車両の制御装置
【課題】複数の電気負荷を含む車両において、充放電収支が釣り合わない状況が生じること、およびエンジン回転速度が変動する状況が生じることを抑制する。
【解決手段】車両10は、エンジン11の動力により駆動するオルタネータ23と、このオルタネータ23により充電されるバッテリ22と、このバッテリ22の電力により駆動する複数の電気負荷としての水加熱ヒータ24,25と、エンジン11のアイドル回転速度制御を実行する電子制御装置41とを含む。電子制御装置41は、アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ複数の水加熱ヒータ24,25が駆動しているとき、アイドル目標回転速度が所定値を下回らないようにガードする。
【解決手段】車両10は、エンジン11の動力により駆動するオルタネータ23と、このオルタネータ23により充電されるバッテリ22と、このバッテリ22の電力により駆動する複数の電気負荷としての水加熱ヒータ24,25と、エンジン11のアイドル回転速度制御を実行する電子制御装置41とを含む。電子制御装置41は、アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ複数の水加熱ヒータ24,25が駆動しているとき、アイドル目標回転速度が所定値を下回らないようにガードする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両にはヘッドランプ、スモールランプ等をはじめとする各種電気負荷が装備されており、それらの電気負荷はバッテリ電圧の供給にて駆動される。しかしながら、バッテリに蓄えられる電気容量は有限であり、使用に伴い残存容量が減少しバッテリ電圧が低下してゆく。そこで、車両にはバッテリの充電を行う手段としてオルタネータが備えられている。オルタネータは、エンジンによって駆動されて発電を行いバッテリに充電する。
【0003】
ここで、従来より、バッテリ電圧を所定の値に維持するように、オルタネータの発電を制御することが行われている。また、電気負荷が大きくなる場合には、オルタネータに流す界磁電流を大きくしてバッテリに充電する技術が、例えば、特許文献1及び2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2643601号公報
【特許文献2】特開平7−23599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年では燃費の向上等を目的として発熱量の少ないエンジンが開発されている。このエンジンでは、ヒータ性能を確保するために、エンジン冷却水を加熱する手段として水加熱ヒータと呼ばれるヒータを採用している。
【0006】
ところが、この水加熱ヒータは大きな電気負荷であるため、消費電力が一層大きくなる。そのため、上述した特許文献1及び2によるように、オルタネータに流す界磁電流を大きくしてバッテリを充電する方法では、充放電収支を確保したり、エンジン回転速度を変動させないようにすることについての課題が残る。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、電気負荷を複数備えた車両において、充放電収支が釣り合わない、エンジン回転速度が変動するといった不具合を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段を以下に記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、アイドル目標回転速度が所定値を下回らないようにガードすることを要旨とする。
【0009】
上記請求項に記載の発明では、複数の電気負荷が駆動されているときにアイドル目標回転速度が所定値未満となる状況下では、そのアイドル目標回転速度にガードがかけられる。この処理(ガード処理)により、複数の電気負荷が駆動されているときにアイドル目標回転速度が所定値よりも低くなることがなくなる。その結果、複数の電気負荷を駆動するために必要な電力をオルタネータにて発電させ、上記バッテリの充放電収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0010】
(2)請求項2に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい値を所定値として、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、エンジン回転速度が前記所定値に収束するように制御することを要旨とする。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Aとし、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Bとして、前記目標回転速度Bを前記目標回転速度Aよりも大きくすることを要旨とする。
【0012】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定し、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記アイドル目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定することを要旨とする。
【0013】
(5)請求項5に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、燃料カット復帰回転速度が所定値を下回らないようにガードすることを要旨とする。
【0014】
上記請求項に記載の発明では、複数の電気負荷が駆動されているときに燃料カット復帰回転速度が所定値未満となる状況下では、その燃料カット復帰回転速度にガードがかけられる。このガードにより、複数の電気負荷が駆動されているときに燃料カット復帰回転速度が所定値よりも低くなることがなくなる。その結果、複数の電気負荷を駆動するために必要な電力をオルタネータにて発電させ、上記バッテリの充放電収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0015】
(6)請求項6に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい値を所定値として、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、かつエンジン回転速度が前記所定値を下回るとき、燃料噴射を再開することを要旨とする。
【0016】
(7)請求項7に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Aとし、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Bとして、前記復帰回転速度Bを前記復帰回転速度Aよりも大きくすることを要旨とする。
【0017】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定し、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記燃料カット復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定することを要旨とする。
【0018】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記複数の電気負荷としてエンジン冷却水を加熱する複数のヒータを備えることを要旨とする。
【0019】
上記請求項に記載の発明によるように、電気負荷としてエンジン冷却水を加熱するヒータが用いられる場合には、例えば高発熱体が使用されることとなり、同請求項が引用する請求項に記載の発明について、特に顕著な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態についてその構成を示す略図。
【図2】第1実施形態において、両水加熱ヒータを駆動する場合の作用を説明するタイムチャート。
【図3】第1実施形態において、両水加熱ヒータを停止する場合の作用を説明するタイムチャート。
【図4】本発明を具体化した第2実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【図5】本発明を具体化した第3実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【図6】本発明を具体化した第4実施形態において、車両停止中の作用を説明するタイムチャート。
【図7】第4実施形態において、車両走行中の作用を説明するタイムチャート。
【図8】本発明を具体化した第5実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【図9】本発明を具体化した第6実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、車両10には、動力源としてガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。このエンジン11においては、各燃焼室12に対し吸気通路13を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁14から燃料が噴射供給される。この燃料と空気の混合気に対し点火プラグ15による点火が行われると、その混合気が燃焼してピストン16が往復動し、エンジン11の出力軸であるクランクシャフト17が回転されて、エンジン11の駆動力(トルク)が得られる。そして、混合気の燃焼により生じた排気は燃焼室12から排気通路18へ排出される。
【0022】
エンジン11の出力調整は、吸気通路13に設けられたスロットルバルブ19をモータ等のスロットル用アクチュエータ21によって駆動して、そのスロットルバルブ19の開度(スロットル開度)を調節することによって実現される。すなわち、スロットル開度の調整により、エンジン11への吸入空気量が変化し、その変化に対応して燃料噴射量が制御され、燃焼室12に充填される混合気の量が変化してエンジン11の出力が調整される。なお、スロットル開度は、運転者によって操作されるアクセルペダル(図示略)の踏込み量に応じてスロットル用アクチュエータ21を駆動することにより調整される。
【0023】
車両10には、各種電気負荷に電力を供給するためのバッテリ22及びオルタネータ23が設けられている。オルタネータ23はプーリ、伝動ベルト等を介してエンジン11のクランクシャフト17に駆動連結されており、エンジン11の作動にともない回転して発電を行う。オルタネータ23で発電された電力は、各種電気負荷及びバッテリ22に供給される。
【0024】
電気負荷としては、ヘッドランプ、スモールランプ等の消費電力の比較的少なく既存の電気負荷に加え、エンジン冷却水を加熱するヒータ(以下、水加熱ヒータ24,25という)が用いられている。水加熱ヒータ24,25は、燃費向上等を目的として発熱量を少なくしたエンジン11が搭載された車両10において、暖房装置(ヒータ)のヒータ性能を上げるべく用いられている。本実施形態における水加熱ヒータ24,25はPTCヒータからなり、エンジン冷却水の流れるヒータ配管の近傍に複数(2つ)取付けられており、バッテリ電圧の印加により発熱してエンジン冷却水を加熱する。
【0025】
オルタネータ23は、三相の捲線を有するステータコイルと、ステータコイルの内側に位置するフィールドコイル(界磁コイル)とからなる三相交流発電機を備えている。オルタネータ23は、フィールドコイルを通電状態で回転させることにより、ステータコイルに誘起電力を発生させ、誘起電流(三相交流電流)を整流器により直流電流に変換してバッテリ22に充電する。また、オルタネータ23は電圧レギュレータを備えており、この電圧レギュレータによってフィールドコイルに流れる界磁電流を制御し、ステータコイルに発生する誘起電力を調整して発電量を制御する。
【0026】
さらに、車両10には、その各部の状態を検出するセンサが種々取付けられている。これらのセンサとしては、例えばクランク角センサ31、アクセルセンサ32、スロットルセンサ33、吸気圧センサ34、水温センサ35等が用いられている。
【0027】
クランク角センサ31はクランクシャフト17の回転に対応した信号を出力する。この信号は、クランクシャフト17の回転角度(クランク角)やエンジン回転速度の算出に用いられる。アクセルセンサ32は運転者によるアクセルペダルの踏込み量(アクセル踏込み量)を検出し、スロットルセンサ33はスロットル開度を検出する。また、吸気圧センサ34は吸気通路13における吸入空気の圧力である吸気圧を検出し、水温センサ35はエンジン冷却水温を検出する。
【0028】
車両10には、前記各種信号に基づいて、エンジン11を含む車両各部を制御する電子制御装置41が設けられている。電子制御装置41はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0029】
電子制御装置41は、エンジン11の燃料噴射制御、点火時期制御等に加え、オルタネータ23の発電制御を実行する。電子制御装置41は、例えば燃料噴射制御に際し、エンジン負荷、エンジン回転速度等に基づき目標噴射量を算出し、この目標噴射量に対応した量の燃料が噴射されるよう燃料噴射弁14に対する通電を制御する。エンジン負荷は、例えばエンジン11の吸入空気量に関係するパラメータ、例えばスロットルセンサ33によるスロットル開度、アクセルセンサ32によるアクセル踏込み量、吸気圧センサ34による吸気圧等に基づき求められる。
【0030】
また、電子制御装置41は点火時期制御に際し、吸気圧、エンジン回転速度等のエンジン11の運転状態に基づき目標点火時期を算出し、この時期にイグナイタを制御することにより点火プラグ15を作動させる。そして、前記混合気は点火プラグ15の点火に伴う火花放電によって着火されて燃焼する。
【0031】
さらに、オルタネータ23の発電制御では、電子制御装置41は電気負荷の駆動に伴う電力消費によりバッテリ電圧が低下した場合に、そのバッテリ電圧が所定の目標電圧となるようにオルタネータ23の発電量を制御する。この制御に際し、電子制御装置41は電気負荷の大きさに応じ、オルタネータ23のフィールドコイルに対する通電をデューティ比(オルタネータデューティ比)にて制御する、いわゆるデューティ制御を行う。デューティ比は、通電(オン)及び非通電(オフ)からなる1サイクル(時間)における通電時間の割合である。
【0032】
ところで、上記水加熱ヒータ24,25は大きな電気負荷であるため、こうした水加熱ヒータ24,25が設けられていない場合に比べて消費電力が一層大きくなる。そのため、停止状態の複数(2つ)の水加熱ヒータ24,25を同時に駆動しようとすると、オルタネータ23の発電量を多くすべくオルタネータデューティ比が大きくなる。これに伴いオルタネータ23を回転駆動させるトルクが急増し、エンジン回転速度が大きく変動(下降)する。また、駆動状態の両水加熱ヒータ24,25を同時に停止しようとすると、オルタネータ23による発電量を少なくすべくオルタネータデューティ比が小さくなる。これに伴いオルタネータ23を回転駆動させるためのトルクが急減し、エンジン回転速度が大きく変化(上昇)する。
【0033】
そこで、本実施形態では、電子制御装置41は両水加熱ヒータ24,25を駆動/停止する際に、同水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加/遮断を1つずつ順に、所定のディレイ時間を保ちつつ行うことで上記不具合に対処するようにしている。
【0034】
例えば、図2に示すように、両水加熱ヒータ24,25が停止されている状況(駆動本数=2)のもと、タイミングt2において、両水加熱ヒータ24,25をともに駆動する要求(駆動要求)を受けた場合には、電子制御装置41は次の処理を行う。
【0035】
電子制御装置41は、まず上記タイミングt2での駆動要求に応じて、一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を開始する。他方の水加熱ヒータ25に対してはバッテリ電圧の印加を遮断し続ける。上記バッテリ電圧の印加開始からの経過時間を計時し、同印加開始から予め設定されたディレイ時間T1が経過したかどうかを判定する。ディレイ時間T1としては、水加熱ヒータ24の駆動に伴うオルタネータ23を通じた負荷変化の影響を受けてエンジン回転速度が変動した場合に、その変動が許容できるレベルまで小さくなる時間を考慮して設定されることが望ましく、ここでは、数秒程度の値が設定されている。
【0036】
従って、駆動要求を受けた後、ディレイ時間T1が経過するまでの期間(タイミングt2〜t4)は、一方の水加熱ヒータ24のみが駆動され、他方の水加熱ヒータ25が停止される。この期間では、水加熱ヒータ24による電力消費は、2つの水加熱ヒータ24,25をともに駆動する場合の略半分となる。
【0037】
そして、上記ディレイ時間T1が経過したタイミングt4で、上記一方の水加熱ヒータ24に加え、他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加を開始する。この印加により両水加熱ヒータ24,25が駆動される。
【0038】
これに対し、図3に示すように、両水加熱ヒータ24,25が駆動されている状況(駆動本数=2)のもと、例えばタイミングt5において、両水加熱ヒータ24,25をともに停止する要求(停止要求)を受けた場合には、電子制御装置41は次の処理を行う。
【0039】
電子制御装置41は、まず上記タイミングt5での停止要求に応じて、一方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加を遮断する。他方の水加熱ヒータ24に対してはバッテリ電圧の印加を継続する。上記バッテリ電圧の印加遮断からの経過時間を計時し、同印加遮断から予め設定されたディレイ時間T3が経過したかどうかを判定する。ディレイ時間T3としては、水加熱ヒータ25の停止に伴うオルタネータ23を通じた負荷変化の影響を受けてエンジン回転速度が変動した場合に、その変動が許容できるレベルまで小さくなる時間を考慮して設定されることが望ましく、ここでは、数秒程度の値が設定されている。従って、停止要求を受けた後、ディレイ時間T3が経過するまでの期間(タイミングt5〜t6)は、一方の水加熱ヒータ24のみが駆動され、他方の水加熱ヒータ25が停止される。
【0040】
そして、上記ディレイ時間T3が経過したタイミングt6で、上記水加熱ヒータ25に加え、水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を遮断する。この遮断により両水加熱ヒータ24,25が停止される。
【0041】
従って、第1実施形態によれば次の効果が得られる。
(1)消費電力の大きな2つの水加熱ヒータ24,25を同時に駆動/停止する際には、オルタネータ23による発電(充電)動作によりエンジン回転速度の変動が発生しやすい。
【0042】
これに対し、第1実施形態では、ともに停止している2つの水加熱ヒータ24,25を駆動する際には、それらの水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を1つずつ順に、所定のディレイ時間T1を保ちつつ行うようにしている。また、ともに駆動されている2つの水加熱ヒータ24,25を停止する際には、それらの水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加の遮断を1つずつ順に、所定のディレイ時間T3を保ちつつ行うようにしている。
【0043】
このため、一度に大きな電気負荷の駆動が行われずバッテリ消費も一度に大きくならない。結果として、オルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷を分散させ、一度に大きな負荷がエンジン11に加わるのを回避し、エンジン回転速度の変動を抑制することができる。
【0044】
(2)電気負荷のうち、エンジン冷却水を加熱するヒータ(水加熱ヒータ24,25)を、バッテリ電圧の印加/遮断を1つずつ順に所定のディレイ時間T1,T3を保ちつつ行う対象としている。これらの水加熱ヒータ24,25は高発熱体であって他の車載電気負荷に比べて消費電力が大きいため、特に上記(1)について顕著な効果が期待できる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図4を参照して説明する。
第2実施形態が適用されるエンジン11では、電子制御装置41により燃料噴射制御、点火時期制御、オルタネータ23の発電制御等に加え、アイドル回転速度制御が行われる。アイドル回転速度制御は、エンジン11のアイドル時において、エンジン回転速度が、エンジン冷却水温等に基づいて算出された目標回転速度(アイドル目標回転速度)に収束するように、スロットルバルブ19の作動を通じて吸入空気量を調整する制御である。
【0046】
このアイドル回転速度制御に際しては、通常、エンジン回転速度、吸入空気量等のエンジン11の運転状態に応じた基本制御量に対し、フィードバック補正量、電気負荷補正量等の補正量が加算されて制御量が算出され、この制御量に基づきスロットル用アクチュエータ21が駆動制御される。フィードバック補正量は、エンジン回転速度とアイドル目標回転速度との速度差に比例する補正項、同速度差の積分値に比例する補正項、及び同速度差の変化率に比例する補正項からなる。また、電気負荷補正量は、電気負荷の駆動に伴いオルタネータ23が作動してエンジン回転速度が低下する状況下で、その低下を抑制すべく吸入空気量を増量するために用いられる補正量であり、上記オルタネータデューティ比に基づき算出される。そして、上記制御量に基づくスロットル用アクチュエータ21の制御により、スロットルバルブ19が作動してスロットル開度が変化し、吸入空気量が調整される。
【0047】
ここで、電気負荷にバッテリ電圧を印加した場合には、その印加直後にオルタネータ23を通じた負荷がエンジン11に加わる。これに対し、アイドル回転速度制御に際し、上記電気負荷補正量を加味した制御量に基づきスロットル用アクチュエータ21を制御した場合、スロットル開度が変化してから若干遅れて、その変化に応じた量の空気が燃焼室12に到達する。
【0048】
加えて、本実施形態では、上記電気負荷として消費電力の大きな水加熱ヒータ24,25を用いている。そのため、水加熱ヒータ24,25にバッテリ電圧を印加した場合にオルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷は、他の車載電気負荷にバッテリ電圧を印加した場合に比べて大きなものとなる。
【0049】
従って、上記電気負荷補正量を加えた制御量にてスロットル用アクチュエータ21を制御した場合、オルタネータ23を通じた大きな負荷がエンジン11に加わった後に、アイドル回転速度制御による吸入空気量の増量が行われ、結果としてエンジン回転速度が落込むおそれがある。
【0050】
そこで、第2実施形態では、各水加熱ヒータ24,25の駆動に先立ち吸入空気量の増量を行うことで、予めエンジン11の出力を高めた状態にしておき、この状態で各水加熱ヒータ24,25の駆動を行うことにより、エンジン回転速度の落込みを抑制するようにしている。
【0051】
具体的には、電子制御装置41は上記吸入空気量を増量するために、アイドル回転速度制御に際し、スロットル用アクチュエータ21の制御に用いられる制御量に対し、見込み補正量を加算する。ここで、1つの水加熱ヒータ24の駆動のためにバッテリ電圧が印加されると、それに伴ってバッテリ電圧が低下するためオルタネータ23が発電(充電)動作を行うが、そのオルタネータ23の駆動によりエンジン11に大きな負荷が加わって、エンジン回転速度が落込む。一方、エンジン11への吸入空気量を多くすれば、それに応じて燃料の噴射量も増量し、エンジン出力が増大して上記エンジン回転速度の落込みを抑制することが可能である。そこで、上記見込み補正量としては、エンジン回転速度の落込み抑制のために必要な吸入空気量に対応した値が設定される。対応した値とは、上記必要な吸入空気量を確保するために要求されるスロットル開度の開き側への変化量である。
【0052】
なお、オルタネータ23の発電効率を一定とすれば、1つの水加熱ヒータ24(又は25)に規定のバッテリ電圧を印加した場合に、オルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷は一定であるといえる。また、両水加熱ヒータ24,25の駆動に際しては、上述したようにバッテリ電圧の印加が、同水加熱ヒータ24,25について1つずつ順に行われる。そのため、ここでは、見込み補正量を一定値としている。
【0053】
ただし、厳密には、オルタネータ23の発電効率は同オルタネータ23の回転速度(エンジン回転速度)によって異なり、一般には回転速度が低いときには発電効率が低く、回転速度が高くなるに従い発電効率が高くなる傾向にある。発電効率が高くなれば、電気負荷一定とすると、オルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷が小さくなるため、増量する空入空気は少なくてすむ。そこで、オルタネータの回転速度(エンジン回転速度)に応じて見込み補正量を可変としてもよい。
【0054】
上記のようにスロットル用アクチュエータ21の制御量が見込み補正量の加算により多くなるため、この制御量に基づいて同アクチュエータ21が制御されることで、スロットルバルブ19が開き側に作動する。この作動によりスロットルバルブ19を通じて燃焼室12に吸入される空気の量が多くなり、これに伴い燃料噴射量が増量され、エンジン回転速度が上昇する。
【0055】
また、スロットル用アクチュエータ21の制御量に見込み補正量を加算する時期は、各水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加よりも前であることが必要である。本実施形態では、この条件を満たす時期として、両水加熱ヒータ24,25に対する駆動要求を受けた時点と、その駆動要求時から所定時間が経過した時点とを設定している。ここでの所定時間は、第1実施形態におけるディレイ時間T1と同一に設定されている。
【0056】
以上の点を踏まえ、電子制御装置41は、アイドル回転速度制御に際し、例えば図4に示すようにして見込み補正量の反映を行う。両水加熱ヒータ24,25が停止されている状況(駆動本数=0)のもと、タイミングt1において、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求を受けた場合には、上記所定量の見込み補正量をスロットル用アクチュエータ21の制御量に加算する。なお、図4ではタイミングt1以降に見込み補正量を漸減させているが、これは一例に過ぎず適宜変更可能である。
【0057】
上記見込み補正量の加算開始後、所定の時間T2が経過したタイミングt2で、一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を許可する。ここで、時間T2は、前述した吸入空気の遅れ時間(スロットル開度を変化させた場合に、その変化に応じた量の空気が燃焼室12に到達するまでの時間)を考慮して設定されることが望ましい。これは、増量した吸入空気とそれに見合った量の燃料とが燃焼室12で燃焼されてエンジン回転速度が上昇するタイミングを、水加熱ヒータ24へのバッテリ電圧の印加に伴いエンジン回転速度が落込むタイミングに合わせる、あるいは直前にするためである。
【0058】
さらに、上記駆動要求から所定時間(ディレイ時間T1)が経過したタイミングt3で、上記と同様にして所定量の見込み補正量をスロットル用アクチュエータ21の制御量に加算する。上記見込み補正量の加算開始後、上記時間T2が経過したタイミングt4で、他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加を許可する。
【0059】
上記のように見込み補正量が加算された後の制御量に基づいてスロットル用アクチュエータ21が制御されることで、スロットルバルブ19が開き側に駆動されて吸入空気量が増量する。
【0060】
また、水加熱ヒータ24,25の駆動については、上記見込み補正量の反映に際し上記バッテリ電圧の印加が許可されることを条件に、同水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を実行する。その結果、上述した第1実施形態と同様、タイミングt2で一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加が開始され、それからディレイ時間T1が経過したタイミングt4で他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加が開始されることとなる。
【0061】
このように第2実施形態では、タイミングt1での駆動要求に応じて見込み補正量の加算が行われ、それから時間T2が経過したタイミングt2で一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加が開始されて同水加熱ヒータ24が駆動される。また、タイミングt1から上記ディレイ時間T1が経過したタイミングt3で見込み補正量の加算が再び行われ、それから時間T2が経過したタイミングt4で他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加が開始されて、同水加熱ヒータ25が駆動される。
【0062】
従って、第2実施形態によれば、上記(1),(2)に加え、次の効果が得られる。
(3)水加熱ヒータ24,25を1つずつ順に駆動する際に、その駆動に先立ちエンジン11への吸入空気量を増量し、その増量後にバッテリ電圧の印加を行うようにしている。そのため、スロットル開度が変化してから空気増量に伴いエンジン出力が増大するまでに遅れがあるが、上記吸入空気量の増量により予めエンジン出力を高めた状態で水加熱ヒータ24,25を駆動させることができ、エンジン回転速度の落込みをさらに抑制することができる。
【0063】
(4)タイミングt1での駆動要求に応じてまず見込み補正量をアイドル回転速度制御の制御量に加算し、それから時間T2が経過したタイミングt2で水加熱ヒータ24へのバッテリ電圧の印加を開始するようにしている。また、駆動要求から所定時間(ディレイ時間T1)が経過したタイミングt3で、再び見込み補正量をアイドル回転速度制御の制御量に加算し、それから時間T2が経過したタイミングt4で水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を開始するようにしている。そのため、上記(3)における水加熱ヒータ24,25の駆動に先立つ吸入空気量の増量を確実に行うことができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図5を参照して説明する。
第3実施形態では、駆動要求に応じて両水加熱ヒータ24,25にバッテリ電圧が印加される過程で、バッテリ22が充電状態であるか放電状態であるかを判定し、その判定結果に応じて、水加熱ヒータ24,25の駆動本数を増減している。そして、この増減によりバッテリ22の充放電のサイクルが所定回数繰り返されるときには、駆動本数が減少された状態を継続するようにしている。
【0065】
電子制御装置41は、第1実施形態と同様にして、上記駆動要求に応じて水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を1つずつ順に行う。この際、第2実施形態と同様にして、アイドル回転速度制御における見込み補正量の反映により、各水加熱ヒータ24,25の駆動に先立ち吸入空気量を増量し、その増量後にバッテリ電圧を印加してもよい。
【0066】
電子制御装置41は、両水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加の過程で、バッテリの充放電状態を次のようにして判定する。
ここで、オルタネータ23の発電制御においては、前述したようにバッテリ電圧が所定の目標電圧となるように、オルタネータ23のフィールドコイルに対する通電がオルタネータデューティ比にて制御される。オルタネータデューティ比は0〜100%の間で変動し、大きな値となるほどオルタネータ23の発電量が多くなる。オルタネータデューティ比は、オルタネータ23におけるバッテリ22への充電能力を規定するものである。オルタネータデューティ比が、採り得る範囲の最大値(100%)である状態が継続している場合には、最大能力で発電を行っているもののバッテリ電圧が目標電圧を下回っている、すなわちバッテリ22が放電状態にあると考えられる。これに対し、オルタネータデューティ比が上記最大値(100%)未満である場合には、最大能力で発電を行わなくてもバッテリ電圧が目標電圧に収束していることから、バッテリ22が充電状態にあると考えられる。
【0067】
このことを踏まえ、第3実施形態では、実際のオルタネータデューティ比と、そのオルタネータデューティ比が採り得る最大値(100%)とを比較することで、バッテリ22の充放電状態を判定するようにしている。すなわち、オルタネータデューティ比が100%の場合を放電状態とし、100%未満の場合を放電状態としている。
【0068】
電子制御装置41は、例えば図5に示すように、駆動要求に応じた2つの水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加に際し、一方の水加熱ヒータ24のみを駆動させているタイミングt11において、バッテリ22が充電状態にあるかどうかを判定する。充電状態であると判定すると、他方の水加熱ヒータ25を駆動する能力がバッテリ22にあると考えられることから、上記水加熱ヒータ24に加え、水加熱ヒータ25にバッテリ電圧を印加する。この印加により、両水加熱ヒータ24,25が駆動されるが、バッテリ消費が多くなることから、オルタネータデューティ比が増加する。
【0069】
上記増加によりオルタネータデューティ比が100%となってバッテリ22が充電状態から放電状態に転じた場合、この状態が継続するとバッテリ22の充放電収支が釣合わなくなると考えられることから、放電状態の継続時間を計時する。この継続時間が予め設定された値になった場合(タイミングt12)には、一方の水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を遮断して同水加熱ヒータ25を停止させる。この停止により、水加熱ヒータ24,25によるバッテリ消費が略半分となり、オルタネータデューティ比が下がって100%未満となれば、バッテリ22は上記放電状態から充電状態に転ずる。
【0070】
オルタネータデューティ比が100%から100%未満になった後、その状態の継続時間を計時する。この継続時間が予め設定された値になった場合(タイミングt13)には、上記停止した水加熱ヒータ25を駆動する能力がバッテリ22にあると考えられることから、上記水加熱ヒータ24に加え、水加熱ヒータ25に再びバッテリ電圧を印加する。
【0071】
こうした充放電状態に応じたバッテリ電圧の印加/遮断を1サイクルとし、このサイクルの繰り返し回数をカウンタによってカウントする。ここでのカウンタは、水加熱ヒータ24,25の駆動本数が「2」から「1」に切替わり、かつオルタネータデューティ比が「100%」から「100%未満」に減少したときにカウント動作を行う。図5では、タイミングt12,t14,t15でこの条件が満たされ、カウント動作が行われる。
【0072】
そして、例えば、駆動要求から所定の時間内に上記サイクルが繰り返されて、タイミングt15で上記カウンタの値が予め定めた値(例えば「3」)になると、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求に拘らず、他方の水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を停止した状態、すなわち、1つの水加熱ヒータ24のみを駆動する状態を継続する。
【0073】
従って、第3実施形態によれば、上記(1)〜(4)に加え、次の効果が得られる。
(5)バッテリ22が充電状態にあるときに、両水加熱ヒータ24,25にバッテリ電圧を印加することによりバッテリ22が放電状態になった場合には、片方の水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を遮断し、その遮断によりバッテリ22が充電状態に転じたときには再び電圧印加を再開する。このとき、水加熱ヒータ24にバッテリ電圧を印加した状態で、水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加/遮断を繰り返すと、オルタネータ23による充電/停止動作の繰り返しによりエンジン回転速度のハンチングが発生するおそれがある。
【0074】
この点、第3実施形態では、所定の時間内にバッテリ22の充放電サイクルが所定回数(=「3」)繰り返されるときには、水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を停止した状態を継続するようにしている。そのため、上述したハンチングを抑制することができ、またバッテリ22の充電状態を確保することができる。
【0075】
(6)オルタネータ23におけるバッテリ22への充電能力を規定するオルタネータデューティ比が100%であることを放電状態とし、オルタネータデューティ比が100%未満であることを充電状態としている。このようにオルタネータデューティ比と充放電状態とを関連づけることで、オルタネータデューティ比に基づきバッテリ22が充電状態にあるか放電状態にあるかを簡単に判定することができ、上記(5)の効果が確実なものとなる。
【0076】
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
第4実施形態が適用されるエンジン11では、第2実施形態と同様にアイドル回転速度制御が行われる。同制御では、実際のエンジン回転速度が、エンジン冷却水温等に基づいて算出されたアイドル目標回転速度に収束するように、スロットルバルブ19の作動を通じて吸入空気量が調整される。車両10の停止中には、エンジン11はアイドル状態となり、アイドル回転速度制御によりエンジン回転速度はアイドル目標回転速度と同一又はそれに近い値になっていることが多い。
【0077】
ここで、上述したように、オルタネータ23はエンジン11によって駆動されて発電(充電)動作を行ってバッテリ22に充電する。両水加熱ヒータ24,25を駆動するために必要な電力をオルタネータ23で発電させるには、エンジン11はある値(以下、最小駆動回転速度という)以上の速度で回転することが必要である。エンジン11がこの値よりも低い速度で回転すると、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この最小駆動回転速度は比較的低い値(1000rpm程度)である。そのため、バッテリ22における充放電収支を釣り合わせる観点からは、アイドル回転速度制御中であってアイドル目標回転速度(又はエンジン回転速度)が上記最小駆動回転速度未満のときには、両水加熱ヒータ24,25を駆動しないことが望ましい。
【0078】
これに対し、車両10の走行中(車速≠0)には、アイドル目標回転速度が算出されるもののアイドル回転速度制御が行われず、エンジン回転速度は、通常、上記アイドル目標回転速度よりも高くなる。アイドル目標回転速度が上記最小駆動回転速度未満であるからといって、上記車両停止中と同様にして両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を遮断すると、無駄に水加熱ヒータ24,25を停止させることとなる。すなわち、上記最小駆動回転速度よりも十分高いエンジン回転速度でエンジン11が回転していて、両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電することができるにも拘らず、両水加熱ヒータ24,25を停止させてしまう。
【0079】
そこで、第4実施形態では、車両10の停止中でアイドル目標回転速度が所定値A未満のときには両水加熱ヒータ24,25の駆動を禁止する一方、車両10の走行中でエンジン回転速度が所定値A以上であるときにはアイドル目標回転速度とは無関係に両水加熱ヒータ24,25の駆動を許可するようにしている。水加熱ヒータ24,25の駆動の禁止/許可の判定に用いられる所定値Aとしては、上記最小駆動回転速度(1000rpm)、もしくはそれよりも若干高い値が設定される。
【0080】
具体的には、電子制御装置41は、例えば図6において車両10の停止中(車速=0)であって、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求があるとき、アイドル目標回転速度が上記所定値A以上であるかどうかを判定する。図6のタイミングt21よりも前の期間に示すように、この判定条件が満たされていると、電子制御装置41は両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を許可する。
【0081】
これに対し、アイドル目標回転速度が下降し、図6のタイミングt21よりも後の期間に示すように、アイドル目標回転速度が所定値A未満になって上記判定条件が満たされなくなると、電子制御装置41は上記駆動要求に拘らず両水加熱ヒータ24,25の駆動を禁止する。この際、第1実施形態と同様にして、図6に示すように、同水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加遮断を1つずつ順に、所定のディレイ時間T3を保ちつつ行うことが望ましい。
【0082】
一方、図7に示すように、車両10の走行中(車速≠0)であって、上記駆動要求を受けているときには、電子制御装置41はアイドル目標回転速度とは無関係に、エンジン回転速度が上記所定値A以上であるかどうかを判定する。図7におけるタイミングt22よりも前の期間に示すように、この判定条件が満たされていない(エンジン回転速度が所定値A未満)と、両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を禁止する。
【0083】
これに対し、図7におけるタイミングt22よりも後の期間に示すように、エンジン回転速度が所定値A以上であると、電子制御装置41は両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を許可する。この際、第1実施形態と同様にして、図7に示すように、水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を1つずつ順に、所定のディレイ時間T1を保ちつつ行うことが望ましい。
【0084】
従って、第4実施形態によれば、上記(1),(2)に加え、次の効果が得られる。
(7)車両10の停止中アイドル回転速度制御が行われているとき、アイドル目標回転速度(又はエンジン回転速度)が最小駆動回転速度よりも低いと、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この点、第4実施形態では、車両10の停止中であって、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求を受けかつアイドル目標回転速度が、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値A未満であるときには、両水加熱ヒータ24,25の駆動を禁止している。そのため、両水加熱ヒータ24,25の駆動停止により、上記収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0085】
また、車両10の走行中に上記停止中と同様にして、アイドル目標回転速度が所定値未満であることを条件に両水加熱ヒータ24,25の駆動を停止すると、無駄に水加熱ヒータ24,25を停止させるおそれがある。この点、第4実施形態では、車両10の走行中でエンジン回転速度が、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値A以上のときには、アイドル目標回転速度とは無関係に両水加熱ヒータ24,25の駆動を許可するようにしている。そのため、アイドル目標回転速度によらずエンジン回転速度によって両水加熱ヒータ24,25の駆動/停止を決定することとなり、上述した無駄な水加熱ヒータ24,25の停止を抑制し、バッテリ22の充放電収支を確保しつつ、ヒータ性能の向上を図ることができる。
【0086】
(第5実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態について、図8を参照して説明する。
第5実施形態が適用されるエンジン11では、第2及び第4実施形態と同様にアイドル回転速度制御が行われる。同制御では、実際のエンジン回転速度が、エンジン冷却水温等に基づいて算出されたアイドル目標回転速度に収束するように、スロットルバルブ19の作動を通じて吸入空気量が調整される。
【0087】
また、第4実施形態で説明したように、両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力をオルタネータ23で発電させるには、エンジン11は上記最小駆動回転速度以上の速度で回転することが必要である。エンジン11が、この値よりも低い速度で回転すると、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。そのため、バッテリ22の充放電収支を釣り合わせる観点からは、両水加熱ヒータ24,25を駆動する際には、アイドル目標回転速度として、上記最小駆動回転速度よりも小さな値が設定されないようにすることが望ましい。
【0088】
そこで、第5実施形態では、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、アイドル目標回転速度と所定値Aとを比較する。そして、例えば図8のタイミングt31よりも前の期間に示すように、アイドル目標回転速度が所定値A以上であると、そのアイドル目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定する。最終的なアイドル目標回転速度とは、アイドル回転速度制御の実行に際し、エンジン回転速度を収束させる目標値として実際に用いられる値である。また、図8のタイミングt31〜t33の期間に示すように、アイドル目標回転速度が所定値A未満であると、その所定値Aを最終的なアイドル目標回転速度として設定する。この処理(ガード処理)により、水加熱ヒータ24,25の駆動中にはアイドル目標回転速度が所定値Aよりも低くならなくなる。
【0089】
そして、両水加熱ヒータ24,25が少なくとも停止されることを条件に上記ガード処理を終了する。ここでは、両水加熱ヒータ24,25がタイミングt32で停止され、それから所定のディレイ時間T4が経過したタイミングt33でアイドル回転速度のガード処理を終了するようにしている。この終了により、タイミングt33以降は、上述したタイミングt31よりも前の期間と同様にして、エンジン冷却水等に応じて算出されるアイドル目標回転速度が、最終的なアイドル目標回転速度として設定されることとなる。
【0090】
従って、第5実施形態によれば、上記(2)に加え、次の効果が得られる。
(8)両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、エンジン回転速度が最小駆動回転速度よりも低くなると、オルタネータ23によっては両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この点、第5実施形態では、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときにアイドル目標回転速度にガードをかけ、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値Aよりも低くならないようにしている。そのため、上記バッテリ22の充放電収支が釣り合わなくなる現象を抑制することができる。
【0091】
(第6実施形態)
次に、本発明を具体化した第6実施形態について、図9を参照して説明する。
第6実施形態が適用されるエンジン11では、燃料噴射制御に際し、車両10(エンジン11)の減速時における燃費向上、排気浄化等を目的として燃料噴射を停止する、いわゆる減速時燃料カットが行われる。この減速時燃料カットでは、減速時であってエンジン回転速度が燃料カット回転速度以上のときに燃料噴射が停止される。また、上記燃料の噴射停止によりエンジン回転速度が燃料カット復帰回転速度まで低下すると燃料噴射が復帰される。これらの燃料カット回転速度及び燃料カット復帰回転速度は、ともにエンジン冷却水温等に基づき算出されるものであり、燃料カット復帰回転速度は燃料カット回転速度よりも低い値に設定される。両回転速度は、一般的には、エンジン冷却水温が低いときには高いときよりも高い値に設定される。
【0092】
また、第4実施形態で説明したように、両水加熱ヒータ24,25を駆動するために必要な電力をオルタネータ23で発電させるには、エンジン11が最小駆動回転速度以上の速度で回転することが必要である。エンジンが所定値Aよりも低い速度で回転すると、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。そのため、バッテリ22における充放電収支を釣り合わせる観点からは、両水加熱ヒータ24,25を駆動する際には、燃料カット復帰回転速度として、上記所定値Aよりも低い値が設定されないようにすることが望ましい。
【0093】
そこで、第6実施形態では、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、燃料カット復帰回転速度と所定値Aとを比較する。そして、例えば図9のタイミングt41よりも前の期間に示すように、燃料カット復帰回転速度が所定値A以上であると、その燃料カット復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定する。最終的な燃料カット復帰回転速度とは、停止されている燃料噴射を再開する際の判定に実際に用いられる値である。また、図9のタイミングt41〜t43の期間に示すように、燃料カット復帰回転速度が所定値A未満であると、その所定値Aを最終的な燃料カット復帰回転速度として設定する。この処理(ガード処理)により、水加熱ヒータ24,25の駆動中には燃料カット復帰回転速度が所定値Aよりも低くならなくなる。
【0094】
そして、両水加熱ヒータ24,25が少なくとも停止されることを条件に上記ガード処理を終了する。ここでは、両水加熱ヒータ24,25がタイミングt42で停止され、それから所定のディレイ時間T5が経過したタイミングt43で燃料カット復帰回転速度のガード処理を終了するようにしている。この終了により、タイミングt43以降は、上述したタイミングt41よりも前の期間と同様にして、エンジン冷却水温等に応じて算出される燃料カット復帰回転速度が、最終的な燃料カット復帰回転速度として設定されることとなる。
【0095】
従って、第6実施形態によれば、上記(2)に加え、次の効果が得られる。
(9)減速時燃料カット中、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、燃料カット復帰回転速度が最小駆動回転速度よりも低くなると、オルタネータによっては両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この点、第6実施形態では、減速時燃料カット中、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに燃料カット復帰回転速度にガードをかけ、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値Aよりも低くならないようにしている。そのため、上記バッテリ22の充放電収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0096】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・本発明は、スロットルバルブを迂回するバイパス通路を吸気通路13に接続し、そのバイパス通路の途中にISC(アイドルスピードコントロール)バルブを設けてアイドル時の吸入空気量を調整するようにしたエンジンにも適用可能である。
【0097】
・本発明は水加熱ヒータを3つ以上備えた車両や、水加熱ヒータ以外の消費電力の大きな発電負荷を複数備えた車両にも適用可能である。
・第5実施形態において、アイドル目標回転速度にガードをかけ所定値Aよりも低くならないようにする際に、両水加熱ヒータ24,25を強制的に停止させるようにしてもよい。
【0098】
・第6実施形態において、燃料カット復帰回転速度にガードをかけ所定値Aよりも低くならないようにする際に、両水加熱ヒータ24,25を強制的に停止させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10…車両、11…エンジン、22…バッテリ、23…オルタネータ、24,25…水加熱ヒータ(電気負荷)、41…電子制御装置、T1,T3…ディレイ時間。
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両にはヘッドランプ、スモールランプ等をはじめとする各種電気負荷が装備されており、それらの電気負荷はバッテリ電圧の供給にて駆動される。しかしながら、バッテリに蓄えられる電気容量は有限であり、使用に伴い残存容量が減少しバッテリ電圧が低下してゆく。そこで、車両にはバッテリの充電を行う手段としてオルタネータが備えられている。オルタネータは、エンジンによって駆動されて発電を行いバッテリに充電する。
【0003】
ここで、従来より、バッテリ電圧を所定の値に維持するように、オルタネータの発電を制御することが行われている。また、電気負荷が大きくなる場合には、オルタネータに流す界磁電流を大きくしてバッテリに充電する技術が、例えば、特許文献1及び2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2643601号公報
【特許文献2】特開平7−23599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年では燃費の向上等を目的として発熱量の少ないエンジンが開発されている。このエンジンでは、ヒータ性能を確保するために、エンジン冷却水を加熱する手段として水加熱ヒータと呼ばれるヒータを採用している。
【0006】
ところが、この水加熱ヒータは大きな電気負荷であるため、消費電力が一層大きくなる。そのため、上述した特許文献1及び2によるように、オルタネータに流す界磁電流を大きくしてバッテリを充電する方法では、充放電収支を確保したり、エンジン回転速度を変動させないようにすることについての課題が残る。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、電気負荷を複数備えた車両において、充放電収支が釣り合わない、エンジン回転速度が変動するといった不具合を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段を以下に記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、アイドル目標回転速度が所定値を下回らないようにガードすることを要旨とする。
【0009】
上記請求項に記載の発明では、複数の電気負荷が駆動されているときにアイドル目標回転速度が所定値未満となる状況下では、そのアイドル目標回転速度にガードがかけられる。この処理(ガード処理)により、複数の電気負荷が駆動されているときにアイドル目標回転速度が所定値よりも低くなることがなくなる。その結果、複数の電気負荷を駆動するために必要な電力をオルタネータにて発電させ、上記バッテリの充放電収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0010】
(2)請求項2に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい値を所定値として、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、エンジン回転速度が前記所定値に収束するように制御することを要旨とする。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Aとし、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Bとして、前記目標回転速度Bを前記目標回転速度Aよりも大きくすることを要旨とする。
【0012】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定し、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記アイドル目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定することを要旨とする。
【0013】
(5)請求項5に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、燃料カット復帰回転速度が所定値を下回らないようにガードすることを要旨とする。
【0014】
上記請求項に記載の発明では、複数の電気負荷が駆動されているときに燃料カット復帰回転速度が所定値未満となる状況下では、その燃料カット復帰回転速度にガードがかけられる。このガードにより、複数の電気負荷が駆動されているときに燃料カット復帰回転速度が所定値よりも低くなることがなくなる。その結果、複数の電気負荷を駆動するために必要な電力をオルタネータにて発電させ、上記バッテリの充放電収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0015】
(6)請求項6に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい値を所定値として、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、かつエンジン回転速度が前記所定値を下回るとき、燃料噴射を再開することを要旨とする。
【0016】
(7)請求項7に記載の発明は、エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Aとし、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Bとして、前記復帰回転速度Bを前記復帰回転速度Aよりも大きくすることを要旨とする。
【0017】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定し、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記燃料カット復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定することを要旨とする。
【0018】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記複数の電気負荷としてエンジン冷却水を加熱する複数のヒータを備えることを要旨とする。
【0019】
上記請求項に記載の発明によるように、電気負荷としてエンジン冷却水を加熱するヒータが用いられる場合には、例えば高発熱体が使用されることとなり、同請求項が引用する請求項に記載の発明について、特に顕著な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態についてその構成を示す略図。
【図2】第1実施形態において、両水加熱ヒータを駆動する場合の作用を説明するタイムチャート。
【図3】第1実施形態において、両水加熱ヒータを停止する場合の作用を説明するタイムチャート。
【図4】本発明を具体化した第2実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【図5】本発明を具体化した第3実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【図6】本発明を具体化した第4実施形態において、車両停止中の作用を説明するタイムチャート。
【図7】第4実施形態において、車両走行中の作用を説明するタイムチャート。
【図8】本発明を具体化した第5実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【図9】本発明を具体化した第6実施形態の作用を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、車両10には、動力源としてガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。このエンジン11においては、各燃焼室12に対し吸気通路13を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁14から燃料が噴射供給される。この燃料と空気の混合気に対し点火プラグ15による点火が行われると、その混合気が燃焼してピストン16が往復動し、エンジン11の出力軸であるクランクシャフト17が回転されて、エンジン11の駆動力(トルク)が得られる。そして、混合気の燃焼により生じた排気は燃焼室12から排気通路18へ排出される。
【0022】
エンジン11の出力調整は、吸気通路13に設けられたスロットルバルブ19をモータ等のスロットル用アクチュエータ21によって駆動して、そのスロットルバルブ19の開度(スロットル開度)を調節することによって実現される。すなわち、スロットル開度の調整により、エンジン11への吸入空気量が変化し、その変化に対応して燃料噴射量が制御され、燃焼室12に充填される混合気の量が変化してエンジン11の出力が調整される。なお、スロットル開度は、運転者によって操作されるアクセルペダル(図示略)の踏込み量に応じてスロットル用アクチュエータ21を駆動することにより調整される。
【0023】
車両10には、各種電気負荷に電力を供給するためのバッテリ22及びオルタネータ23が設けられている。オルタネータ23はプーリ、伝動ベルト等を介してエンジン11のクランクシャフト17に駆動連結されており、エンジン11の作動にともない回転して発電を行う。オルタネータ23で発電された電力は、各種電気負荷及びバッテリ22に供給される。
【0024】
電気負荷としては、ヘッドランプ、スモールランプ等の消費電力の比較的少なく既存の電気負荷に加え、エンジン冷却水を加熱するヒータ(以下、水加熱ヒータ24,25という)が用いられている。水加熱ヒータ24,25は、燃費向上等を目的として発熱量を少なくしたエンジン11が搭載された車両10において、暖房装置(ヒータ)のヒータ性能を上げるべく用いられている。本実施形態における水加熱ヒータ24,25はPTCヒータからなり、エンジン冷却水の流れるヒータ配管の近傍に複数(2つ)取付けられており、バッテリ電圧の印加により発熱してエンジン冷却水を加熱する。
【0025】
オルタネータ23は、三相の捲線を有するステータコイルと、ステータコイルの内側に位置するフィールドコイル(界磁コイル)とからなる三相交流発電機を備えている。オルタネータ23は、フィールドコイルを通電状態で回転させることにより、ステータコイルに誘起電力を発生させ、誘起電流(三相交流電流)を整流器により直流電流に変換してバッテリ22に充電する。また、オルタネータ23は電圧レギュレータを備えており、この電圧レギュレータによってフィールドコイルに流れる界磁電流を制御し、ステータコイルに発生する誘起電力を調整して発電量を制御する。
【0026】
さらに、車両10には、その各部の状態を検出するセンサが種々取付けられている。これらのセンサとしては、例えばクランク角センサ31、アクセルセンサ32、スロットルセンサ33、吸気圧センサ34、水温センサ35等が用いられている。
【0027】
クランク角センサ31はクランクシャフト17の回転に対応した信号を出力する。この信号は、クランクシャフト17の回転角度(クランク角)やエンジン回転速度の算出に用いられる。アクセルセンサ32は運転者によるアクセルペダルの踏込み量(アクセル踏込み量)を検出し、スロットルセンサ33はスロットル開度を検出する。また、吸気圧センサ34は吸気通路13における吸入空気の圧力である吸気圧を検出し、水温センサ35はエンジン冷却水温を検出する。
【0028】
車両10には、前記各種信号に基づいて、エンジン11を含む車両各部を制御する電子制御装置41が設けられている。電子制御装置41はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0029】
電子制御装置41は、エンジン11の燃料噴射制御、点火時期制御等に加え、オルタネータ23の発電制御を実行する。電子制御装置41は、例えば燃料噴射制御に際し、エンジン負荷、エンジン回転速度等に基づき目標噴射量を算出し、この目標噴射量に対応した量の燃料が噴射されるよう燃料噴射弁14に対する通電を制御する。エンジン負荷は、例えばエンジン11の吸入空気量に関係するパラメータ、例えばスロットルセンサ33によるスロットル開度、アクセルセンサ32によるアクセル踏込み量、吸気圧センサ34による吸気圧等に基づき求められる。
【0030】
また、電子制御装置41は点火時期制御に際し、吸気圧、エンジン回転速度等のエンジン11の運転状態に基づき目標点火時期を算出し、この時期にイグナイタを制御することにより点火プラグ15を作動させる。そして、前記混合気は点火プラグ15の点火に伴う火花放電によって着火されて燃焼する。
【0031】
さらに、オルタネータ23の発電制御では、電子制御装置41は電気負荷の駆動に伴う電力消費によりバッテリ電圧が低下した場合に、そのバッテリ電圧が所定の目標電圧となるようにオルタネータ23の発電量を制御する。この制御に際し、電子制御装置41は電気負荷の大きさに応じ、オルタネータ23のフィールドコイルに対する通電をデューティ比(オルタネータデューティ比)にて制御する、いわゆるデューティ制御を行う。デューティ比は、通電(オン)及び非通電(オフ)からなる1サイクル(時間)における通電時間の割合である。
【0032】
ところで、上記水加熱ヒータ24,25は大きな電気負荷であるため、こうした水加熱ヒータ24,25が設けられていない場合に比べて消費電力が一層大きくなる。そのため、停止状態の複数(2つ)の水加熱ヒータ24,25を同時に駆動しようとすると、オルタネータ23の発電量を多くすべくオルタネータデューティ比が大きくなる。これに伴いオルタネータ23を回転駆動させるトルクが急増し、エンジン回転速度が大きく変動(下降)する。また、駆動状態の両水加熱ヒータ24,25を同時に停止しようとすると、オルタネータ23による発電量を少なくすべくオルタネータデューティ比が小さくなる。これに伴いオルタネータ23を回転駆動させるためのトルクが急減し、エンジン回転速度が大きく変化(上昇)する。
【0033】
そこで、本実施形態では、電子制御装置41は両水加熱ヒータ24,25を駆動/停止する際に、同水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加/遮断を1つずつ順に、所定のディレイ時間を保ちつつ行うことで上記不具合に対処するようにしている。
【0034】
例えば、図2に示すように、両水加熱ヒータ24,25が停止されている状況(駆動本数=2)のもと、タイミングt2において、両水加熱ヒータ24,25をともに駆動する要求(駆動要求)を受けた場合には、電子制御装置41は次の処理を行う。
【0035】
電子制御装置41は、まず上記タイミングt2での駆動要求に応じて、一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を開始する。他方の水加熱ヒータ25に対してはバッテリ電圧の印加を遮断し続ける。上記バッテリ電圧の印加開始からの経過時間を計時し、同印加開始から予め設定されたディレイ時間T1が経過したかどうかを判定する。ディレイ時間T1としては、水加熱ヒータ24の駆動に伴うオルタネータ23を通じた負荷変化の影響を受けてエンジン回転速度が変動した場合に、その変動が許容できるレベルまで小さくなる時間を考慮して設定されることが望ましく、ここでは、数秒程度の値が設定されている。
【0036】
従って、駆動要求を受けた後、ディレイ時間T1が経過するまでの期間(タイミングt2〜t4)は、一方の水加熱ヒータ24のみが駆動され、他方の水加熱ヒータ25が停止される。この期間では、水加熱ヒータ24による電力消費は、2つの水加熱ヒータ24,25をともに駆動する場合の略半分となる。
【0037】
そして、上記ディレイ時間T1が経過したタイミングt4で、上記一方の水加熱ヒータ24に加え、他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加を開始する。この印加により両水加熱ヒータ24,25が駆動される。
【0038】
これに対し、図3に示すように、両水加熱ヒータ24,25が駆動されている状況(駆動本数=2)のもと、例えばタイミングt5において、両水加熱ヒータ24,25をともに停止する要求(停止要求)を受けた場合には、電子制御装置41は次の処理を行う。
【0039】
電子制御装置41は、まず上記タイミングt5での停止要求に応じて、一方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加を遮断する。他方の水加熱ヒータ24に対してはバッテリ電圧の印加を継続する。上記バッテリ電圧の印加遮断からの経過時間を計時し、同印加遮断から予め設定されたディレイ時間T3が経過したかどうかを判定する。ディレイ時間T3としては、水加熱ヒータ25の停止に伴うオルタネータ23を通じた負荷変化の影響を受けてエンジン回転速度が変動した場合に、その変動が許容できるレベルまで小さくなる時間を考慮して設定されることが望ましく、ここでは、数秒程度の値が設定されている。従って、停止要求を受けた後、ディレイ時間T3が経過するまでの期間(タイミングt5〜t6)は、一方の水加熱ヒータ24のみが駆動され、他方の水加熱ヒータ25が停止される。
【0040】
そして、上記ディレイ時間T3が経過したタイミングt6で、上記水加熱ヒータ25に加え、水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を遮断する。この遮断により両水加熱ヒータ24,25が停止される。
【0041】
従って、第1実施形態によれば次の効果が得られる。
(1)消費電力の大きな2つの水加熱ヒータ24,25を同時に駆動/停止する際には、オルタネータ23による発電(充電)動作によりエンジン回転速度の変動が発生しやすい。
【0042】
これに対し、第1実施形態では、ともに停止している2つの水加熱ヒータ24,25を駆動する際には、それらの水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を1つずつ順に、所定のディレイ時間T1を保ちつつ行うようにしている。また、ともに駆動されている2つの水加熱ヒータ24,25を停止する際には、それらの水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加の遮断を1つずつ順に、所定のディレイ時間T3を保ちつつ行うようにしている。
【0043】
このため、一度に大きな電気負荷の駆動が行われずバッテリ消費も一度に大きくならない。結果として、オルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷を分散させ、一度に大きな負荷がエンジン11に加わるのを回避し、エンジン回転速度の変動を抑制することができる。
【0044】
(2)電気負荷のうち、エンジン冷却水を加熱するヒータ(水加熱ヒータ24,25)を、バッテリ電圧の印加/遮断を1つずつ順に所定のディレイ時間T1,T3を保ちつつ行う対象としている。これらの水加熱ヒータ24,25は高発熱体であって他の車載電気負荷に比べて消費電力が大きいため、特に上記(1)について顕著な効果が期待できる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図4を参照して説明する。
第2実施形態が適用されるエンジン11では、電子制御装置41により燃料噴射制御、点火時期制御、オルタネータ23の発電制御等に加え、アイドル回転速度制御が行われる。アイドル回転速度制御は、エンジン11のアイドル時において、エンジン回転速度が、エンジン冷却水温等に基づいて算出された目標回転速度(アイドル目標回転速度)に収束するように、スロットルバルブ19の作動を通じて吸入空気量を調整する制御である。
【0046】
このアイドル回転速度制御に際しては、通常、エンジン回転速度、吸入空気量等のエンジン11の運転状態に応じた基本制御量に対し、フィードバック補正量、電気負荷補正量等の補正量が加算されて制御量が算出され、この制御量に基づきスロットル用アクチュエータ21が駆動制御される。フィードバック補正量は、エンジン回転速度とアイドル目標回転速度との速度差に比例する補正項、同速度差の積分値に比例する補正項、及び同速度差の変化率に比例する補正項からなる。また、電気負荷補正量は、電気負荷の駆動に伴いオルタネータ23が作動してエンジン回転速度が低下する状況下で、その低下を抑制すべく吸入空気量を増量するために用いられる補正量であり、上記オルタネータデューティ比に基づき算出される。そして、上記制御量に基づくスロットル用アクチュエータ21の制御により、スロットルバルブ19が作動してスロットル開度が変化し、吸入空気量が調整される。
【0047】
ここで、電気負荷にバッテリ電圧を印加した場合には、その印加直後にオルタネータ23を通じた負荷がエンジン11に加わる。これに対し、アイドル回転速度制御に際し、上記電気負荷補正量を加味した制御量に基づきスロットル用アクチュエータ21を制御した場合、スロットル開度が変化してから若干遅れて、その変化に応じた量の空気が燃焼室12に到達する。
【0048】
加えて、本実施形態では、上記電気負荷として消費電力の大きな水加熱ヒータ24,25を用いている。そのため、水加熱ヒータ24,25にバッテリ電圧を印加した場合にオルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷は、他の車載電気負荷にバッテリ電圧を印加した場合に比べて大きなものとなる。
【0049】
従って、上記電気負荷補正量を加えた制御量にてスロットル用アクチュエータ21を制御した場合、オルタネータ23を通じた大きな負荷がエンジン11に加わった後に、アイドル回転速度制御による吸入空気量の増量が行われ、結果としてエンジン回転速度が落込むおそれがある。
【0050】
そこで、第2実施形態では、各水加熱ヒータ24,25の駆動に先立ち吸入空気量の増量を行うことで、予めエンジン11の出力を高めた状態にしておき、この状態で各水加熱ヒータ24,25の駆動を行うことにより、エンジン回転速度の落込みを抑制するようにしている。
【0051】
具体的には、電子制御装置41は上記吸入空気量を増量するために、アイドル回転速度制御に際し、スロットル用アクチュエータ21の制御に用いられる制御量に対し、見込み補正量を加算する。ここで、1つの水加熱ヒータ24の駆動のためにバッテリ電圧が印加されると、それに伴ってバッテリ電圧が低下するためオルタネータ23が発電(充電)動作を行うが、そのオルタネータ23の駆動によりエンジン11に大きな負荷が加わって、エンジン回転速度が落込む。一方、エンジン11への吸入空気量を多くすれば、それに応じて燃料の噴射量も増量し、エンジン出力が増大して上記エンジン回転速度の落込みを抑制することが可能である。そこで、上記見込み補正量としては、エンジン回転速度の落込み抑制のために必要な吸入空気量に対応した値が設定される。対応した値とは、上記必要な吸入空気量を確保するために要求されるスロットル開度の開き側への変化量である。
【0052】
なお、オルタネータ23の発電効率を一定とすれば、1つの水加熱ヒータ24(又は25)に規定のバッテリ電圧を印加した場合に、オルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷は一定であるといえる。また、両水加熱ヒータ24,25の駆動に際しては、上述したようにバッテリ電圧の印加が、同水加熱ヒータ24,25について1つずつ順に行われる。そのため、ここでは、見込み補正量を一定値としている。
【0053】
ただし、厳密には、オルタネータ23の発電効率は同オルタネータ23の回転速度(エンジン回転速度)によって異なり、一般には回転速度が低いときには発電効率が低く、回転速度が高くなるに従い発電効率が高くなる傾向にある。発電効率が高くなれば、電気負荷一定とすると、オルタネータ23を通じてエンジン11に加わる負荷が小さくなるため、増量する空入空気は少なくてすむ。そこで、オルタネータの回転速度(エンジン回転速度)に応じて見込み補正量を可変としてもよい。
【0054】
上記のようにスロットル用アクチュエータ21の制御量が見込み補正量の加算により多くなるため、この制御量に基づいて同アクチュエータ21が制御されることで、スロットルバルブ19が開き側に作動する。この作動によりスロットルバルブ19を通じて燃焼室12に吸入される空気の量が多くなり、これに伴い燃料噴射量が増量され、エンジン回転速度が上昇する。
【0055】
また、スロットル用アクチュエータ21の制御量に見込み補正量を加算する時期は、各水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加よりも前であることが必要である。本実施形態では、この条件を満たす時期として、両水加熱ヒータ24,25に対する駆動要求を受けた時点と、その駆動要求時から所定時間が経過した時点とを設定している。ここでの所定時間は、第1実施形態におけるディレイ時間T1と同一に設定されている。
【0056】
以上の点を踏まえ、電子制御装置41は、アイドル回転速度制御に際し、例えば図4に示すようにして見込み補正量の反映を行う。両水加熱ヒータ24,25が停止されている状況(駆動本数=0)のもと、タイミングt1において、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求を受けた場合には、上記所定量の見込み補正量をスロットル用アクチュエータ21の制御量に加算する。なお、図4ではタイミングt1以降に見込み補正量を漸減させているが、これは一例に過ぎず適宜変更可能である。
【0057】
上記見込み補正量の加算開始後、所定の時間T2が経過したタイミングt2で、一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を許可する。ここで、時間T2は、前述した吸入空気の遅れ時間(スロットル開度を変化させた場合に、その変化に応じた量の空気が燃焼室12に到達するまでの時間)を考慮して設定されることが望ましい。これは、増量した吸入空気とそれに見合った量の燃料とが燃焼室12で燃焼されてエンジン回転速度が上昇するタイミングを、水加熱ヒータ24へのバッテリ電圧の印加に伴いエンジン回転速度が落込むタイミングに合わせる、あるいは直前にするためである。
【0058】
さらに、上記駆動要求から所定時間(ディレイ時間T1)が経過したタイミングt3で、上記と同様にして所定量の見込み補正量をスロットル用アクチュエータ21の制御量に加算する。上記見込み補正量の加算開始後、上記時間T2が経過したタイミングt4で、他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加を許可する。
【0059】
上記のように見込み補正量が加算された後の制御量に基づいてスロットル用アクチュエータ21が制御されることで、スロットルバルブ19が開き側に駆動されて吸入空気量が増量する。
【0060】
また、水加熱ヒータ24,25の駆動については、上記見込み補正量の反映に際し上記バッテリ電圧の印加が許可されることを条件に、同水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を実行する。その結果、上述した第1実施形態と同様、タイミングt2で一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加が開始され、それからディレイ時間T1が経過したタイミングt4で他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加が開始されることとなる。
【0061】
このように第2実施形態では、タイミングt1での駆動要求に応じて見込み補正量の加算が行われ、それから時間T2が経過したタイミングt2で一方の水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加が開始されて同水加熱ヒータ24が駆動される。また、タイミングt1から上記ディレイ時間T1が経過したタイミングt3で見込み補正量の加算が再び行われ、それから時間T2が経過したタイミングt4で他方の水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加が開始されて、同水加熱ヒータ25が駆動される。
【0062】
従って、第2実施形態によれば、上記(1),(2)に加え、次の効果が得られる。
(3)水加熱ヒータ24,25を1つずつ順に駆動する際に、その駆動に先立ちエンジン11への吸入空気量を増量し、その増量後にバッテリ電圧の印加を行うようにしている。そのため、スロットル開度が変化してから空気増量に伴いエンジン出力が増大するまでに遅れがあるが、上記吸入空気量の増量により予めエンジン出力を高めた状態で水加熱ヒータ24,25を駆動させることができ、エンジン回転速度の落込みをさらに抑制することができる。
【0063】
(4)タイミングt1での駆動要求に応じてまず見込み補正量をアイドル回転速度制御の制御量に加算し、それから時間T2が経過したタイミングt2で水加熱ヒータ24へのバッテリ電圧の印加を開始するようにしている。また、駆動要求から所定時間(ディレイ時間T1)が経過したタイミングt3で、再び見込み補正量をアイドル回転速度制御の制御量に加算し、それから時間T2が経過したタイミングt4で水加熱ヒータ24に対するバッテリ電圧の印加を開始するようにしている。そのため、上記(3)における水加熱ヒータ24,25の駆動に先立つ吸入空気量の増量を確実に行うことができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図5を参照して説明する。
第3実施形態では、駆動要求に応じて両水加熱ヒータ24,25にバッテリ電圧が印加される過程で、バッテリ22が充電状態であるか放電状態であるかを判定し、その判定結果に応じて、水加熱ヒータ24,25の駆動本数を増減している。そして、この増減によりバッテリ22の充放電のサイクルが所定回数繰り返されるときには、駆動本数が減少された状態を継続するようにしている。
【0065】
電子制御装置41は、第1実施形態と同様にして、上記駆動要求に応じて水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を1つずつ順に行う。この際、第2実施形態と同様にして、アイドル回転速度制御における見込み補正量の反映により、各水加熱ヒータ24,25の駆動に先立ち吸入空気量を増量し、その増量後にバッテリ電圧を印加してもよい。
【0066】
電子制御装置41は、両水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加の過程で、バッテリの充放電状態を次のようにして判定する。
ここで、オルタネータ23の発電制御においては、前述したようにバッテリ電圧が所定の目標電圧となるように、オルタネータ23のフィールドコイルに対する通電がオルタネータデューティ比にて制御される。オルタネータデューティ比は0〜100%の間で変動し、大きな値となるほどオルタネータ23の発電量が多くなる。オルタネータデューティ比は、オルタネータ23におけるバッテリ22への充電能力を規定するものである。オルタネータデューティ比が、採り得る範囲の最大値(100%)である状態が継続している場合には、最大能力で発電を行っているもののバッテリ電圧が目標電圧を下回っている、すなわちバッテリ22が放電状態にあると考えられる。これに対し、オルタネータデューティ比が上記最大値(100%)未満である場合には、最大能力で発電を行わなくてもバッテリ電圧が目標電圧に収束していることから、バッテリ22が充電状態にあると考えられる。
【0067】
このことを踏まえ、第3実施形態では、実際のオルタネータデューティ比と、そのオルタネータデューティ比が採り得る最大値(100%)とを比較することで、バッテリ22の充放電状態を判定するようにしている。すなわち、オルタネータデューティ比が100%の場合を放電状態とし、100%未満の場合を放電状態としている。
【0068】
電子制御装置41は、例えば図5に示すように、駆動要求に応じた2つの水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加に際し、一方の水加熱ヒータ24のみを駆動させているタイミングt11において、バッテリ22が充電状態にあるかどうかを判定する。充電状態であると判定すると、他方の水加熱ヒータ25を駆動する能力がバッテリ22にあると考えられることから、上記水加熱ヒータ24に加え、水加熱ヒータ25にバッテリ電圧を印加する。この印加により、両水加熱ヒータ24,25が駆動されるが、バッテリ消費が多くなることから、オルタネータデューティ比が増加する。
【0069】
上記増加によりオルタネータデューティ比が100%となってバッテリ22が充電状態から放電状態に転じた場合、この状態が継続するとバッテリ22の充放電収支が釣合わなくなると考えられることから、放電状態の継続時間を計時する。この継続時間が予め設定された値になった場合(タイミングt12)には、一方の水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を遮断して同水加熱ヒータ25を停止させる。この停止により、水加熱ヒータ24,25によるバッテリ消費が略半分となり、オルタネータデューティ比が下がって100%未満となれば、バッテリ22は上記放電状態から充電状態に転ずる。
【0070】
オルタネータデューティ比が100%から100%未満になった後、その状態の継続時間を計時する。この継続時間が予め設定された値になった場合(タイミングt13)には、上記停止した水加熱ヒータ25を駆動する能力がバッテリ22にあると考えられることから、上記水加熱ヒータ24に加え、水加熱ヒータ25に再びバッテリ電圧を印加する。
【0071】
こうした充放電状態に応じたバッテリ電圧の印加/遮断を1サイクルとし、このサイクルの繰り返し回数をカウンタによってカウントする。ここでのカウンタは、水加熱ヒータ24,25の駆動本数が「2」から「1」に切替わり、かつオルタネータデューティ比が「100%」から「100%未満」に減少したときにカウント動作を行う。図5では、タイミングt12,t14,t15でこの条件が満たされ、カウント動作が行われる。
【0072】
そして、例えば、駆動要求から所定の時間内に上記サイクルが繰り返されて、タイミングt15で上記カウンタの値が予め定めた値(例えば「3」)になると、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求に拘らず、他方の水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を停止した状態、すなわち、1つの水加熱ヒータ24のみを駆動する状態を継続する。
【0073】
従って、第3実施形態によれば、上記(1)〜(4)に加え、次の効果が得られる。
(5)バッテリ22が充電状態にあるときに、両水加熱ヒータ24,25にバッテリ電圧を印加することによりバッテリ22が放電状態になった場合には、片方の水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を遮断し、その遮断によりバッテリ22が充電状態に転じたときには再び電圧印加を再開する。このとき、水加熱ヒータ24にバッテリ電圧を印加した状態で、水加熱ヒータ25に対するバッテリ電圧の印加/遮断を繰り返すと、オルタネータ23による充電/停止動作の繰り返しによりエンジン回転速度のハンチングが発生するおそれがある。
【0074】
この点、第3実施形態では、所定の時間内にバッテリ22の充放電サイクルが所定回数(=「3」)繰り返されるときには、水加熱ヒータ25へのバッテリ電圧の印加を停止した状態を継続するようにしている。そのため、上述したハンチングを抑制することができ、またバッテリ22の充電状態を確保することができる。
【0075】
(6)オルタネータ23におけるバッテリ22への充電能力を規定するオルタネータデューティ比が100%であることを放電状態とし、オルタネータデューティ比が100%未満であることを充電状態としている。このようにオルタネータデューティ比と充放電状態とを関連づけることで、オルタネータデューティ比に基づきバッテリ22が充電状態にあるか放電状態にあるかを簡単に判定することができ、上記(5)の効果が確実なものとなる。
【0076】
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
第4実施形態が適用されるエンジン11では、第2実施形態と同様にアイドル回転速度制御が行われる。同制御では、実際のエンジン回転速度が、エンジン冷却水温等に基づいて算出されたアイドル目標回転速度に収束するように、スロットルバルブ19の作動を通じて吸入空気量が調整される。車両10の停止中には、エンジン11はアイドル状態となり、アイドル回転速度制御によりエンジン回転速度はアイドル目標回転速度と同一又はそれに近い値になっていることが多い。
【0077】
ここで、上述したように、オルタネータ23はエンジン11によって駆動されて発電(充電)動作を行ってバッテリ22に充電する。両水加熱ヒータ24,25を駆動するために必要な電力をオルタネータ23で発電させるには、エンジン11はある値(以下、最小駆動回転速度という)以上の速度で回転することが必要である。エンジン11がこの値よりも低い速度で回転すると、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この最小駆動回転速度は比較的低い値(1000rpm程度)である。そのため、バッテリ22における充放電収支を釣り合わせる観点からは、アイドル回転速度制御中であってアイドル目標回転速度(又はエンジン回転速度)が上記最小駆動回転速度未満のときには、両水加熱ヒータ24,25を駆動しないことが望ましい。
【0078】
これに対し、車両10の走行中(車速≠0)には、アイドル目標回転速度が算出されるもののアイドル回転速度制御が行われず、エンジン回転速度は、通常、上記アイドル目標回転速度よりも高くなる。アイドル目標回転速度が上記最小駆動回転速度未満であるからといって、上記車両停止中と同様にして両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を遮断すると、無駄に水加熱ヒータ24,25を停止させることとなる。すなわち、上記最小駆動回転速度よりも十分高いエンジン回転速度でエンジン11が回転していて、両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電することができるにも拘らず、両水加熱ヒータ24,25を停止させてしまう。
【0079】
そこで、第4実施形態では、車両10の停止中でアイドル目標回転速度が所定値A未満のときには両水加熱ヒータ24,25の駆動を禁止する一方、車両10の走行中でエンジン回転速度が所定値A以上であるときにはアイドル目標回転速度とは無関係に両水加熱ヒータ24,25の駆動を許可するようにしている。水加熱ヒータ24,25の駆動の禁止/許可の判定に用いられる所定値Aとしては、上記最小駆動回転速度(1000rpm)、もしくはそれよりも若干高い値が設定される。
【0080】
具体的には、電子制御装置41は、例えば図6において車両10の停止中(車速=0)であって、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求があるとき、アイドル目標回転速度が上記所定値A以上であるかどうかを判定する。図6のタイミングt21よりも前の期間に示すように、この判定条件が満たされていると、電子制御装置41は両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を許可する。
【0081】
これに対し、アイドル目標回転速度が下降し、図6のタイミングt21よりも後の期間に示すように、アイドル目標回転速度が所定値A未満になって上記判定条件が満たされなくなると、電子制御装置41は上記駆動要求に拘らず両水加熱ヒータ24,25の駆動を禁止する。この際、第1実施形態と同様にして、図6に示すように、同水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加遮断を1つずつ順に、所定のディレイ時間T3を保ちつつ行うことが望ましい。
【0082】
一方、図7に示すように、車両10の走行中(車速≠0)であって、上記駆動要求を受けているときには、電子制御装置41はアイドル目標回転速度とは無関係に、エンジン回転速度が上記所定値A以上であるかどうかを判定する。図7におけるタイミングt22よりも前の期間に示すように、この判定条件が満たされていない(エンジン回転速度が所定値A未満)と、両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を禁止する。
【0083】
これに対し、図7におけるタイミングt22よりも後の期間に示すように、エンジン回転速度が所定値A以上であると、電子制御装置41は両水加熱ヒータ24,25に対するバッテリ電圧の印加を許可する。この際、第1実施形態と同様にして、図7に示すように、水加熱ヒータ24,25へのバッテリ電圧の印加を1つずつ順に、所定のディレイ時間T1を保ちつつ行うことが望ましい。
【0084】
従って、第4実施形態によれば、上記(1),(2)に加え、次の効果が得られる。
(7)車両10の停止中アイドル回転速度制御が行われているとき、アイドル目標回転速度(又はエンジン回転速度)が最小駆動回転速度よりも低いと、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この点、第4実施形態では、車両10の停止中であって、両水加熱ヒータ24,25の駆動要求を受けかつアイドル目標回転速度が、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値A未満であるときには、両水加熱ヒータ24,25の駆動を禁止している。そのため、両水加熱ヒータ24,25の駆動停止により、上記収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0085】
また、車両10の走行中に上記停止中と同様にして、アイドル目標回転速度が所定値未満であることを条件に両水加熱ヒータ24,25の駆動を停止すると、無駄に水加熱ヒータ24,25を停止させるおそれがある。この点、第4実施形態では、車両10の走行中でエンジン回転速度が、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値A以上のときには、アイドル目標回転速度とは無関係に両水加熱ヒータ24,25の駆動を許可するようにしている。そのため、アイドル目標回転速度によらずエンジン回転速度によって両水加熱ヒータ24,25の駆動/停止を決定することとなり、上述した無駄な水加熱ヒータ24,25の停止を抑制し、バッテリ22の充放電収支を確保しつつ、ヒータ性能の向上を図ることができる。
【0086】
(第5実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態について、図8を参照して説明する。
第5実施形態が適用されるエンジン11では、第2及び第4実施形態と同様にアイドル回転速度制御が行われる。同制御では、実際のエンジン回転速度が、エンジン冷却水温等に基づいて算出されたアイドル目標回転速度に収束するように、スロットルバルブ19の作動を通じて吸入空気量が調整される。
【0087】
また、第4実施形態で説明したように、両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力をオルタネータ23で発電させるには、エンジン11は上記最小駆動回転速度以上の速度で回転することが必要である。エンジン11が、この値よりも低い速度で回転すると、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。そのため、バッテリ22の充放電収支を釣り合わせる観点からは、両水加熱ヒータ24,25を駆動する際には、アイドル目標回転速度として、上記最小駆動回転速度よりも小さな値が設定されないようにすることが望ましい。
【0088】
そこで、第5実施形態では、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、アイドル目標回転速度と所定値Aとを比較する。そして、例えば図8のタイミングt31よりも前の期間に示すように、アイドル目標回転速度が所定値A以上であると、そのアイドル目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定する。最終的なアイドル目標回転速度とは、アイドル回転速度制御の実行に際し、エンジン回転速度を収束させる目標値として実際に用いられる値である。また、図8のタイミングt31〜t33の期間に示すように、アイドル目標回転速度が所定値A未満であると、その所定値Aを最終的なアイドル目標回転速度として設定する。この処理(ガード処理)により、水加熱ヒータ24,25の駆動中にはアイドル目標回転速度が所定値Aよりも低くならなくなる。
【0089】
そして、両水加熱ヒータ24,25が少なくとも停止されることを条件に上記ガード処理を終了する。ここでは、両水加熱ヒータ24,25がタイミングt32で停止され、それから所定のディレイ時間T4が経過したタイミングt33でアイドル回転速度のガード処理を終了するようにしている。この終了により、タイミングt33以降は、上述したタイミングt31よりも前の期間と同様にして、エンジン冷却水等に応じて算出されるアイドル目標回転速度が、最終的なアイドル目標回転速度として設定されることとなる。
【0090】
従って、第5実施形態によれば、上記(2)に加え、次の効果が得られる。
(8)両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、エンジン回転速度が最小駆動回転速度よりも低くなると、オルタネータ23によっては両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この点、第5実施形態では、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときにアイドル目標回転速度にガードをかけ、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値Aよりも低くならないようにしている。そのため、上記バッテリ22の充放電収支が釣り合わなくなる現象を抑制することができる。
【0091】
(第6実施形態)
次に、本発明を具体化した第6実施形態について、図9を参照して説明する。
第6実施形態が適用されるエンジン11では、燃料噴射制御に際し、車両10(エンジン11)の減速時における燃費向上、排気浄化等を目的として燃料噴射を停止する、いわゆる減速時燃料カットが行われる。この減速時燃料カットでは、減速時であってエンジン回転速度が燃料カット回転速度以上のときに燃料噴射が停止される。また、上記燃料の噴射停止によりエンジン回転速度が燃料カット復帰回転速度まで低下すると燃料噴射が復帰される。これらの燃料カット回転速度及び燃料カット復帰回転速度は、ともにエンジン冷却水温等に基づき算出されるものであり、燃料カット復帰回転速度は燃料カット回転速度よりも低い値に設定される。両回転速度は、一般的には、エンジン冷却水温が低いときには高いときよりも高い値に設定される。
【0092】
また、第4実施形態で説明したように、両水加熱ヒータ24,25を駆動するために必要な電力をオルタネータ23で発電させるには、エンジン11が最小駆動回転速度以上の速度で回転することが必要である。エンジンが所定値Aよりも低い速度で回転すると、オルタネータ23によっては上記両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。そのため、バッテリ22における充放電収支を釣り合わせる観点からは、両水加熱ヒータ24,25を駆動する際には、燃料カット復帰回転速度として、上記所定値Aよりも低い値が設定されないようにすることが望ましい。
【0093】
そこで、第6実施形態では、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、燃料カット復帰回転速度と所定値Aとを比較する。そして、例えば図9のタイミングt41よりも前の期間に示すように、燃料カット復帰回転速度が所定値A以上であると、その燃料カット復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定する。最終的な燃料カット復帰回転速度とは、停止されている燃料噴射を再開する際の判定に実際に用いられる値である。また、図9のタイミングt41〜t43の期間に示すように、燃料カット復帰回転速度が所定値A未満であると、その所定値Aを最終的な燃料カット復帰回転速度として設定する。この処理(ガード処理)により、水加熱ヒータ24,25の駆動中には燃料カット復帰回転速度が所定値Aよりも低くならなくなる。
【0094】
そして、両水加熱ヒータ24,25が少なくとも停止されることを条件に上記ガード処理を終了する。ここでは、両水加熱ヒータ24,25がタイミングt42で停止され、それから所定のディレイ時間T5が経過したタイミングt43で燃料カット復帰回転速度のガード処理を終了するようにしている。この終了により、タイミングt43以降は、上述したタイミングt41よりも前の期間と同様にして、エンジン冷却水温等に応じて算出される燃料カット復帰回転速度が、最終的な燃料カット復帰回転速度として設定されることとなる。
【0095】
従って、第6実施形態によれば、上記(2)に加え、次の効果が得られる。
(9)減速時燃料カット中、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに、燃料カット復帰回転速度が最小駆動回転速度よりも低くなると、オルタネータによっては両水加熱ヒータ24,25の駆動に必要な電力を発電できず、バッテリ22の充放電の収支が釣り合わなくなりやすい。この点、第6実施形態では、減速時燃料カット中、両水加熱ヒータ24,25を駆動しているときに燃料カット復帰回転速度にガードをかけ、最小駆動回転速度を考慮して設定した所定値Aよりも低くならないようにしている。そのため、上記バッテリ22の充放電収支が釣り合わなくなるのを抑制することができる。
【0096】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・本発明は、スロットルバルブを迂回するバイパス通路を吸気通路13に接続し、そのバイパス通路の途中にISC(アイドルスピードコントロール)バルブを設けてアイドル時の吸入空気量を調整するようにしたエンジンにも適用可能である。
【0097】
・本発明は水加熱ヒータを3つ以上備えた車両や、水加熱ヒータ以外の消費電力の大きな発電負荷を複数備えた車両にも適用可能である。
・第5実施形態において、アイドル目標回転速度にガードをかけ所定値Aよりも低くならないようにする際に、両水加熱ヒータ24,25を強制的に停止させるようにしてもよい。
【0098】
・第6実施形態において、燃料カット復帰回転速度にガードをかけ所定値Aよりも低くならないようにする際に、両水加熱ヒータ24,25を強制的に停止させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10…車両、11…エンジン、22…バッテリ、23…オルタネータ、24,25…水加熱ヒータ(電気負荷)、41…電子制御装置、T1,T3…ディレイ時間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、
前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、アイドル目標回転速度が所定値を下回らないようにガードする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、
前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい値を所定値として、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、エンジン回転速度が前記所定値に収束するように制御する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、
前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Aとし、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Bとして、前記目標回転速度Bを前記目標回転速度Aよりも大きくする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定し、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記アイドル目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、
前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、燃料カット復帰回転速度が所定値を下回らないようにガードする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、
前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい値を所定値として、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、かつエンジン回転速度が前記所定値を下回るとき、燃料噴射を再開する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項7】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、
前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Aとし、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Bとして、前記復帰回転速度Bを前記復帰回転速度Aよりも大きくする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定し、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記燃料カット復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記複数の電気負荷としてエンジン冷却水を加熱する複数のヒータを備える
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、
前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、アイドル目標回転速度が所定値を下回らないようにガードする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、
前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい値を所定値として、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、エンジン回転速度が前記所定値に収束するように制御する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンのアイドル回転速度制御を実行する車両の制御装置において、
前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Aとし、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときのアイドル目標回転速度を目標回転速度Bとして、前記目標回転速度Bを前記目標回転速度Aよりも大きくする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応するアイドル目標回転速度よりも大きい目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定し、前記アイドル回転速度制御を実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記アイドル目標回転速度を最終的なアイドル目標回転速度として設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、
前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、燃料カット復帰回転速度が所定値を下回らないようにガードする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、
前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい値を所定値として、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているとき、かつエンジン回転速度が前記所定値を下回るとき、燃料噴射を再開する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項7】
エンジンの動力により駆動するオルタネータと、このオルタネータにより充電されるバッテリと、このバッテリの電力により駆動する複数の電気負荷とを含む車両のための制御装置であり、前記エンジンの減速時燃料カットを実行する車両の制御装置において、
前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Aとし、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷が駆動しているときの燃料カット復帰回転速度を復帰回転速度Bとして、前記復帰回転速度Bを前記復帰回転速度Aよりも大きくする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が所定時間未満のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する燃料カット復帰回転速度よりも大きい復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定し、前記減速時燃料カットを実行しているとき、かつ前記複数の電気負荷の駆動が停止してからの経過時間が前記所定時間以上のとき、前記エンジンの冷却水温度に対応する前記燃料カット復帰回転速度を最終的な燃料カット復帰回転速度として設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記複数の電気負荷としてエンジン冷却水を加熱する複数のヒータを備える
ことを特徴とする車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−174478(P2011−174478A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135690(P2011−135690)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【分割の表示】特願2009−111444(P2009−111444)の分割
【原出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【分割の表示】特願2009−111444(P2009−111444)の分割
【原出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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