説明

車両の変速制御装置

【課題】車両のドライバビリティの悪化を抑制し得る車両の変速装置を提供することを課題とする。
【解決手段】変速装置としてCVT300を備える車両10において、ECU100は、変速制御処理を実行する。当該変速制御処理において、ECU100は、ドライバによる要求出力Ptが、最適燃費出力Pc以上且つWOT出力Pw以下となる、相対的にみて緩やかな加減速時に、変速速度減少制御を実行する。変速速度減少制御が実行された場合、CVT300の入力軸320の回転速度たる入力回転速度Vinの変化率は、要求出力PtがWOT出力Pwより大きい場合と較べて小さく設定され、変速速度が減少する。一方、イナーシャトルクの大きさは、変速速度に応じて大きくなるため、変速速度減少制御の実行に伴ってエンジン200のトルク損失が抑制され、車両10のドライバビリティが向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に備わるCVT(Continuously Variable Transmission:連続式無段変速装置)等の変速装置を制御する車両の変速制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、イナーシャトルクを考慮したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された変速機付き車両の制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、例えば現在の出力と定常時の出力との差等に基づいて変速速度を決定することにより、運転者の意図を考慮しつつ変速時におけるイナーシャトルクを目標値に制御し、運転性を向上させることが可能であるとされている。
【0003】
尚、変速機で急加速要求がなされた際、内燃機関の高負荷側の燃費悪化領域までの余裕が大きい場合には、変速機の変速動作開始時期を遅延させる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−239002号公報
【特許文献2】特開2005−214311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、定常走行時や惰性走行時等では、内燃機関に要求される出力は総じて低い。従って、従来の技術では、このような場合に加速要求がなされた場合、例えば前車との距離を維持するための軽微な加速であったとしても、出力の差が大きい旨の判定がなされ、変速速度が大きく設定される可能性がある。一方、このような軽微な加速は、比較的短い時間で終了することが多く、また軽微な減速を伴うことも多い。そのような状況において、変速速度が大きく設定されると、内燃機関の機関回転変動が顕著に生じることもあり、イナーシャトルクによるトルク損失が顕在化してドライバビリティが悪化する可能性が高くなる。即ち、従来の技術には、場合によっては車両のドライバビリティが悪化しかねないという技術的な問題点がある。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、車両のドライバビリティの悪化を抑制し得る車両の変速制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る第1の車両の変速制御装置は、内燃機関と、該内燃機関の機関出力軸に該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される入力軸及び車軸に該車軸の回転に伴って回転可能に連結される出力軸を有し、該入力軸の回転速度を表す入力回転速度と該出力軸の回転速度を表す出力回転速度との間の変速比を連続的に変化させることが可能な変速機とを備えた車両の変速制御装置であって、ドライバの要求出力を特定する要求出力特定手段と、前記特定された要求出力に基づいて前記入力回転速度の目標値を表す目標入力回転速度を設定する設定手段と、前記入力回転速度が該設定された目標入力回転速度となるように前記変速機を制御することにより変速を行う変速制御手段と、前記特定された要求出力が予め許容される最大出力以下である場合に、前記特定された要求出力が前記最大出力よりも大きい場合と較べて前記変速に係る変速速度を減少させるものとして規定される変速速度減少制御を実行する変速速度制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明における「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該各々の燃焼室において、例えばガソリン或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等を適宜介して動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念であり、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を指す。
【0009】
この内燃機関における、例えばクランクシャフト等の機関出力軸には、例えば、プーリ方式のCVTやトロイダル方式のCVT等、公知の各種態様を採り得る本発明に係る変速機の入力軸が、例えば、物理的又は機械的に直接、又はトルクコンバータ等の流体伝達手段が介在した状態で間接的に、或いはロックアップクラッチ等各種係合手段の係合状態に応じて直接又は間接の態様が適宜に切り替わる形で、当該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される。従って、内燃機関の機関出力軸の回転速度(即ち、機関回転速度)は、変速機の入力軸の回転速度(即ち、入力回転速度)と相互に一対一の関係を有する。特に、内燃機関の機関出力軸と変速機の入力軸とが例えばロックアップクラッチ等の摩擦係合手段等を介して直接連結されている場合、入力回転速度と機関回転速度とは相互に一致する。
【0010】
一方、この変速機の出力軸は、例えばプロペラシャフトを介して(例えばFR型の駆動形態を採る場合や4輪駆動である場合等)或いは介することなく(例えばFF型の駆動形態を採る場合等)、また例えばデファレンシャル等の最終減速機を介して、駆動輪と一体に回転する車軸(例えば、アクスルシャフト)に連結され、車軸の回転に伴って回転可能に構成される。本発明に係る変速機は、上述した入力回転速度と、この出力軸の回転速度たる出力回転速度との比、即ち変速比を、連続的に変化させることが可能な物理的、機械的、機構的又は電気的構成を有する変速装置を包括する概念である。
【0011】
本発明に係る第1の車両の変速制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る要求出力特定手段により、ドライバによって要求される出力を表す要求出力が特定される。ここで、本発明に係る「特定」とは、例えば、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に物理的数値又は物理的数値に対応する電気信号等として検出すること、予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択又は推定すること、それら検出された物理的数値若しくは電気信号又は選択若しくは推定された数値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従った論理演算や数値演算の結果として導出すること、或いはこのように検出、選択、推定又は導出された値等を単に電気信号等として取得すること等を包括する広い概念である。係る概念の範囲内において、要求出力特定手段は、例えば、ドライバが直接操作するアクセルペダルの操作量(以下、適宜「アクセル開度」と称する)及び車両の速度(以下、適宜「車速」と称する)に基づいて決定される要求駆動力に駆動輪の半径及び車速を乗じること等によって要求出力を算出してもよい。
【0012】
一方、本発明に係る第1の車両の変速制御装置によれば、その動作時には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る設定手段により、車速及びアクセル開度等、所定の変速条件に基づいて、上述した入力回転速度の目標値たる目標入力回転速度が設定される。この際、設定手段の動作の好適な一形態としては、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、内燃機関を最も効率良く動作させ得るように、言い換えれば内燃機関の燃費率が最小或いはそれに準じる程度に小さくなるように適合された機関回転速度に対応する入力回転速度が目標入力回転速度として設定されてもよい。この際、入力軸と機関出力軸とが物理的、機械的又は電気的に直結されていれば、当該機関回転速度が、そのまま入力回転速度として設定されてもよい。
【0013】
尚、然るべき記憶手段に、変速用のマップとして、所定の条件と目標入力回転速度とが相互に対応付けられて記憶されていてもよい。この場合、設定手段は、当該マップから現時点における車速やアクセル開度等に応じて定まる一の値を選択的に取得して、目標入力回転速度として設定してもよい。尚、上述したように、要求出力もその時点の車速及びアクセル開度等に基づいて特定することが可能であり、目標入力回転速度に係る「所定の条件」とは、この要求出力を含むものであってもよい。即ち、要求出力と目標入力回転速度とが相互に対応付けられていてもよい。
【0014】
このように目標入力回転速度が設定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る変速制御手段により、入力回転速度がこの設定された目標入力回転速度となるように、例えば、変速比の制御等の形で変速機が制御され、変速が行われる。尚、内燃機関の出力は、機関回転速度と出力トルクとによって規定されるから、例えば上述したように要求出力と機関回転速度(即ち、目標入力回転速度と一義的な関係を有する)とが決まれば、一義的に内燃機関が出力すべきトルクの値も決定され得る。従って、当該変速が行われる際には、当然ながら、例えばスロットルバルブの開度(以下、適宜「スロットル開度」等と称する)の制御等を経て内燃機関の出力トルクが制御される。例えば、このような制御プロセスを経て、内燃機関において機関回転速度と出力トルクとの組み合わせとして規定される動作点は、要求出力に応じた最適な動作点に制御され得る。
【0015】
ここで特に、要求出力の増加に対し機関回転速度の上昇、即ち変速機の入力回転速度の上昇が伴い得る、車両の加速時等には、内燃機関の出力トルクによって機関回転速度を上昇させる際に出力トルクの一部がイナーシャトルクとして損失し、車両の駆動力として供し得る出力トルクが相対的に減少する。このため、車両の加速性能が鈍重となり(顕著には、加速の立ち上がりが遅れ)、ドライバビリティの悪化が生じかねない。
【0016】
そこで、本発明に係る第1の車両の変速制御装置は、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る変速速度制御手段を備えることにより、このようなドライバビリティの悪化が抑制されている。即ち、変速速度制御手段は、要求出力特定手段により特定された要求出力が、予め許容される最大出力以下である場合に、変速速度減少制御を実行する。ここで、「変速速度減少制御」とは、特定された要求出力が当該最大出力よりも大きい場合と較べて、変速に係る変速速度を減少させることを少なくとも含む制御である。尚、「変速速度」とは、入力回転速度の変化率として規定される。
【0017】
ここで、「最大出力」とは、典型的な一例として、一の機関回転速度において内燃機関が物理的に出力し得る最大トルク、即ちWOT(Wide Open Throttle)トルクに対応する出力(即ち、WOT出力)、或いは実践的に又は実質的にWOT出力とみなし得る程度にWOT出力に近い出力を含みつつ、そのような物理的に規定される最大出力とは別に、例えば燃費に代表される経済性能、或いは例えばエミッション量に代表される環境性能等、内燃機関に要求される他の性能を勘案して総合的に定められるものであってもよい。
【0018】
例えば、より具体的な一例としては、平常時に内燃機関の動作制御に供される動作点に対し燃費の悪化の度合い(同様にエミッション量の度合い)が予め設定される基準を超えるものとして規定される領域の下限を規定する出力トルクに対応する出力が、当該最大出力として採用されてもよい。このような、燃費やエミッションが顕著に悪化する領域は、例えば、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、例えば悪化の有無に係る判断基準と共に、実践上過不足が生じない程度の信頼性が担保されるように設定されていてもよい。より実践的な形態の一つとしては、このような燃費又はエミッションの悪化を招く動作領域(或いは動作点)が、予め機関回転速度及び出力トルク等に対応付けられたマップとして、或いは更にアクセル開度や車速をパラメータとして、然るべき記憶手段に記憶され、その都度参照されてもよい。
【0019】
要求出力の変化が比較的軽微な場合、例えば、中速又は高速等で定常走行中に前車との車間を維持するために行なわれ得る微妙なアクセルワークに伴って要求出力が変化する場合等には、アクセル開度は頻繁に増減を繰り返すことが多い。或いは繰り返さないまでも、一時的に増加された後速やかに元に戻されるといった過程を辿り易く、総じて加速と減速とが定期的に又は不定期に繰り返され易い。このように頻繁に軽微な要求出力の変化が生じる毎に入力回転速度を目標入力回転速度に通常の変速速度で収束させる場合、内燃機関の機関回転速度の変動に伴ってトルク損失の影響が大きくなり、かえって燃費が悪化しかねない。即ち、この場合、燃費が悪化することによって相対的にドライバビリティの悪化が実践上看過し得ない問題として顕在化し易い。
【0020】
ここで、要求出力が最大出力以下である場合とは、典型的にはこのように要求出力の変化が軽微である状況を表すものであり、変速速度制御手段に係る上述した動作によれば、過渡的な且つ激しい加速の要求に該当しない緩やかな加速要求がなされている状況において、変速速度減少制御が行われることになる。ここで、イナーシャトルクは、変速速度が大きい程大きくなるため、イナーシャトルクによるトルク損失も、同様に変速速度が大きい程大きくなる。従って、少なくとも要求出力が最大出力よりも大きい場合と較べて変速速度が減少することによって、相対的にみて幾らかなりトルク損失を抑制することが可能となり、ドライバビリティの悪化が幾らかなりとも抑制される。即ち、本発明に係る第1の車両の変速制御装置によれば、車両のドライバビリティの悪化を効率的に且つ効果的に抑制することが可能となるのである。
【0021】
この際、変速速度減少制御の態様は、変速速度を減少させ得る限りにおいて何ら限定されず、例えば、変速機がプーリ方式のCVTである場合には、目標変速比(駆動輪の回転速度に対応する出力回転速度と目標入力回転速度とによって一義的に定まる)を実現するためにプーリの可動片に付与される油圧の増加速度又は減少速度を減少させることによって変速速度を減少させてもよい。また、このような変速速度減少制御の実行期間中における変速速度の値は、例えば、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて、イナーシャトルクによるドライバビリティの悪化を少なくとも実践上顕在化させることなく、且つ可及的に燃費が良好となるように決定されていてもよい。また、変速速度を減少させる際に、目標入力回転速度自体は維持されてもよいし、補正が加えられてもよい。更に、変速速度の時間特性はリニアであっても二次関数であってもよい。
【0022】
本発明に係る第1の車両の変速制御装置の一の態様では、前記最大出力は、現時点の前記内燃機関の機関回転速度と、該現時点の機関回転速度における前記内燃機関のWOTトルクとに基づいて規定されるWOT出力である。
【0023】
この態様によれば、最大出力として前述したWOT出力が採用される。WOT出力は、一の機関回転速度において物理的に出力可能な最大の出力であるから、この場合、変速速度減少制御の実行範囲が実質的に最大となる。即ち、ドライバビリティの悪化抑制に係る効果を最大限に得ることが可能となる。
【0024】
本発明に係る第1の車両の変速制御装置の他の態様では、前記設定手段は、前記内燃機関における機関回転速度と出力トルクとの組み合わせとして規定される動作点のうち、前記内燃機関の燃費率を小さくするものとして前記内燃機関の出力に応じて定まる最適燃費動作点に対応する機関回転速度に基づいて前記目標入力回転速度を設定する。
【0025】
この態様によれば、設定手段は、目標入力回転速度を、最適燃費動作点に対応する機関回転速度に基づいて設定する。尚、既に述べたように、入力回転速度と機関回転速度とが相互に一致する場合には、目標入力回転速度とは最適燃費動作点に対応する機関回転速度そのものであってもよい。ここで、「最適燃費動作点」とは、内燃機関の動作点のうち燃費率を少なくとも相対的にみて小さくするものとして出力に応じて定まる動作点であり、好適な一形態として、当該燃費率を最小とし得る燃費率最小動作点を含む趣旨である。
【0026】
この態様によれば、内燃機関は、基本的に最適燃費動作点を繋ぎ合わせてなる最適燃費線上で動作するように制御されるから、内燃機関の燃費が可及的に最適化され得る。一方で、機関回転速度(一義的に入力回転速度)の変動により燃費が悪化し易く相対的にドライバビリティの悪化が顕在化し易い状況においては、変速速度減少制御により、機関回転速度の変動が可及的に抑制される(即ち、動作点が最適燃費線から外れる期間が相対的に長くなる)。即ち、この態様によれば、燃費の悪化及びドライバビリティの悪化を共に抑制し得るといった、実践上極めて高い利益が提供される。
【0027】
尚、この態様では、前記変速速度制御手段は、前記特定された要求出力が、現時点の前記内燃機関の機関回転速度における、前記最大出力以下であり且つ前記最適燃費動作点に対応する出力以上である場合に、前記変速速度減少制御を実行してもよい。
【0028】
要求出力が、その時点の機関回転速度における最適燃費動作点に対応する出力未満である場合、ドライバにより明確な減速要求がなされている可能性が高い。従って、変速速度減少制御が行われた場合、変速の応答性が低下することによって、かえってドライバビリティの悪化を招きかねない。このように、変速速度減少制御を、最適燃費動作点に対応する出力以上且つ最大出力以下の範囲に属する要求出力に対し少なくとも優先的に、好適な一形態としては、要求出力がこのような範囲に属する場合に限って(即ち、最適燃費動作点に対応する出力未満の要求出力に対しては、通常の変速速度で変速する)実行することにより、変速速度減少制御によってもたらされる利益を効率良く享受することが可能となり実践上有益である。
【0029】
尚、内燃機関の動作点が最適燃費動作点に制御される事情に鑑みれば、減速時に変速速度減少制御がなされる場合とは、好適には、変速速度減少制御の実行期間中(顕著には、加速中)に緩やかな減速要求がなされた場合と一致する。
【0030】
本発明に係る第1の車両の変速制御装置の他の態様では、前記内燃機関の実出力を特定する実出力特定手段を更に具備し、前記変速速度制御手段は、前記特定される要求出力と前記特定される実出力との偏差が小さい程前記変速速度が減少するように前記変速速度減少制御を実行する。
【0031】
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る実出力特定手段が、例えば、機関回転速度と出力トルクの積に基づいた数値演算等を介してその時点における内燃機関の出力を表す実出力を特定する。
【0032】
ここで、本発明に係る変速速度減少制御は、典型的には要求出力が最大出力よりも大きい状況では実行されない(但し、総体的に、要求出力が最大出力よりも大きい状況における変速速度と比較して減少する限りにおいて、必ずしも最大出力よりも大きい状況における変速速度が固定値を採る必要はない)から、変速速度は当該最大出力を境界として不連続に変化する可能性がある。一方で、このような変速速度の不連続性に起因する違和感を軽減するために、変速速度の減少の度合い、例えば基準となる変速速度に対する減少量や減少率を、当該違和感を実践上顕在化させない程度に小さく抑えた場合、ドライバビリティの悪化を抑制するといった、変速速度減少制御によってもたらされる利益が十分に享受されない可能性がある。
【0033】
そこで、この態様によれば、現時点における内燃機関の出力たる実出力と要求出力との偏差に応じて、より具体的には当該偏差が小さい程、変速速度が大きく減少するように変速速度減少制御が実行されるため、変速速度の減少に伴うイナーシャトルクの減少によってもたらされるトルク感の相対的な向上(即ち、ドライバビリティの向上)に係る利益と、最大出力を境とした変速速度の不連続性によって生じる違和感の抑制に係る利益とが相互に両立され、実践上有益である。
【0034】
尚、「小さい程減少するように」とは、必ずしも変速速度が連続的に変化することのみを表すものではなく、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて、ドライバの感度を超える程度に精細に変速速度が変更されることなく、且つドライバが変速速度の段差を実感し得る程度に粗く変速速度が変更されることのないように段階的に変化してもよい趣旨である。即ち、総体的にみて当該偏差の大小に対し夫々変速速度の増減が対応し得る限りにおいて、変速速度制御手段の制御態様は各種態様を採ることが可能である。
【0035】
また、実出力と要求出力との偏差に応じた変速速度の値は、例えば機関回転速度に応じて可変であってよい。例えば、内燃機関が最適燃費動作点又はそれに準じる動作点で動作するように制御されている場合等には、比較的高出力の領域(高回転領域と概ね一致する)において、実出力と最大出力との偏差、即ち、最大偏差が小さくなり易く、単に偏差そのものに応じて変速速度を決定すると、上述した不連続性を十分に解消し得ない場合がある。このような場合には、例えば、最大偏差に対する当該偏差の割合等に応じて連続的又は段階的に変速速度が決定されてもよい。このような変速速度の制御も、一の機関回転速度についてみれば「偏差が小さい程変速速度が減少する」こととなり、本態様の範疇に属する。
【0036】
上述した課題を解決するため、本発明に係る第2の車両の変速制御装置は、内燃機関と、該内燃機関の機関出力軸に該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される入力軸及び車軸に該車軸の回転に伴って回転可能に連結される出力軸を有し、該入力軸の回転速度を表す入力回転速度と該出力軸の回転速度を表す出力回転速度との間の変速比を連続的に変化させることが可能な変速機とを備えた車両の変速制御装置であって、ドライバの要求出力を特定する要求出力特定手段と、前記特定された要求出力に基づいて前記入力回転速度の目標値を表す目標入力回転速度を設定する設定手段と、前記入力回転速度が該設定された目標入力回転速度となるように前記変速機を制御することにより変速を行う変速制御手段と、前記特定された要求出力が、現時点の前記内燃機関の機関回転速度と、該現時点の機関回転速度における前記内燃機関のWOTトルクとに基づいて規定されるWOT出力以下である場合に、前記特定された要求出力が前記WOT出力よりも大きい場合と較べて前記変速に係る変速速度を減少させるものとして規定される変速速度減少制御を実行する変速速度制御手段とを具備することを特徴とする。
【0037】
本発明に係る第2の車両の変速制御装置によれば、上述した本発明に係る第1の車両の変速制御装置における一形態と同様に、変速速度制御手段によって、要求出力がWOT出力以下である場合に変速速度減少制御が実行される。従って、イナーシャトルクによるトルク損失が軽減され、車両のドライバビリティの悪化を効率的且つ効果的に抑制することが可能となる。尚、本発明に係る第2の車両の変速制御装置は、本発明に係る第1の車両の変速制御装置に係る上述した各種態様と同様に(即ち、「最大出力」と「WOT出力」とを相互に対応付けることにより)各種態様を採ることが可能である。
【0038】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、本発明に係る車両の変速制御装置に対応する車両10の要部構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。
【0040】
図1において、車両10は、ECU100、エンジン200、トルクコンバータ300及びCVT400を備える。
【0041】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、車両10の動作全体を制御する電子制御ユニットであり、本発明に係る「車両の変速制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する変速制御処理を実行することが可能に構成されている。
【0042】
エンジン200は、車両10の動力源として機能するように構成されたガソリンエンジンである。ここで、図2を参照して、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図2はエンジン200の模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0043】
図2において、エンジン200は、シリンダ201内にその一部たる点火プラグの一部が露出してなる点火装置202の点火動作により混合気を爆発させると共に、その爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。また、クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。クランクポジションセンサ206は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサ206によって検出されたクランクシャフト205の回転位置に基づいて、点火装置202の点火時期等を制御するように構成されている。また、ECU100は、クランクシャフト205の回転位置に基づいてエンジン200の機関回転速度NE(即ち、本発明に係る「機関回転速度」の一例)を算出することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。
【0044】
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート213において、インジェクタ214から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。燃料は、燃料タンク215に貯留されており、低圧ポンプ217の作用によりデリバリパイプ216を介してインジェクタ214に圧送供給されている。インジェクタ214は、ECU100と電気的に接続されており、この供給される燃料を、ECU100の制御に従って吸気ポート213に噴射することが可能に構成されている。
【0045】
シリンダ201内部と吸気管207とは、吸気バルブ218の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気となり吸気バルブ218の開閉に連動して開閉する排気バルブ219の開弁時に排気ポート220を介して排気管221に導かれる。
【0046】
吸気管207上には、クリーナ208が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される構成となっている。クリーナ208の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ209が配設されている。エアフローメータ209は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接検出することが可能に構成されている。尚、エアフローメータ209は、ECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気の質量流量は、ECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0047】
吸気管207におけるエアフローメータ209の下流側には、シリンダ201内部へ吸入される空気に係る吸入空気量を調節することが可能に構成されたスロットルバルブ210が配設されている。スロットルポジションセンサ212は、このスロットルバルブ210の開閉状態を表すスロットル開度を検出可能に構成されたセンサである。スロットルポジションセンサ212は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたスロットル開度は、ECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0048】
スロットルバルブモータ211は、スロットルバルブ210の物理的な開閉動作を制御可能に構成されたモータである。スロットルバルブモータ211は、図示せぬ駆動系からの電力供給により駆動されるモータであり、当該駆動系はECU100と電気的に接続されている。従って、スロットルバルブモータ211の駆動状態は、ECU100により上位に制御される構成となっている。この際、ECU100は、基本的には、後述するアクセルポジションセンサ13によって検出されるアクセル開度に対応するスロットル開度が得られるように、スロットルバルブモータ211の駆動状態を制御する。
【0049】
尚、スロットルバルブ210は、ECU100により動作状態が制御されるスロットルバルブモータ211の駆動力により駆動される電子制御式のスロットルバルブであり、スロットル開度は、ECU100によって、運転者の意思(即ち、アクセル開度)とは無関係に制御され得る構成となっている。
【0050】
排気管221には、三元触媒223が設置されている。三元触媒223は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。排気管221における三元触媒223の上流側には、空燃比センサ222が配設されている。空燃比センサ222は、排気ポート220を介して排出される排気ガスからエンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。空燃比センサ222は、ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比は、ECU100によって絶えず、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0051】
図1に戻り、CVT300は、二個のプーリを備え、当該プーリ各々において無端状のベルトを巻回するためのV溝の溝幅を可変とすることにより変速比を連続的に変化させることが可能に構成された、本発明に係る「変速機」の一例たる電子制御式自動変速機である。尚、CVT300の構成については、後に図3を参照する形で詳述する。
【0052】
車両10には更に、デファレンシャル11、左車軸SFL、右車軸SFR、左前輪FL、右前輪FR、車速センサ12、アクセル開度センサ13及びアクセルペダル14が備わる。
【0053】
デファレンシャル11は、CVT300の後述する出力回転軸340に接続された差動ギアであり、駆動輪且つ操舵輪たる左前輪FLおよび右前輪FR相互間の回転差を吸収することが可能に構成されている。尚、デファレンシャル11は、CVT300の出力回転軸340の回転速度(即ち、本発明に係る「出力回転速度」の一例)を固有の最終減速比に従って減速することが可能に構成されている。
【0054】
左車軸SFL及び左車軸SFRは、夫々左前輪FL及び右前輪FRに連結された回転軸であり、夫々がデファレンシャル11に連結される構成となっている。従って、車両10において、エンジン200から発せられる動力は、クランクシャフト205、CVT300、デファレンシャル11及び当該左右の車軸を介して駆動輪たる左右の前輪に伝達される構成となっている。
【0055】
車速センサ12は、車両10の車速Vを検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ12は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0056】
アクセル開度センサ13は、ドライバによる踏下が可能に構成されたアクセルペダル14の踏下量を表すアクセル開度Accを検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Accは、ECU100によって絶えず、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0057】
ここで、図3を参照して、CVT300の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、CVT300の構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1及び図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0058】
図3において、CVT300は、動力伝達部310、入力回転軸320、変速部330、出力回転軸340及び油圧制御部350を備える。
【0059】
動力伝達部310は、エンジン200の前述したクランクシャフト205に連結され、エンジン200の発する回転動力を入力回転軸320に伝達するためのユニットであり、トルクコンバータ311、ロックアップクラッチ312、シャフト313及び前後進切替装置314を含んで構成される。
【0060】
トルクコンバータ311は、クランクシャフト205に連結されたポンプインペラ311aと、シャフト313に連結されたタービンランナ311bとを有し、ポンプインペラ311aとタービンランナ311bとの間で流体(例えばATF等)の運動エネルギによる動力伝達を行うことが可能に構成されている。また、トルクコンバータ311は、ロックアップクラッチ312が解放されている場合には、伝達されるトルクを増幅することが可能に構成される。
【0061】
ロックアップクラッチ312は、クランクシャフト205とシャフト313との間で、摩擦力による動力伝達が可能となるように構成された摩擦係合手段である。ロックアップクラッチ312が締結された状態にある場合、エンジン200の機関回転速度NEは、入力回転軸320の回転速度たる入力回転速度Vinと相互に一致する。
【0062】
前後進切替装置314は、出力側に入力回転軸320が、また入力側にシャフト313が連結されてなり、シャフト313に対する入力回転軸320の回転方向を正逆の間で切り替えることが可能に構成されたプラネタリギアユニットである。前後進切換装置314は、差動回転可能な3つの回転要素を有する遊星歯車機構と、遊星歯車機構の回転要素の回転を停止させるブレーキと、回転要素同士を選択的に連結するクラッチとを有しており、当該ブレーキ及びクラッチ各々の締結解放の状態に応じて、シャフト313の回転方向に対する入力回転軸320の回転方向が切り替わる構成となっている。
【0063】
入力回転軸(プライマリシャフトとも称される)320は、本発明に係る「入力軸」の一例たる回転軸である。入力回転軸320は、シャフト313の回転に伴って回転可能な軸体を有し、その回転速度たる入力回転速度Vinは、エンジン200の機関回転速度NEと少なくとも一義的な関係を有する。
【0064】
変速部330は、駆動プーリ(プライマリプーリとも称される)331、無端ベルト332及び従動プーリ(セカンダリプーリとも称される)333、油圧アクチュエータ334、回転センサ335及び336を含んで構成され、CVT300の変速比を物理的機械的に規定してなるユニットである。駆動プーリ331と従動プーリ333とは、夫々の中心軸線を互いに平行にし、且つ所定の間隔を隔てて配置されている。
【0065】
駆動プーリ331は、入力回転軸320と一体に回転し、且つ軸線方向に固定された固定プーリ片331aと、入力回転軸320と一体回転し、且つ軸線方向に動作可能に構成された可動プーリ片331bとを有している。この可動プーリ片331bの背面側には、可動プーリ片331bを軸線方向に動作させるための油圧アクチュエータ334が設けられている。油圧アクチュエータ334は更に、可動プーリ片331bに軸線方向の推力を与える油圧室(不図示)を有している。一方、これら固定プーリ片331aと可動プーリ片331bとの対向面は、テーパ角を一定とするテーパ面を形成しており、当該テーパ面によって断面視V字型の溝(以下、適宜「V溝」と称する)が形成されている。駆動プーリ331は、このV溝に係る溝幅を変更することが可能に構成されている。
【0066】
一方、従動プーリ333は、出力回転軸340と一体に回転し、且つ軸線方向に固定された固定プーリ片333aと、出力回転軸340と一体に回転し、且つ軸線方向に動作可能な可動プーリ片333bとを有している。この可動プーリ片333bの背面側には、可動プーリ片333bを軸線方向に動作させるための油圧アクチュエータ(不図示)が設けられている。当該油圧アクチュエータは更に、可動プーリ片333bに軸線方向の推力を与える油圧室を有している。一方、これら固定プーリ片333aと可動プーリ片333bとの対向面は、テーパ角を一定とするテーパ面を形成しており、当該テーパ面によって、駆動プーリ331と同様にV溝が形成されている。
【0067】
無端ベルト332は、駆動プーリ331と従動プーリ333との間の動力伝達を行うことが可能に構成された金属製且つ無端状のベルトである。無端ベルト332は、上述した各プーリのV溝に挟み込まれる形状の多数の金属片が環状に配列してなると共に、それらの金属片がフープと称される環状の金属バンドによって結束された構成を有している。
【0068】
係る構成において、無端ベルト332の全長は、当該フープによって制限される。従って、各プーリによって無端ベルト332を挟み付けると、V溝のテーパ面(傾斜面)によって無端ベルト332を半径方向で外側に押し出す向きの力が作用し、その結果、無端ベルト332に張力が加えられるとともに、無端ベルト332と各プーリとの接触圧力が発生し、その接触圧力と摩擦係数とで決まる摩擦力によって、無端ベルト332と各プーリとの間でトルクが伝達される。このように無端ベルト332を挟み付ける圧力として規定される挟圧力は、例えば、従動プーリ333側の油圧アクチュエータ(不図示)の油圧室の油圧に応じて制御される。
【0069】
これに対し、いずれか一方のプーリにおいて無端ベルト332を挟み付ける圧力が相対的に増大し、あるいは低下すると、無端ベルト332の張力に抗して無端ベルト332が当該一方のプーリで半径方向で外側に押し出され、或いは反対に半径方向で内側に入り込み、同時に他方のプーリでは無端ベルト332が半径方向で内側に入り込み、或いは半径方向で外側に押し出される。その結果、無端ベルト332の巻き掛け半径の変化が生じ、変速が実行される。この際、例えば、駆動プーリ331側の油圧アクチュエータの油圧室に供給される作動油の流量が制御されることによって、当該変速に係る変速比が制御される。このように、CVT300における変速は、駆動プーリ331における上述した溝幅を変化させて、無端ベルト332の各プーリに対する巻き掛け半径を変更することにより実行される。
【0070】
回転センサ335は、入力回転軸320の回転速度、即ち、入力回転速度Vinを検出することが可能に構成されたセンサである。回転センサ335は、ECU100と電気的に接続されており、検出された入力回転速度Vinは、ECU100によって常に、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0071】
回転センサ336は、出力回転軸340の回転速度、即ち、出力回転速度Voutを検出することが可能に構成されたセンサである。回転センサ336は、ECU100と電気的に接続されており、検出された出力回転速度Voutは、ECU100によって常に、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0072】
油圧制御部350は、駆動プーリ331側の油圧アクチュエータ334の油圧室に供給される作動油の油圧を制御するための制御ユニットであり、当該油圧室に対し相互に並列して配置されたアップシフト制御弁351及びダウンシフト制御弁353を備える。
【0073】
アップシフト制御弁351は、駆動プーリ331側の油圧アクチュエータ334の油圧室に対する作動油の供給を制御するバルブであり、電気的に接続された第1ソレノイド352から出力される信号によって動作するように構成されている。具体的には、アップシフト制御弁351は、第1ソレノイド352における駆動デューティ比に応じて油圧アクチュエータ334の油圧室に作動油を供給するように構成されている。
【0074】
ダウンシフト制御弁353は、油圧アクチュエータ334の油圧室から作動油を排出するためのバルブであり、第2ソレノイド354から出力される信号によって動作するように構成されている。具体的には、ダウンシフト制御弁353は、第2ソレノイド354における駆動デューティ比に応じて油圧アクチュエータ334の油圧室から作動油を排出する構成となっている。
【0075】
尚、動力伝達部310及び油圧制御部350は、夫々ECU100と電気的に接続されており、その動作状態、例えば、ロックアップクラッチ312の締結状態、前後進切替装置314の切替状態、第1ソレノイド352及び第2ソレノイド354各々における駆動デューティ比等は、ECU100により制御される構成となっている。例えば、ECU100は、アクセル開度Accや車速V、機関回転速度NE等の入力信号に基づいて変速の要否を判断するとともに、当該変速の要否に基づいて、第1ソレノイド352及び第2ソレノイド354の通電状態を制御するための駆動デューティ比等を演算し、その駆動デューティ比に応じた制御信号を出力するように構成されている。また、ECU100は、従動プーリ333が無端ベルト332を挟み付けることによって生じる上述した挟圧力を制御し、CVT300における伝達トルク容量を制御することも可能に構成されている。
【0076】
このような構成の下、CVT300は、ECU100により、アクセル開度Accや車速V等の車両の走行状態に基づいて、目標変速比又は目標入力回転速度Vina(一義的に、エンジン200の目標機関回転速度)が設定され、変速比(即ち、出力回転速度Voutと入力回転速度Vinとの比)又は入力回転速度Vinがその目標値に一致するように制御される。この際、第1ソレノイド352又は第2ソレノイド354が、ECU100から入力された駆動デューティ比に応じた信号を出力することにより、アップシフト制御弁351から駆動プーリ331側の油圧アクチュエータに作動油が供給されてアップシフトが実行される。アップシフトとは、CVT300変速比を減少側に制御することを指す。これに対して、油圧アクチュエータからダウンシフト制御弁353を介して作動油が排出させられてダウンシフトが実行される。ダウンシフトとは、CVT300の変速比を増加側に制御することを指す。尚、アップシフト制御弁351及びダウンシフト制御弁353を制御することにより、CVT300の変速比を略一定に制御することも可能である。
【0077】
尚、油圧制御部350には、ロックアップクラッチ312の係合状態(即ち、締結及び解放の状態)を制御するためのソレノイドバルブも備わるが、図示は省略されている。
【0078】
<実施形態の動作>
<CVT300の基本的な変速制御>
CVT300は、ECU100によって、その入力回転速度Vinが目標入力回転速度Vinaに収束するように、例えば油圧制御部350の制御及びそれに伴う油圧アクチュエータ334の動作(作動油の供給及び排出)を介して制御される。この目標入力回転速度Vinaは、予めROMに記憶された変速マップMPVINに基づいて決定される。ここで、図4を参照し、変速マップMPVINの詳細について説明する。ここに、図4は、変速マップMPVINを概念的に表してなる概略構成図である。
【0079】
図4において、目標入力回転速度Vinaは、車速V及びアクセル開度Accをパラメータとして決定される。より具体的には、目標入力回転速度Vinaは、高車速側程増加し、且つアクセル開度Accが大きい程増加する。また、目標入力回転速度Vinaには、車速Vに応じて定まる上限値及び下限値が存在し、夫々図示上限ガード線UPL及び下限ガード線LWLによって規定されている。ECU100は、変速マップMPVINから、車速センサ12及びアクセル開度センサ13により夫々検出される車速V及びアクセル開度Accに対応する値を選択的に取得することによって、目標入力回転速度Vinaを設定する。
【0080】
一方、ロックアップクラッチ312の係合状態は、ECU100のROMに格納されたクラッチ制御マップMPCLに基づいて行われる。ここで、図5を参照し、クラッチ制御マップMPCLの詳細について説明する。ここに、図5は、クラッチ制御マップMPCLを概念的に表してなる概略構成図である。
【0081】
図5に示すように、ロックアップクラッチ312の係合状態は、アクセル開度Acc及び車速Vをパラメータとして決定される。より具体的には、ECU100は、その時点の車速V及びアクセル開度Accによって規定されるマップ上の位置が、図示解放領域に属する場合、ロックアップクラッチ312が解放されるように油圧制御部350を制御すると共に、図示締結領域に属する場合、ロックアップクラッチ312が締結されるように油圧制御部350を制御する。
【0082】
CVT300の目標入力速度Vinaは、上述した変速マップMPVINに基づいて決定されるが、この目標入力速度Vinaは、エンジン200の燃費が最良となるように設定されている。ここで、エンジン200の機関回転速度NE及び出力トルクTrの組み合わせとして動作点MVを規定すると、目標入力回転速度Vinaは、エンジン200が、エンジン200の出力P毎に定まる、燃費率を最小とし得る動作点(以下、適宜「燃費率最小動作点」と称する)で動作するように設定される。燃費率最小動作点は、本発明に係る「最適燃費動作点」の一例である。
【0083】
ここで、図6を参照し、燃費率最小動作点について説明する。ここに、図6は、燃費率最小動作点を規定する動作点マップMPMVの模式図である。
【0084】
図6において、エンジン200における燃費率最小動作点は、縦軸及び横軸に夫々出力トルクTr及び機関回転速度NEを配してなる二次元座標平面たる動作点マップとして表すことができる。燃費率最小動作点は、出力P毎に予め実験的に定まる動作点であり、図4には、動作点MV1(出力P=PWR1に対応し、機関回転速度NE1及び出力トルクTr1を採る)、動作点MV2(出力P=PWR2(PWR2>PWR1)に対応し、機関回転速度NE2(NE2>NE1)及び出力トルクTr2(Tr2>Tr1)を採る)、動作点MV3(出力P=PWR3(PWR3>PWR2)に対応し、機関回転速度NE3(NE3>NE2)及び出力トルクTr3(Tr3>Tr2)を採る)及び動作点MV4(出力P=PWR4(PWR4>PWR3)に対応し、機関回転速度NE4(NE4>NE3)及び出力トルクTr4(Tr4>Tr3)を採る)の4個の燃費率最小動作点が模式的に表されている。
【0085】
実際には、エンジン200の出力Pに応じて、より精細に燃費率最小動作点が規定されており、全ての燃費率最小動作点を繋げることにより、燃費率が最小となる動作線、即ち図示最適燃費線MVsfcを規定することができる。ECU100は、エンジン200が、後述する要求出力Ptに応じて、この最適燃費線MVsfc上のいずれかの動作点で動作するように、エンジン200及びCVT300を制御している。即ち、要求出力Ptが決定されると、ECU100は、入力回転速度Vinの制御を介して機関回転速度NEを制御し(目標入力回転速度Vinaは最適燃費動作点の機関回転速度NEに対応する値として変速マップMPVINに設定されている)、最適燃費動作点に対応する出力トルクが得られるように、スロットルバルブ210に係るスロットル開度を制御する。その結果、エンジン200の燃費は可及的に最適に維持される。尚、ECU100は、動作点マップMPMVに対応するデータ(例えば、当該燃費率最小動作点に関する機関回転速度及び出力トルクのデータ等)を、予めROMにマップとして(動作点マップMPMVそのものであってもよい)記憶している。
【0086】
尚、ECU100は、動作点マップMPMVを、CVT300の目標入力回転速度Vinaの決定に使用することも可能である。即ち、機関回転速度NEは入力回転速度Vinと一義的な関係を有しており、動作点マップMPMVにより要求出力Ptに対応する燃費率最小動作点が定まれば、必然的に機関回転速度NE及び出力トルクTrの目標値は定まり得る。従って、当該機関回転速度NEの目標値に基づいて、入力回転速度Vinの目標値たる目標入力回転速度Vinaを設定することも可能である。尚、本実施形態では、説明の煩雑化を防ぐ目的から、変速マップMPVINに基づいて設定された目標入力回転速度Vinaは、燃費率最小動作点に対応する機関回転速度NEと一致するものとする(ロックアップクラッチ312も締結されているものとする)。但し、目標入力回転速度Vinaの設定態様は、ここに述べたものに限定されず、例えば、トルクコンバータ311の伝達ロスや、作動油の応答遅延等を考慮した適宜の補正がなされてもよい。
【0087】
<変速制御処理の詳細>
最適燃費線MVsfc上の動作点でエンジン200を動作させることにより、基本的にエンジン200は最も効率よく動作し得るが、エンジン200の動作点を変更するためになされるCVT300の変速に際しては、例えば機関回転速度NEの上昇を伴う加速時において、出力トルクの一部がイナーシャトルクとして損失し(即ち、出力トルクの一部が機関回転速度の上昇に供され)、トルク感の減少によってドライバビリティが悪化する場合がある。他方、要求出力が頻繁に変化し且つその変化量自体は軽微となり易い、例えば定常走行時における車速維持のための加減速要求時等には、頻繁な回転変動によって燃費は悪化し易く、相対的にみてドライバビリティの悪化がより顕在化しかねない。そこで、車両10では、ECU100が変速制御処理を実行することによって、このような車両10のドライバビリティの悪化が抑制される。ここで、図7を参照し、変速制御処理の詳細について説明する。ここに、図7は、変速制御処理のフローチャートである。
【0088】
図7において、ECU100は、要求出力Ptを算出する(ステップS101)。要求出力Ptを算出する際、ECU100は先ず要求駆動力Ftを取得する。要求駆動力Ftは、駆動輪たる左前輪FL及び右前輪FRに要求される駆動力である。ECU100のROMには、予め車速V及びアクセル開度Accに対応付けられた駆動力マップが格納されており、要求駆動力Ftを取得するにあたって、ECU100は、車速センサ12により検出される車速V及びアクセル開度センサ13により検出されるアクセル開度Accに対応する値を当該駆動力マップから選択的に取得することによって要求駆動力Ftを取得する。次に、ECU100は、この要求駆動力Ft、車速V及び駆動輪の半径rに基づいて、「Ft×r×V」なる演算処理を行い、当該演算処理の結果に適宜単位換算を行うことにより最終的に要求出力Ptを算出する。
【0089】
要求出力Ptを算出すると、ECU100は、WOT出力Pwを算出する(ステップS102)。ここで、図8を参照して、WOTトルクPwについて説明する。ここに、図8は、動作点マップMPMVの他の模式図である。尚、同図において、図6と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0090】
図8における動作点マップMPMVの構成は、図6に示した動作点マップMPMVと基本的に同一であり、最適燃費線MVsfcの他にWOTトルク線MVwotを追加したものとなっている。ここで、WOTトルク線MVwotは、エンジン200の機関回転速度NE毎に、スロットルバルブ210が全開状態に制御されている場合のトルク、即ちWOTトルクTrwに対応する動作点(以下、適宜「WOT動作点」と称する)を繋げて得られる動作線であり、機関回転数NE毎にエンジン200の物理的な最大出力(即ち、WOT出力)を表してなる動作線である。例えば、図示機関回転速度NE1において、最適燃費線MVsfc上の動作点(即ち、燃費率最小動作点)はMV1であり、WOTトルク線MVwot上の動作点は、出力トルクTrw1に対応する図示MVW1である。即ち、機関回転速度NE1において、エンジン200のWOT出力は、「NE1×Trw1」に対応する値となる。
【0091】
一方、動作点マップMPMVにおいては、エンジン200の出力が等しい動作点を繋げて得られる等出力線EPを規定することができる。図8においては、出力PWR1及びPWR2に夫々対応する二種類の等出力線EP1及びEP2が示されている。ここで特に、機関回転数NE1に対応するWOT動作点は、等出力線EP2上の動作点であり、即ち、機関回転速度NE1におけるエンジン200のWOT出力Pwは、機関回転速度NE2における最適燃費線MVsfc上の燃費率最小動作点MV2に対応する出力と同様、PWR2となっている。尚、ECU100は、当該WOT動作点に関するデータ(例えば、機関回転速度及び出力トルク(即ち、WOTトルク)のデータ)、即ち図8に示す動作点マップMPMVに対応するデータを、予めROMにマップとして格納することによって保持しており、機関回転速度NEに応じてWOTトルクを特定することが可能である。
【0092】
図7に戻り、ECU100は、ステップS102に係る処理において、クランクポジションセンサ206の出力信号を時間処理して得られる機関回転速度NEに対応するWOTトルクTrwと当該機関回転速度NEとに基づいて(より具体的には、これらの積に適宜単位換算を施すことによって)、WOT出力Pwを算出する。
【0093】
次に、ECU100は、最適燃費出力Pcを算出する(ステップS103)。既に述べたように、ECU100は図6及び図8に示す動作点マップに対応するマップ(個別に保持する必要は無い)をROMに保持しており、当該マップを参照することによって、機関回転速度NEに対応する最適燃費線MVsfc上の出力トルクTrを特定することが可能である。従って、ステップS103に係る処理において、ECU100は、機関回転速度NEと最適燃費線MVsfc上の出力トルクTrとの積に適宜単位換算を施すことによって、最適燃費出力Pcを算出することができる。
【0094】
ステップS101乃至ステップS103に係る処理によって、要求出力Pt、WOT出力Pw及び最適燃費出力Pcが算出されると、ECU100は、要求出力PtがWOT出力Pw以下であるか否かを判別する(ステップS104)。
【0095】
要求出力PtがWOT出力Pwよりも大きい場合(ステップS104:NO)、ECU100は、基準変速速度で変速が行われるように、エンジン200及びCVT300を制御する(ステップS112)。ここで、CVT300の変速速度とは即ち、入力回転速度Vinの時間変化率であり、基準となる変速速度は、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、エンジン200の動作点が、実践上燃費の悪化を顕在化させることのない程度に最適燃費線MVsfcをトレースし得るように定められている。
【0096】
ここで、現時点の機関回転速度を上述したNE1とした場合、図8に示すようにWOT出力はPWR2である。従って、PWR2よりも大きい要求出力に対しては、通常の変速速度で変速が行われる。例えば、要求出力が図6に示すPWR3である場合、最適燃費線MVsfcをトレースしつつ、機関回転速度がNE1からNE3に、且つ出力トルクがTr1からTr3に上昇するように(図6を参照すれば、動作点MV1から動作点MV3まで最適燃費線MVsfcをトレースしつつ動作点が変化するように)、CVT300の変速比及びエンジン200の出力トルクTrが、夫々油圧制御部350及びスロットル開度の制御を介して制御される。
【0097】
一方、要求出力PtがWOT出力Pw以下である場合(ステップS104:YES)、ECU100は、要求出力Ptが最適燃費出力Pc以上であるか否かを判別する(ステップS105)。ここで、エンジン200の動作点が基本的に最適燃費線MVsfc上で設定されることに鑑みれば、ステップS104は、基本的には加速要求がなされているか否かを判別する処理となるが、後述する変速速度減少制御がなされる過程においては、動作点は必ずしも燃費率最小動作点に設定されないため、ステップS104においては、必ずしも加速要求の有無のみが判別される訳ではない。
【0098】
要求出力Ptが最適燃費出力Pc未満である場合(ステップS105:NO)、即ち、典型的にエンジン200の動作点が燃費率最小動作点に制御された状態においてなされる減速要求時を含む顕著な減速要求時には、ECU100は、処理をステップS112に移行し、上述したように通常の変速速度で変速処理を実行する。
【0099】
要求出力Ptが最適燃費出力Pc以上である場合(ステップS105:YES)、ECU100は、現時点の要求出力Pt(i)(iは時系列を規定する符号であり、現時点の値であることを意味する)が、一検出タイミング前の要求出力Pt(i−1)と等しいか否かを判別する(ステップS106)。P(t)がP(t−1)と等しい場合(ステップS106:YES)、即ち、要求出力の変化が生じていない場合、ECU100は変速が継続中であるか否かを判別する(ステップS107)。変速が終了している場合(元々変速の必要性がない場合も含む)(ステップS107:NO)、ECU100は、ステップS101に処理を戻し、一連の処理を繰り返し実行する。一方、変速中である場合(ステップS107:YES)、ECU100は、変速速度を維持しつつ変速を継続させ(ステップS108)、処理をステップS101に戻して一連の処理を繰り返す。尚、変速が終了したか否かは、CVT300の入力回転速度Vinが目標入力回転速度Vinaに収束したか否かによって基づいて判断される。
【0100】
一方、要求出力Ptが変化している場合(ステップS106:NO)、ECU100は、要求出力Pt(i)が要求出力Pt(i−1)よりも大きいか否か、即ち要求出力が増加中であるか否かを判別する(ステップS109)。要求出力Ptが増加中である場合(ステップS109:YES)、ECU100は、ダウン変速に係る変速速度減少制御を実行し、車両10を加速させる(ステップS110)。また、要求出力Ptが減少中である場合(ステップS109:NO)、ECU100は、アップ変速に係る変速速度減少制御を実行し、車両10を減速させる(ステップS111)。いずれにせよ、要求出力Ptが最適燃費出力Pc以上であり且つWOT出力Pw以下である場合には、変速速度減少制御が実行される。ここで、変速速度の減少制御とは、ステップS112に係る基準変速速度よりも遅い変速速度で変速を実行することを指す。
【0101】
ここで、変速速度は、油圧制御部350における第1及び第2ソレノイドの駆動デューティ比の制御により制御することができる。即ち、定性的にみて、当該駆動デューティ比を大きく設定すれば、入力回転速度Vinは目標入力回転速度Vinaに対し相対的に短時間で収束し、変速速度は速くなり、当該駆動デューティ比を小さく設定すれば、入力回転速度Vinは目標入力回転速度Vinaに対し相対的に長い時間をかけて収束し、変速速度は遅くなる。従って、ECU100は、基準変速速度に対応する駆動デューティ比に対して小さい駆動デューティ比を設定することにより、変速速度を基準変速速度に対し遅らせることが可能である。
【0102】
尚、本実施形態においては、目標入力回転速度Vinaは、変速速度減少制御の実行有無に対し不変であるとするが、変速速度の減少を伴う限りにおいて、目標入力回転速度Vinaの変更が行われてもよい。
【0103】
ここで、図9を参照し、このような変速制御処理の効果について説明する。ここに、図9は、変速制御処理の実行過程における、アクセル開度Acc、要求出力Pt及び入力回転速度Vinの時間特性を表すタイミングチャートである。
【0104】
図9において、横軸には共通に時刻が採られており、縦軸の系列には、上段から順にアクセル開度Acc、要求出力Pt及びCVT300の入力回転速度Vinが表されている。
【0105】
図9において、上述した変速制御処理が実行される過程で、時刻T1においてドライバがアクセルペダル14を踏下することによってアクセル開度AccがAcc1から変化を開始し、時刻T2においてAcc2(Acc2>Acc1)まで変化したとする。
【0106】
この場合、要求出力Ptは、図示PRF_Pt(実線参照)に示す如く、アクセル開度Accと一義的な関係を有しつつ変化し、時刻T1以前の要求出力PWR1から時刻T2において要求出力PWR2に変化する。ここで、時刻T1以前では、エンジン200の動作点は最適燃費線MVsfc上で規定される燃費率最小動作点(即ち、動作点MV1)に制御されており、入力回転速度Vin(機関回転速度NEと等しい)は、NE1で安定している。従って、時刻T1におけるWOT出力Pwは既に述べたようにPWR2となる。ここで、要求出力Ptが、その時点のWOT出力以下となる比較的軽微な加速要求がなされる期間においては、変速制御処理におけるステップS104及びステップS105に係る処理は共に「YES」となり、変速速度減少制御が実行される。
【0107】
尚、要求出力Ptの検出周期が、例えば時刻T1から時刻T2に該当する期間であれば、要求出力Ptは、PWR1からPWR2に不連続に変化することになるが(この場合も、WOT出力以下であるから、制御上の変化は生じない)、実際には、より短い周期で要求出力Ptの算出は行われており、時刻T1から時刻T2に至る期間中にも、絶えず目標入力回転速度Vinaの設定及びそれに伴う入力回転速度Vinの制御並びに出力トルクの制御は行われている。
【0108】
ここで、本実施形態との比較に供すべき比較例として、基準変速速度に準じた変速処理が行われた場合の入力回転速度Vinの時間特性が図示PRF_compとして示される(一点鎖線参照)。PRF_compに示すように、基準変速速度に準じる場合、要求出力Ptの増加に応じて入力回転速度Vinが比較的急激に増加し、要求出力PtがPWR2で安定する時刻T2において、入力回転速度VinもPWR2に対応する燃費率最小動作点に係る機関回転速度の値であるNE2に収束する。従って、時刻T2において、変速制御処理におけるステップS107に係る判別処理が「NO」となって、実質的に変速が終了する。この場合、平均的な変速速度は、「(NE2−NE1)/(T2−T1)」に相当する値となる。
【0109】
このような比較例に対し、本実施形態に係る変速制御処理によれば、要求出力PtがWOT出力以下であれば(即ち、図示PRF_PtがWOT出力Pwの特性を表す図示PRF_Pw(一点鎖線参照)を下回る限り)、変速速度減少制御が実行される。その結果、入力回転速度Vinの時間特性を表す、図示PRF_Vin1(実線参照)の傾きは、比較例に係るPRF_compに対して緩やかとなり、時刻T2において要求出力PtがPWR2で安定した時点では、入力回転速度Vinは未だ目標入力回転速度VinaたるNE2に到達しない。従って、変速制御処理におけるステップS107に係る判別処理が「YES」となり、入力回転速度Vinが出力PWR2に対応する燃費率最小動作点MV2に係る機関回転速度NE2に到達するまで、入力回転速度Vinは増加を継続する。即ち変速が継続する。このような過程を辿り、例えば図示時刻T3において入力回転速度VinがNE1’(NE1<NE1’<NE2)に到達したとすると、変速速度は、「(NE1’−NE1)/(T3−T1)」に相当する値(以下、「減少制御後速度」と称する)となり、基準変速速度に対し明らかに減少する。
【0110】
ここで、要求出力PtがWOT出力以下となる加速要求とは、車速を維持するための軽微な加速要求であることが多く、必然的に頻繁且つ微小なアクセルワークを伴い易い。そのような状況を反映するものとして、図9において、時刻T3においてアクセル開度Accは再び減少に転じ、時刻T4において従前のアクセル開度Acc1まで減少したとする。この場合、要求出力Ptも時刻T3以降、RWR2から減少し、時刻T4において従前のPWR1まで減少する。
【0111】
一方、既に述べたように、本実施形態に係る入力回転速度Vinは、変速制御処理におけるステップS110においてなされる変速速度減少制御により、時刻T3においてNE1’である。即ち、図8を参照すれば、エンジン200の動作点は、等出力線EP2上における、機関回転速度NE1に対応するWOTトルク線MVwot上の動作点MVW1から機関回転数NE2における燃費率最小動作点MV2に至るまでの区間において、機関回転速度NE1’に対応する動作点に制御されている。
【0112】
従って、時刻T3において、入力回転速度Vinは、要求出力Ptの減少に伴い、NE1’から減少を開始する。この際、要求出力Ptは、その時点の最適燃費出力Pc以上の範囲で減少しており(即ち、変速制御処理におけるステップS105が「YES」である状態)、変速制御処理におけるステップS111に係る処理によって、アップ変速に係る変速速度減少制御が実行される。即ち、全体的に見て、本実施形態に係る入力回転速度Vinの変化の特性は緩やかであり、入力回転軸320と連結されたエンジン200の機関回転速度NEの変動が抑制されることになる。
【0113】
ここで特に、CVT300における変速に伴うイナーシャトルクの大きさは、変速速度、即ち、入力回転速度Vinの変化率(一義的に、目標入力回転速度Vinaの変化率)に依存し、変速速度が大きい程大きくなる。従って、図示特性PRF_Vin1に従って変速がなされる場合、比較例に係る図示特性PRF_compに従って変速がなされる場合と較べて、トルクの損失が抑制される。感性的に言えば、比較例が機関回転数を上昇させ、言わば「エンジン出力で走行する」状態を実現するのに対し、本実施形態では機関回転数の変動を抑えて出力トルクTrの損失を減らし、「トルクで走行する」状態を実現する。従って、本実施形態によれば、比較例に従った変速がなされる場合と較べて、明らかに加速感を向上させることができ、ドライバビリティの向上に寄与するのである。
【0114】
尚、変速速度減少制御が実行される場合における変速速度は、本実施形態に係る減少速度(即ち、特性PRF_Vin1に対応する変速速度)に限定されない。ここで、図10を参照し、変速速度の採り得る態様について説明する。ここに、図10は、変速制御処理の実行過程における、アクセル開度Acc、要求出力Pt及び入力回転速度Vinの時間特性を表す他のタイミングチャートである。尚、同図において、図9と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0115】
図10において、入力回転速度Vinの時間特性は、変速速度を、要求出力PtがWOT出力Pwよりも大きい場合(例えば、上述したPRF_compによって規定される変速速度)と比較して小さくし得る限りにおいて、上述したPRF_Vin1に限定されない。例えば、入力回転速度Vinの時間特性は、図示PRF_Vin2(二点鎖線参照)であってもよいし、図示PRF_Vin3(破線参照)であってもよい。特に、後者の場合、目標入力回転速度Vinの変化率はゼロ、即ち変速速度はゼロである。この場合、他の特性と異なり、動作点が要求出力に対応する燃費率最小動作点に到達することはないが、上述したように、比較的軽微な加速要求には減速要求が伴うことも多く、実践上問題は生じない。
【0116】
尚、動作点が燃費率最小動作点から外れる場合、定常的に見ればエンジン200の燃費は低下する可能性があるが、変速速度の減少制御を実行すべき状況における、機関回転速度NEの変動の影響に鑑みれば、過渡的には、変速速度の減少制御を行った方が燃費の向上に寄与し得る。少なくとも、ドライバビリティの向上に係る利益の方が、燃費の低下に係る不利益を上回る。但し、基本的にトレードオフの関係にある燃費とドライバビリティとを可及的に効果的に両立し得るように、変速速度は、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、ドライバビリティの悪化を少なくとも実践上顕在化させることがない範囲で、変速中のエンジン200の動作点が可及的に燃費率最小動作点に近付くように決定されていてもよい。
<第2実施形態>
第1実施形態では、変速速度減少制御の実行時における変速速度は固定値であるが、無論当該変速速度は可変であってもよい。ここで、図11を参照して、そのような本発明の第2実施形態について説明する。ここに、図11は、変速速度の決定態様を模式的に表すエンジン200の動作線の模式図である。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0117】
図11において、CVT300の変速速度が、現時点のエンジン出力P、WOT出力Pw及び要求出力Ptの相対関係に基づいて決定される様子が示される。即ち、本実施形態において、ECU100は、現時点の出力P(ここでは、PWR1とする)を0%、またWOT出力Pw(ここでは、PWR2)を100%とした場合の、要求出力Ptの割合に基づいて、変速速度を決定する。
【0118】
例えば、要求出力PWR1a(PWR1<PWR1a<PWR2)に対応する等回転線EP1aが機関回転速度NE1と交差する動作点が図示MV1aである場合に、当該動作点に対応する出力トルクTr(即ち、要求出力Ptを機関回転速度NE1で出力するための出力トルクである)が、図示Tr1a(Tr1<Tr1a<Trw1)であるとする。このTr1aが、上述した割合の尺度において30%であれば、ECU100は、変速速度を基準変速速度の30%に設定する。同様に、要求出力PWR1b(PWR1a<PWR1b<PWR2)に対応する等回転線EP1bが機関回転速度NE1と交差する動作点が図示MV1bである場合に、当該動作点に対応する出力トルクTr(即ち、要求出力Ptを機関回転速度NE1で出力するための出力トルクである)が、図示Tr1b(Tr1a<Tr1b<Trw1)であるとする。このTr1bが、上述した割合の尺度において70%であれば、ECU100は、変速速度を基準変速速度の70%に設定する。
【0119】
このように、現時点のエンジン出力に対する偏差が大きい程変速速度が大きくなるように変速速度が設定されることによって、WOT動作点を境にした制御上のハンチングが防止され、変速速度の不連続性が解消される。即ち、変速速度が減少制御されることに新たに起因するドライバビリティの悪化が防止され、更に効率的且つ効果的な変速が実現される。
<第3実施形態>
上述した各実施形態では、変速速度の減少制御に係る実行可否を規定する最大出力がWOT出力Pwに設定される。然るに、最大出力は、WOT出力に限定されない。ここで、図12及び図13を参照して、本発明に係る第3実施形態について説明する。ここに、図12は、本発明の第3実施形態に係る変速制御処理のフローチャートである。尚、同図において、図7と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0120】
図12において、ECU100は、要求出力Ptを算出した後、上限出力Pmaxを取得する(ステップS201)。ここで、図13を参照し、上限出力Pmaxについて説明する。ここに、図13は、エンジン200の動作点マップMPMVの更に他の模式図である。尚、同図において、図8と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0121】
図13において、動作点マップMPMVには、予めエンジン200の燃費の悪化が顕在化し得る領域として、燃費悪化領域(図示斜線部分参照)が規定されている。この燃費悪化領域は、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーションに基づいて、燃費の悪化に係る不利益がドライバビリティの向上に係る利益を上回ると判断される程度に、最適燃費線MVsfcにおける燃費に対する燃費の悪化の度合いが大きくなるものとして規定された動作点の集合であり、概ねWOTトルク線MVwotに沿って、WOTトルク線MVwotの下方に存在している。この燃費悪化領域の下限を規定する動作点に対応する出力値が、上限出力Pmaxであり、例えば、機関回転速度NE1に対しては、図示動作点MV1maxに対応する出力(即ち、PWR1より大きく且つPWR2未満の出力)が上限出力Pmaxとして決定される。このような燃費悪化領域に関する動作点のデータは、予めECU100のROMにマップとして格納されており、ECU100は現時点の機関回転速度NEに対し、当該マップから上限出力Pmaxの値を選択的に取得することが可能である。
【0122】
図12に戻り、上限出力Pmaxが取得されると、第1実施形態と同様に最適燃費出力Pcの算出処理を経て、要求出力Ptが当該上限出力Pmax以下であるか否かが判別される(ステップS202)。ステップS202に係る処理は、第1実施形態において、WOT出力Pwに対してなされる処理(ステップS104)と同様であり、要求出力Ptが上限出力Pmaxよりも大きい場合(ステップS202:NO)、変速速度は基準変速速度に制御され、要求出力Ptが上限出力Pmax以下である場合(ステップS202:YES)、ステップS105以下の処理が実行される。
【0123】
第3実施形態によれば、変速速度の減少制御を実行すべき緩やかな加減速時において、燃費が過度に悪化する可能性を排除しつつドライバビリティを向上させることが可能となり、車両10のドライバビリティ向上に係る利益を、より効率的且つ効果的に享受することが可能となる。また、燃費に限らず、同様の領域を例えばエンジン200のエミッション量に対し規定することも可能である。更に、これらは相互に相容れないものではなく、予め燃費悪化領域とエミッション悪化領域とを規定しておくことも容易にして可能である。その場合、いずれの領域にも抵触しない動作点のうち一の機関回転速度NEに対し最大となる出力が最大出力Pmaxとされてもよい。
【0124】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の変速制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1実施形態に係り、本発明に係る車両の変速制御装置に対応する車両の要部構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。
【図2】図1の車両におけるエンジンの模式図である。
【図3】図1の車両に備わるCVTの構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。
【図4】図3のCVTの入力回転速度の設定に供される変速マップの概略構成図である。
【図5】図3のCVTにおけるロックアップクラッチの係合状態の決定に供されるクラッチ制御マップの概略構成図である。
【図6】燃費率最小動作点を規定する動作点マップの模式図である。
【図7】ECUにより実行される変速制御処理のフローチャートである。
【図8】動作点マップの他の模式図である。
【図9】図5の変速制御処理の実行過程における、アクセル開度、要求出力及び入力回転速度の時間特性を表すタイミングチャートである。
【図10】図5の変速制御処理の実行過程における、アクセル開度、要求出力及び入力回転速度の時間特性を表す他のタイミングチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係り、変速速度の決定態様を模式的に表す動作線の模式図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る変速制御処理のフローチャートである。
【図13】動作点マップの更に他の模式図である。
【符号の説明】
【0126】
10…車両、100…ECU、200…エンジン、210…スロットルバルブ、300…CVT、310…動力伝達部、320…入力回転軸、330…変速部、340…出力回転軸、350…油圧制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
該内燃機関の機関出力軸に該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される入力軸及び車軸に該車軸の回転に伴って回転可能に連結される出力軸を有し、該入力軸の回転速度を表す入力回転速度と該出力軸の回転速度を表す出力回転速度との間の変速比を連続的に変化させることが可能な変速機と
を備えた車両の変速制御装置であって、
ドライバの要求出力を特定する要求出力特定手段と、
所定の変速条件に基づいて前記入力回転速度の目標値を表す目標入力回転速度を設定する設定手段と、
前記入力回転速度が該設定された目標入力回転速度となるように前記変速機を制御することにより変速を行う変速制御手段と、
前記特定された要求出力が予め許容される最大出力以下である場合に、前記特定された要求出力が前記最大出力よりも大きい場合と較べて前記変速に係る変速速度を減少させるものとして規定される変速速度減少制御を実行する変速速度制御手段と
を具備することを特徴とする車両の変速制御装置。
【請求項2】
前記最大出力は、現時点の前記内燃機関の機関回転速度と、該現時点の機関回転速度における前記内燃機関のWOTトルクとに基づいて規定されるWOT出力である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の変速制御装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記内燃機関における機関回転速度と出力トルクとの組み合わせとして規定される動作点のうち、前記内燃機関の燃費率を小さくするものとして前記内燃機関の出力に応じて定まる最適燃費動作点に対応する機関回転速度に基づいて前記目標入力回転速度を設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の変速制御装置。
【請求項4】
前記変速速度制御手段は、前記特定された要求出力が、現時点の前記内燃機関の機関回転速度における、前記最大出力以下であり且つ前記最適燃費動作点に対応する出力以上である場合に、前記変速速度減少制御を実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の変速制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の実出力を特定する実出力特定手段を更に具備し、
前記変速速度制御手段は、前記特定される要求出力と前記特定される実出力との偏差が小さい程前記変速速度が減少するように前記変速速度減少制御を実行する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の変速制御装置。
【請求項6】
内燃機関と、
該内燃機関の機関出力軸に該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される入力軸及び車軸に該車軸の回転に伴って回転可能に連結される出力軸を有し、該入力軸の回転速度を表す入力回転速度と該出力軸の回転速度を表す出力回転速度との間の変速比を連続的に変化させることが可能な変速機と
を備えた車両の変速制御装置であって、
ドライバの要求出力を特定する要求出力特定手段と、
所定の変速条件に基づいて前記入力回転速度の目標値を表す目標入力回転速度を設定する設定手段と、
前記入力回転速度が該設定された目標入力回転速度となるように前記変速機を制御することにより変速を行う変速制御手段と、
前記特定された要求出力が、現時点の前記内燃機関の機関回転速度と、該現時点の機関回転速度における前記内燃機関のWOTトルクとに基づいて規定されるWOT出力以下である場合に、前記特定された要求出力が前記WOT出力よりも大きい場合と較べて前記変速に係る変速速度を減少させるものとして規定される変速速度減少制御を実行する変速速度制御手段と
を具備することを特徴とする車両の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−232180(P2008−232180A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68971(P2007−68971)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】