説明

車両制御装置

【課題】死角から物体が出現した場合であっても適切な走行支援を行うことのできる車両制御装置を提供する。
【解決手段】物体認識部16は、物体の存在の確からしさを示す確信度を演算することによって、物体検出部3によって検出された物体の認識を行う。また、物体認識部16は、検出された物体が死角から出現した物体であると判定した場合、通常時に比して確信度を増加するように演算する。物体認識部16は、確信度が通常時に比して増加するように演算することができるため、死角から急に出現した物体に対しては、物体検出部3での検出から認識するまでの間に要する時間を短くすることができる。認識するまでの時間を短くすることによって、その後の処理を早期に行うことが可能となるため、死角から急に出現した物体に対しても十分な時間を確保して適切な走行支援を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御を行う車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両制御装置として、目標物体の位置を検出する物体検出手段と、物体検出手段で検出された目標物体の位置と過去に検出された目標物体の位置との対応状況に応じて、目標物体の存在度合いの確からしさを表す確信度を演算する確信度演算手段と、物体検出手段の物体検出環境を認識する環境確認手段と、物体検出環境に応じて確信度又は確信度の閾値を補正することができるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両制御装置は、過去に検出された目標物体の位置を考慮することによって、目標物体の存在確率を適正なものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−209410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両制御装置にあっては、過去に検出された物体については適切な処理を行うことができるとしても、新たに検出された物体や死角から急に出現した物体に対しては適切なリスクポテンシャルの演算や走行支援を行うことができない可能性がある。すなわち、自車両周辺の状況によっては新たに検出された物体も誤検出ではない可能性が高いにも関わらず(例えば死角から物体が飛び出す場合など)、周辺の状況が考慮されていないため、物体を認識するまでに時間がかかると共に走行支援を行うまでに時間がかかってしまい、適切な走行支援が行えない場合がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、死角から物体が出現した場合であっても適切な走行支援を行うことが可能となる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両制御装置は、自車両周辺の物体を検出する物体検出手段と、物体検出手段によって検出された物体を認識する物体認識手段と、自車両に対する死角に関する情報を取得する死角情報取得手段と、を備え、物体認識手段は、物体の存在の確からしさを示す確信度を演算することによって当該物体の認識を行い、物体認識手段は、検出された物体が死角から出現した物体であると判定した場合、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して確信度を増加するように演算することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る車両制御装置によれば、物体認識手段は、物体の存在の確からしさを示す確信度を演算することによって、物体検出手段によって検出された物体の認識を行うことができる。また、物体認識手段は、検出された物体が死角から出現した物体であると判定した場合、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して確信度を増加するように演算することができる。物体認識手段は、確信度を増加するように演算することができるため、死角から急に出現した物体に対しては、物体検出手段での検出から認識するまでの間に要する時間を短くすることができる。認識するまでの時間を短くすることによって、その後の処理を早期に行うことが可能となるため、死角から急に出現した物体に対しても十分な時間を確保して適切な走行支援を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る車両制御装置において、死角情報取得手段は、死角領域の開始点を設定し、物体認識手段は、死角開始点から所定範囲内で検出された物体を死角から出現した物体と判定することが好ましい。このように、死角開始点を設定しておき、新たに検出された物体については、死角開始点から所定範囲内に存在するか否かによって死角から出現したものであるかを一律に判定することにより、演算の負荷を低減することができる。
【0009】
また、本発明に係る車両制御装置において、物体認識手段は、物体検出手段によるL字型エッジの検出に基づいた物体を認識し、死角情報取得手段は、L字型エッジの検出に基づいて認識された物体を、死角領域を生成する死角生成障害物として設定することが好ましい。死角領域を生成する障害物となりうる壁や建物については、L字型エッジを検出することができる。L字型エッジの検出に基づいて認識された物体を、死角領域を生成する死角生成障害物として設定することにより、死角を早期に把握することができる。
【0010】
また、本発明に係る車両制御装置において、物体認識手段によって認識された物体に対して自車両の走行支援を行う走行支援手段を更に備え、物体認識手段によって、検出された物体が死角から出現した物体であると判定された場合、走行支援手段は、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して走行支援の開始時期を早めることが好ましい。死角から物体が急出現した場合、走行支援手段が通常時に比して走行支援の開始時期を早めることができる。従って、死角から急に出現した物体に対しては、認識から走行支援開始までに要する時間を短くすることができる。走行支援までの時間を短くすることによって、死角から急に出現した物体に対しても十分な時間を確保して適切な走行支援を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る車両制御装置において、物体認識手段によって認識された物体に対して自車両の走行支援を行う走行支援手段を更に備え、物体認識手段によって、検出された物体が死角から出現した物体であると判定された場合、走行支援手段は、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して走行支援の介入量を高めることが好ましい。死角から物体が急出現した場合、走行支援手段が走行支援の介入量を高めることができる。これによって、死角から急に出現した物体を確実に回避できるような適切な走行支援を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、死角から物体が出現した場合であっても適切な走行支援を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置のブロック構成を示した図である。
【図2】自車両の周辺の状況の一例を示す図である。
【図3】自車両の周辺の状況の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る車両制御装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の実施形態に係る車両制御装置1の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置1のブロック構成を示した図である。図2及び図3は、自車両M1の周辺の状況の一例を示す図である。車両制御装置1は、例えば図2に示すように障害物B1の死角から急出現した障害物B2を認識すると共に当該物体に対する危険度を演算し、当該危険度に基づいて走行支援を行う機能を有している。図1に示すように、車両制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2、物体検出部(物体検出手段)3、道路形状検出部6、走行状況検出部7、表示装置12、音声装置13、支援装置14を備えて構成されている。なお、本発明において、物体の「検出」とは、レーダからの信号が入力されたものの装置として当該物体の存在を認めるには至っていない状態(例えば、レーダの誤検知やノイズが入っている可能性もあるため)であり、物体の「認識」とは、レーダの検出結果に基づいて演算を行うことで検出の確からしさを確認し、装置として当該物体の存在を認めた状態である。
【0016】
物体検出部3は、自車両M1の周辺に存在する物体を検出する機能を有している。物体検出部3が検出することのできる物体は、例えば壁や構造物や停止車両などの死角領域を生成する障害物、及び例えば自車両M1の周辺に存在する歩行者や自転車や二輪車や他車両などである。図2及び図3に示す例では、物体として、死角領域を生成する障害物B1と、死角領域から急出現する障害物B2が記載されている。物体検出部3は、検出した物体の位置情報や大きさなどの情報を取得することができる。物体検出部3は、例えば、ミリ波レーダやレーザレーダによって構成されている。物体検出部3は、検出した物体に関する情報をECU2へ出力する機能を有している。
【0017】
道路形状検出部6は、自車両M1が走行している道路形状を検出する機能を有している。道路形状検出部6は、例えばレーザレーダによって構成されている。道路形状検出部6は、検出した情報をECU2へ出力する機能を有している。走行状況検出部7は、自車両M1の走行状況を検出する機能を有している。走行状況検出部7は、例えば車輪速センサによって構成されて車速を検出し、ヨーレートセンサによって構成されてヨーレートを検出する機能を有している。走行状況検出部7は、検出した走行状況をECU2へ出力する機能を有している。
【0018】
表示装置12は、運転者に対してメッセージや警告などを表示する機能を有している。表示装置12は、車内に設けられた液晶ディスプレイや、メータの表示部、HUDによって構成されている。表示装置12は、ECU2からの制御信号に基づいて表示を行う。音声装置13は、運転者に対してメッセージや警告を音声によって通知する機能を有している。音声装置13は、車内に設けられたスピーカやアラームによって構成されている。音声装置13は、ECU2からの制御信号に基づいて音声を発する。支援装置14は、自車両M1の運転支援を行う機能を有している。支援装置14は、ブレーキやEPSアクチュエータによって構成されており、ECU2からの制御信号に基づいて運転支援を行う機能を有している。
【0019】
ECU2は、車両制御装置1全体の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPUを主体として構成され、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを備えている。ECU2は、物体認識部(物体認識手段)16、死角情報取得部(死角情報取得手段)17、危険度演算部18、走行経路設定部19、走行支援部(走行支援手段)21を備えて構成されている。
【0020】
物体認識部16は、物体検出部3によって検出された物体を認識する機能を有している。物体認識部16は、検出された物体の存在の確からしさを示す確信度を演算することによって当該物体の認識をすることができる。物体認識部16は、演算した確信度が所定の閾値以上となったとき物体を認識することができる。確信度は、物体検出部3によって物体を数十msecの間隔で複数回トラッキングを行うことで演算を行うことができる。例えば、一回のトラッキングにより物体の存在確率を演算し、存在確率に基づいて得られる値を各トラッキングごとに加算させることで確信度を求めることができる。あるいは、トラッキングごとに存在確率を増加させてゆき、当該存在確率に基づいて得られる値を確信度とすることができる。なお、存在確率は、レーダの精度を考慮して、物体の横位置や距離に応じて異なった値を設定することができる。また、物体に対するトラッキングの回数によって確信度を求めてもよく、物体を連続で検出し続けた時間によって確信度を求めてもよい。
【0021】
物体認識部16は、新たに検出された物体が死角から急に出現したものであるか否かの判定を行う機能を有している。更に、物体認識部16は、検出された物体が死角から出現した物体であると判定された場合、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して確信度を増加するように演算する機能を有している。すなわち、検出された物体が死角から出現した物体であると判定された場合の方が、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して確信度が増加し易くなる。以下の説明では、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合の処理を「通常時」の処理であるとして説明する。確信度を増加するように処理を行うことによって、物体の検出から認識までに要する時間を短くすることができる。確信度を増加させる方法として、物体に対する存在確率を上げる方法、物体に対する認識信頼度を上げる方法、新たに物体を検出してから認識とするまでのトラッキング回数を減らす方法、あるいは新たに物体を検出してから認識とするまでの認識判定時間の閾値を下げる方法がある。例えば、存在確率の初期値を増加させておくことができる。また、存在確率がトラッキングごとに増加する場合はその増加率を大きくしておくことができる。また、確信度の演算に用いられる所定の係数の値を大きくすることによって、確信度を増加し易くすることができる。物体に対するトラッキングの回数が所定の閾値を越えたときに当該物体を認識とする場合に、閾値を下げることができる。あるいは、物体を検出し続けた時間が閾値を越えたときに当該物体を認識とする場合に、閾値を下げることができる。更に、確信度が閾値を越えたときに物体の認識とする場合に、通常時に比して閾値を下げることもできる。この場合は、閾値が下がることによって、通常時に比して相対的に確信度を増加するようにしている。
【0022】
死角情報取得部17は、自車両M1に対する死角に関する情報を取得する機能を有している。具体的に、死角情報取得部17は、物体認識部16で認識された物体が死角を生成するものであるかどうかを判定すると共に、当該物体によって生成される死角領域の位置などを演算することができる。本実施形態では、死角情報取得部17は、認識された物体について所定の判定条件を用いることによって、物体が死角を生成するものであるかどうかを判定し、当該物体の位置や形状に基づいて死角領域の開始点を設定することができる。詳細な処理内容については後述する。
【0023】
危険度演算部18は、認識された物体に対する危険度を演算する機能を有している。危険度とは自車両M1と物体との近接度合いを示しており、危険度が高いほど接触の可能性が高くなる。走行経路設定部19は、危険度演算部18の演算結果に基づいて自車両M1が走行する走行経路を設定する機能を有している。走行支援部21は、危険度演算部18によって演算された危険度や走行経路設定部19によって設定された走行経路に基づいて車両の走行支援を行う機能を有している。具体的には、走行支援部21は、支援装置14に制御信号を出力して、物体を回避するように、あるいは設定された走行経路に従って走行するようにブレーキ及びアクセルを制御することができる。また、走行支援部21は、表示装置12あるいは音声装置13に制御信号を出力して、物体を回避するように、あるいは設定された走行経路に従うように運転者にメッセージや警告を発することができる。
【0024】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態に係る車両制御装置1の動作について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る車両制御装置1の障害物認識についての処理内容を示すフローチャートである。本実施形態においては、図3に示す状況における処理内容について説明する。すなわち、自車両M1の前方に壁や建物などの障害物B1により死角領域DAが存在し、自車両M1の前方に新たな障害物B2が出現する状況における処理内容について説明する。この処理は、ECU2において、車両の運転中、所定のタイミングで繰り返し実行される。図4の処理は物体検出部3がレーザレーダで構成されている場合における例である。
【0025】
図4に示すように、ECU2の物体認識部16は、物体検出部3の検出結果に基づいて自車両M1の前方に存在するL字型エッジEを検出する(ステップS10)。次に、物体認識部16は、物体検出部3の検出結果を用いてS10で検出したL字型エッジEについてトラッキングを行う(ステップS12)。物体認識部16は、S12の結果に基づいて障害物B1を認識すると共にその位置及び大きさを取得する(ステップS14)。このとき、死角情報取得部17も死角領域設定のために障害物B1の位置及び大きさに関する情報を取得する。
【0026】
死角情報取得部17は、S14で認識された障害物B1が死角領域を生成するものであるかどうかの判断をするため、当該障害物B1について所定の判定条件を満たすか否かの判定を行う(ステップS16)。S16においては、条件1、条件2、条件3、及び条件4の全てを満たしているときに判定条件を満たしていると判定される。条件1は、障害物B1と自車両M1との距離Dが所定の閾値D0以下となることである(D≦D0)。条件2は、障害物B1の速度Vが所定の閾値V0以下となることである(V≦V0)。条件3は、自車両M1と障害物B1との距離Lが所定の閾値L0以上であって閾値L1以下となることである(L0≦L≦L1)。条件4は、障害物B1よりも後方の領域におけるレーザの反射点の合計個数Cが所定の閾値C0以下となることである(C≦C0)。なお、死角を生成する障害物B1の後方ではレーザは反射しないため、反射点の個数は0となるが、レーザレーダの測定精度に応じて閾値C0に1以上の値を設定することができる。S16において、判定条件を満たさないと判定されると、障害物B1は死角領域を生成するものではないと判断し、図4に示す処理が終了する。
【0027】
一方、S16において判定条件を満たすと判定されると、死角情報取得部17は、障害物B1を死角領域を生成しうる死角生成障害物として設定する(ステップS18)。図3においては、障害物B1の後方に死角領域DAが生成される。次に、死角情報取得部17は、障害物B1による死角領域DAの死角開始点SPを設定する(ステップS20)。死角開始点SPは、L字型エッジEの端部に設定される。また、死角情報取得部17は、死角開始点SPの座標(x0,y0)を取得する。
【0028】
次に、物体認識部16は、物体検出部3によって新たな障害物B2が検出されたか否かの判定を行う(ステップS22)。S22において新たな障害物が検出されないと判定されると、図4に示す処理は終了する。一方、S22において新たな障害物B2が検出されたと判定されると、物体認識部16は、障害物B2が死角領域から急出現したものであるかどうかを判断すべく、障害物B2が急出現領域CA内に存在するか否かを判定する(ステップS24)。急出現領域CAは、死角開始点SPから半径R1内の領域であって、自車両M1側の領域である(図3においてハッチングが施された半円の領域である)。
【0029】
S24において障害物B2が急出現領域CA内に存在しないと判定された場合、物体認識部16は、障害物B2は死角領域DAから急出現したものではないと判断し、障害物B2の存在確率の初期値P0を通常の障害物の認識に用いる値であるP_lowを設定する(ステップS28)。これによって、物体認識部16は、自車両M1の前方に存在する通常の障害物を認識するときと同様の処理で認識を行う。障害物B1に対する検出の確信度は通常時と同じになると共に、障害物B1が検出されてから認識されるまでに要する時間は通常時と同じになる。
【0030】
一方、S24において障害物B2が急出現領域CA内に存在すると判定された場合、物体認識部16は、障害物B2が死角領域DAから急出現したものであると判断し、障害物B2の存在確率の初期値P0をP_lowよりも高いP_highに設定する(ステップS26)。これによって、障害物B2に対する検出の確信度を演算するときにおける障害物B2の存在確率が高くなり、通常時に比して確信度を増加するようにできる。物体認識部16は、確信度が増加し易くなることによって、障害物B2を検出してから認識するまでに要する時間を短くすることができる。S26の処理が終了すると図4に示す処理が終了する。
【0031】
図4に示す処理の後、物体認識部16は、障害物B2について確信度を演算し、確信度が所定の閾値を越えた場合は、障害物B2の存在を認識する。その後、危険度演算部18は認識した障害物B2に対する危険度を演算し、走行経路設定部19は、当該危険度に基づいて最適な走行経路を設定する。更に、走行支援部21は、走行経路設定部19が設定した走行経路を走行するように支援装置14に制御信号を出力して自車両M1の走行支援を行う。あるいは、危険度が一定以上である場合、走行支援部21は、障害物B2との接触を回避するように旋回したり減速や停車するように支援装置14を制御し、表示装置12や音声装置13で警告を行う。
【0032】
以上によって、本実施形態に係る車両制御装置1では、物体認識部16は、物体の存在の確からしさを示す確信度を演算することによって、物体検出部3によって検出された物体の認識を行うことができる。また、物体認識部16は、検出された物体が死角から出現した物体であると判定した場合、通常時に比して確信度を増加するように演算することができる。物体認識部16は、確信度が通常時に比して増加するように演算することができるため、死角から急に出現した物体に対しては、物体検出部3での検出から認識するまでの間に要する時間を短くすることができる。認識するまでの時間を短くすることによって、その後の処理を早期に行うことが可能となるため、死角から急に出現した物体に対しても十分な時間を確保して適切な走行支援を行うことができる。
【0033】
また、本実施形態に係る車両制御装置1において、死角情報取得部17は、死角領域DAの開始点SPを設定し、物体認識部16は、死角開始点SPから所定範囲内で検出された物体を死角から出現した物体と判定することができる。このように、死角開始点SPを設定しておき、新たに検出された物体については、死角開始点SPから所定範囲内に存在するか否かによって死角から出現したものであるかを一律に判定することにより、演算の負荷を低減することができる。
【0034】
また、実施形態に係る車両制御装置1において、物体認識部16は、物体検出部3によるL字型エッジEの検出に基づいた物体を認識し、死角情報取得部17は、L字型エッジEの検出に基づいて認識された物体を、死角領域を生成する死角生成障害物として設定することができる。死角領域DAを生成する障害物となりうる壁や建物については、L字型エッジEを検出することができる。L字型エッジEの検出に基づいて認識された物体を、死角領域DAを生成する死角生成障害物として設定することにより、死角を早期に把握することができる。
【0035】
本発明に係る車両制御装置は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
例えば、死角から物体が急出現した場合に走行支援の開始時期を早めてもよい。具体的には、物体認識部16によって、物体検出部3で検出された物体が死角から出現した物体であると判定された場合、走行支援部21は、通常時に比して走行支援の開始時期を早めることができる。例えば、危険度演算部18が物体認識部16で認識した物体に対する危険度を演算し、当該危険度が所定の閾値を越えたときに走行支援部21が走行支援を開始しているような場合、物体が死角から急出現したときに閾値を下げることによって走行支援の開始時期を早めることができる。これによって、死角から急に出現した物体に対しては、認識から走行支援開始までに要する時間を短くすることができる。走行支援までの時間を短くすることによって、死角から急に出現した物体に対しても十分な時間を確保して適切な走行支援を行うことができる。
【0037】
また、死角から物体が急出現した場合に、物体認識部16によって、物体検出部3で検出された物体が死角から出現した物体であると判定された場合、走行支援部21は、通常時に比して走行支援の介入量を高めることができる。具体的には、死角から障害物が急出現した場合は、走行支援に係るステアリングやブレーキの強度を増加させたり、運転者に対する警告を強めたりすることができる。これによって、死角から急に出現した物体を確実に回避できるような適切な走行支援を行うことができる。
【0038】
また、物体検出部としてレーダを用いた場合、死角を生成する障害物B1を認識した後に、エッジ属性から障害物B1の奥行きを設定することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…車両制御装置、3…物体検出部(物体検出手段)、16…物体認識部(物体認識手段)、17…死角情報取得部(死角情報取得手段)、21…走行支援部(走行支援手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の物体を検出する物体検出手段と、
前記物体検出手段によって検出された物体を認識する物体認識手段と、
前記自車両に対する死角に関する情報を取得する死角情報取得手段と、を備え、
前記物体認識手段は、物体の存在の確からしさを示す確信度を演算することによって当該物体の認識を行い、
前記物体認識手段は、検出された物体が前記死角から出現した物体であると判定した場合、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して確信度を増加するように演算することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記死角情報取得手段は、死角領域の開始点を設定し、
前記物体認識手段は、死角開始点から所定範囲内で検出された物体を前記死角から出現した物体と判定することを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記物体認識手段は、前記物体検出手段によるL字型エッジの検出に基づいた物体を認識し、
前記死角情報取得手段は、L字型エッジの検出に基づいて認識された物体を、死角領域を生成する死角生成障害物として設定することを特徴とする請求項1または2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記物体認識手段によって認識された物体に対して前記自車両の走行支援を行う走行支援手段を更に備え、
前記物体認識手段によって、検出された物体が前記死角から出現した物体であると判定された場合、前記走行支援手段は、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して走行支援の開始時期を早めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記物体認識手段によって認識された物体に対して前記自車両の走行支援を行う走行支援手段を更に備え、
前記物体認識手段によって、検出された物体が前記死角から出現した物体であると判定された場合、前記走行支援手段は、検出された物体が前記死角から出現した物体ではないと判定した場合に比して走行支援の介入量を高めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−116218(P2011−116218A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274695(P2009−274695)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】