説明

車両による通信を用いて車両の相対的位置を決定する方法

【課題】IEEE802.11に基づいた通信を利用して、第1と第2の車両の相対的位置を決定する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の方法において、第1車両が、(a)第2車両からIEEE802.11に基づいた通信を受領するステップと、(b)前記受領した通信に基づいて、前記第2車両の、前記第1車両に対する相対的位置を決定するステップとを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両による通信に関し、特に、IEEE802.11標準に基づいた車両による通信を用いた車両の位置(即ち「ロケーション」)を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現在の位置決定システムは、GPSを用いて車両の位置(X、Y、Zで示す)を提供している。GPSには本来的な不正確さがある。一般的なGPS受信機の誤差は、最大10mである。更に2個のGPS受信機が近くにあった場合には、異なる通信衛星を選択することにより発生する誤差或いは通信衛星の信号の処理の順番から発生する誤差を本質的に有する。
【0003】
GPSの性能は、LOS即ち見通し線(line-of-sight(LOS:送信アンテナと受信アンテナとを結ぶ何によっても遮られない直線又はそのような直線で結ばれている良好な通信状態)が得られない場合(NLOS)には劣化する。GPS信号は、ビル内、例えば室内駐車場やトンネル内では利用できない。高層建築もGPS信号を遮断することがある。このような場合は、GPSに基づかない位置検出技術、例えば、デッド・レコニング(Dead-reckoning:非天測位置推測法)を利用する。デッド・レコニングは、加速度計あるいはジャイロスコープの情報に基づいて、行なわれる。、あるいはより進んだシステムでは、車両の移動情報を用いて行なわれる。デッド・レコニングの誤差は使用時間と共に累積する。その為、デッド・レコニングは、短時間の概算的位置測定を提供できるが、長期に渡る使用はできない。GPSの改良は、差分GPS(DGPS:differential GPS)を含む。このDGPSは、高いアンテナを基準点として用いる。今日のGPSの構成要素は、DGPSをサポートしており、これにより誤差は3m以下になっている。しかしGPS信号がブロックされる場合の問題点は、この解決方法では解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】PCT/IB09/051111号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"Enhanced Position Location with UWB in Obstructed LOS and NLOS Multipath Environments" by S.F.A. Shah and A.H. Tewfik, Proc. XIII European Signal Proc. Conf. (EUSIPCO2005), Antalya, Turkey, September 2005.
【非特許文献2】"A Hybrid TDOA/AOA Positioning Technique for Indoor UWB Systems" by Chin-Der Wann and Yi-Jing Yeh, The Institution of Engineering and Technology Seminar on Location Technologies, No 6-6, Dec. 2007 pp. 1-5.
【0006】
位置情報の主な使用例は、安全性のアプリケーション(safefy applications)にある。GPSは、ナビゲーションを目的としては十分なレベルの精度を与えているが、このレベルの精度では、安全性のアプリケーションをサポートするためには必ずしも十分ではない。例えば、運転手に信頼性のある安全情報を提供するためには、相対的な精度は、1m以下、好ましくは0.5m以下でなければならない。このような位置特定の精度を改善することが必要なケースは、例えば、次のような場合である。
(A)車線特有の情報を得ること:車両のブレーキの表示は、同一車線に居る車両が、頻繁に処理する必要がある。
(B)車両の関数情報を得ること:特殊目的の車線を移動中の車両(例えば、交差点で右折用あるいは左折用の車線に居る車両)は、他の車線に居る車両とは別に処理する必要がある。
(C)近接性の位置決定:正確な位置決めは、衝突の可能性を決定するために必須である。
(D)絶対的な位置決定:公知の場所にある固定装置(例えば、GPS信号の受信状態の悪い場所にあるロードサイド・ユニット(RSU:Road Side Unit))を利用する。
(E)移動性:車線に基づいた情報は、移動予測を改善する。
一般的に、安全性のアプリケーションにおいては、2台の車両間の相対的位置は、絶対的な位置よりも重要である。
【0007】
車両間の通信に基づいた強調的な安全システムは、交通事故あるいはそれによる死亡率を減少させることができる。それ故に、車両の相対的位置を決定するシステムを改善すること及びその相対位置の精度を向上させることが、車両の安全にとって極めて重要である。特に、本発明は車両同士の相対的位置を決定する方法を提供する。相対的位置の決定の一例は、ある車両が別の車両と同一の車線を走行している、あるいは別の車両の右側あるいは左側の車線を走行している場合である。各車両が動く車線を知ることは、安全性にとって極めて重要である。その為、用語「相対的」とは、ある車両の車線の位置と他の車両の車線の位置との関係を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、IEEE802.11標準に基づいた車両の通信を利用した車両の位置を決定するシステムと方法である。
【0009】
相対的位置の決定は、ある車両が、他の車両によりビーコンにより搬送されるIEEE802.11通信を介して提供されるデータを利用して、行なわれる。以下の説明において、車両とは、道路上を移動するエンジン付きの物体、すなわち自動車、バン、トラック、オートバイ等をいう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1と第2の車両の相対的位置を決定する方法において、第1車両が、(a)第2車両からIEEE802.11標準に基づいた通信を受領するステップと、(b)前記受領した通信に基づいて、前記第2車両の前記第1車両に対する相対的位置を決定するステップと、を実行する。
本発明の他の態様によれば、第1と第2の車両の相対的位置を決定する方法において、第1車両が、
(a)第2車両からIEEE802.11標準に基づいたビーコンデータを受領するステップと、
(b)周波数シフトを測定するステップと、
(c)前記ビーコンデータを、前記周波数シフトと車両位置データと共に処理するステップと、
(d)前記(c)ステップの結果に基づいて、前記第2車両の前記第1車両に対する相対的位置を決定するステップと、
を実行する。
本発明の他の態様によれば、測定車両と被測定車両の相対的位置を決定するシステムにおいて、前記測定車両内に、IEEE802.11の通信処理ユニットを有し、
前記通信処理ユニットは、周波数シフト測定モジュールと、LOS/NLOSに用いられるショート・プリアンブル自己相関モジュールとを有する。
前記通信処理ユニットは、
(a)被測定車両からIEEE802.11標準に基づいたビーコンデータを受領し、
(b)周波数シフトを測定し、
(c)前記ビーコンデータを、前記周波数シフトと車両位置データと共に処理し、
(d)前記結果に基づいて、前記第2車両の前記第1車両に対する相対的位置を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による相対的位置の測定を用いて得られた位置決め精度を改善した例を示す。
【図2】相対的位置の測定機能を具備した車両用のIEEE802.11通信ユニットを表す図。
【図3】本発明の方法のステップを表すフローチャート図。
【図4】図3の方法のステップの詳細を表すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、第1の「測定」車両は車両Aで表し、第2の「被測定」車両は車両Bで表す。車両AとBは、三車線の高速道路を左に向かって走る。車両Aの現在地は(X、Y)ポイント101で、車両Bは(XB、YB)ポイント103で表し、これらはGPSにより提供される。この測定値は誤差を含んでいる。更なる誤差は、マップのデータベースであり、両方の車両に対し不正確な車線の位置を示す。車両A、Bの累積誤差は円106で示す。図1において、(誤差を含んだ)X、Yの値は、車両Bが車両Aの右側を走っていることを示す。これは実際の状況とは当然のことながら異なっている。
【0013】
本発明の方法は、瞬時の位置データから誤って引き出された結論を修正するものであり、車両Bは車両Aの左側の車線に居ると修正する。本発明の方法により、車両Bと車両Aとの位置を提供でき、その結果、組み合わされたエラーが楕円102にまで減少する。車両Aが、車両Bの瞬時の位置をビーコン情報を通して受領し、相対位置を決めるアルゴリズムを動かす。この相対位置は、ΔX、ΔY、ΔZで表される。ここで、ΔX=X−Xと、ΔY=Y−Yと、ΔZ=Z−Zである。この場合、Z(高さ方向)は、両方の車両にとって同一であり、よって無視する。
【0014】
図2において、相対位置の決定は、車両Aに搭載された車両用のIEEE802.11通信/処理ユニット200で処理される。このユニット200は、送信用の802.11OFDMモデム202と、802.11MACモジュール208と、GPS受信機210と、中央処理装置(CPU)212とを有する。OFDMモデム202は、周波数シフト測定モジュール204と、ショート・プリアンブル自己相関モジュール206とを有する。これらは図に示したとおりに接続されている。
【0015】
図3は、本発明により車両の相対位置を決定する方法のステップのフローチャートである。ステップ300において、車両Bからのビーコンデータを、車両A内のモデム202が受領する。このビーコンデータは、車両Bの位置と速度ベクトルを含む。ステップ302において、周波数シフトが周波数シフト測定モジュール204で測定される。一実施例においては、ステップ302において、LOS/NLOS表示を、モデム202からCPU212が読み取る。これは、モジュール206により提供される自己相関を用いて行なわれる。この測定した周波数シフトを、式(1)を用いて計算した値と比較する。これはステップ304の一部として行なわれる。2台の車両の相対位置は、車両Aにより、車両Aと車両Bの絶対位置と速度と、測定した周波数シフトと、LOS/NLOS表示を用いて、ステップ304で行なわれる。
【0016】
この決定は、AOA(Angle-Of-Arrival:到来角)三角法を利用する。この三角法の関数は、異なるAOAを有する車両Aにより行なわれた複数個の読み取り情報を必要とする。AOAはドップラーシフト(Doppler shift)を用いて決定される。このドップラーシフトは、周波数シフトから計算され、車両Aと車両Bの相対的速度ベクトルに依存する。周波数シフトは、次式で与えられる。

式(1)

ΔVは、車両Aと車両Bの速度ベクトル差である。ΔX、ΔYは、2つの車両間の位置の差であり、Δheadingは、2台の車両間の速度角度である。すなわち、速度の方向の差、即ち速度ベクトルのフェーズの差である。周波数シフトの式は非線形であり、その解決法は公知である。クロック・ソース・シフト(clock source shift)は、車両Aと車両Bのクロック・ソース間の差であり、これは未知であるが、方程式解法手順の一部として解くことができる(図4のステップ414)。
【0017】
Zは、同一であり、間挿プロセスの間は、変わらないものとする。未知のものは、「エラー(err)」後置(postfix)の付いたパラメータ全てであり、これは測定値の誤差を表す。例えば、heading errは、headingの誤差であり、Verrは、相対速度差ΔVの誤差である。周波数シフトは全てのビーコン・パケットに対し測定される。複数の測定値を用いて、式(1)の未知のパラメータを解く。未知のパラメータの値は、相対的位置の予測値になる。この予測値の質は、データポイントの数を多くすることにより、改善する。
【0018】
これらのスキームは802.11標準で可能となる。この標準により、ビーコン・メッセージが規定される。このビーコン・メッセージは、車両間の通信ユニットにより送信されたGPS情報を含む。他の無線プロトコルは、この情報を提供せず、このスキームを使用することはできない。
【0019】
図4は図3のステップの詳細を示す。ステップ400において、ビーコン・データを、車両Aが車両Bから受領する。ビーコン・データのコンテンツは、ステップ402でチェックされ、処理すべきか否かを決定する。2台の車両間の相対位置が、最後の処理から変化していない場合には、この処理は有効なデータを提供せずスキップされる。例えば、2台の車両の相対位置が、1m以下しか変わらない場合には、この操作を中止する。それ以外は、ステップ404に進む。
【0020】
ステップ404において、周波数シフト好ましくはLOS/NLOS表示が、車両Aの周波数シフト測定モジュール204から、CPU212で読み出される。LOS/NLOS表示は、ショート・プリアンブル自己相関(short-preamble autocorrelation )の結果に基づき、ショート・プリアンブル自己相関モジュール206から読み出されるが、これは相関結果のピーク数と振幅を用いて行なわれる。これは従来公知のものである。LOSの場合には、支配的な反射が存在し、最強の相関ピークは他のものよりも遥かに大きい。NLOSの場合には、主要放射波(dominant ray)は存在せず、相関結果は、似たような振幅値の複数のピークを示す。NLOS表示をステップ408で用いて、経験則(heuristics)を適用する。
【0021】
ステップ406において、測定車両と被測定車両の両方のタイムベースが以下の様にして統合される。車両AのGPSは、GPS受信機210から毎秒新たな結果が提供される(更新される)。この更新は、車両Bからのビーコン到着と相関関係を有さず、これは、MACモジュール208からの到着情報と同様である。加速とハンドルの回転角(steering angle)の変更の事象(events)も相関関係がない。両方の車両の事象が、CPU212に相関関係なく到着するので、間挿法を用いて両方の車両からの事象を設定して、単一のタイムベースでCPUに到着するようにする。すなわち、車両Bの測定値は、車両Aの測定値と同時にCPU212に到着したかのように修正される。この修正結果を用いて位置の調整値が得られる。簡単な線形修正法を用いた代表的な位置調整は、式(2)で与えられる。より複雑な間挿/修正方法も用いることもできる。
【0022】

式(2)

ここで「A」と「B」は、それぞれの車両を表し、Tdiffは、間挿時間である、すなわち、測定値の到着から新たなタイムベースまでの時間であり、ステアリング角は、ハンドルの回転角度であり、XBadとYBadjは、車両Bのための調整したXとYの値である。
【0023】
一例を示す。車両AのGPSの更新値は、0s、1s、2sで到着し、車両BのGPSの更新値は、0.5s、1.5s、2.5sで到着し、その直後に車両Aに送信されるものとする。車両Bの位置と速度の情報は、車両Aのそれと同時刻に受領したかのように調整される。車両Bから0.5sの時間に到着した情報を修正して、1sの時点での車両Bの位置を予測する。この為に、車両Bが(1s−0.5s=0.5s)の時間の間に動いた距離を、車両Bの速度情報を用いて予測する。
【0024】
車両Aと車両Bの速度ベクトルは、ユークリッド幾何学数式(Euclidean arithmetic)を用いて減算される。速度角は以下のように提供される。すなわち、第1要素は、2つの車両間の高さの差を考慮する。Atan2は、逆正接関数(arctangent function)であり、atan(y、x)の代わりにatan2(y、x)としての値を表す。

式(3)

速度は次式である。
式(4)

【0025】
例えば、2台の車両が対向して動く場合には、相対速度は2台の車両の速度の和であり、前後して同一方向に動く場合には、相対速度は2台の車両の速度の差である。
【0026】
ステップ408において、NLOS経験則を適用して、相対的位置の測定値の精度を上げる。ドップラーシフトの測定値は、LOSの主要放射波が存在する時のみ正確である。それがない場合には、様々な対象物からの反射が、拡散(ドプラー拡散)を引き起こし、正確なドップラーシフトを検知することができない。
【0027】
NLOSの間、複数の固定センサ間の距離の測定値をサポートする議論は、非特許文献1、2を含む様々な文献に開示されている。非特許文献1、2では、NLOS状態の下で採られた測定値は無視している。これは、車両環境において有効なオプションではない。非特許文献2は、測定値を経験則基づいた計算されたファクタで掛け算している。本発明者らは、交通環境においてこれらの経験則が従来使用されいないと認識している。そのため、交通環境おける経験則は次のようになる。
【0028】
ストレート・ロード・ブロッキング(Straight road blocking):測定車両の前にある車両は、背の高い車両により、遮られている。被測定車両は、受信可能であるが、LOS放射波存在しない。反射波(reflections)が横の対象物(別の車線の車両)から到達する。
カーブ・ブロッキング(Curve blocking):LOSはカーブで失われる。例えば、音響の壁が配置される場合である。
交差点におけるブロッキング(Intersection blocking):交差点の周りのビルが、直接放射波をブロックする。
経験則は、この3つの状態のそれぞれに対する測定値に適用されるオフセット(offset)である。
【0029】
選択された経験則(測定値のオフセット)が、マップ情報を用いて決定される。マップは、ナビゲーションのデータベースから取り出されるか、あるいは特許文献1に記載された受信したビーコンを用いて局部的に習得される。このマップを解析して、上記の3つの場合に従い、運転状態をクラス分けする。
【0030】
ステップ410において、測定重み付け係数(measurement weights)が計算されて、結果の精度を改善する。重み付けのプロセスは、測定値の正確さのゆう度(可能性)を考慮している。誤ったと推定される測定値の影響を最小にする。これは、より信頼性の高い測定値がより大きな重みを有するためである。
速度変化(Spped change):瞬間速度の不正確さの可能性を増大させる。その為、前の速度とは異なる速度を有する測定値の重みを下げなければならない。
走行方向変化(Heading change):これは、カーブを運転中あるいは測定値の誤差から得られたものである。後者は小さな重み係数で調整される。車両がカーブ内を走行している時は、測定が行なわれた時点の実際の走行方向は、パケットの受領時と完全には整合していない。これは重み係数を下げる別の理由である。その為、前とは異なる走行方向を有する測定値の重みを低くしなければならない。例えば、車両Bが一定の速度で走行しておりその後に加速し現在の速度を維持しているとする。この測定値は、車両Bが一定の速度で走行しており加速する前後でおこなわれた場合、加速時の測定値よりもより大きな重み(かつ重要性)を有する。
【0031】
ステップ412において、速度ベクトルの誤差を決める。速度ベクトルの誤差が発生する理由は、2つの車両間の高さの差と、不正確な速度測定値である。このステップは、両方の理由が存在しない場合には、スキップされる。速度ベクトルの誤差の計算は、全ての測定値の誤差(速度の誤差と速度角の誤差)を平均化することに基づく。2つの連続する測定値の位置の差は、速度ベクトルに一致する。
【0032】
速度の誤差は、次式で与えられる。
式(5)

速度角の誤差は、次式で与えられる。

式(6)

【0033】
例えば、与えられた速度が一定の誤差を含む場合には、2つのGPSの更新の間の距離は、速度とは一貫性がない。例えば、誤差が0.1m/sの場合には、10秒後には1mの誤差が位置の変化として累積する。これらの不一致は、ステップ412で考慮される。
【0034】
潜在的GPS誤差のサーチは、ステップ414で実行される。このサーチは、測定した周波数シフトと、式(1)を用いて計算した予測値とを比較することにより、行なう。このサーチにより、GPS誤差の値を見つけ出す。この値は、測定した周波数シフトと計算した周波数シフトとの間の最小二乗誤差を生成する。
【0035】
最後のステップ416を用いて車線の不明確さを解決する。2つの結果(2つの潜在的GPS誤差)が見い出されが、これはステップ414の非線形の式を解きながら行なう。ドップラーベースの予測値を用いてcos(AOA)を予測する。コサイン(cosine)は、対称関数即ちcos(α)=cos(−α)であるので、AOAの符号は不明である。これは、2台の車両間の相対的水平方向の位置となるが、被測定車両が測定車両の右側あるいは左側かどちらに位置しているかは、不明である。このような不明確さを解く方法は、最大GPS誤差値を用いて不合理な値を排除し、道路上の車線数に関する情報を得て、あるべき車線数が見い出されたか否かを宣言することである。例えば、最大GPSエラーが3mであり、車線の幅が2.5m、誤差が0mの場合には、不明確さは存在しない。その理由は、潜在的なエラーは5mだからである(2×2.5m−2レーン離れている)。これは、最大GPS誤差よりも大きいからである。
【0036】
言い換えると、車両Bが車両Aの側面2mにいることが判っているとする。不明確さの為に、これは。車両Aの右側2mか左側2mかである。右側にいた場合の誤差が0mであるとすると、左側にいる場合の誤差は4mである。最大GPSの誤差が3mの場合には、車両Bは車両Aの左側にいるとすることはあり得ない。更に車両間で行なわれるデータ交換(例えば、車両Aがその周りにいる全ての車両のリストをブロードキャストし、そして他の車両も同じことをするとする)は、車両アンカー(vehicle anchors)を提供し、道路上の車両の相対的位置を決定することができる。即ち、車両Aと車両Bが1車線離れおり、車両Bと車両Cが1車線離れており、車両Aが車両Cよりも2車線左側にいる場合には、車両Bは車両Cの左側の車線上にいることになる。このような不明確さを成功裏解決することにより、GPS誤差の結果値を高精度にすることができる。
【0037】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0038】
200:IEEE802.11通信/処理ユニット
202:802.11OFDMモデム
204:周波数シフト測定モジュール
206:ショート・プリアンブル自己相関モジュール
208:802.11MACモジュール
210:GPS受信機
212:中央処理装置(CPU)
図3
300:ビーコンデータを得る。
302:周波数シフトと相関結果を読み取る。
304:周波数シフトと両方の車両の位置と速度に基づいて相対的位置を予測する。
図4
400:被測定車両からのビーコンデータを受領する。
402:処理が必要かをチェックする。
404:モデムから周波数シフト&LOS/NLOSを読み取る。
406:両方の車両からデータのタイムベースを統合する。
408:NLOSの経験則を適用する。
410:測定重み付けを計算する。
412:速度ベクトル誤差を決定する。
414:潜在的位置誤差をサーチする。
416:車線の不明確さを解決する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の車両の相対的位置を決定する方法において、
第1車両が、
(a)第2車両からIEEE802.11標準に基づいた通信を受領するステップと、
(b)前記受領した通信に基づいて、前記第2車両の前記第1車両に対する相対的位置を決定するステップと、
を実行する
ことを特徴とする第1と第2の車両の相対的位置を決定する方法。
【請求項2】
前記(a)ステップは、(a1)前記第2車両からビーコンデータを有するビーコンを受領するステップを有し、
前記(b)ステップは、
(b1)前記ビーコンの受領に関連する周波数シフトを測定するステップと、
(b2)前記測定した周波数シフトとビーコンデータに基づいて、前記第2車両の位置を決定するステップ
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記(b2)ステップは、(b21)各車両の絶対的GPS位置と速度データを用いるステップを有する
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記(b2)ステップは、(b22)LOS指示又はNLOS指示を用いるステップを有する
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記(b2)ステップは、(b23)前記第1車両と第2車両のタイムベースを統合するステップを有する
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記(b2)ステップは、(b24)前記測定した周波数シフトと計算上の周波数シフトを比較するステップを有する
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記(b22)ステップは、NLOS経験則を用いるステップを含む
ことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項8】
第1と第2の車両の相対的位置を決定する方法において、
第1車両が、
(a)第2車両からIEEE802.11標準に基づいたビーコンデータを受領するステップと、
(b)周波数シフトを測定するステップと、
(c)前記ビーコンデータを、前記周波数シフトと車両位置データと共に処理するステップと、
(d)前記(c)ステップの結果に基づいて、前記第2車両の前記第1車両に対する相対的位置を決定するステップと、
を実行する
ことを特徴とする第1と第2の車両の相対的位置を決定する方法。
【請求項9】
前記車両位置データは、前記第1車両と第2車両のGPSベースの位置を含む
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記車両位置データは、前記第1車両と第2車両の非GPSベースの位置を含む
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記(c)ステップは、(c1)前記測定した周波数シフトと計算上の周波数シフトを比較するステップを有する
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記(c)ステップは、(c2)前記第1車両と第2車両のタイムベースを統合するステップを有する
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記(c)ステップは、(c3)ビーコンデータを、周波数シフトと車両位置データとLOS指示又はNLOS指示と共に、処理するステップを有する
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記(c)ステップは、(c4)NLOS経験則を用いるステップを含む
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項15】
測定車両と被測定車両の相対的位置を決定するシステムにおいて、
前記測定車両内に、IEEE802.11の通信処理ユニットを有し、
前記通信処理ユニットは、
周波数シフト測定モジュールと、
LOS/NLOSに用いられるショート・プリアンブル自己相関モジュールと
を有し、
前記通信処理ユニットは、
(a)被測定車両からIEEE802.11標準に基づいたビーコンデータを受領し、
(b)周波数シフトを測定し、
(c)前記ビーコンデータを、前記周波数シフトと車両位置データと共に処理し、
(d)前記結果に基づいて、前記第2車両の前記第1車両に対する相対的位置を決定する
ことを特徴とする測定車両と被測定車両の相対的位置を決定するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−528433(P2011−528433A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518034(P2011−518034)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051769
【国際公開番号】WO2010/007539
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511004597)オートトークス エルティディ (2)
【Fターム(参考)】