車両の走行制御装置および車両の走行制御方法
【課題】障害物を回避する走行制御において、制御に対する違和感の低減と、運転者が得られる安心感との両立を図る。
【解決手段】走行制御部39は、生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御(操舵反力制御)を行う。リスク演算部34は、生成された回避軌道を処理対象として、障害物および車両の運動状態に基づいて、リスク(障害物との接触可能性)を演算する。そして、制御量調整部37は、リスクおよび操舵トルクに基づいて、走行制御部39による制御量を調整する。ここで、走行制御部39は、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、この基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させている。この場合、制御量調整部37は、障害物に対するリスクが大きい程、走行制御部39によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整する。
【解決手段】走行制御部39は、生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御(操舵反力制御)を行う。リスク演算部34は、生成された回避軌道を処理対象として、障害物および車両の運動状態に基づいて、リスク(障害物との接触可能性)を演算する。そして、制御量調整部37は、リスクおよび操舵トルクに基づいて、走行制御部39による制御量を調整する。ここで、走行制御部39は、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、この基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させている。この場合、制御量調整部37は、障害物に対するリスクが大きい程、走行制御部39によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行状況および運転者の操作状況に応じて、車両が障害物に接触することを回避するために車両の運動状態の制御(走行制御)を行う手法が知られている。
また、同様の技術として、車線に沿って車両が走行するように車両の運動状態の制御(走行制御)を行う手法も知られている。車線に沿わせるための走行制御の途中で車両の向きを変化させる場合には、人間が運転の主体者になるため、走行制御中でも運転者の意思による介入を行い得るように構成された手法も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような手法によれば、システム側から運転に適した情報を運転者が認識しやすい形で提供するために、車両が車線に沿って走行するために必要な情報を操舵力および操舵角度の形に変換して運転者に伝える。これにより、運転者はこれらの情報を参酌しつつ自らの意思で車両を運転することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3569587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された手法によれば、運転者の操舵遅れや操舵不足に対する誘導感を与えることはできる。しかしながら、運転者の操舵意図を尊重することで得られる制御に対する違和感の低減と、しっかりとした操舵反力によって運転者が得られる安心感との両立を図ることが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、障害物を回避する走行制御において、制御に対する違和感の低減と、運転者が得られる安心感との両立を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明において、走行制御手段は、自車両の走行制御として操舵反力を制御しており、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させる。この場合、制御量調整手段は、演算されたリスクおよび運転者による運転操作として検出される操舵トルクに基づいて、走行制御手段による制御量を調整する。特に、制御量調整手段は、障害物に対するリスクが大きい程、走行制御手段によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目標の回避軌道へ追従するための走行制御、すなわち、操舵反力が制御される。この操舵反力はリスクと運転者の操舵トルクとに基づいて調整されることとなり、リスクが小さいときには操舵反力を小さくでき、一方、リスクが大きいときには操舵反力を大きくできる。そのため、リスクが小さい場合においては運転者の操舵意図を尊重し、制御介入に対する違和感を低減でき、かつ、リスクが大きい場合には、十分な操舵反力から回避軌道に導かれている安心感を運転者に与えることができる。これにより、運転者の操舵意図を尊重することによる制御に対する違和感の低減と、しっかりとした操舵反力によって運転者が得られる安心感との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかる車両の走行制御装置10が適用された車両を模式的に示す説明図
【図2】コントローラ30の機能的な構成を示すブロック図
【図3】第1の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャート
【図4】回避軌道の説明図
【図5】所定範囲における位置PとリスクRとの関係を示す説明図
【図6】所定範囲における位置PとリスクRとの関係を示す説明図
【図7】回避軌道に対応するリスクの説明図
【図8】軌道偏差の説明図
【図9】操舵反力の調整量Gsuptと操舵トルクTとの関係を示す説明図
【図10】操舵反力の調整量GsuprとリスクRとの関係を示す説明図
【図11】操舵反力トルクThapと操舵角θとの関係を示す説明図
【図12】操舵反力トルクの抑制を示す説明図
【図13】第2の実施形態にかかるコントローラ30の機能的な構成を示すブロック図
【図14】第2の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャート
【図15】複数の回避軌道の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる車両の走行制御装置10が適用された車両を模式的に示す説明図である。この車両の走行制御装置10は、車両が障害物に接触することを回避するために車両の運動状態の制御(走行制御)を行う装置であり、検出系、コントローラ30およびアクチュエータ50を主体に構成されている。
【0010】
レーダ20は、車両の進行方向における物体までの距離および位置を検出する。レーダ20としては、レーザレーダやミリ波レーダなどを用いることができる。例えば、レーダ20としてレーザレーダを用いた場合、このレーダ20は、車両前方にレーザ光を照射し、前方に存在する物体からの反射光を受光系で受光する。そして、レーダ20は、レーザ発射時点と反射光の受光時点との時間差を検出することにより、車両と物体との間の距離および位置を検出する。
【0011】
カメラ21は、車両前方を撮像することにより、撮像画像を画像処理装置22に出力する。画像処理装置22は、カメラ21からの撮像画像を処理することにより、前方に存在する物体や走路等の走行環境を検出する。
【0012】
ヨーレートセンサ23は、車両1に発生するヨーレートを検出する。Gセンサ24は、車両の前後方向(車長方向)の加速度(以下「前後加速度」という)を検出するとともに、車両の横方向(車幅方向)の加速度(以下「横加速度」という)を検出する。車輪速センサ25は、車両1の各車輪の回転速度を検出することにより、車両の速度(車速)を検出する。
【0013】
操舵角センサ26は、運転者が操作するハンドルの回転角を操舵角として検出する。この操舵角は、直進走行に対応するハンドルの中立状態を基準として、左方向または右方向といった操舵方向とともに操舵角を検出する。操舵トルクセンサ27は、運転者のハンドル操作によって加えられる操舵トルクを検出する。この操舵トルクは、直進走行に対応するハンドルの中立状態を基準として、左方向または右方向といった操舵方向とともに操舵トルクを検出する。
【0014】
図2は、コントローラ30の機能的な構成を示すブロック図である。コントローラ30は、システム全体を統合的に制御する機能を担っており、制御プログラムに従って動作することにより、障害物を回避するための車両の走行状態を制御する。コントローラ30としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。このコントローラ30は、検出系によって検出される各種の情報に基づいて、種々の演算を行い、この演算結果に応じた制御信号をアクチュエータ50に出力することにより、車両の運動状態の制御(走行制御)を行う。
【0015】
コントローラ30は、これを機能的に捉えた場合、障害物検出部31、運動状態検出部32、回避軌道生成部33、リスク演算部34、運転操作検出部35、軌道偏差検出部36、制御量調整部37、操舵反力演算部38および走行制御部39を有している。
【0016】
障害物検出部31は、レーダ20から検出信号を読み込むとともに、画像処理装置22から処理結果を読み込む。障害物検出部31は、読み込んだ情報に基づいて、自車両と接触する可能性のある物体を障害物として検出する(障害物検出手段)。障害物検出部31による検出結果は、回避軌道生成部33およびリスク演算部34にそれぞれ出力される。
【0017】
運動状態検出部32は、ヨーレートセンサ23、Gセンサ24および車輪速センサ25から検出信号をそれぞれ読み込む。運動状態検出部32は、読み込んだ各情報から車両の運動状態を検出する(運動状態検出手段)。運動状態検出部32による検出結果は、回避軌道生成部33、リスク演算部34および制御量調整部37にそれぞれ出力される。
【0018】
回避軌道生成部33は、障害物の検出結果と車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための回避軌道を生成する(回避軌道生成手段)。回避軌道生成部33によって生成された回避軌道は、回避軌道選択部36およびリスク演算部34にそれぞれ出力される。
【0019】
リスク演算部34は、障害物の検出結果と車両の運動状態とに基づいて、リスクを演算する(リスク演算手段)。このリスクは、自車両の進行方向(回避軌道)と略直交方向(以下「軌道直交方向」という)に延在する所定範囲における障害物との接触可能性を示す指標である。本実施形態において、リスク演算部34は、生成された回避軌道を対象としてリスクを演算する。このリスクの演算方法の詳細については後述する。リスク演算部34によって演算された回避軌道に対応するリスクは、制御量調整部37に対して出力される。
【0020】
運転操作検出部35は、操舵角センサ26および操舵トルクセンサ27から検出信号をそれぞれ読み込む。運転操作検出部35は、読み込んだ情報に基づいて、運転者による運転操作を検出する(運転操作検出手段)。運転操作検出部35による検出結果は、軌道偏差検出部36および制御量調整部37に対して出力する。
【0021】
軌道偏差検出部36は、検出された車両の運動状態および運転操作の情報と、生成された回避軌道とに基づいて、自車両の実軌道と回避軌道との軌道偏差を検出する(偏差検出手段)。軌道偏差検出部36によって演算された軌道偏差は、操舵反力演算部38および走行制御部39に対してそれぞれ出力する。
【0022】
制御量調整部37は、リスク演算部34によって演算されたリスクと、運転操作検出部35によって検出された操舵トルクとに基づいて、操舵反力の調整量を演算する(制御量調整手段)。後述するように、操舵反力演算部38は、軌道偏差を抑制するための操舵反力の制御量(基本制御量)を演算するが、この基本制御量は、制御量調整部37によって演算される調整量によって調整(補正・抑制)される。換言すれば、制御量調整部37によって演算される調整量に応じて、走行制御部39による走行制御が調整されることとなる。制御量調整部37によって演算された操舵反力の調整量は、操舵反力演算部38に対して出力される。
【0023】
操舵反力演算部38は、軌道偏差検出部36によって検出された軌道偏差と、制御量調整部37によって演算された操舵反力の調整量とに基づいて、操舵反力に関する制御量を演算する。操舵反力演算部38は、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させてるように、基本制御量を決定する。そして、操舵反力演算部38は、この基本制御量に、制御量調整部37によって演算された操舵反力の調整量を加味することにより、最終的な操舵反力に関する制御量を演算する。操舵反力演算部38によって演算された操舵反力に関する制御量は、走行制御部39に対して出力される。
【0024】
走行制御部39は、軌道偏差検出部36によって検出された軌道偏差と、操舵反力演算部38によって演算された操舵反力に関する制御量とに基づいて、アクチュエータ50を制御し、自車両の走行状態を制御する(走行制御手段)。走行制御部39は、上述した操舵反力演算部38によって演算される操舵反力に関する制御量によって車両の走行制御を行うものであり、操舵反力演算部38も広義において走行制御手段として含むことができる。
【0025】
アクチュエータ50は、例えば、ハンドルにアシストトルクを付与する電動アクチュエータを含み、この電動アクチュエータを制御することにより、車輪に所望の操舵角を与えるようなアシストトルクを付与することができる。また、アクチュエータ50は、例えば、車両のホイールシリンダに供給される制動液圧を制御するアクチュエータをさらに含み、このアクチュエータを制御することにより、車輪に制動力を発生させて車両の制動動作を行うことができる。
【0026】
図3は、第1の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、車両のイグニッションスイッチがオンされると呼び出され、所定の周期でコントローラ30によって実行される。
【0027】
ステップ10(S10)において、障害物検出部31は、レーダ20と画像処理装置22とからの入力情報に基づいて、車両が走行可能な領域(以下「走行路」という)と、走行路内に存在する物体とを検出する。なお、走行路等の検出方法は本願発明の出願時点で既に公知であるので詳細な説明は省略する。走行路の検出方法については、例えば、特許第3521860号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。
【0028】
ステップ11(S11)において、障害物検出部31は、ステップ10における検出結果に基づいて、車両と接触する可能性がある物体(以下「障害物」という)が走行路内に存在するか否かを判別する。なお、障害物の検出方法は本願発明の出願時点で既に公知であるので詳細な説明を省略する。障害物の検出方法については、例えば、特開2000−207693号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。このステップ11において肯定判定された場合、すなわち、障害物が存在する場合には、ステップ12(S12)に進む。一方、ステップ11において否定判定された場合、すなわち、障害物が存在しない場合には、ステップ10の処理に戻る。
【0029】
ステップ12において、障害物検出部31は、障害物と自車両との間の距離および障害物と自車両との相対速度に基づいて、ステップ11の処理により確認された障害物に自車両が接触するまでの時間を接触予測時間Tttcとして算出する。障害物と自車両との間の距離はレーダ20からの入力情報により算出でき、自車両と障害物の相対速度は例えば算出された距離を時間微分することによって算出することができる。
【0030】
ステップ13(S13)において、回避軌道生成部33は、接触予測時間Tttcが予め設定された第1の判定時間Tth1よりも小さいか否かを判別する。このステップ13において肯定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが第1の判定時間Tth1よりも小さい場合には、ステップ14(S14)に進む。一方、ステップ13において否定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが第1の判定時間Tth1以上である場合には、ステップ10の処理に戻る。
【0031】
接触予測時間Tttcが第1の判定時間Tth1以上である場合、換言すれば、自車両が障害物に接触するまでの時間が比較的長い場合には、一般に、その後の運転者による車両操作によって障害物との接触が回避される可能性がある。したがって、接触を回避するための走行制御を実行する必要性がなくなる可能性が高い。そのため、ステップ13の判定処理では、このような判断を行うための第1の判定時間Tth1が、実験やシミュレーションを通じて設定されている。これより、走行制御を実行する必要性がないようなシーンであるにも係わらず、後述する走行制御が実行されることを抑制することができる。そのため、コントローラ30の処理負荷の低減を図ることができる。
【0032】
ステップ14において、回避軌道生成部33は、検出された障害物と、検出された自車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための走行軌道を回避軌道として生成(算出)する。本実施形態において、回避軌道生成部33は、図4に示すように、操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道Lを生成する。同図において、「C」は自車両を示し、「O」は矢印方向(軌道直交方向)に移動する障害物を示し、Rは走行路を示す。回避軌道の生成において、回避軌道生成部33は、走行路の範囲から外れる回避軌道や、運転者による自車両への操作では障害物との接触を回避できない回避軌道は生成しない。
【0033】
回避軌道Lを生成する場合、回避軌道生成部33は、自車両の運動状態と自車両のタイヤ特性とに基づいて、障害物との接触を回避するために自車両に付与すべき横加速度を演算する。そして、回避軌道生成部33は、演算された横加速度によって障害物との接触を回避できるか否かを判別する。障害物との接触を回避可能と判断した場合、次に、回避軌道生成部33は、横加速度のみを通じた走行制御による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。一方、障害物との接触を回避不可能と判断した場合、回避軌道生成部33は、横加速度とともに、必要最低限の制動力を通じた走行制御による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。制動力に関しても自車両のタイヤ特性を考慮した上限値を設定しておき、この上限値を超える制動力が必要となる場合には、回避軌道生成部33は、回避軌道を算出しない。なお、横加速度のみを通じた走行制御による回避軌道を算出した場合であっても、自車両が障害物の近くを通過する際にはできるだけ車速を落として通過した方が一般的に安全であるので、タイヤ特性の上限値を超えない範囲の制動力を付加した回避軌道を算出してもよい。
【0034】
ステップ15(S15)において、リスク演算部34は、検出した障害物と、検出した自車両の運動状態とに基づいて、回避軌道Lに対応するリスクを作成する。障害物周辺のリスクを演算する場合、リスク演算部34は、図5(a)に示すように、各パラメータμ、ρ、v、Tttcに基づいて、平均値が(μ+v*Tttc)で、分散がρの正規分布N(μ+v*Tttc、ρ)を障害物周辺のリスクとして作成する。ここで、μは、自車両座標系における障害物の中心位置であり、ρは、軌道直交方向における障害物の幅である。また、vは、軌道直交方向における障害物の移動速度である。なお、障害物周辺のリスクは、例えば、同図(b)に示すように、(μ+v*Tttc)を中心として、ρの半分の長さよりも長い半径方向の領域において、中心位置からの距離に応じて段階的にリスクが低くなるように設定してもよい。
【0035】
また、リスクを作成する場合、リスク演算部34は、検出した走行路の境界を考慮してリスクを作成してもよい。例えば、図6(a)に示すように、走行路の境界位置をμr、走行路の境界に対する回避マージンをmにとした場合、平均値がμr、分散がmの正規分布N(μr、m)を走行路の境界周辺のリスクとしてもよい。また、図6(b)に示すように、リスク演算部34は、境界位置μrから回避マージンmより離れた領域で、境界位置μrからの距離に応じて段階的にリスクが小さくなるようにリスクを生成してもよい。図7は、回避軌道Lに対応するリスクを模式的に示す説明図である。リスク演算部34は、上述したリスクの作成手法で示したように、回避軌道生成部33で生成された回避軌道Lについて、軌道直交方向に延在する所定の範囲のリスクを作成する。同図において、(b)は、(a)に示す(1)地点におけるリスクであり、(c)は、(a)に示す(2)地点におけるリスクである。
【0036】
ステップ16(S16)において、軌道偏差検出部36は、運転者による何らかの操作があったか否かを判断する。軌道偏差検出部36は、運転操作検出部35において検出される運転操作、具体的には、操舵角を参照して、運転者による操舵操作が行われたか否かを判断する。操舵操作の有無の判断方法は、例えば、ステップ14において回避軌道が算出されたタイミングにおける操舵角から、左右いずれの方向に操舵角が変化したか否かを検出するといった如くである。また、単に操舵方向だけでなく、回避軌道が算出されたタイミングにおける操舵角を基準として、操舵角変化が所定のしきい値以上生じたか否かを判断してもよい。さらに、操舵角変化の代わりに、操舵角速度または操舵角加速度が所定のしきい値以上変化したことを判断してもよい。このステップ16において否定判定された場合、すなわち、運転者による操作がない場合には、ステップ17(S17)に進む。一方、ステップ16において肯定判定された場合、すなわち、運転者による操作があった場合には、ステップ18(S18)に進む。
【0037】
ステップ17において、軌道偏差検出部36は、ステップ12の処理により算出された接触予測時間Tttcが、接触予測時間Tth2よりも小さいか否かを判断する。図4に示すように、地点Pは、回避軌道に追従する走行制御を行うための制御開始地点である。ステップ17において用いられる接触予測時間Tth2は、制御開始地点Pに車両が到達した際の当該地点における接触予測時間に相当する値である。このステップ17において否定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2よりも大きい場合には、ステップ14の処理に戻る。一方、ステップ17において肯定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2以上の場合には、ステップ18の処理に進む。
【0038】
ステップ18において、軌道偏差検出部36は、回避軌道生成部33が生成した回避軌道Lと自車両の実軌道との軌道偏差を算出する。具体的には、軌道偏差検出部36は、回避軌道を生成した時点からの、運動状態検出部32が検出した車両の運動状態と、運転操作検出部35が検出した運転者の車両操作情報とに基づいて、車両モデル(例えば、2輪モデル)を用いた演算を行う。これにより、軌道偏差検出部36は、図8に示すように、自車両が回避軌道Lに追従するのに必要な操舵角を、軌道偏差として演算する。
【0039】
ステップ19(S19)において、運転操作検出部35は、操舵トルクセンサ12から入力された運転者の操舵トルクを検出する。
【0040】
ステップ20(S20)において、制御量調整部37は、リスク演算部34によって演算されたリスクと、運転操作検出部35によって検出された操舵トルクとに基づいて、操舵反力の調整量を演算する。具体的には、運転者の操舵トルクをT、操舵トルクTに基づいて算出する操舵反力の調整量をGsuptとする。例えば、図9(a)に示すように操舵トルクT(絶対値)が第1のしきい値Tr1以下である場合((1)に示す区間)、制御量調整部37は、調整量Gsuptを第1の値Gstminとして算出する。ここで、第1の値Gstminは、操舵トルクTに応じて算出する操舵反力の調整量のうち最も小さい値とする。
【0041】
また、操舵トルクT(絶対値)が第2のしきい値Tr2以下で、かつ第1のしきい値Tr1よりも大きい場合((2)に示す区間)、制御量調整部37は、調整量Gsuptを下式より算出する。
(数式1)
Gsupt=(Gstmax−Gstmin)/(Tr2−Tr1)×T+Gstmin−(Gstmax−Gstmin)/(Tr2−Tr1)×Tr1
ここで、Gstmaxは、操舵入力トルクTに応じて算出する操舵反力の調整量のうち最も大きい値とする。
【0042】
さらに、操舵トルクT(絶対値)が第2のしきい値Tr2よりも大きい場合((3)に示す区間)、制御量調整部37は、調整量Gsuptを上記の最大値Gstmaxとして算出する。なお、かかる操舵トルクTに対する操舵反力の調整量Gsuptの算出手法は、一例である。例えば、図9(b)に示すように、wtを重み、Ktを定数の補正量とした場合、制御量調整部37は、Gsupt=wt×T×T+Ktとして調整量Gsuptを求めてもよい。
【0043】
次に、リスク演算部34が演算したリスク(回避軌道Lの軌道直交方向に延在する範囲でのリスク)をR、リスクRに基づいて算出する操舵反力の調整量をGsuprとする。この場合、制御量調整部37は、例えば、図10(a)に示すように、重みwrと、定数の補正量Krとに基づいて、Gsupr=wr/R+Krより調整量Gsuprを求めてもよい。なお、このようなリスクRに対する操舵反力の調整量Gsuprの算出手法は一例である。同図(b)に示すように、制御量調整部37は、リスクRの増加に対して調整量Gsuprが段階的に減少するように、当該調整量Gsuprを演算してもよい。
【0044】
ステップ21(S21)において、操舵反力演算部38は、軌道偏差(すなわち、自車両を回避軌道Lに追従させるために必要な操舵角)と、操舵反力の調整量Gsupt,Gsuprとに基づいて、操舵反力の制御量(具体的には、操舵反力トルク)を演算する。具体的には、自車両を回避軌道Lに追従させるために必要な操舵角をθ、軌道偏差から演算される操舵反力トルクをThapとした場合、操舵反力演算部38は、図11(a)に示すように、ゼロより大きい基準操舵反力Tiおよび重みwhより、Thap=wh×θ×θ+Tiを用いて操舵反力トルク(基本制御量)Thapを求める。なお、この操舵反力トルクThapは、図11(b)に示すように、操舵角θの絶対値が大きい程、その値が段階的に増加するように設定してもよい。
【0045】
つぎに、操舵反力演算部38は、リスクRに対応する操舵反力の調整量Gsuprに基づいて操舵反力トルクThapを調整(抑制)する。例えば、図12に示すように、操舵反力演算部38は、Thap=wh/Gsupr×θ×θ+Tiとして操舵反力トルクThapを調整する。ここで、図12において、(1)の曲線は先に算出した操舵角θに基づいて算出した操舵反力トルクThapである。また、(2)の曲線は、ステップ20で求めた調整量Gsuprの値が小さいケース、すなわち、リスクRが大きいケースにおける調整された操舵反力トルクThapである。一方、(3)の曲線は、ステップ20で求めた調整量Gsuprの値が大きいケース、すなわち、リスクRが小さいケースにおける調整された操舵反力トルクThapである。このように、操舵反力トルクThapを調整することで、リスクRが大きい場合は必要操舵角θの増加に対する操舵反力トルクThapの増加量を大きくすることができる。一方、リスクRが小さい場合は、必要操舵角θの増加に対する操舵反力トルクThapの増加量を小さくくすることができる。
【0046】
さらに、操舵トルクTに対応する操舵反力の調整量Gsuptに基づいて操舵反力トルクThapを調整(抑制)する。例えば、操舵反力演算部38は、Thap=wh/Gsupr×θ×θ+Ti−Gsuptとして操舵反力トルクThapを求める。ただし、かかる演算によって操舵反力トルクThapがゼロ以下となる場合には、操舵反力演算部38は、操舵反力トルクThapを最小の操舵反力トルクThminとする。
【0047】
ステップ22(S22)において、走行制御部39は、算出された操舵反力トルクThapと、軌道偏差とに基づいて、回避軌道生成部33が生成した回避軌道Lに車両が追従するようにアクチュエータ50を制御する。例えば、走行制御部39は、アクチュエータ50の一部をなす電動アシストモータを制御して、回避軌道へ追従するようなアシストトルクを操舵系に付与する。
【0048】
ステップ23(S23)において、障害物検出部31は、障害物に対する回避が終了し、障害物との接触の可能性がなくなったか否かを判断する。このステップ23において肯定判定をされた場合、すなわち、接触の可能性が無いと判断された場合には、本ルーチンを終了する。この場合、走行制御部39は、回避軌道Lに車両を追従させる走行制御を終了する。一方、ステップ23において否定判定をされた場合、すなわち、接触の可能性があると判断された場合には、ステップ18に示す処理に戻る。
【0049】
このように、本実施形態において、走行制御部39は、生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御を行う。リスク演算部34は、生成された回避軌道を処理対象として、障害物および車両の運動状態に基づいて、回避軌道と略直交方向に延在する所定範囲におけるリスク(障害物との接触可能性)を演算する。そして、制御量調整部37は、演算されたリスクおよび操舵トルクに基づいて、走行制御部39による制御量を調整する。ここで、走行制御部39は、自車両の走行制御として操舵反力を制御しており、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させている。この場合、制御量調整部37は、障害物に対するリスクが大きい程、走行制御部39によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整する。
【0050】
かかる構成によれば、目標の回避軌道へ追従するための走行制御、すなわち、操舵反力が制御される。この操舵反力はリスクと運転者の操舵トルクとに基づいて調整されることとなり、リスクが小さいときには操舵反力を小さくでき、一方、リスクが大きいときには操舵反力を大きくできる。そのため、リスクが小さい場合においては運転者の操舵意図を尊重し、制御介入に対する違和感を低減でき、かつ、リスクが大きい場合には、十分な操舵反力から回避軌道に導かれている安心感を運転者に与えることができる。これにより、運転者の操舵意図を尊重することによる制御に対する違和感の低減と、しっかりとした操舵反力によって運転者が得られる安心感との両立を図ることができる。
【0051】
また、走行制御により、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力が増加するので、操舵反力により、目標軌道に一致する回転位置までハンドルを回転するように運転者に操作を促すことができる。これにより、運転者は回避軌道の位置を認識できて、ガイドされているという安心感を与えることができる。さらに、走行制御により、基準位置にあるときの操舵反力をゼロより大きな操舵反力とすることで、ハンドルが基準位置にあるときの操舵反力がゼロの場合に比べ、運転者はより明確な操舵反力を感じることができる。これにより、緊急回避といったシーンおいても目標とする回避軌道の位置をより明確に認識できるととも、ガイドされているという感覚を与えることができる。
【0052】
また、制御量調整部37は、操舵トルクが大きい程、操舵反力が低減される。これにより、軌道追従制御に対して運転者が強い操作意図を持って操作している場合には、運転者の操作がしやすいように操舵反力を低減することができる。これにより、運転者が覚える違和感を低減しつつ、かつ若干の操舵反力を残すことで追従している軌道に対するガイド感を残すことができる。
【0053】
また、本実施形態において、制御量調整部37は、操舵トルクTがゼロからゼロよりも大きい第1設定値(図5のTr1)までの間における操舵反力の調整量を第1調整量Gstminとして、操舵トルクTが第1設定値Tr1から第2設定値Tr2までの間における操舵反力の調整量を第2調整量として、操舵トルクが第2設定値Tr2よりも大きい場合における操舵反力の調整量を第3調整量Gstmaxとして設定している。本実施形態において、操舵反力の調整量は、操舵反力を抑制する方向に調整する値として機能する。この場合、第1調整量Gstminは第2調整量よりも小さく、第2調整量は第3調整量Gstmaxよりも小さい関係を有している。
【0054】
かかる構成によれば、操舵反力の抑制量が最も小さい第1調整量Gstminの領域では、自車両が回避軌道から外れないように規制する規制感を運転者に報知することができる。また、操舵反力の抑制量が中間に位置する第2調整量の領域では、自車両を回避経路に移動するように促す誘導感を運転者に報知することができる。また、操舵反力の抑制量が最も大きい第3調整量Gstmaxの領域では、運転者の操作意図を尊重するものの走行制御中であることを運転者に知らせる制御継続感を運転者に報知することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態にかかる車両の走行制御装置10のコントローラ30を機能的に示すブロック図である。本実施形態にかかる車両の走行制御装置10およびその制御方法が、第1の実施形態のそれと相違する点は、複数の回避軌道を生成することである。なお、第1の実施形態と重複する説明は省略することとし、以下相違点を中心に説明を行う。
【0056】
本実施形態において、コントローラ30の機能には、回避軌道選択部40が追加されており、これを前提として、回避軌道生成部33は、検出された障害物と、検出された自車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための走行軌道を回避軌道として複数生成(算出)する。そして、回避軌道選択部40は、複数生成された回避軌道のうちから、運転者による運転操作に適合した回避軌道を選択する。
【0057】
図14は、第2の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、車両のイグニッションスイッチがオンされると呼び出され、所定の周期でコントローラ30によって実行される。まず、第1の実施形態と同様に、ステップ10からステップ13までの処理が各々実行される。
【0058】
そして、ステップ13に続くステップ14において、回避軌道生成部33は、検出された障害物と、検出された自車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための走行軌道を回避軌道として複数生成(算出)する。本実施形態において、回避軌道生成部33は、図15に示すように、右方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道R1と、左方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道R2とをそれぞれ生成する。同図において、「C」は自車両を示し、「O」は矢印方向(軌道直交方向)に移動する障害物を示す。回避軌道の生成において、回避軌道生成部33は、走行路の範囲から外れる回避軌道や、運転者による自車両への操作では障害物との接触を回避できない回避軌道は生成しない。
【0059】
回避軌道R1,R2を生成する場合、回避軌道生成部33は、自車両の運動状態と自車両のタイヤ特性とに基づいて、障害物との接触を回避するために自車両に付与すべき横加速度を設定する。そして、回避軌道生成部33は、設定された横加速度によって障害物との接触を回避できるか否かを判別する。障害物との接触を回避可能と判断した場合、次に、回避軌道生成部33は、横加速度のみを通じた走行制御(すなわち、操舵のみの走行制御)による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。一方、障害物との接触を回避不可能と判断した場合、回避軌道生成部33は、横加速度とともに、必要最低限の制動力を通じた走行制御による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。制動力に関しても自車両のタイヤ特性を考慮した上限値を設定しておき、この上限値を超える制動力が必要となる場合には、回避軌道生成部33は、回避軌道を算出しない。なお、横加速度のみを通じた走行制御による回避軌道を算出した場合であっても、自車両が障害物の近くを通過する際にはできるだけ車速を落として通過した方が一般的に安全であるので、タイヤ特性の上限値を超えない範囲の制動力を付加した回避軌道を算出してもよい。
【0060】
ステップ15において、リスク演算部34は、生成された回避軌道のそれぞれを対象として、リスクを演算する。なお、リスクの演算手法については、第1の実施形態と同様の手法を用いることができる。
【0061】
ステップ16において、回避軌道選択部40は、第1の実施形態において軌道偏差検出部36が行う処理と同様に、運転者による何らかの操作があったか否かを判断する。このステップ16において否定判定された場合、すなわち、運転者による操作がない場合には、ステップ17に進む。一方、ステップ16において肯定判定された場合、すなわち、運転者による操作があった場合には、ステップ24(S24)に進む。
【0062】
ステップ17において、回避軌道選択部40は、第1の実施形態において軌道偏差検出部36が行う処理と同様に、接触予測時間Tttcが、接触予測時間Tth2以上であるか否かを判断する。このステップ17において肯定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2よりも小さい場合には、ステップ14の処理に戻る。一方、ステップ17において否定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2よりも小さい場合には、ステップ24の処理に進む。
【0063】
ステップ24において、回避軌道選択部40は、生成されている複数の回避軌道のなかから、回避軌道を選択する。具体的には、回避軌道選択部36は、運転者によって操作が行われている場合には、回避軌道R1とR2の候補の中から、運転者の操作に適合する回避軌道を選択する。一方、運転者によって操作が行われていない場合には、運転者が操作を開始する地点が、いずれの回避軌道R1,R2に関する制御開始地点P1,P2よりも障害物に近い状態となる。そこで、回避軌道選択部36は、回避軌道R1,R2の候補の中から、制御開始地点P1,P2が最も障害物に近い回避軌道を選択する。
【0064】
そして、第1の実施形態と同様に、ステップ24に引き続きステップ18からステップ23までの処理が各々実行される。
【0065】
このように本実施形態において、回避軌道生成部33は、自車両の運動状態を参照して、障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を複数生成する。この場合、回避軌道選択部40は、複数の衝突回避軌道の中から運転者による運転操作に適合した回避軌道を選択する。
【0066】
かかる構成によれば、運転者の操舵に合わせて回避軌道が選択され、選択された回避軌道に対して第1の実施形態と同様の追従制御を行うので、運転者が障害物を回避する方向と、制御による回避の方向が対応することとなる。これにより、制御開始時の操舵での違和感をなくすことができ、かつ、選択された回避軌道に追従する制御を行っている場合も、第1の実施形態と同様に違和感の低減と、安心感の両立を図ることができる。
【0067】
なお、上述した各実施形態において、コントローラ30の障害物検出部31は、自車両の前方に存在する障害物を検出する機能を担うものであるが、広義において、レーダ20、カメラ21および画像処理装置22も同様の機能を担う手段として機能する。また、運動状態検出部32は、自車両の運動状態を検出する機能を担うものであるが、広義において、ヨーレートセンサ23、Gセンサ24、車輪速センサ25も同様の機能を担う手段として機能する。さらに、運転操作検出部35は、運転者による自車両の操作を検出する機能を担うものであるが、広義において、操舵角センサ26および操舵トルクセンサ27も同様の機能を担う手段として機能する。
【符号の説明】
【0068】
10…走行制御装置
20…レーダ
21…カメラ
22…画像処理装置
23…ヨーレートセンサ
24…Gセンサ
25…車輪速センサ
26…操舵角センサ
27…操舵トルクセンサ
30…コントローラ
31…障害物検出部
32…運動状態検出部
33…回避軌道生成部
34…リスク演算部
35…運転操作検出部
36…回避軌道選択部
36…軌道偏差検出部
37…制御量調整部
38…操舵反力演算部
39…走行制御部
40…回避軌道選択部
50…アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行状況および運転者の操作状況に応じて、車両が障害物に接触することを回避するために車両の運動状態の制御(走行制御)を行う手法が知られている。
また、同様の技術として、車線に沿って車両が走行するように車両の運動状態の制御(走行制御)を行う手法も知られている。車線に沿わせるための走行制御の途中で車両の向きを変化させる場合には、人間が運転の主体者になるため、走行制御中でも運転者の意思による介入を行い得るように構成された手法も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような手法によれば、システム側から運転に適した情報を運転者が認識しやすい形で提供するために、車両が車線に沿って走行するために必要な情報を操舵力および操舵角度の形に変換して運転者に伝える。これにより、運転者はこれらの情報を参酌しつつ自らの意思で車両を運転することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3569587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された手法によれば、運転者の操舵遅れや操舵不足に対する誘導感を与えることはできる。しかしながら、運転者の操舵意図を尊重することで得られる制御に対する違和感の低減と、しっかりとした操舵反力によって運転者が得られる安心感との両立を図ることが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、障害物を回避する走行制御において、制御に対する違和感の低減と、運転者が得られる安心感との両立を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明において、走行制御手段は、自車両の走行制御として操舵反力を制御しており、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させる。この場合、制御量調整手段は、演算されたリスクおよび運転者による運転操作として検出される操舵トルクに基づいて、走行制御手段による制御量を調整する。特に、制御量調整手段は、障害物に対するリスクが大きい程、走行制御手段によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目標の回避軌道へ追従するための走行制御、すなわち、操舵反力が制御される。この操舵反力はリスクと運転者の操舵トルクとに基づいて調整されることとなり、リスクが小さいときには操舵反力を小さくでき、一方、リスクが大きいときには操舵反力を大きくできる。そのため、リスクが小さい場合においては運転者の操舵意図を尊重し、制御介入に対する違和感を低減でき、かつ、リスクが大きい場合には、十分な操舵反力から回避軌道に導かれている安心感を運転者に与えることができる。これにより、運転者の操舵意図を尊重することによる制御に対する違和感の低減と、しっかりとした操舵反力によって運転者が得られる安心感との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかる車両の走行制御装置10が適用された車両を模式的に示す説明図
【図2】コントローラ30の機能的な構成を示すブロック図
【図3】第1の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャート
【図4】回避軌道の説明図
【図5】所定範囲における位置PとリスクRとの関係を示す説明図
【図6】所定範囲における位置PとリスクRとの関係を示す説明図
【図7】回避軌道に対応するリスクの説明図
【図8】軌道偏差の説明図
【図9】操舵反力の調整量Gsuptと操舵トルクTとの関係を示す説明図
【図10】操舵反力の調整量GsuprとリスクRとの関係を示す説明図
【図11】操舵反力トルクThapと操舵角θとの関係を示す説明図
【図12】操舵反力トルクの抑制を示す説明図
【図13】第2の実施形態にかかるコントローラ30の機能的な構成を示すブロック図
【図14】第2の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャート
【図15】複数の回避軌道の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる車両の走行制御装置10が適用された車両を模式的に示す説明図である。この車両の走行制御装置10は、車両が障害物に接触することを回避するために車両の運動状態の制御(走行制御)を行う装置であり、検出系、コントローラ30およびアクチュエータ50を主体に構成されている。
【0010】
レーダ20は、車両の進行方向における物体までの距離および位置を検出する。レーダ20としては、レーザレーダやミリ波レーダなどを用いることができる。例えば、レーダ20としてレーザレーダを用いた場合、このレーダ20は、車両前方にレーザ光を照射し、前方に存在する物体からの反射光を受光系で受光する。そして、レーダ20は、レーザ発射時点と反射光の受光時点との時間差を検出することにより、車両と物体との間の距離および位置を検出する。
【0011】
カメラ21は、車両前方を撮像することにより、撮像画像を画像処理装置22に出力する。画像処理装置22は、カメラ21からの撮像画像を処理することにより、前方に存在する物体や走路等の走行環境を検出する。
【0012】
ヨーレートセンサ23は、車両1に発生するヨーレートを検出する。Gセンサ24は、車両の前後方向(車長方向)の加速度(以下「前後加速度」という)を検出するとともに、車両の横方向(車幅方向)の加速度(以下「横加速度」という)を検出する。車輪速センサ25は、車両1の各車輪の回転速度を検出することにより、車両の速度(車速)を検出する。
【0013】
操舵角センサ26は、運転者が操作するハンドルの回転角を操舵角として検出する。この操舵角は、直進走行に対応するハンドルの中立状態を基準として、左方向または右方向といった操舵方向とともに操舵角を検出する。操舵トルクセンサ27は、運転者のハンドル操作によって加えられる操舵トルクを検出する。この操舵トルクは、直進走行に対応するハンドルの中立状態を基準として、左方向または右方向といった操舵方向とともに操舵トルクを検出する。
【0014】
図2は、コントローラ30の機能的な構成を示すブロック図である。コントローラ30は、システム全体を統合的に制御する機能を担っており、制御プログラムに従って動作することにより、障害物を回避するための車両の走行状態を制御する。コントローラ30としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。このコントローラ30は、検出系によって検出される各種の情報に基づいて、種々の演算を行い、この演算結果に応じた制御信号をアクチュエータ50に出力することにより、車両の運動状態の制御(走行制御)を行う。
【0015】
コントローラ30は、これを機能的に捉えた場合、障害物検出部31、運動状態検出部32、回避軌道生成部33、リスク演算部34、運転操作検出部35、軌道偏差検出部36、制御量調整部37、操舵反力演算部38および走行制御部39を有している。
【0016】
障害物検出部31は、レーダ20から検出信号を読み込むとともに、画像処理装置22から処理結果を読み込む。障害物検出部31は、読み込んだ情報に基づいて、自車両と接触する可能性のある物体を障害物として検出する(障害物検出手段)。障害物検出部31による検出結果は、回避軌道生成部33およびリスク演算部34にそれぞれ出力される。
【0017】
運動状態検出部32は、ヨーレートセンサ23、Gセンサ24および車輪速センサ25から検出信号をそれぞれ読み込む。運動状態検出部32は、読み込んだ各情報から車両の運動状態を検出する(運動状態検出手段)。運動状態検出部32による検出結果は、回避軌道生成部33、リスク演算部34および制御量調整部37にそれぞれ出力される。
【0018】
回避軌道生成部33は、障害物の検出結果と車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための回避軌道を生成する(回避軌道生成手段)。回避軌道生成部33によって生成された回避軌道は、回避軌道選択部36およびリスク演算部34にそれぞれ出力される。
【0019】
リスク演算部34は、障害物の検出結果と車両の運動状態とに基づいて、リスクを演算する(リスク演算手段)。このリスクは、自車両の進行方向(回避軌道)と略直交方向(以下「軌道直交方向」という)に延在する所定範囲における障害物との接触可能性を示す指標である。本実施形態において、リスク演算部34は、生成された回避軌道を対象としてリスクを演算する。このリスクの演算方法の詳細については後述する。リスク演算部34によって演算された回避軌道に対応するリスクは、制御量調整部37に対して出力される。
【0020】
運転操作検出部35は、操舵角センサ26および操舵トルクセンサ27から検出信号をそれぞれ読み込む。運転操作検出部35は、読み込んだ情報に基づいて、運転者による運転操作を検出する(運転操作検出手段)。運転操作検出部35による検出結果は、軌道偏差検出部36および制御量調整部37に対して出力する。
【0021】
軌道偏差検出部36は、検出された車両の運動状態および運転操作の情報と、生成された回避軌道とに基づいて、自車両の実軌道と回避軌道との軌道偏差を検出する(偏差検出手段)。軌道偏差検出部36によって演算された軌道偏差は、操舵反力演算部38および走行制御部39に対してそれぞれ出力する。
【0022】
制御量調整部37は、リスク演算部34によって演算されたリスクと、運転操作検出部35によって検出された操舵トルクとに基づいて、操舵反力の調整量を演算する(制御量調整手段)。後述するように、操舵反力演算部38は、軌道偏差を抑制するための操舵反力の制御量(基本制御量)を演算するが、この基本制御量は、制御量調整部37によって演算される調整量によって調整(補正・抑制)される。換言すれば、制御量調整部37によって演算される調整量に応じて、走行制御部39による走行制御が調整されることとなる。制御量調整部37によって演算された操舵反力の調整量は、操舵反力演算部38に対して出力される。
【0023】
操舵反力演算部38は、軌道偏差検出部36によって検出された軌道偏差と、制御量調整部37によって演算された操舵反力の調整量とに基づいて、操舵反力に関する制御量を演算する。操舵反力演算部38は、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させてるように、基本制御量を決定する。そして、操舵反力演算部38は、この基本制御量に、制御量調整部37によって演算された操舵反力の調整量を加味することにより、最終的な操舵反力に関する制御量を演算する。操舵反力演算部38によって演算された操舵反力に関する制御量は、走行制御部39に対して出力される。
【0024】
走行制御部39は、軌道偏差検出部36によって検出された軌道偏差と、操舵反力演算部38によって演算された操舵反力に関する制御量とに基づいて、アクチュエータ50を制御し、自車両の走行状態を制御する(走行制御手段)。走行制御部39は、上述した操舵反力演算部38によって演算される操舵反力に関する制御量によって車両の走行制御を行うものであり、操舵反力演算部38も広義において走行制御手段として含むことができる。
【0025】
アクチュエータ50は、例えば、ハンドルにアシストトルクを付与する電動アクチュエータを含み、この電動アクチュエータを制御することにより、車輪に所望の操舵角を与えるようなアシストトルクを付与することができる。また、アクチュエータ50は、例えば、車両のホイールシリンダに供給される制動液圧を制御するアクチュエータをさらに含み、このアクチュエータを制御することにより、車輪に制動力を発生させて車両の制動動作を行うことができる。
【0026】
図3は、第1の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、車両のイグニッションスイッチがオンされると呼び出され、所定の周期でコントローラ30によって実行される。
【0027】
ステップ10(S10)において、障害物検出部31は、レーダ20と画像処理装置22とからの入力情報に基づいて、車両が走行可能な領域(以下「走行路」という)と、走行路内に存在する物体とを検出する。なお、走行路等の検出方法は本願発明の出願時点で既に公知であるので詳細な説明は省略する。走行路の検出方法については、例えば、特許第3521860号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。
【0028】
ステップ11(S11)において、障害物検出部31は、ステップ10における検出結果に基づいて、車両と接触する可能性がある物体(以下「障害物」という)が走行路内に存在するか否かを判別する。なお、障害物の検出方法は本願発明の出願時点で既に公知であるので詳細な説明を省略する。障害物の検出方法については、例えば、特開2000−207693号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。このステップ11において肯定判定された場合、すなわち、障害物が存在する場合には、ステップ12(S12)に進む。一方、ステップ11において否定判定された場合、すなわち、障害物が存在しない場合には、ステップ10の処理に戻る。
【0029】
ステップ12において、障害物検出部31は、障害物と自車両との間の距離および障害物と自車両との相対速度に基づいて、ステップ11の処理により確認された障害物に自車両が接触するまでの時間を接触予測時間Tttcとして算出する。障害物と自車両との間の距離はレーダ20からの入力情報により算出でき、自車両と障害物の相対速度は例えば算出された距離を時間微分することによって算出することができる。
【0030】
ステップ13(S13)において、回避軌道生成部33は、接触予測時間Tttcが予め設定された第1の判定時間Tth1よりも小さいか否かを判別する。このステップ13において肯定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが第1の判定時間Tth1よりも小さい場合には、ステップ14(S14)に進む。一方、ステップ13において否定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが第1の判定時間Tth1以上である場合には、ステップ10の処理に戻る。
【0031】
接触予測時間Tttcが第1の判定時間Tth1以上である場合、換言すれば、自車両が障害物に接触するまでの時間が比較的長い場合には、一般に、その後の運転者による車両操作によって障害物との接触が回避される可能性がある。したがって、接触を回避するための走行制御を実行する必要性がなくなる可能性が高い。そのため、ステップ13の判定処理では、このような判断を行うための第1の判定時間Tth1が、実験やシミュレーションを通じて設定されている。これより、走行制御を実行する必要性がないようなシーンであるにも係わらず、後述する走行制御が実行されることを抑制することができる。そのため、コントローラ30の処理負荷の低減を図ることができる。
【0032】
ステップ14において、回避軌道生成部33は、検出された障害物と、検出された自車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための走行軌道を回避軌道として生成(算出)する。本実施形態において、回避軌道生成部33は、図4に示すように、操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道Lを生成する。同図において、「C」は自車両を示し、「O」は矢印方向(軌道直交方向)に移動する障害物を示し、Rは走行路を示す。回避軌道の生成において、回避軌道生成部33は、走行路の範囲から外れる回避軌道や、運転者による自車両への操作では障害物との接触を回避できない回避軌道は生成しない。
【0033】
回避軌道Lを生成する場合、回避軌道生成部33は、自車両の運動状態と自車両のタイヤ特性とに基づいて、障害物との接触を回避するために自車両に付与すべき横加速度を演算する。そして、回避軌道生成部33は、演算された横加速度によって障害物との接触を回避できるか否かを判別する。障害物との接触を回避可能と判断した場合、次に、回避軌道生成部33は、横加速度のみを通じた走行制御による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。一方、障害物との接触を回避不可能と判断した場合、回避軌道生成部33は、横加速度とともに、必要最低限の制動力を通じた走行制御による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。制動力に関しても自車両のタイヤ特性を考慮した上限値を設定しておき、この上限値を超える制動力が必要となる場合には、回避軌道生成部33は、回避軌道を算出しない。なお、横加速度のみを通じた走行制御による回避軌道を算出した場合であっても、自車両が障害物の近くを通過する際にはできるだけ車速を落として通過した方が一般的に安全であるので、タイヤ特性の上限値を超えない範囲の制動力を付加した回避軌道を算出してもよい。
【0034】
ステップ15(S15)において、リスク演算部34は、検出した障害物と、検出した自車両の運動状態とに基づいて、回避軌道Lに対応するリスクを作成する。障害物周辺のリスクを演算する場合、リスク演算部34は、図5(a)に示すように、各パラメータμ、ρ、v、Tttcに基づいて、平均値が(μ+v*Tttc)で、分散がρの正規分布N(μ+v*Tttc、ρ)を障害物周辺のリスクとして作成する。ここで、μは、自車両座標系における障害物の中心位置であり、ρは、軌道直交方向における障害物の幅である。また、vは、軌道直交方向における障害物の移動速度である。なお、障害物周辺のリスクは、例えば、同図(b)に示すように、(μ+v*Tttc)を中心として、ρの半分の長さよりも長い半径方向の領域において、中心位置からの距離に応じて段階的にリスクが低くなるように設定してもよい。
【0035】
また、リスクを作成する場合、リスク演算部34は、検出した走行路の境界を考慮してリスクを作成してもよい。例えば、図6(a)に示すように、走行路の境界位置をμr、走行路の境界に対する回避マージンをmにとした場合、平均値がμr、分散がmの正規分布N(μr、m)を走行路の境界周辺のリスクとしてもよい。また、図6(b)に示すように、リスク演算部34は、境界位置μrから回避マージンmより離れた領域で、境界位置μrからの距離に応じて段階的にリスクが小さくなるようにリスクを生成してもよい。図7は、回避軌道Lに対応するリスクを模式的に示す説明図である。リスク演算部34は、上述したリスクの作成手法で示したように、回避軌道生成部33で生成された回避軌道Lについて、軌道直交方向に延在する所定の範囲のリスクを作成する。同図において、(b)は、(a)に示す(1)地点におけるリスクであり、(c)は、(a)に示す(2)地点におけるリスクである。
【0036】
ステップ16(S16)において、軌道偏差検出部36は、運転者による何らかの操作があったか否かを判断する。軌道偏差検出部36は、運転操作検出部35において検出される運転操作、具体的には、操舵角を参照して、運転者による操舵操作が行われたか否かを判断する。操舵操作の有無の判断方法は、例えば、ステップ14において回避軌道が算出されたタイミングにおける操舵角から、左右いずれの方向に操舵角が変化したか否かを検出するといった如くである。また、単に操舵方向だけでなく、回避軌道が算出されたタイミングにおける操舵角を基準として、操舵角変化が所定のしきい値以上生じたか否かを判断してもよい。さらに、操舵角変化の代わりに、操舵角速度または操舵角加速度が所定のしきい値以上変化したことを判断してもよい。このステップ16において否定判定された場合、すなわち、運転者による操作がない場合には、ステップ17(S17)に進む。一方、ステップ16において肯定判定された場合、すなわち、運転者による操作があった場合には、ステップ18(S18)に進む。
【0037】
ステップ17において、軌道偏差検出部36は、ステップ12の処理により算出された接触予測時間Tttcが、接触予測時間Tth2よりも小さいか否かを判断する。図4に示すように、地点Pは、回避軌道に追従する走行制御を行うための制御開始地点である。ステップ17において用いられる接触予測時間Tth2は、制御開始地点Pに車両が到達した際の当該地点における接触予測時間に相当する値である。このステップ17において否定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2よりも大きい場合には、ステップ14の処理に戻る。一方、ステップ17において肯定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2以上の場合には、ステップ18の処理に進む。
【0038】
ステップ18において、軌道偏差検出部36は、回避軌道生成部33が生成した回避軌道Lと自車両の実軌道との軌道偏差を算出する。具体的には、軌道偏差検出部36は、回避軌道を生成した時点からの、運動状態検出部32が検出した車両の運動状態と、運転操作検出部35が検出した運転者の車両操作情報とに基づいて、車両モデル(例えば、2輪モデル)を用いた演算を行う。これにより、軌道偏差検出部36は、図8に示すように、自車両が回避軌道Lに追従するのに必要な操舵角を、軌道偏差として演算する。
【0039】
ステップ19(S19)において、運転操作検出部35は、操舵トルクセンサ12から入力された運転者の操舵トルクを検出する。
【0040】
ステップ20(S20)において、制御量調整部37は、リスク演算部34によって演算されたリスクと、運転操作検出部35によって検出された操舵トルクとに基づいて、操舵反力の調整量を演算する。具体的には、運転者の操舵トルクをT、操舵トルクTに基づいて算出する操舵反力の調整量をGsuptとする。例えば、図9(a)に示すように操舵トルクT(絶対値)が第1のしきい値Tr1以下である場合((1)に示す区間)、制御量調整部37は、調整量Gsuptを第1の値Gstminとして算出する。ここで、第1の値Gstminは、操舵トルクTに応じて算出する操舵反力の調整量のうち最も小さい値とする。
【0041】
また、操舵トルクT(絶対値)が第2のしきい値Tr2以下で、かつ第1のしきい値Tr1よりも大きい場合((2)に示す区間)、制御量調整部37は、調整量Gsuptを下式より算出する。
(数式1)
Gsupt=(Gstmax−Gstmin)/(Tr2−Tr1)×T+Gstmin−(Gstmax−Gstmin)/(Tr2−Tr1)×Tr1
ここで、Gstmaxは、操舵入力トルクTに応じて算出する操舵反力の調整量のうち最も大きい値とする。
【0042】
さらに、操舵トルクT(絶対値)が第2のしきい値Tr2よりも大きい場合((3)に示す区間)、制御量調整部37は、調整量Gsuptを上記の最大値Gstmaxとして算出する。なお、かかる操舵トルクTに対する操舵反力の調整量Gsuptの算出手法は、一例である。例えば、図9(b)に示すように、wtを重み、Ktを定数の補正量とした場合、制御量調整部37は、Gsupt=wt×T×T+Ktとして調整量Gsuptを求めてもよい。
【0043】
次に、リスク演算部34が演算したリスク(回避軌道Lの軌道直交方向に延在する範囲でのリスク)をR、リスクRに基づいて算出する操舵反力の調整量をGsuprとする。この場合、制御量調整部37は、例えば、図10(a)に示すように、重みwrと、定数の補正量Krとに基づいて、Gsupr=wr/R+Krより調整量Gsuprを求めてもよい。なお、このようなリスクRに対する操舵反力の調整量Gsuprの算出手法は一例である。同図(b)に示すように、制御量調整部37は、リスクRの増加に対して調整量Gsuprが段階的に減少するように、当該調整量Gsuprを演算してもよい。
【0044】
ステップ21(S21)において、操舵反力演算部38は、軌道偏差(すなわち、自車両を回避軌道Lに追従させるために必要な操舵角)と、操舵反力の調整量Gsupt,Gsuprとに基づいて、操舵反力の制御量(具体的には、操舵反力トルク)を演算する。具体的には、自車両を回避軌道Lに追従させるために必要な操舵角をθ、軌道偏差から演算される操舵反力トルクをThapとした場合、操舵反力演算部38は、図11(a)に示すように、ゼロより大きい基準操舵反力Tiおよび重みwhより、Thap=wh×θ×θ+Tiを用いて操舵反力トルク(基本制御量)Thapを求める。なお、この操舵反力トルクThapは、図11(b)に示すように、操舵角θの絶対値が大きい程、その値が段階的に増加するように設定してもよい。
【0045】
つぎに、操舵反力演算部38は、リスクRに対応する操舵反力の調整量Gsuprに基づいて操舵反力トルクThapを調整(抑制)する。例えば、図12に示すように、操舵反力演算部38は、Thap=wh/Gsupr×θ×θ+Tiとして操舵反力トルクThapを調整する。ここで、図12において、(1)の曲線は先に算出した操舵角θに基づいて算出した操舵反力トルクThapである。また、(2)の曲線は、ステップ20で求めた調整量Gsuprの値が小さいケース、すなわち、リスクRが大きいケースにおける調整された操舵反力トルクThapである。一方、(3)の曲線は、ステップ20で求めた調整量Gsuprの値が大きいケース、すなわち、リスクRが小さいケースにおける調整された操舵反力トルクThapである。このように、操舵反力トルクThapを調整することで、リスクRが大きい場合は必要操舵角θの増加に対する操舵反力トルクThapの増加量を大きくすることができる。一方、リスクRが小さい場合は、必要操舵角θの増加に対する操舵反力トルクThapの増加量を小さくくすることができる。
【0046】
さらに、操舵トルクTに対応する操舵反力の調整量Gsuptに基づいて操舵反力トルクThapを調整(抑制)する。例えば、操舵反力演算部38は、Thap=wh/Gsupr×θ×θ+Ti−Gsuptとして操舵反力トルクThapを求める。ただし、かかる演算によって操舵反力トルクThapがゼロ以下となる場合には、操舵反力演算部38は、操舵反力トルクThapを最小の操舵反力トルクThminとする。
【0047】
ステップ22(S22)において、走行制御部39は、算出された操舵反力トルクThapと、軌道偏差とに基づいて、回避軌道生成部33が生成した回避軌道Lに車両が追従するようにアクチュエータ50を制御する。例えば、走行制御部39は、アクチュエータ50の一部をなす電動アシストモータを制御して、回避軌道へ追従するようなアシストトルクを操舵系に付与する。
【0048】
ステップ23(S23)において、障害物検出部31は、障害物に対する回避が終了し、障害物との接触の可能性がなくなったか否かを判断する。このステップ23において肯定判定をされた場合、すなわち、接触の可能性が無いと判断された場合には、本ルーチンを終了する。この場合、走行制御部39は、回避軌道Lに車両を追従させる走行制御を終了する。一方、ステップ23において否定判定をされた場合、すなわち、接触の可能性があると判断された場合には、ステップ18に示す処理に戻る。
【0049】
このように、本実施形態において、走行制御部39は、生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御を行う。リスク演算部34は、生成された回避軌道を処理対象として、障害物および車両の運動状態に基づいて、回避軌道と略直交方向に延在する所定範囲におけるリスク(障害物との接触可能性)を演算する。そして、制御量調整部37は、演算されたリスクおよび操舵トルクに基づいて、走行制御部39による制御量を調整する。ここで、走行制御部39は、自車両の走行制御として操舵反力を制御しており、軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させている。この場合、制御量調整部37は、障害物に対するリスクが大きい程、走行制御部39によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整する。
【0050】
かかる構成によれば、目標の回避軌道へ追従するための走行制御、すなわち、操舵反力が制御される。この操舵反力はリスクと運転者の操舵トルクとに基づいて調整されることとなり、リスクが小さいときには操舵反力を小さくでき、一方、リスクが大きいときには操舵反力を大きくできる。そのため、リスクが小さい場合においては運転者の操舵意図を尊重し、制御介入に対する違和感を低減でき、かつ、リスクが大きい場合には、十分な操舵反力から回避軌道に導かれている安心感を運転者に与えることができる。これにより、運転者の操舵意図を尊重することによる制御に対する違和感の低減と、しっかりとした操舵反力によって運転者が得られる安心感との両立を図ることができる。
【0051】
また、走行制御により、基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力が増加するので、操舵反力により、目標軌道に一致する回転位置までハンドルを回転するように運転者に操作を促すことができる。これにより、運転者は回避軌道の位置を認識できて、ガイドされているという安心感を与えることができる。さらに、走行制御により、基準位置にあるときの操舵反力をゼロより大きな操舵反力とすることで、ハンドルが基準位置にあるときの操舵反力がゼロの場合に比べ、運転者はより明確な操舵反力を感じることができる。これにより、緊急回避といったシーンおいても目標とする回避軌道の位置をより明確に認識できるととも、ガイドされているという感覚を与えることができる。
【0052】
また、制御量調整部37は、操舵トルクが大きい程、操舵反力が低減される。これにより、軌道追従制御に対して運転者が強い操作意図を持って操作している場合には、運転者の操作がしやすいように操舵反力を低減することができる。これにより、運転者が覚える違和感を低減しつつ、かつ若干の操舵反力を残すことで追従している軌道に対するガイド感を残すことができる。
【0053】
また、本実施形態において、制御量調整部37は、操舵トルクTがゼロからゼロよりも大きい第1設定値(図5のTr1)までの間における操舵反力の調整量を第1調整量Gstminとして、操舵トルクTが第1設定値Tr1から第2設定値Tr2までの間における操舵反力の調整量を第2調整量として、操舵トルクが第2設定値Tr2よりも大きい場合における操舵反力の調整量を第3調整量Gstmaxとして設定している。本実施形態において、操舵反力の調整量は、操舵反力を抑制する方向に調整する値として機能する。この場合、第1調整量Gstminは第2調整量よりも小さく、第2調整量は第3調整量Gstmaxよりも小さい関係を有している。
【0054】
かかる構成によれば、操舵反力の抑制量が最も小さい第1調整量Gstminの領域では、自車両が回避軌道から外れないように規制する規制感を運転者に報知することができる。また、操舵反力の抑制量が中間に位置する第2調整量の領域では、自車両を回避経路に移動するように促す誘導感を運転者に報知することができる。また、操舵反力の抑制量が最も大きい第3調整量Gstmaxの領域では、運転者の操作意図を尊重するものの走行制御中であることを運転者に知らせる制御継続感を運転者に報知することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態にかかる車両の走行制御装置10のコントローラ30を機能的に示すブロック図である。本実施形態にかかる車両の走行制御装置10およびその制御方法が、第1の実施形態のそれと相違する点は、複数の回避軌道を生成することである。なお、第1の実施形態と重複する説明は省略することとし、以下相違点を中心に説明を行う。
【0056】
本実施形態において、コントローラ30の機能には、回避軌道選択部40が追加されており、これを前提として、回避軌道生成部33は、検出された障害物と、検出された自車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための走行軌道を回避軌道として複数生成(算出)する。そして、回避軌道選択部40は、複数生成された回避軌道のうちから、運転者による運転操作に適合した回避軌道を選択する。
【0057】
図14は、第2の実施形態にかかる走行制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、車両のイグニッションスイッチがオンされると呼び出され、所定の周期でコントローラ30によって実行される。まず、第1の実施形態と同様に、ステップ10からステップ13までの処理が各々実行される。
【0058】
そして、ステップ13に続くステップ14において、回避軌道生成部33は、検出された障害物と、検出された自車両の運動状態とに基づいて、障害物との接触を回避するための走行軌道を回避軌道として複数生成(算出)する。本実施形態において、回避軌道生成部33は、図15に示すように、右方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道R1と、左方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道R2とをそれぞれ生成する。同図において、「C」は自車両を示し、「O」は矢印方向(軌道直交方向)に移動する障害物を示す。回避軌道の生成において、回避軌道生成部33は、走行路の範囲から外れる回避軌道や、運転者による自車両への操作では障害物との接触を回避できない回避軌道は生成しない。
【0059】
回避軌道R1,R2を生成する場合、回避軌道生成部33は、自車両の運動状態と自車両のタイヤ特性とに基づいて、障害物との接触を回避するために自車両に付与すべき横加速度を設定する。そして、回避軌道生成部33は、設定された横加速度によって障害物との接触を回避できるか否かを判別する。障害物との接触を回避可能と判断した場合、次に、回避軌道生成部33は、横加速度のみを通じた走行制御(すなわち、操舵のみの走行制御)による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。一方、障害物との接触を回避不可能と判断した場合、回避軌道生成部33は、横加速度とともに、必要最低限の制動力を通じた走行制御による回避軌道を走行路の範囲内で算出する。制動力に関しても自車両のタイヤ特性を考慮した上限値を設定しておき、この上限値を超える制動力が必要となる場合には、回避軌道生成部33は、回避軌道を算出しない。なお、横加速度のみを通じた走行制御による回避軌道を算出した場合であっても、自車両が障害物の近くを通過する際にはできるだけ車速を落として通過した方が一般的に安全であるので、タイヤ特性の上限値を超えない範囲の制動力を付加した回避軌道を算出してもよい。
【0060】
ステップ15において、リスク演算部34は、生成された回避軌道のそれぞれを対象として、リスクを演算する。なお、リスクの演算手法については、第1の実施形態と同様の手法を用いることができる。
【0061】
ステップ16において、回避軌道選択部40は、第1の実施形態において軌道偏差検出部36が行う処理と同様に、運転者による何らかの操作があったか否かを判断する。このステップ16において否定判定された場合、すなわち、運転者による操作がない場合には、ステップ17に進む。一方、ステップ16において肯定判定された場合、すなわち、運転者による操作があった場合には、ステップ24(S24)に進む。
【0062】
ステップ17において、回避軌道選択部40は、第1の実施形態において軌道偏差検出部36が行う処理と同様に、接触予測時間Tttcが、接触予測時間Tth2以上であるか否かを判断する。このステップ17において肯定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2よりも小さい場合には、ステップ14の処理に戻る。一方、ステップ17において否定判定された場合、すなわち、接触予測時間Tttcが接触予測時間Tth2よりも小さい場合には、ステップ24の処理に進む。
【0063】
ステップ24において、回避軌道選択部40は、生成されている複数の回避軌道のなかから、回避軌道を選択する。具体的には、回避軌道選択部36は、運転者によって操作が行われている場合には、回避軌道R1とR2の候補の中から、運転者の操作に適合する回避軌道を選択する。一方、運転者によって操作が行われていない場合には、運転者が操作を開始する地点が、いずれの回避軌道R1,R2に関する制御開始地点P1,P2よりも障害物に近い状態となる。そこで、回避軌道選択部36は、回避軌道R1,R2の候補の中から、制御開始地点P1,P2が最も障害物に近い回避軌道を選択する。
【0064】
そして、第1の実施形態と同様に、ステップ24に引き続きステップ18からステップ23までの処理が各々実行される。
【0065】
このように本実施形態において、回避軌道生成部33は、自車両の運動状態を参照して、障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を複数生成する。この場合、回避軌道選択部40は、複数の衝突回避軌道の中から運転者による運転操作に適合した回避軌道を選択する。
【0066】
かかる構成によれば、運転者の操舵に合わせて回避軌道が選択され、選択された回避軌道に対して第1の実施形態と同様の追従制御を行うので、運転者が障害物を回避する方向と、制御による回避の方向が対応することとなる。これにより、制御開始時の操舵での違和感をなくすことができ、かつ、選択された回避軌道に追従する制御を行っている場合も、第1の実施形態と同様に違和感の低減と、安心感の両立を図ることができる。
【0067】
なお、上述した各実施形態において、コントローラ30の障害物検出部31は、自車両の前方に存在する障害物を検出する機能を担うものであるが、広義において、レーダ20、カメラ21および画像処理装置22も同様の機能を担う手段として機能する。また、運動状態検出部32は、自車両の運動状態を検出する機能を担うものであるが、広義において、ヨーレートセンサ23、Gセンサ24、車輪速センサ25も同様の機能を担う手段として機能する。さらに、運転操作検出部35は、運転者による自車両の操作を検出する機能を担うものであるが、広義において、操舵角センサ26および操舵トルクセンサ27も同様の機能を担う手段として機能する。
【符号の説明】
【0068】
10…走行制御装置
20…レーダ
21…カメラ
22…画像処理装置
23…ヨーレートセンサ
24…Gセンサ
25…車輪速センサ
26…操舵角センサ
27…操舵トルクセンサ
30…コントローラ
31…障害物検出部
32…運動状態検出部
33…回避軌道生成部
34…リスク演算部
35…運転操作検出部
36…回避軌道選択部
36…軌道偏差検出部
37…制御量調整部
38…操舵反力演算部
39…走行制御部
40…回避軌道選択部
50…アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段と、
前記自車両の運動状態を参照して、前記障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を生成する回避軌道生成手段と、
運転者による運転操作を検出する運転操作検出手段と、
前記生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御を行う走行制御手段と、
前記生成された回避軌道と自車両の実軌道との偏差を軌道偏差として検出する偏差検出手段と、
前記生成された回避軌道を処理対象として、前記障害物検出手段および前記運動状態検出手段の検出結果に基づいて、当該回避軌道と略直交方向に延在する所定範囲における前記障害物との接触可能性をリスクとして演算するリスク演算手段と、
前記演算されたリスクおよび運転者による運転操作として検出される操舵トルクに基づいて、前記走行制御手段による制御量を調整する制御量調整手段とを有し、
前記走行制御手段は、前記自車両の走行制御として操舵反力を制御しており、前記軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、当該基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、前記基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させており、
前記制御量調整手段は、前記障害物に対するリスクが大きい程、前記走行制御手段によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記制御量調整手段は、前記操舵トルクが大きい程、前記走行制御手段による前記操舵反力を抑制することを特徴とする請求項1に記載された車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記制御量調整手段は、前記操舵トルクがゼロからゼロよりも大きい第1設定値までの間における操舵反力の抑制量を第1抑制量として、操舵トルクが前記第1設定値から当該第1設定値よりも大きい第2設定値までの間における操舵反力の抑制量を第2抑制量として、操舵トルクが前記第2設定値よりも大きい場合における操舵反力の抑制量を第3抑制量として設定しており、前記第1抑制量は前記第2抑制量よりも小さく、前記第2抑制量は前記第3抑制量よりも小さい関係を有することを特徴とする請求項2に記載された車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記回避軌道生成手段は、前記自車両の運動状態を参照して、前記障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を複数生成しており、
前記複数の衝突回避軌道の中から前記運転者による運転操作に適合した回避軌道を選択する回避軌道選択手段をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記回避軌道生成手段は、右方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道と、左方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道とを生成することを特徴とする請求項4に記載された車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記回避軌道選択手段は、
前記運転操作検出手段によって運転者による右方向への操舵操作が検出された場合、右方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道を選択し、
前記運転操作検出手段によって運転者による左方向への操舵操作が検出された場合、左方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道を選択することを特徴とする請求項5に記載された車両の走行制御装置。
【請求項7】
前記回避軌道選択手段は、運転者による操作がないと判断した場合、制御の開始地点が最も障害物に近い回避軌道を選択することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載された車両の走行制御装置。
【請求項8】
自車両の運動状態を参照して、障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を生成し、
前記生成された回避軌道と自車両の実軌道との偏差を軌道偏差として検出し、
前記生成された回避軌道を処理対象として、前記障害物検出手段および前記運動状態検出手段の検出結果に基づいて、当該回避軌道と略直交方向に延在する所定範囲における前記障害物との接触可能性をリスクとして演算し、
前記生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御を行い、
前記演算されたリスクおよび運転者による運転操作として検出される操舵トルクに基づいて、前記走行制御による制御量を調整しており、
前記走行制御を行う場合、操舵反力を制御しており、前記軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、当該基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、前記基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させており、
走行制御による制御量を調整する場合、前記障害物に対するリスクが大きい程、前記走行制御手段によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整することを特徴とする車両の走行制御方法。
【請求項1】
自車両の前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段と、
前記自車両の運動状態を参照して、前記障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を生成する回避軌道生成手段と、
運転者による運転操作を検出する運転操作検出手段と、
前記生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御を行う走行制御手段と、
前記生成された回避軌道と自車両の実軌道との偏差を軌道偏差として検出する偏差検出手段と、
前記生成された回避軌道を処理対象として、前記障害物検出手段および前記運動状態検出手段の検出結果に基づいて、当該回避軌道と略直交方向に延在する所定範囲における前記障害物との接触可能性をリスクとして演算するリスク演算手段と、
前記演算されたリスクおよび運転者による運転操作として検出される操舵トルクに基づいて、前記走行制御手段による制御量を調整する制御量調整手段とを有し、
前記走行制御手段は、前記自車両の走行制御として操舵反力を制御しており、前記軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、当該基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、前記基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させており、
前記制御量調整手段は、前記障害物に対するリスクが大きい程、前記走行制御手段によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記制御量調整手段は、前記操舵トルクが大きい程、前記走行制御手段による前記操舵反力を抑制することを特徴とする請求項1に記載された車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記制御量調整手段は、前記操舵トルクがゼロからゼロよりも大きい第1設定値までの間における操舵反力の抑制量を第1抑制量として、操舵トルクが前記第1設定値から当該第1設定値よりも大きい第2設定値までの間における操舵反力の抑制量を第2抑制量として、操舵トルクが前記第2設定値よりも大きい場合における操舵反力の抑制量を第3抑制量として設定しており、前記第1抑制量は前記第2抑制量よりも小さく、前記第2抑制量は前記第3抑制量よりも小さい関係を有することを特徴とする請求項2に記載された車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記回避軌道生成手段は、前記自車両の運動状態を参照して、前記障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を複数生成しており、
前記複数の衝突回避軌道の中から前記運転者による運転操作に適合した回避軌道を選択する回避軌道選択手段をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記回避軌道生成手段は、右方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道と、左方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道とを生成することを特徴とする請求項4に記載された車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記回避軌道選択手段は、
前記運転操作検出手段によって運転者による右方向への操舵操作が検出された場合、右方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道を選択し、
前記運転操作検出手段によって運転者による左方向への操舵操作が検出された場合、左方向への操舵によって障害物との接触を回避する回避軌道を選択することを特徴とする請求項5に記載された車両の走行制御装置。
【請求項7】
前記回避軌道選択手段は、運転者による操作がないと判断した場合、制御の開始地点が最も障害物に近い回避軌道を選択することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載された車両の走行制御装置。
【請求項8】
自車両の運動状態を参照して、障害物に自車両が接触することを回避するための回避軌道を生成し、
前記生成された回避軌道と自車両の実軌道との偏差を軌道偏差として検出し、
前記生成された回避軌道を処理対象として、前記障害物検出手段および前記運動状態検出手段の検出結果に基づいて、当該回避軌道と略直交方向に延在する所定範囲における前記障害物との接触可能性をリスクとして演算し、
前記生成された回避軌道に基づいて自車両の走行制御を行い、
前記演算されたリスクおよび運転者による運転操作として検出される操舵トルクに基づいて、前記走行制御による制御量を調整しており、
前記走行制御を行う場合、操舵反力を制御しており、前記軌道偏差がゼロの状態におけるハンドルの回転位置を基準位置として、当該基準位置における操舵反力にゼロよりも大きな操舵反力を設定するとともに、前記基準位置からのハンドルの回転角度の増加に応じて操舵反力を増加させており、
走行制御による制御量を調整する場合、前記障害物に対するリスクが大きい程、前記走行制御手段によるハンドルの回転角度の増加に対する操舵反力の増加量を大きく調整することを特徴とする車両の走行制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−5893(P2011−5893A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148927(P2009−148927)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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