説明

車両制御装置および車両制御方法

【課題】走行実績のある走行情報を使用して、安全な運転計画を生成することが可能な車両制御装置および車両制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】運転計画生成ECU18は、自車または他車の走行実績のある走行情報(前後Gx、横Gy、および位置情報等を含む)を入力し、走行実績のある前後Gxおよび横Gyに基づいて、運転計画の対象となる道路の路面μを推定し、推定した路面μに基づいてタイヤ発生力を算出し、算出したタイヤ発生力を超えない条件で運転計画を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置および車両制御方法に関し、詳細には、走行軌跡を生成する車両制御装置および車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両の知能化技術、情報化技術の進歩により、車両の運転・走行を支援する車両の制御技術は、従前に比して高度に発展し、車両の運転者の操縦負担は軽減され、車両の安全性が向上されている。例えば、車載レーダ、車車間通信技術等を用いて、自車の進行方向に存在する先行車両や障害物を自動的に発見し、それらを適切に回避し又は適正な車間距離を維持するよう運転者に警告を発し或いは自車の走行・運動を制御する技術や、GPS(Global Positioning System)によるカーナビゲーションシステムを用いることにより、自車両の現在位置の情報や周辺の道路状況に関する情報を取得し、それらの情報と運転者の長期希望(目的地、到着時刻など)とを参照して運転計画(将来の走行軌跡)を生成する技術が提案されている。運転計画の生成や車両挙動の制御には、路面状態を表す路面摩擦係数(以下、摩擦係数を「μ」と略す)を把握する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、制御ユニットは、主に自車両に対するドライバ操作から推定される目標挙動(目標前後力Fx、目標ヨーモーメントMz)を演算し、予め設定したΔt秒後の自車両1の摩擦円利用率μr(Δt)と判定対象とする全立体物に対する接触確率の総計Rt(Δt)と目標挙動の修正量δFvとを含んで最小値を現出する目的関数Lを予め設定し、この目的関数Lを最小とする目標挙動修正量δFvを演算し、目標挙動と目標挙動修正量δFvとを基に制御量を決定し、この制御量により、自動ブレーキ制御を実行させる技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、プレビュー情報に基づいて計画運転を行う場合に、路面μを「1」に固定しており、低μ路での安全性を考慮した制御が別途必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−99166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、走行実績のある走行情報を使用して、安全な運転計画を生成することが可能な車両制御装置および車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、自車または他車の走行実績のある走行情報を入力する走行情報入力手段と、前記走行情報入力手段で入力された走行情報に基づいて、運転計画を生成する運転計画生成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記走行情報は、前後Gx、横Gy、および位置情報を含み、前記運転計画生成手段は、前記前後Gxおよび横Gyに基づいて、対象となる道路の路面摩擦係数(以下、「摩擦係数」をμとする)を推定し、推定した路面μに基づいてタイヤ発生力を算出し、算出したタイヤ発生力を超えない条件で運転計画を生成することが望ましい。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記運転計画生成手段は、(前後Gx+横Gy1/2を路面μと推定することが望ましい。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記運転計画生成手段は、車両とタイヤの非線形度合いに基づく路面μの信頼度を算出し、算出した路面μの信頼度が所定値以下となる路面μを補正することが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記運転計画は、車両速度および操舵角を含むことが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記走行計画生成手段は、評価関数を使用して運転計画を生成することが望ましい。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、自車または他車の走行実績のある走行情報を入力する走行情報入力工程と、前記走行情報入力工程で入力された走行実績のある走行情報に基づいて、運転計画を生成する運転計画生成工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自車または他車の走行実績のある走行情報を入力する走行情報入力手段と、前記走行情報入力手段で入力された走行情報に基づいて、運転計画を生成する運転計画生成手段と、を備えているので、走行実績のある走行情報を使用して、安全な運転計画を生成することが可能な車両制御装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る車両制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、横Gy、前後Gx、および推定路面μの関係を説明するための図である。
【図3】図3は、横Gy、前後Gx、および推定路面μの関係を説明するための図である。
【図4】図4は、図1の運転計画生成ECUの走行情報を収集する動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、運転計画生成ECUが運転計画を生成する動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、本実施の形態2に係る車両制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、路面μの信頼度の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、路面μを補正する方法を説明するための図である。
【図9】図9は、運転計画生成ECUが運転計画を生成する動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明に係る車両制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る車両に搭載される車両制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。実施の形態1に係る車両は、自動運転(自律運転)が可能に構成されている。実施の形態1に係る車両制御装置1は、図1に示すように、カメラ装置11と、レーダ装置12と、自車両走行情報入力部14と、道路情報記憶部15と、カーナビゲーション装置16と、通信部(他車走行情報入力部)17と、運転計画生成ECU18と、車両運動制御ECU19と、EPS(電動パワステ)20と、ECB(電子ブレーキ装置)21と、エンジン装置22とを備えている。
【0018】
カメラ装置11は、カメラと画像処理装置を有しており、走行車線の両側にある左右の白線を検出するものであり、検出した左右の白線の位置(座標)を運転計画生成ECU18に出力する。運転計画生成ECU18は、この左右の白線の位置から車両の中心を通る線(中心線)、この中心線のカーブ半径などを算出する。
【0019】
レーダ装置12は、ミリ波レーダを使用して、自車両と知覚対象物との間の相対距離を検出して、運転計画生成ECU18に出力する。ミリ波レーダは、自車両の前面から進行方向の所定の範囲でミリ波を出射し、自車両の進行方向に存在する知覚対象物TAにより反射したミリ波を受信するものである。そして、ミリ波レーダは、出射から受信までの時間を計測することによって、ミリ波レーダから自車両の知覚対象物TAまでの距離を算出することで実相対距離Drを検出し、運転計画生成ECU18に出力する。なお、距離センサは、ミリ波レーダに限定されるものではなく、例えばレーザや赤外線などを用いたレーダ、CCDカメラなどの撮像装置により自車両CAの進行方向を撮像した画像データに基づいて実相対距離を算出する画像認識装置などであっても良い。
【0020】
自車両走行情報検出部14は、自車両の走行情報として、例えば、車両の前後Gxおよび横Gyを検出するGセンサ、自車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ、右側車輪および左側車輪(前輪および/または後輪)の車輪速を検出する車輪速センサ、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、操舵角を検出する操舵角センサ、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号を受信し、自車両の絶対位置座標である位置情報を検出するGPS受信機などを備えて構成されており、検出した自車両の走行情報を運転計画生成ECU18へ出力する。走行情報には、前後Gx、横Gy、車速、ヨーレート、操舵角、車輪速、位置情報等が含まれる。
【0021】
道路情報記憶部15は、地図データ、道路に係るノード情報およびカーブ情報を道路データとして記憶しており、ノード情報は、例えば道路形状を把握するための座標点のデータであり、カーブ情報は、例えばリンク(つまり、各ノード間を結ぶ線)上に設定されたカーブの開始点および終了点に加えて、カーブの曲率に係る情報(例えば、カーブの曲率や半径Rおよび極性)と、カーブの深さに係る情報(例えば、カーブの通過に要する旋回角θやカーブの長さ等)とから構成されている。
【0022】
ナビゲーション装置16は、GPS受信器から入力した自車両の現在位置情報両の現在位置情報に基づいて、自車両の現在位置および進行方向を検知し、この検知結果に基づき、道路情報記憶部15に格納された道路情報に対してマップマッチングを行い、表示画面上での自車両の現在位置の表示位置を制御すると共に、検出された自車両の現在位置あるいは各種スイッチやキーボード等を介して操作者により入力された適宜の車両位置に対して、表示画面上での地図表示を制御する。
【0023】
通信部17は、他車両の走行情報を受信可能に構成されている。例えば、通信部17は、基地局31を介してサービスセンタ32と通信可能に構成されており、また、車車間通信で他の車両と通信可能に構成されている。サービスセンタ32は、車両の走行情報を収集する。通信部17は、自車両の走行情報を他車両41や基地局31に送信するとともに、他車両41や基地局31から送信された他車両41の走行情報を受信し、受信した走行情報を運転計画生成ECU18へ出力する。
【0024】
運転計画生成ECU18は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、A/D変換器、D/A変換器、およびポート等で構成されており、算出した推定路面μと対応する位置情報とを関連づけて格納する路面μマップ18aを備えている。運転計画生成ECU18は、通信部17で受信した走行実績のある他車両の走行情報や自車両走行情報入力14で検出した走行実績のある自車両の走行情報に基づいて、対象道路の路面μを推定し、推定した路面μに基づいてタイヤ発生力(=路面μ×接地荷重)を算出し、算出したタイヤ発生力を超えないことを条件に運転計画(速度、操舵角を含む)を生成して、車両運転制御ECU19に出力する。
【0025】
車両運動制御ECU19は、EPS(電動パワステ)20、ECB(ブレーキ装置)21、およびエンジン装置22等の車両運動装置が接続されており、これらの車両運動装置のアクチュエータの動作を制御する。車両運動制御ECU19は、計画運転モードの場合には、運転計画生成ECU18から入力される運転計画に基づいて、車両運動装置のアクチュエータを制御する。
【0026】
例えば、エンジン装置22は、電子スロットル装置におけるスロットル弁を開閉すると共に、このスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータを備え、車両運転制御ECU19は、エンジン制御信号に応じてスロットルアクチュエータを作動し、スロットル弁の開度を調整する。また、例えば、ECB(ブレーキ装置)21は、ホイールシリンダへの制御油圧を調整するブレーキアクチュエータを備え、車両運転制御ECU19は、ブレーキ制御信号を出力して、ブレーキアクチュエータを作動させ、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。また、例えば、EPS(電動パワステ)20は、モータによる回転駆動力を、減速機構を介してステアリング機構に操舵トルクとして付与する操舵アクチュエータを備え、車両運転制御ECU19は、操舵制御信号を出力して、操舵アクチュエータを作動させ、モータにより操舵トルクを調整する。
【0027】
つぎに、図2〜図5を参照して、運転計画生成ECU18の運転計画の生成処理について詳細に説明する。車両の運転計画を作成する場合には、路面μが必要である。しかしながら、路面μを確実に推定する方法は存在しておらず、従来は、限界路面μまたは高路面μ(例えば、「1」)を固定として車両制御に使用している。限界路面μに固定する方法では、一般路においては検出頻度が非常に少なく実用的ではない。また、高路面μに固定する方法では、安全上問題がある。
【0028】
そこで、本実施の形態では、運転計画生成ECU18は、自車または他車の実走行において路面で検出した前後Gxおよび横Gy、すなわち、走行実績のある前後Gxおよび横Gyに基づいて、路面μ=(Gx+Gy1/2と推定し、推定した路面μに基づいて、タイヤ発生力を算出し、算出したタイヤ発生力を超えないことを条件として安全な運転計画(速度、操舵角を含む)を生成する。車両運転制御ECU19は、運転計画生成ECU18が生成した運転計画に従って、車両の運行を制御する。
【0029】
運転計画は、位置、速度パターン、加速度パターン、操舵角パターン、ヨー角、ヨーレートなどの車両の走行に必要な多数のパラメータから構成されている。このような運転計画を生成する場合は、道路の所定の区間をブロック単位とし、各ブロックでの走行軌跡を、走行路を分割した区間であるメッシュ単位で生成することにしてもよい。また、運転計画を生成する場合は、評価関数を使用することにしてもよい。
【0030】
図2および図3は、横Gy、前後Gx、および推定路面μの関係を説明するための図である。図3は、図2に示すような道路において、直線部のA〜B区間を加速し、カーブのB〜C区間を定常旋回し、直線のC区間を定常速度で走行し、直線の区間Dを減速走行した場合の横Gxおよび前後Gyの実測値の一例と、実測した横Gxおよび前後Gyに基づいて推定した路面μ=(前後Gx+横Gy1/2の一例を示す図である。ここで、(前後Gx+横Gy1/2は、正確な路面μではなく、路面μの下限を保証しているだけであるが、自律運転の場合は、路面μ=(前後Gx+横Gy1/2を使用することで安全な走行が可能となる。
【0031】
走行実績のある走行情報(前後Gx、横Gy、およびその位置情報等)を収集する方法としては、例えば、他車両(例えば、先行車)41から車車間通信で走行情報を取得する方法、走行する頻度が高い道路等で自車の走行情報を収集する方法、対象となる道路区間について、サービスセンタ32から他車両41の走行情報を収集する方法等がある。
【0032】
図4は、図1の運転計画生成ECU18が走行情報を収集する動作を説明するためのフローチャートである。図4において、まず、運転計画生成ECU18は、対象となる道路の各地点について、自車または他車から走行実績のある走行情報(前後Gx、横Gy、位置情報等)を収集し(ステップS1)、収集した前後Gxおよび横Gyに基づいて、推定路面μ=(Gx+Gy1/2を算出し(ステップS2)、その位置情報と算出した推定路面μとを関連づけて、路面μマップ18aに登録する(ステップS3)。
【0033】
図5は、運転計画生成ECU18の走行軌跡を作成する動作を説明するためのフローチャートである。同図において、運転計画生成ECU18は、計画運転モードであるか否かを判断し(ステップS11)、計画運転モードでない場合には(ステップS11の「No」)、路面μ=1を設定して(ステップS15)、車両運動制御ECU19に出力する。車両運動制御ECU19は、路面μ=1の条件で、EPS(電動パワステ装置)20、ECB(ブレーキ装置)21、およびエンジン装置22等のアクチュエータを制御する(ステップS16)。
【0034】
他方、運転計画生成ECU18は、計画運転モードである場合には(ステップS11の「Yes」)、対象となる道路の各地点について、路面μマップ18aから推定路面μを読み出し、読み出した推定路面μに基づいてタイヤ発生力を算出する(ステップS12)。
【0035】
運転計画生成ECU18は、目標走行経路の道路情報(曲率等の道路形状)を道路情報記憶部15から読み出し、読み出した道路情報とタイヤ発生力に基づいて、各地点の運転計画(速度および操舵角等)を作成して(ステップS13)、車両運動制御ECU19に出力する。すなわち、目標走行経路の各地点の速度および操舵角を、タイヤ発生力を超えないことを条件に算出する。
【0036】
車両運動制御ECU19は、運転計画生成ECU18で生成した運転計画に基づいて、EPS(電動パワステ装置)20、ECB(ブレーキ装置)21、およびエンジン装置22等のアクチュエータを制御する(ステップS14)。
【0037】
なお、上述した方法では、実際の路面μより低い条件で車両を走行させることになるが、他車両または自車両は、実際にその路面μしか使っていないため、実績のある路面μに基づいて運転計画を生成しても問題がない。また、路面μが実際より低く見積もられる場合の問題については、路面μを所定のステップでアップ側に更新させることにしてもよく、そのアップ量についてはその車を支える運転制御システムの能力に応じて決定することができる。
【0038】
以上説明したように、実施の形態1の車両制御装置によれば、運転計画生成ECU18は、自車または他車の走行実績のある走行情報(前後Gx、横Gy、および位置情報等を含む)を入力し、走行実績のある前後Gxおよび横Gyに基づいて、運転計画の対象となる道路の路面μを推定し、推定路面μに基づいてタイヤ発生力を算出し、算出したタイヤ発生力を超えない条件で運転計画を生成することとしたので、自車または他車が実際に経験した路面μを使用することができ、走行実績のある走行情報を使用して、安全な運転計画を生成することが可能となる。付言すると、特に、自律運転を行う場合の安全性確保に有用である。
【0039】
また、推定路面μ=(前後Gx+横Gy1/2としたので、簡単な演算で実績のある路面μを算出することが可能となる。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態2は、車両とタイヤの非線形度合いに基づく路面μの信頼度を算出し、算出した推定路面μの信頼度が低い場合には、推定路面μを修正する構成である。図6は、本実施の形態2に係る車両制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。図6において、図1と同等機能を有する部位には同一符号を付し、共通する部分の説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0041】
図6において、運転計画生成ECU18は、推定した路面μの信頼度を算出するためのμ信頼度マップ18bを備えている。図7は、μ信頼度マップ18bの一例を説明するための図である。同図において、縦軸は推定路面μの信頼度、横軸はヨーレートの実測値γ−規範ヨーレートγ*である。ここで、規範ヨーレートγ*は、実測の車速および操舵角で定まる好適なヨーレートである。ヨーレートの実測値γ−規範ヨーレートγ*は、車両とタイヤの非線形度合い(ヨーレート偏差)を示している。推定路面μの信頼度は、ヨーレートの実測値γ−規範ヨーレートγ*が0〜T1の区間では一定、T1〜T2の区間では、線形的に上昇、T2より大の区間では、一定となる。
【0042】
運転計画生成ECU18は、実測されたヨーレートγ、車速、および操舵角に基づいて、ヨーレートの実測値γ−規範ヨーレートγ*を算出した後、μ信頼度マップ18bを参照して、算出したヨーレートの実測値γ−規範ヨーレートγ*に対応する路面μの信頼度を算出する。
【0043】
図8は、推定路面μを補正する方法を説明するための図である。同図において、横軸は地点、縦軸は、推定路面μおよび推定路面μの信頼度の大きさの一例を示しており、Aは、推定路面μ、Bは推定路面μの信頼度、Cは修正した推定路面μを示している。運転計画生成ECU18は、推定路面μの信頼度が閾値n以下の場合には、推定路面μの信頼度が高くないため、推定路面μの修正を行う。推定路面μの修正は、例えば、推定路面μの信頼度が閾値nより大きい路面μを使用して、推定路面μの信頼度が閾値n以下となる推定路面μをエルミート補間等により補間することができる。
【0044】
図9は、運転計画生成ECU18の運転計画を作成する動作を説明するためのフローチャートである。同図において、図5と同等の処理を行うステップには同一のステップ番号を付し、異なる点についてのみ説明する。
【0045】
図9において、ステップS21では、運転計画生成ECU18は、μ信頼度マップ18bを参照し、実測されたヨーレート、車速、および操舵角に基づいて、推定路面μの信頼度を算出する(ステップS21)。次に、運転計画生成ECU18は、推定路面μの信頼度が閾値n以下であるか否かを判断し(ステップS22)、推定路面μの信頼度が閾値n以下の場合には(ステップS22の「Yes」)、推定路面μを修正する(ステップS23)。このように、推定路面μの信頼度が閾値n以下である場合には、修正された推定路面μが路面μマップ18aに格納される。他方、ステップ22において、推定路面μの信頼度が閾値n以下ではない場合には(ステップS22の「No」)、ステップS3に移行する。
【0046】
以上説明したように、実施の形態2によれば、運転計画生成ECU18は、車両とタイヤの非線形度合いに基づく推定路面μの信頼度を算出し、算出した推定路面μの信頼度が所定値以下となる推定路面μを補正することとしたので、信頼性の高い路面μを算出することが可能となる。
【0047】
なお、上記した実施の形態では、推定した路面μに基づいて運転計画を生成する場合について説明したが、推定路面μに基づいて車両制御を行う構成としてもよい。また、上記した実施の形態では、推定路面μの信頼度を、車両とタイヤの非線形度合い(ヨーレート偏差)の基準から算出することとしたが、車輪のスリップ率の基準から算出することにしてもよい。路面μマップ18aとして、二次元(道路進行方向および道路幅方向)の路面μマップを生成することにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる車両制御装置および車両制御方法は、安全性の高い運転計画を生成する場合に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両制御装置
11 カメラ装置
12 レーダ装置
14 自車両走行情報入力部
15 道路情報記憶部
16 カーナビゲーション装置
17 通信部(他車走行情報入力部)
18 運転計画生成ECU
18a 路面μマップ
18b μ信頼度マップ
19 車両運動制御ECU
20 EPS(電動パワステ)
21 ECB(電子ブレーキ装置)
22 エンジン装置
31 基地局
32 サービスセンタ
41 他車両









【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車または他車の走行実績のある走行情報を入力する走行情報入力手段と、
前記走行情報入力手段で入力された走行情報に基づいて、運転計画を生成する運転計画生成手段と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記走行情報は、前後Gx、横Gy、および位置情報を含み、
前記運転計画生成手段は、前記前後Gxおよび横Gyに基づいて、対象となる道路の路面摩擦係数(以下、「摩擦係数」をμとする)を推定し、推定した路面μに基づいてタイヤ発生力を算出し、算出したタイヤ発生力を超えない条件で運転計画を生成することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記運転計画生成手段は、(前後Gx+横Gy1/2を路面μと推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記運転計画生成手段は、車両とタイヤの非線形度合いに基づく路面μの信頼度を算出し、算出した路面μの信頼度が所定値以下となる路面μを補正することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記運転計画は、車両速度および操舵角を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記走行計画生成手段は、評価関数を使用して運転計画を生成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の車両制御装置。
【請求項7】
自車または他車の走行実績のある走行情報を入力する走行情報入力工程と、
前記走行情報入力工程で入力される走行情報に基づいて、運転計画を生成する運転計画生成工程と、
を含むことを特徴とする車両制御方法。




















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−63106(P2011−63106A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214988(P2009−214988)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】