説明

車両の自動操舵アシスト装置

【課題】 運転者のハンドル操作によることなく自動的に車両の適正な走行を行わせ、運動特性の劣っている高齢者等でも安全に運転できる自動操舵アシスト装置を提供する。
【解決手段】 自動操舵アシスト装置は、自動操舵に切り替える切替スイッチ24と、自動操舵への切り替えに応じてステアリングシャフト12を回動させるアシスト電動機21と、駆動モータ14の駆動によるタイロッド16が左右の前輪を通して路面から受ける左右の応力を検出する応力センサ28a,28bと、応力センサの検出結果を受けて左右の応力を等しくさせる力を演算する応力演算装置31と、左右のミラー34に設けたラインセンサ34a,34bと、ラインセンサの中央からの白線までの距離を演算して余裕幅として出力する位置演算装置35と、応力演算装置31と位置演算装置35の出力等から回動角度を演算してアシスト電動機を駆動するアシストサーボ増幅器32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングの回動を駆動手段により駆動モータの回動に変換し、駆動モータの回動をギア装置によりタイロッドの車両左右方向の直線運動に変換し、タイロッドの直線運動をナックルアームを通してキングピン周りの前輪の回動につなげる車両の電動操舵系に適用される自動操舵アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会や核家族化の到来により、高齢者が車の運転を続ける機会がますます増えているが、これに伴い、運動能力や反応速度の低下に伴う高齢者の運転能力の低下が、交通事故の増加につながってきている。特に、高齢者の場合、運転中の睡魔の発生等により、運転中にハンドルから手を離してしまうおそれがあり、そのために運転操作に支障をきたして事故に結びつくような場合も考えられる。このような状態で、例えば、直線道路からカーブに高速で入るような場合に、事故発生の可能性が高くなる。このような高齢者による交通事故を減少させ交通安全を実現するために、高齢者の運転能力の低下を補い、たとえハンドルから手を離すようなことがあっても、適切に対応できるような手段を考える必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、道路の中央にレーンマーカを設けておき、また車両にはレーンマーカを検知するセンサと、センサの検知に応じて自動的にハンドルを操作して車両の位置を適正に修正する自動操舵装置を設け、センサによるレーンマーカの検知結果に応じて自動操舵装置により車両の位置を自動的に適正位置に修正する方法が知られている。また、他の方法としては、道路の中央に電線を埋設し、この電線に電流を流して磁界を発生させ、また車両にはこの磁力を検知する一対のコイルと、コイルの検知に応じて自動的にハンドルを操作して車両の位置を適正に修正する自動操舵装置を設け、コイルによる磁力の検知結果に応じて自動操舵装置により車両の位置を自動的に適正位置に修正する方法が知られている。これらの方法により、外界の変化に対する運動特性の劣っている高齢者等であっても、道路の変化に合わせた適正な操舵が自動的に行われるため、高齢者ドライバー等による特にカーブ箇所での事故の発生を確実に防止できる。
【特許文献1】特開平10−69219号
【0004】
しかし、上記方法は、いずれも道路にマーク等を設けることに加えて、車両にセンサ等の検知手段を含む自動操舵装置を設ける必要がある。そのため、道路の全面的な補修が必要になり、そのためのコストが膨大になる。また、道路のマーク等を設けるための社会資本の投下が、全ての車両に恩恵を与えないことによる不平等及び資本投下の無駄も生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決しようとするもので、運転者のハンドル操作によることなく自動的に車両の適正な走行を行わせることができ、運動特性の劣っている高齢者等でも安全に運転できるようにした車両の自動操舵アシスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、ステアリングシャフトの回動を駆動手段により駆動モータの回動に変換し、駆動モータの回動をギア装置によりタイロッドの車両左右方向の直線運動に変換し、タイロッドの直線運動をナックルアームを通してキングピン周りの前輪の回動につなげる車両の電動操舵系に適用される自動操舵アシスト装置であって、通常の運転者自身による操舵と自動操舵とを切り替える切替手段と、切替手段による自動操舵への切り替えに応じて、ステアリングシャフトを自動的に回動させるアシスト電動機と、タイロッドが左右の前輪を通して路面から受ける左右の応力を検出する左右応力検出手段と、左右応力検出手段からの検出結果を受けて、左右の応力を等しくさせるような力を演算する応力演算手段と、応力演算手段からの演算結果を受けて、アシスト電動機の回動を制御するアシスト電動機駆動手段とを設けたことにある。
【0007】
上記のように構成した本発明においては、切替手段により自動操舵に切り替えられると、アシスト電動機がステアリングシャフトを自動的に回動させる。このステアリングの回動に応じて、駆動手段により変換されて駆動モータが回動し、駆動モータの回動がギア装置によりタイロッドの左右の直線運動に変換される。このタイロッドの直線運動により、ナックルアームを通してキングピン周りの左右の前輪が回動させられる。一方、路面からの応力が、車両の左右の前輪を通し、キングピン、ナックルアームを経てタイロッドに伝えられ、タイロッドに圧縮あるいは引張り力が発生する。従来の油圧式パワーステアリング系では、前輪はトウ角を有しているので、タイロッドには圧縮力が生じているが、電動式操舵系ではタイロッドに加わる左右の力が分離でき、さらに圧縮力か引張り力かの区別もできる。このタイロッドに加わる路面からの左右の応力を左右応力検出手段により検出し、左右応力検出手段からの検出結果を受けて、応力演算手段により左右の応力を等しくさせるような力が演算される。応力演算手段からの演算結果を受けて、アシスト電動機駆動手段がアシスト電動機の回動を制御することにより、自動的にステアリングの回動が適正になるように是正される。
【0008】
そのため、本発明によれば、通常の車両の運転において、道路の特にカーブ箇所に対して、運転者のハンドル操作によることなく自動的に車両の適正な走行を行わせることができ、外界の変化に対する運動特性の劣っている高齢者等でも安全に運転を行うことができる。また、本発明により、車両の自動操舵アシスト装置により、自動運転が確保され車両毎の相違がないため、車両通行の流れが乱れて通行の効率が低下するおそれがなく、渋滞や事故の発生を抑制することができる。
【0009】
また、本発明において、車両の前側左右に設けられた左右のミラー側に取り付けられて、車両前方の路面からの赤外線を検知することにより路面の白線位置を含む位置関係を検出する位置検出手段と、位置検出手段による検出結果から、白線位置に基づいて車両の左右方向へのずれを演算する位置修正演算手段とを設け、位置修正演算手段からの車両の左右方向へのずれについての演算結果をアシスト電動機駆動手段に入力して、応力演算手段の演算結果に加えて、アシスト電動機の回動制御に用いてもよい。
【0010】
これにより、車両の前側左右に設けた左右のミラー側に取り付けられた位置検出手段により、車両前方の路面に設けた白線を含む位置関係を検出することができ、これに基づいて位置修正演算手段により車両の左右へのずれを求めることができる。左右のずれの演算結果を、アシスト電動機駆動手段に入力して、応力演算手段の演算結果に加えて、アシスト電動機の回動の制御に用いることができる。これにより、応力演算手段の演算結果によるアシスト電動機の回動の制御のみでは不十分な場合に、その結果を位置修正演算手段の演算結果で修正することにより、車両が路面の白線を越えることを防止して、より確実に車両の適正な自動運転を確保することができる。
【0011】
また、本発明において、車両の速度を検出する速度検出手段を設け、速度検出手段からの検出結果を、アシスト電動機駆動手段に入力して、位置修正演算手段及び応力演算手段の演算結果に加えて、アシスト電動機の回動制御に用いることが好ましい。これにより、速度検出手段からの車両速度の検出結果を、アシスト電動機駆動手段に入力することができ、位置検出手段及び応力演算手段の演算結果に対して車両速度の影響を加えることができ、車両の走行状態に則したより適切なアシスト電動機の回動の制御を行うことができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、ステアリングシャフトの回動を駆動手段により駆動モータの回動に変換し、駆動モータの回動をギア装置によりタイロッドの車両左右方向の直線運動に変換し、タイロッドの直線運動をナックルアームを通してキングピン周りの前輪の回動につなげる車両の電動操舵系に適用される自動操舵アシスト装置であって、ステアリングから運転者の手が離れたことを検出する握り検出手段と、握り検出手段による運転者の手が離れたことの検出結果に応じて、ステアリングシャフトを自動的に回動させるアシスト電動機と、タイロッドが左右の前輪を通して路面から受ける左右の応力を検出する左右応力検出手段と、左右応力検出手段からの検出結果を受けて、左右の応力を等しくさせるような力を演算する応力演算手段と、応力演算手段からの演算結果を受けて、アシスト電動機の回動を制御するアシスト電動機駆動手段とを設けたことにある。
【0013】
他の特徴においては、車両の走行中に、ステアリングから運転者の手が離れると、握り検出手段による運転者の手が離れたことが検出され、その検出結果に応じてアシスト電動機がステアリングシャフトを自動的に回動させる。このステアリングシャフトの回動に応じて、上述のように、アシスト電動機駆動手段がアシスト電動機の回動を制御することにより、自動的にステアリングシャフトの回動が適正になるように是正される。一方、運転者がステアリングを握って運転している状態のときは、自己の意思で運転を行うことができるため、自動操舵による違和感を持つことはなくなる。そのため、本発明においては、自動操舵による違和感を持つことなく、ステアリングから手を離した場合のように自動操舵が必要なときに自動的に操舵が行われるため、特に運動特性の劣っている高齢者等でも安全に運転を行うことができ、車両通行の流れの乱れを抑えて渋滞や事故の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、切替手段により自動操舵へ切り替えられると、アシスト電動機がステアリングシャフトを自動的に回動させることにより、駆動モータの駆動によりタイロッドの左右の直線運動がナックルアームを通してキングピン周りの左右の前輪の回動をもたらす。一方、路面からの応力によりタイロッドに発生した圧縮あるいは引張り力が左右応力検出手段により検出され、その検出結果を受けて、応力演算手段により左右の応力を等しくさせるような力が演算され、その演算結果を受けてアシスト電動機駆動手段がアシスト電動機の回動を制御することにより、自動的にステアリングシャフトの回動が適正になるように是正される。その結果、本発明においては、運転者のハンドル操作によることなく自動的に車両の適正な走行を行わせることができるため、運動特性の劣っている高齢者等でも安全に車両の運転を行うことができる。
【0015】
また、本発明において、車両の前側左右に設けられた左右のミラー側に取り付けられ位置検出手段により車両前方の路面に設けた白線を検出して、位置修正演算手段により車両の左右へのずれを求めることにより、応力演算手段の演算結果に加えて、アシスト電動機の回動の制御に用いることができ、より確実に車両の適正な自動運転を確保することができる。さらに、車両の速度をアシスト電動機の制御に加えることにより、さらに適正な自動運転が可能になる。なお、本発明においては、切替手段によって運転者自身による操舵から自動操舵に切り替える代りに、電動式操舵系を備えた車両の走行中に、ステアリングから運転者の手が離れたことを握り検出手段によって検出し、その検出結果に応じてアシスト電動機がステアリングシャフトを自動的に回動させるようにしても上述したと同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例である車両の自動操舵アシスト装置について図面を用いて説明する。図1は、実施例に係る車両の電動操舵系に適用される自動操舵アシスト装置の概略構成を模式図により示したものである。
【0017】
自動操舵アシスト装置は、ステアリング11と一体となったステアリングシャフト12の回動をサーボ増幅器13を通して駆動モータ14の回動に変換し、駆動モータ14の回動をギア装置15を介してタイロッド16の車両左右方向の直線運動に変換し、タイロッド16の直線運動を左右一対のナックルアーム17を通してキングピン18回りの前輪19の回動につなげる。さらに、自動操舵アシスト装置は、路面からの応力によるタイロッド16に生じる左右応力を応力センサ28a,28bにより検出し、その検出結果を応力演算装置31により左右の応力を等しくさせるような力を演算し、車両の前側左右に設けられた左右のミラー34に設けたラインセンサ34a,34bにより検出された路面中央からの白線までの距離を位置演算装置35により演算してその値を余裕幅として出力し、応力演算装置31と位置演算装置35からの演算結果を受けて、アシスト電動機駆動手段であるアシストサーボ増幅器32がアシスト電動機21の回動を制御することにより、自動的にステアリングシャフト12の回動が適正になるように是正するものである。
【0018】
ステアリングシャフト12には、アシスト電動機21が併設されており、ステアリングシャフト12に設けたスプロケット12aとアシスト電動機21側に設けたスプロケット22がチェーン23によって連動するように繋がれている。アシスト電動機21の回転軸には電磁クラッチ21aが取り付けられており、電磁クラッチ21aは、切替スイッチ24を介して電源Vに接続されている。切替スイッチ24をオンにすることにより、電磁クラッチ21aが通電されてスプロッケット22に吸着される。これにより、アシスト電動機21の回動が、ステアリングシャフト12に伝達される自動操舵状態にされる。切替スイッチ24をオフにすることにより、電磁クラッチ21aの通電が停止されてスプロッケット22から離れ、アシスト電動機21の回動がステアリングシャフト12に伝達されない通常の操舵状態にされる。
【0019】
ステアリングシャフト12には、その回動角度を検出するポテンショメータ26が接続されている。ポテンショメータ26の出力は、駆動モータ14の回動を制御する駆動手段であるサーボ増幅器13に接続されている。サーボ増幅器13の出力は駆動モータ14に接続されている。また、駆動モータ14の回転軸14aには、駆動モータ14の回動角度を検出するポテンショメータ27が取り付けられている。ポテンショメータ27は、回転軸14aの回動角度をサーボ増幅器13にフィードバックすることにより、サーボ増幅器13による駆動モータ14の回動制御の精度を高めようとするものである。回転軸14aは、ギア装置15に連結されている。
【0020】
タイロッド16の左右両側には、左右の前輪19を通して路面から受ける左右の応力を検出する左右応力検出手段である歪センサ等の左右一対の応力センサ28a,28bが接続されている。一対の応力センサ28a,28bの出力は、応力演算装置31に接続される。応力演算装置31は、一対の応力センサ28a,28bからの出力を受けて、両応力センサ28a,28bの出力が同一になるようなステアリングシャフト12の回動角度を演算するものである。応力演算装置31の出力は、アシスト電動機21の回動を制御するアシストサーボ増幅器32の応力演算部32aに接続されている。アシストサーボ増幅器32は、応力演算装置31からの出力を受ける応力演算部32aと、位置演算装置35からの出力を受ける位置演算部32bとを備えており、応力演算部32aの演算結果を位置演算部32bで修正して出力し、この出力によってアシスト電動機21を所定の回動角度で回動させるものである。
【0021】
車両の前側左右に設けられた左右のミラー34には、車両前方の路面に設けた白線を含む路面の位置関係検出する位置検出手段であるラインセンサ34a,34bが取り付けられている。各ラインセンサ34a,34bは、赤外線検出センサが用いられており、図2に示すように、車両前方の路面上の左右の所定長さの範囲の温度を検出するものである。路面の温度は、アスファルト部分では高く、白線の描かれた部分がアスファルト部分に比べて明確に低くなる。この路面温度差を利用して、白線位置を明確に認識することにより、車両の左右への移動の程度を認識するものである。図2に示すように白線が車両の右側にある場合には、図3に示すように、白線を検出した右側のラインセンサ34bのk番目以降のセンサ出力が低下し、センサの積分出力の伸びがk番目以降で小さくなる。
【0022】
ラインセンサ34a,34bの出力は、位置演算装置35に接続されている。位置演算装置35は、ラインセンサ34a,34bの出力をそのまま分析して、出力が低くなった点を白線として認識し、ラインセンサ34a,34bの中央からの白線までの距離を演算して、その値を余裕幅として出力する。位置演算装置35の出力は、アシストサーボ増幅器32の位置演算部32bに接続されている。さらに、アシストサーボ増幅器32の位置演算部32bには車両の速度を検出する速度センサ36が接続されている。アシストサーボ増幅器32は、上記応力演算装置31からの入力結果と、位置演算装置35からの余裕幅を比較して、さらに速度センサ36の入力値に応じて回動角度を演算して、演算された回動角度によりアシスト電動機21を駆動させるようになっている。
【0023】
上記のように構成した実施例においては、切替スイッチ24をオンにすることにより、電磁クラッチ21aが通電されてスプロッケット22に吸着され、アシスト電動機21の回動が、ステアリングシャフト12に伝達される自動操舵状態にされる。このステアリングシャフト12の回動がポテンショメータ26により検出され、ポテンショメータ26からの信号を受けてサーボ増幅器13が駆動モータ14を回動させる。駆動モータ14の回動によりギア装置15を介してタイロッド16が左右に直線運動を行い、このタイロッド16の直線運動が左右のナックルアーム17を通してキングピン18周りの左右の前輪19の回動をもたらす。
【0024】
一方、路面からの応力が、車両の左右の前輪19からキングピン18、ナックルアーム17を経てタイロッド16に伝えられ、タイロッド16に圧縮あるいは引張り力が発生する。タイロッド16に加わる路面からの左右の応力が応力センサ28a,28bにより検出され、応力センサ28a,28bからの検出結果を受けて、応力演算装置31により左右の応力を等しくさせるような力が演算される。応力演算装置31からの演算結果が、アシストサーボ増幅器32の応力演算部32aに入力される。
【0025】
また、車両の前側左右に設けられた左右のミラー34に取り付けられラインセンサ34a,34bにより、車両前方の路面に設けた白線を含む路面の位置関係を検出することができ、このラインセンサ34a,34bによる検出結果が、位置演算装置35に入力されて車両の左右へのずれを求めることができる。位置演算装置35からの演算結果及び速度センサ36の検出結果がアシストサーボ増幅器32に入力され、車両の左右へのずれ及び速度変化に基づいて応力演算装置31の演算結果を修正して、アシスト電動機21の回動させるための出力が求められる。アシストサーボ増幅器32からの出力により、アシスト電動機21の回動の制御が行われる。これにより、本実施例においては、応力演算装置31の演算結果によるアシスト電動機21の大まかな回動の制御を、位置演算装置35の精密な制御に速度変化を加えて補なうことにより、車両が路面の白線を越えることなくより確実に車両の適正な自動運転を確保することができる。
【0026】
その結果、本実施例によれば、通常の車両の運転において、道路の特にカーブ箇所に対して、運転者のハンドル操作によることなく自動的に車両の適正な走行を行わせることができ、運動特性の劣っている高齢者等でも安全に運転を行うことができる。また、本実施例により、車両の自動操舵アシスト装置により、自動運転が確保され車両毎の相違がないため、車両通行の流れが乱れて通行の効率が低下するおそれがなく、渋滞や事故の発生を抑制することができる。
【0027】
なお、上記実施例においては、切替スイッチ24のオンオフにより、自動操舵と通常の操舵の切替を行っているが、さらに自動操舵においては、車両の走行中に、ステアリング11から運転者の手が離れたときに、タッチセンサ等の握り検出手段によってこれを検出し、その検出結果に応じてアシスト電動機21がステアリングシャフト12を自動的に回動させるようにすることも可能である。これにより、運転者がステアリングから手を離したような自動操舵が必要な場合に、自動的に自動操舵が行われるため、特に運動特性の劣っている高齢者等でも安全に運転を行うことができる。一方、運転者がステアリングを握って運転状態にあるときは、自己の意思で運転を行うことができるため、自動操舵による違和感を持つことはなくなる。
【0028】
なお、上記実施例においては、応力センサ28a,28bと応力演算装置31に加えて、ラインセンサ34a,34bと位置演算装置35、及び速度センサ36を用いることにより、速度に応じた車両の左右への位置ずれを検出して、アシスト電動機21の回動制御を行っているが、必要に応じて応力センサ28a,28bと応力演算装置31のみにより自動操舵を行うことも可能である。例えば、整備された道路を走行するような場合には、応力センサ28a,28bと応力演算装置31のみにより自動操舵を行うことができる。また、車両速度の影響が少ないような場合には、速度センサ36を省いて、応力センサ28a,28bと応力演算装置31、ラインセンサ34a,34bと位置演算装置35により、自動操舵を行うことも可能である。その他、上記実施例に示した車両の自動操舵アシスト装置については、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、切替手段により自動操舵へ切り替えられると、アシスト電動機がステアリングを自動的に回動させることにより、駆動モータの駆動によりタイロッドの左右の直線運動がナックルアームを通してキングピン周りの左右の前輪の回動をもたらし、一方、路面からの応力によりタイロッドに発生した応力の検出結果から左右の応力を等しくさせるような力が演算され、さらに車両の左右方向への位置ずれが演算され、その演算結果を受けてアシスト電動機駆動手段がアシスト電動機の回動を制御することにより、自動的にステアリングの回動が適正になるように是正される。その結果、本発明は、運転者のハンドル操作によることなく自動的に車両の適正な走行を行わせることができ、運動特性の劣っている高齢者等でも安全に車両の運転を行うことができるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例である車両の電動操舵系に適用される自動操舵アシスト装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】位置センサにより位置補正の機構を概略的に説明する模式図である。
【図3】位置センサによる路面の検出結果を概略的に示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
11…ステアリング、12…ステアリングシャフト、13…サーボ増幅器、14…駆動モータ、15…ギア装置、16…タイロッド、19…前輪、21…アシスト電動機、24…切替スイッチ、26、27…ポテンショメータ、28a,28b…応力センサ、31…応力演算装置、32…アシストサーボ増幅器、34a,34b…ラインセンサ、35…位置演算装置、36…速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトの回動を駆動手段により駆動モータの回動に変換し、該駆動モータの回動をギア装置によりタイロッドの車両左右方向の直線運動に変換し、該タイロッドの直線運動をナックルアームを通してキングピン周りの前輪の回動につなげる車両の電動操舵系に適用される自動操舵アシスト装置であって、
通常の運転者自身による操舵と自動操舵とを切り替える切替手段と、
該切替手段による自動操舵への切り替えに応じて、ステアリングシャフトを自動的に回動させるアシスト電動機と、
前記タイロッドが左右の前輪を通して路面から受ける左右の応力を検出する左右応力検出手段と、
該左右応力検出手段からの検出結果を受けて、該左右の応力を等しくさせるような力を演算する応力演算手段と、
該応力演算手段からの演算結果を受けて、前記アシスト電動機の回動を制御するアシスト電動機駆動手段と
を設けたことを特徴とする車両の自動操舵アシスト装置。
【請求項2】
車両の前側左右に設けられた左右のミラー側に取り付けられて、車両前方の路面からの赤外線を検知することにより路面の白線位置を含む位置関係を検出する位置検出手段と、
該位置検出手段による検出結果から、前記白線位置に基づいて車両の左右方向へのずれを演算する位置修正演算手段とを設け、
該位置修正演算手段からの車両の左右方向へのずれについての演算結果を前記アシスト電動機駆動手段に入力して、前記応力演算手段の演算結果に加えて、前記アシスト電動機の回動制御に用いることを特徴とする前記請求項1に記載の車両の自動操舵アシスト装置。
【請求項3】
車両の速度を検出する速度検出手段を設け、
該速度検出手段からの検出結果を、前記アシスト電動機駆動手段に入力して、前記位置修正演算手段及び応力演算手段の演算結果に加えて、前記アシスト電動機の回動制御に用いることを特徴とする前記請求項2に記載の車両の自動操舵アシスト装置。
【請求項4】
ステアリングシャフトの回動を駆動手段により駆動モータの回動に変換し、該駆動モータの回動をギア装置によりタイロッドの車両左右方向の直線運動に変換し、該タイロッドの直線運動をナックルアームを通してキングピン周りの前輪の回動につなげる車両の電動操舵系に適用される自動操舵アシスト装置であって、
ステアリングから運転者の手が離れたことを検出する握り検出手段と、
該握り検出手段による運転者の手が離れたことの検出結果に応じて、前記ステアリングシャフトを自動的に回動させるアシスト電動機と、
前記タイロッドが左右の前輪を通して路面から受ける左右の応力を検出する左右応力検出手段と、
該左右応力検出手段からの検出結果を受けて、該左右の応力を等しくさせるような力を演算する応力演算手段と、
該応力演算手段からの演算結果を受けて、前記アシスト電動機の回動を制御するアシスト電動機駆動手段と
を設けたことを特徴とする車両の自動操舵アシスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−298006(P2006−298006A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118616(P2005−118616)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(599137828)株式会社 サンウェイブレックス (15)
【出願人】(500544082)
【出願人】(599137817)
【出願人】(505142609)
【Fターム(参考)】