説明

車両の運転支援装置

【課題】交差点に進入する車両の自車両に対する認識度を的確に判断し、交差点における自車両の情報を適切に加味して安全性を確保しつつスムーズな交通の流れを維持して自然で適切な運転支援を行う。
【解決手段】対象車両のドライバの顔向き方向に応じて対象車両のドライバの顔向き度Fiを設定し、対象車両のドライバの顔向き度Fiを基に自車両の被認知度Riを演算し、自車両の被認知度Riを基に自車両のリスクRiskiを演算して、自車両の被認知度Riが閾値Ricより高く且つ対象車両が1台しか存在しない場合、自車両が対象車両に対して優先走行の関係にある場合は、自車両のリスクRiを減少補正する。また、自車両の被認知度Riが閾値Ric以下、或いは、対象車両が複数存在する場合、自車両のリスクRiskiが閾値Riskltより高い場合はライトを点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点において各車両間の状況を考慮し、ドライバの運転を支援する車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、ITS(Intelligent Transport Systems)や車載の画像処理システム、レーダ装置等から得られる情報を基に、前方環境を認識し、安全な走行ができるように運転を支援する様々な運転支援装置が提案され、実用化されている。
【0003】
特に、交差点においては、進入してくる車両との衝突防止、安全性の確保や交通のスムーズな流れの維持等の多くの観点から様々な技術が提案されている。例えば、特開2007−200052号公報では、自車両が一時停止線の手前の位置からの発進前後における、交差他車両の車両挙動変化(速度、速度変化量、車幅方向位置変化量等)に基づいて、交差他車両のドライバが自車両の存在を認知する度合いを被認知度として推定し、推定された被認知度が高いほど、自車両が一時停止交差点内により進入した位置で再停止するように運転支援を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−200052号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示される交差点での運転支援の技術のように、交差他車両の自車両に対する被認知度を、交差他車両の車両挙動変化(速度、速度変化量、車幅方向位置変化量等)に基づいて判断したのでは、他の対象物(他の車両や歩行者、路面状況等)に応じた運転行動である可能性も高く、自車両の認知による運転行動であるとは限らない。また、交差点においては、優先道路や左方優先等の交差点特有の交通規則が存在し、交差点に進入する車両のドライバは、通常、この交通規則に則って走行するため、こうした条件も加味して交差点での運転支援を行うことが望まれる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、交差点に進入する車両の自車両に対する認識度を的確に判断し、交差点における自車両の情報を適切に加味して安全性を確保しつつスムーズな交通の流れを維持して自然で適切な運転支援を行うことができる車両の運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前方の交差点を検出する交差点検出手段と、前方の車両情報を検出する車両情報検出手段と、上記交差点に進入する車両を対象車両として認識し、該対象車両の自車両に対する認知度を自車両の被認知度として演算する被認知度演算手段と、自車両のリスクを演算するリスク演算手段と、少なくとも上記自車両の被認知度が予め設定した閾値より高い場合、自車両が上記対象車両に対して優先走行の関係にある場合は、上記自車両のリスクを減少補正するリスク補正設定手段と、上記自車両のリスクに基づいて警報制御と走行制御の少なくとも一方を実行させる制御実行手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車両の運転支援装置によれば、交差点に進入する車両の自車両に対する認識度を的確に判断し、交差点における自車両の情報を適切に加味して安全性を確保しつつスムーズな交通の流れを維持して自然で適切な運転支援を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図6は本発明の実施の形態を示し、図1は車両に搭載される交差点における運転支援装置の機能ブロック図、図2は交差点での運転支援制御プログラムのフローチャート、図3は図2から続くフローチャート、図4は交差点に進入する自車両と対象車両の一例を示す説明図、図5は対象車両のドライバの顔向き度の特性の説明図、図6は交差点進入量の特性の説明図である。
【0009】
図1において、符号1は車両に搭載される交差点における運転支援装置を示し、この運転支援装置1は、画像認識装置2とナビゲーション装置3からの信号が制御ユニット4に入力され、制御ユニット4からライト制御装置5、警報制御装置6、及び、走行制御装置7に信号が出力される。
【0010】
画像認識装置2は、例えば、車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像する1組のCCDカメラと、このCCDカメラからの画像データを処理するステレオ画像処理装置とから構成されている。
【0011】
ステレオ画像処理装置における、CCDカメラからの画像データの処理は、例えば以下のように行われる。まず、CCDカメラで撮像した自車両の進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を求め、距離画像を生成する。そして、このデータを基に、周知のグルーピング処理を行い、予め記憶しておいた3次元的な車両形状データ等の枠(ウインドウ)と比較し、前方に存在する各車両を抽出して、それぞれの自車両との距離の時間的変化の割合から自車両との相対速度を演算し、また、この相対速度と自車速とを加算することにより、各車両の速度を算出して、これらのデータ(画像データも含む)を制御ユニット4に入力する。このように、画像認識装置2は、車両情報検出手段として設けられている。
【0012】
ナビゲーション装置3は、例えば、ITSの機能を備え、現在位置の表示や目的地までの案内等を行う周知のものであり、特に、予め記憶された地図情報に設けられた交差点情報やITSにより送受信される交差点情報を含む各種道路情報が、現在の自車位置情報と共に、制御ユニット4に入力される。このようにナビゲーション装置3は交差点検出手段として設けられている。
【0013】
制御ユニット4は、上述の画像認識装置2から前方の車両情報が、ナビゲーション装置3から前方の道路情報が入力され、これらの入力情報に基づいて、交差点に進入する車両を対象車両として認識する。そして、対象車両のドライバの顔向き方向を検出し、該対象車両のドライバの顔向き方向に応じて対象車両のドライバの顔向き度Fiを設定し、この対象車両のドライバの顔向き度Fiを基に、対象車両の自車両に対する認知度を自車両の被認知度Riとして演算し、この自車両の被認知度Riを基に自車両のリスクRiskiを演算して、自車両の被認知度Riが予め設定した閾値Ricより高く、且つ、対象車両が1台しか存在しない場合、自車両が対象車両に対して優先走行の関係にある場合は、自車両のリスクRiを減少補正する。また、自車両の被認知度Riが予め設定した閾値Ric以下、或いは、対象車両が複数存在する場合、自車両のリスクRiskiが予め設定した閾値Riskltより高い場合には、ライト制御装置5に信号出力して、ヘッドライトを点灯させる制御を行う。更に、これらの制御に加え、自車両のリスクの最大値Riskmaxが予め設定した閾値Riskalよりも高い場合は、警報制御装置6に信号出力して、インストルメントパネル内のLEDの点滅、ハンドルへの振動付加等、所定の警報を作動させる。また、自車両のリスクの最大値Riskmaxに応じ、停止線から交差点への進入が許容される距離である交差点進入量Laloを設定し、該交差点進入量Laloを走行制御装置7に出力してスロットル開度、及び、ブレーキ制御を行わせるようになっている。
【0014】
すなわち、制御ユニット4は、図1に示すように、交差点判定部4a、顔向き方向検出部4b、顔向き度設定部4c、被認知度演算部4d、被認知度判定部4e、優先判定部4f、リスク演算部4g、リスク設定部4h、ライト警報判定部4i、衝突警報判定部4j、交差点進入量演算部4kから主要に構成されている。
【0015】
交差点判定部4aは、ナビゲーション装置3から前方の道路情報が入力され、交差点位置と現在の自車両の位置とを比較して、自車両が交差点に進入するか否かの判定を行い、自車両が交差点に進入する場合に、当該交差点の情報と共に、交差点に進入するとの判定結果が顔向き方向検出部4bに出力される。
【0016】
顔向き方向検出部4bは、画像認識装置2から画像データを含む前方の車両情報が入力され、交差点判定部4aから自車両の交差点進入の判定結果と、進入する交差点の情報とが入力される。そして、自車両が交差点に進入するとの判定の際に、各車両(以下、処理の実行対象とする車両を対象車両と言う)において、画像データのウインドウ内の画像について、更に、周知の顔認識処理を行って、例えば、顔幅を検出し、顔部品位置を検出して、顔中心を算出し、左右の比率から顔向き方向を算出して、この顔向き方向のデータを顔向き度設定部4cに出力する。尚、顔向き方向は、例えば、図4に示すように、対象車両毎に、自車両と対象車両とを結ぶ破線を中心0度の角度とし、時計回りの角度を+、反時計回りの角度を−の符号の角度として検出される。
【0017】
顔向き度設定部4cは、顔向き方向検出部4bから各車両毎のドライバの顔向き方向が入力される。そして、例えば、予め設定しておいた特性マップ(図5参照)を参照し、ドライバの顔向き方向を顔向き度Fi(iは対象車両を区別するためのIDナンバーを示す)に変換し、被認知度演算部4dに出力する。
【0018】
顔向き度Fiは、図5に示すように、中心から離れるに従って小さく設定されるようになっている。すなわち、自車両の方向に対象車両のドライバが顔を向けている際には、顔向き度Fiが高く設定されるようになっている。
【0019】
被認知度演算部4dは、顔向き度設定部4cから顔向き度Fiが入力される。そして、例えば、以下の(1)式により、対象車両の自車両に対する認知度を自車両の被認知度Riとして演算し、被認知度判定部4e、リスク演算部4gに出力する。
Ri(k)=Ri(k-1)+Fi(k)−D(≧0) …(1)
ここで、Dは予め設定した減衰(忘却)係数、kは演算カウンタである。
【0020】
すなわち、ドライバは、一度認識したとしても、次第にそのことを忘れていくため、このことを考慮して、減衰係数Dを含んだ上述の(1)式により被認知度Riを演算する。
【0021】
被認知度判定部4eは、被認知度演算部4dから被認知度Riが入力される。そして、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ricよりも大きく、且つ、対象車両は1台のみかを判定し、判定結果をリスク設定部4hに出力する。尚、対象車両の台数は、今回、上述の(1)式を実行した回数、或いは、画像認識装置2からのデータを基に判断する。
【0022】
優先判定部4fは、画像認識装置2から前方の車両情報が入力され、ナビゲーション装置3から前方の道路情報が入力される。そして、対象車両が優先道路に存在するか否かを判定し、判定結果をリスク設定部4hに出力する。
【0023】
リスク演算部4gは、被認知度演算部4dから被認知度Riが入力される。そして、例えば、以下の(2)式により、自車両の対象車両に対するリスクRiskiを演算し、リスク設定部4hに出力する。
Riski=1/Ri …(2)
リスク設定部4hは、画像認識装置2から前方の車両情報が、被認知度演算部4dから被認知度Riが、被認知度判定部4eから被認知度Riと対象車両の台数に関する判定結果が、優先判定部4fから優先判定結果が入力される。
【0024】
そして、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ricよりも大きく、且つ、対象車両は1台のみの判定結果が得られている場合で、対象車両が優先道路に無い場合は、自車両の対象車両に対するリスクRiskiに予め設定した1より小さい係数K1を乗算して補正する。また、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ricよりも大きく、且つ、対象車両は1台のみの判定結果が得られている場合で、対象車両が左前方に無い場合は、自車両の対象車両に対するリスクRiskiに予め設定した1より小さい係数K2を乗算して補正する。すなわち、自車両が対象車両に対して優先走行の関係にある場合は、自車両のリスクRiskiを減少補正するのである。こうして設定された自車両のリスクRiskiは、リスクの最大値Riskmax(交差点に存在する対象車両のリスクの最大値)が演算され、衝突警報判定部4j、交差点進入量演算部4kに出力される。一方、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ric以下の場合は、自車両のリスクRiskiをライト警報判定部4iに出力する。また、他の自車両の対象車両に対するリスクRiskiと共に、上述のようにリスクの最大値Riskmaxを演算して、衝突警報判定部4j、交差点進入量演算部4kに出力する。
【0025】
ライト警報判定部4iは、リスク設定部4hから、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ric以下の場合に自車両のリスクRiskiが入力される。そして、自車両のリスクRiskiと予め設定しておいた閾値Riskltとを比較して、自車両のリスクRiskiが閾値Riskltを上回っている場合には、ライト制御装置5に信号出力してヘッドライトを点灯させる。
【0026】
衝突警報判定部4jは、リスク設定部4hから自車両のリスクの最大値Riskmaxが入力される。そして、自車両のリスクの最大値Riskmaxと予め設定した閾値Riskalとを比較して、自車両のリスクの最大値Riskmaxが予め設定した閾値Riskalよりも高い場合は、警報制御装置6に信号出力して、インストルメントパネル内のLEDの点滅、ハンドルへの振動付加等、所定の警報を作動させる。
【0027】
交差点進入量演算部4kは、リスク設定部4hから自車両のリスクの最大値Riskmaxが入力される。そして、例えば、予め設定しておいたマップ(図6)を参照して自車両のリスクの最大値Riskmaxに応じ、停止線から交差点への進入が許容される距離である交差点進入量Laloを設定し、該交差点進入量Laloを走行制御装置7に出力してスロットル開度、及び、ブレーキ制御を行わせる。
【0028】
このように、本実施の形態では、顔向き方向検出部4b、顔向き度設定部4c、被認知度演算部4dにより被認知度演算手段が構成され、リスク演算部4gでリスク演算手段が構成され、リスク設定部4hでリスク補正設定手段が構成され、ライト警報判定部4i、衝突警報判定部4j、交差点進入量演算部4kで制御実行手段が構成されている。
【0029】
次に、運転支援装置1で実行される交差点での運転支援制御プログラムについて、図2、図3のフローチャートで説明する。まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で必要なパラメータの読み込みが行われる。
【0030】
次いで、S102に進み、自車両が交差点に進行中か否か判定し、交差点に進行していない場合はプログラムを抜け、交差点に進行する場合にはS103以降へと進む。
【0031】
S103では、顔向き度設定部4cで、予め設定しておいた特性マップ(図5参照)を参照し、対象車両のドライバの顔向き方向を変換して顔向き度Fiを設定する。
【0032】
次に、S104に進み、被認知度演算部4dで、上述の(1)式により、自車両の被認知度Riを演算する。
【0033】
次いで、S105に進み、リスク演算部4gで、上述の(2)式により、自車両の対象車両に対するリスクRiskiを演算する。
【0034】
そして、S106に進むと、被認知度判定部4eで、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ricよりも大きく、且つ、対象車両は1台のみかの判定が行われる。この結果、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ricよりも大きく、且つ、対象車両は1台のみの判定結果が得られている場合は、S107に進み、リスク設定部4hで優先判定部4fでの判定結果が参照され、対象車両が優先道路を走行しているかの判定が行われる。この判定の結果、対象車両が優先道路を走行していない場合はS108に進んで、自車両の対象車両に対するリスクRiskiに予め設定した1より小さい係数K1を乗算して補正してS109に進み、対象車両が優先道路を走行している場合は補正を行うことなくS109へと進む。
【0035】
S109では、同じくリスク設定部4hで対象車両の位置が判定され、対象車両が左前方に存在するか否かの判定が行われる。この判定の結果、対象車両が左前方に存在していない場合はS110に進んで、自車両の対象車両に対するリスクRiskiに予め設定した1より小さい係数K2を乗算して補正してS111に進み、対象車両が左前方に存在している場合は補正を行うことなくS111へと進む。
【0036】
一方、上述のS106で、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ric以下、或いは、対象車両は複数台存在すると判定された場合は、S112に進み、ライト警報判定部4iで自車両のリスクRiskiと予め設定しておいた閾値Riskltとが比較され、自車両のリスクRiskiが閾値Riskltを上回っている場合には、S113に進み、ヘッドライトを点灯させるべく、警報時ライト点灯信号ONの信号がライト制御装置5に出力され、S111に進む。
【0037】
逆に、自車両のリスクRiskiが閾値Risklt以下の場合には、S114に進み、ヘッドライト消灯のため、警報時ライト点灯信号OFFの信号がライト制御装置5に出力され、S111に進む。
【0038】
S109、S110、S113、S114からS111に進むと、全ての対象車両についてリスクを設定したか否か判定され、設定しているのであればS115に進み、未だ設定していないのであればS103からの処理を繰り返す。
【0039】
S115に進むと、リスク設定部4hで対象車両に設定されたリスクの最大値Riskmaxが演算される。
【0040】
そして、S116に進み、衝突警報判定部4jで、自車両のリスクの最大値Riskmaxと予め設定した閾値Riskalとが比較され、自車両のリスクの最大値Riskmaxが予め設定した閾値Riskalよりも高い場合は、S117に進んで、インストルメントパネル内のLEDの点滅、ハンドルへの振動付加等、所定の警報(衝突警報)を作動させるべく、警報制御装置6に信号出力して、S118へと進む。また、自車両のリスクの最大値Riskmaxが閾値Riskal以下の場合は、そのままS118へと進む。
【0041】
S118に進むと、交差点進入量演算部4kで予め設定しておいたマップ(図6)を参照して自車両のリスクの最大値Riskmaxに応じ、停止線から交差点への進入が許容される距離である交差点進入量Laloが設定される。
【0042】
そして、S119に進み、走行制御装置7により、交差点進入量Laloに基づく走行制御、例えば、スロットル開度、及び、ブレーキ制御が行われ、プログラムを抜ける。
【0043】
このように本発明の実施の形態によれば、対象車両のドライバの顔向き方向を検出し、該対象車両のドライバの顔向き方向に応じて対象車両のドライバの顔向き度Fiを設定し、この対象車両のドライバの顔向き度Fiを基に、対象車両の自車両に対する認知度を自車両の被認知度Riとして演算し、この自車両の被認知度Riを基に自車両のリスクRiskiを演算して、自車両の被認知度Riが予め設定した閾値Ricより高く、且つ、対象車両が1台しか存在しない場合、自車両が対象車両に対して優先走行の関係にある場合は、自車両のリスクRiを減少補正する。また、自車両の被認知度Riが予め設定した閾値Ric以下、或いは、対象車両が複数存在する場合、自車両のリスクRiskiが予め設定した閾値Riskltより高い場合には、ライト制御装置5に信号出力して、ヘッドライトを点灯させる制御を行う。このため、交差点に進入する車両の自車両に対する認識度を的確に判断し、交差点における自車両の情報を適切に加味して安全性を確保しつつスムーズな交通の流れを維持して自然で適切な運転支援を行うことが可能となる。従って、例えば、複数車両のドライバが、お互いに相手を認知している状況下においては、スムーズな運転を妨げる不要な警報を防止しつつ、自車両が他車両から認知されていない状況では、防衛運転を促す警報となるため、安全性を向上させることができる。また、交差点では、複数の車両が交差する場合、各ドライバの注意は、最も危険な対象車両に向き、他の車両に対しては散漫になりがちであるが、本発明によれば、各対象車両毎にリスクを判断し、自車両の警報を行うので安全性に極めて優れ、更に、各対象車両毎に交通ルールを考慮して警報制御等を行うので、無用な警報が生じることが無く自然な運転支援制御を実現することが可能となっている。
【0044】
尚、本実施の形態では、対象車両のドライバの顔向き方向を、自車両に搭載したカメラからの画像データを画像処理して得るようにしているが、対象車両に搭載した認識装置による認識結果を車車間通信等により受信して用いるようにしても良い。更に、交差点の各対象車両のデータや、道路情報(対象車両の位置、優先道路等の情報)は、車車間通信や、路車間通信により受信して用いるようにしても良い。
【0045】
また、本実施の形態では、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ricよりも大きく、且つ、対象車両は1台のみの場合に、更に、対象車両と自車両との優先関係を判定するようにしているが、仕様によっては、被認知度Riが予め設定しておいた閾値Ricよりも大きい場合に、更に、対象車両と自車両との優先関係を判定するようにしても良い。
【0046】
更に、本実施の形態では、対象車両と自車両との優先関係を、対象車両が優先道路に存在するか、及び、対象車両が左前方に存在するかで判定するようになっているが、何れか一方のみの判定としても良い。
【0047】
また、本実施の形態では、対象車両のリスクを、前述の(2)式で求めるようになっているが、これに限るものではなく、例えば、対象車両の車速や対象車両との距離等を考慮したリスクとしても良い。
【0048】
更に、本実施の形態では、自車両の被認知度Riが予め設定した閾値Ric以下、或いは、対象車両が複数存在する場合、自車両のリスクRiskiが予め設定した閾値Riskltより高い場合には、ライト制御装置5に信号出力して、ヘッドライトを点灯させる制御を行うようになっているが、これに加え、自車両のリスクRiskiを増加補正するようにしても良い。また、ヘッドライトによる警報を行うことなく、単に、自車両のリスクRiskiを増加補正するようにしても良い。
【0049】
また、本実施の形態では、自車両のリスクRiskiに応じて警報と交差点進入量の可変制御の両方を行うようにしているが、何れか一方のみを行うものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】車両に搭載される交差点における運転支援装置の機能ブロック図
【図2】交差点での運転支援制御プログラムのフローチャート
【図3】図2から続くフローチャート
【図4】交差点に進入する自車両と対象車両の一例を示す説明図
【図5】対象車両のドライバの顔向き度の特性の説明図
【図6】交差点進入量の特性の説明図
【符号の説明】
【0051】
1 交差点における運転支援装置
2 画像認識装置(車両情報検出手段)
3 ナビゲーション装置(交差点検出手段)
4 制御ユニット
4a 交差点判定部
4b 顔向き方向検出部(被認知度演算手段)
4c 顔向き度設定部(被認知度演算手段)
4d 被認知度演算部(被認知度演算手段)
4e 被認知度判定部
4f 優先判定部
4g リスク演算部(リスク演算手段)
4h リスク設定部(リスク補正設定手段)
4i ライト警報判定部(制御実行手段)
4j 衝突警報判定部(制御実行手段)
4k 交差点進入量演算部(制御実行手段)
5 ライト制御装置
6 警報制御装置
7 走行制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の交差点を検出する交差点検出手段と、
前方の車両情報を検出する車両情報検出手段と、
上記交差点に進入する車両を対象車両として認識し、該対象車両の自車両に対する認知度を自車両の被認知度として演算する被認知度演算手段と、
自車両のリスクを演算するリスク演算手段と、
少なくとも上記自車両の被認知度が予め設定した閾値より高い場合、自車両が上記対象車両に対して優先走行の関係にある場合は、上記自車両のリスクを減少補正するリスク補正設定手段と、
上記自車両のリスクに基づいて警報制御と走行制御の少なくとも一方を実行させる制御実行手段と、
を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
上記リスク補正設定手段は、上記自車両の被認知度が予め設定した閾値より高く、且つ、上記対象車両が1台しか存在しない場合、自車両が上記対象車両に対して優先走行の関係にある場合は、上記自車両のリスクを減少補正することを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
上記リスク補正設定手段は、上記自車両の被認知度が予め設定した閾値以下、或いは、対象車両が複数存在する場合、上記自車両のリスクを増加補正することと、上記制御実行手段に対して上記自車両のリスクに応じて所定のライトを点灯させることの少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項2記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
上記リスク補正設定手段における上記優先走行の関係は、上記対象車両が優先道路を走行している場合と上記対象車両が自車両の左前方から上記交差点に進入してくる場合の少なくとも一方の場合には、上記対象車両は自車両よりも優先走行の関係にあると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両の運転支援装置。
【請求項5】
上記被認知度演算手段は、上記対象車両のドライバの顔向き方向を検出し、該対象車両のドライバの顔向き方向に応じて上記対象車両のドライバの顔向き度を設定し、少なくとも上記対象車両のドライバの顔向き度に基づき自車両の被認知度を演算することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の車両の運転支援装置。
【請求項6】
上記リスク演算手段は、少なくとも上記被認知度に基づいて上記自車両のリスクを演算することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の車両の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−298193(P2009−298193A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151999(P2008−151999)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】