説明

車両の荷重伝達構造

【課題】車体侵入抑制効果を十分に発揮することができる車両の荷重伝達構造を提供する。
【解決手段】乗員が着座するシート1の車幅方向内側に隣接して設置され、車体側方から前記シートに入力された衝撃荷重をフロアトンネル12に伝達するコンソールボックス30を備えた車両の荷重伝達構造において、シート1には、コンソールボックス30と対向する側面に荷重伝達ブロック26が設けられ、コンソールボックス30には、荷重伝達ブロック26と対向する側壁部に荷重伝達ブロック26が当接した状態で荷重伝達ブロック26の下側を支持する荷重受け部材60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衝突時などの衝撃荷重を車体フロアに伝達する車両の荷重伝達構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば側突時に車体側方から入力された衝撃荷重を、乗員が着座するシートを介して車体フロアに伝達する車両の荷重伝達構造が知られている。この種の荷重伝達構造には、シートに入力された衝撃荷重を、該シートの車幅方向内側に隣接してフロアに設置された補強体(例えばコンソールボックス)を介して、フロア(例えばフロアトンネル)に伝達させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらに、シートにおいて前記補強体と対向する側面に荷重伝達部材を設け、シートに入力された衝撃荷重によりシートが車幅方向内側に変位したときに前記荷重伝達部材が前記補強体に突き当たるように設定し、これら荷重伝達部材および補強体を介して衝撃荷重をフロアに伝達させるようにしたものが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−67427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、側突時の衝撃荷重の入力の状況によっては、シートから前記荷重伝達部材に対して斜め下向きに衝撃荷重が伝達されるときがあり、そのようなときに、前記補強体において前記荷重伝達部材に対する受け面が平坦に形成されている場合には、荷重伝達部材が、補強体に突き当たった後、圧縮変形しながら補強体の前記受け面に沿って下方に滑り込んでしまい、荷重伝達が十分に行われなくなるという課題がある。
【0006】
また、荷重伝達部材が下方に滑り込むと、シートの上部を車内側に傾転させるモーメントが発生するが、補強体への荷重伝達が十分に行われないと補強体からの反力が十分に得られないため、前記モーメントに対抗するのが困難となり、シートが車内側に傾転し易くなる結果、車体側部の車内側への侵入に対する抑制効果(車体侵入抑制効果)が低減するという課題が生じる。
【0007】
そこで、この発明は、車体侵入抑制効果を十分に発揮することができる車両の荷重伝達構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車両の荷重伝達構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、乗員が着座するシート(例えば、後述する実施例における車両用シート1)の車幅方向内側に隣接して設置され、車体側方から前記シートに入力された衝撃荷重を車体フロア(例えば、後述する実施例におけるフロアトンネル12)に伝達する補強体(例えば、後述する実施例におけるコンソールボックス30)を備えた車両の荷重伝達構造において、前記シートには、前記補強体と対向する側面(例えば、後述する実施例における側部フレーム13d)に荷重伝達部材(例えば、後述する実施例における荷重伝達ブロック26)が設けられ、前記補強体には、前記荷重伝達部材と対向する側壁部(例えば、後述する実施例における側壁プレート31)に前記荷重伝達部材が当接した状態で前記荷重伝達部材の下側(例えば、後述する実施例における下面26a)を支持する荷重受け部(例えば、後述する実施例における荷重受け部材60)が設けられていることを特徴とする車両の荷重伝達構造である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記補強体は、その左右の側壁部を連結する補強部材(例えば、後述する実施例における前部プレート33、後部プレート34、ボックスクロスメンバ36,37)を有し、該補強部材は前記荷重受け部よりも上方に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、荷重伝達部材の下側が荷重受け部に支持されることで荷重伝達部材はそれ以上の下方移動を規制されるので、荷重伝達部材が補強体の側壁部に沿って下方に滑り込むのを防止することができる。これにより、シートに入力された衝撃荷重を荷重伝達部材から補強体に十分に確実に伝達することができ、その結果、車体の車内側への侵入を確実に抑制することができる。
請求項2に係る発明によれば、補強体において補強部材によって補強された部分で荷重伝達部材を受けることができ、荷重伝達をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係る車両の荷重伝達構造の実施例1を示す図であり、車両の室内を前席側の車両用シートの後方側から見た背面図である。
【図2】前記実施例1におけるコンソールボックスの背面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】実施例1の作用を説明する図である。
【図6】実施例2におけるコンソールボックスの一部を破断して示す背面図である。
【図7】実施例2の作用を説明する図(その1)である。
【図8】実施例2の作用を説明する図(その2)である。
【図9】実施例2の作用を説明する図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係る車両の荷重伝達構造の実施例を図1から図9の図面を参照して説明する。
<実施例1>
初めに、この発明に係る車両の荷重伝達構造の実施例1を図1から図5の図面を参照して説明する。
図1は、車両の室内を前席側のシート1の後方側から見た背面図である。なお、図面において、シート1は骨格部材のみが示されている。
乗員が着座するシート1は、乗員の臀部を支持するシートクッション2と、このシートクッション2の後端部に連結されて、乗員の腰部および胸部(背部)を支持するシートバック3と、このシートバック3の上部に支持されて、乗員の頭部および首部を支持するヘッドレスト4とを備えている。
【0013】
シートクッション2は、後端部に車幅方向に沿って延出する後部クロスメンバ6が取り付けられたクッションフレーム7を備え、そのクッションフレーム7がシートレール8,8を介して車体フロア9に前後方向にスライド可能に取り付けられている。なお、図中、10は、車体の下端側部に設けられたサイドシルであり、11は、車体側部のほぼ中央に立設されたセンターピラー、12は、車体フロア9上の車幅方向中央領域に上方に膨出して形成されたフロアトンネル(車体フロア)である。
【0014】
フロアトンネル12上の前席の左右のシート1,1の間には、上面側に収納部30aを有するコンソールボックス30が固定設置されており、コンソールボックス30の側壁に沿って荷重受け部材(荷重受け部)60が固定されている。なお、図1では左側のシート1のみ図示し、右側のシート1は省略している。この実施例において、コンソールボックス30は、この発明における補強体を構成する。なお、コンソールボックス30と荷重伝達部材60については後で詳述する。
【0015】
シートバック3は、上部フレーム13aと左右の側部フレーム13c,13dと下部連結プレート13bとから成る略矩形枠形状のシートバックフレーム13を備え、そのシートバックフレーム13の下端がクッションフレーム7の後端部に傾動可能にヒンジ結合されている。シートバックフレーム13の上部フレーム13aの幅方向中央位置には、ヘッドレスト4の支持フレームが昇降可能に取り付けられている。なお、この実施例の場合、ヘッドレスト4は後面衝突時に乗員の鞭打ちを防止するためのアクティブヘッドレストが採用されている。
【0016】
シートバックフレーム13の背面側には正面視が略矩形状のプレート材14が取り付けられている。プレート材14は、稜線部aが車幅方向に延出する複数の凹凸部15を備え、この凹凸部15によって形成される波形断面が車体上下方向に連続している。プレート材14は、その上縁部に車体幅方向に延出するクロスメンバ16が固定され、このクロスメンバ16を介して両側の側部フレーム13c,13dに支持されるようになっている。クロスメンバ16は、シートに着座した乗員のほぼ胸部高さに設置されている。また、プレート材14の下縁部は下部連結プレート13bに溶接固定されている。
【0017】
クロスメンバ16は、側部フレーム13cよりも車幅方向外側に突出しており、その突出部分には、車体側部からの衝撃荷重をシートバック3に伝達するための荷重伝達ブロック21が取り付けられている。この荷重伝達ブロック21は、車幅方向に延出する複数の筒状断面が並列に配列されたハニカム構造とされ、全体が樹脂によって上下方向に長い直方体状に形成されている。荷重伝達ブロック21はクロスメンバ16と側部フレーム13cに支持固定されている。
【0018】
また、左右の側部フレーム13c,13dの下縁部の間は、シートクッション2とシートバック3を回動可能に連結するヒンジ軸を囲む図示しない下部クロスメンバによって連結されている。そして、下部クロスメンバの延長上に位置される側部フレーム13cの車幅方向外側の側面と、側部フレーム13dの車幅方向内側の側面には荷重伝達ブロック25,26がそれぞれ取り付けられている。この実施例において、荷重伝達ブロック26は、この発明における荷重伝達部材を構成する。この各荷重伝達ブロック25,26は、上部側の荷重伝達ブロック21と同様に、樹脂製で、車幅方向に延出する複数の筒状断面が並列に配列されたハニカム構造とされている。また、側部フレーム13d側の荷重伝達ブロック26は、車幅方向中央のコンソールボックス30の側面に対向している。換言すると、荷重伝達ブロック26は、シート1においてコンソールボックス30と対向する側面に設けられている。外側の荷重伝達ブロック25は、車体の下部側側面から衝撃荷重を直接受け止め、その荷重を、下部クロスメンバを通して側部フレーム13d側に伝達する。また、内側の荷重伝達ブロック26は、クッションフレーム7が車体側部から衝撃荷重を受けて車幅方向内側に移動したときにコンソールボックス30の側壁プレート31に当接し、その荷重を、コンソールボックス30を介してフロアトンネル12へと伝達する。
【0019】
次に、図2から図5の図面を参照して、コンソールボックス30と荷重受け部材60について詳述する。
コンソールボックス30は、フロアトンネル12の側壁に沿うように車体前後方向に延出する一対の側壁プレート31,31(側壁部)が車幅方向に沿う複数の部材と結合されて構成され、これらの部材間に複数の空間が形成されている。この一対の側壁プレート31,31の下端部はフロアトンネル12の側壁に図示しないボルトによって締結固定されている。
【0020】
図3に示すように、側壁プレート31は、側面視において車両前部側が車両後部側よりも高い略台形状をなしている。左右の側壁プレート31,31は、その高さ方向の中間部より下側同士が断面略コ字状の下部プレート32によって連結され、中間部より上側同士の前部側が断面略コ字状の前部プレート33によって連結され、後部側が後部プレート34によって連結されている。
【0021】
下部プレート32は、車両前部側に配置される下側前壁部32aと、車両後部側に配置される下側後壁部32bと、下側前壁部32aと下側後壁部32bの上端同士を連結する上壁部32cとを備えている。下側前壁部32aは、車幅方向に延びる断面コ字形の凹部32dを有しており、上壁部32cは前部側よりも後部側が低くなる段部32eを有している。下部プレート32の車幅方向の両端部は側壁プレート31,31に溶接固定され、下側前壁部32aと下側後壁部32bの下端部はフロアトンネル12の上壁に図示しないボルトによって締結固定されている。
【0022】
前部プレート33は、車両前部側に配置される上側前壁部33aと、上側前壁部33aの後方に配置されて収納部30aの内壁を形成する前方内壁部33bと、上側前壁部33aと前方内壁部33bの上端同士を連結する前方上壁部33cとを備えている。上側前壁部33aは車幅方向に延びる断面コ字形の凹部33dを有している。前方上壁部33cは前方側よりも後方側が下がる傾斜面で形成されており、側壁プレート31,31の前部上縁に沿って配置されている。
【0023】
上側前壁部33aの下端部は下部プレート32の下側前壁部32aの上端部に溶接固定され、前方内壁部33bの下端部は下部プレート32の段部32eに溶接固定され、さらに前部プレート33の車幅方向の両端部は側壁プレート31,31に溶接固定されている。これにより、前部プレート33と下部プレート32によって車幅方向に延びる閉断面が形成され、この閉断面部によって両側壁プレート31,31の前方側上部が連結される。この実施例において、前部プレート33は補強部材を兼ねている。
【0024】
後部プレート34は、車両後部側に配置される上側後壁部34aと、上側後壁部34aの前方に配置されて収納部30aの内壁を形成する後方内壁部34bと、上側後壁部34aと後方内壁部34bの上端同士を連結する後方上壁部34cとを備えている。後方上壁部34cは前方側よりも後方側が下がる傾斜面で形成されており、側壁プレート31,31の後部上縁に沿って配置されている。
【0025】
上側後壁部34aの下端部は下部プレート32の下側後壁部32bの上端部に溶接固定され、後方内壁部34bの下端部は下部プレート32の上壁部32cの後部側に溶接固定され、さらに後部プレート34の車幅方向の両端部は側壁プレート31,31に溶接固定されている。これにより、後部プレート34と下部プレート32によって車幅方向に延びる閉断面が形成され、この閉断面部によって両側壁プレート31,31の後方側上部が連結される。この実施例において、後部プレート34は補強部材を兼ねている。
【0026】
そして、両側壁プレート31,31と下部プレート32の上壁部32cと前部プレート33の前方内壁部33bと後部プレート34の後方内壁部34bによって囲まれた空間が、上方が開口された収納部30aとなる。
また、左右の側壁プレート31,31の上縁に沿って、収納部30aの上部開口を縁取る額プレート38,39が溶接固定されている。
【0027】
また、左右の側壁プレート31,31の収納部30a内に臨む面には、車体前後方向に延出する補強フレーム35が溶接固定されている。図4に示すように、補強フレーム35は断面略「3」の字状をなし、補強フレーム35の前端部と後端部はそれぞれ前部プレート33の前方内壁部33b、後部プレート34の後方内壁部34bに溶接固定されている。
【0028】
さらに、下部プレート32とフロアトンネル12との間に形成される空間には、車幅方向に延出して側壁プレート31,31を相互に連結する断面略コ字状のボックスクロスメンバ(補強部材)36,37が設けられている。ボックスクロスメンバ36,37は車両前後方向に互いに離間して配置されている。ボックスクロスメンバ36,37は、上壁が下部プレート32の上壁部32cに溶接固定され、車幅方向両端部が左右の側壁プレート31,31に溶接固定され、下端部がフロアトンネル12の上壁に係合している。
【0029】
荷重受け部材60は金属製で剛性を有し、図1に示すように、正面視略への字状をなし、その下部が車体フロア9およびフロアトンネル12に連結され、上部がコンソールボックス30の側壁プレート31の下端部に連結されている。荷重受け部材60は、その車体前後方向長さがコンソールボックス30の前後方向長さとほぼ同寸法に設定されており、コンソールボックス30の全長に沿って設置されている。また、荷重受け部材60の上面61は平坦面に形成されていて、図4に示すように、荷重受け部材60は、この上面61が、シート1に設けられた荷重伝達ブロック26の下面26aよりも若干低い位置で、車両前後方向にほぼ水平に延出する姿勢となるように配置されて、車体フロア9、フロアトンネル12の側面、コンソールボックス30の側壁プレート31に連結固定されている。なお、固定手段は溶接またはボルト締結など適宜の手段が採用可能である。
【0030】
なお、荷重受け部材60は少なくともコンソールボックス30に固定されていればよく、したがって、荷重受け部材60の下部は車体フロア9まで延びていなくてもよいし、フロアトンネル12まで延びていなくてもよいし、車体フロア9に連結されていなくてもよいし、フロアトンネル12に連結されていなくてもよい。
【0031】
また、荷重伝達ブロック26は、車幅方向内側に移動したときに荷重受け部材60の上面61よりも上位に位置するコンソールボックス30の側壁プレート31に当接するように配置されており、シート1を車体前後方向に位置調節した場合にも荷重伝達ブロック26の端面26bがコンソールボックス30の側壁プレート31から外れず当接するように、コンソールボックス30の設置位置および車両前後方向長さが設定されている。なお、図3において二点鎖線は、荷重伝達ブロック26の端面26bの側壁プレート31への当接部が、シートクッション2の前後位置調節に伴って移動する範囲(以下、荷重受け領域と称す)Sを示している。
このように、荷重受け領域Sは、荷重受け部材60の上面61よりも上位、且つ、コンソールボックス30の最上点よりも下位に位置し、コンソールボックス30の車体前後方向の全長に亘っている。そして、コンソールボックス30における前部プレート33と後部プレート34と補強フレーム35とボックスクロスメンバ36,37の大半が、この荷重受け領域S内に配置されている。
【0032】
このように構成された車両の荷重伝達構造においては、車両の側部から衝撃荷重が入力されてセンターピラー11等の車体側壁がシートバック3方向に変形すると、その側壁からの荷重は上下の荷重伝達ブロック21,25の少なくともいずれか一方を介して側部フレーム13cに伝達される。
【0033】
下方の荷重伝達ブロック25に衝撃荷重が入力された場合には、シート1全体の車幅方向内側方向への移動とともに、下方の荷重伝達ブロック26がコンソールボックス30に当接し、このとき、シートバックフレーム13の下方の下部クロスメンバから荷重伝達ブロック26とコンソールボックス30を介してフロアトンネル12に荷重が伝達される。
【0034】
また、上方の荷重伝達ブロック21に衝撃荷重が入力された場合には、その荷重は側部フレーム13cに伝達されると同時に、クロスメンバ16を介してプレート材14にも入力される。
【0035】
クロスメンバ16に軸方向に沿って入力された衝撃荷重は、クロスメンバ16からプレート材14の上端部に入力され、プレート材14の各凹凸部15の稜線部aによって区画された複数の領域にせん断方向の応力を生じさせる。これにより、入力された衝撃荷重はプレート材14のほぼ全域において受け止められるようになる。
【0036】
こうして、側部フレーム13cとプレート材14のほぼ全域に衝突荷重が分散して伝達されると、シート1全体の車幅方向内側方向への移動とともに、荷重伝達ブロック26がコンソールボックス30に当接し、コンソールボックス30を介して荷重がフロアトンネル12へと伝達される。
【0037】
ところで、シート1全体の車幅方向内側方向への移動に伴い荷重伝達ブロック26がコンソールボックス30に接近するときには、荷重伝達ブロック26はコンソールボックス30においてシート1が接近して来る側に設けられた荷重受け部材60の上面61の上方を通ってコンソールボックス30に接近していき、最終的に荷重伝達ブロック26の端面26bをコンソールボックス30の側壁プレート31に当接させる。そして、荷重伝達ブロック26の端面26bをコンソールボックス30の側壁プレート31に当接させた状態で荷重伝達ブロック26からコンソールボックス30へ衝撃荷重が伝達されたときに、荷重伝達ブロック26を下方に押し下げる力が作用した場合には、図5に示すように、荷重伝達ブロック26の下面26aが荷重受け部材60の上面61に突き当たり、荷重伝達ブロック26は荷重受け部材60によって下方から支持されるので、荷重伝達ブロック26はそれ以上の下方移動を阻止される。これにより、荷重伝達ブロック26がコンソールボックス30の側壁プレート31に沿って下方に滑り込むのを防止することができ、シート1に入力された衝撃荷重を荷重伝達ブロック26からコンソールボックス30を介してフロアトンネル12に十分に確実に伝達することが可能となる。その結果、シート1はコンソールボックス30から大きな反力を受けるので、シート1の上部側を車幅方向の内側へ傾転させるモーメントに抗することができ、センターピラー11など車体側部の車内側への侵入を抑制する効果、すなわち車体侵入抑制効果が大きい。
【0038】
また、衝撃荷重の入力時に、荷重伝達ブロック26からコンソールボックス30に荷重が伝達される際には、荷重伝達ブロック26の端面26bが最初にコンソールボックス30の側壁プレート31に当接し、このとき、衝撃荷重は、曲げ方向の剛性の高い補強フレーム35を介して前部プレート33と後部プレート34へと伝達されるとともに、下部プレート32およびボックスクロスメンバ36,37に伝達される。そして、前部プレート33と後部プレート34に伝達された荷重は、下部プレート32およびボックスクロスメンバ36,37に伝達され、側壁プレート31から直接に下部プレート32およびボックスクロスメンバ36,37に伝達された荷重とともにフロアトンネル12との結合部に伝達される。
【0039】
ここで、側壁プレート31は、車体前後方向に延出して前部プレート33と後部プレート34に結合される補強フレーム35によって補強されているため、車体前後方向の全域において曲げ剛性が高く維持されている。さらに、前述したように、コンソールボックス30における前部プレート33と後部プレート34と補強フレーム35とボックスクロスメンバ36,37の大半が荷重受け領域S内に配置されているので、シート1の前後位置調整により前後位置が変更されても、常にコンソールボックス30において補強された部分で荷重伝達ブロック26を受けることができる。その結果、荷重伝達ブロック26からコンソールボックス30への荷重伝達をより確実に且つ効率的に行うことができる。
【0040】
また、コンソールボックス30は、シート1の荷重伝達ブロック26から入力された衝撃荷重を、側壁プレート31の曲げ剛性を高めるように補強する補強フレーム35を介して、閉断面構造の前部プレート33および後部プレート34とに伝達することができるため、収納部30a回りの部材の肉厚増加を招くことなく、入力荷重を効率良くフロアトンネル12に伝達することができる。
したがって、車両の重量増加や収納部30aのスペースの減少を招くことなく、車幅方向中央側のフロアトンネル12への衝撃荷重の速やかな伝達を実現することができる。
【0041】
<実施例2>
次に、この発明に係る車両の荷重伝達構造の実施例2を図6から図9の図面を参照して説明する。実施例2は、シート1の高さ調節が可能なハイトアジャスターを備えたシート1に好適な車両の荷重伝達構造である。
【0042】
図6は、実施例2におけるコンソールボックス30の一部を破断して示す背面図である。実施例1と実施例2の相違点は、実施例1における荷重受け部材60に対応する部材が、実施例2では上下2つあり、そのうち1つはコンソールボックス30の固定用脚部で構成され、他の1つが側壁プレート31に形成された突出部によって構成されているところにある。
【0043】
このコンソールボックス30では、左右の側壁プレート31,31の下端に、その下縁から車幅方向の外側に向かって突出する固定用脚部40が、側壁プレート31の車体前後方向の全長に亘って設けられている。
さらに、左右の側壁プレート31,31には、固定用脚部40よりも所定寸法上方において車幅方向の外側に向かって突出する断面略コ字形の突出部41が、側壁プレート31の車体前後方向の全長に亘って設けられている。突出部41は固定用脚部40よりも側壁プレート31外面から車幅方向外側への突出寸法を小さく設定されている。
【0044】
一方、フロアトンネル12の左右の側壁部12a,12aには、コンソールボックス30の固定用脚部40に対する受け台42がボルト43によって締結固定されている。受け台42の車体前後方向の長さは、コンソールボックス30の側壁プレート31とほぼ同じ長さに設定されている。コンソールボックス30は、受け台42の上に固定用脚部40を載置し、ボルト44によって受け台42に固定されている。
【0045】
ここで、固定用脚部40の上面の高さは、図8に示すように、ハイトアジャスターによってシート1の高さを一番低く調整したとき(以下、最下段という)の荷重伝達ブロック26の下面26aよりも下位に位置するように設定されている。
また、突出部41の上面の高さは、図7に示すように、ハイトアジャスターによってシート1の高さを一番高く調整したとき(以下、最上段という)の荷重伝達ブロック26の下面26aよりも下位に位置するように設定されている。
【0046】
この実施例2では、シート1を最上段に調節した状態で車両の側部から衝撃荷重が入力されて、シート1全体が車幅方向内側へ移動したときには、図7に示すように荷重伝達ブロック26の下面26aは、コンソールボックス30の側壁プレート31に設けられた突出部41の上面によって下から支持可能となる。
また、シート1を最下段に調節した状態で車両の側部から衝撃荷重が入力されて、シート1全体が車幅方向内側へ移動したときには、図8に示すように荷重伝達ブロック26の下面26aは、コンソールボックス30の固定用脚部40の上面によって下から支持可能となる。
さらに、シート1を最下段と最上段の間に調節した状態で車両の側部から衝撃荷重が入力されて、シート1全体が車幅方向内側へ移動したときには、図9に示すように荷重伝達ブロック26の端面26bが、コンソールボックス30の突出部41に食い込むように変形し、その結果、荷重伝達ブロック26はコンソールボックス30の突出部41によって下から支持可能となる。
【0047】
このように実施例2の荷重伝達構造によれば、シート1の高さ調節にかかわらず、衝撃荷重の入力時に荷重伝達ブロック26がコンソールボックス30の側壁プレート31に沿って下方に滑り込むのを防止することができ、シート1に入力された衝撃荷重を荷重伝達ブロック26からコンソールボックス30を介してフロアトンネル12に十分に確実に伝達することが可能となる。
したがって、この実施例2においては、シート1の高さに関わらず、車体侵入抑制効果を大きくすることができる。
【0048】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、実施例2における固定用脚部40を、実施例1における荷重受け部材60の代わりとすることも可能である。
また、荷重伝達ブロック26のコンソールボックス30と対向する内側面に、車両前後方向に延び、車幅方向内側に突出した突出部を設け、側壁プレート31に車両前後方向に延びる凹部を設け、側壁プレート31に荷重伝達ブロック26が当接した状態で側壁プレート31に設けた前記凹部に荷重伝達ブロック26に設けた前記突出部が嵌り込むようにすることで、前記凹部を荷重伝達ブロック26の下側を支持する荷重受け部材としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 シート
12 フロアトンネル(車体フロア)
13d 側部フレーム(側面)
26 荷重伝達ブロック(荷重伝達部材)
26a 下面(下側)
30 コンソールボックス(補強体)
31 側壁プレート(側壁部)
33 前部プレート(補強部材)
34 後部プレート(補強部材)
36,37 ボックスクロスメンバ(補強部材)
41 固定用脚部(荷重受け部)
60 荷重受け部材(荷重受け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートの車幅方向内側に隣接して設置され、車体側方から前記シートに入力された衝撃荷重を車体フロアに伝達する補強体を備えた車両の荷重伝達構造において、
前記シートには、前記補強体と対向する側面に荷重伝達部材が設けられ、
前記補強体には、前記荷重伝達部材と対向する側壁部に前記荷重伝達部材が当接した状態で前記荷重伝達部材の下側を支持する荷重受け部が設けられていることを特徴とする車両の荷重伝達構造。
【請求項2】
前記補強体は、その左右の側壁部を連結する補強部材を有し、該補強部材は前記荷重受け部よりも上方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両の荷重伝達構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−234893(P2010−234893A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83327(P2009−83327)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】