説明

車両の電源制御装置

【課題】内燃機関の始動時において補機の特性変化を適切に抑制することが可能な車両の電源制御装置を提供する。
【解決手段】車両の電源制御装置は、内燃機関と、バッテリの電力を用いて内燃機関を始動させるモータと、電圧によって作動状態が変化する特性を有する補機と、を有する車両に適用され、バッテリよりも低い電源電圧を出力し、補機を駆動する補機バッテリと、バッテリと補機バッテリとに接続され、電圧変換を行う電圧変換器と、内燃機関の始動時において、補機が作動しているか否かに応じて、電圧変換器の電圧目標値に対して設定する下限値を変化させる電圧目標下限値設定手段と、を備える。これにより、内燃機関の始動時における補機の特性変化を適切に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両などに搭載される電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、高圧側バッテリ出力が低下してエンジンを始動させることができないような場合に、DC/DCコンバータの電圧指令を、補機バッテリの出力電圧よりも低く且つECUの動作電圧よりも高い電圧に設定すること、及び、エンジン始動完了後に、DC/DCコンバータの電圧指令を補機バッテリの出力電力以上に設定することが記載されている。こうすることで、ECUの作動不良を防止しつつ、DC/DCコンバータにおける電力消費の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術では、供給される電圧によって作動状態が変化するような特性(以下、適宜「電圧特性」と呼ぶ。)を有する補機を用いている場合、補機電圧変化により補機の動作などが変動してしまう可能性があった。例えば、補機がエアコンを有しており、当該エアコンが作動している場合には、風量の変動が生じ得る。また、例えば、補機がライトを有しており、当該ライトが作動している場合には、ライトの明滅が生じ得る。以下では、補機電圧変化による補機の特性の変化を、適宜「特性変化」と呼ぶ。このような特性変化が発生した場合には、乗員や他車両に違和感を生じさせてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、内燃機関の始動時において補機の特性変化を適切に抑制することが可能な車両の電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、車両の電源制御装置は、内燃機関と、バッテリの電力を用いて前記内燃機関を始動させるモータと、電圧によって作動状態が変化する特性を有する補機と、を有する車両に適用され、前記バッテリよりも低い電源電圧を出力し、前記補機を駆動する補機バッテリと、前記バッテリと前記補機バッテリとに接続され、電圧変換を行う電圧変換器と、前記内燃機関の始動時において、前記補機が作動しているか否かに応じて、前記電圧変換器の電圧目標値に対して設定する下限値を変化させる電圧目標下限値設定手段と、を備える。
【0007】
上記の車両の電源制御装置は、バッテリ(メインバッテリ)の電力によりモータを駆動させることで内燃機関を始動させる車両に好適に適用される。例えば、車両の電源制御装置は、ハイブリッド車両に適用される。補機バッテリは、バッテリよりも低い電源電圧を出力し、電圧特性を有するような補機を駆動する。電圧変換器は、バッテリと補機バッテリとに接続され、電圧変換を行う。例えば、電圧変換器は、DC/DCコンバータである。電圧目標下限値設定手段は、内燃機関の始動時において、電圧特性を有する補機が作動しているか否かに応じて、電圧変換器の電圧目標値に対して設定する下限値を変化させる。この下限値は、電圧変換器の電圧が当該下限値を下回らないように制限するために用いられる制御値である。
【0008】
上記の車両の電源制御装置によれば、内燃機関の始動時における補機の特性変化を適切に抑制することができる。具体的には、始動時において電圧変換器の目標電圧を低下させた場合に発生し得る、補機の特性変化を適切に抑制することができる。これにより、乗員や他車両に発生し得る違和感を適切に抑制することが可能となる。
【0009】
上記の車両の電源制御装置において好適には、前記電圧目標下限値設定手段は、前記補機が作動している場合、前記補機が作動していない場合に比して、前記下限値を大きくすることができる。
【0010】
上記の車両の電源制御装置の一態様では、前記補機は、ライトを有しており、前記電圧目標下限値設定手段は、前記ライトが作動している場合において、周囲環境の照度が低い場合、前記照度が高い場合に比して、前記下限値と前記電圧変換器における現在の電圧との差を小さくする。
【0011】
この態様では、電圧目標下限値設定手段は、ライトが作動している場合において、周囲環境の照度(環境照度)が低い場合に、電圧変換器の電圧目標値における下限値と、電圧変換器における現在の電圧との差を小さくする。つまり、電圧目標下限値設定手段は、環境照度が低いほど、下限値を大きくする。これにより、環境照度が低い場合に生じ得る、ライト輝度変化による違和感を適切に抑制することができる。また、当該態様では、環境照度が高い場合には、環境照度が低い場合に比して下限値が小さくされる傾向にあるため、始動電力を低減することが可能となる。
【0012】
上記の車両の電源制御装置の他の一態様では、前記補機は、エアコンを有しており、前記電圧目標下限値設定手段は、前記エアコンが作動している場合において、車速が低い場合、前記車速が高い場合に比して、前記下限値と前記電圧変換器における現在の電圧との差を小さくする。
【0013】
この態様では、電圧目標下限値設定手段は、エアコンが作動している場合において、車速が低い場合に、電圧変換器の電圧目標値における下限値と、電圧変換器における現在の電圧との差を小さくする。つまり、電圧目標下限値設定手段は、車速が低いほど、下限値を大きくする。これにより、車速が低い場合に生じ得る、エアコン風量変化による違和感を適切に抑制することができる。また、当該態様では、車速が高い場合には、車速が低い場合に比して下限値が小さくされる傾向にあるため、始動電力を低減することが可能となる。
【0014】
好ましくは、前記電圧目標下限値設定手段は、前記補機が作動している場合において、当該補機の特性変化が所定値以下となるように、前記下限値を設定する。例えば、「所定値」は、人間が違和感を覚えるような特性変化の値に設定される。これにより、始動時に生じる補機の特性変化を、人間に違和感を与えないような範囲内に適切に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態におけるハイブリッド車両の概略構成図を示す。
【図2】補機の特性変動の一例を示す。
【図3】第1実施形態における制御を説明するための図を示す。
【図4】エアコン風量レベルを考慮してDC/DC電圧変化量を求める例を示す。
【図5】第1実施形態における制御フローを示す。
【図6】補機消費電力の算出方法を説明するための図を示す。
【図7】第2実施形態において、環境照度に応じた制御を行う理由を説明するための図を示す。
【図8】第2実施形態における制御を説明するための図を示す。
【図9】第3実施形態において、車速に応じた制御を行う理由を説明するための図を示す。
【図10】第3実施形態における制御を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
まず、本発明における第1実施形態について説明する。
【0018】
(装置構成)
図1は、第1実施形態における車両の電源制御装置が搭載されたハイブリッド車両100の概略構成図を示す。なお、図1中の破線矢印は、信号の入出力を示している。
【0019】
ハイブリッド車両100は、主に、エンジン(内燃機関)1と、車軸2と、駆動輪3と、第1のモータジェネレータMG1と、第2のモータジェネレータMG2と、動力分割機構4と、インバータ5と、メインバッテリ6と、DC/DCコンバータ7と、補機バッテリ8と、補機9と、ECU(Electronic Control Unit)20と、を備える。
【0020】
車軸2は、エンジン1及び第2のモータジェネレータMG2の動力を車輪3に伝達する動力伝達系の一部である。車輪3は、ハイブリッド車両100の車輪であり、説明の簡略化のため、図1では特に左右前輪のみが表示されている。エンジン1は、例えばガソリンエンジンで構成され、ハイブリッド車両100の主たる推進力を出力する動力源として機能する。エンジン1は、ECU20によって種々の制御が行われる。
【0021】
第1のモータジェネレータMG1は、主としてメインバッテリ6を充電するための発電機、或いは第2のモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として機能するように構成されており、エンジン1の出力により発電を行う。第2のモータジェネレータMG2は、主としてエンジン1の出力をアシスト(補助)する電動機として機能するように構成されている。例えば、第2のモータジェネレータMG2は、メインバッテリ6からの電力を用いてエンジン1を始動させるように動作する。
【0022】
また、第2のモータジェネレータMG2は、エンジンブレーキ時やフットブレーキによる制動時において、回生ブレーキとして機能することにより制動力を発生する。これらのモータジェネレータMG1、MG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。以下では、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2のことを適宜「モータジェネレータMG」と表記する。
【0023】
動力分割機構4は、サンギヤやリングギヤなどを有して構成されるプラネタリギヤ(遊星歯車機構)に相当し、エンジン1の出力を第1のモータジェネレータMG1及び車軸2へ分配することが可能に構成されている。
【0024】
インバータ5は、メインバッテリ6と、第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2との間の電力の入出力を制御する直流交流変換機である。例えば、インバータ5は、第1のモータジェネレータMG1によって発電された交流電力を直流電力に変換してメインバッテリ6に供給すると共に、メインバッテリ6から取り出した直流電力を交流電力に変換して第2のモータジェネレータMG2に供給する。
【0025】
メインバッテリ6は、第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成されると共に、第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2が発電した電力を充電可能に構成された蓄電池である。
【0026】
DC/DCコンバータ7は、本発明における電圧変換器の一例に相当し、メインバッテリ6の電力を降圧して、補機バッテリ8、補機9及びECU20に供給する。具体的には、DC/DCコンバータ7は、ECU20から供給される制御信号S7に応じてメインバッテリ6から供給された直流電圧を降圧し、その降圧した直流電圧を補機バッテリ8、補機9及びECU20に供給する。
【0027】
補機バッテリ8は、補機9及びECU20に電力を供給するバッテリであり、メインバッテリ6よりも低い電源電圧を出力する。補機バッテリ8は、DC/DCコンバータ7からの直流電圧により充電される。
【0028】
補機9は、言い換えると「補機負荷」であり、DC/DCコンバータ7を介して補機バッテリ8から供給される電力により駆動される。例えば、補機9としては、エアコン(エアーコンディショナー)や、ライト(灯火装置)や、点火装置や、電動ポンプや、パワーウィンドウや、オーディオ等が挙げられる。
【0029】
ECU20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、ハイブリッド車両100内の各構成要素に対して種々の制御を行う。具体的には、ECU20は、上記したエンジン1、第1のモータジェネレータMG1、第2のモータジェネレータMG2、インバータ5、メインバッテリ6、DC/DCコンバータ7、補機バッテリ8、及び補機9との間で信号S1〜S3、S5〜S9の授受を行うことで、これらの構成要素を制御する。ECU20は、例えばハイブリッドECU、エンジンECU、及びモータECUを具備して構成されている。詳細は後述するが、ECU20は、本発明における電圧目標下限値設定手段として機能する。
【0030】
(制御方法)
次に、第1実施形態においてECU20が行う制御について具体的に説明する。
【0031】
前述したように、エンジン始動時においてDC/DCコンバータ7の電圧指令を制限することで補機消費電力の低減を図る技術があるが、当該技術では、補機9が電圧(言い換えると電気負荷。より詳しくは補機9の端子電圧)によって作動状態が変化するような特性を有していると、補機電圧変化により補機9の動作などが変動してしまう可能性がある。つまり、エンジン始動時において、電圧特性を有する補機9は、補機電圧変化により特性変化が発生する可能性がある。より具体的には、当該技術では、エンジン始動中にDC/DCコンバータ7における電圧の目標値を低下させた際に、その電圧がECU20の作動電圧範囲内であっても、電圧特性を有する補機9では、始動中にのみ特性変化が生じてしまう可能性がある。
【0032】
例えば、補機9がエアコンを有しており、当該エアコンが作動している場合には、図2に示すように、エアコンに供給される電圧(補機9の端子電圧)の変動により、エアコン風量が変動する傾向にある。なお、エアコンはエアコンブロアに相当し、エアコン風量はエアコンブロアの風量に相当する。他方で、補機9がライトを有しており、当該ライトが作動している場合には、補機電圧変化によりライトの明滅が生じ得る。このような補機9の特性変化が生じた場合には、乗員や他車両に違和感を生じさせてしまう可能性がある。例えば、エンジン1の間欠始動においては、車両走行中であることや、始動頻度が多いことから、このような不具合が顕著に現れる傾向にあると言える。
【0033】
したがって、第1実施形態では、ECU20は、エンジン始動時において、電圧特性を有する補機9が作動しているか否かに応じて、DC/DCコンバータ7の電圧目標値に対して設定する下限値を変化させる。当該下限値は、DC/DCコンバータ7の電圧(以下、適宜「DC/DC電圧」と表記する。)が当該下限値を下回らないように制限するために用いられる制御値である。以下では、当該下限値を「始動時DC/DC電圧目標下限値」と呼び、適宜「VDC_crk」の符号を用いる。具体的には、ECU20は、電圧特性を有する補機9が作動している場合、当該補機9が作動していない場合に比して、始動時DC/DC電圧目標下限値を大きくする。また、ECU20は、補機9が作動している場合に、補機9の特性変化が所定値(以下、「特性変化所定値」と呼ぶ。)以下となるように始動時DC/DC電圧目標下限値を設定する。
【0034】
詳しくは、電圧特性を有する複数の補機9が存在するものとすると、まず、ECU20は、当該複数の補機9のうちでオンとなっている補機9について、それらの特性変化が特性変化所定値以下となるようなDC/DCコンバータ7における電圧の変化量(以下、適宜「DC/DC電圧変化量」と呼ぶ。)を求める。この場合、ECU20は、各補機9ごとに定められた特性変化所定値を用い、複数の補機9のうちでオンとなっている補機9のそれぞれについて、特性変化が特性変化所定値以下となるようなDC/DC電圧変化量を求める。
【0035】
そして、ECU20は、求められた複数のDC/DC電圧変化量のうちの最小の電圧変化量を求めて、当該最小のDC/DC電圧変化量をDC/DC電圧における変化幅の上限(以下、「変化幅上限」と呼び、適宜「ΔVDCmax」の符号を用いる。)に設定する。つまり、ECU20は、オンとなっている補機9のうち、DC/DC電圧変化に対する特性変化が最も大きい補機9より得られるDC/DC電圧変化量を、DC/DC電圧の変化幅上限に設定する。こうしているのは、DC/DC電圧の変化を変化幅上限によって制限することで、オンとなっている全ての補機9の特性変化を特性変化所定値以下に制限するためである。
【0036】
この後、ECU20は、現在のDC/DC電圧(以下、「現在DC/DC電圧」と呼び、適宜「VDC_now」の符号を用いる。)から変化幅上限を減算した電圧を、始動時DC/DC電圧目標下限値に設定する。つまり、ECU20は、始動時DC/DC電圧目標下限値を「VDC_now−ΔVDCmax」によってガードする。この場合、ECU20は、現在DC/DC電圧から変化幅上限を減算した電圧が、ECU20を作動させるために必要なDC/DC電圧(以下、「ECU作動電圧」と呼び、適宜「VDC_low」の符号を用いる。)よりも小さい場合には、現在DC/DC電圧から変化幅上限を減算した電圧ではなく、ECU作動電圧を始動時DC/DC電圧目標下限値に設定する。こうしているのは、エンジン始動時におけるDC/DC電圧がECU作動電圧を下回らないようにすることで、ECU20の作動を確保するためである。
【0037】
この後、ECU20は、上記のように設定した始動時DC/DC電圧目標下限値以上の電圧を目標値として用いて、DC/DCコンバータ7における電圧変換に関する制御を行って、エンジン1を始動させる制御を行う。これにより、エンジン始動時における補機9の特性変化を適切に抑制することが可能となる。
【0038】
ここで、図3を参照して、第1実施形態における制御の具体例について説明する。図3は、横軸にDC/DC電圧を示し、縦軸に補機特性(補機9の動作状態に対応する)を示している。具体的には、上から順に、ECU20の作動状態、エアコン風量、ライト輝度を示している。ここでは、補機9としてエアコン及びライトを例示しており、エアコンの特性変化としてエアコン風量の変化を用いており、また、ライトの特性変化としてライト輝度の変化を用いている。
【0039】
エアコンがオンとなっている場合、ECU20は、エアコン風量の変化に対して定められた特性変化所定値(以下、「風量変化所定値」と呼ぶ。)を用いて、エアコン風量の変化が風量変化所定値以下となるようなDC/DC電圧変化量(以下、適宜「ΔVDC_A」の符号を用いる。)を求める。具体的には、ECU20は、DC/DC電圧とエアコン風量との関係を示すグラフ51に基づいて、現在DC/DC電圧VDC_nowを基準にして、風量変化所定値に対応するDC/DC電圧変化量ΔVDC_Aを求める。なお、DC/DC電圧とエアコン風量との関係を示すグラフ51は、予め実験やシミュレーションなどを行うことで求められて、メモリなどに記憶される。ECU20は、当該メモリに記憶されたグラフ51を用いて、DC/DC電圧変化量ΔVDC_Aを求める。
【0040】
他方で、ライトがオンとなっている場合、ECU20は、ライト輝度の変化に対して定められた特性変化所定値(以下、「輝度変化所定値」と呼ぶ。)を用いて、ライト輝度の変化が輝度変化所定値以下となるようなDC/DC電圧変化量(以下、適宜「ΔVDC_B」の符号を用いる。)を求める。具体的には、ECU20は、DC/DC電圧とライト輝度との関係を示すグラフ52に基づいて、現在DC/DC電圧VDC_nowを基準にして、輝度変化所定値に対応するDC/DC電圧変化量ΔVDC_Bを求める。なお、DC/DC電圧とライト輝度との関係を示すグラフ52は、予め実験やシミュレーションなどを行うことで求められて、メモリなどに記憶される。ECU20は、当該メモリに記憶されたグラフ52を用いてDC/DC電圧変化量ΔVDC_Aを求める。
【0041】
図3に示す例では、DC/DC電圧変化量ΔVDC_A、ΔVDC_BにおいてΔVDC_Bが最小であるため、ECU20は、DC/DC電圧変化量ΔVDC_Bを変化幅上限ΔVDCmaxに設定する。そして、ECU20は、現在DC/DC電圧VDC_nowから変化幅上限ΔVDCmax(ΔVDC_B)を減算した電圧がECU作動電圧VDC_lowよりも大きいため、現在DC/DC電圧VDC_nowから変化幅上限ΔVDCmaxを減算した電圧を、始動時DC/DC電圧目標下限値に設定する。
【0042】
なお、補機9の特性変化が特性変化所定値以下となるDC/DC電圧変化量を求める場合に、各補機9におけるDC/DC電圧変化と特性変化との関係(例えばグラフ51、52など)を変化させるパラメータを考慮しても良い。補機9によっては、DC/DC電圧変化と特性変化との関係が固定でなく、何らかのパラメータによって当該関係が変化する場合がある。言い換えると、特性変化が特性変化所定値以下となるようなDC/DC電圧変化量が、何らかのパラメータに応じて変化する場合がある。そのため、ECU20は、例えば、このようなパラメータに応じたDC/DC電圧変化と特性変化との関係を選定し、選定された関係から、特性変化が特性変化所定値以下となるDC/DC電圧変化量を求めることができる。
【0043】
図4は、エアコン風量レベルを考慮してDC/DC電圧変化量ΔVDC_Aを求める例を示す図である。図4は、横軸にDC/DC電圧を示し、縦軸にエアコン風量を示している。
【0044】
図4に示すように、エアコン風量レベル(HI、M、LO)に応じて、DC/DC電圧とエアコン風量との関係が変化することがわかる。例えば、エアコン風量レベルが「HI」である場合には、グラフ61で示すようなDC/DC電圧とエアコン風量との関係となり、エアコン風量レベルが「M」である場合には、グラフ62で示すようなDC/DC電圧とエアコン風量との関係となり、エアコン風量レベルが「LO」である場合には、グラフ63で示すようなDC/DC電圧とエアコン風量との関係となる。つまり、エアコン風量レベルが高いほど、DC/DC電圧の変化に対するエアコン風量の変化量が大きくなる傾向にある。
【0045】
そのため、ECU20は、エアコン風量レベルが高いほど、DC/DC電圧変化量ΔVDC_Aを小さくする。例えば、ECU20は、エアコン風量レベルが「HI」である場合にはグラフ61よりDC/DC電圧変化量ΔVDC_Aaを求め、エアコン風量レベルが「M」である場合にはグラフ62よりDC/DC電圧変化量ΔVDC_Abを求め、エアコン風量レベルが「LO」である場合にはグラフ63よりDC/DC電圧変化量ΔVDC_Acを求める(ΔVDC_Aa<ΔVDC_Ab<ΔVDC_Ac)。
【0046】
なお、例えばグラフ61〜63に示すようなエアコン風量レベルに応じたDC/DC電圧とエアコン風量との関係は、予め実験やシミュレーションなどを行うことで求められて、メモリなどに記憶される。そして、ECU20は、当該メモリに記憶された関係を用いて、DC/DC電圧変化量ΔVDC_Aを求める。
【0047】
なお、補機9の特性変化を制限するために用いられる「特性変化所定値」は、基本的には、人間の官能を考慮して予め設定される。例えば、特性変化所定値は、人間が違和感を覚えるような補機9の特性変化に対応する値に設定される。補機9がエアコンであれば、人間が違和感を覚えるようなエアコン風量変化に対応する値が風量変化所定値に設定され、補機9がライトであれば、人間が違和感を覚えるようなライト輝度変化に対応する値が輝度変化所定値に設定される。
【0048】
(制御フロー)
次に、図5を参照して、第1実施形態における制御フローについて説明する。当該制御フローは、ECU20によって繰り返し実行される。なお、当該処理は、例えばエンジン1の始動時に実行される。
【0049】
ステップS101では、ECU20は、電圧特性を有する補機9がオンとなっているか否かを判定する。この場合、ECU20は、補機9に供給している指令信号や補機9から供給される信号などに応じて、当該判定を行う。補機9がオンである場合(ステップS101;Yes)、処理はステップS102に進み、補機9がオンでない場合(ステップS101;No)、処理はステップS104に進む。
【0050】
ステップS102では、ECU20は、オンとなっている補機9のDC/DC電圧変化量に基づいて変化幅上限を設定する。具体的には、ECU20は、各補機9ごとに定められた特性変化所定値を用いて、電圧特性を有する複数の補機9のうちでオンとなっている補機9のそれぞれについて、特性変化が各々の特性変化所定値以下となるDC/DC電圧変化量を求める。そして、ECU20は、求められた複数のDC/DC電圧変化量のうちの最小の電圧変化量を、DC/DC電圧における変化幅上限に設定する。この処理は、「ΔVDCmax=min(ΔVDC_A、ΔVDC_B、…)」といった具合に表現される。ステップS102の終了後、処理はステップS103に進む。
【0051】
ステップS103では、ECU20は、変化幅上限に基づいて始動時DC/DC電圧目標下限値を設定する。具体的には、ECU20は、始動時DC/DC電圧目標下限値を、現在DC/DC電圧から変化幅上限を減算した電圧でガードする。この場合、ECU20は、現在DC/DC電圧から変化幅上限を減算した電圧とECU作動電圧とのうち大きいほうの電圧を、始動時DC/DC電圧目標下限値に設定する。この処理は、「VDC_crk←max(VDC_low、VDC_now−ΔVDCmax)」といった具合に表現される。ステップS103の終了後、処理はステップS105に進む。
【0052】
一方、ステップS104では、ECU20は、電圧特性を有する補機9がオンとなっていないため、始動時DC/DC電圧目標下限値をECU作動電圧に設定する。この処理は、「VDC_crk←VDC_low」といった具合に表現される。そして、処理はステップS105に進む。
【0053】
ステップS105では、ECU20は、補機9の消費電流(補機消費電流)を取得する。例えば、ECU20は、補機9の電流を検出する電流センサから補機消費電流を取得する。そして、処理はステップS106に進む。
【0054】
ステップS106では、ECU20は、エンジン始動時の補機9の消費電力(補機消費電力)を算出する。具体的には、ECU20は、ステップS105で取得された補機消費電流、及びステップS103又はステップS104で設定された始動時DC/DC電圧目標下限値に基づいて、補機消費電力を算出する。そして、処理はステップS107に進む。
【0055】
ここで、図6を参照して、補機消費電力の算出方法の一例について説明する。図6は、横軸にDC/DC電圧を示し、縦軸に補機消費電力を示している。ECU20は、図6に示すようなDC/DC電圧と補機消費電力と補機消費電流とによって規定されたマップを用いて、現在の補機消費電流及び始動時DC/DC電圧目標下限値VDC_crkに対応する補機消費電力を求める(例えば矢印70参照)。なお、当該マップは、補機消費電流が大きくなるほど補機消費電力が大きくなるように規定されている。また、当該マップは、所定の実験や所定の演算式などに基づいて予め設定される。
【0056】
図5に戻って、ステップS107以降の処理を説明する。ステップS107では、ECU20は、メインバッテリ7の電池出力が、エンジン1を始動させるために必要な電力(以下、「エンジン始動電力」と呼ぶ。)と、ステップS106で算出された補機消費電力とを加算した電力以下であるか否かを判定する。電池出力がエンジン始動電力と補機消費電力とを加算した電力以下である場合(ステップS107;Yes)、処理はステップS108に進む。
【0057】
ステップS108では、ECU20は、メインバッテリ7の電力を用いてモータジェネレータMGを駆動することでエンジン1を始動させると共に、DC/DCコンバータ7の目標電圧(以下、「DC/DC目標電圧」と呼ぶ。)を、ステップS103又はステップS104で設定された始動時DC/DC電圧目標下限値に応じた電圧に設定する(VDC←VDC_crk)。そして、処理はステップS109に進む。
【0058】
ステップS109では、ECU20は、エンジン回転数などに基づいて、エンジン1が完爆の状態にあるか否かを判定する。エンジン1が完爆の状態にある場合(ステップS109;Yes)、処理はステップS110に進む。これに対して、エンジン1が完爆の状態にない場合(ステップS109;No)、処理はステップS109に戻る。
【0059】
一方で、電池出力がエンジン始動電力と補機消費電力とを加算した電力よりも大きい場合(ステップS107;No)、処理はステップS110に進む。この場合には、エンジン1における始動時ショックなどの発生を抑制すべく、エンジン1を始動させない。
【0060】
ステップS110では、ECU20は、DC/DC目標電圧を、通常走行時に用いる電圧に設定する。そして、処理は終了する。
【0061】
以上説明した第1実施形態によれば、エンジン始動時における補機9の特性変化を適切に抑制することができる。よって、乗員や他車両に発生し得る違和感を適切に抑制することが可能となる。
【0062】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。上記したように、補機9の特性変化が特性変化所定値以下となるようなDC/DC電圧変化量を求めていたが(図3など参照)、第2実施形態では、この「特性変化所定値」を変化させる点で、第1実施形態と異なる。具体的には、第2実施形態では、人間の官能として感じられる補機9の特性変化を変化させる要因に基づいて、特性変化所定値を変化させる。このように特性変化所定値を変化させることは、人間の官能として感じられる特性変化を変化させる要因に基づいて、補機9についてのDC/DC電圧変化量を変えることに相当し、しいては始動時DC/DC電圧目標下限値を変化させることに相当する。
【0063】
詳しくは、第2実施形態では、補機9は少なくともライトを有しており、当該ライトが作動している場合において、ハイブリッド車両100における周囲環境の照度(以下、適宜「環境照度」と呼ぶ。)が低い場合、環境照度が高い場合に比して、ライトに対して用いる特性変化所定値(つまり輝度変化所定値)を小さくする。言い換えると、環境照度が低いほど、ライトについてのDC/DC電圧変化量を小さくする。この場合、DC/DC電圧変化量を小さくすると変化幅上限も小さくなる傾向にあるため、最終的に設定される始動時DC/DC電圧目標下限値は、環境照度が低いほど大きくなる傾向にある。
【0064】
なお、基本的には、第2実施形態に係る制御も、図1に示したハイブリッド車両100に適用される。つまり、第2実施形態に係る制御も、ECU20によって実行される。また、ここで特に説明しない構成や制御などについては、第1実施形態と同様であるものとする。
【0065】
図7を参照して、上記のように環境照度に応じた制御を行う理由について具体的に説明する。図7は、横軸に、エンジン始動時におけるライトの輝度変化量(ライトの電圧変動によって生じるものである)を示しており、縦軸に、ライト輝度変化についての官能影響(言い換えると官能上の影響)を示している。図7には、環境照度が低い(暗い)場合及び環境照度が高い(明るい)場合の2つの場合について、ライト輝度変化量と官能影響との関係を例示している。なお、環境照度は、環境照度を検出可能に構成された環境照度計の検出値が用いられる。この環境照度計は、ハイブリッド車両100に搭載される。
【0066】
図7に示すように、環境照度によって、ライト輝度変化に対する官能影響が変わることがわかる。つまり、電圧変動に対するライト輝度変化は、ハイブリッド車両100の外部における環境照度によって、人間が官能として感じられる変化が変わることがわかる。具体的には、環境照度が低いほど、ライト輝度変化による官能影響が大きいことがわかる。よって、環境照度が低いほど、ライト輝度変化が運転者や他車両に違和感を与えやすいと言える。
【0067】
したがって、第2実施形態では、環境照度に起因する、ライト輝度変化に対する官能影響の変化を抑制すべく、ECU20は、ライトがオンとなっている場合に、環境照度が低いほど、輝度変化所定値を小さくする。言い換えると、ECU20は、環境照度が低いほど、変化幅上限を求めるために用いられる、ライトについてのDC/DC電圧変化量を小さくする。即ち、ECU20は、環境照度が低いほど、始動時DC/DC電圧目標下限値と現在DC/DC電圧との差(変化幅上限に対応する)を小さくする。なお、ECU20は、環境照度計が検出した環境照度を取得し、取得された環境照度に基づいて上記した処理を行う。
【0068】
図8を参照して、第2実施形態における制御の具体例について説明する。図8(a)は、横軸にDC/DC電圧を示し、縦軸にライト輝度を示している。図8(a)では、環境照度が低い場合に、符号81で示す輝度変化所定値を用い、環境照度が高い場合に、符号82で示す輝度変化所定値を用いる例を示している。環境照度が低い場合に用いられる輝度変化所定値81は、環境照度が高い場合に用いられる輝度変化所定値82よりも小さい。なお、予め実験などを行うことで、環境照度に応じて使用すべき輝度変化所定値が求められる。そして、こうして求められた環境照度と使用すべき輝度変化所定値との関係はメモリなどに記憶され、ECU20は、当該メモリに記憶された関係に基づいて、環境照度計が検出した環境照度に対応する輝度変化所定値に設定する。
【0069】
図8(a)に示す例では、ECU20は、環境照度が低い場合には、グラフ80より輝度変化所定値81に対応するDC/DC電圧変化量ΔVDC_B1を求め、環境照度が高い場合には、グラフ80より輝度変化所定値82に対応するDC/DC電圧変化量ΔVDC_B2を求める。環境照度が低い場合に用いられるDC/DC電圧変化量ΔVDC_B1は、環境照度が高い場合に用いられるDC/DC電圧変化量ΔVDC_B2よりも小さい。なお、ECU20は、このようにDC/DC電圧変化量ΔVDC_Bを求めた後、第1実施形態と同様の方法により、DC/DC電圧変化量に基づいて変化幅上限を設定して、当該変化幅上限に基づいて始動時DC/DC電圧目標下限値を設定する。
【0070】
ここで、上記のように環境照度に応じて変化させた輝度変化所定値からDC/DC電圧変化量を求めることに限定はされず、環境照度に応じて変化させたDC/DC電圧変化量を用いて、環境照度からDC/DC電圧変化量を直接求めても良い。この例を、図8(b)に示す。図8(b)は、横軸に環境照度を示し、縦軸にライトについてのDC/DC電圧変化量を示している。これより、環境照度が低いほど、小さな値を有するDC/DC電圧変化量が求められることがわかる。図8(b)に示すような環境照度とDC/DC電圧変化量との関係は、予め実験などを行うことで求められて、メモリなどに記憶される。ECU20は、当該メモリに記憶された関係に基づいて、環境照度計が検出した環境照度に対応するDC/DC電圧変化量を求める。
【0071】
以上説明した第2実施形態によれば、環境照度に起因する、ライト輝度変化に対する官能影響の変化を、適切に抑制することができる。具体的には、環境照度が低い場合に生じ得る、ライト輝度変化による違和感を適切に抑制することができる。
【0072】
また、第2実施形態によれば、環境照度が高い場合に、環境照度が低い場合に比して、輝度変化所定値が大きくされ、ライトについてのDC/DC電圧変化量が大きくされる傾向にある。そのため、環境照度が高い場合には、最終的に設定される始動時DC/DC電圧目標下限値が小さくなる傾向にあると言える。よって、第2実施形態によれば、環境照度が高い場合における始動電力を効率的に低減することが可能となる。
【0073】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態でも、人間の官能として感じられる補機9の特性変化を変化させる要因に基づいて、特性変化所定値を変化させる点で、第2実施形態と同様である。しかしながら、第2実施形態では、環境照度に応じてライトに用いる特性変化所定値(輝度変化所定値)を変化させていたが、第3実施形態では、ハイブリッド車両100の車速に応じて、エアコンに用いる特性変化所定値(風量変化所定値)を変化させる。具体的には、第3実施形態では、エアコンが作動している場合において、車速が低い場合、車速が高い場合に比して、エアコンに対して用いる風量変化所定値を小さくする。言い換えると、車速が低いほど、エアコンについてのDC/DC電圧変化量を小さくする。この場合、DC/DC電圧変化量を小さくすると変化幅上限も小さくなる傾向にあるため、最終的に設定される始動時DC/DC電圧目標下限値は、車速が低いほど大きくなる傾向にある。
【0074】
なお、基本的には、第3実施形態に係る制御も、図1に示したハイブリッド車両100に適用される。つまり、第3実施形態に係る制御も、ECU20によって実行される。また、ここで特に説明しない構成や制御などについては、第1実施形態と同様であるものとする。
【0075】
図9を参照して、上記のように車速に応じた制御を行う理由について具体的に説明する。図9は、横軸に、エンジン始動時におけるエアコン風量変化量(エアコンの電圧変動によって生じるものである)を示しており、縦軸に、エアコン風量変化についての官能影響(言い換えると官能上の影響)を示している。図9には、低車速の場合及び高車速の場合の2つの場合について、エアコン風量変化量と官能影響との関係を例示している。
【0076】
図9に示すように、車速によって、エアコン風量変化に対する官能影響が変わることがわかる。つまり、電圧変動に対するエアコン風量変化は、車速によって、人間が官能として感じられる変化が変わることがわかる。具体的には、車速が低いほど、エアコン風量変化による官能影響が大きいことがわかる。よって、車速が低いほど、エアコン風量変化が乗員に違和感を与えやすいと言える。これは、エアコン風量変化は騒音として人体に影響を与えるが、低車速の場合には走行騒音が比較的小さいため、エアコン風量変化による騒音が走行騒音によって紛れないからである。逆に、車速が高いほど、エアコン風量変化による官能影響が小さくなる。これは、高車速の場合には走行騒音が大きくなるため、エアコン風量変化による騒音が走行騒音によって紛れるからである。
【0077】
以上のことから、第3実施形態では、車速に起因する、エアコン風量変化に対する官能影響の変化を抑制すべく、ECU20は、エアコンがオンとなっている場合に、車速が低いほど風量変化所定値を小さくし、車速が高いほど風量変化所定値を大きくする。言い換えると、ECU20は、変化幅上限を求めるために用いられるエアコンについてのDC/DC電圧変化量を、車速が低いほど小さくし、車速が高いほど大きくする。即ち、ECU20は、車速が低いほど、始動時DC/DC電圧目標下限値と現在DC/DC電圧との差(変化幅上限に対応する)を小さくし、車速が高いほど、始動時DC/DC電圧目標下限値と現在DC/DC電圧との差を大きくする。なお、ECU20は、車速センサが検出した車速を取得し、取得された車速に基づいて上記した処理を行う。
【0078】
図10を参照して、第3実施形態における制御の具体例について説明する。図10(a)は、横軸にDC/DC電圧を示し、縦軸にエアコン風量を示している。図10(a)では、車速が低い場合に、符号91で示す風量変化所定値を用い、車速が高い場合に、符号92で示す風量変化所定値を用いる例を示している。車速が低い場合に用いられる風量変化所定値91は、車速が高い場合に用いられる風量変化所定値92よりも小さい。なお、予め実験などを行うことで、車速に応じて使用すべき風量変化所定値が求められる。そして、こうして求められた車速と使用すべき風量変化所定値との関係はメモリなどに記憶され、ECU20は、当該メモリに記憶された関係に基づいて、車速センサが検出した車速に対応する風量変化所定値に設定する。
【0079】
図10(a)に示す例では、ECU20は、車速が低い場合には、グラフ90より風量変化所定値91に対応するDC/DC電圧変化量ΔVDC_A1を求め、車速が高い場合には、グラフ90より風量変化所定値92に対応するDC/DC電圧変化量ΔVDC_A2を求める。車速が低い場合に用いられるDC/DC電圧変化量ΔVDC_A1は、車速が高い場合に用いられるDC/DC電圧変化量ΔVDC_A2よりも小さい。なお、ECU20は、このようにDC/DC電圧変化量ΔVDC_Aを求めた後、第1実施形態と同様の方法により、DC/DC電圧変化量に基づいて変化幅上限を設定して、当該変化幅上限に基づいて始動時DC/DC電圧目標下限値を設定する。
【0080】
ここで、上記のように車速に応じて変化させた風量変化所定値からDC/DC電圧変化量を求めることに限定はされず、車速に応じて変化させたDC/DC電圧変化量を用いて、車速からDC/DC電圧変化量を直接求めても良い。この例を、図10(b)に示す。図10(b)は、横軸に車速を示し、縦軸にエアコンについてのDC/DC電圧変化量を示している。これより、車速が低いほど、小さな値を有するDC/DC電圧変化量が求められ、車速が高いほど、大きな値を有するDC/DC電圧変化量が求められることがわかる。図10(b)に示すような車速とDC/DC電圧変化量との関係は、予め実験などを行うことで求められて、メモリなどに記憶される。ECU20は、当該メモリに記憶された関係に基づいて、車速センサが検出した車速に対応するDC/DC電圧変化量を求める。
【0081】
以上説明した第3実施形態によれば、車速に起因する、エアコン風量変化に対する官能影響の変化を、適切に抑制することができる。具体的には、車速が低い場合に生じ得る、エアコン風量変化による違和感を適切に抑制することができる。
【0082】
また、第3実施形態によれば、車速が高い場合に、車速が低い場合に比して、風量変化所定値が大きくされ、エアコンについてのDC/DC電圧変化量が大きくされる傾向にある。そのため、車速が高い場合には、最終的に設定される始動時DC/DC電圧目標下限値が小さくなる傾向にあると言える。よって、第3実施形態によれば、車速が高い場合における始動電力を効率的に低減することが可能となる。
【0083】
なお、上記した第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせて実施しても良い。具体的には、第2実施形態で示したように環境照度に応じて輝度変化所定値を変化させると共に、車速に応じて風量変化所定値を変化させることとしても良い。言い換えると、環境照度に応じてライトに用いるDC/DC電圧変化量を変化させると共に、車速に応じてエアコンに用いるDC/DC電圧変化量を変化させても良い。こうすることで、環境照度及び車速を考慮した始動時DC/DC電圧目標下限値を適切に設定することができる。したがって、特性変化による違和感の発生をより効果的に抑制することができると共に、始動電力を効率的に低減することができる。
[変形例]
本発明は、ハイブリッド車両への適用に限定はされず、バッテリ電力によりモータを駆動させてエンジンを始動可能に構成された種々の車両に適用することができる。
【0084】
また、実施形態は、上述した実施形態の例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン
4 動力分割機構
5 インバータ
6 メインバッテリ
7 DC/DCコンバータ
8 補機バッテリ
9 補機
20 ECU
MG1 第1のモータジェネレータ
MG2 第2のモータジェネレータ
100 ハイブリッド車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、バッテリの電力を用いて前記内燃機関を始動させるモータと、電圧によって作動状態が変化する特性を有する補機と、を有する車両に適用され、
前記バッテリよりも低い電源電圧を出力し、前記補機を駆動する補機バッテリと、
前記バッテリと前記補機バッテリとに接続され、電圧変換を行う電圧変換器と、
前記内燃機関の始動時において、前記補機が作動しているか否かに応じて、前記電圧変換器の電圧目標値に対して設定する下限値を変化させる電圧目標下限値設定手段と、を備えることを特徴とする車両の電源制御装置。
【請求項2】
前記電圧目標下限値設定手段は、前記補機が作動している場合、前記補機が作動していない場合に比して、前記下限値を大きくする請求項1に記載の車両の電源制御装置。
【請求項3】
前記補機は、ライトを有しており、
前記電圧目標下限値設定手段は、前記ライトが作動している場合において、周囲環境の照度が低い場合、前記照度が高い場合に比して、前記下限値と前記電圧変換器における現在の電圧との差を小さくする請求項1又は2に記載の車両の電源制御装置。
【請求項4】
前記補機は、エアコンを有しており、
前記電圧目標下限値設定手段は、前記エアコンが作動している場合において、車速が低い場合、前記車速が高い場合に比して、前記下限値と前記電圧変換器における現在の電圧との差を小さくする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両の電源制御装置。
【請求項5】
前記電圧目標下限値設定手段は、前記補機が作動している場合において、当該補機の特性変化が所定値以下となるように、前記下限値を設定する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両の電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−61917(P2012−61917A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206539(P2010−206539)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】