説明

車両制御システム

【課題】路面上にある小型の制御対象外目標物体からレベルの大きい受信信号が得られた場合であっても、車両制御システムの誤動作を回避する。
【解決手段】 車両の略水平方向の探索空間にレーダ信号を送信して目標物体による反射信号を受信し、受信信号に基づき前記目標物体の距離を検出するレーダ装置を搭載した車両の制御システムであって、前記探索空間の一部を含む撮影画像から目標物体画像を検出する目標物体画像検出手段と、前記受信信号のレベルが基準レベルを上回り、かつ前記目標物体画像が前記探索空間の下部領域以外の前記撮影画像から検出されたときに、前記検出された距離に基づいて前記車両のアクチュエータの動作を制御する制御信号を出力する制御手段とを有するので、制御対象外目標物体からレベルの大きい受信信号が得られた場合であっても、車両制御システムは誤動作を回避できる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の略水平方向の探索空間にレーダ信号を送受信するレーダ装置を搭載した車両の制御システムに関し、特に、前記レーダ装置における受信信号のレベルに基づいて車両のアクチュエータを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両周囲の他車両や障害物といった目標物体の挙動に応じて自車両の挙動を制御する車両制御システムが知られており、その一例が特許文献1に記載されている。かかる車両制御システムは例えば、先行車両を一定の車間距離で追尾する追従走行制御や、他車両や障害物との衝突が予測されるときに警報や乗員保護装置を作動させる衝突対応制御といった車両制御を行う。
【0003】
上記のような車両制御システムでは、車両周囲にレーダ信号を送受信するレーダ装置が、受信信号に基づいて目標物体の距離や速度といった目標物体情報を検出する。そして、レーダ装置は、目標物体情報とこれを検出したときの受信信号のレベルを、車両制御装置に入力する。
【0004】
車両制御装置は、まず受信信号のレベルが基準レベルを上回るかを判断することにより、目標物体の存在を判断する。これは、レーダ装置の受信信号のうち、路面などの乱反射による反射信号より目標物体からの反射信号の方が相対的にレベルが大きいことによる。そして、目標物体が存在すると判断すると、目標物体情報に基づき、追従走行制御や衝突対応制御といった車両制御に応じた制御信号を、車両のアクチュエータの制御装置に対し出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−60988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車載用レーダ装置は、路面上にあって車両高に満たない小型の目標物体から反射信号を受信する場合がある。かかる目標物体は例えば、路面に放置された空き缶やトラックの積荷から落下した金属片などであり、本来車両制御の対象とはならない(以下、このような目標物体を、制御対象外目標物体という)。
【0007】
ここで、電磁波をレーダ信号として用いる場合に、上記のような金属製の制御対象外目標物体からは、非金属製の目標物体より相対的にレベルが大きい反射信号が得られる。さらに、そのときの反射角度によっては、車両などの目標物体と同等のレベルの反射信号が得られる場合がある。特に、空き缶の底面が凹形状を有しておりその底面がレーダ装置に対向している場合には、底面の凹形状がパラボラ反射鏡として機能し反射信号のレベルを増強させる。
【0008】
すると、車両制御装置が受信信号のレベルに基づき目標物体の存在を判断する際、車両制御の対象とすべき、先行車両や他車両、あるいは障害物といった目標物体(以下、制御対象目標物体という)が存在するものと誤って判断してしまう。そして、制御対象目標物体に対する制御動作と同じ制御動作を制御対象外目標物体に対して実行すると、車両制御上の安全性が低下するおそれがある。
【0009】
そこで、上記に鑑みてなされた本発明の目的は、制御対象外目標物体からレベルの大きい受信信号が得られた場合であっても、誤動作を回避できる車両制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明における車両制御システムは、車両の略水平方向の探索空間にレーダ信号を送信して目標物体による反射信号を受信し、受信信号に基づき前記目標物体の距離を検出するレーダ装置を搭載した車両の車両制御システムであって、前記探索空間の一部を含む撮影画像から目標物体画像を検出する目標物体画像検出手段と、前記受信信号のレベルが基準レベルを上回り、かつ前記目標物体画像が前記探索空間の下部領域以外の前記撮影画像から検出されたときに、前記検出された距離に基づいて前記車両のアクチュエータの動作を制御する制御信号を出力する制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御対象外目標物体からレベルの大きい受信信号が得られた場合であっても、車両制御システムは誤動作を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における車両制御システムの構成例について説明する図である。
【図2】レーダ装置10による探索空間と画像センサ20の撮影範囲の関係を説明する図である。
【図3】車両制御システムの基本的な動作手順を説明するフローチャート図である。
【図4】車両前方の路面の傾斜を検出する方法について説明する図である。
【図5】変形例における車両制御システムの構成例を示す。
【図6】変形例における画像センサ20の動作について説明する図である。
【図7】変形例における車両制御装置30の動作手順を説明するフローチャート図である。
【図8】別の変形例における車両制御システムの構成例を説明する図である。
【図9】上記別の変形例における車両制御装置30の動作手順を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0014】
図1は、本実施形態における車両制御システムの構成例について説明する図である。この車両制御システムは、搭載される自車両周囲の目標物体の挙動に応じて、追従走行制御や衝突対応制御といった車両制御を自車両に対し行うシステムである。この車両制御システムは、車両周囲の探索空間における目標物体の少なくとも距離を含む目標物体情報を検出するレーダ装置10と、レーダ装置10による探索空間の一部を撮影し、撮影画像から目標物体画像を検出する画像センサ20と、目標物体画像が検出されたときに目標物体情報に基づいて車両のアクチュエータを制御するための制御信号を出力する車両制御装置30とを有する。
【0015】
なお、ここで説明する車両制御システムは、車両の前方における目標物体の挙動に応じて自車両の車両制御を行う、前方監視用システムである。しかしながら、本実施形態は前方監視用システムに限定されるものではなく、車両の後方や側方用の監視システムにも適用可能である。
【0016】
レーダ装置10は、一例としてFM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式のレーダ装置であり、時間に対し周波数が直線的に上昇及び下降するように周波数変調したミリ波長の電磁波をレーダ信号として送受信し、送受信信号の周波数差を有するビート信号を生成するレーダ送受信機12と、デジタルデータ化されたビート信号を処理するマイクロコンピュータにより構成される信号処理部14とを有する。信号処理部14は、ビート信号の周波数を解析して、目標物体の距離、速度を検出する。そして、検出した目標物体の距離、速度を含む目標物体情報とこれを検出したときの受信信号のレベルを、車両制御装置30に入力する。
【0017】
画像センサ20は、一例として単眼式の画像センサであり、単一のデジタルスチルカメラ22と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのプロセッサで構成されデジタルスチルカメラ22の撮影画像データを処理する画像処理部24とを有する。画像処理部24は、デジタルスチルカメラ22による撮影画像を形成する画素の濃度階調を二値化し、被写体画像、つまり目標物体画像の輪郭を検出する。そして、目標物体画像の大きさ(例えば輪郭内の画素数)が基準値以上のときに、目標物体画像として検出する。なおこのときの基準値は、デジタルスチルカメラの解像度に応じて目標物体画像として検出可能な画素数が予め任意に定められる。そして、目標物体画像の有無を、車両制御装置30に入力する。さらに好ましくは、目標物体画像の大きさを示す画素数を、車両制御装置30に入力する。
【0018】
車両制御装置30は、例えばマイクロコンピュータにより構成される。車両制御装置30は、レーダ装置10から入力される受信信号のレベルが基準レベル以上であり、画像センサ20から目標物体画像が検出されたことを示す入力があったときには、レーダ装置10から入力される目標物体情報に基づき、追従走行制御や衝突対応制御といった車両制御の種類に応じて車両の各種アクチュエータを制御する制御信号を出力する。
【0019】
ここで、受信信号のレベルに対する基準レベルは、他車両や障害物などある程度の反射断面積を有し車両制御の対象となる目標物体、つまり制御対象目標物体からの受信信号であるとみなされるレベルであって、予め任意に設定される。また、車両制御装置30が例えば追従走行制御を行う場合には、先行車両の速度と距離に基づき所定の車間距離で追尾するための自車両の走行速度を算出し、算出した走行速度になるようにスロットル制御装置やブレーキ制御装置に対する制御信号を出力する。また、衝突対応制御を行うときには、対向車両や障害物の速度と距離に基づいて衝突までの時間を予測し、アラームなどの警報装置、エアバッグなどの乗員保護装置に対しこれらを動作させる制御信号を出力する。
【0020】
さらに好ましい態様では、車両制御装置30は、受信信号のレベルと距離との組合せから推定される目標物体画像の大きさ(画素数)を、受信信号のレベルと距離との組合せに対応づけたマップデータとして予め車両制御装置30の内蔵ROMに格納しておき、レーダ装置10から取得した受信信号のレベルと距離との組合せと、画像センサ20から取得した目標物体画像の大きさが、予め格納した対応関係を有するかを確認する。これは次の理由による。
【0021】
すなわち、レーダ装置10による受信信号のレベルは、目標物体の反射断面積と概ね正の相関関係を有するので、受信信号のレベルから目標物体の大きさがある程度推定できる。すると、その目標物体の距離と推定された大きさからさらに、撮影画像における目標物体画像の大きさが推定できる。このことから、受信信号のレベルと目標物体の距離の組合せと、目標物体画像の大きさとが予め設定した対応関係を有する場合には、先行車両や他車両、あるいは障害物といった制御対象目標物体が存在する確度が高くなるので、より精度よく車両制御を実行できる。
【0022】
図2は、レーダ装置10による探索空間と画像センサ20の撮影範囲の関係を説明する図である。ここでは、車両の前方路面が水平路面である場合を示す。まず図2(A)に示すように、レーダ装置10は、車両1前部のフロントグリル内やバンパー内に搭載される。そして、車両1前方の略水平方向(例えば、水平方向から下方に2〜3度程度の範囲)Fに向け、レーダ信号RSを送信する。ここでは、レーダ装置10が平面アンテナを備える場合のアンテナパターンに基づき、上下方向にある程度の広がりを有する探索空間Sa1を示す。かかる探索空間Sa1にレーダ信号RSを送信することにより、レーダ装置10は、前方の制御対象目標物体から最大レベルの反射信号を受信でき、受信信号のS/N比を良好に保った状態で信号処理を行うことができる。
【0023】
ところで、上記のような探索空間内Sa1にレーダ信号RSを送信することにより、前方の比較的近距離D(例えば10〜20メートル程度)の路面に車両高より低い小型(例えば十数センチ程度の地上高)の目標物体、つまり制御対象外目標物体Obがある場合には、レーダ装置10は制御対象外目標物体Obからの反射信号も受信する。ここで、制御対象外目標物体Obからの受信信号のレベルが基準レベルを上回る場合に、制御対象外目標物体Obに対する車両制御を誤って行うことを回避するために、本実施形態では画像センサ20の撮影範囲を次のように設定する。
【0024】
画像センサ20は、図示するように、車両1の車室内におけるフロントグラス上部付近に搭載される。そして、車両1前方におけるレーダ装置10の探索空間Sa1の下部領域U1を除く領域Sa2をデジタルスチルカメラ22が撮影するように、デジタルスチルカメラ22の視野FV1が視野FV2に調節される。
【0025】
具体的には、デジタルスチルカメラ22が搭載される地上高をH、デジタルスチルカメラ22の俯角をθ1として、制御対象外目標物体Obの地上高h、制御対象外目標物体Obまでの距離Dから次の式(1)により、デジタルスチルカメラ22が探索空間Sa1における領域Sa2を撮影するための視野FV2に対応する俯角θ2が算出される。そして、かかる俯角θ2となるようにデジタルスチルカメラ22の視野FV1を遮蔽部材により遮蔽し、視野FV2にする。
【0026】
θ2=arctan[(H-h)/ D] ・・・式(1)
あるいは、画像センサ20は、デジタルスチルカメラ22により視野FV1の状態で探索空間Sa1を撮影し、画像処理部24により撮影画像を処理する際に、探索空間Sa1の下部領域U1を除く領域、つまり視野FV2に対応する領域から目標物体画像を検出することもできる。
【0027】
ここで、デジタルスチルカメラ22が視野FV1の状態で撮影した探索空間S1を含む撮影画像を模式的に図2(B)に示すと、例えば640画素×480画素の撮影画像において、下部領域U1に対応する画素数Yは、次式により求められる。ただしここでは、視野FV1に対応する俯角をθ1、1画素の大きさをP、デジタルスチルカメラ22の焦点距離をfとする。
【0028】
Y=(θ1-θ2) /arctan(P/f) ・・・式(2)
よって、画像処理部24は、上記の式(2)により算出した画素数Yに対応する撮影画像の下部領域以外を対象として、目標物体画像を検出する処理を実行する。そうすることにより、探索空間Sa1における領域Sa2から目標物体画像を検出できる。
【0029】
図1、図2のように構成される車両制御システムでは、画像センサ20が探索空間の下部領域U1(以下、検出対象外領域という)以外の領域Sa2(以下、検出対象領域という)の撮影画像から目標物体画像を検出するので、検出される目標物体画像には制御対象外目標物体Obの画像は含まれない。そして、車両制御装置30は、受信信号のレベルが基準レベルを上回り、かつ前記目標物体画像が検出されたときに、検出された距離に基づいて前記車両のアクチュエータの動作を制御する制御信号を出力するので、制御対象外目標物体Obに対する車両制御が誤って行われることがない。
【0030】
なお、かかる構成において、画像センサ20が「目標物体画像検出手段」に対応し、車両制御装置30が「制御手段」に対応する。
【0031】
また、画像センサ20は、撮影画像内の目標物体画像を検出するが、撮影画像に基づき目標物体の距離や大きさを検出するための構成(例えば複眼式カメラ)や処理性能を必要としない。よって、単眼式で安価な構成とすることができ、コスト増を回避できる。
【0032】
図3は、車両制御システムの基本的な動作手順を説明するフローチャート図である。レーダ装置10は、探索空間にてレーダ信号を送受信し(S2)、送受信信号から生成されるビート信号を処理して目標物体の速度、距離を含む目標物体情報を検出する(S4)。そして、目標物体情報と受信信号のレベルを車両制御装置30に出力する(S5)。
【0033】
一方、画像センサ20は、探索空間Sa1の一部を含む画像を撮影し(S6)、撮影画像データを処理して、検出対象領域から目標物体画像とその大きさを検出する(S8)。そして、検出結果を車両制御装置30に出力する(S10)。
【0034】
車両制御装置30は、受信信号のレベルが基準レベルを上回り、かつ目標物体画像が検出された場合には(S12のYES)、手順S14に進む。手順S14は、上述した好ましい態様に対応する手順であり、受信信号のレベルと目標物体の距離の組合せと、目標物体画像の大きさが所定の対応関係を有するかを確認する。そして、結果がYESの場合には、車両制御の目的に応じた制御信号を出力する(S16)。
【0035】
このように、本実施形態における車両制御システムによれば、制御対象外目標物体からレベルの大きい受信信号が得られた場合であっても、かかる制御対象外目標物体に対する車両制御は実行されないので、誤動作を回避できる。また、手順S14において、レーダ装置10から取得した受信信号のレベルと距離との組合せと目標物体画像の大きさが、予め格納した対応関係を有するかを確認する際にも、制御対象外目標物体に対する処理を省略できるので、車両制御システム全体としての処理負荷を軽減することが可能となる。
【0036】
上述では、車両1前方の路面が水平路面である場合について説明した。次に、車両1前方の路面が車両1に対し傾斜しているときの変形例について説明する。以下では説明の便宜上、水平面を0度としたときの水平面に対する角度を路面の傾斜として、傾斜が0のときは水平路面、傾斜が0より大きい場合には上り傾斜、そして、傾斜が0より小さい場合には下り傾斜を示す。
【0037】
図4は、車両前方の路面の傾斜を検出する方法について説明する図である。ここでは、画像センサ20が「傾斜検出手段」として、水平面(一点鎖線で図示)に対する前方路面の傾斜α1(実線で図示)と、車両1の現在位置における傾斜α2(点線で図示)とを検出し、両者の差(α1−α2)を前方路面の車両1に対する傾斜α3として検出する。
【0038】
図5は、変形例における車両制御システムの構成例を示す。ここでは、画像センサ20は、地図情報を有するナビゲーションシステム46、または道路環境情報や車車間通信情報を受信可能な通信装置44から、車両1の現在位置を基準とする前方路面の傾斜α1を取得する。あるいは、同じくナビゲーションシステム46や通信装置44から、車両の現在位置と前方所定距離の地点における標高を取得し、両地点の距離と標高差から傾斜α1を検出する。また画像センサ20は、車両1に搭載される、ジャイロセンサ、光学式または機械式の加速度センサなどで構成される傾斜センサ42から、車両1の地軸に対する傾きを取得し、水平面に対する車両1の傾きを検出することで、車両1の現在位置における傾斜α2を検出する。そして、前方路面の傾斜α1と車両1の現在位置の傾斜α2の差α3を算出する。この結果、前方路面の傾斜は、水平路面である場合のほかに、上り/下り傾斜のいずれかとして検出される。
【0039】
図6は、変形例における画像センサ20の動作について説明する図である。図6(A)は前方路面が上り傾斜の場合(つまりα3>0の場合)、図6(B)は下り傾斜の場合(つまりα3<0の場合)を示す。
【0040】
図6(A)に示すように上り傾斜の場合には、図2で示したような視野FV2に、制御対象外目標物体Obが入る蓋然性が大きくなる。よってこの場合、画像センサ20は、画像処理部24が撮影画像から目標物体画像を検出する際に、検出対象外領域U1をU10のように大きくすることにより、図2(A)で示した検出対象領域Sa2を含む視野FV2をFV3のように小さく補正する。なおここで、α3が大きいほど(絶対値が大きいほど)上り傾斜が急峻となるので、視野FV3は小さくなるように補正される。
【0041】
具体的には、図2(B)に示したように、視野FV1の状態で撮影した撮影画像における検出対象外領域U1に対応する画素数Yを算出する際に、前方路面の傾斜α3に対応した補正値を予めマップデータとして画像処理部24内蔵のROMに格納しておくことにより、かかる補正値を読み出して視野FV3に対応するように画素数Yを補正する。あるいは、演算処理により補正値を導出して画素数Yを補正してもよい。あるいは、図2(A)で示したように予め機構的に視野FV2を設定し、視野FV2の状態で撮影した撮影画像を処理するときに、前方路面の傾斜α3に対応する下方領域を処理対象外としてもよい。このようにして、確実に制御対象外目標物体Obの画像を検出することを回避でき、車両制御システムの誤動作を回避できる。
【0042】
一方、図6(B)に示すように、下り傾斜の場合、制御対象外目標物体Obが視野FV2に入る蓋然性は小さくなるが、その反面、制御対象目標物体Ob2が視野FV2から外れる蓋然性が大きくなる。よってこの場合、画像処理部24が撮影画像から目標物体画像を検出する際に、検出対象外領域U1をU12のように小さくすることにより、図2(A)で示した検出対象領域Sa2を含む視野FV2をFV4のように大きく補正する。なおここで、α3が小さいほど(絶対値が大きいほど)下り傾斜が急峻となるので、視野FV4は大きくなるように補正される。
【0043】
具体的には、上記同様に、図2(B)に示したように視野FV1の状態で撮影した撮影画像における検出対象外領域U1に対応する画素数Yを算出する際に、前方路面の傾斜α3に対応した補正値により視野FV4に対応するように画素数Yを補正する。あるいは、図2(A)で示したように予め機構的に視野FV2を設定し、視野FV2の状態で撮影した撮影画像を処理するときに、前方路面の傾斜α3に対応する下方領域を処理対象外としてもよい。そうすることにより、確実に制御対象目標物体Ob2の画像を検出することができ、車両制御システムの正確な動作を担保できる。
【0044】
図7は、変形例における車両制御装置30の動作手順を説明するフローチャート図である。この手順は、図3のフローチャート図における手順S8のサブルーチンに対応する。すなわち、画像センサ20は、前方路面の傾斜α3を検出し(S82)、傾斜α3に対応する検出対象外領域U1に対する補正値を導出する(S84)。そして、検出対象外領域U1を補正することにより視野FV2の大きさを補正し(S86)、補正後の視野FV3またはFV4に対応する撮影画像から目標物体画像を検出する(S88)。
【0045】
このような手順により、車両制御システムは、前方路面が傾斜路である場合に、制御対象外目標物体に対する誤制御を確実に回避するとともに、制御対象目標物体に対する制御を確実に行うことができる。
【0046】
図8は、別の変形例における車両制御システムの構成例を説明する図である。上述の変形例と異なる点について説明すると、この変形例では、車両制御装置30が「制御手段」であるとともに「傾斜検出手段」として、通信装置44、ナビゲーションシステム46から車両1の現在位置を基準とする前方路面の傾斜α1を取得し、また傾斜センサ42から車両1の地軸に対する傾きα2を取得して、前方路面の傾斜α3を算出する。
【0047】
一方、画像センサ20は、図2(A)で示した視野FV1の状態で撮影した撮影画像から目標物体を検出し、その撮影画像内における位置座標を車両制御装置30に入力する。
【0048】
そして、車両制御装置30は、図6(A)、(B)に示したように、前方路面の傾斜角α3に対応して検出対象外領域U1を補正して、目標物体画像の位置に基づいて補正後の検出対象領域Sa2を含む撮影画像から検出されたかを判断し、かかる範囲で検出された目標物体画像に基づいて制御信号の出力を行う。
【0049】
図9は、上記別の変形例における車両制御装置30の動作手順を説明するフローチャート図である。この手順は、図3のフローチャート図の変形例である。
【0050】
図3と異なる手順について説明すると、画像センサ20は、手順S8の代わりに撮影画像データを処理して、撮影画像における検出対象領域から目標物体画像とその大きさ、及び位置座標を検出する(S800)。
【0051】
また、車両制御装置30は、手順S12の前に手順S820〜S880を実行する。すなわち、前方路面の傾斜α3を検出し(S820)、検出対象外領域U1に対する傾斜α3に対応する補正値を導出する(S840)。そして、検出対象外領域U1を補正し(S860)、補正された後の検出対象領域Sa2を含む領域から目標物体画像が検出されたかを確認する(S880)。そして、検出が確認された目標物体画像に対し手順S12以降を実行する。
【0052】
このような手順によれば、車両制御システムは、確実に制御対象目標物体Ob2の画像を検出することができ、車両制御システムの正確な動作を担保できる。
【0053】
上述の説明では、レーダ装置10がFM−CW方式のレーダ装置である場合を例として説明したが、レーダ装置10は、パルス・ドップラレーダ方式など他の方式であってもよい。また、電波レーダのほかにレーザレーダであってもよい。また、画像センサ20は、光学式のデジタルスチルカメラを例として示したが、可視光カメラや赤外線カメラであってもよく、画像を撮影する画像撮影装置であればよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御対象外目標物体からレベルの大きい受信信号が得られた場合であっても、車両制御システムは誤動作を回避できる。
【符号の説明】
【0055】
1:車両、10:レーダ装置、20:画像センサ、30:車両制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の略水平方向の探索空間にレーダ信号を送信して目標物体による反射信号を受信し、受信信号に基づき前記目標物体の距離を検出するレーダ装置を搭載した車両の車両制御システムであって、
前記探索空間の一部を含む撮影画像から目標物体画像を検出する目標物体画像検出手段と、
前記受信信号のレベルが基準レベルを上回り、かつ前記目標物体画像が前記探索空間の下部領域以外の前記撮影画像から検出されたときに、前記検出された距離に基づいて前記車両のアクチュエータの動作を制御する制御信号を出力する制御手段とを有する車両制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記探索空間における路面の前記車両に対する傾斜を検出する傾斜検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記傾斜が第1の傾斜のときには前記探索空間における第1の下部領域以外の前記撮影画像から、前記傾斜が前記第1の傾斜より小さい第2の傾斜のときには前記探索空間における前記第1の下部領域より小さい第2の下部領域以外の前記撮影画像から前記目標物体画像が検出されたときに、前記制御信号を出力することを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記目標物体画像検出手段は、前記目標物体画像の大きさをさらに検出し、
前記制御手段はさらに、前記受信信号のレベルと前記検出された距離の組合せと前記目標物体画像の大きさとが所定の対応関係を有するときに、前記制御信号を出力することを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のレーダ装置を有する車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−162975(P2010−162975A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5506(P2009−5506)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】