説明

車両用バッテリーの保護筐体

【課題】バッテリー収納空間の側方の周縁部を協働して形成する二つの横方向壁面と二つの縦方向壁面とを備えた、自動車のバッテリーのための保護筐体であって、保護筐体が、車両の設置空間内に取り付けられた状態で車両の少なくとも一つの縦骨材と固定されている保護筐体に関する。
【解決手段】クラッシュした際にバッテリーが損傷する危険性を低減するために、横方向壁面と縦方向壁面とが、それぞれ別個の構造部材によって構成されるとともに、周縁部として組み上げられており、設置空間が車両の二つの縦骨材の間に有って、周縁部が両方の縦骨材と固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を有する、自動車のバッテリーのための保護筐体に関する。更に、本発明は、そのような保護筐体を備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により、バッテリー収納空間の側方の周縁部を協働して形成する二つの横方向壁面と二つの縦方向壁面とを備えた、自動車のバッテリーのための保護筐体が周知である。この保護筐体は、車両の設置空間内に取り付けた状態で車両の縦骨材と固定されている。この周知の保護筐体では、設置空間がエンジン室であり、そのエンジン室の中には、車両のエンジンが有る。衝突時にバッテリーが損傷する危険性を低減するために、保護筐体を上に配置するとともに、保護筐体を縦骨材と固定するためのプラットフォームには、保護筐体とその中に配置されたバッテリーを備えたプラットフォームを車両の側方の二つの防護体の方に案内するのに寄与する二つの設置台が設けられている。
【特許文献1】欧州特許第1182093号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に、衝突に対する保護が改善されていることを特徴とする、冒頭に述べた形式の保護筐体に関する改善された実施構成を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明にもとづき、独立請求項に記載の対象物によって解決される。有利な実施構成は、従属請求項に記載の対象物である。
【0005】
本発明は、保護筐体を収納するための設置空間を車両の二つの縦骨材の間に選定して、周縁部を両方の縦骨材と固定するとの全般的な技術思想をベースとする。更に、周縁部を横方向壁面と縦方向壁面とから組み上げ、そのために横方向壁面と縦方向壁面とをそれぞれ別個の構造部材として構成することを提案する。このような構造形態によって、周縁部の剛性を向上させるとともに、設置空間内での安定性を高めた形で固定することが可能な保護筐体を準備することができる。特に、周縁部を二つの縦骨材と連結することによって、クラッシュした際に発生する可能性の有る力の吸収を改善することが可能である。
【0006】
更に、有利な実施構成では、両方の縦骨材と互いに連結された横骨材で保護筐体を更に支持するものと規定することができる。この措置によって、クラッシュした際の力の支持形態を著しく改善することができる。
【0007】
改善構成において、クラッシュした際に発生する力を吸収するための更なる改善策は、端部を周縁部と固定するとともに、端部の間の箇所を横骨材で支持したアーチ状の支持骨材を配備することによって実現することができる。そのようなアーチ状の支持骨材は、ドームのように作用して、比較的簡単な構造形態で比較的大きな力を吸収することができるものである。
【0008】
本発明の更に別の重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面及び以下における図面にもとづく図面の説明から明らかとなる。
【0009】
前述した特徴及び以下で更に説明する特徴は、それぞれ提示された組合せだけでなく、本発明の範囲を逸脱すること無く、それ以外の組合せ又は単独でも使用することが可能であることを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の有利な実施例を図面に図示して、以下の記述において詳しく説明する。
【0011】
図1では、そこで部分的にしか図示してない自動車1内に、バッテリー4の保護筐体3を収納するための設置空間2を構成することができる。車両1は、有利には、車両1を駆動するために、燃焼エンジンに加えて、少なくとも一つの電気モーターを備えたハイブリッド車両とすることができる。設置空間2は、車両1の前方空間又は有利には、後方空間内に配置することができる。図1では、車両1の骨組構造5の後方側の終端部分が図示されている。バッテリー4は、特に、ハイブリッド車両1では、牽引力用バッテリーとして配備され、そのため比較的大きな寸法を持つことができる。
【0012】
車両1又はその骨格構造5は、図示した領域内において、車両の縦方向に対してほぼ平行に延びる二つの縦骨材6を備えている。設置空間2は、両方の縦骨材6の間に形成されている。この場合、保護筐体3は、有利には、両方の縦骨材6の間のほぼ真中に配置される。更に、設置空間2は、ここでは両方の縦骨材6を互いに連結する、即ち、縦骨材と固定された横骨材7によって境界を画定されている。横骨材7は、車両の縦方向と垂直な車両の横方向に対してほぼ平行に延びている。
【0013】
保護筐体3は、バッテリー4を収納するための空間9の側方を取り囲む周縁部8を有する。この場合、周縁部8は、二つの横方向壁面10,11と二つの縦方向壁面12,13とから組み上げられている。この場合、前記の壁面10〜13は、それぞれ別個の構造部材として構成されている。そのため、ここに図示した保護筐体3を車両1の後部に配置した構成では、横方向壁面10,11は、前方の横方向壁面10又は前方壁面10と後方の横方向壁面11又は後方壁面11とである。横方向壁面10,11は、車両の横方向に対して平行に延びている。それと異なり、縦方向壁面12,13は、車両の縦方向に対して平行に延びており、この場合周縁部8の側方壁面12,13を構成している。壁面10〜13は、曲げに強い形で構成されており、例えば、特に、アルミニウムから成る押出し成形部材として製造することができ、詳しくは、区画を持つ形又は区画を持たない形で製造することができる。保護筐体3の角領域内において、好適な手法で、個々の壁面10,13を互いに固定することができる。例えば、壁面10,13を互いに溶接する。
【0014】
周縁部8は、両方の縦骨材6と固定されている。ここで、周縁部8の縦骨材6との連結は、前方支持部材14と後方支持部材15とを用いて行われる。この場合、角部材16を用いて、例えば、ねじ止め及び/又は溶接により、支持部材14,15を周縁部8と固定する。例えば、角部材16を周縁部8と溶接して、支持部材14,15とねじ止めする。好適な手法で、例えば、ねじ止め又は溶接により、支持部材14,15を縦骨材6と固定する。好適な例では、周縁部8と両方の縦骨材6との連結は、両方の前方支持部材14を介して、前方の横方向壁面10を両方の縦骨材6と固定することと、更に、両方の後方支持部材15を介して、後方の横方向壁面11を両方の縦骨材6と固定することとによって行われる。
【0015】
更に、ここで図示した実施構成では、保護筐体3を横骨材7で支持するものと規定する。その目的のために、図示した外見ではアーチ状の構造を有する支持骨材17が配備されている。支持骨材17は、例えば、角部材16を介して、その端部18を周縁部8と固定される。それらの端部18の間において、支持骨材17を横骨材7と接触させることができる。本発明の目的に適うこととして、横骨材7は、その設置空間2の方を向いた側に、窪んだ輪郭19を有し、その輪郭に沿って、支持骨材17と横骨材7の間の接触を行うことができる。任意選択として、例えば、スポット溶接又はねじ止めによって、支持骨材17を横骨材7と固定することができる。
【0016】
周縁部8を補強するために、少なくとも一つのブレース20を配備することができる。実施例では、そのような二つのブレース20が図示されている。各ブレース20は、一方の端部を一方の横方向壁面10,11、ここでは後方壁面11の中央領域内で、他方の端部を角領域内で支持又は固定されており、その角領域内では、他方の横方向壁面10,11、即ち、ここでは前方壁面10が、それぞれ縦方向壁面12又は13と連結されている。
【0017】
保護筐体3の更なる補強は、バッテリー収納空間9の上方の境界を画定するとともに、取り付けた状態において、両方の横方向壁面10,11を車両1の縦方向に対して互いに支え合わせる支持体として構成された蓋21を用いて実現することができる。この蓋21を補強するために、一つ以上の縦方向支柱22を配備することができる。この場合、これらの縦方向支柱22は、両方の横方向壁面10,11が縦方向に対して互いに支え合うことを改善又は実現することができる。
【0018】
基本的に、保護筐体3は、ここでは隠れて見えない、バッテリー収納空間9の下方の境界を画定する底部23を備えることもできる。この底部23は、同じく、両方の横方向壁面10,11を車両1の縦方向に対して互いに支い合わせる支持体として構成することができる。この底部23も、横方向壁面10,11が所望の通り縦方向に対して支え合うことを実現するために、或いは底部23を補強するために、一つ以上の縦方向支柱22を備えることができる。底部23は、蓋21と同様に、特に、アルミニウムから成る押出し成形部材として製造することができる。
【0019】
更に、側方部分24を介して、底部23を縦骨材6と連結することができる。更に、底部23は、底部23を保護筐体3に渡って後方に延伸する後方縦方向部分25を備えることができる。それに追加して、或いはそれに代わって、保護筐体3に渡って前方に突き出た前方縦方向部分26を配備することができる。この場合、この前方縦方向部分26は、下方から支持骨材17と固定することができる。そうすることによって、支持骨材17を一層補強することができる。
【0020】
ブレース20は、蓋21の領域内に配置するか、或いは蓋21の上に間接的に配置することができる。それに追加して、或いはそれに代わって、ブレース20は、底部23の領域内に配置するか、或いは底部23上に取り付けることができる。
【0021】
クラッシュした際に、前方方向に向かう縦方向の力が車両1の後部領域に加わることとなる。この力は、後方壁面11によって吸収するとともに、その一部を後方支持部材15を介して縦骨材6に伝達することができる。それ以外に、この縦方向の力は、縦方向壁面12,13と、存在する場合にはブレース20と、場合によっては、蓋21又は底部23とを介して、前方壁面10に伝達される。この縦方向の力は、前方壁面10から、その一部が前方支持部材14を介して再び縦骨材6に伝達され、それ以外が支持骨材17を介して横骨材7に伝達される。横骨材7自体は、その力を再び縦骨材6に伝達する。有利には、クラッシュした際に発生する縦方向の力が、バッテリー収納空間9内に入り込んで来たり、バッテリー4を損傷させることなく、バッテリー収納空間9の周りを迂回して案内されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】保護筐体の領域を部分的に図示する、大幅に簡略化した車両の基本平面図
【符号の説明】
【0023】
1 自動車
2 設置空間
3 保護筐体
4 バッテリー
5 骨組構造
6 縦骨材
7 横骨材
8 周縁部
9 バッテリー収納空間
10 横方向壁面(前方壁面)
11 横方向壁面(後方壁面)
12,13 縦方向壁面(側方壁面)
14 前方支持部材
15 後方支持部材
16 角部材
17 支持骨材
18 支持骨材17の端部
19 窪んだ輪郭
20 ブレース
21 蓋
22 縦方向支柱
23 底部
24 底部23の側方部分
25 底部23の後方部分
26 底部23の縦方向部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー収納空間(9)の側方の周縁部(8)を協働して形成する二つの横方向壁面(10,11)と二つの縦方向壁面(12,13)とを備えた、自動車(1)のバッテリー(4)のための保護筐体であって、保護筐体(3)が、車両(1)の設置空間(2)内に取り付けられた状態で車両(1)の少なくとも一つの縦骨材(6)と固定されている保護筐体において、
両方の横方向壁面(10,11)と両方の縦方向壁面(12,13)とが、それぞれ別個の構造部材によって構成されるとともに、周縁部(8)として組み上げられていることと、
設置空間(2)が車両(1)の二つの縦骨材(6)の間に有ることと、
周縁部(8)が両方の縦骨材(6)と固定されていることと、
を特徴とする保護筐体。
【請求項2】
保護筐体(3)が、両方の縦骨材(6)と連結された車両(1)の横骨材(7)で支持されていることを特徴とする請求項1に記載の保護筐体。
【請求項3】
保護筐体(3)を横骨材(7)で支持するために、端部(18)を周縁部(8)と固定されたアーチ状の支持骨材(17)が配備されていることを特徴とする請求項2に記載の保護筐体。
【請求項4】
二つの前方支持部材(14)を介して、前方横方向壁面(10)を両方の縦骨材(6)と固定するか、二つの後方支持部材(15)を介して、後方横方向壁面(11)を両方の縦骨材(6)と固定するか、或いはその両方によって、周縁部(8)が縦骨材(6)と固定されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の保護筐体。
【請求項5】
一方の端部を一方の横方向壁面(11)の中央領域内で支持又は固定され、他方の端部を角領域内で支持又は固定された少なくとも一つのブレース(20)によって、周縁部(8)が補強されており、そして他方の横方向壁面(10)が縦方向壁面(12,13)の一方と連結されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の保護筐体。
【請求項6】
保護筐体(3)が、バッテリー収納空間(9)の下方の境界を画定する底部(23)を備えており、この底部は、両方の横方向壁面(10,11)が縦方向に対して互いに支え合うための支持体として構成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の保護筐体。
【請求項7】
保護筐体(3)が、バッテリー収納空間(9)の上方の境界を画定する蓋(21)を備えており、この蓋は、両方の横方向壁面(10,11)が縦方向に対して互いに支え合うための支持体として構成されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の保護筐体。
【請求項8】
底部(23)及び/又は蓋(21)が、少なくとも一つの縦方向支柱(22)を備えており、この縦方向支柱が、両方の横方向壁面(10,11)を互いに支え合わせるか、底部(23)及び/又は蓋(21)を補強するか、或いはその両方を行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の保護筐体。
【請求項9】
横方向壁面(10,11)及び/又は縦方向壁面(12,13)が押出し成形部材として構成されていることと、
底部(23)及び/又は蓋(21)が押出し成形部材として構成されていることと、
の両方又はいずれか一方を特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の保護筐体。
【請求項10】
設置空間(2)が車両(1)の後部内に有ることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の保護筐体。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一つに記載の保護筐体(3)を備えた車両。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−285149(P2008−285149A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122865(P2008−122865)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(390009335)ドクトル インジエニエール ハー ツエー エフ ポルシエ アクチエンゲゼルシヤフト (123)
【氏名又は名称原語表記】Dr.Ing.h.c.F.Porsche  Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1,D−70435 Stuttgart,Germany
【Fターム(参考)】