説明

車両の荷室構造

【課題】組み付け作業性を向上させることができる車両の荷室構造を提供する。
【解決手段】車両用シート1がフロア7に対してスライド移動自在に構成され、シートバック3が前倒し可能に構成され、車両用シート1のスライド移動に伴って、荷物載置面12M上をスライド移動するスライドボード10が設けられ、スライドボード10はリンフォース40を介してシートブラケット33に連結され、スライドボード10の前端部10Aに、前側ボード20が横軸芯O周りに回転自在に連結し、前側ボード20がシートバック3の下端部と荷物載置面12Mとの間の隙間を覆い隠し、リンフォース40の車両側部側端部に引っ掛かり片32が設けられ、リンフォース40の車両中央側W1の部分に切り起こし片43が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
車両用シートがフロアに対して車両前後方向にスライド移動自在に構成され、
前記車両用シートのシートバックが前倒し可能に構成され、
前記車両用シートの車両前後方向へのスライド移動に伴って、前記シートバックの車両後方側の後部荷室の荷物載置面上をスライド移動するスライドボードが設けられ、
前記スライドボードは、前記スライドボードに設けられたリンフォースを介してシートブラケットに連結され、
前記スライドボードの前端部に、前記シートバックの背面に当接する前側ボードが横軸芯周りに回転自在に連結し、
前記前側ボードを前記シートバックの背面側に付勢する付勢手段が設けられて、前記前側ボードが前記シートバックの下端部と前記後部荷室の荷物載置面との間の隙間を覆い隠す車両の荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のスライドボードが設けられた車両の荷室構造においては、シートバックの下端部と前記後部荷室の荷物載置面との間の隙間を覆い隠す手段として、特許文献1に開示されているように、スライドボードの前端に設けた複数の引っ掛かり片を、シートバックの背面の下端部に形成した複数の挿通孔に挿入するとともに、シートバックの下端部に設けた複数の被係合部に各別に引っ掛けた技術があった。この構造により、車両用シートが車両前後方向にスライド移動しても、スライドボードが前記シートバックの車両後方側の後部荷室の荷物載置面上をスライド移動して、前記隙間を覆い隠すことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3180645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構造によれば、スライドボードの前端に設けた複数の引っ掛かり片を、シートバックの背面の下端部に形成した複数の挿通孔に挿入するとともに、シートバックの下端部に設けた複数の被係合部に引っ掛けていたために、複数の引っ掛かり片を複数の被係合部に各別に引っ掛ける作業に手間がかかって組み付け作業性が低下していた。
本発明の目的は、組み付け作業性を向上させることができる車両の荷室構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
車両用シートがフロアに対して車両前後方向にスライド移動自在に構成され、
前記車両用シートのシートバックが前倒し可能に構成され、
前記車両用シートの車両前後方向へのスライド移動に伴って、前記シートバックの車両後方側の後部荷室の荷物載置面上をスライド移動するスライドボードが設けられ、
前記スライドボードは、前記スライドボードに設けられたリンフォースを介してシートブラケットに連結され、
前記スライドボードの前端部に、前記シートバックの背面に当接する前側ボードが横軸芯周りに回転自在に連結し、
前記前側ボードを前記シートバックの背面側に付勢する付勢手段が設けられて、前記前側ボードが前記シートバックの下端部と前記後部荷室の荷物載置面との間の隙間を覆い隠す車両の荷室構造であって、
前記リンフォースの車両側部側の端部に、前記シートブラケットの後端部に引っ掛かる引っ掛かり片が設けられ、
前記リンフォースの車両中央側の部分に、前記シートブラケットの後端部の端面に当接する切り起こし片が設けられ、
前記引っ掛かり片は、前記リンフォースの車両前後方向中間に位置する第1リンフォース部分を、この第1リンフォース部分の車両後方側の後端部を残して周囲から分断するとともに、前記第1リンフォース部分の後端部を中心として下方に折曲して形成され、
前記切り起こし片は、前記リンフォースの車両前後方向中間に位置する第2リンフォース部分を、この第2リンフォース部分の車両前方側の前端部を残して周囲から分断するとともに、前記前端部を中心として下方に折曲して形成されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、スライドボードに設けられたリンフォースをシートブラケットに組み付ける際に、引っ掛かり片と切り起こし片をガイドとしてリンフォースをシートブラケットに組み付けることができる。また、引っ掛かり片をシートブラケットの後端部に引っ掛けることで、スライドボードに部組されている付勢手段の反力によりリンフォースが組み付け作業中にシートブラケットから浮き上がることを回避することができる。
例えば、シートブラケットの後端部に引っ掛かる引っ掛かり片をリンフォースの車両中央側の部分に設けると、合計2個の引っ掛かり片をシートブラケットの後端部に引っ掛ける操作が必要となり作業に手間がかかるが、本発明の上記構成によれば、一方が切り起こし片に構成されているから、車両側部側でのみ引っ掛け操作し、車両中央側では切り起こし片の下降のみの操作で切り起こし片をシートブラケットの後端面に当てることができて組み付け作業性を向上させることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記切り起こし片は、前記シートブラケットに対する前記リンフォースの固定部の車両後方側に位置し、
前記リンフォースの前記固定部と前記切り起こし片の間に車幅方向に延びるビードが形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記引っ掛かり片は、前記リンフォースの車両前後方向中間に位置する第1リンフォース部分を、この第1リンフォース部分の車両後方側の後端部を残して周囲から分断するとともに、前記第1リンフォース部分の後端部を中心として下方に折曲して形成されているから、引っ掛かり片の形成によりリンフォースに形成された開口の車両前方側の第1内周縁は、シートブラケットの後端よりも車両前方側に位置する。
一方、前記切り起こし片は、前記リンフォースの車両前後方向中間に位置する第2リンフォース部分を、この第2リンフォース部分の車両前方側の前端部を残して周囲から分断するとともに、前記前端部を中心として下方に折曲して形成されているから、前記切り起こし片の形成によりリンフォースに形成された開口の車両前方側の第2内周縁は、シートブラケットの後端よりも車両後方側に位置する。
従って、前記第2内周縁が前記第1内周縁よりも車両後方側に位置する。
その結果、例えば、前記切り起こし片に換えて前記引っ掛かり片がリンフォースに形成されている構造に比べると、リンフォースの前記固定部と、前記第2内周縁との間を長く設定することができる。
これにより、リンフォースの前記固定部と第2内周縁との間に形成される前記ビードの幅を幅広に設定できて、リンフォースの剛性・強度を強くすることができる。
上記の車両の荷室構造では、車両中央側は積載した荷物の荷重を多く受けやすいことから、車両中央側の剛性を向上させることが必要であるが、本発明の上記構成によれば、車両中央側に切り起こし片を配置することで、リンフォースの車両中央側に幅広のビードを形成して剛性を確保することができ、リンフォースの耐久性を十分向上させることができる。従って、板厚を厚くすることなくリンフォースの剛性を確保できてコストダウン・軽量化を図ることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記引っ掛かり片はクランク状に折曲していると、引っ掛かり片の構造を簡素化でき、引っ掛かり片を簡単に製作できながら、引っ掛かり片をシートブラケットの後端部に確実に引っ掛けることができる。(請求項3)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組み付け作業の作業性を向上させることができる車両の荷室構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両の荷室構造の斜視図
【図2】車両の荷室構造の分解斜視図
【図3】リンフォースの取り付け構造を示す斜視図
【図4】リンフォースの切り起こし片とその周囲の構造を示す拡大斜視図
【図5】リンフォースの斜視図
【図6】スライドボードと前側ボードを示す側面図
【図7】スライドボードの作動を示す側面図
【図8】図4のB−B断面図
【図9】図3のC−C断面図
【図10】リンフォースのシートブラケットに対する取り付け方法を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1,図2に示すように、自動車のリアシート1(車両用シートに相当)と、リアシート1の車両後方側Rrのフロアパネル8と、左右一対のクォータトリム5と、テールエンドトリム6とで車両の後部荷室55が形成されている。
【0013】
前記フロアパネル8は凹形状に形成され、このフロアパネル8に上側が開放した収納ボックス11が嵌合している。そして、収納ボックス11の開口を塞ぐ板材12が収納ボックス11の上端部に載置固定されて、板材12の上面が後部荷室55の荷物載置面12Mとして構成されている。
【0014】
[リアシート1の構造]
リアシート1は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、乗員の上半身を支持するシートバック3と、シートバック3の上端部に連結され、乗員の頭部を支持するヘッドレスト4と、フロアパネル8(フロアに相当)との間に介在するスライド機構とを備え、フロアパネル8に対して車両前後方向にスライド移動自在に構成されている。
【0015】
さらに、シートバック3を前倒し可能に構成され、前倒したシートバック3の背面3Hに荷物を載置可能に構成されている。このようにシートバック3を前倒しすることで後部荷室55を車両前方側Frに拡大することができる。
【0016】
[シートブラケット33の構造]
図3に示すように、シートクッション2にシート幅方向(車幅方向)に沿う丸パイプ状のシートフレーム50が設けられ、図4にも示すように、このシートフレーム50の左右中央よりも右側の部分から左右一対のシートブラケット33が後ろ上方に延び、シートフレーム50の左右中央よりも左側の部分から左右一対のシートブラケット(図示せず)が後ろ上方に延びている。
【0017】
各シートブラケット33は互いに同一形状に形成され、下端部がシートフレーム50に溶接固着された後ろ上がり傾斜姿勢の立ち上がり部35と、立ち上がり部35の上端部から車両後方側Rrに延びる連結部36とから成る。
【0018】
前記立ち上がり部35は後ろ下方が開放した断面コの字状に形成され、連結部36は下側が開放した断面コの字状に形成されて、立ち上がり部35と連結部36の側壁同士、上壁同士が滑らかに連なっている。立ち上がり部35の長手方向中間部の左右の側面には丸パイプ状のU字状部材39の一対の脚部39Kが各別に溶接固着されている。また、図8,図9に示すように、前記連結部36に第3ボルト挿通孔36Hが形成されている。各シートブラケット33の連結部36の後端部36Eの端面36E1(後端面)は車両前後方向で互いにほぼ同一位置に位置している。
【0019】
右側の一対のシートブラケット33のうち、一方のシートブラケット33は車両の側部側W2(右側)に配置され、他方のシートブラケット33は車両の左右中央側W1に配置されている。また、左側の一対のシートブラケットのうち、一方のシートブラケットは車両の側部側W2(左側)に配置され、他方のシートブラケットは車両の左右中央側に配置されている。
【0020】
[スライドボード10と前側ボード20の取り付け構造]
図1,図6,図7に示すように、リアシート1の車両前後方向へのスライド移動に伴って、シートバック3の車両後方側Rrの後部荷室55の荷物載置面12M上をスライド移動する樹脂製の左右一対のスライドボード10が設けられている。
【0021】
右側のスライドボード10は、スライドボード10に設けられた補強用のリンフォース40を介して前記右側の左右一対のシートブラケット33に連結され、左側のスライドボード(図示せず)は、スライドボード10に設けられた補強用のリンフォース(図示せず)を介して前記左側の左右一対のシートブラケット(図示せず)に連結されている。また、各スライドボード10の前端部10Aに、シートバック3の背面3Hに当接する前側ボード20が薄肉ヒンジHを介して横軸芯O周りに回転自在に連結している。スライドボード10の前端部10Aには、リンフォース40の後述の後ろ側ビード42を嵌合させる下側が開放した嵌合凹部10Cが形成されている。
【0022】
左側のスライドボード10、左側のスライドボード10に設けられたリンフォース40、左側のスライドボード10に連結された前側ボード20は、右側のスライドボード、右側のスライドボードに設けられたリンフォース、右側のスライドボードに連結された前側ボードとそれぞれ同一構造であるので、右側のスライドボード10等についてのみ説明し、左側のスライドボード等については説明を省略する。
【0023】
[スライドボード10と前側ボード20の構造]
スライドボード10と前側ボード20は車幅方向に長い長方形状にブロー成形され、車幅方向の長さが互いにほぼ同一に設定されるとともに、前側ボード20の車両前後方向の長さが、スライドボード10の車両前後方向の長さよりも短く設定されている。前側ボード20は起立姿勢のシートバック3の下半部を覆う長さに設定されている。
【0024】
また、前側ボード20をシートバック3の背面3H側に付勢するばねA(付勢手段に相当、図6参照)が設けられて、前側ボード20がシートバック3の下端部と後部荷室55の荷物載置面12Mとの間の隙間を覆い隠すよう構成されている。
【0025】
[リンフォース40の構造]
図3,図5に示すように、前記リンフォース40は車幅方向に長い帯板状に形成され、スライドボード10の幅(車幅方向の長さ)とほぼ同一の長さ(車幅方向における長さ)に設定されている。図8,図9に示すように、このリンフォース40は左右一対のシートブラケット33の連結部36に上方から重ねられ、リンフォース40に形成された左右一対の第1ボルト挿通孔40Hと、左右一対のシートブラケット33にそれぞれ形成された第2ボルト挿通孔36HとにボルトBが挿通され、ボルトBにナットNが螺合されてリンフォース40が左右一対のシートブラケット33に連結されている。
【0026】
リンフォース40の車両前方側Frの端部と車両後方側Rrの端部と車両前後方向の中間部とには、下側が開放した断面円弧状の車幅方向に沿う前側ビード48、中間ビード41、後ろ側ビード42が形成されている。前側ビード48と後ろ側ビード42はリンフォース40の全長にわたって形成されている。
【0027】
前記第1ボルト挿通孔40Hが形成されたリンフォース部分は車両前方側Frに円弧状に突出し、このリンフォース部分に位置する前側ビード部分は前記リンフォース部分に沿って円弧状に折曲している。図8,図9に示すように、後ろ側ビード42は、スライドボード10の前端部10Aに形成された下側開放の嵌合凹部10Cに嵌合している。
【0028】
前側ビード48の高さ寸法と後ろ側ビード42の高さ寸法とはほぼ同一であり、中間ビード41の高さ寸法は前側ビード48の高さ寸法と後ろ側ビード42の高さ寸法よりも短く設定されている。図5に示すように、リンフォース40の車両後方側Rrの端部には車幅方向に並ぶ複数の取り付け座49が上方に膨出形成され、前記取り付け座49に第4リベット挿通孔49Hが形成されている。取り付け座49は第4リベット挿通孔49Hに挿通されたリベットでスライドボード10の前端部10Aに固定される。
【0029】
図3,図9に示すように、リンフォース40の右端部(車両側部側の端部に相当)に、シートブラケット33の連結部36の後端部36Eに引っ掛かる引っ掛かり片32が設けられ、図3,図8に示すように、リンフォース40の左端部(車両中央側の部分に相当)に、シートブラケット33の連結部36の後端部36Eの端面36E1(後端面)に当接する切り起こし片43が設けられている。
【0030】
[引っ掛かり片32の構造]
図9に示すように、前記引っ掛かり片32は、リンフォース40の車両前後方向中間に位置する長方形状の第1リンフォース部分を、この第1リンフォース部分の車両後方側Rrの後端部61を残して周囲からコの字状に分断するとともに、前記第1リンフォース部分の後端部61を中心として下方に折曲してクランク状に形成されている。引っ掛かり片32を形成したことでリンフォース40には第1角孔29が形成されている。
【0031】
[切り起こし片43の構造]
図8に示すように、前記切り起こし片43は、リンフォース40の車両前後方向中間に位置する第2リンフォース部分を、この第2リンフォース部分の車両前方側Frの前端部62を残して周囲からコの字状に分断するとともに、前記前端部62を中心として下方に折曲して形成されている。切り起こし片43を形成したことでリンフォース40に第2角孔47が形成されている。
【0032】
図5に示すように、この切り起こし片43は、左側のシートブラケット33に対するリンフォース40の固定部である左側の第1ボルト挿通孔40Hの車両後方側Rrに位置している。そして、前記中間ビード41は、リンフォース40の左端部からリンフォース40の前記左側の第1ボルト挿通孔40Hと切り起こし片43との間を通って右側の第1ボルト挿通孔40Hの近傍に達している。前記左側の第1ボルト挿通孔40Hと切り起こし片43との間の中間ビード41の部分は、他の中間ビード41の部分よりも車両後方側Rrに位置して切り起こし片43に近接している。
【0033】
図7,図10に示すように、スライドボード10のリンフォース40をシートブラケット33の連結部36に連結する場合、前側ボード20をばねAの付勢力に抗して、薄肉ヒンジHを中心に上方に回転させ、これにより、露出するリンフォース40の第1ボルト挿通孔40Hと、シートブラケット33の第2ボルト挿通孔36HとにボルトBを挿通させ、工具90を用いてボルトB及びナットNで連結する。
【0034】
上記の構成によれば、
(1) 前記リンフォース40をシートブラケット33に組み付ける際に、引っ掛かり片32と切り起こし片43をガイドとしてリンフォース40をシートブラケット33に組み付けることができる。
また、引っ掛かり片32をシートブラケット33の連結部36の後端部36Eに引っ掛けることで、スライドボード10に部組されているばねAの反力によりリンフォース40が組み付け作業中にシートブラケット33から浮き上がることを回避することができる。
例えば、シートブラケット33の連結部36の後端部36Eに引っ掛かる引っ掛かり片32をリンフォース40の車両中央側W1の部分に設けると、合計2個の引っ掛かり片32を前記後端部36Eに引っ掛ける操作が必要となり、作業に手間がかかるが、本発明の上記構成によれば、一方が切り起こし片43に構成されているから、車両側部側W2でのみ引っ掛け操作し、車両中央側W1では切り起こし片43の下降のみの操作で切り起こし片43をシートブラケット33の連結部36の後端部36Eの端面36E1に当てることができて組み付け作業性を向上させることができる。
【0035】
(2) 前記引っ掛かり片32は、リンフォース40の車両前後方向中間に位置する第1リンフォース部分を、この第1リンフォース部分の車両後方側Rrの後端部61を残して周囲から分断するとともに、第1リンフォース部分の後端部61を中心として下方に折曲して形成されているから、引っ掛かり片32の形成によりリンフォース40に形成された第1角孔29(開口)の車両前方側Frの第1内周縁は、シートブラケット33の連結部36の後端部36Eの端面36E1(後端)よりも車両前方側Frに位置する(図9参照)。
一方、前記切り起こし片43は、リンフォース40の車両前後方向中間に位置する第2リンフォース部分を、この第2リンフォース部分の車両前方側Frの前端部62を残して周囲から分断するとともに、前記前端部62を中心として下方に折曲して形成されているから、切り起こし片43の形成によりリンフォース40に形成された第2角孔47(開口)の車両前方側Frの第2内周縁は、シートブラケット33の連結部36の後端部36Eの端面36E1(後端)よりも車両後方側Rrに位置する(図8参照)。
従って、前記第2内周縁が前記第1内周縁よりも車両後方側Rrに位置する(図8,図9参照)。
その結果、例えば、前記切り起こし片43に換えて前記引っ掛かり片32がリンフォース42に形成されている構造に比べると、リンフォース40の前記固定部としての第1ボルト挿通孔40Hと第2内周縁との間を長く設定することができる。
これにより、前記第1ボルト挿通孔40Hと前記第2内周縁との間に形成される中間ビード41の幅を幅広に設定できて、リンフォース40の剛性・強度を強くすることができる。
上記の車両の荷室構造では、車両中央側は積載した荷物の荷重を多く受けやすいことから、車両中央側の剛性を向上させることが必要であるが、本発明の上記構成によれば、車両中央側に切り起こし片43を配置することで、リンフォース40の車両中央側に幅広の中間ビード41を形成して剛性を確保することができ、リンフォース40の耐久性を十分向上させることができる。従って、板厚を厚くすることなくリンフォース40の剛性を確保できてコストダウン・軽量化を図ることができる。
【0036】
(3) 前記引っ掛かり片32はクランク状に折曲しているから、引っ掛かり片32の構造を簡素化でき、引っ掛かり片32を簡単に製作できながら、引っ掛かり片32をシートブラケット33の連結部36の後端部36Eに確実に引っ掛けることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用シート(リアシート)
3 シートバック
3H シートバックの背面
8 フロア(フロアパネル)
10 スライドボード
10A スライドボードの前端部
12M 荷物載置面
20 前側ボード
32 引っ掛かり片
33 シートブラケット
36E シートブラケットの後端部
36E1 シートブラケットの後端部の端面
40 リンフォース
40H シートブラケットに対するリンフォースの固定部(第1ボルト挿通孔)
41 ビード(中間ビード)
43 切り起こし片
55 後部荷室
61 後端部
62 前端部
A 付勢手段(ばね)
Fr 車両前方側
O 横軸芯
Rr 車両後方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートがフロアに対して車両前後方向にスライド移動自在に構成され、
前記車両用シートのシートバックが前倒し可能に構成され、
前記車両用シートの車両前後方向へのスライド移動に伴って、前記シートバックの車両後方側の後部荷室の荷物載置面上をスライド移動するスライドボードが設けられ、
前記スライドボードは、前記スライドボードに設けられたリンフォースを介してシートブラケットに連結され、
前記スライドボードの前端部に、前記シートバックの背面に当接する前側ボードが横軸芯周りに回転自在に連結し、
前記前側ボードを前記シートバックの背面側に付勢する付勢手段が設けられて、前記前側ボードが前記シートバックの下端部と前記後部荷室の荷物載置面との間の隙間を覆い隠す車両の荷室構造であって、
前記リンフォースの車両側部側の端部に、前記シートブラケットの後端部に引っ掛かる引っ掛かり片が設けられ、
前記リンフォースの車両中央側の部分に、前記シートブラケットの後端部の端面に当接する切り起こし片が設けられ、
前記引っ掛かり片は、前記リンフォースの車両前後方向中間に位置する第1リンフォース部分を、この第1リンフォース部分の車両後方側の後端部を残して周囲から分断するとともに、前記第1リンフォース部分の後端部を中心として下方に折曲して形成され、
前記切り起こし片は、前記リンフォースの車両前後方向中間に位置する第2リンフォース部分を、この第2リンフォース部分の車両前方側の前端部を残して周囲から分断するとともに、前記前端部を中心として下方に折曲して形成されている車両の荷室構造。
【請求項2】
前記切り起こし片は、前記シートブラケットに対する前記リンフォースの固定部の車両後方側に位置し、
前記リンフォースの前記固定部と前記切り起こし片の間に車幅方向に延びるビードが形成されている請求項1記載の車両の荷室構造。
【請求項3】
前記引っ掛かり片はクランク状に折曲している請求項1又は2記載の車両の荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131353(P2012−131353A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284890(P2010−284890)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】