説明

車両用の電源装置

【課題】分割して製作されたケースを簡単かつ容易に、しかも能率よく接着して連結する。ケースの連結部が外れるのを長期間にわたって有効に防止する。
【解決手段】車両用の電源装置は、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bを連結しているプラスチックボックス3を備える。プラスチックボックス3は、第2のボックス3Bの連結凸条11を第1のボックス3Aの連結溝10に入れ、かつ連結溝10と連結凸条11との隙間に接着剤13を充填し、さらに、連結溝10と連結凸条11の隙間に連結具12を挿入している。連結具12は、連結溝10に係止される外側係止突起12Aと、連結凸条11に係止される内側係止突起12Bとを設けている。プラスチックボックス3は、連結具12を介して連結凸条11が連結溝10に連結され、接着剤13で連結凸条11を連結溝10に接着して第1のボックス3Aと第2のボックス3Bを連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されて自動車を走行させるモーターを駆動する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターで走行する電気自動車、あるいはモーターとエンジンの両方で走行するハイブリッドカー等の自動車は、電池をケースに収納している電源装置を搭載する。この電源装置は、モーターで自動車を走行させるので出力を大きくするために、多数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしている。たとえば、自動車に搭載される電装用のバッテリの電圧は、ほとんど例外なく12Vであるが、走行用のモーターを駆動する電源装置の出力電圧は、一般的には200V以上と極めて高電圧である。
【0003】
現在市販されているハイブリッドカーは、モーター出力を数十kW、電源装置の出力電圧を200〜300Vの範囲としている。電源装置は、このような大出力に耐えるように設計されるので、万一、自動車の衝突事故等で破損して内部でショートすると、極めて大きな電流が流れて車両火災等の原因となる。このような弊害を防止するために、クラッシュするときに破壊される状態をコントロールする電源装置は開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−45392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この公報に記載される電源装置は、ケースを前方の電池収納部と後方の衝撃吸収部に分割している。後ろから追突されるときには、衝撃吸収部を前方の電池収納部の下に押し込む状態として、衝撃を吸収しながらクラッシュする構造とする。すなわち、衝撃吸収部を電池収納部の下に押し込んで、電池収納部を水平な姿勢から垂直方向に傾動させて、安全性を確保しながらクラッシュさせる。
【0005】
以上のように、電源装置は、複数に分割してクラッシュさせる構造で、衝撃を吸収しながら安全性を向上できる。ただ、このことを実現するには、クラッシュのときに確実に分割されるように、ケースを複数に分割して製作する必要がある。複数に分割されたケースは、接着して連結され、クラッシュのときに分離する構造が要求される。しかしながら、複数に分割されたケースは、接着に時間がかかって能率よく多量生産できない欠点がある。それは、接着剤が硬化するまで、連結部を所定の姿勢に保持する必要があるからである。また、接着して連結しているケースは、接着剤の経時的な劣化で外れやすくなる欠点もある。とくに、車両用の電源装置は、振動を受ける状態で使用されるので、接着剤が劣化すると外れやすくなる欠点がある。また、接着剤で防水構造に連結する構造にあっては、連結剤が劣化して防水性が低下して、ケース内に水が浸入する等の弊害も発生する。
【0006】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、分割して製作されたケースを極めて簡単かつ容易に、しかも能率よく接着して連結でき、さらにケースの連結部が外れるのを長期間にわたって有効に防止できる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用の電源装置は、電池を収納しているケース1が、分割して成形されたプラスチック製の第1のボックス3Aと第2のボックス3Bを備え、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bを互いに連結してプラスチックボックス3としている。第1のボックス3Aは、第2のボックス3Bとの連結部に連結溝10を設けている。第2のボックス3Bは、第1のボックス3Aとの連結部に連結溝10に挿入される連結凸条11を設けている。プラスチックボックス3は、連結凸条11を連結溝10に入れ、かつ連結溝10の内面と連結凸条11の表面との隙間に接着剤13を充填して、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bを連結している。さらに、連結溝10と連結凸条11の隙間には、溝形に成形している連結具12を挿入している。この連結具12は、連結溝10への挿入方向では係止されず、連結溝10からの引き抜き方向では連結溝10の内面に抜けないように係止される外側係止突起12Aを弾性的に外側に突出して設けている。さらに、連結具12は、連結凸条11の挿入方向では係止されず、連結凸条11の引き抜き方向では連結凸条11の外側面に抜けないように係止される内側係止突起12Bを弾性的に内側に突出して設けている。プラスチックボックス3は、連結具12を介して連結凸条11が連結溝10に連結される状態で連結凸条11が連結溝10に挿入され、接着剤13で連結凸条11を連結溝10に接着して第1のボックス3Aと第2のボックス3Bを連結している。
【0008】
本発明の車両用の電源装置は、連結具12がU曲形状の金属板として、金属板の一部を切断、折曲して外側係止突起12Aと内側係止突起12Bを設けることができる。
【0009】
本発明の車両用の電源装置は、連結溝10を下方に開口して、連結凸条11を上方に突出させることができる。
【0010】
本発明の車両用の電源装置は、ケース1を、電池収納部6と、電池収納部6の後方に位置する衝撃吸収部7とで構成して、第1のボックス3Aを電池収納部6に配設して、第2のボックス3Bを衝撃吸収部7に配設することができる。
【0011】
本発明の車両用の電源装置は、電池を収納するホルダーケース5を備え、電池を収納しているホルダーケース5を第1のボックス3Aに固定することができる。さらに、本発明の車両用の電源装置は、衝撃吸収部7の第2のボックス3Bに、電池を冷却する送風機8を配設することができる。
【0012】
さらに、本発明の車両用の電源装置は、ケース1に衝撃が加わると、衝撃吸収部7が電池収納部6の下に移動して重なる方向に相対的に移動するように、ケース1を電池収納部6と衝撃吸収部7に分割することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用の電源装置は、複数に分割して製作されたプラスチック製のケースである第1のボックスと第2のボックスを、簡単かつ容易に、しかも能率よく短時間で確実に接着して連結できる特長がある。それは、本発明の電源装置のケースが、第1のボックスの連結溝に第2のボックスの連結凸条を入れて接着剤と連結具の両方で連結すると共に、連結具には、連結溝の内面に係止される外側係止突起を外側に、連結凸条の表面に係止される内側係止突起を内面に突出して設けているからである。この構造のケースは、第1のボックスの連結溝に接着剤と連結具を入れ、連結溝に第2のボックスの連結凸条を入れて確実に連結できる。連結具は、連結凸条を連結溝に抜けないように連結する。この連結状態で接着剤が硬化して、連結溝と連結凸条を連結する。すなわち、連結具の外側係止突起と内側係止突起が連結溝と連結凸条を連結する状態に保持するので、接着剤が硬化するまで、第1のボックスと第2のボックスを所定の位置に保持する必要がなく、接着剤を充填している連結溝に連結凸条を入れて連結できる。その後、接着剤が硬化すると、第1のボックスと第2のボックスは接着剤と連結具の両方でしっかりと連結される。
【0014】
以上のように、接着剤と連結具の両方で第1のボックスと第2のボックスを連結しているケースは、経時的に接着剤が劣化して接着力が低下しても、連結具が第1のボックスと第2のボックスを連結するので、連結部が外れるのを長期間にわたって有効に防止できる。接着剤が劣化する状態で、連結溝と連結凸条が相対的に動くと、接着剤が剥離して接着力による連結力が失われる。しかながら、本発明の電源装置は、連結溝と連結凸条を連結具で物理的に連結しているので、連結具が連結溝と連結凸条の相対運動を阻止する。このため、接着力が低下しても、接着材が剥離せず、接着力と連結具の両方で第1のボックスと第2のボックスを連結する。このため、年月が経過しても、第1のボックスと第2のボックスの連結部が外れることがなく、ケースの一部が開いて水が浸入するなどの弊害も阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0016】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
図1に示す車両は、フロア30に電源装置を搭載している。車両のフロア30に搭載される電源装置は、たとえば、図1の実線で示すように後部座席の後方に設けている荷台32に、あるいは鎖線で示すように後部座席と前部座席との間のフロア30に搭載される。電源装置は、ケース1の上面を車両のフロアパネル31と同一平面となるように搭載して、ケース1の上面に固定しているカバープレート4を車両のフロアパネル31の一部に使用できる。このケース1は、カバープレート4を、フロアパネル31の耐荷重を実現する金属板とする。カバープレート4が荷台32の積載量に相当する耐荷重を有する電源装置は、カバープレート4の上を、フロアパネル31に匹敵する強度の耐荷重床で補強する必要はない。この電源装置は、フロアパネル31に凹部や開口部を設け、凹部や開口部に電源装置を搭載して、その上面をフロアパネル31に匹敵する耐荷重床にできる。
【0018】
車両のフロア30に搭載される電源装置は、後方から追突されてクラッシュする。このとき、ケース1を複数のブロックに分割して安全性を向上できる。フロア30に搭載される電源装置に限らず、車両に搭載される全ての電源装置はケース1を複数のブロックに分離するようにクラッシュさせて安全性を向上できる。
【0019】
以下、車両のフロア30に搭載されて、クラッシュのときに前後に分割される電源装置の具体例を示す。ただし、本発明の車両用の電源装置は、必ずしも以下に示すように分割する必要はない。車両に搭載される姿勢や位置により、クラッシュのときに最適に分割される状態が異なるからである。
【0020】
図2は、電源装置を車両の前後方向に切断した断面図である。この電源装置の上蓋のカバープレート4を外した斜視図を図3に示し、カバープレート4で閉塞した斜視図を図4に示している。これらの図に示すように、電源装置は、ケース1に、電池と、この電池を冷却する送風機8と、電池の充放電を制御する制御回路(図示せず)を内蔵している。ケース1は、車両のシャーシーやフロアパネルに固定される図5に示す金属製のベースプレート2と、このベースプレート2の上に固定している上方開口の図6に示すプラスチックボックス3と、プラスチックボックス3の上方開口部を閉塞するように固定している図7の金属製のカバープレート4とを備える。
【0021】
図5のプラスチックボックス3は、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bに分割してプラスチックで成形している。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、境界で連結してひとつのプラスチックボックス3としている。
【0022】
さらに、図3の電源装置は、ケース1を、電池収納部6と、この電池収納部6の後方に配設される衝撃吸収部7に分割している。電池収納部6には電池を収納して、衝撃吸収部7には電池を冷却する送風機8を収納している。
【0023】
ケース1は、電池収納部6を衝撃吸収部7よりも車両の前方に位置する姿勢、いいかえると衝撃吸収部7を電池収納部6の後方とする姿勢で車両に搭載される。前方に位置する電池収納部6は、ホルダーケース5を介して複数本の電池モジュール(図示せず)を収納する。複数の電池モジュールはホルダーケース5に収納され、このホルダーケース5が電池収納部6に配設される。ケース1の後方に位置する衝撃吸収部7は、ホルダーケース5の電池モジュールを強制冷却する送風機8を収納する。送風機8は、ホルダーケース5に連結されて、ホルダーケース5に冷却空気を強制送風して電池モジュールを冷却する。
【0024】
さらに電源装置のケース1は、前方の電池収納部6と、後方の衝撃吸収部7に分割するために、ケース1を構成するベースプレート2とプラスチックボックス3とカバープレート4を、電池収納部6と衝撃吸収部7の境界部分で前後に分割して連結している。ケース1を前後に分割するのは、追突事故のときに、電池収納部6の下に衝撃吸収部7を押し込むようにして安全にクラッシュさせるためである。
【0025】
ベースプレート2を前後に分離した斜視図を図5に示す。このベースプレート2は、境界部分より前方の前ベースプレート2Aと後方にある後ベースプレート2Bに分割している。前ベースプレート2Aと後ベースプレート2Bは、境界部分を、衝突の衝撃で破断される切断ピン9で連結している。さらに、前ベースプレート2Aは、後端部に後ろに向かって上り勾配の傾斜面2aを設けており、後ベースプレート2Bは、この傾斜面2aの下面に沿う傾斜面2bを設けている。前ベースプレート2Aと後ベースプレート2Bは、傾斜面2a、2bを積層して切断ピン9で連結している。この構造のベースプレート2は、追突されて切断ピン9が切れると、傾斜面2a、2bで摺動しながら、後ベースプレート2Bが前方に押される。後ベースプレート2Bが前進すると、傾斜面2a、2bが摺動して前ベースプレート2Aの下に滑り込んで、前ベースプレート2Aの後端を押し上げる。このため、前ベースプレート2Aは垂直な方向に傾動して、この下に後ベースプレート2Bが滑り込んで、安全にクラッシュする。
【0026】
プラスチックボックス3を前後に分離した斜視図を図6に示す。このプラスチックボックス3は、境界部分より前方にあって電池収納部6となる第1のボックス3Aと、後方にあって衝撃吸収部7となる第2のボックス3Bに分割して、プラスチックを成形して製作している。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bに分離して別々に成形しているプラスチックボックス3は、衝突の衝撃で前後に分離される。分離された第2のボックス3Bは後ベースプレート2Bと一緒に前方に移動し、第1のボックス3Aは前ベースプレート2Aと一緒に傾動する。
【0027】
第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、境界で連結して、ひとつのプラスチックボックス3として、ベースプレート2の上に固定している。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bの連結部を、図8ないし図10に示す。これ等の図に示すプラスチックボックス3は、第1のボックス3Aの第2のボックス3Bとの連結部に沿って連結溝10を設けている。第2のボックス3Bは、第1のボックス3Aとの連結部に沿って連結溝10に挿入される連結凸条11を設けている。連結溝10は下方に開口され、連結凸条11は上方に突出するように設けている。この構造は、連結溝10に水が浸入することがない。
【0028】
連結溝10に連結凸条11を入れて、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは境界で連結して、ひとつのプラスチックボックス3としている。連結溝10と連結凸条11は、連結溝10の内面と連結凸条11の表面との隙間に充填される接着剤13と連結具12で連結される。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、境界に連続して連結溝10と連結凸条11を設けている。連結溝10と連結凸条11の間に接着剤13を充填して、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bの境界は連続して水密構造で連結して固定される。
【0029】
連結溝10と連結凸条11は、連結具12を入れることができる隙間を設けている。連結具12は、連結溝10と連結凸条11の隙間に入れられる溝形に成形している。この形状の連結具12は、弾性的に変形する鉄等の金属板をプレス加工して製作される。連結具12の斜視図を図11に、係止状態を図10の拡大断面図に示す。この連結具12は、連結溝10に挿入して第1のボックス3Aに固定される外側係止突起12Aを、外側に弾性的に突出して設けている。外側係止突起12Aは、U曲部の近傍で両側に突出して設けている。外側係止突起12Aは、連結溝10への挿入方向では係止されず、連結溝10からの引き抜き方向では、連結溝10の内面に抜けないように食い込んで係止する。したがって、外側係止突起12Aは、先端を尖鋭な形状としている。また、外側係止突起12Aは、挿入方向にのみ連結溝10の内面を摺動して移動できるように、連結溝10への挿入方向と逆方向である抜け方向、図10と図11において下方に向かって次第に突出するように傾斜している。
【0030】
さらに、連結具12は、連結凸条11を挿入して第2のボックス3Bを固定する内側係止突起12Bを内側に弾性的に突出して設けている。内側係止突起12Bは、溝部の開口部の近傍で対向して内側に突出して設けている。内側係止突起12Bは、連結凸条11の挿入方向では連結凸条11に係止されず、連結凸条11の引き抜き方向では、連結凸条11の表面に抜けないように食い込んで係止する。したがって、内側係止突起12Bは、先端を尖鋭な形状とし、挿入方向にのみ連結凸条11の表面を摺動して移動できるように、連結凸条11の挿入方向と逆方向である抜け方向、図10と図11において上方に向かって次第に内側に突出するように傾斜している。
【0031】
第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、以下のように連結されて、ひとつのプラスチックボックス3となる。
(1) 連結溝10に接着剤13を充填する。接着剤13は未硬化のペースト状で連結溝10に充填される。
(2) 接着剤13が未硬化な状態で、連結溝10に連結具12を挿入する。連結具12は外側係止突起12Aを連結溝10の内面に摺動させて、連結溝10に挿入される。境界に沿って設けている長い連結溝10は、所定の間隔で複数の連結具12を挿入する。たとえば、長い連結溝10には、両端部と中間に連結具12を挿入する。連結溝10に入れられた連結具12は、外側係止突起12Aを連結溝10の内面を弾性的に押圧して、抜けないように連結溝10に固定される。
(3) 連結溝10に連結凸条11を入れる。このとき、連結凸条11は溝形の連結具12の内側にも挿入される。連結具12に挿入される連結凸条11は、表面を内側係止突起12Bに摺動させて挿入する。内側に挿入された連結凸条11は、連結具12の内側係止突起12Bに係止されて、抜けないように固定される。
以上の状態で連結凸条11を連結溝10から引き抜く力が作用すると、外側係止突起12Aが連結溝10の内面に、内側係止突起12Bが連結凸条11の表面に食い込んで係止される。このため、接着剤13が未硬化な状態においても、連結凸条11は連結溝10に抜けないように連結される。
(4) 接着剤13が硬化されて、連結凸条11が連結溝10に、接着剤13と連結具12で連結されて、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bはひとつのプラスチックボックス3となる。
【0032】
カバープレート4を前後に分離した斜視図を図7に示す。カバープレート4は、境界部分より前方にあって電池収納部6の上面をカバーする前カバープレート4Aと、後方にあって衝撃吸収部7の上面をカバーする後カバープレート4Bに分割している。前カバープレート4Aと後カバープレート4Bは、耐荷重の優れた金属板で製作される。カバープレート4は、好ましくはアルミニウム合金で製作される。アルミニウム合金のカバープレート4は、軽くて強靭にできる。とくに、焼き入れできるアルミニウム合金が適している。このカバープレート4は、アルミニウム板をプレス成形した後、焼き入れしてさらに強度を向上する。
【0033】
前カバープレート4Aは1枚の金属板で、後カバープレート4Bは複数枚の金属板を積層して固定している積層金属板である。後カバープレート4Bは、積層金属板として前カバープレート4Aよりも曲げ強度を強くしている。曲げ強度の強い後カバープレート4Bは、下面からの支持を少なくして、優れた耐荷重床にできる。このため、後カバープレート4Bでカバーする衝撃吸収部7に設ける支持部を少なくできる。
【0034】
後カバープレート4Bは、2枚アルミニウム合金板を積層して固定している積層金属板である。後カバープレートは、3枚以上の金属板を積層、固定して製作することもできる。積層金属板からなる後カバープレート4Bは、積層した金属板を全面ないし一部で接着し、さらに局部的にスポット溶接して製作される。一部を接着材で接着する積層金属板は、十分な強度とするために、接着面積を全積層面積の50%以上とする。この積層金属板は、金属板の全面あるいは部分的に、金属板を強固に接着できるエポキシ系等の接着材を塗布して重ね、接着材を未硬化とする状態で、両面から溶接の電極で挟着して金属板を互いに接触させる状態でスポット溶接して固定する。この構造は、スポット溶接して固定する状態で、接着材を硬化できるので、接着材の硬化を待つ必要がなく、積層した金属板を能率よく固定できる。この構造の積層金属板からなる後カバープレート4Bは、極めて強靭な構造にできる。とくに、アルミニウム合金を2枚に重ねて製作される積層金属板は、軽くて耐荷重を大きくできる。また、この構造の積層金属板は、厚い金属板をプレス成形しないで、各々の金属板を別々に成形して積層するので、簡単かつ容易に、しかも理想的な形状に能率よくプレス成形して固定できる特徴がある。さらに、この構造の積層金属板は、金属板の間に接着材をサンドイッチする3層構造となる。接着材をエポキシ系の接着剤のように硬化状態で硬くなるものを使用すると、強度のある接着層を両面の金属板でサンドイッチする構造となる。接着層は金属板に比較して比重が小さくて軽い。このため、サンドイッチ構造は、軽くて硬い層の両面を金属板で挟着する構造となる。この構造の積層金属板は、全体を厚くして曲げ強度を大きくしながら軽くできる。曲げ強度に影響の大きい両面を強靭な金属板として、厚くするための中間層を軽い接着層とするからである。
【0035】
ただし、後カバープレートの積層金属板は、積層している金属板を接着し、あるいはスポット溶接し、あるいはまたネジ止して固定し、あるいはこれ等を組み合わせて結合して製作することもできる。
【0036】
電池は、ホルダーケース5に入れてプラスチックボックス3内に配設される。ホルダーケース5は、図12の断面図に示すように、電池を電池モジュール21として水平面内に並べて収納している。図のホルダーケース5は、上下2段に電池モジュール21を並べている。電池モジュール21は、複数の二次電池20を直列接続して直線状に連結している。電池モジュール21は、4〜8本の、たとえば5又は6本の二次電池20を、直列接続して直線状に連結している。ただし、電池モジュールは、1本の二次電池で構成することもできる。電池モジュール21は、円筒型あるいは角型の二次電池20を、金属板の接続体を介して、あるいは接続体を介することなく電池端面を直接に直列接続して直線状に連結している。電池モジュール21の両端には、正極端子と負極端子からなる電極端子を連結している。電極端子は、金属板のバスバー(図示せず)をネジ止して、隣接する電池モジュール21を直列に、あるいは並列に連結する。
【0037】
電池モジュール1の二次電池20は、ニッケル−水素電池である。ただ、電池モジュールの二次電池は、ニッケル−カドミウム電池やリチウムイオン二次電池等を使用することもできる。
【0038】
ホルダーケース5は、電池モジュール21を冷却する空気を供給する送風口(図示せず)を開口している。この送風口は、衝撃吸収部7に配設している送風機8に連結される。送風機8は、ホルダーケース5に冷却空気を強制送風して、電池を冷却する。ホルダーケース5は、ケース1の電池収納部6に固定される。ホルダーケース5の上面には、止ネジ14を介して前ベースプレート2Aを固定している。
【0039】
以上の構造の電源装置は、後ろから追突してクラッシュすると、図13に示すように、電池収納部6と衝撃吸収部7とに分離される。このとき、プラスチックボックス3は、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bの連結部、すなわち、連結溝10に連結凸条11を入れて接着剤13と連結具12で連結している境界で分離される。電池収納部6から分離された衝撃吸収部7は、電池収納部6の下に押し込まれるように移動し、電池収納部6は水平姿勢から垂直方向に傾動する。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、別々に成形して連結している部分で分離される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置を車両に搭載する状態を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置を車両の前後方向に切断した断面図である。
【図3】図2に示す電源装置の分解斜視図である。
【図4】図2に示す電源装置の斜視図である。
【図5】ベースプレートの分解斜視図である。
【図6】プラスチックボックスの分解斜視図である。
【図7】カバープレートの分解斜視図である。
【図8】第1のボックスと第2のボックスの連結部を示す断面図である。
【図9】図8に示す連結部の拡大断面図である。
【図10】連結具の連結構造を示す拡大断面図である。
【図11】連結具の拡大斜視図である。
【図12】ホルダーケースの拡大断面図である。
【図13】図2に示す電源装置が電池収納部と衝撃吸収部とに分離される状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…ケース
2…ベースプレート 2A…前ベースプレート 2a…傾斜面
2B…後ベースプレート 2b…傾斜面
3…プラスチックボックス 3A…第1のボックス
3B…第2のボックス
4…カバープレート 4A…前カバープレート
4B…後カバープレート
5…ホルダーケース
6…電池収納部
7…衝撃吸収部
8…送風機
9…切断ピン
10…連結溝
11…連結凸条
12…連結具 12A…外側係止突起
12B…内側係止突起
13…接着剤
14…止ネジ
20…二次電池
21…電池モジュール
30…フロア
31…フロアパネル
32…荷台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収納しているケース(1)が、分割して成形されたプラスチック製の第1のボックス(3A)と第2のボックス(3B)を備え、第1のボックス(3A)と第2のボックス(3B)を互いに連結してプラスチックボックス(3)としており、
第1のボックス(3A)は、第2のボックス(3B)との連結部に連結溝(10)を設けており、
第2のボックス(3B)は、第1のボックス(3A)との連結部に連結溝(10)に挿入される連結凸条(11)を設けており、
連結凸条(11)を連結溝(10)に入れ、かつ連結溝(10)の内面と連結凸条(11)の表面との隙間に接着剤(13)を充填して、第1のボックス(3A)と第2のボックス(3B)を連結しており、
さらに、連結溝(10)と連結凸条(11)の隙間には、溝形に成形している連結具(12)を挿入しており、
この連結具(12)は、連結溝(10)への挿入方向では係止されず、連結溝(10)からの引き抜き方向では連結溝(10)の内面に抜けないように係止される外側係止突起(12A)を弾性的に外側に突出して設けており、連結凸条(11)の挿入方向では係止されず、連結凸条(11)の引き抜き方向では連結凸条(11)の外側面に抜けないように係止される内側係止突起(12B)を弾性的に内側に突出して設けており、
この連結具(12)を介して連結凸条(11)が連結溝(10)に連結される状態で連結凸条(11)が連結溝(10)に挿入され、接着剤(13)で連結凸条(11)を連結溝(10)に接着して第1のボックス(3A)と第2のボックス(3B)を連結している車両用の電源装置。
【請求項2】
連結具(12)が、U曲形状の金属板で、金属板の一部を切断、折曲して外側係止突起(12A)と内側係止突起(12B)を設けている請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
連結溝(10)が下方に開口し、連結凸条(11)が上方に突出する請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
ケース(1)を、電池収納部(6)と、電池収納部(6)の後方に位置する衝撃吸収部(7)とで構成しており、第1のボックス(3A)を電池収納部(6)に配設して、第2のボックス(3B)を衝撃吸収部(7)に配設している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
電池を収納するホルダーケース(5)を備え、電池を収納しているホルダーケース(5)を第1のボックス(3A)に固定している請求項4に記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
衝撃吸収部(7)の第2のボックス(3B)に、電池を冷却する送風機(8)を配設している請求項4に記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
ケース(1)に衝撃が加わると、衝撃吸収部(7)が電池収納部(6)の下に移動して重なる方向に相対的に移動するように、ケース(1)を電池収納部(6)と衝撃吸収部(7)に分割している請求項4に記載される車両用の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−40645(P2006−40645A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216416(P2004−216416)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】