説明

車両用シート構造

【課題】車床に高床部を設ければ、バッテリーケースの格納スペースは確保できるが、車両のコンパクト化(全長短縮化)が困難となる。
【解決手段】 車床18の上に位置するシートクッションフレーム20の後端にシートバック14を連結し、シートクッションフレーム上にシートクッション12を配置し、シートクッションフレーム内部に格納スペース20aを設けている。また、車床18にも格納スペース18aを設けている。シートクッションフレーム側の格納スペース20a、車床側の格納スペース18aには、たとえば二次電池、液体電池などの電池のバッテリーケース22−1,22−2がそれぞれ格納されて、電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、燃料電池などを内蔵した電気自動車(EV:Electric Vehicle)などに適する車両用のシート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン、軽油などを燃料としてエンジン(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン)を駆動する従来の自動車に加えて、二次電池、燃料電池などの電力によってモータを駆動する電気自動車が知られている。
電気自動車においては、二次電池、燃料電池などの電池を大量に搭載して走行する必要がある。
【0003】
電池を内蔵するバッテリーケースは、車両前方のスペース(従来のエンジンルーム)や、車両後方のトランクルームの下方などに格納されるが、車床に格納するものもある。たとえば、特開2003−182379号公報では、バッテリーケースをシステムボックスに内蔵してシステムボックスを車床の下方に格納して、システムボックスの上方に車室を設定してドライバーシートなどを配置している。
【0004】
大きなバッテリーケースを使用すればするほど大きな電力が得られるため、バッテリーケースの格納スペースを大型化する必要がある。
【0005】
そのため、特開2009−061913号公報では、シートの下方で車床の一部を高床部として高床部の上にシートを配置し、車床の格納スペースに連続した格納スペースを高床部に設けることにより、大きな格納スペースを確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−182379号公報
【特許文献2】特開2009−061913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2009−061913号公報(特許文献2)のように車床に高床部を設ければ大きな格納スペースが得られる。しかしながら、車床に高床部を設けると、その背後のシートの着座者は足を十分に延ばすことが難しく、足元スペースを確保するために、高床部の背後のシートを高床部から離して設ける必要があり、車両のコンパクト化(全長短縮化)が困難となる。
また、高床部にはシートが配置されており、高床部上にスライドレールを設けてシートを前後にスライド可能とすれば、スライドを確保するために高床部が長尺化され、車両のコンパクト化が一層困難となる。
このように、車床に高床部を設ければ、バッテリーケースの格納スペースの確保という観点からは有利になるとはいえ、車両のコンパクト化が困難となる。
【0008】
本発明は、車床に高床部を設けることなく大きな格納スペースを確保可能な車両用シート構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明によれば、車床上に位置するシートクッションフレームの後端にシートバックを連結し、シートクッションフレーム上にシートクッションを配置してシートクッションとし、シートクッションフレーム内部に格納スペースを設けている。
請求項2に係る本発明によれば、車床上にスライドレールを介してスライド可能に位置するシートクッションフレームの後端にシートバックを揺動可能に連結し、シートクッションフレーム上にシートクッションを配置してシートクッションとし、シートクッションフレーム内部に格納スペースを設けている。
請求項3に係る本発明によれば、車床にも格納スペースを設け、車床の格納スペースおよびシートクッションフレームの格納スペースに、電池を内蔵した電気自動車駆動用のバッテリーケースをそれぞれ格納し、それぞれのバッテリーケースの電池を電気的に接続している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明では、シートクッションフレーム上にシートクッションを置いてシートクッションとしており、シートクッション内部が格納スペースとなり、車床の高床部を設けることなく格納スペースが得られる。また、シートクッションフレーム内部がすべて格納スペースとして利用でき、大きな格納スペースが得られる。そのため、格納スペースに二次電池、液体電池などの電池のバッテリーケースを格納すれば、電気自動車に適したシート構造が得られる。
請求項2に係る本発明では、シートクッションフレーム上にシートクッションを置いてシートクッションとしており、シートクッション内部が格納スペースとなり、車床の高床部を設けることなく格納スペースが得られる。また、シートクッションフレーム内部がすべて格納スペースとして利用でき、大きな格納スペースが得られる。そのため、格納スペースに二次電池、液体電池などの電池のバッテリーケースを格納すれば、電気自動車に適したシート構造が得られる。
さらに、スライドレールを設けてシートクッションフレームをスライド可能としても、車両のコンパクト化が阻害されず、シートクッションフレームを前方にスライドさせれば、背後のシートの着座者は、余裕のある足元スペースが得られる。
請求項3に係る本発明では、車床にも格納スペースを設け、車床の格納スペース、シートクッションフレームの格納スペースに、電気的に接続した電池を内蔵した電気自動車駆動用のバッテリーケースを格納しており、電気自動車に適したシート構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用シート構造の概略縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
車床上に位置するシートクッションフレームの後端にシートバックを連結し、シートクッションフレーム上にシートクッションを配置し、シートクッションフレーム内部に格納スペースを設けている。また、車床にも格納スペースを設けている。
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る車両用シート構造の概略縦断面図を示し、図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12、シートバック14を備えて構成され、スライドレール16を介在して車床18上にスライド可能に配置されている。
【0015】
本発明では、シートクッションフレーム20の内部に空所20aを設けて格納スペースとし、シートクッションフレームの上面20bは着座者の尻型形状とされ、シートクッション12は必要最小限の厚さのクッションから形成されてシートクッションフレーム上に置かれ、シートバック14はシートクッションフレームの後端に連結されている。
なお、シートバック14はリクライニングデバイスを介在してシートクッションフレーム20の後端に揺動可能に連結してもよい。また、発泡材などを入れたクッションの代わりに、綿を入れた座布団や、マットなどをシートクッションとしてシートクッションフレーム上に配置してもよい。
【0016】
シートクッションフレームの内部に空所20aを設けて格納スペースとしてため、車床18に高床部を設けることなく必要な格納スペースが得られる。高床部がないため高床部に邪魔されることなく背後のシートの着座者は足を延ばして着座でき、足元の窮屈感が緩和される。そして、シートクッションフレームの内部を格納スペースとしたシートの背後のシートを必要以上に離反させることなく配置できるため、車両のコンパクト化(全長短縮化)が可能となる。
【0017】
また、車床18にスライドレール16を設けてシート10をスライド可能としても、車両のコンパクト化が阻害されず、シートを前方にスライドさせれば、背後のシートの着座者のための余裕のある足元スペースが得られる。
【0018】
シートクッションフレームの上面20bを尻型形状としているため、その上に置くシートクッション12は必要最小限の厚さで足り、削減した厚さ相当分だけ格納スペース20aを高さ方向で大きく確保できる。
また、シートクッション12が薄くてもその下のシートクッションフレームの上面20bが尻型形状であるため、シートクッションが分厚く見え、斬新な意匠性が得られる。
【0019】
シートクッションフレーム内部の格納スペース20aに、二次電池を内蔵した電気自動車駆動用のバッテリーケース22−1を格納すれば、シート10は電気自動車用のシートに適したものとなる。バッテリーケース22−1が格納できるだけでなく、格納スペース20aはいろいろな用途に利用でき、たとえば、その上面に蓋つきの開口を設けて収納ボックスとしてもよい。
【0020】
また、送風ファン、モータなどの空調ユニットを格納スペース20aに格納して、シートクッションフレーム上のシートクッション12に空気を送って着座面の蒸れを防止する構成としてもよい。空調ユニットを格納スペース20aに格納する構成においては、通気性を確保するために、たとえば、シートクッションフレーム上面に多数の空気孔が形成されるとともに、シートクッション12も通気性のよいもの、たとえば通気孔付のシートや、竹、藤を編んだシートとするとよい。シートクッション12だけでなく、シートバック14も通気性のよいものとして、シートバックにも空気を送ることが好ましい。
【0021】
シートクッションケースの格納スペース20aに加えて車床18にも格納スペース18aが設けられており、大きな格納スペースが確保できる。二次電池を内蔵した電気自動車駆動用のバッテリーケース22−2を車床の格納スペース18aに格納でき、バッテリーケース22−1をシートクッションケースの格納スペース20aに、バッテリーケース22−2を車床の格納スペース18aにそれぞれ格納すれば、大容量のバッテリーケースを併せて格納でき、電気自動車に適したシート10が得られる。
【0022】
バッテリーケース22−1,22−2が格納スペース20a、18aにそれぞれ格納される構成では、上下に分離して格納されたバッテリーケース22−1,22−2に内蔵されている二次電池は電気的に接続される。ここで、バッテリーケース22−1を格納したシートクッションフレーム20はシート10のスライドに伴ってスライドするから、バッテリー間の電気的な接続はシートクッションフレームのスライドを許容するものとされる。たとえば、格納スペース20a、18aに格納されたバッテリーケース22−1,22−2の二次電池から延びた可撓性導電線どうしを直接接続してもよい。
【0023】
また、シートクッションフレーム側のバッテリーの可撓性導電線をシートクッションフレームの固定された可動のアッパーレールの電気接点に、車床側のバッテリーの可撓性導電線を車床に固定された(固定の)ロアレールの電気接点にそれぞれ接続し、アッパーレールの可動の電気接点、ロアレールの固定の電気接点間を接続してもよい。たとえば、特開平11−028954号公報号記載の可動側、固定側の電気接点間を接続する構成を利用すれば、可動のシートクッションケース側の格納スペース20a内に格納したバッテリーケース22−1と、固定の車床側の格納スペース18a内に格納したバッテリーケース22−2との間の電気接続が確実に確保できる。
【0024】
二次電池の代わりに液体電池を内蔵したバッテリーケースを格納スペース18a、20aに格納してもよい。
【0025】
上記のように本発明によれば、シートクッションフレーム上にシートクッションを置いてシートクッションとしており、シートクッション内部が格納スペースとなり、車床の高床部を設けることなく格納スペースが得られる。また、シートクッションフレーム内部がすべて格納スペースとして利用でき、大きな格納スペースが得られる。
【0026】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、電気自動車(EV)のためのシート構造に応用できるだけでなく、エンジンとモータとを併用したいわゆるハイブリットカーのシート構造にも応用できる。
【符号の説明】
【0028】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
16 スライドレール
18 車床
18a 格納スペース
20 シートクッションフレーム
20a 格納スペース
20b 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車床上に位置するシートクッションフレームの後端にシートバックを連結し、シートクッションフレーム上にシートクッションを配置してシートクッションとし、シートクッションフレーム内部に格納スペースを設けたことを車両用シート構造。
【請求項2】
車床上にスライドレールを介してスライド可能に位置するシートクッションフレームの後端にシートバックを揺動可能に連結し、シートクッションフレーム上にシートクッションを配置してシートクッションとし、シートクッションフレーム内部に格納スペースを設けたことを車両用シート構造。
【請求項3】
車床にも格納スペースを設け、車床の格納スペースおよびシートクッションフレームの格納スペースに、電池を内蔵した電気自動車駆動用のバッテリーケースをそれぞれ格納し、それぞれのバッテリーケースの電池を電気的に接続した請求項1または2記載の車両用シート構造。

【図1】
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【公開番号】特開2011−25739(P2011−25739A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170920(P2009−170920)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】