説明

車両の駆動力制御装置

【課題】車両の駆動力制御装置において、運転者によるアクセル操作の負担を軽減してドライバビリティの向上を可能とすると共に燃費の悪化を抑制可能とする。
【解決手段】エンジン11とモータジェネレータ14との駆動力を駆動輪16に伝達可能なハイブリッド車両にて、エンジン11の駆動力により車両を走行可能なエンジン走行モードとモータジェネレータ14の駆動力により車両を走行可能なEV走行モードとを切替可能であり、また、アクセル開度に基づいてモータジェネレータ14が駆動力を出力する力行区間と回生制動させる回生区間と駆動力及び回生制動のない惰性走行区間とに切替可能であり、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータによって車輪を駆動して走行する電気自動車では、運転者がアクセルペダルを戻したときに回生制動を行うことができる。このような回生制動を可能としたものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された電気自動車用回生制動制御装置は、アクセルペダル開度に応じて、電気モータを通常の駆動源として駆動力を設定する区間、電気モータの駆動力と回生制動力を0に設定して車両を惰性走行させる区間、電気モータの回生制動力を設定する区間を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−098509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の電気自動車用回生制動制御装置では、運転者のアクセル開度により、電気モータの作動状態を力行区間、惰性走行区間、回生区間の間で切り替えている。ところが、運転者によるアクセルペダルの踏込み操作または踏み戻し操作は、ばらつきがある。そのため、運転者が回生区間から惰性走行区間へ移行させるつもりが、アクセルペダルを踏込み過ぎて力行区間に移行してしまい、制動操作を行う必要が生じてしまう。この場合、無駄な電力の消費やブレーキ負圧の消費により燃費が悪化してしまうという問題が発生する。また、運転者が力行区間から惰性走行区間へ移行させるつもりが、アクセルペダルを戻しすぎて回生区間に移行してしまい、再びアクセルペダルを踏込んで加速させる必要が生じてしまう。この場合、無駄な電力の消費により燃費が悪化してしまうという問題が発生する。このように燃費の悪化を防止するために、運転者は煩雑なアクセルペダル操作が必要となり、ドライバビリティが低下してしまうという問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、運転者によるアクセル操作の負担を軽減してドライバビリティの向上を可能とすると共に燃費の悪化を抑制可能とする車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の駆動力制御装置は、電気モータと、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、アクセル操作量に基づいて前記電気モータが駆動力を出力する力行区間と前記電気モータを回生制動させる回生区間と前記電気モータが駆動力を出力せずに回生制動もしない惰性走行区間とに切替可能なモータ制御手段と、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出する切替意図検出手段と、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更する区間領域変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記車両の駆動力制御装置にて、前記区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度が予め設定された頻度より大きいときには、惰性走行区間の領域を拡張することが好ましい。
【0008】
上記車両の駆動力制御装置にて、前記区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間への移行が完了するまでの間に、力行区間または回生区間へ少なくとも1度移行した場合を1回としてカウントし、このカウント数に基づいて惰性走行区間の領域を変更することが好ましい。
【0009】
上記車両の駆動力制御装置にて、前記区間領域変更手段は、惰性走行区間の領域の変更が完了したら、カウント数をリセットすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両の駆動力制御装置は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更するので、運転者によるアクセル操作の負担を軽減してドライバビリティの向上を可能とすると共に燃費の悪化を抑制可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る車両の駆動力制御装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、本実施形態の車両の駆動力制御装置における変速操作装置を表す概略図である。
【図3】図3は、モータの制御領域を表すグラフである。
【図4】図4は、本実施形態の車両の駆動力制御装置におけるモータの制御領域切替制御の処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る車両の駆動力制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0013】
〔実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の駆動力制御装置を表す概略構成図、図2は、本実施形態の車両の駆動力制御装置における変速操作装置を表す概略図、図3は、モータの制御領域を表すグラフ、図4は、本実施形態の車両の駆動力制御装置におけるモータの制御領域切替制御の処理を表すフローチャートである。
【0014】
本実施形態のハイブリッド車両は、図1に示すように、動力源としてのエンジン(内燃機関)11と、手動式(足踏み式)のクラッチ12と、手動式の多段変速機(動力伝達装置)13と、動力源としてのモータジェネレータ(電気モータ)14と、最終減速装置(動力伝達装置)15と、駆動輪16とを有している。
【0015】
エンジン11としては、燃焼室内で燃料を燃焼させ、これにより発生した熱エネルギを機械的エネルギに変換する熱機関たる内燃機関であって、ガソリンを燃料とし、ピストンの往復運動によって出力軸(クランクシャフト)21から機械的な動力を出力可能となっている。このエンジン11は、燃料噴射装置及び点火装置を有しており、この燃料噴射装置及び点火装置は、動作がエンジン用の電子制御装置(以下、エンジンECUと称する。)101により制御される。このエンジンECU101は、燃料噴射装置の燃料噴射量や燃料噴射時期等を制御すると共に、点火装置の点火時期を制御して、エンジン11の出力軸21から出力される機械的な動力(エンジン出力トルク)の大きさを調整することができる。
【0016】
このエンジンECU101は、CPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラムなどを予め記憶しているROM(Read Only Memory)、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
【0017】
モータジェネレータ14は、供給された電力を機械的な動力(モータ出力トルク)に変換して出力軸22から出力するモータ(電動機)としての機能と、出力軸22に入力された機械的な動力を電力に変換して回収するジェネレータ(発電機)としての機能とを兼ね備えている。このモータジェネレータ14は、例えば、永久磁石型交流同期電動機として構成されており、インバータ23から三相の交流電力が供給されて回転磁界を形成するステータ24と、その回転磁界に引き付けられて回転する回転子としてのロータ25とを有している。そのロータ25は、出力軸22と一体になって回転する。また、このモータジェネレータ14は、ロータ25の回転角位置を検出する回転センサ(レゾルバ)が設けられており、その回転センサが検出信号をモータジェネレータ用の電子制御装置(以下、モータECUと称する。)102に送信する。このモータECU102は、CPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
【0018】
また、モータジェネレータ14は、出力軸22が歯車対(動力伝達装置)26を介して多段変速機13の出力軸37に連結可能となっている。そして、モータジェネレータ14は、モータとして機能するときには、モータ出力トルクを多段変速機13の出力軸37に伝達する一方、ジェネレータとして機能するときには、多段変速機13の出力軸37からの機械的な動力が出力軸22に入力される。
【0019】
この歯車対26は、互いに噛み合い状態にある第1ギア26aと第2ギア26bとで構成される。第1ギア26aは、ロータ25と一体になって回転できるようにモータジェネレータ14の出力軸22に装着される。一方、第2ギア26bは、第1ギア26aよりも大径に成形され、多段変速機13の出力軸37と一体になって回転できるようにこの出力軸37に固定される。この場合、歯車対26は、ロータ25側から回転トルクが入力されることによって減速機構として機能する一方、多段変速機13の出力軸37側から回転トルクが入力されることによって増速機構として機能する。
【0020】
モータジェネレータ14は、インバータ23を介してバッテリ(二次電池)27が接続されている。このバッテリ27からの直流電力は、インバータ23で交流電力に変換されてモータジェネレータ14に供給される。この交流電力が供給されたモータジェネレータ14は、モータとして作動して、出力軸22からモータ出力トルクを出力する。一方、このモータジェネレータ14をジェネレータとして作動させたときは、このモータジェネレータ14からの交流電力をインバータ23で直流電力に変換してバッテリ27に回収、または、電力の回生を行いながら駆動輪16に制動力(回生制動)を加えることができる。この場合、このモータジェネレータ14は、多段変速機13から出力された機械的な動力(出力トルク)が出力軸22を介してロータ25に入力され、この入力トルクを交流電力に変換する。このインバータ23の動作は、モータECU102によって制御される。
【0021】
バッテリ27は、その充電状態(SOC:State of Charge)などを管理するバッテリ用の電子制御装置(以下、バッテリECUと称する。)103が接続されている。このバッテリECU103は、SOCセンサ61が検出したバッテリ27の充電状態に応じた信号として、充電状態量(SOC量)に関する信号をバッテリECU103に送信する。そのバッテリECU103は、この信号に基づいてバッテリ27の充電状態の判定を行い、充電及び放電の要否を判定する。
【0022】
多段変速機13は、エンジン11の動力(エンジン出力トルク)やモータジェネレータ14の動力(モータ出力トルク)を駆動力とし、最終減速装置15を介して左右の駆動輪16に伝達するものである。
【0023】
この手動式の多段変速機13は、前進4段、後退1段の変速段を有するものであって、前進用の変速段として第1速ギア段31、第2速ギア段32、第3速ギア段33、第4速ギア段34を有し、後退用の変速段として後退ギア段35を有している。前進用の変速段は、変速比が第1速ギア段31、第2速ギア段32、第3速ギア段33、第4速ギア段34の順に小さくなるよう構成されている。また、この多段変速機13は、エンジン11のエンジン出力トルクが伝達される入力軸36と、この入力軸36に対して間隔を空けて平行に配置された出力軸37を有している。なお、この多段変速機13は、その構成を簡易的に説明しており、各変速段の数や配置については、図1のものに限るものではない。
【0024】
ここで、第1速ギア段31は、互いに噛み合い状態にある第1速ドライブギア31aと第1速ドリブンギア31bとで構成され、第1速ドライブギア31aは入力軸36上に配置され、第1速ドリブンギア31bは出力軸37上に配置される。第2速ギア段32は、互いに噛み合い状態にある第2速ドライブギア32aと第2速ドリブンギア32bとで構成され、第2速ドライブギア32aは入力軸36上に配置され、第2速ドリブンギア32bは出力軸37上に配置される。第3速ギア段33は、互いに噛み合い状態にある第3速ドライブギア33aと第3速ドリブンギア33bとで構成され、第3速ドライブギア33aは入力軸36上に配置され、第3速ドリブンギア33bは出力軸37上に配置される。第4速ギア段34は、互いに噛み合い状態にある第4速ドライブギア34aと第4速ドリブンギア34bとで構成され、第4速ドライブギア34aは入力軸36上に配置され、第4速ドリブンギア34bは出力軸37上に配置される。
【0025】
後退ギア段35は、後退ドライブギア35aと後退ドリブンギア35bと後退中間ギア35cとで構成される。後退ドライブギア35aは入力軸36上に配置され、後退ドリブンギア35bは出力軸37上に配置され、後退中間ギア35cは、後退ドライブギア35a及び後退ドリブンギア35bと噛み合い状態にあり、回転軸38上に配置される。
【0026】
なお、実際の多段変速機13の構成においては、各変速段のドライブギアのうちのいずれかが、入力軸36と一体回転するように配設される一方、残りのドライブギアが入力軸36に対して相対回転するように配設される。また、各変速段のドリブンギアは、そのうちの何れかが出力軸37と一体回転するように配設される一方、残りが出力軸37に対して相対回転するように配設される。
【0027】
また、入力軸36や出力軸37は、運転者による変速操作装置41により、軸線方向に移動するスリーブを有している。このスリーブは、変速操作装置41を運転者が操作したときに軸線方向へ移動し、移動された方向に位置する相対回転可能なドライブギアやドリブンギアを入力軸36や出力軸37と一体回転させる。この手動式の多段変速機13は、スリーブが運転者の変速操作に対応した方向に移動し、変速操作に応じた変速段への切り替えやニュートラル位置への切り替えを行うことができる。
【0028】
この変速操作装置41は、図1及び図2に示すように、運転者が変速操作するときに操作するシフトレバー42と、このシフトレバー42を変速段ごとにガイドする、所謂、シフトゲージ43とを有している。ここで、シフトゲージ43は、ガイド溝43aを有すると共に、エンジン走行モードを実現するための第1速から第4速までの操作位置「1」〜「4」及び後退の操作位置「R」と、EV走行モードを実現するための操作位置「EV」とを有している。この場合、各操作位置「1」〜「4」、「R」、「EV」以外の位置がニュートラル位置「N」となっている。
【0029】
本実施形態のハイブリッド車両においては、その走行モードとして、エンジン走行モード、EV走行モード、ハイブリッド走行モードが少なくとも用意されている。そして、運転者が変速操作装置41を操作し、シフトレバー42を操作位置「1」〜「4」、「R」のいずれかに移動したときに、エンジン走行モードまたはハイブリッド走行モードが選択され、操作位置「EV」に移動したときに、EV走行モードが選択される。
【0030】
図1に戻り、クラッチ12は、エンジン11と多段変速機13との間に介装され、このエンジン11の出力軸21と多段変速機13の入力軸36との間で、動力を伝達可能な接続状態と、動力の伝達を遮断可能な切断状態とに切替可能となっている。このクラッチ12は、乾式または湿式の単板クラッチ、多板クラッチであって、円板状の摩擦板を有し、この摩擦板の摩擦力によりエンジン11のエンジン出力トルクを出力軸21から多段変速機13の入力軸36に伝達することができる。クラッチ12は、運転者によるクラッチペダル45の踏込み操作により、その作動状態の切替動作(接続状態と切断状態の切替動作)を行うことができる。
【0031】
最終減速装置15は、多段変速機13の出力軸37から入力された入力トルクを減速して、左右の駆動輪16に分配するものである。この最終減速装置15は、出力軸37の端部に固定されたピニオンギア51と、このピニオンギア51に噛み合って回転トルクを減速させながら回転方向を直交方向へと変換するリングギア52と、このリングギア52を介して入力された回転トルクを左右の駆動輪16に分配する差動機構53とを有している。
【0032】
更に、このハイブリッド車両は、車両全体の動作を統括的に制御する電子制御装置(以下、ハイブリッドECUと称する。)100が設けられている。このハイブリッドECU100は、CPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されており、エンジンECU101、モータECU102、バッテリECU103との間で各種センサの検出信号や制御指令等の情報の授受ができる。
【0033】
そして、ハイブリッドECU100は、運転者が変速操作装置41を操作した操作結果に基づいてエンジン走行モード、EV走行モード、ハイブリッド走行モードのいずれかを実現可能としている。変速操作装置41は、図2に示すように、シフトゲージ43に、シフトレバー42がEV走行モードにおける操作位置「EV」に位置しているのか否かを検出するEV走行モード選択位置検出部62が設けられている。このEV走行モード選択位置検出部62は、検出信号をハイブリッドECU100に送信可能となっている。
【0034】
また、この変速操作装置41は、シフトゲージ43に、シフトレバー42がエンジン走行モード(ハイブリッド走行モード)における前進操作位置「1」〜「4」、または、後退操作位置「R」にあるのか否か、つまり、運転者がどの変速段を選択したのか否かを検出する変速位置検出部63が設けられている。この変速位置検出部63は、検出信号をハイブリッドECU100に送信可能となっている。
【0035】
シフトレバー42が前進操作位置「1」〜「4」または後退操作位置「R」に操作されている場合、ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードまたはハイブリッド走行モードのうちのいずれか一方を選択する。例えば、このハイブリッドECU100は、設定した運転者の駆動要求(必要駆動力)、バッテリECU103から送られてきたバッテリ27の充電状態量、車両走行状態の情報(車両横加速度、駆動輪16のスリップ状態等の情報)に基づいて、エンジン走行モードとハイブリッド走行モードの切り替えを行う。
【0036】
ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードを選択した場合、エンジントルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101、モータECU102に制御指令を送る。この場合に、エンジンECU101への制御指令として、例えば、現状の変速段または変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクの情報が送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン11の燃料噴射量等の制御を行う。一方、モータECU102は、モータジェネレータ14がモータとしてもジェネレータとしても動作させないよう制御指令を送る。
【0037】
これに対して、このハイブリッドECU100は、ハイブリッド走行モードを選択した場合、エンジントルクとモータまたはジェネレータとしての出力で要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータECU102に制御指令を送る。この場合、エンジントルクとモータ力行トルクの双方を用いるときには、エンジンECU101とモータECU102への制御指令として、例えば、現状の変速段または変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクとモータ力行トルクの情報が夫々に送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン11の制御を行い、モータECU102は、そのモータ力行トルクを発生させるようにモータジェネレータ14への給電量を制御する。また、モータジェネレータ14で電力の回生を行わせるときには、モータECU102に対してモータジェネレータ14をジェネレータとして動作させるよう制御指令を送る。その際、例えば、エンジンECU101には、モータ回生トルクの分だけ増加させたエンジントルクの情報が送られる。
【0038】
また、シフトレバー42が操作位置「EV」に操作されている場合、ハイブリッドECU100は、モータ力行トルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータECU102に制御指令を送る。この場合には、モータECU102への制御指令として、その要求駆動力を満足させるモータ力行トルクの情報が送信される。多段変速機13がニュートラル状態のときにエンジン11が駆動していると、燃費を悪化させてしまうので、ハイブリッドECU100は、エンジンECU101に、燃費を向上させるようにエンジン11の動作を停止させる制御指令を送る。更に、このEV走行モードにおいては、運転者がアクセルペダルから足を離したとき、または、ブレーキ操作などでハイブリッド車両の減速要求を行ったときに、モータECU102に対して回生制動できるよう制御指令を送らせてもよい。
【0039】
本実施形態では、変速操作装置41は、シフトレバー42を、EV走行モードにおける操作位置「EV」に操作可能であると共に、エンジン走行モード(ハイブリッド走行モード)における前進操作位置「1」〜「4」、後退操作位置「R」に操作可能であることから、車両の走行モードをEV走行モードとエンジン走行モード(ハイブリッド走行モード)との間で切替可能な走行モード切替手段として機能し、また、シフトレバー42は、走行モード選択手段として機能する。
【0040】
このように構成された本実施形態の車両の駆動力制御装置は、アクセル開度(アクセル操作量)に基づいてモータジェネレータ14が駆動力を出力する力行区間とモータジェネレータ14を回生制動させる回生区間とモータジェネレータ14が駆動力を出力せずに回生制動もしない惰性走行区間とに切替可能なモータ制御手段と、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出する切替意図検出手段と、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更する区間領域変更手段とを設けている。
【0041】
また、この区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度が予め設定された頻度より大きいときには、惰性走行区間の領域を拡張するようにしている。
【0042】
この場合、区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間への移行が完了するまでの間に、力行区間または回生区間へ少なくとも1度移行した場合を1回としてカウントし、このカウント数に基づいて惰性走行区間の領域を変更する。また、区間領域変更手段は、惰性走行区間の領域の変更が完了したら、カウント数をリセットする。
【0043】
ここで、モータ制御手段は、モータECU102が機能し、切替意図検出手段、区間領域変更手段は、ハイブリッドECU100が機能する。
【0044】
ここで、モータECU102によるモータジェネレータ14の制御領域について説明する。モータ制御手段としてのモータECU102は、アクセル開度センサ(アクセル操作量検出手段)64が検出するアクセル開度(アクセル操作量)に基づいてモータジェネレータ14が駆動力を出力する力行区間とモータジェネレータ14を回生制動させる回生区間とモータジェネレータ14が駆動力を出力せずに回生制動もしない惰性走行区間とに切替可能となっている。
【0045】
即ち、図3に示すように、アクセル開度θに対するモータジェネレータ14の5つの制御領域が設定されており、アクセル開度0(θ)以上θ未満の領域A、アクセル開度θ以上θ未満の領域B、アクセル開度θ以上θ未満の領域C、アクセル開度θ以上θ未満の領域D、アクセル開度θ以上の領域Eが設定されている。この場合、領域A,Bが回生区間で、領域Cが惰性走行区間で、領域D,Eが力行区間となっている。
【0046】
モータECU102は、アクセル開度センサ64が検出したアクセル開度θに基づいてモータジェネレータ14の制御領域A〜Eを設定する。ここで、アクセル開度が第3所定値θ以上の領域Dであるとき、図3の制御マップに基づいてアクセル開度θの大きさに応じたモータジェネレータ14の駆動力が設定される。このとき、運転者に制動の意思がないものとして、モータジェネレータ14の駆動力は、アクセル開度の大きさに対応して増加する特性に設定される。そして、アクセル開度が第4所定値θ以上の領域Eになると、アクセル開度θに拘わらずモータジェネレータ14の駆動力が一定に設定される。例えば、モータECU102は、バッテリ27の充電状態量に応じたEV走行モードとして駆動力が設定される。
【0047】
アクセル開度が第2所定値θ以上で、且つ、第3所定値θ未満の領域Cにあるとき、モータジェネレータ14の駆動力が0で、且つ、モータジェネレータ14の回生制動力も0となるように設定される。このようにアクセル開度が第2所定値θ以上で、且つ、第3所定値θ未満の領域Cにあるときは、アクセル開度がやや小さく、運転者がほとんど駆動力を必要としておらず、且つ、制動力も必要としていないと考えられ、モータジェネレータ14の駆動力と制動力を0に設定することで、車両を惰性による走行状態とする。
【0048】
アクセル開度が第1所定値θ以上で、且つ、第2所定値θ未満の領域Bにあるとき、図3の制御マップに基づいてアクセル開度θの大きさに応じたモータジェネレータ14の回生制動力が設定される。この場合、アクセル開度の減少に応じてモータジェネレータ14の回生制動力が増加するように設定される。このとき、アクセル開度が小さく、運転者が弱いエンジンブレーキ相当の制動力を必要としているとして、モータジェネレータ14の回生制動力をアクセル開度に応じて設定することで、運転者の意思を反映した回生制動力に設定することができる。この場合、モータジェネレータ14が発電機として機能することで、運動エネルギが電気エネルギとして回収され、バッテリ27に充電される。
【0049】
アクセル開度が第1所定値θ以上で、且つ、第2所定値θ未満の領域Aにあるとき、図3の制御マップに示すように、アクセル開度に関係なく、モータジェネレータ14の回生制動力が最大の大きさの予め設定された一定値(固定値)に設定される。このとき、アクセル開度はかなり小さく、ほとんどアクセルペダルが踏み込まれておらず、運転者は強めのエンジンブレーキ相当の回生制動力を必要としている、そのため、モータジェネレータ14の回生制動力を一定の最大値とし、大きめの回生制動力を設定することで、車両に対して所定の減速力を作用させるようにする。なお、モータジェネレータ14の回転数が低回転となる所定回転数以下のときには、回生制動を行わないことが望ましい。モータジェネレータ14が低回転状態のときは、車両が低速で走行しており、回生制動を行うと必要以上に制動力が働き、乗員に不快感を与えてしまうおそれがある。
【0050】
そして、本実施形態の車両の駆動力制御装置では、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出する切替意図検出手段と、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更する区間領域変更手段とを設けている。そして、区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度が予め設定された頻度より大きいときには、惰性走行区間の領域を拡張するようにしている。
【0051】
具体的に、区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間への移行が完了するまでの間に、力行区間または回生区間へ少なくとも1度移行した場合を1回としてカウントし、このカウント数に基づいて惰性走行区間の領域を変更する。また、区間領域変更手段は、惰性走行区間への移行が完了したら、カウント数をリセットする。
【0052】
なお、切替意図検出手段、区間領域変更手段は、ハイブリッドECU100により機能する。
【0053】
ここで、本実施形態の車両の駆動力制御装置におけるモータの制御領域切替制御の処理を図4のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0054】
本実施形態の車両の駆動力制御装置におけるモータの制御領域切替制御において、図4に示すように、ステップS11にて、ハイブリッドECU100は、モータジェネレータ14の制御領域が領域Cから領域Dへの移行後に減速が頻繁に行われているかどうかを判定する。
【0055】
即ち、運転者によるアクセルペダル操作により、アクセル開度が小さく、弱いエンジンブレーキ相当の制動力を必要としている車両の走行状態から、運転者がほとんど駆動力及び制動力を必要とせずに車両を惰性による走行状態に移行したいとき、運転者は、モータジェネレータ14が制御領域Bにある状態から、アクセルペダルを若干踏込んで車両を加速することで、モータジェネレータ14を制御領域Cへと移行させる。この場合、モータECU102は、アクセルペダル開度に応じて制御領域を変更する。
【0056】
ところが、運転者がアクセルペダルを踏込み過ぎると、モータジェネレータ14の制御領域が、回生区間の制御領域Bから惰性走行区間の制御領域Cを通り過ぎて力行区間の領域Dへ移行してしまう。すると、運転者は、自分が意図するよりも、車両が必要以上に加速してしまったことを感じ、ブレーキペダル操作を行うことで、車両に制動力を作用させる。この場合、モータジェネレータ14を駆動することで無駄な電力を消費してしまうだけでなく、ブレーキ装置を作動することで、無駄なブレーキ負圧が消費してしまい、燃費の悪化を招いてしまう。
【0057】
そこで、ハイブリッドECU100は、アクセル開度に基づいて運転者による回生区間(例えば、制御領域B)から惰性走行区間(制御領域C)への切替意図を検出し、回生区間から惰性走行区間への移行が完了するまでの間に、力行区間(例えば、制御領域D)へ1度移行した場合を切替間違い回数が1回としてカウントする。この場合、ハイブリッドECU100は、運転者がアクセルペダルを踏込んで車両を加速することで、回生区間から惰性走行区間を通り過ぎて力行区間へ移行した後、直ちにブレーキペダルを踏込んで車両を減速させて惰性走行区間へ戻したときに、切替間違いと判定してカウントする。但し、モータジェネレータ14の制御領域が回生区間にあるとき、運転者がアクセルペダルを踏込んで車両を加速することで、回生区間から惰性走行区間を通り過ぎて力行区間へ移行しても、その後にブレーキペダルが踏込まれないときには、切替間違いと判定せずにカウントもしない。なお、ハイブリッドECU100は、アクセル開度センサ64とブレーキストロークセンサ65の検出結果に基づいて運転者による惰性走行区間への切替意図、つまり、運転者による切替間違いを検出する。
【0058】
ステップS11にて、ハイブリッドECU100が、この切替間違い回数をカウントし、切替間違い回数が所定の回数(例えば、5回)を超えたと判定したとき、ステップS12に移行し、惰性走行区間の領域Cを拡張する。具体的に、このステップS12では、惰性走行区間の領域Cが力行区間の領域D側に広がるように、第3所定値θを増加させる。一方、ステップS11にて、ハイブリッドECU100が、切替間違い回数が所定の回数を超えていないと判定したとき、ステップS12を迂回してステップS13に移行する。
【0059】
ステップS13にて、ハイブリッドECU100は、モータジェネレータ14の制御領域が領域Cから領域Bへの移行後に加速が頻繁に行われているかどうかを判定する。
【0060】
即ち、運転者によるアクセルペダル操作により、アクセル開度が大きく、強いモータ駆動力を必要としている車両の走行状態から、運転者がほとんど駆動力及び制動力を必要とせずに車両を惰性による走行状態に移行したいとき、運転者は、モータジェネレータ14が制御領域Dにある状態から、アクセルペダルを若干戻して車両を減速することで、モータジェネレータ14を制御領域Cへと移行させる。この場合、モータECU102は、アクセルペダル開度に応じて制御領域を変更する。
【0061】
ところが、運転者がアクセルペダルを戻し過ぎると、モータジェネレータ14の制御領域が、力行区間の領域Dから惰性走行区間の領域Cを通り過ぎて回生区間の領域Bへ移行してしまう。すると、運転者は、自分が意図するよりも、車両が必要以上に減速してしまったことを感じ、アクセルペダル操作を行うことで、車両を加速させる。この場合、モータジェネレータ14を駆動することで無駄な電力を消費してしまう。
【0062】
そこで、ハイブリッドECU100は、アクセル開度に基づいて運転者による回生区間(例えば、制御領域B)から惰性走行区間(制御領域C)への切替意図を検出し、力行区間から惰性走行区間への移行が完了するまでの間に、回生区間(例えば、制御領域B)へ1度移行した場合を切替間違い回数が1回としてカウントする。この場合、ハイブリッドECU100は、運転者がアクセルペダルを戻して車両を減速することで、力行区間から惰性走行区間を通り過ぎて回生区間へ移行した後、直ちにアクセルペダルを踏込んで車両を加速させて惰性走行区間へ戻したときに、切替間違いと判定してカウントする。但し、モータジェネレータ14の制御領域が力行区間にあるとき、運転者がアクセルペダルを戻して車両を減速することで、力行区間から惰性走行区間を通り過ぎて回生区間へ移行しても、その後にアクセルペダルが踏込まれないときには、切替間違いと判定せずにカウントもしない。なお、ハイブリッドECU100は、アクセル開度センサ64の検出結果に基づいて運転者による惰性走行区間への切替意図、つまり、運転者による切替間違いを検出する。
【0063】
ステップS13にて、ハイブリッドECU100が、この切替間違い回数をカウントし、切替間違い回数が所定の回数(例えば、5回)を超えたと判定したとき、ステップS14に移行し、惰性走行区間の領域Cを拡張する。具体的に、このステップS14では、惰性走行区間の領域Cが回生区間の領域B側に広がるように、第2所定値θを減少させる。一方、ステップS13にて、ハイブリッドECU100が、切替間違い回数が所定の回数を超えていないと判定したとき、ステップS14を迂回してこのルーチンを抜ける。
【0064】
なお、ハイブリッドECU100は、ステップS12,S14にて、惰性走行区間の領域Cの拡張が完了したら、カウント数をリセットする。この場合、車両のキースイッチをOFFにしたらカウント数をリセットするようにしてもよい。
【0065】
このように本実施形態の車両の駆動力制御装置にて、ハイブリッドECU100による切替間違いの判定は、回生区間の制御領域Bから惰性走行区間の制御領域Cへの移行時と、力行区間の制御領域Dから惰性走行区間の制御領域Cへの移行時の両方があり、それぞれ別々にカウントしている。従って、回生区間の制御領域Bから惰性走行区間の制御領域Cへの移行に切替間違い頻度が増加したら、制御領域Cを制御領域D側へ拡張し、力行区間の制御領域Dから惰性走行区間の制御領域Cへの移行時に切替間違い頻度が増加したら、制御領域Cを制御領域B側へ拡張する。そのため、モータジェネレータ14における惰性走行区間(制御領域C)の使用回数が増加し、この惰性走行区間の有効活用を図ることで燃費の向上を可能とすることができる。
【0066】
なお、運転者は、モータジェネレータ14が制御領域Bにある状態から、アクセルペダルを若干踏込んで車両を加速することで、モータジェネレータ14を制御領域Cへと移行させるとき、アクセルペダルを踏込み過ぎて惰性走行区間の領域Cを通り過ぎて力行区間の領域Dへ移行したとき、ブレーキペダル操作を行うことで減速するが、減速しすぎて再び、制御領域Bに移行してしまうことがある。この場合は、ステップS11とステップS13との両方で、切替間違いと判定してカウントすることとなる。ただし、制御領域Bと制御領域Cと制御領域Dとの間にヒステリシスを設定してもよい。
【0067】
このように本実施形態の車両の駆動力制御装置にあっては、エンジン11とモータジェネレータ14との駆動力を駆動輪16に伝達可能なハイブリッド車両にて、ハイブリッドECU100は、エンジン11の駆動力により車両を走行可能なエンジン走行モードとモータジェネレータ14の駆動力により車両を走行可能なEV走行モードとを切替可能であり、モータECU102は、アクセル開度に基づいてモータジェネレータ14が駆動力を出力する力行区間と回生制動させる回生区間と駆動力及び回生制動のない惰性走行区間とに切替可能であり、ハイブリッドECU100は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更するようにしている。
【0068】
従って、力行区間から惰性走行区間を通過して回生区間へ移行した頻度、回生区間から惰性走行区間を通過して力行区間へ移行した頻度に基づいて、この惰性走行区間の領域を変更することで、運転者のアクセル操作に応じて適正な惰性走行区間の領域を設定することができ、運転者によるアクセル操作の負担を軽減してドライバビリティを向上することができると共に車両の燃費の悪化を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の車両の駆動力制御装置では、ハイブリッドECU100は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度が予め設定された頻度より大きいときには、惰性走行区間の領域を拡張している。従って、運転者のアクセル操作に応じて惰性走行区間の領域を拡張することができ、運転者によるアクセル操作の負担を軽減してドライバビリティを向上することができると共に、惰性走行区間の有効利用を可能として車両の燃費を向上することができる。
【0070】
また、本実施形態の車両の駆動力制御装置では、ハイブリッドECU100は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間への移行が完了するまでの間に、力行区間または回生区間へ少なくとも1度移行した場合を1回としてカウントし、このカウント数が所定回数を超えたら惰性走行区間の領域を変更するようにしている。従って、運転者による領域切替間違いを適正に検出して適正な惰性走行区間の領域を設定することができる。
【0071】
また、本実施形態の車両の駆動力制御装置では、ハイブリッドECU100は、惰性走行区間の領域の拡張が完了したら、カウント数をリセットするようにしている。従って、領域切替間違いを適正にカウントして適正な惰性走行区間の領域を設定することができる。
【0072】
また、本実施形態の車両の駆動力制御装置では、回生区間の制御領域Bから惰性走行区間の制御領域Cへの移行に切替間違い頻度が増加したら、制御領域Cを制御領域D側へ拡張し、力行区間の制御領域Dから惰性走行区間の制御領域Cへの移行時に切替間違い頻度が増加したら、制御領域Cを制御領域B側へ拡張している。従って、モータジェネレータ14における惰性走行区間(制御領域C)の使用回数が増加し、この惰性走行区間の有効活用を図ることで燃費の向上を可能とすることができる。
【0073】
なお、上述した実施形態では、本実施形態のハイブリッド車両を、エンジン11、クラッチ12、手動式の多段変速機13、モータジェネレータ14、最終減速装置15、駆動輪16により構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、エンジン11から駆動輪16への駆動力伝達経路やモータジェネレータ14から駆動輪16への駆動力伝達経路は、これに限るものではない。また、本発明の車両の駆動力制御装置は、ハイブリッド車両に限定されるものではなく、内燃機関を搭載しないで電気モータだけで走行可能な電気自動車に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明に係る車両の駆動力制御装置は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更することで、運転者によるアクセル操作の負担を軽減してドライバビリティの向上を可能とすると共に燃費の悪化を抑制可能とするものであり、いずれの車両の走行を制御する装置にも有用である。
【符号の説明】
【0075】
11 エンジン(内燃機関)
12 クラッチ
13 多段変速機(動力伝達装置)
14 モータジェネレータ(電気モータ)
15 最終減速装置(動力伝達装置)
16 駆動輪
23 インバータ
26 歯車対(動力伝達装置)
27 バッテリ
41 変速操作装置(走行モード切替手段)
42 シフトレバー(走行モード選択手段)
61 SOCセンサ
64 アクセル開度センサ
65 ブレーキストロークセンサ
100 ハイブリッドECU(切替意図検出手段、区間領域変更手段)
101 エンジンECU
102 モータECU(モータ制御手段)
103 バッテリECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
アクセル操作量に基づいて前記電気モータが駆動力を出力する力行区間と前記電気モータを回生制動させる回生区間と前記電気モータが駆動力を出力せずに回生制動もしない惰性走行区間とに切替可能なモータ制御手段と、
運転者による惰性走行区間への切替意図を検出する切替意図検出手段と、
運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度に基づいて惰性走行区間の領域を変更する区間領域変更手段と、
を備えることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
前記区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間を通過して力行区間または回生区間へ移行した頻度が予め設定された頻度より大きいときには、惰性走行区間の領域を拡張することを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
前記区間領域変更手段は、運転者による惰性走行区間への切替意図を検出してから惰性走行区間への移行が完了するまでの間に、力行区間または回生区間へ少なくとも1度移行した場合を1回としてカウントし、このカウント数に基づいて惰性走行区間の領域を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
前記区間領域変更手段は、惰性走行区間の領域の変更が完了したら、カウント数をリセットすることを特徴とする請求項3に記載の車両の駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−90396(P2012−90396A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233766(P2010−233766)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】