照)、土砂の充填されたパイル層は水吐けが悪く、雨天時にはパイル片と土砂が土泥層を形成して履物を汚し、黒黴が発生して表面が滑り易く危険であり、晴天時には土砂に押し固められパイル層がコンクリートのように硬くなり、パイル片の先端が擦られて細かく割れ、擦れ減って老朽した観を呈するようになる。
【0004】
【特許文献1】特許第3028329号(特開平11−062201)
【特許文献2】特許第3204092号(特開平07−235702)
【0005】
そこで本発明は、雨天時に滑り易くなることがなく、雨降り上がりにはサラッとした乾燥状態になって黒黴が発生し難く、パイル片の先端が擦れ減って老朽した観を呈することなく、長期にわたって芝生の観を維持し、足に疲れを感じさせることなく、歩行し易い路面保護材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る路面保護材は、(1) 基布21に総繊度が1500〜3000dtexのパイル糸26を差し込んでカットパイル22を植設したタフテッドパイル布帛の裏面に樹脂エマルジョン組成物23を塗布してパイル22を基布21に接着固定して成り、(2) 基布21が、扁平断面形状を成し、カーボンブラックの練り込まれたプラスチックに成るテープヤーンを経糸31と緯糸32に用いて織成された織物であり、(3) 樹脂エマルジョン組成物23がカーボンブラックと水酸化アルミニウムを含有しており、(4) パイル糸26が、緑色顔料の練り込まれたプラスチックに成り、幅Wが0.2〜0.6mmであり、幅Wが厚みの10倍〜20倍の扁平断面形状を成し、単繊維繊度が50〜120dtexであり、長さ方向に曲折した捲縮を有する複数条のテープヤーン28によって構成されており、(5) カットパイル22の構成するパイル層29の目付けが240〜400g/m2 であり、パイル層29の厚みPが4〜8mmであり、カットパイル22を構成する複数条の各テープヤーン28の構成するパイル片20の真っ直ぐに伸長された無捲縮状態におけるパイル長Hが6〜10mmであり、(6) 各パイル片20に長さ方向に曲折した捲縮箇所が1箇所以上介在しており、(7) 基布21の表面がパイル層29によって隠蔽されていることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る路面保護材の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、(8) パイル糸26が、プラスチックフィルム24の長さ方向に所要の間隔Lで途切れ途切れに続く複数条のスリット溝25を幅方向に0.2〜0.6mmの間隔Wで設けたスプリットヤーン26に成り、(9) パイル糸26を隣り合って構成しているテープヤーン28とテープヤーン28が、長さ方向に途切れ途切れに続くスリット溝25とスリット溝25の間の途切れ部27を介して接合されており、(10) その途切れ部27が、カットパイル22を構成している何れかのパイル片20とパイル片20の間に介在している点にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の路面保護材は、その表面を覆うパイル22が、疎水性のプラスチックに成り、その形態が水切れがよく乾燥し易いカットパイル22であり、そのパイル片20が撥水し易い扁平断面形状のテープヤーン28に成り、目付けが400g/m2 以下と少ないことからしてパイル層29の保水容量も少ないので、雨降り上がりにはサラッとした乾燥状態になって黒黴や苔類が発生し難く、表面に発生した黒黴や苔類によって雨天時に滑り易くなることもない。
【0009】
本発明の路面保護材は、その表面を覆うパイル22のパイル長Hが10mm以下であり、パイル層20が低目付けなので土砂がパイル層20に入り込む余地がなく流失し、入り込んだ土砂によってパイル層20が押し固められるようなことはなく、押し固められた土砂と擦れ合ってパイル片20の先端が細かく裂けることもない。
【0010】
仮に、押し固められた土砂にパイル片20の先端が擦れ合うことがあっても、パイル片20の幅Wは元々細かい0.2〜0.6mmであるから、それ以上に細かくは裂け難く、パイル片の先端が擦れ減って、路面保護材が疲労し老朽した観を呈することはない。
【0011】
パイル層20の厚みPも8mm以下なので、その上を踏み歩いて窪むパイル層20の厚みPの変化も少なく、又、その目付けも少ない400g/m2 以下なので、パイル層厚みが10mm前後でパイル層目付けが700g/m2 以上のパイルカーペットから受ける程のクッション性は感じられず、踏み歩いて疲れを感じさせることがない。
【0012】
本発明の路面保護材は、パイル層20が低目付けでも、パイル片20が表面積の大きい扁平断面形状を成し、パイル片20が捲縮してパイル層20が嵩高に開毛し、基布21がパイル層20に被覆保護され、而も、基布21がカーボンブラックによって黒色に彩られているので、パイル面から透けて見えることがなく、基布21が擦られて損耗することもない。
【0013】
プラスチック類の内部に介在するカーボンブラックは、プラスチック類の内部に入り込んだ電磁波(太陽光)の活動を抑える電磁波抑制機能を有するので、カーボンブラックの練り込まれた基布(経糸と緯糸)21が、パイル層29の実質厚みが薄い太陽光に曝されて劣化し易くなることはなく、このことは、カーボンブラックを含有する樹脂エマルジョン23についても同様である。
そして、パイル片20も、染料によってではなく、その素材のプラスチックに練り込まれた顔料によって着色されているので、太陽光や風雨に曝されても変色・劣化し難い。
加えて、樹脂エマルジョン組成物23の含有する水酸化アルミニウムがパイル層29を耐炎化して太陽光に変色・劣化し難くし、煙草の火による着火も回避される。
【0014】
このように本発明によると、雨天時に水溜まりが出来たり滑り易くなることがなく、雨降り上がりにはサラッとした乾燥状態になって黒黴が発生し難く、パイル面に付着した土砂は降雨に洗い流されてクリーンに保たれ、パイル片20の先端が細かく裂けて老朽した観を呈することはなく、太陽光や風雨に曝されも変色・劣化し難く耐久性に富み、長期にわたって芝生の観を維持し、足に疲れを感じさせることなく、歩行し易い路面保護材が得られる。
【0015】
パイル糸26を構成する単繊維繊度が50〜120dtexの複数条のテープヤーン28に成るパイル糸26では、そのテープヤーン28が絡合し難いので、単繊維繊度が5dtex以下のフィラメントに成るカーペット等のパイル用マルチフィラメント糸のように混繊することは出来ず、加撚結束してタフティングすることになる。
しかし、本発明では、パイル糸26を、プラスチックフィルム24の長さ方向に所要の間隔Lで途切れ途切れに続く複数条のスリット溝25を幅方向に0.2〜0.6mmの間隔Wで設け、その幅方向において1条おきに隣り合うスリット溝25aとスリット溝25cの間に途切れ途切れに続くスリット溝25bの途切れた途切れ部27が介在し、隣り合うスリット溝25aとスリット溝25bの間に途切れ部27を介して接合されて隣り合うテープヤーン28を形成したスプリットヤーン26としたので、複数条のテープヤーン28に成るものであっても加撚結束することなくタフティングすることが出来る。
カットパイル22を構成しているパイル片20とパイル片20とは、その間に介在する途切れ部27によって絡合状態に維持されるので、パイル層20が低目付けでも、基布21がパイル面から透けて見えることがなく、雨天時に水溜まりが出来たり滑り易くなることがなく、雨降り上がりにはサラッとした乾燥状態になって黒黴が発生し難く、パイル面に付着した土砂は降雨に洗い流されてクリーンに保ち易い路面保護材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
パイル糸のテープヤーンには、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンの何れかを使用するとよい。中でも、パイル片の捲縮形態を弾性的に保持し、炎天下でもパイル面が湿潤した柔らかい外観を呈するようにするためには、パイル糸の素材プラスチックとしてはナイロンを使用することが望ましい。
基布(経糸・緯糸)のテープヤーンには、タフティング時に縦割れしてパイルの根元を挟持し易いポリプロピレンを使用することが望ましい。
【0017】
基布21の表面をパイル層29によって隠蔽するためには、ステッチゲージS、即ち、各パイル糸26の形成して隣り合うパイル22とパイル22の間隔S、および、ニードルゲージN、即ち、隣り合うパイル糸26とパイル糸(26)の形成して隣り合うパイル22とパイル(22)の間隔Nを、それぞれパイル層29の厚みPの2分の1乃至4分の3(P/2≦S,N≦3P/4)に、パイル層29の厚みPが6mmであれば3.3〜4.2mmに設定するとよい。
【0018】
雨天時に水溜まりが出来たり滑り易くならず、雨降り上がりにはサラッとした乾燥状態になるようにするためには、タフテッドパイル布帛の裏面に塗布した樹脂エマルジョン組成物23の塗布面に高圧気流を当て、或いは、塗布面の反対側であるパイル面から吸引して経糸31と緯糸32に囲まれた布目に微細な透水孔を開ける。
パイル糸26に扁平断面形状のテープヤーン28を使用し、その単繊維繊度を50dtexとし、パイル層29の目付けを400g/m2 以下にすることは、パイル層29が保水し難く、雨上がりにサラッとした乾燥状態にし易くする上でも有効である。
そのように低目付けのパイル層29によって基布21を充分に隠蔽するためには、パイル糸のテープヤーン28の厚みtを幅Wの10分の1乃至20分の1(0.1W≦t≦0.2W)にするとよい。
その場合、パイル層の耐摩耗性を考慮して、テープヤーン28の厚みtを20μm乃至30μm(20μm≦t≦30μm)にする。
パイル層の耐摩耗性の点でもパイル糸にはナイロンテープヤーンを使用し、又、捲縮を付与する上でも、その幅Wを200〜600μmに、好ましくは300〜400μmにする。
【0019】
パイル糸26を構成するテープヤーンの本数は20〜40本にすればよい。その場合、1個のパイル22は、40〜80本のパイル片20によって構成されることになる。
【0020】
パイル片20とパイル片20の間に介在する途切れ部27の平均個数は1個前後(0.1〜2個)でよい。そのように途切れ部27の平均個数を1個前後にするためには、途切れ途切れに続くスリット溝25の間隔Lを、無捲縮状態におけるパイル長Hの2分の1以上でパイル長H以下(0.5H≦L≦H)にするとよい。
本発明において、プラスチックフィルム24の長さ方向に途切れ途切れに続く複数条のスリット溝25の「所要の間隔L」とは、パイル片20とパイル片20の間に介在する途切れ部27の平均個数が1個前後(0.1〜2個)となる間隔を意味する。
スリット溝25の間隔Lは、等間隔にする必要はない。従って、途切れ部27は、プラスチックフィルム24の幅方向に並ばず、プラスチックフィルム24の長さ方向の斜め方向に並ぶようにすることも出来、寧ろ、そうすることによって、途切れ部27がパイル22の中にランダムに介在するようにすることが望ましい。
【0021】
樹脂エマルジョン組成物23は、それによって基布21の経糸31と緯糸32に囲まれた全ての布目隙間が埋め尽くされず、一部の布目隙間が樹脂エマルジョン組成物23に塞がれることがなく透水孔となって路面保護材に残る程度に塗布する。
【0022】
路面保護材は、その周縁を路面30に付設した枠材にU字形釘(ホッチキス)で釘打ち固定し、或いは、接着剤によって路面30に接着固定して施工される。
その施工においては、路面保護材と路面30の間に所要の下地材を積層することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る路面保護材の断面図である。
【図2】本発明に係る路面保護材に使用されるパイル糸の平面図である。
【符号の説明】
【0024】
20:パイル片
21:基布
22:パイル
23:樹脂エマルジョン
24:ブラスチックフィルム
25:スリット溝
26:パイル糸
27:途切れ部
28:テープヤーン
29:パイル層
30:路面
31:経糸
32:緯糸
P :パイル層の厚み
H :パイル長
L :スリット溝の間隔
W :テープヤーンの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 基布(21)に総繊度が1500〜3000dtexのパイル糸(26)を差し込んでカットパイル(22)を植設したタフテッドパイル布帛の裏面に樹脂エマルジョン組成物(23)を塗布してパイル(22)を基布(21)に接着固定して成り、
(b) 基布(21)が、扁平断面形状を成し、カーボンブラックの練り込まれたプラスチックに成るテープヤーンを経糸(31)と緯糸(32)に用いて織成された織物であり、
(c) 樹脂エマルジョン組成物(23)がカーボンブラックと水酸化アルミニウムを含有しており、
(d) パイル糸(26)が、緑色顔料の練り込まれたプラスチックに成り、幅(W)が0.2〜0.6mmであり、幅(W)が厚みの10倍〜20倍の扁平断面形状を成し、単繊維繊度が50〜120dtexであり、長さ方向に曲折した捲縮を有する複数条のテープヤーン(28)によって構成されており、
(e) カットパイル(22)の構成するパイル層(29)の目付けが240〜400g/m2 であり、パイル層(29)の厚み(P)が4〜8mmであり、カットパイル(22)を構成する複数条の各テープヤーン(28)の構成するパイル片(20)の真っ直ぐに伸長された無捲縮状態におけるパイル長(H)が6〜10mmであり、
(f) 各パイル片(20)に長さ方向に曲折した捲縮箇所が1箇所以上介在しており、
(g) 基布(21)の表面がパイル層(29)によって隠蔽されていることを特徴とする路面保護材。
【請求項2】
(h) パイル糸(26)が、プラスチックフィルム(24)の長さ方向に所要の間隔(L)で途切れ途切れに続く複数条のスリット溝(25)を幅方向に0.2〜0.6mmの間隔(W)で設けたスプリットヤーン(26)に成り、
(i) パイル糸(26)を隣り合って構成しているテープヤーン(28)とテープヤーン(28)が、長さ方向に途切れ途切れに続くスリット溝(25)とスリット溝(25)の間の途切れ部(27)を介して接合されており、
(j) その途切れ部(27)が、カットパイル(22)を構成している何れかのパイル片(20)とパイル片(20)の間に介在している前掲請求項1に記載の路面保護材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−95399(P2008−95399A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279109(P2006−279109)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000192095)森田産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】