説明

車両の制御装置

【課題】キックダウンスイッチのオン故障をより的確に判定することのできる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】アクセルポジションセンサーの出力電圧VAが下限ガード学習値未満であり(S102:YES)、かつキックダウンスイッチがオン(S103:YES)の状態が所定時間継続したとき(S104:YES)に、キックダウンスイッチのオン故障と判定する(S105)ことで、キックダウンスイッチのオン故障をより確実に判定できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル開度が大となったときにオンとなるキックダウンスイッチと、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサーとを備える車両に適用される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機を採用する車両の一部には、アクセルペダルの内側にキックダウンスイッチが取り付けられたものがある。キックダウンスイッチは、アクセルペダルが全開位置を超えて踏み込まれたときにオンとなる。そしてキックダウンスイッチがオンとなると、自動変速機のシフトポイント(変速が行なわれる車速)が高められ、それにより、車両加速度のレスポンスが向上される。
【0003】
そして従来、そうしたキックダウンスイッチを備える車両に適用される制御装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同文献1に記載の車両の制御装置では、キックダウンスイッチがオンとなったときのスロットル開度が所定値(例えば90%)以上であるときに限り、正規のキックダウンと判定して、キックダウンを発生させることで、キックダウンスイッチの故障による誤ったキックダウンの発生を回避するようにしている。こうした従来の車両の制御装置は、キックダウンスイッチが正常に機能しているときには、同スイッチがオンとなるときのスロットル開度が全開となっていることが前提となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−042267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばハイブリッド車両などにおいては、キックダウン時の駆動力の増大を、自動変速機のシフトポイントの変更ではなく、エンジン等の駆動源の出力制御を通じて行うことがある。すなわち、キックダウンスイッチのオンに応じて駆動源の出力を増大することで、キックダウンに応じた車両の駆動力の増大を行うことがある。
【0006】
図8に示すように、こうした車両では、キックダウンスイッチがオンのときとオフのときとで、実アクセル開度(実際のアクセルペダルの踏み込み量)と、駆動源の出力制御に使用される制御アクセル開度との関係を異ならせるようにしている。こうした、キックダウン時のエンジン出力の増大の余地を残すため、キックダウンスイッチがオフの状態では、実アクセル開度が100%となっても、制御アクセル開度は100%未満とされている。例えば同図の場合には、キックダウンスイッチがオフのときには、実アクセル開度が100%となっても、制御アクセル開度は70%までしか増加されないようになっている。
【0007】
こうした場合、キックダウンスイッチがオンとなるまでアクセルペダルが踏み込まれても、スロットル開度は必ずしも100%近傍まで増大されないため、正規のキックダウンか否かをスロットル開度からは判定できないことになる。そのため、こうした場合の従来の車両の制御装置では、キックダウンスイッチのオン故障が発生しても、それを検出することができず、キックダウンスイッチがオンであるとして制御アクセル開度が設定されてしまう。そのため、キックダウンスイッチがオン故障となったときとそうでないときとで、高アクセル開度領域における駆動力が変化してしまうようになる。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、キックダウンスイッチのオン故障をより的確に判定することのできる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、アクセル開度が大となったときにオンとなるキックダウンスイッチと、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサーとを備える車両に適用される制御装置としての請求項1に記載の発明は、アクセルポジションセンサーの出力が既定の範囲外にあるときにキックダウンスイッチがオンであることをもって、キックダウンスイッチのオン故障と判定するようにしている。
【0010】
キックダウンスイッチが正常であれば、同スイッチがオンとなるときのアクセル開度は、概ね一定の値を取る。センサーやスイッチの個体差や経時変化を考慮しても、そのときのアクセル開度は、一定の範囲に収まると考えられる。よって、アクセルポジションセンサーの出力がそうした範囲外にあるときにキックダウンスイッチがオンとなれば、同スイッチのオン故障が発生していると判定することができる。したがって、上記構成では、キックダウンスイッチのオン故障をより確実に判定することができる。
【0011】
また上記課題を解決するため、アクセル開度が大となったときにオンとなるキックダウンスイッチと、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサーとを備える車両に適用される制御装置としての請求項2に記載の発明は、キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサーの出力が既定の範囲外にあることをもって、キックダウンスイッチのオン故障と判定するようにしている。
【0012】
キックダウンスイッチが正常であれば、同スイッチがオンとなるときのアクセル開度は、概ね一定の値を取る。センサーやスイッチの個体差や経時変化を考慮しても、そのときのアクセル開度は、一定の範囲に収まると考えられる。よって、アクセルポジションセンサーの出力がそうした範囲外にあるときにキックダウンスイッチのオン・オフが切り替われば、同スイッチのオン故障が発生していると判定することができる。したがって、上記構成では、キックダウンスイッチのオン故障を確実に検出することができ、ひいてはキックダウンスイッチのオン故障をより的確に判定することができる。
【0013】
なお、キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサーの出力には、個体差や経時変化によるばらつきがある。そこで、請求項3によるように、オン故障の判定に使用する上記既定の範囲の上限値や下限値を、キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサーの出力に応じて更新するようにすれば、キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わる位置を学習することができ、個体差や経時変化によるばらつきに拘らず、キックダウンスイッチのオン故障を確実に判定することができる。
【0014】
またオン故障が確認されていない状態にあっても、請求項4によるように、キックダウンスイッチがオンとなっても、アクセルポジションセンサーの出力が上記既定の範囲外であれば、キックダウンスイッチは制御上オフであると判定するようにすれば、キックダウンスイッチのオン故障による高アクセル開度領域での駆動力の変化を抑制することができる。また請求項5によるように、キックダウンスイッチがオンとなり、かつアクセルポジションセンサーの出力が上記既定の範囲であることをもって、キックダウンスイッチは制御上オンであると判定するようにしても、オン故障の確認前にも、それによる高アクセル開度領域での駆動力の変化を同様に抑制することができる。
【0015】
なお、キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサーの出力は、その使用頻度や使用期間によって変化することがある。そうした場合にも、請求項6によるように、上記既定の範囲の上限値又は下限値を、キックダウンスイッチの使用期間及びアクセル操作の回数の少なくとも一方に応じて補正するようにすれば、キックダウンスイッチのオン故障を的確に判定することができる。
【0016】
また、アクセルポジションセンサーの出力特性に温度によって変化する場合には、キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わるときのアクセルポジションセンサーの出力が、温度条件によって変化する。そうした場合にも、請求項7によるように、上記既定の範囲の上限値又は下限値を、アクセルポジションセンサーの温度に応じて補正するようにすれば、キックダウンスイッチのオン故障を的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御装置の全体構造を模式的に示す略図。
【図2】同実施の形態に採用されるキックダウンスイッチのオン故障判定ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施の形態に採用されるキックダウンスイッチのオン判定ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図4】同実施の形態に採用される下限ガード学習値補正ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図5】同下限ガード学習値補正ルーチンでの経過年数、アクセルペダルのオン・オフ回数に応じた補正量の設定態様を示す図。
【図6】同実施の形態に採用される下限ガード学習値の温度補正ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図7】同温度補正ルーチンでの温度補正量の設定態様を示すグラフ。
【図8】実アクセル開度と制御アクセル開度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の車両の制御装置を具体化した一実施の形態を、図1〜図7を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態の制御装置は、エンジンとモーターとの2種の駆動源を備えるハイブリッド車両に適用されるものとなっている。
【0019】
まず図1を参照して、本実施の形態の車両の制御装置の構成を説明する。同図に示すように、アクセルペダル1の近傍には、アクセルペダル1が全開近傍まで踏み込まれたときにオン信号を出力するキックダウンスイッチ2と、アクセル開度、すなわちアクセルペダル1の踏み込み量に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサー3とが配設されている。これらは、ハイブリッド車両の制御を司るコントローラー4に接続されている。
【0020】
コントローラー4は、車両走行中に、車両制御の一環として、固着等によりキックダウンスイッチ2がオン信号を出力する状態に固定される、いわゆるキックダウンスイッチ2のオン故障の有無の判定を行っている。このオン故障の有無の判定は、図2に示されるキックダウンスイッチ2のオン故障判定ルーチンの処理を通じて行われる。なお、同ルーチンの処理は、コントローラー4によって、既定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとなっている。
【0021】
本ルーチンが開始させると、まずステップS100において、キックダウンスイッチ2やアクセルポジションセンサー3、コントローラー4等に電力を供給する補機バッテリーの電圧低下を有無が確認される。ここで補機バッテリーの電圧が低下していれば(S100:YES)、今回は故障の判定を行わず、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。また補機バッテリーの電圧が低下していなければ(S100:NO)、ステップS101において、アクセルポジションセンサー3が正常に機能しているか否かが確認される。ここで、アクセルポジションセンサー3が正常に機能していなければ(S101:NO)、今回は故障の判定を行わず、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。
【0022】
一方、アクセルポジションセンサー3が正常に機能していれば(S101:YES)、ステップS102において、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限ガード学習値未満であるか否かが確認される。下限ガード学習値は、キックダウンスイッチ2がオンとなることが想定されるアクセル開度の範囲の下限値におけるアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAとなっている。なお本実施の形態では、下限ガード学習値は、キックダウンスイッチ2がオン故障でないことが確認された状態で同キックダウンスイッチ2がオンからオフへと切り替わったときのアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAに応じて学習更新されるようになっている。
【0023】
ここでアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限学習値以上であれば(S102:NO)、そのまま今回の本ルーチンが終了される。一方、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限学習値未満であれば(S102:YES)、処理がステップS103に進められる。
【0024】
ステップS103に処理が進められると、そのステップS103において、キックダウンスイッチ2がオンであるか否かが確認される。ここでキックダウンスイッチ2がオフであれば(S103:NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。
【0025】
一方、ここでキックダウンスイッチ2がオンであれば(S103:YES)、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限学習値未満のところでキックダウンスイッチ2がオンとなっていることとなる。キックダウンスイッチ2がオンとなるときのアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAは、下限学習値以上となる筈であるため、この場合には、オン故障が疑われる。そして、その状態となってから所定時間が経過した時点で(S104:YES)、キックダウンスイッチ2がオン故障しているとの判定がなされるようになる。
【0026】
また本実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなったか否かの判定を、図3に示すキックダウンスイッチ2のオン判定ルーチンの処理を通じて行っている。なお、同ルーチンの処理は、コントローラー4によって、既定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとなっている。
【0027】
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS200において、キックダウンスイッチ2のオンからオフへの切り替わりの有無が確認される。ここでキックダウンスイッチ2のオンからオフへの切り替わりが確認されていなければ(S200:NO)、そのまま今回の本ルーチンの処理が終了される。
【0028】
一方、キックダウンスイッチ2のオンからオフへの切り替わりが確認されていれば(S200:YES)、ステップS201において、アクセルポジションセンサー3が正常に機能しているか否かが確認される。ここでアクセルポジションセンサー3が正常に機能していないのであれば(S201:NO)、キックダウンスイッチ2のオン判定が行われないまま、今回の本ルーチンの処理が終了される。
【0029】
アクセルポジションセンサー3が正常に機能していれば(S201:YES)、ステップS202において、キックダウンスイッチ2のオン故障が確認されていないか否かが確認される。ここでキックダウンスイッチ2のオン故障が確認されていれば(S202:NO)、キックダウンスイッチ2のオン判定が行われないまま、今回の本ルーチンの処理が終了される。
【0030】
一方、キックダウンスイッチ2のオン故障が確認されていなければ(S202:YES)、ステップS203において、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限ガード学習値以上であるか否かが行われる。ここで、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限ガード学習値未満であれば(S203:NO)、キックダウンスイッチ2のオン判定が行われないまま、今回の本ルーチンの処理が終了される。そしてアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限ガード学習値以上であれば(S203:YES)、ステップS204において、制御上、キックダウンスイッチ2はオンであるとの判定がなされる。
【0031】
このように本実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなっても、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲になければ、キックダウンスイッチ2は制御上オフであると判定するようにしている。すなわち、本実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなり、かつアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲にあることをもって、キックダウンスイッチ2は制御上オンであると判定するようにしている。
【0032】
なお、本実施の形態では、上記オン故障判定及びオン判定に使用される下限ガード学習値の補正を行っている。そうした補正の一つは、アクセルポジションセンサー3の出力特性やハードの経時変化を補償するための補正となっており、もう一つは、アクセルポジションセンサー3の温度による出力特性を補償するための補正となっている。
【0033】
まず前者の補正について、説明する。この補正は、図4に示す下限ガード学習値補正ルーチンの処理を通じて行われる。同ルーチンの処理は、コントローラー4によって、既定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとなっている。
【0034】
本ルーチンが開始されると、まずステップS300において、アクセル操作の回数及びキックダウンスイッチ2の使用期間、すなわちアクセルペダル1のオン・オフ回数と車両製造後の経過年数とから補正量が算出される。そしてステップS301において、算出した補正量による下限ガード学習値の補正が行われる。
【0035】
ここでの補正量は、図5に示す態様で算出される。すなわち、アクセルペダル1のオン・オフ回数が少なく、経過年数が短いときには、初期のセンサー誤差と初期のハード誤差、すなわち出力特性やハードの製造公差を考慮した補正量の算出が行われる。また経過年数が短いものの、アクセルペダル1のオン・オフ回数が多いときには、初期のセンサー誤差と、摩耗等による耐久後のハード誤差とを考慮した補正量の算出が行われる。更に、アクセルペダル1のオン・オフ回数が少なく、経過年数が長いときには、出力特性の経年変化といった耐久後のセンサー誤差と、初期のハード誤差を考慮した補正量の算出が行われ、アクセルペダル1のオン・オフ回数が多く、経過年数が長いときには、耐久後のセンサー誤差と耐久後のハード誤差を考慮した補正量の算出が行われる。
【0036】
次に後者の補正、すなわちアクセルポジションセンサー3の温度による出力特性の変化を補償するための補正について説明する。この補正は、図6に示す下限ガード学習値の温度補正ルーチンの処理を通じて行われる。なお、同ルーチンの処理は、コントローラー4によって、既定の制御周期毎に繰り返し実行されるものとなっている。
【0037】
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS400において、下限ガード学習値の学習が実施されたか否かが確認される。下限ガード学習値の学習が実施されたのであれば(S400:YES)、そのときのアクセルポジションセンサー3の付近の温度が記憶された後、ステップS402の処理に進められ、実施されていないのであれば、そのままステップS402の処理に進められる。
【0038】
ステップS402に処理が進められると、そのステップS402において、下限ガード学習値の学習時に記憶された温度と現在のアクセルポジションセンサー3の付近の温度との差から温度補正量が算出される。そして次のステップS403において、算出された温度補正量による下限ガード学習値の補正が行われた後、今回の本ルーチンの処理が終了される。
【0039】
ステップS402での温度補正量の算出は、図7に示される態様で行われる。なお、本実施の形態では、周囲の温度が高いほど、出力電圧VAが低くなる温度特性を持ったアクセルポジションセンサー3が採用されている。そのため、温度差が正の側に大きくなるほど、温度補正量が正の側に大きくされ、温度差が負の側に大きくなるほど、温度補正量が負の側に大きくされるように、温度補正量の算出が行われる。
【0040】
次に、こうした本実施の形態の作用を説明する。
本実施の形態では、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲外にあるときにキックダウンスイッチ2がオンであると、キックダウンスイッチ2がオン故障であると判定される。キックダウンスイッチ2がオンとなるときのアクセル開度は、スイッチ、センサーの特性の個体差や経時変化を考慮しても、一定の範囲内に収まるものと考えられる。よって、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAがそうした範囲外にあるときにキックダウンスイッチ2がオンとなれば、キックダウンスイッチ2のオン故障が発生していると判定することができる。
【0041】
また本実施の形態では、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAに応じて、オン故障の判定に使用する下限ガード学習値が更新される。そのため、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わる位置を学習することができ、個体差や経時変化によるばらつきに拘らず、キックダウンスイッチ2のオン故障が確実に判定されるようになる。
【0042】
更に、本実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなっても、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限ガード学習値を下限とする既定の範囲外であれば、キックダウンスイッチ2は制御上オフであると判定される。すなわち、本実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなり、かつアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲であることをもって、キックダウンスイッチ2が制御上オンであると判定される。そのため、オン故障が確認されていない状態にあっても、キックダウンスイッチ2のオン故障による高アクセル開度領域での駆動力の変化が抑制されるようになる。
【0043】
なお、本実施の形態では、下限ガード学習値は、キックダウンスイッチ2の使用期間及びアクセル操作の回数に応じて補正される。また下限ガード学習値は、アクセルポジションセンサー3の温度に応じても補正される。そのため、使用頻度や使用期間によるアクセルポジションセンサー3の出力特性の変化や同出力特性の温度変化に拘わらず、キックダウンスイッチ2のオン故障が的確に判定されるようになる。
【0044】
以上の本実施の形態の車両の制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲外にあるときにキックダウンスイッチ2がオンであることをもって、キックダウンスイッチ2のオン故障と判定するようにしている。そのため、キックダウンスイッチ2のオン故障をより確実に判定することができる。
【0045】
(2)本実施の形態では、オン故障の判定に使用する下限ガード学習値を、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAに応じて更新するようにしている。そのため、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAに個体差や経時変化によるばらつきがあっても、キックダウンスイッチ2のオン故障を確実に判定することができる。
【0046】
(3)本実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなっても、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲外であれば、キックダウンスイッチ2は制御上オフであると判定するようにしている。換言すれば、本実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなり、かつアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲であることをもって、キックダウンスイッチ2は制御上オンであると判定するようにしている。そのため、キックダウンスイッチ2のオン故障が確認されていない状態にあっても、そのオン故障による高アクセル開度領域での駆動力の変化を同様に抑制することができる。
【0047】
(4)本実施の形態では、キックダウンスイッチ2の使用期間及びアクセル操作の回数に応じて下限ガード学習値を補正するようにしている。そのため、出力特性やハードの経時変化に拘わらず、キックダウンスイッチ2のオン故障を的確に判定することができる。
【0048】
(5)本実施の形態では、アクセルポジションセンサー3の温度に応じて下限ガード学習値を補正するようにしている。そのため、アクセルポジションセンサー3の出力特性の温度依存性があっても、キックダウンスイッチ2のオン故障を的確に判定することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、周囲の温度が高いほど、出力電圧VAが低くなる温度特性を持ったアクセルポジションセンサー3が採用されている。そのため、温度差が正の側に大きくなるほど、温度補正量が正の側に大きくされ、温度差が負の側に大きくなるほど、温度補正量が負の側に大きくされるように、温度補正量の算出を行っていた。これに対して、周囲の温度が高いほど、出力が高くなる温度特性を持ったアクセルポジションセンサーを採用する場合には、温度差が正の側に大きくなるほど、温度補正量が負の側に大きくされ、温度差が負の側に大きくなるほど、温度補正量が正の側に大きくされるように、温度補正量の算出を行う必要がある。
【0050】
・上記実施の形態では、アクセルポジションセンサー3の温度に応じて下限ガード学習値を補正するようにしていたが、アクセルポジションセンサー3の出力特性の温度による変化が無視し得るほどに小さい場合には、そうした温度補正を行わないようにしても良い。
【0051】
・上記実施の形態では、キックダウンスイッチ2の使用期間及びアクセル操作の回数に応じて下限ガード学習値を補正するようにしていたが、キックダウンスイッチ2の使用期間による補正、アクセル操作の回数による補正のいずれか一方のみを行うようにしても良い。またアクセルポジションセンサー3の出力特性等の経時変化が無視し得るほど小さいのであれば、キックダウンスイッチ2の使用期間やアクセル操作の回数による下限ガード学習値の補正を行わないようにしても良い。
【0052】
・上記実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなっても、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲外であれば、キックダウンスイッチ2は制御上オフであると判定するようにしていた。すなわち、上記実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンとなり、かつアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲であることをもって、キックダウンスイッチ2は制御上オンであると判定するようにしていた。もっとも、キックダウンスイッチ2のオン故障の発生後、その発生を直ちに確認できるのであれば、そうしたアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAを用いたキックダウンスイッチ2のオン判定は行わないようにしても良い。
【0053】
・上記実施の形態では、オン故障の判定に使用する下限ガード学習値を、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAに応じて更新するようにしていた。もっとも、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わったときのアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAの個体差や経時変化によるばらつきが十分小さいのであれば、下限ガード学習値を固定値としても良い。
【0054】
・上記実施の形態では、アクセルポジションセンサー3の出力電圧VAが下限ガード学習値未満であるときにキックダウンスイッチ2がオンであれば、オン故障と判定するようにしていた。一方、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わったときにアクセルポジションセンサー3の出力電圧VAを確認し、その値が下限ガード学習値未満であるときにオン故障と判定しても同様の判定が可能である。
【0055】
・上記実施の形態では、キックダウンスイッチ2がオンのとき、あるいはキックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わるときのアクセルポジションセンサー3の出力が、下限ガード学習値を下限とする既定の範囲、すなわち下限ガード学習値以上の範囲から外れているときにオン故障と判定していた。もっとも、アクセルポジションセンサー3が、アクセル開度が大きくなるほど、出力が小さくなるような出力特性を有している場合には、アクセルポジションセンサー3の出力が、ある値を上限値とする既定の範囲外にあるときにキックダウンスイッチ2がオンであったり、キックダウンスイッチ2のオン・オフが切り替わったりしたときにオン故障と判定することになる。すなわち、この場合には、下限ガード学習値の代わりに、そうした既定の範囲の上限値を用いることになる。
【符号の説明】
【0056】
1…アクセルペダル、2…キックダウンスイッチ、3…アクセルポジションセンサー、4…コントローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル開度が大となったときにオンとなるキックダウンスイッチと、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサーとを備える車両に適用される制御装置であって、
前記アクセルポジションセンサーの出力が既定の範囲外にあるときに前記キックダウンスイッチがオンであることをもって、前記キックダウンスイッチのオン故障と判定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
アクセル開度が大となったときにオンとなるキックダウンスイッチと、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサーとを備える車両に適用される制御装置であって、
前記キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わったときの前記アクセルポジションセンサーの出力が既定の範囲外にあることをもって、前記キックダウンスイッチのオン故障と判定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
前記キックダウンスイッチのオン・オフが切り替わったときの前記アクセルポジションセンサーの出力に応じて前記既定の範囲の上限値又は下限値を更新する
請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記キックダウンスイッチがオンとなっても、前記アクセルポジションセンサーの出力が前記既定の範囲外であれば、前記キックダウンスイッチは制御上オフであると判定する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記キックダウンスイッチがオンとなり、かつ前記アクセルポジションセンサーの出力が前記既定の範囲であることをもって、前記キックダウンスイッチは制御上オンであると判定する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記既定の範囲の上限値又は下限値を、前記キックダウンスイッチの使用期間及びアクセル操作の回数の少なくとも一方に応じて補正する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記既定の範囲の上限値又は下限値を、前記アクセルポジションセンサーの温度に応じて補正する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−18437(P2013−18437A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154985(P2011−154985)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】