説明

車両のフロントエンドモジュール構造

【課題】 ラジエータコア等を支持するフロントモジュールの強度を低下させることなく、フードルーム上部に外気を導入すること。
【解決手段】 車体の左右両側部において車両前後方向に延設されたサイドフレームMの前端部に取付られ、少なくともラジエータコア3を支持する樹脂製のフロントエンドモジュール枠体1と、車両の前後方向に沿ってフロントエンドモジュール枠体1から一体に立設された複数の補強板部1bによりフロントエンドモジュール枠体1上に複数の区画を形成するように構成されてラジエータコア3より上方に配置される枠体補強部1aと、複数の区画のうち少なくとも1箇所に形成されて外気をフードルームR内上部に導く通風孔7とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフードルームの前端部に取り付けられ、ラジエータコアやラジエータファン、フロントフードのラッチ機構等を一体的に支持する車両のフロントエンドモジュールに関し、特にフードルーム内への外気の導入を確保できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフードルーム内前端部には、ラジエータコアやラジエータファンが収納されており、それらを支持するサポート部材が設けられている(例えば、特許文献1〜2参照)。これらラジエータコアやラジエータファンを一体的に支持し、車体前部に配置するためのフロントエンドモジュールが開発されつつある。
【特許文献1】特開2005−254874号公報
【特許文献2】特開2005−161979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来のフロントエンドモジュール構造では、次のような問題があった。図7に一例を示すが、フロントエンドモジュール101がフードルームRの前部に配置されており、フロントエンドモジュール101には、前方からコンデンサ102、ラジエータコア103、ラジエータファン104が順に並べられて搭載されている。なお、図7中BはフロントバンパFはフロントフード、SはフロントバンパF下方に設けられた外気導入用のバンパ開口を示している。また、図7中白矢印Qは空気の流れを示している。このように外気導入用の開口部がフロントバンパ下方にのみ設けられる車両の場合、フードルームRの上部に直接外気が導入されることがなく、フードルームR上部には、ほとんど空気の流れがない。。通常、バンパ開口Sから導入された外気は、コンデンサ102およびラジエータコア103を通過した後、フードルームR内に入ってくるが、高温となった空気の一部がフードルームRの上部に滞留する。この滞留した空気によって熱が篭り、ワイパモータやブレーキリザーバタンク等に熱害による悪影響を与える虞があった。
【0004】
なお、降雪時は前輪によって巻き上げられた雪がフードルームRの上部に滞留し、その後、ラジエータファン104に付着することがあった。付着した雪が凍結するとラジエータファン104の回転を阻害し、電動モータを破損する虞があった。
【0005】
そこで本発明は、ラジエータコア等を支持するサポート部材(フロントエンドモジュール枠体)の強度を低下させることなく、フードルーム上部に外気を導入することができる車両のフロントエンドモジュール構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する第1の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、車両の左右両側部において車両前後方向に延設されたサイドフレームの前端部に取付られ、少なくともラジエータコアを支持する樹脂製のフロントエンドモジュール枠体と、車両の前後方向に沿って前記フロントエンドモジュール枠体から一体に立設された複数の補強板部により前記フロントエンドモジュール枠体上に複数の区画を形成するように構成されて前記ラジエータコアより上方に配置される枠体補強部と、前記複数の区画のうち少なくとも1箇所に形成されて外気をフードルーム内上部に導く通風孔とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記の課題を解決する第2の発明(請求項2に対応)に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、前記第1の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造において、前記通風孔は、フロントフード前端部とフロントバンパとの隙間に対向する位置に設けられることを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決する第3の発明(請求項3に対応)に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、前記第1の発明又は第2の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造において、前記枠体補強部は、フロントエンドモジュール枠体の上部後面側が前記複数の区画により格子状になるよう形成され、前記格子状の一部が前記通風孔とされることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決する第4の発明(請求項4に対応)に係る車両のフロントエンドモジュール構造は、前記第1の発明乃至第3の発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造において、前記フロントエンドモジュール枠体の後面に前記ラジエータファンの上半部を覆うカバー部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、フロントエンドモジュール枠体に複数の区画に形成された枠体補強部を備えると共に、枠体補強部の区画の一部に外気をフードルーム内上部に導く通風孔を形成したので、フロントエンドモジュール枠体の強度を低下させることなく、フードルーム内上部に外気を導入することが可能となる。これにより、フードルーム内上部にも空気の流れが発生し、フードルーム上部の滞留をなくすことができる。従って、熱害の影響が少なくなるとともに、雪がラジエータファンに付着することも防ぐことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、通気孔をフロントフード前端部とフロントバンパとの隙間に対向する位置に設けたので、より効率良くフードルーム内上部に外気を導入することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、フロントエンドモジュール枠体の上部後面側が前記複数の区画により格子状になるよう形成されるので、フロントエンドモジュール枠体の強度を向上することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ラジエータファンの上半部を覆うカバー部材を設けたので、フードルーム内に巻き上げられた雪が、ラジエータファンに付着するのをより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る車両のフロントエンドモジュール構造の一実施形態について、図1から図6を用いて説明する。
【0015】
図1はフロントエンドモジュール1が組み込まれた自動車のフードルームRの要部を前方から示す斜視図、図2はフードルームRの要部を側方から示す側面図、図3はフードルームRの要部を後方から示す斜視図、図4はフロントエンドモジュール10を後方から示す背面図、図5はフロントエンドモジュール10の上部後面要部を拡大した図である。なお、これらの図中二点鎖線Bはフロントバンパ、Fはフロントフード、SはフロントバンパBの開口を示している。図中実線Mはサイドフレーム、Nはバンパリンフォースを示している。
【0016】
フロントエンドモジュール10は、バンパリンフォースNの後方で、車両の左右両側部において前後方向に延設されるサイドフレームMの前端部に、その側部をボルト等により固定されて支持されることで、フードルームR内の前端に配置されている。
【0017】
フロントエンドモジュール10は、樹脂製のフロントエンドモジュール枠体1を備えており、その上部中央には、フロントフードFをロックするラッチ機構が設置されている。
【0018】
フロントエンドモジュール枠体1の前面側には、ラジエータコア3が支持されており、さらにラジエータコア3の前方にはコンデンサ2が並んで配置されている。
【0019】
フロントエンドモジュール枠体1の後面側には、ラジエータコア3の後面を覆うようにファンシュラウド5が一体に設けられている。ファンシュラウド5は中央部に開口部5aを有すると共に、開口部5aにラジエータファン4が設けられており、バンパ開口Sから入ってきた外気はコンデンサ2とラジエータコア3を通過した後、ラジエータファン4によってフードルームR内に送風される。さらに、ファンシュラウド5の開口部5a上半部分にはカバー6が設けられ、このカバー6によりラジエータファン上半部が覆われて雪が付着し難い構成となっている。
【0020】
フロントエンドモジュール枠体1のラジエータコア3より上方の部位には、枠体補強部1aが形成されてフロントエンドモジュール枠体1の強度を上げている。枠体補強部1aは、フロントエンドモジュール枠体1の後面側において車両前後方向後方に向かって立設された複数の補強板部1bにより格子状に形成され、複数の区画を有する構成となっている。そして、枠体補強部1aの複数の区画の一部には、外気をフードルームR内上部に導くための通風孔7が形成されている。すなわち、通風孔7は周囲が補強板部1bによって補強されている。
【0021】
フロントフードF前端部とフロントバンパB上端部との間には隙間Hが設定されている。枠体補強部1aに形成した通風孔7は隙間Hと対向する位置に配置されており、隙間Hから入ってきた走行風が通風孔7からフードルームR上部に導入される構成となっている。
【0022】
このように構成されたフロントエンドモジュール10は、次のような作用をなす。なお、図6中白矢印Qは空気の流れを示している。図6に示すように、フロントフードFとフロントバンパBとの隙間Hから導入された外気がフロントエンドモジュール枠体1の通風孔7からフードルームRの上部に直接導入され、下方へと排出される。このため、フードルームRの上部に空気の流れができ、高温の空気が滞留することがなくなる。よってワイパモータやブレーキリザーバタンク等に熱害による悪影響を与えることはない。
【0023】
また、降雪時は前輪によって巻き上げられた雪がフードルームRに入った場合であっても、通風孔7からの風の流れにより、下方へ排出され、ラジエータファン4に付着することを防止できる。このため、雪が凍結することによるモータの破損等を防止することができる。さらに、カバー6によってラジエータファン4の上半分を覆ったことにより、より確実にラジエータファン4への雪の付着を防止することができる。
【0024】
一方、フロントエンドモジュール枠体1の上部後面を複数の補強板部1bにより区画されるように格子状に形成してすることで補強し、区画された一部を通風孔7としたので、通風孔7を設けることによるフロントエンドモジュール1の強度低下に与える影響が少なくなる。
【0025】
上述したように、本実施の形態に係る車両のフロントエンドモジュール構造によれば、ラジエータコア3等を支持するフロントエンドモジュール枠体1の強度を低下させることなく、フードルームR上部に外気を導入することができ、高温の空気が滞留することに伴う熱害や凍結した雪がラジエータファン4の回転を阻害することを防止することができる。
【0026】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフロントエンドモジュールが組み込まれた自動車のフードルームの要部を前方から示す斜視図。
【図2】同フードルームの要部を側方から示す側面図。
【図3】同フードルームの要部を後方から示す斜視図。
【図4】同フロントエンドモジュールを後方から示す背面図。
【図5】同フロントエンドモジュールの上部後面要部を拡大した図
【図6】同フロントエンドモジュールによる改善点を示す説明図。
【図7】従来のフロントエンドモジュールによる問題点を示す説明図。
【符号の説明】
【0028】
1…フロントエンドモジュール枠体、1a…枠体補強部、1b…補強板部、2…コンデンサ、3…ラジエータコア、4…ラジエータファン、5…ファンシュラウド、5a…開口部、6…カバー、7…通気孔、8…ラッチ機構、10…フロントエンドモジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右両側部において車両前後方向に延設されたサイドフレームの前端部に取付られ、少なくともラジエータコアを支持する樹脂製のフロントエンドモジュール枠体と、
車両の前後方向に沿って前記フロントエンドモジュール枠体から一体に立設された複数の補強板部により前記フロントエンドモジュール枠体上に複数の区画を形成するように構成されて前記ラジエータコアより上方に配置される枠体補強部と、
前記複数の区画のうち少なくとも1箇所に形成されて外気をフードルーム内上部に導く通風孔とを備えることを特徴とする車両のフロントエンドモジュール構造。
【請求項2】
前記通風孔は、フロントフード前端部とフロントバンパとの隙間に対向する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両のフロントエンドモジュール構造。
【請求項3】
前記枠体補強部は、フロントエンドモジュール枠体の上部後面側が前記複数の区画により格子状になるよう形成され、前記格子状の一部が前記通風孔とされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のフロントモジュール構造。
【請求項4】
前記フロントエンドモジュール枠体の後面に前記ラジエータファンの上半部を覆うカバー部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の車両のフロントモジュール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−106328(P2007−106328A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300860(P2005−300860)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】