説明

車両および車両用制御方法

【課題】停車中におけるエンジントルクの変動によって生じる振動を抑制する。
【解決手段】ECU200は、車両が停車中であるか否かを判定するステップ(S100)と、車両が停車中でない場合に(S100にてNO)、ガス当り補正を実行するステップ(S102)と、車両が停車中である場合に(S100にてYES)、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えるステップ(S104)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒を有するエンジンに対する燃料噴射量の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の気筒を有するエンジンに対する燃料噴射量の制御について、たとえば、特開2004−225559号公報(特許文献1)には、空燃比センサへの排気ガスのガス当りの強い気筒の空燃比に基づいて各気筒の燃料噴射量を補正することにより、空燃比のばらつきを低減して、エミッションの悪化を抑制する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−225559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空燃比センサへの排気ガスのガス当りの強い気筒の空燃比に基づいて各気筒の燃料噴射量を補正する場合には、特に、ガス当りの強い気筒と他の気筒との間で燃焼状態にばらつきが生じて、エンジントルクに変動が生じるという問題がある。特に、車両の停車中においてこのようなエンジントルクに変動が生じる場合には、車両の走行中よりも車両の振動を運転者が感知しやすくなる場合がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、停車中におけるエンジントルクの変動によって生じる振動を抑制する車両および車両用制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のある局面に係る車両は、複数の気筒を有するエンジンと、複数の気筒の各々における空燃比を検出するためにエンジンの排気通路に設けられる空燃比センサと、空燃比センサによる検出結果に基づいて複数の気筒の各々の燃料噴射量を制御するための制御装置とを含む。制御装置は、車両が停車している状態である場合に、複数の気筒のうちの空燃比センサへの排気ガスのガス当りが強い第1気筒の空燃比に基づいて燃料噴射量を制御する第1燃料噴射制御から複数の気筒間における空燃比のばらつきが抑制されるように燃料噴射量を制御する第2燃料噴射制御に切り換える。
【0007】
好ましくは、制御装置は、車両が停車中であって、かつ、シフトポジションがパーキングポジションである場合を車両が停車している状態である場合として、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換える。
【0008】
さらに好ましくは、車両は、車両の移動を制限するためのパーキングロック装置をさらに含む。制御装置は、車両が停車中であって、かつ、パーキングロック装置によって車両の移動が制限されている場合を車両が停車している状態である場合として、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換える。
【0009】
さらに好ましくは、パーキングロック装置は、車両の駆動輪に連結される軸に設けられ、回転方向に沿って歯部を有するパーキングロックギヤと、シフトポジションがパーキングポジションである場合に、歯部に突起部を合致させることによって、パーキングロックギヤの回転を制限するためのパーキングロックポールとを含む。
【0010】
さらに好ましくは、制御装置は、第1燃料噴射制御を実行する場合において、第1気筒の燃料噴射量が、第1燃料噴射制御を実行しない場合と比べて減少するように、第1気筒の燃料噴射量を補正する。
【0011】
さらに好ましくは、第2燃料噴射制御は、複数の気筒の各々に分配される空気の流量差に応じて複数の気筒の各々の燃料噴射量を補正する制御を含む。
【0012】
さらに好ましくは、第1気筒は、分配される空気の流量が他の気筒よりも大きい気筒である。制御装置は、第2燃料噴射制御を実行する場合において、第1気筒の燃料噴射量が複数の気筒のうちの他の気筒の燃料噴射量よりも増量するように燃料噴射量を補正する。
【0013】
さらに好ましくは、第2燃料噴射制御は、第1燃料噴射制御の実行を禁止する。
この発明の他の局面に係る車両用制御方法は、複数の気筒を有するエンジンと、複数の気筒の各々における空燃比を検出するためにエンジンの排気通路に設けられる空燃比センサとを搭載した車両に用いられる車両用制御方法である。この車両用制御方法は、複数の気筒のうちの空燃比センサへの排気ガスのガス当りが強い気筒の空燃比に基づいて複数の気筒の各々の燃料噴射量を制御する第1燃料噴射制御を実行するステップと、車両が停車している状態である場合に、第1燃料噴射制御から複数の気筒間における空燃比のばらつきが抑制されるように燃料噴射量を制御する第2燃料噴射制御に切り換えるステップとを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、車両が停車している状態である場合に、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換えられることによって、複数の気筒間における燃焼状態のばらつきが抑制される。そのため、エンジントルクの変動により生じる振動を抑制することができる。したがって、停車中におけるエンジントルクの変動によって生じる振動を抑制する車両および車両用制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る車両の全体ブロック図である。
【図2】第1の実施の形態におけるエンジンの構成図である。
【図3】第1の実施の形態におけるシフト切換装置およびパーキングロック装置の構成図である。
【図4】複数の気筒の各々に分配される空気の流量差に基づく空燃比の差を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係る車両に搭載されたECUの機能ブロック図である。
【図6】第1の実施の形態に係る車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係る車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図8】停車中における第2MGの回転速度の変化を示すタイミングチャートである。
【図9】第3の実施の形態に係る車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図10】共振特性の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
【0017】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係るハイブリッド車両1(以下、単に車両1と記載する)の全体ブロック図が説明される。車両1は、トランスミッション8と、エンジン10と、トーショナルダンパ18と、PCU(Power Control Unit)60と、バッテリ70と、駆動輪72と、Pスイッチ162と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
【0018】
トランスミッション8は、駆動軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、パーキングロック装置32と、動力分割装置40と、減速機58とを含む。
【0019】
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪72へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
【0020】
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
【0021】
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、バッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
【0022】
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪72に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
【0023】
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。
【0024】
エンジン10のクランク軸に対向した位置には、クランクポジションセンサ11が設けられる。クランクポジションセンサ11は、エンジン10のクランク軸の回転角および角速度を検出する。クランクポジションセンサ11は、検出された回転角および角速度を示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した角速度に基づいてエンジン10の回転速度Neを算出する。
【0025】
図2に示すように、本実施の形態においては、エンジン10は、1番気筒から4番気筒までの4つの気筒112を含む。複数の気筒112内の頂部の各々には、点火プラグ110が設けられる。なお、エンジン10としては、図1および図2に示すような直列の4気筒のエンジンに限定されるものではなく、たとえば、V型の6気筒、V型の8気筒あるいは直列の6気筒などの形式のエンジンであってもよい。
【0026】
エンジン10の吸気側には、吸気マニホールド80が連結されている。吸気マニホールド80の上流側には、吸気管82の一方端が連結されている。吸気管82には、エアフローメータ84と、スロットルバルブ86と、スロットルモータ88と、エアクリーナ90とが設けられる。
【0027】
エアフローメータ84は、エンジン10の吸入空気量Qairを検出する。本実施の形態において、エアフローメータ84は、エンジン10の吸入空気量Qairに比例した出力電圧を発生し、発せした出力電圧をECU200に入力する。エアフローメータ84には、吸気温を検出するセンサが内蔵されていてもよい。
【0028】
スロットルバルブ86は、吸入空気量Qairを調整する。スロットルモータ88は、ECU200からの制御信号に基づいてスロットルバルブ86を駆動する。エアクリーナ90は、吸気管82の他方端に連結される。
【0029】
吸気マニホールド80は、下流側が分岐しており、複数の気筒112の各々にそれぞれ接続されている。吸気マニホールド80の分岐点から複数の気筒112の各々までの間には、複数の気筒112の各々に対応した燃料噴射装置120が設けられる。なお、燃料噴射装置120は、複数の気筒112の各々の気筒内に設けられてもよい。
【0030】
エンジン10の排気側には、排気マニホールド92が連結されている。排気マニホールド92の上流側は、分岐しており気筒112の各々の排気ポートにそれぞれ接続されている。排気マニホールド92の下流側の合流部分には、排気管94が接続される。排気管94には、空燃比センサ420が設けられる。排気管94の空燃比センサ420よりも下流側には、排気ガスを浄化するための三元触媒コンバータ96が設けられる。
【0031】
空燃比センサ420は、複数の気筒112の各々に供給される燃料と空気との混合気の空燃比を検出するためのセンサである。本実施の形態において、空燃比センサ420は、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生し、発生した出力電圧をECU200に入力する。ECU200は、クランクポジションセンサ11により検出されるエンジン10のクランク軸の回転角と、空燃比センサ420による出力結果とに基づいて所定の順序で燃焼する気筒112の各々における混合気の空燃比を検出する。
【0032】
本実施の形態において、空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかを検出するOセンサを用いてもよい。
【0033】
さらに、エンジン10には、水温センサ380が設けられる。水温センサ380は、エンジン10の内部を流通する冷却水の温度Tw(以下、冷却水温Twと記載する)を検出する。水温センサ380は、冷却水温を示す信号をECU200に送信する。
【0034】
このような構成を有するエンジン10において、ECU200は、複数の気筒112の各々に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、複数の気筒112への燃料の噴射を停止したりすることによって、複数の気筒112の各々の燃料噴射量を制御する。
【0035】
ECU200は、たとえば、同期噴射時において、基本噴射時間に補正噴射時間と無効噴射時間とを加算した時間を噴射時間として決定する。
【0036】
ECU200は、決定された噴射時間が経過するまでの間、燃料噴射装置120から複数の気筒112に燃料を噴射させることによって、複数の気筒の各々の燃料噴射量を制御する。
【0037】
ECU200は、吸入空気量Qairとエンジン10の回転速度Neとに基づいて基本噴射時間を決定する。ECU200は、たとえば、吸入空気量Qairと、エンジン10の回転速度Neと、所定のマップとにより基本噴射時間を決定する。所定のマップは、吸入空気量Qairとエンジン10の回転速度Neとを引数として基本噴射時間を決定するためのマップである。
【0038】
ECU200は、エンジン10の状態に応じて補正噴射時間を決定する。ECU200は、たとえば、吸入空気の温度と、冷却水温Twと、エンジン10の始動中であるか否かと、車両の加減速時等の過渡時であるか否かと、壁面付着の可能性があるか否かと、高負荷運転であるか否かと、現在の空燃比と目標空燃比(たとえば、理論空燃比)との差(空燃比のフィードバック補正)とに基づいて補正噴射時間を決定する。なお、補正噴射時間の決定方法としては、上述のパラメータに限定されるものではない。また、無効噴射時間は、燃料噴射装置120の作動遅れを考慮した補正量である。
【0039】
図1に戻って、トーショナルダンパ18は、エンジン10のクランク軸と、トランスミッション8の入力軸との間に設けられる。トーショナルダンパ18は、エンジン10のクランク軸とトランスミッション8の入力軸との間での動力を伝達する際のトルク変動を吸収する。
【0040】
動力分割装置40は、駆動輪72に連結される駆動軸16、エンジン10の出力軸および第1MG20の回転軸の三要素の各々を機械的に連結する動力伝達装置である。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸は、駆動軸16に連結される。
【0041】
動力分割装置40は、サンギヤ50と、ピニオンギヤ52と、キャリア54と、リングギヤ56とを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤ52は、サンギヤ50およびリングギヤ56の各々と噛み合う。キャリア54は、ピニオンギヤ52を自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸に連結される。サンギヤ50は、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤ56は、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
【0042】
減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪72に伝達する。また、減速機58は、駆動輪72が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
【0043】
PCU60は、バッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御されるコンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含む。コンバータは、バッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータに出力する。インバータは、コンバータが出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、バッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータは、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換してコンバータに出力する。コンバータは、インバータが出力した直流電力の電圧を降圧してバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてバッテリ70が充電される。なお、コンバータは、省略してもよい。
【0044】
バッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。バッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。バッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源(図示せず)から供給される電力を用いて充電されてもよい。なお、バッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。なお、車両1には、外部電源を用いてバッテリ70の充電を可能とする充電装置が搭載されていてもよい。
【0045】
第1レゾルバ12は、第1MG20に設けられる。第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。
【0046】
第2レゾルバ13は、第2MG30に設けられる。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
【0047】
車輪速センサ14は、駆動輪72の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車両1の速度Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車両1の速度Vを算出するようにしてもよい。
【0048】
Pスイッチ162は、複数のシフトポジションのうちのパーキングポジション(以下、Pポジションと記載する)を選択するためのスイッチである。Pスイッチ162は、運転者によって操作された場合に、P信号をECU200に送信する。Pスイッチ162は、プッシュスイッチであってもよい、レバースイッチであってもよいし、ロータリスイッチであってもよい。
【0049】
なお、複数のシフトポジションは、Pポジションの他に、ニュートラルポジションと、前進走行ポジションと、後進走行ポジションとを含む。Pポジション以外のシフトポジション(以下、非Pポジションと記載する)については、図示しないシフトレバーによって選択される。なお、Pポジションについても、Pスイッチ162に代えてシフトレバーによって選択できるようにしてもよい。
【0050】
ECU200は、Pスイッチ162からP信号を受信した場合であって、かつ、シフトポジションが非Pポジションである場合には、シフトポジションを非PポジションからPポジションに切り換える。シフトポジションがPポジションに切り換えられるときに、車両1は、パーキングロック装置32により移動が制限される。
【0051】
図3に、パーキングロック装置32の構成を示す。本実施の形態において、パーキングロック装置32は、シフト切換装置48によるシフトポジションの切り換え動作によって作動する。
【0052】
シフト切換装置48は、アクチュエータ164と、ディテントプレート150と、シャフト152と、ロッド154と、ディテントスプリング160と、ころ162とを含む。
【0053】
シャフト152は、アクチュエータ164により回転される。ディテントプレート150は、シャフト152に固定され、シャフト152の回転に伴って回転する。ロッド154は、ディテントプレート150の回転に伴って動作する。ディテントスプリング160およびころ162は、ディテントプレート150の回転を制限してシフトポジションを固定する。
【0054】
図3は、シフトポジションが非Pポジションであるときの状態を示している。この状態からアクチュエータ164によりシャフト152を時計回り方向に回転させると、ディテントプレート150の回転に伴ってディテントプレート150の頂部に設けられた2つの谷のうちの一方、すなわち非Pポジション位置166にあったディテントスプリング160のころ162は、山168を乗り越えて他方の谷、すなわちPポジション位置170へ移る。ころ162は、その軸方向に回転可能にディテントスプリング160に設けられている。ころ162がPポジション位置170に来るまでディテントプレート150が回転したとき、シフトポジションがPポジションに切り換わる。
【0055】
パーキングロック装置32は、パーキングロックポール156と、パーキングロックギヤ158とを含む。パーキングロックギヤ158は、円板形状を有し、駆動軸16を回転軸とする。パーキングロックギヤ158には、駆動軸16の回転方向に沿って複数の歯部159が設けられる。なお、パーキングロックギヤ158は、駆動輪72と動力分割装置40との間であって、車両1の移動が制限されれば、特に、駆動軸16に設けられることに限定されるものではない。
【0056】
パーキングロックポール156は、一方端を回転自在にトランスミッション8の筐体に支持される。そして、パーキングロックポール156の中央部には、パーキングロックギヤ158の歯部159に合致する突起部157が設けられる。
【0057】
パーキングロックポール156の他方端には、パーキングロックポール156に当接するようにパーキングロックカム155が設けられる。パーキングロックカム155は、たとえば、円錐形状を有している。パーキングロックカム155は、一方端がディテントプレート150に連結されたロッド154の他方端に設けられる。ディテントプレート150の回転によりロッド154は、図3の矢印Aの方向に移動することとなる。
【0058】
すなわち、図3に示される非Pポジションの状態からアクチュエータ164の駆動によりディテントプレート150が時計回り方向に回転すると、ディテントプレート150を介してロッド154が図3の矢印Aの方向に移動される。そのため、ロッド154の先端に設けられた円錐形状のパーキングロックカム155の移動によりパーキングロックポール156の他方端が図3の矢印Bの方向に移動される。ディテントプレート150がPポジションに対応する位置まで回転させられると、パーキングロックポール156は、突起部157が歯部159間に嵌合する位置まで押し上げられる。このようにシフトポジションがPポジションに切り換えられる場合には、上述したようにパーキングロック装置32が作動することによって、車両1の移動が機械的に制限される。
【0059】
一方、シフトポジションが非Pポジションに切り換えられる場合には、Pポジションの状態からアクチュエータ164の駆動によりディテントプレート150が反時計回り方向に回転する。これにより、ディテントプレート150を介してロッド154が図3の矢印Aと逆方向に移動される。そのため、ロッド154の先端に設けられたパーキングロックカム155の移動によりパーキングロックポール156の他方端が図3の矢印Bの逆方向に移動される。ディテントプレート150が非Pポジションに対応する位置(図3に示されるディテントプレート150の位置)まで回転させられると、パーキングロックポール156は、突起部157が歯部159から離隔した位置まで移動される。このようにシフトポジションが非Pポジションに切り換えられる場合には、上述したようにパーキングロック装置32が作動することによって、車両1の機械的な移動の制限が解除される。
【0060】
ECU200は、たとえば、Pスイッチ162からP信号を受信した場合あるいはディテントプレート150がPポジションに対応する位置まで回転させられた場合に、Pポジションが選択されたことを示すP判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0061】
また、ECU200は、シフトレバーの操作によって非Pポジションが選択された場合あるいはディテントプレート150が非Pポジションに対応する位置まで回転させられた場合に、P判定フラグをオフ状態にしてもよい。
【0062】
図1に戻って、ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。
【0063】
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、バッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
【0064】
ECU200は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示せず)のストローク量に対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
【0065】
ECU200は、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、第2MG30のみにより走行するように車両1を制御する。また、ECU200は、通常走行時に、車両1の状態に応じて、エンジン10を始動させる。この場合、動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路に分けられる。一方の動力で駆動輪72が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪72の駆動補助が行なわれる。
【0066】
上述したような構成を有する車両1において、排気マニホールド92の形状等に起因して、複数の気筒112間で空燃比センサ420への排気ガスのガス当りに違いが生じる。複数の気筒112のうちの空燃比センサ420へのガス当りが他の気筒よりも強い気筒においては、空燃比センサ420による検出結果に基づく空燃比が、実際よりもリッチ側の空燃比となり、空燃比の制御精度が悪化する場合がある。本実施の形態においては、たとえば、1番気筒がガス当りが他の気筒よりも強い気筒であるものとする。
【0067】
そのため、ECU200は、たとえば、排気ガスの浄化(NOxの低減)を目的として空燃比をリッチ側の空燃比に制御する場合には、空燃比センサ420への排気ガスのガス当りが他の気筒よりも強い1番気筒の燃料噴射量を通常値よりも減少させるように補正する気筒別燃料噴射補正(以下の説明において、このような補正をガス当り補正という)を実行する。燃料噴射量の補正の方法としては、たとえば、燃料噴射量の通常値に1よりも小さい所定係数を乗算することによって燃料噴射量を補正してもよいし、燃料噴射量の通常値からエンジン10の状態に応じた値を減算することによって燃料噴射量を補正してもよく、特に限定されるものではない。
【0068】
また、通常値は、上述のガス当り補正を行なわない場合の燃料噴射量であって、上述したように基本噴射時間と補正噴射時間と無効噴射時間とにより決定される噴射時間に対応する燃料噴射量をいうものとする。
【0069】
ガス当り補正を行なうことによって、ガス当りが強い気筒からのリーンガスを空燃比センサ420に当てることができる。そのため、空燃比の検出結果に基づく燃料噴射量のフィードバック補正を実行することによって複数の気筒112の全体の空燃比をリッチ側の空燃比に制御することができる。これにより、排気ガスの浄化が図られる。
【0070】
ガス当り補正の実行時におけるガス当りの強い1番気筒の燃料噴射量の補正量(減少量)としては、少なくとも複数の気筒112の全体の空燃比を排気ガスの浄化が可能なリッチ側の空燃比に制御できる量であればよく、特に限定されない。
【0071】
なお、空燃比センサ420に対する排気ガスのガス当りが強い気筒は、実験等によって特定される。たとえば、エンジン10を理論空燃比で定常運転させている場合において、燃料噴射量を所定量だけ増量した場合のフィードバック補正量によって排気ガスのガス当りが強い気筒が特定される。これは、排気ガスのガス当りが強い気筒においては、空燃比センサにより検出される空燃比が実際よりもリッチ側に検出されるため、他の気筒よりもリーン側の補正量が大きくなるためである。
【0072】
一方、吸気マニホールド80の形状に起因して吸気マニホールド80から複数の気筒112に分配される空気の流量に差が生じる場合がある。たとえば、排気ガスのガス当りが強い1番気筒に分配される空気の流量が他の気筒よりも大きくなる場合には、図4に示すように、排気ガスのガス当りが強い気筒の空燃比が他の気筒の空燃比よりもリーン側にずれる場合がある。
【0073】
なお、図4の縦軸は、分配される空気の流量が均一であると仮定した場合の空燃比との差を示す。図4の縦軸において正方向は、分配される空気の流量が均一である場合の空燃比よりもリーン側にずれる方向であるものとする。
【0074】
そのため、排気ガスのガス当りが強く、かつ、分配される空気の流量が他の気筒よりも大きい1番気筒に対してガス当り補正を行なう場合には、1番気筒の燃焼が他の気筒よりも弱くなり、複数の気筒112間で燃焼状態にばらつきが生じる。その結果、エンジントルクの変動が生じる場合がある。
【0075】
特に、車両1の停車中においてこのようなエンジントルクの変動が生じる場合には、車両1の走行中にエンジントルクの変動が生じる場合よりも車両1の振動を運転者が感知しやすくなる場合がある。
【0076】
そこで、本実施の形態に係る車両1においては、ECU200が、車両1が停車している状態である場合に、複数の気筒112のうちの空燃比センサ420への排気ガスのガス当りが強い気筒の空燃比に基づいて燃料噴射量を制御する第1燃料噴射制御から複数の気筒112間における空燃比のばらつきが抑制されるように燃料噴射量を制御する第2燃料噴射制御に切り換える点に特徴を有する。
【0077】
本実施の形態において、第1燃料噴射制御は、上述したガス当り補正である。ECU200は、第1燃料噴射制御を実行する場合において、排気ガスのガス当りが強い1番気筒の燃料噴射量が、第1燃料噴射制御を実行しない場合と比べて減少するように、1番気筒の燃料噴射量を補正する。
【0078】
本実施の形態において、第2燃料噴射制御は、上述した各気筒に分配される空気の流量差に起因した空燃比のばらつきを抑制するように燃料噴射量を補正する気筒別燃料噴射量補正(以下、ばらつき抑制補正と記載する)である。ECU200は、ばらつき抑制補正の実行時において、燃料噴射量の通常値に各気筒のずれ量を是正するための気筒別の係数を乗算することによって燃料噴射量を補正する。係数は、所定値であってもよいし、吸入空気量Qairあるいはエンジン10の回転速度Neに応じて決定される値であってもよい。
【0079】
本実施の形態においては、1番気筒に分配される空気の流量は、他の気筒よりも大きいため、他の気筒よりも燃料噴射量が増量するように補正される。なお、第2燃料噴射制御は、ガス当り補正を禁止するものであってもよい。ガス当り補正を禁止することにより、1番気筒に対する燃料噴射量の減少が抑制されるため、各気筒間の空燃比のばらつきが抑制されることとなる。なお、バラツキ抑制補正とガス当り補正とは並行して行なわれないものとする。
【0080】
図5に、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、停車判定部202と、第1制御部204と、第2制御部206とを含む。
【0081】
停車判定部202は、車両1が停車している状態であるか否かを判定する。本実施の形態において、停車判定部202は、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも低い停車中である場合に、車両1が停車している状態であると判定する。しきい値V(0)は、所定値(たとえば、3km/h)であってもよいし、エンジン10の状態に基づいて決定されてもよい。停車判定部202は、たとえば、エンジン10の回転速度Neあるいは吸入空気量Qair等と所定のマップとを用いてしきい値V(0)を決定してもよい。
【0082】
なお、停車判定部202は、たとえば、車両1が停車している状態であると判定した場合に、停車判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0083】
第1制御部204は、停車判定部202によって車両1が停車している状態でないと判定された場合に、第1燃料噴射制御を実行する。より具体的には、第1制御部204は、停車判定部202によって車両1が停車している状態でないと判定される前にばらつき抑制補正を実行している場合には、停車判定部202によって車両1が停車している状態でないと判定されたときに、気筒別燃料噴射補正をばらつき抑制補正からガス当り補正に切り換える。ばらつき抑制補正およびガス当り補正については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返されない。
【0084】
なお、第1制御部204は、たとえば、停車判定フラグがオフ状態である場合に、第1燃料噴射制御を実行してもよい。
【0085】
第2制御部206は、停車判定部202によって車両1が停車している状態であると判定された場合に、第2燃料噴射制御を実行する。より具体的には、第2制御部206は、停車判定部202によって車両1が停車している状態であると判定される前にガス当り補正を実行している場合には、停車判定部202によって車両1が停車している状態であると判定されたときに、気筒別燃料噴射補正をガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換える。
【0086】
なお、第2制御部206は、たとえば、停車判定フラグがオン状態である場合に、第2燃料噴射制御を実行してもよい。
【0087】
本実施の形態において、停車判定部202と、第1制御部204と、第2制御部206とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0088】
図6を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0089】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、車両1が停車中であるか否かを判定する。車両1が停車中であると判定された場合(S100にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS102に移される。
【0090】
S102にて、ECU200は、第1燃料噴射制御を実行する。S104にて、ECU200は、第2燃料噴射制御を実行する。
【0091】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について説明する。
【0092】
たとえば、車両1が走行している場合を想定する。この場合、車両1が停止中でないため(S100にてNO)、第1燃料噴射制御が実行される(S102)。すなわち、ガス当り補正が実行される。1番気筒の燃料噴射量が減少されることによって空燃比センサ420にリーンガスが当てられる。そのため、空燃比の検出結果に基づく燃料噴射量のフィードバック制御を実行することによって複数の気筒112の全体の空燃比をリッチ側の空燃比に制御することができる。これにより、排気ガスの浄化が図られる。
【0093】
一方、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも小さいことにより、車両1が停車中であると判定された場合には(S100にてYES)、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換えられる(S104)。すなわち、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えられる。複数の気筒112の各々に分配される空気の流量差に起因した空燃比のばらつきを抑制するように燃料噴射量が補正される。その結果、複数の気筒112間において燃焼状態のばらつきが抑制されるため、エンジントルクの変動の発生が抑制される。
【0094】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両1によると、車両1が停車している状態である場合に、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えられることによって、複数の気筒112間における空燃比のばらつきが抑制される。その結果、複数の気筒112間において燃焼状態のばらつきが抑制されるため、エンジントルクの変動の発生が抑制される。したがって、停車中におけるエンジントルクの変動によって生じる振動を抑制する車両および車両用制御方法を提供することができる。
【0095】
さらに、車両1の走行中においては、ガス当り補正の実行により排気ガスの浄化を図りつつ、停車中において、ばらつき抑制補正の実行によりエンジントルクの変動に起因した振動の発生を抑制することができる。
【0096】
なお、車両1にEGR(Exhaust Gas Recirculation)が搭載される場合には、ガス当り補正による補正量およびばらつき抑制補正による補正量の各々は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)の作動の有無に応じて変更されてもよい。
【0097】
本実施の形態において、空燃比センサ420は、1つであるとして説明したが、たとえば、排気管94に2つ以上設けられてもよい。
【0098】
また、本実施の形態における車両1は、図1に示される構成のハイブリッド車両であるとして説明したが、少なくとも駆動輪72とエンジン10との間が機械的に連結された構成を有する車両であれば、特に、図1に示される構成を有するハイブリッド車両に限定されるものではない。
【0099】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態に係る車両について説明される。本実施の形態に係る車両1は、上述の第1の実施の形態に係る車両1の構成と比較して、ECU200の動作が異なる。それ以外の構成については、上述の第1の実施の形態に係る車両1の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付されている。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返されない。
【0100】
本実施の形態においては、ECU200が、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも低い停車中であって、かつ、シフトポジションがPポジションである場合を、車両1が停車している状態である場合として、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換える点を特徴とする。
【0101】
本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図は、上述の第1の実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図と比較して、停車判定部202の動作が異なる。それ以外の構成については、上述の第1の実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図と同じである。そのため、その詳細な説明は繰り返されない。
【0102】
本実施の形態において、停車判定部202は、車両1が停車している状態であるか否かを判定する。停車判定部202は、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも低い停車中であって、かつ、シフトポジションがPポジションである場合に、車両1が停車している状態であると判定する。なお、しきい値V(0)は、上述の第1の実施の形態において説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返されない。
【0103】
停車判定部202は、Pスイッチ162が操作されてからシフトレバーの操作により非Pポジションが選択されるまでは、シフトポジションがPポジションであると判定する。あるいは、停車判定部202は、たとえば、上述のP判定フラグがオン状態である場合に、シフトポジションがPポジションであると判定してもよい。また、シフトレバーを特定の位置に移動させることによってPポジションが選択できる場合には、停車判定部202は、シフトレバーの位置に基づいてシフトポジションがPポジションであるか否かを判定してもよい。
【0104】
なお、停車判定部202は、たとえば、車両1が停車中であって、かつ、シフトポジションがPポジションである場合には、停車判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0105】
図7を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0106】
なお、図7に示したフローチャートの中で、前述の図6に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返されない。
【0107】
S200にて、ECU200は、車両1が停車中であって、かつ、シフトポジションがPポジションであるか否かを判定する。車両1が停車中であって、かつ、シフトポジションがPポジションであると判定された場合(S200にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S200にてNO)、処理はS102に移される。
【0108】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について説明する。
【0109】
たとえば、車両1が走行している場合を想定する。この場合、車両1が停止中でないため(S200にてNO)、第1燃料噴射制御が実行される(S102)。すなわち、ガス当り補正が実行される。1番気筒の燃料噴射量が減少されることによって空燃比センサ420にリーンガスが当てられる。そのため、空燃比の検出結果に基づく燃料噴射量のフィードバック制御を実行することによって複数の気筒112の全体の空燃比をリッチ側の空燃比に制御することができる。これにより、排気ガスの浄化が図られる。
【0110】
また、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも小さいことにより、車両1が停車中であると判定された場合であっても、シフトポジションがPポジションでない場合には(S200にてNO)、やはり、ガス当り補正が継続して実行される(S102)。
【0111】
一方、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも小さく、かつ、シフトポジションがPポジションである場合には(S200にてYES)、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換えられる(S104)。すなわち、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えられる。複数の気筒112の各々に分配される空気の流量差に起因した空燃比のばらつきを抑制するように燃料噴射量が補正される。その結果、複数の気筒112間において燃焼状態のばらつきが抑制されるため、エンジントルクの変動の発生が抑制される。
【0112】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両1によると、車両1が停車中であって、かつ、シフトポジションがPポジションであるという、より長時間停車する可能性が高い場合に、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えられる。これにより、車両1が停車している場合でもPポジションに切り換えられるまでは、ガス当り補正を実行して排気ガスの浄化を図ることができる。また、シフトポジションがPポジションであるという長時間停車する可能性が高い場合に、ばらつき抑制補正に切り換えることによって、エンジントルクの変動の発生が抑制される。したがって、停車中におけるエンジントルクの変動によって生じる振動を抑制する車両および車両用制御方法を提供することができる。
【0113】
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態に係る車両について説明される。本実施の形態に係る車両は、上述の第1の実施の形態に係る車両1の構成と比較して、ECU200の動作が異なる。それ以外の構成については、上述の第1の実施の形態に係る車両1の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付されている。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返されない。
【0114】
本実施の形態においては、ECU200が、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも低い停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合している場合を、車両1が停車している状態である場合として、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換える点を特徴とする。
【0115】
本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図は、上述の第1の実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図と比較して、停車判定部202の動作が異なる。それ以外の構成については、上述の第1の実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図と同じである。そのため、その詳細な説明は繰り返されない。
【0116】
本実施の形態において、停車判定部202は、車両1が停車している状態であるか否かを判定する。停車判定部202は、停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合している場合に、車両1が停車している状態であると判定する。
【0117】
具体的には、停車判定部202は、第2MG30の回転速度Nm2を積算する。停車判定部202は、現在よりも予め定められた時間よりも前の積算値と、現在の積算値との差より予め定められた期間の積算値Nm2_eを算出する。停車判定部202は、算出された積算値Nm2_eがしきい値Nm2_e(0)以下である場合には、車両1が停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していると判定する。
【0118】
たとえば、車両1が停車中であっても、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していない場合には、図8の実線に示すように、第2MG30の回転速度Nm2が前後方向に変動する。そのため、停車判定部202は、予め定められた期間における積算値Nm2_eが、しきい値Nm2_e(0)よりも大きくなる場合には、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していないと判定する。
【0119】
一方、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合している場合には、図8の破線に示すように、第2MG30の回転速度Nm2は、実質的にゼロの状態が継続することとなる。そのため、停車判定部202は、予め定められた期間における積算値Nm2_eがしきい値Nm2_e(0)以下となる場合には、車両1が停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していると判定する。
【0120】
停車判定部202は、たとえば、車両1の速度Vがしきい値V(0)よりも低い場合に、車両1が停車中であると判定してもよい。なお、しきい値V(0)は、上述の第1の実施の形態において説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返されない。
【0121】
さらに、停車判定部202は、パーキングロックポール156の位置をセンサ等を用いて検出し、検出されたパーキングロックポール156の位置が突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合する位置である場合に、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していると判定してもよい。
【0122】
なお、停車判定部202は、車両1が停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していると判定された場合に、停車判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0123】
図9を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0124】
なお、図9に示したフローチャートの中で、前述の図6に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返されない。
【0125】
S300にて、ECU200は、車両1が停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合しているか否かを判定する。車両1が停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していると判定された場合(S300にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S300にてNO)、処理はS102に移される。
【0126】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について説明する。
【0127】
たとえば、車両1が走行している場合を想定する。この場合、予め定められた期間における積算値Nm2_eが、Nm2_e(0)以上となり、車両1が停車中でないと判定されるため(S300にてNO)、第1燃料噴射制御が実行される(S102)。すなわち、ガス当り補正が実行される。1番気筒の燃料噴射量が減少されることによって空燃比センサ420にリーンガスが当てられる。そのため、空燃比の検出結果に基づく燃料噴射量のフィードバック制御を実行することによって複数の気筒112の全体の空燃比をリッチ側の空燃比に制御することができる。これにより、排気ガスの浄化が図られる。
【0128】
また、車両1が停車中であっても、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していない場合には、予め定められた期間における積算値Nm2_eが、Nm2_e(0)以上となる。そのため、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していないと判定されるため(S300にてNO)、やはり、ガス当り補正が継続して実行される(S102)。
【0129】
一方、車両1が停車中であって、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合している場合には、予め定められた期間における積算値Nm2_eは、Nm2_e(0)よりも小さくなる。そのため、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合していると判定されるため(S300にてYES)、第1燃料噴射制御から第2燃料噴射制御に切り換えられる(S104)。すなわち、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えられる。複数の気筒112の各々に分配される空気の流量差に起因した空燃比のばらつきを抑制するように燃料噴射量が補正される。その結果、複数の気筒112間において燃焼状態のばらつきが抑制されるため、エンジントルクの変動の発生が抑制される。
【0130】
さらに、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合している場合には、第2MG30の出力軸の回転が固定される。そのため、突起部157が歯部159間に嵌合する前後で、車両1の共振特性や共振周波数が変化する場合がある。
【0131】
たとえば、図10に示すように、エンジン10と第1MG20との間に設けられるトーショナルダンパ18における捩じり角が、第2MG30の出力軸の回転が固定されることによって大きくなる場合がある。このような場合に、ガス当り補正が行なわれると、ガス当り補正により生じるエンジントルクの変動と、トーショナルダンパ18の捩じり角の増加に対する反力によって生じるトルク変動とにより共振特性や共振周波数が変化して、車両1に振動が発生する場合がある。そのため、突起部157が歯部159間に嵌合している場合に、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えられることにより、エンジントルクの変動を抑制して、共振による振動の発生を効果的に抑制できる。
【0132】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両1によると、車両1が停車中であって、かつ、パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合しているという、より長時間停車する可能性が高い場合に、ガス当り補正からばらつき抑制補正に切り換えられる。これにより、車両1が停車している場合でも突起部157が歯部159間に嵌合するまでは、ガス当り補正を実行して排気ガスの浄化を図ることができる。パーキングロックポール156の突起部157がパーキングロックギヤ158の歯部159間に嵌合している場合には、ばらつき抑制補正に切り換えることによって、エンジントルクの変動の発生が抑制して、共振による振動の発生を効果的に抑制できる。したがって、停車中におけるエンジントルクの変動によって生じる振動を抑制する車両および車両用制御方法を提供することができる。
【0133】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0134】
1 ハイブリッド車両、8 トランスミッション、10 エンジン、11 クランクポジションセンサ、12,13 レゾルバ、14 車輪速センサ、16 駆動軸、18 トーショナルダンパ、20,30 MG、32 パーキングロック装置、40 動力分割装置、48 シフト切換装置、50 サンギヤ、52 ピニオンギヤ、54 キャリア、56 リングギヤ、58 減速機、60 PCU、70 バッテリ、72 駆動輪、80 吸気マニホールド、82 吸気管、84 エアフローメータ、86 スロットルバルブ、88 スロットルモータ、90 エアクリーナ、92 排気マニホールド、94 排気管、96 三元触媒コンバータ、110 点火プラグ、112 気筒、120 燃料噴射装置、150 ディテントプレート、152 シャフト、154 ロッド、155 パーキングロックカム、156 パーキングロックポール、157 突起部、158 パーキングロックギヤ、159 歯部、160 ディテントスプリング、162 Pスイッチ、164 アクチュエータ、166 非Pポジション位置、170 Pポジション位置、168 山、200 ECU、202 停車判定部、204 第1制御部、206 第2制御部、380 水温センサ、420 空燃比センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有するエンジンと、
前記複数の気筒の各々における空燃比を検出するために前記エンジンの排気通路に設けられる空燃比センサと、
前記空燃比センサによる検出結果に基づいて前記複数の気筒の各々の燃料噴射量を制御するための制御装置とを含み、
前記制御装置は、車両が停車している状態である場合に、前記複数の気筒のうちの前記空燃比センサへの排気ガスのガス当りが強い第1気筒の空燃比に基づいて前記燃料噴射量を制御する第1燃料噴射制御から前記複数の気筒間における空燃比のばらつきが抑制されるように前記燃料噴射量を制御する第2燃料噴射制御に切り換える、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記車両が停車中であって、かつ、シフトポジションがパーキングポジションである場合を前記車両が停車している状態である場合として、前記第1燃料噴射制御から前記第2燃料噴射制御に切り換える、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両は、前記車両の移動を制限するためのパーキングロック装置をさらに含み、
前記制御装置は、前記車両が停車中であって、かつ、前記パーキングロック装置によって前記車両の移動が制限されている場合を前記車両が停車している状態である場合として、前記第1燃料噴射制御から前記第2燃料噴射制御に切り換える、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記パーキングロック装置は、
前記車両の駆動輪に連結される軸に設けられ、回転方向に沿って歯部を有するパーキングロックギヤと、
前記シフトポジションが前記パーキングポジションである場合に、前記歯部に突起部を合致させることによって、前記パーキングロックギヤの回転を制限するためのパーキングロックポールとを含む、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1燃料噴射制御を実行する場合において、前記第1気筒の前記燃料噴射量が、前記第1燃料噴射制御を実行しない場合と比べて減少するように、前記第1気筒の前記燃料噴射量を補正する、請求項1に記載の車両。
【請求項6】
前記第2燃料噴射制御は、前記複数の気筒の各々に分配される空気の流量差に応じて前記複数の気筒の各々の前記燃料噴射量を補正する制御を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項7】
前記第1気筒は、分配される前記空気の流量が他の気筒よりも大きい気筒であって、
前記制御装置は、前記第2燃料噴射制御を実行する場合において、前記第1気筒の前記燃料噴射量が前記複数の気筒のうちの前記他の気筒の前記燃料噴射量よりも増量するように前記燃料噴射量を補正する、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記第2燃料噴射制御は、前記第1燃料噴射制御の実行を禁止する、請求項1に記載の車両。
【請求項9】
複数の気筒を有するエンジンと、前記複数の気筒の各々における空燃比を検出するために前記エンジンの排気通路に設けられる空燃比センサとを搭載した車両に用いられる車両用制御方法であって、
前記複数の気筒のうちの前記空燃比センサへの排気ガスのガス当りが強い気筒の空燃比に基づいて前記複数の気筒の各々の燃料噴射量を制御する第1燃料噴射制御を実行するステップと、
前記車両が停車している状態である場合に、前記第1燃料噴射制御から前記複数の気筒間における空燃比のばらつきが抑制されるように前記燃料噴射量を制御する第2燃料噴射制御に切り換えるステップとを含む、車両用制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−83210(P2013−83210A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224066(P2011−224066)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】