説明

車両用フェンダパネル取付構造

【課題】フードとフェンダパネルとの見切り部がフェンダパネルの取付相手となる車体側構成部材よりも車両幅方向内側へオフセットして配置される場合においても、良好な歩行者保護性能が得られる車両用フェンダパネル取付構造を得る。
【解決手段】フロントフェンダパネル10とフード20との見切り部22がエプロンアッパメンバ14よりも車両幅方向内側にオフセットして配置されたボディーにおいて、内側ブラケット26及び下側ブラケット28から成る衝撃吸収ブラケット24を片持ち支持状態で配置し、矢印A方向への回転変形時に、第2外側傾斜部28Bが縦壁部18Dに当接し、その後は屈曲部52を起点とした第2内側傾斜部28Cから第2外側傾斜部28Bへの曲げ変形を連続的に行わせる。これにより、F−S特性の後半の反力が出せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フェンダパネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フェンダパネルの上端内側部を、車両前方側から見て略Z字状に形成されたフェンダブラケットを介してエプロンアッパメンバの上端水平部に取り付け、更にフェンダブラケットの車両幅方向内側に車両前方側から見て階段形状に形成された補強部材を取り付ける技術が開示されている。
【0003】
上記構成によれば、フードとフェンダパネルとの見切り部付近に衝突体が衝突してきた場合に、階段形状の補強部材がその延在方向に圧縮されて塑性変形することで、衝突体がフードとフェンダパネルとの見切り部付近に二次衝突した際のエネルギーが吸収される、というものである。
【特許文献1】特開2004−50865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術によっても歩行者保護性能の向上を図ることができるものと思われるが、車両デザインによっては奏功しない場合もある。つまり、最近の車両デザインの傾向として、フードとフェンダパネルとの見切り部が、エプロンアッパメンバよりも車両幅方向内側に入り込んだ(オフセットした)意匠が採用されることがある。このような意匠を採用した車両に対して上記先行技術を適用すると、衝突体が上記見切り部付近に衝突してきた際に、フェンダブラケットが基部の上下折れ点で局部的に折れ曲がり、F−S特性で観た場合のストローク後半での反力が充分に得られない可能性がある。従って、上記先行技術は、この点において改良の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、フードとフェンダパネルとの見切り部がフェンダパネルの取付相手となる車体側構成部材よりも車両幅方向内側へオフセットして配置される場合においても、良好な歩行者保護性能が得られる車両用フェンダパネル取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、車体前部側面に配置されるフェンダパネルの上端側取付部と、このフェンダパネルの上端側取付部よりも車両幅方向外側でかつ車両下方側に配置され、フェンダパネルの上端側取付部の取付相手となる車体側構成部材と、フェンダパネルの上端側取付部と車体側構成部材とを連結すると共に、車体前部上面に配置されるフードの車両幅方向外側の端部とフェンダパネルの上端部との見切り部付近にフード上方側から衝突体が衝突することにより変形して衝突時のエネルギーを吸収する衝撃吸収ブラケットと、を含んで構成された車両用フェンダパネル取付構造であって、前記衝撃吸収ブラケットは、フェンダパネルの上端側取付部と車体側構成部材とを直線的に繋ぐ第1傾斜部と、この第1傾斜部の上端位置から車体側構成部材が備える縦壁部と車両幅方向に対向する位置又は対向可能な位置まで延設された第2傾斜部と、この第2傾斜部の下端部と第1傾斜部の下端部とを繋ぐ繋ぎ部と、備えている、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、請求項1記載の車両用フェンダパネル取付構造において、前記衝撃吸収ブラケットは、衝突体との衝突時に、第1傾斜部の下端部を回転中心としかつ第1傾斜部の辺長を回転半径として車両幅方向内側へ倒れ込み、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位が車体側構成部材の縦壁部に当接した後は、第2傾斜部の辺長を減少させつつその分だけ繋ぎ部の辺長を縦壁部に沿って増加させていく曲げ変形を生じる、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、請求項1又は請求項2記載の車両用フェンダパネル取付構造において、前記第2傾斜部と前記繋ぎ部との接続部位は、前記車体側構成部材が縦壁部の上端位置に備える横壁部よりも車両下方側でかつ当該縦壁部に隣接又は近接して配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用フェンダパネル取付構造において、前記第2傾斜部及び前記繋ぎ部の少なくとも一方には、衝突体との衝突時の変形荷重を調整するための変形荷重調整手段が設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用フェンダパネル取付構造において、前記衝撃吸収ブラケットは、前記第1傾斜部側を構成する上側ブラケットと、この上側ブラケットの下面側に配置されかつ前記第2傾斜部及び前記繋ぎ部側を構成する下側ブラケットと、に分割されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用フェンダパネル取付構造において、前記衝撃吸収ブラケットは、前記第1傾斜部、前記第2傾斜部、及び前記繋ぎ部を一体に備えたプレス成形品として構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、フェンダパネルの上端側取付部は衝撃吸収ブラケットを介して車体側構成部材に取り付けられており、フードの車両幅方向外側の端部とフェンダパネルの上端部との見切り部付近にフード上方側から衝突体が衝突すると、衝撃吸収ブラケットが変形することにより衝突時のエネルギーが吸収される。
【0013】
ところで、本発明では、車体側構成部材はフェンダパネルの上端側取付部よりも車両幅方向外側でかつ車両下方側に配置されているため、換言すれば、フードとフェンダパネルとの見切り部がフェンダパネルの取付相手となる車体側構成部材よりも車両幅方向内側へオフセットして配置された車両デザイン(意匠)を採用しているため、衝突体が見切り部付近に衝突すると、衝撃吸収ブラケットはこれを下支えする部材がないために車両幅方向内側へ倒れ込もうとする。
【0014】
ここで、本発明では、衝撃吸収ブラケットが第1傾斜部、第2傾斜部、及び繋ぎ部を含んで構成されており、第2傾斜部は車体側構成部材が備える縦壁部と車両幅方向に対向する位置又は対向可能な位置まで延設されかつその下端部と第1傾斜部の下端部とが繋ぎ部で繋がっているので、衝撃吸収ブラケットが車両幅方向内側へ倒れ込もうとすると、それに伴って繋ぎ部を介して第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位(第2傾斜部の下端部)が車体側構成部材の縦壁部に当接する。この当接により縦壁部から第2傾斜部に反力が作用し、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位が(第2傾斜部の肉が繋ぎ部に回り込むように)曲げ変形する。この曲げ変形は、衝撃吸収ブラケットが車両幅方向内側へ倒れ込み、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位(第2傾斜部の下端部)が縦壁部に当接した時点以降において発生する。従って、この現象をF−S特性との関係で観ると(F−S特性に重ねて観ると)、ストローク後半においてエネルギー吸収のための反力が得られる。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、衝撃吸収ブラケットは、衝突体との衝突時になると、第1傾斜部の下端部を回転中心としかつ第1傾斜部の辺長を回転半径として車両幅方向内側へ倒れ込み、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位が車体側構成部材の縦壁部に当接される。これにより、縦壁部から第2傾斜部への反力が発生し、かかる反力が作用することによって第2傾斜部が変形する。具体的には、本発明の衝撃吸収ブラケットでは、第2傾斜部の辺長を減少させつつその分だけ繋ぎ部の辺長が縦壁部に沿って増加するように曲げ変形が生じていく。
【0016】
このように本発明では、衝撃吸収ブラケットの挙動が、第1傾斜部の回転動作と、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位が縦壁部に当接した後の第2傾斜部及び繋ぎ部間での辺長変化(但し、第2傾斜部及び繋ぎ部の辺長総和は一定)による曲げ変形とで、変形モードが規定される。従って、本発明によれば、衝撃吸収ブラケットを安定したモードで変形させることができる。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位は、車体側構成部材が縦壁部の上端位置に備える横壁部よりも車両下方側でかつ当該縦壁部に隣接又は近接して配置されるため、衝撃吸収ブラケットの車両幅方向内側への倒れ込みの初期の段階から第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位を車体側構成部材の縦壁部に当接させることができる。このため、衝撃吸収ブラケットを迅速かつ確実に変形させることができる。
【0018】
請求項4記載の本発明によれば、第2傾斜部及び繋ぎ部の少なくとも一方に衝突体との衝突時の変形荷重を調整するための変形荷重調整手段を設けたので、衝撃吸収ブラケットのF−S特性の波形を狙い通りに調整することができる。すなわち、変形荷重調整手段の設け方によって、第2傾斜部及び繋ぎ部の変形荷重を変えることができるので、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位が車体側構成部材の縦壁部に当接するまでの荷重をコントロールすることができ、又当該接続部位の縦壁部への当接時以降の反力をコントロールすることができる。さらには、変形荷重調整手段の設け方によっては、第1傾斜部の変形荷重をも変更することができる。従って、F−S特性のストローク前半における荷重(波形)の調整やストローク後半における荷重(波形)の調整を容易に行うことができる。
【0019】
請求項5記載の本発明によれば、衝撃吸収ブラケットを、第1傾斜部側を構成する上側ブラケットと、この上側ブラケットの下面側に配置されかつ第2傾斜部及び繋ぎ部側を構成する下側ブラケットとの分割構造としたので、第1傾斜部に対する要求性能については上側ブラケットで精度良く実現し、第2傾斜部及び繋ぎ部に対する要求性能については下側ブラケットで精度良く実現することができる。
【0020】
請求項6記載の本発明によれば、衝撃吸収ブラケットを、第1傾斜部、第2傾斜部、及び繋ぎ部を一体に備えたプレス成形品として構成したので、製造が容易であると共に部品点数が一部品になる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、フードとフェンダパネルとの見切り部がフェンダパネルの取付相手となる車体側構成部材よりも車両幅方向内側へオフセットして配置される場合においても、良好な歩行者保護性能が得られるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項2記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、衝撃吸収ブラケットの変形モードが安定化するので、衝撃吸収ブラケットのエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)の精度を高めることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項3記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、衝撃吸収ブラケットの変形モードが安定化するので、衝撃吸収ブラケットによるエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項4記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、車種に応じて最適なエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)を設定することができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項5記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、衝撃吸収ブラケットの各要素に求められる要求性能を個別に精度良く再現することができ、その結果、衝突体との衝突時の衝撃吸収ブラケットによるエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)をより一層最適化することができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項6記載の本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造は、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0028】
図1には、本実施形態に係る衝撃吸収ブラケットを用いてフロントフェンダパネルをエプロンアッパメンバに取付けた状態が示されている。なお、図1は、図2に示されるフロントフェンダパネルを1−1線に沿って切断したときの組付状態を車両前方側から見て示した縦断面図である。
【0029】
これらの図に示されるように、車体前部側面にはフロントフェンダパネル10が配設されている。フロントフェンダパネル10は、前輪の上方側に配置されて意匠面を構成する外側縦壁部10Aと、この外側縦壁部10Aの上端部10A’から屈曲垂下された内側縦壁部10Bと、この内側縦壁部10Bの下端部からエンジンルーム12側へ水平に折り曲げられたフェンダ取付部10Cと、を含んで構成されている。
【0030】
上記フロントフェンダパネル10における外側縦壁部10Aの上端部10A’の下方側には、車体側構成部材としてのエプロンアッパメンバ14が配設されている。エプロンアッパメンバ14は、車両前後方向に沿って延在された中空長尺状の車体骨格部材であり、断面形状が鉤形とされたロアメンバ16と、断面形状が略ハット形とされたアッパメンバ18とによって構成されている。より具体的には、ロアメンバ16の外側フランジ部16Aにアッパメンバ18の外側フランジ部16Aを重ねると共にロアメンバ16の内側フランジ部16Bにアッパメンバ18の内側フランジ部18Bを重ね、それぞれスポット溶接することにより、エプロンアッパメンバ14は閉断面構造に形成されている。
【0031】
また、左右一対のフロントフェンダパネル10の内側縦壁部10Bの上端部間には、車体前部上面を構成すると共にエンジンルーム12を開閉するフード20が配設されている。フード20の車両幅方向外側の端部20Aの下縁側には弾性材料(ゴム)によって構成された図示しないシール材が配設されており、フロントフェンダパネル10の外側縦壁部10Aの上端部10A’とフード20の車両幅方向外側の端部20Aとの見切り部22をシールしている。
【0032】
さらに、上述したフロントフェンダパネル10のフェンダ取付部10Cは、車両前後方向(エプロンアッパメンバ14の長手方向)に所定の間隔で配置された複数の衝撃吸収ブラケット24を介してエプロンアッパメンバ14におけるアッパメンバ18の上面部18Cに取り付けられている。
【0033】
ここで、本実施形態では、車両デザイン(意匠)との関係で、上述したフロントフェンダパネル10の上端部(外側縦壁部10Aの上端部10A’)とフード20の車両幅方向外側の端部20Aとの見切り部22が、エプロンアッパメンバ14の配設位置(即ち、アッパメンバ18の縦壁部18D)よりも車両幅方向内側(エンジンルーム12側)にオフセットして配置されている。
【0034】
上記レイアウトを前提とするため、本実施形態では、衝撃吸収ブラケット24が車両正面視で略Z形状を成しており、フロントフェンダパネル10のフェンダ取付部10Cはエプロンアッパメンバ14の上面部18Cに片持ち支持(オーバーハング)された状態で取り付けられている。以下、衝撃吸収ブラケット24の構造について詳細に説明する。
【0035】
図3には、衝撃吸収ブラケット24の分解斜視図が拡大して示されている。この図3及び図1に示されるように、衝撃吸収ブラケット24は、組付状態で上面側に配置される上側ブラケット26と、組付状態で下面側に配置される下側ブラケット28と、によって構成されている。すなわち、衝撃吸収ブラケット24は、上下二分割構造とされている。
【0036】
上側ブラケット26は、所定幅の鋼板をプレス成形することにより形成されており、車両幅方向に沿って延在された基部26Aと、この基部26Aから屈曲されて車両斜め上方内側へ延出された第1傾斜部26Bと、この第1傾斜部26Bの上端部から車両幅方向内側へ屈曲されてフェンダ取付部10Cの下面側に配置される上端取付部26Cと、によって構成されている。
【0037】
なお、上側ブラケット26の前後の縁部30は車両下方側へ向けて直角に折り曲げられている。また、基部26A及び上端取付部26Cには、ボルト挿通孔32、34がそれぞれ形成されている。さらに、基部26Aの前後の縁部30に隣接する位置には、車両上方側に凸となる一対の第1ビード36が形成されている。また、第1傾斜部26Bの幅方向中間部には、面直角方向(車両斜め上方外側)へ凸状に隆起する第2ビード38が形成されている。第2ビード38は、第1傾斜部26Bの面剛性を上げるためのもので、第1傾斜部26Bの上下の屈曲ライン(稜線)には掛からない長さに設定されている。第1ビード36は、上側ブラケット26の基部26Aの取付強度及び剛性を上げるために設定されている。
【0038】
下側ブラケット28は、所定幅の鋼板をプレス成形することにより形成されており、車両幅方向に沿って延在された基部28Aと、この基部28Aから屈曲されて車両斜め下方内側へ延出された第2外側傾斜部28Bと、この第2外側傾斜部28Bの下端部から車両斜め上方内側へ折り返された第2内側傾斜部28Cと、この第2内側傾斜部28Cの上端部から車両幅方向内側へ折り曲げられて上側ブラケット26の上端取付部26Cの下面に当接状態で配置される上端取付部26Dと、によって構成されている。別の言い方をすると、この衝撃吸収ブラケット24では、下側ブラケット28に第2外側傾斜部28Cを設定したことにより、第2外側傾斜部28Bはエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dと車両幅方向に対向する位置まで延設されている。
【0039】
なお、下側ブラケット28の幅方向寸法(車両前後方向に沿った寸法)は上側ブラケット26の前後の縁部30の対向面間の距離に一致するように設定されており、下側ブラケット28に上側ブラケット26が被嵌される構造になっている。また、基部28A及び上端取付部26Dの車両幅方向に沿った長さは、上側ブラケット26の基部26A及び上端取付部26Cの車両幅方向に沿った長さと同一に設定されている。さらに、基部28A及び上端取付部28Dには、上側ブラケット26の基部26A及び上端取付部26Cに形成されたボルト挿通孔32、34と同軸上にボルト挿通孔40、42がそれぞれ形成されている。
【0040】
補足すると、上述した下側ブラケット28の第2外側傾斜部28Bが本発明における「繋ぎ部」に相当し、第2内側傾斜部28Cが本発明における「第2傾斜部」に相当する。
【0041】
図1に示されるように、上述した衝撃吸収ブラケット24は、下側ブラケット28に上側ブラケット26が被嵌された状態で、双方の基部26A、28Aがエプロンアッパメンバ14の上面部18Cに載置され、ボルト44及びウエルドナット46によって締結固定されている。また、上側ブラケット26の上端取付部26C及び下側ブラケット28の上端取付部26D並びにフェンダ取付部10Cが三枚重合された状態でボルト48及びナット50によって締結固定されている。
【0042】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0043】
本実施形態では、フロントフェンダパネル10の上端部10A’とフード20の車両幅方向外側の端部20Aとの見切り部22がエプロンアッパメンバ14の配設位置よりも車両幅方向内側(エンジンルーム12側)へオフセットして配置される車両デザイン(意匠)を採用しているために衝撃吸収ブラケット24がエプロンアッパメンバ14の上面部18Cに片持ち支持された状態となる。このため、衝突体が見切り部22付近に衝突すると、衝撃吸収ブラケット24はこれを下支えする部材が存在しないために車両幅方向内側(図1の矢印A方向側)へ倒れ込もうとする。
【0044】
このときの衝撃吸収ブラケット24の変形挙動について、以下に詳細に説明する。図4には、図1に示される車両用フェンダパネル取付構造を適用した場合の衝撃吸収ブラケット24の変形挙動を模式化した線図が示されている。この図4の線図イが組付状態の衝撃吸収ブラケット24を表現したものであり、線図ロは衝撃吸収ブラケット24が車両幅方向内側(矢印A方向側)へ倒れ込む途中の状態を表現したものであり、線図ハは衝撃吸収ブラケット24がエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dに当接した時点の状態を表現したものである。
【0045】
衝撃吸収ブラケット24がエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dに当接するまでは、衝撃吸収ブラケット24は、点Oを中心としかつ第1傾斜部26Bを回転半径Rとして車両幅方向内側へ回動する挙動を示す。従って、線図イに付記した第1傾斜部26Bの線長Aのみならず、第2内側傾斜部28Cの線長B及び第2外側傾斜部28Bの線長Cも実質的に同一寸法のままで回動している(倒れ込んでいく)。
【0046】
そして、線図ハの段階で衝撃吸収ブラケット24の第2外側傾斜部28Bがエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dに当接し、この時点以降、衝撃吸収ブラケット24の第2内側傾斜部28Cにエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dからの反力が作用する。
【0047】
そのため、衝撃吸収ブラケット24は次の段階では線図ニとなり、即ち、縦壁部18Dから反力を受けて第2内側傾斜部28Cの線長がBからB’に短くなり、その分、第2外側傾斜部28Bの線長がCからC’へと長くなる。つまり、この過程で、第2外側傾斜部28Bと第2内側傾斜部28Cとの接続部位である屈曲部52に曲げ変形が生じ、所謂しごき変形が開始される。
【0048】
更に屈曲部52の曲げ変形が進行すると、線図ホに至り、縦壁部18Dから反力を更に受けて第2内側傾斜部28Cの線長がB’からB”に短くなり、その分、第2外側傾斜部28Bの線長がC’からC”へと更に長くなる。この過程で、屈曲部52に更に曲げ変形が生じ、所謂しごき変形がこの時点まで継続維持される。なお、この実施形態では、しごき変形量はδである。
【0049】
上記より、図5のF−S特性を表したグラフに示されるように、ストローク後半での反力を上げることができかつ維持することができる(図5のグラフに一点鎖線で囲んだ領域S参照)。つまり、本実施形態によれば、ストローク後半においてエネルギー吸収のための反力が得られる。その結果、本実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造によれば、フロントフェンダパネル10の上端部10A’とフード20の車両幅方向外側の端部20Aとの見切り部22がフロントフェンダパネル10の取付相手となるエプロンアッパメンバ14よりも車両幅方向内側へオフセットして配置される場合においても、良好な歩行者保護性能が得られる。
【0050】
また、本実施形態では、衝突体との衝突時における衝撃吸収ブラケット24の変形挙動が、第1傾斜部26Bの回転動作と、第2内側傾斜部28Cと第2外側傾斜部28Bとの接続部位である屈曲部52が縦壁部18Dに当接した後の第2内側傾斜部28C及び第2外側傾斜部28B間での辺長変化(但し、第2内側傾斜部28C及び第2外側傾斜部28Bの辺長総和(B+C)は一定)による曲げ変形とで、変形モードが規定される。従って、本実施形態によれば、衝撃吸収ブラケット24を安定したモードで変形させることができる。その結果、衝撃吸収ブラケット24のエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)の精度を高めることができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、第2内側傾斜部28Cと第2外側傾斜部28Bとの接続部位である屈曲部52は、エプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dの上端位置に備える上面部18Cよりも車両下方側でかつ当該縦壁部18Dに近接して配置されているため、衝撃吸収ブラケット24の車両幅方向内側への倒れ込みの初期の段階から屈曲部52をエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dに当接させることができる。このため、衝突体との衝突時に、衝撃吸収ブラケット24を迅速かつ確実に変形させることができる。その結果、本実施形態によれば、衝撃吸収ブラケット24におけるエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)の信頼性を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態では、衝撃吸収ブラケット24を、第1傾斜部26B側を構成する上側ブラケット26と、この上側ブラケット26の下面側に配置されかつ第2内側傾斜部28C及び第2外側傾斜部28B側を構成する下側ブラケット28との上下二分割構造で構成したので、第1傾斜部26Bに対する要求性能については上側ブラケット26で精度良く実現し、第2内側傾斜部28C及び第2外側傾斜部28Bに対する要求性能については下側ブラケット28で精度良く実現することができる。その結果、本実施形態によれば、衝突体との衝突時に、衝撃吸収ブラケット24によるエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)をより一層最適化することができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
次に、図6〜図8を用いて、本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0054】
図6及び図7に示されるように、この第2実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造では、衝撃吸収ブラケット60が、車両前方側から見て略Z形状に形成されている点に特徴がある。
【0055】
具体的には、衝撃吸収ブラケット60は、上面側を構成する上側ブラケット62と、下面側を構成する下側ブラケット64と、によって構成されている。上側ブラケット62は、前述した第1実施形態で説明した上側ブラケット26と同様に、車両幅方向に沿って延在された基部62Aと、この基部62Aから屈曲されて車両斜め上方内側へ延出された第1傾斜部62Bと、この第1傾斜部62Bの上端部から車両幅方向内側へ屈曲されてフェンダ取付部10Cの下面側に配置される上端取付部62Cと、によって構成されている。但し、基部62Aが前述した第1実施形態の上側ブラケット26の基部26Aよりも短めに形成され、エプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dの配置位置よりも車両幅方向外側へ所定距離だけオフセットした(控えた)位置に配置されている。従って、その分、第1実施形態で説明した上側ブラケット26の第1傾斜部26Bよりも傾斜角度が小さくなっている。
【0056】
一方、下側ブラケット64は、前述した第1実施形態で説明した下側ブラケット28とは異なり、車両前方側から見て略Z字状に形成されている。要素的には、下側ブラケット64は、エプロンアッパメンバ14の上面部18Cへの取付部としての基部64Aと、この基部64Aの車両幅方向内側の端部から屈曲されて車両斜め上方内側へ延出された第2傾斜部64Bと、この第2傾斜部64Bの上端部から車両幅方向内側へ折り曲げられて上側ブラケット62の上端取付部62Cの下面に当接状態で配置される上端取付部64Cと、によって構成されている。基部64Aの車両幅方向に沿った長さは第1実施形態の下側ブラケット28の基部28Aよりも長く設定されており、その分、基部64Aはエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dの配置位置よりも車両幅方向内側へ張出されている。別の言い方をすると、この衝撃吸収ブラケット60では、下側ブラケット64に第1実施形態の衝撃吸収ブラケット24における第2外側傾斜部28Cを設定しなかったことにより、第2傾斜部64Bはエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dと車両幅方向に対向する位置まで延設されていないものの、衝突体との衝突荷重が作用して衝撃吸収ブラケット60が車両下方側(矢印A方向側)へ回転変形すると、第2傾斜部64Bと基部64Aとの接続部位である屈曲部52が縦壁部18Dと対向するようになっている。その意味では、第2傾斜部64Bは、第1傾斜部62Bの上端取付部62Cから縦壁部18Dと車両幅方向に対向可能な位置まで延設されているといえる。
【0057】
(作用・効果)
本実施形態においても、前述した第1実施形態の構成を基本的には踏襲しているので、同様の作用・効果が得られるが、衝突体が見切り部22付近に衝突した際の衝撃吸収ブラケット60の変形挙動が若干異なるので、以下この点を中心に説明する。
【0058】
図8には、本実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造を適用した場合の衝撃吸収ブラケット60の変形挙動の模式図が示されており、前述した第1実施形態の図4に相当するものである。
【0059】
図8と図4との対比から解るように、線図イで示される組付状態のときには、第2傾斜部64Bと基部64Aとの接続部位である屈曲部52はエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dと対向していない。この状態から衝突体の衝突荷重が見切り部22付近に作用すると、線図ロで示されるように、下側ブラケット64の基部64Aの張り出し部分64A’が車両下方側へ屈曲され、点Oを中心として所定角度回転した状態となる。
【0060】
そして、線図ハの段階で衝撃吸収ブラケット60の基部64Aの張り出し部分64A’がエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dに当接し、この時点以降、衝撃吸収ブラケット60の第2傾斜部64Bにエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dからの反力が作用する。
【0061】
そのため、衝撃吸収ブラケット60は次の段階では線図ニとなり、即ち、縦壁部18Dから反力を受けて第2傾斜部64Bの線長がBからB’に短くなり、その分、基部64Aの張り出し部分64A’の線長がCからC’へと長くなる。つまり、この過程で、第2傾斜部64Bと基部64Aとの接続部位である屈曲部52に曲げ変形が生じ、所謂しごき変形が開始される。
【0062】
更に屈曲部52の曲げ変形が進行すると、線図ホに至り、縦壁部18Dから反力を更に受けて第2傾斜部64Bの線長がB’からB”に短くなり、その分、基部64Aの張り出し部分64A’の線長がC’からC”へと更に長くなる。この過程で、屈曲部52に更に曲げ変形が生じ、所謂しごき変形がこの時点まで継続維持される。なお、この実施形態では、しごき変形量はδである。
【0063】
上記より、本実施形態においても、前述した第1実施形態と同様に、F−S特性のストローク後半での反力を上げることができかつ維持することができる。つまり、ストローク後半においてエネルギー吸収のための反力が得られる。その結果、本実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造によっても、フロントフェンダパネル10の上端部10A’とフード20の車両幅方向外側の端部20Aとの見切り部22がフロントフェンダパネル10の取付相手となるエプロンアッパメンバ14よりも車両幅方向内側へオフセットして配置される場合においても、良好な歩行者保護性能が得られる。
【0064】
また、前述した第1実施形態と同様に、衝突体との衝突時における衝撃吸収ブラケット60の変形挙動が、第1傾斜部62Bの回転動作と、第2傾斜部64Bと基部64Aとの接続部位である屈曲部52が縦壁部18Dに当接した後の第2傾斜部64B及び基部64Aの張り出し部分64A’間での辺長変化(但し、第2傾斜部64B及び基部64Aの張り出し部分64A’の辺長総和(B+C)は一定)による曲げ変形とで、変形モードが規定される。従って、本実施形態によっても、衝撃吸収ブラケット60を安定したモードで変形させることができ、衝撃吸収ブラケット60のエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)の精度を高めることができる。
【0065】
また、前述した第1実施形態と同様に、衝撃吸収ブラケット60を上下二分割構造で構成したので、第1傾斜部62Bに対する要求性能については上側ブラケット62で精度良く実現し、第2傾斜部64B及び基部64Aの張り出し部分64A’に対する要求性能については下側ブラケット64で精度良く実現することができる。従って、、本実施形態によっても、衝突体との衝突時に、衝撃吸収ブラケット60によるエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)をより一層最適化することができる。
【0066】
〔第3実施形態〕
次に、図9〜図11を用いて、本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0067】
以下に説明する第3実施形態に係る衝撃吸収ブラケット70、72、74では、前述した第1実施形態で説明した衝撃吸収ブラケット24の上側ブラケット26に相当する上部76と、下側ブラケット28に相当する下部78と、を一部品として一体に形成した点に特徴がある。なお、上部76及び下部78に、第1実施形態で説明した衝撃吸収ブラケット24の各構成面を枝符合で同様に付す。例えば、「第1傾斜部26B」を「第1傾斜部72B」といった具合に符合を付して、重複した説明を省くことにする。
【0068】
例えば、図9に示される衝撃吸収ブラケット70は、手順の一例として、衝撃吸収ブラケット70の展開形状をプレスで打抜いた後、上部76には基部76A、第1傾斜部76B、上端取付部76Cが形成されるように又下部78には基部78A、第2外側傾斜部78B、第2内側傾斜部78C、上端取付部78Cが形成されるようにそれぞれ屈曲させる。そして、最後に、折り曲げ部80で上部76を下部78側へ折り曲げる(折り返す)。
【0069】
また図10に示される衝撃吸収ブラケット72では、手順の一例として、衝撃吸収ブラケット72の展開形状(前後一対の狭幅なスリット82を含む)をプレスで打ち抜くと同時に、中央部側に形成される第1傾斜部76B側と、中央部を挟んだ前後二箇所に形成される第2外側傾斜部78B及び第2内側傾斜部78C側とが、上下に離間するように屈曲される。この場合、上部76側の基部76Aと下部78側の基部78A並びに上部76側の上端取付部76Cと下部78側の上端取付部78Cは、共用されることになる。
【0070】
さらに図11に示される衝撃吸収ブラケット74では、図10の衝撃吸収ブラケット72とプレス打抜き形状は同じであるが、中央部側に第2外側傾斜部78B及び第2内側傾斜部78Cが形成され、中央部を挟んだ前後二箇所に第1傾斜部76Bが形成されている。
【0071】
(作用・効果)
第3実施形態に係る衝撃吸収ブラケット70、72、74によれば、一部品でブラケットが構成されるので、第1実施形態及び第2実施形態に比し、部品点数を削減することができると共に組付工数を削減することができる。従って、コストダウンを図ることができる。
【0072】
また、図10、図11に示される衝撃吸収ブラケット72、74によれば、一枚板からブラケットが作られるため、二部品構成の衝撃吸収ブラケット24、60や図9に示される曲げ一体型の衝撃吸収ブラケット70に比べて、製作が容易であると共に軽量化を図ることができる。
【0073】
〔第4実施形態〕
次に、図12〜図14を用いて、本発明に係る車両用フェンダパネル取付構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0074】
以下に説明する第4実施形態に係る衝撃吸収ブラケット90、92、94では、変形荷重調整手段を設けた点に特徴がある。
【0075】
例えば、図12に示される衝撃吸収ブラケット90では、第1実施形態の衝撃吸収ブラケット24のところで説明した上側ブラケット26及び下側ブラケット28をそのまま用い、更に下側ブラケット28の第2外側傾斜部28B及び第2内側傾斜部28Cに、変形荷重調整手段としての一本のスリット96を形成した点に特徴がある。スリット96は、屈曲部52を通り、第2外側傾斜部28B及び第2内側傾斜部28Cに跨って形成されている。
【0076】
また図13に示される衝撃吸収ブラケット92では、図10に示される衝撃吸収ブラケット72の前後一対の第2外側傾斜部78B及び第2内側傾斜部78Cの板幅を広く設定した点に特徴がある。なお、これに伴って、この衝撃吸収ブラケット92では、全体の板幅も図10に示される衝撃吸収ブラケット72より広くなっている。
【0077】
さらに図14に示される衝撃吸収ブラケット94では、その板厚を、図9の衝撃吸収ブラケット90の板厚よりも厚く設定した点に特徴がある。
【0078】
(作用・効果)
第4実施形態に係る衝撃吸収ブラケット90、92、94によれば、衝突時の変形荷重を調整するためのスリット96等の変形荷重調整手段を設けたので、衝撃吸収ブラケットのF−S特性の波形を狙い通りに調整することができる。すなわち、スリット96等の設け方によって、第2外側傾斜部28B及び第2内側傾斜部28Cの変形荷重を変えることができるので、屈曲部52がエプロンアッパメンバ14の縦壁部18Dに当接するまでの荷重をコントロールすることができ、又当該屈曲部52の縦壁部18Dへの当接時以降の反力をコントロールすることができる。さらには、スリット96等の設け方によっては、第1傾斜部26Bの変形荷重をも変更することができる。従って、F−S特性のストローク前半における荷重(波形)の調整やストローク後半における荷重(波形)の調整を容易に行うことができる。その結果、本実施形態によれば、車種に応じて最適なエネルギー吸収性能(歩行者保護性能)を設定することができる。
【0079】
なお、図12〜図14に示した衝撃吸収ブラケット90、92、94の変形荷重調整手段は一例に過ぎず、図11の衝撃吸収ブラケット74の第2外側傾斜部78B及び第2内側傾斜部78Cの板幅を変化させてもよいし、スリットの替わりに複数の孔を形成してもよい。また、リブを設けてもよい。さらに、スリット96を設ける例では、スリット96の形成個数や大きさ、スリット幅等を変更することにより、変形荷重を任意に調整することができる。
【0080】
〔実施形態の補足説明〕
上記実施形態では、衝撃吸収ブラケット24等の取付相手がエプロンアッパメンバ14であったが、これに限らず、衝撃吸収ブラケット24等の変形時に反力をとるための縦壁部を有する車体側構成部材であればよく、例えば、ラジエータサポートアッパやサスペンションタワー等の車体側構成部材を利用することもできる。さらに、車体側構成部材には、例えば、エプロンアッパメンバ14に設定されたブラケットといったエプロンアッパメンバ14そのものではないが、エプロンアッパメンバ14に取り付けられる別部品も含まれる。
【0081】
また、上記実施形態では、衝撃吸収ブラケット24等はすべて金属製であったが、これに限らず、衝撃吸収ブラケットを樹脂製としてもよい。さらに、衝撃吸収ブラケット24等は金属の中でも鋼板製であったが、アルミニウムを含んだ材料やマグネシウムを含んだ材料で構成してもよい。このように材質を変えることで、第4実施形態の変形荷重を調整することも可能である。さらに、同じ金属製でも、衝撃吸収ブラケットの構成要素が一定断面である場合には、アルミニウム合金等を使った押出し成形で衝撃吸収ブラケットを製作することもできる。
【0082】
さらに、上記実施形態では、第2内側傾斜部28Cから第2外側傾斜部28Bへの屈曲部52を起点とした曲げ変形が連続的に行われる構成であったが、これに限らず、屈曲部52を起点とした曲げ変形が断続的に行われる構成を採ってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、屈曲部52を縦壁部18Dに近接して配置する構成を採ったが、これに限らず、屈曲部52を縦壁部18Dに隣接して配置する構成を採ってもよい。
【0084】
さらに、本発明における「第2傾斜部の下端部と第1傾斜部の下端部とを繋ぐ繋ぎ部」であるが、例えば、第1実施形態で説明すると、図4に示されるように、線分28Cの下端部と線分26Bの下端部とを幾何学的に繋ぐ線分28Bとして把握できる構成であればよい。従って、図1に示されるように、ボルト締結点は基部26A、28Aの中央に存在し、繋ぎ部に相当する第2外側傾斜部28Bの上端部が第1傾斜部26Bの下端部に接しているだけの構成でもよいし、溶接等で接合されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造の全体構成を示す組付状態の縦断面図(図2の1−1線断面図)である。
【図2】フロントフェンダパネルの側面図である。
【図3】図1に示される衝撃吸収ブラケットの分解斜視図である。
【図4】図3に示される衝撃吸収ブラケットの変形モードを示す模式図である。
【図5】図1に示される衝撃吸収ブラケットを用いた場合のF−S特性を示すグラフである。
【図6】第2実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造の全体構成を示す図1に対応する組付状態の縦断面図である。
【図7】図6に示される衝撃吸収ブラケットの分解斜視図である。
【図8】図7に示される衝撃吸収ブラケットの変形モードを示す模式図である。
【図9】第3実施形態に係る衝撃吸収ブラケット(曲げ一体型)の斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る衝撃吸収ブラケット(プレス一体型)の斜視図である。
【図11】第3実施形態に係る衝撃吸収ブラケット(プレス一体型)の斜視図である。
【図12】(A)は第4実施形態に係る衝撃吸収ブラケット(スリット型)の分解斜視図であり、(B)は下側ブラケットの一部を拡大した拡大平面図である。
【図13】第4実施形態に係る衝撃吸収ブラケット(板幅変更型)の斜視図である。
【図14】第4実施形態に係る衝撃吸収ブラケット(板厚変更型)の斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
10 フロントフェンダパネル
10A’ 上端部(フェンダパネルの上端部)
10C フェンダ取付部(上端側取付部)
14 エプロンアッパメンバ(車体側構成部材)
18C 上面部(横壁部)
18D 縦壁部
20 フード
20A 車両幅方向外側の端部
22 見切り部
24 衝撃吸収ブラケット
26 上側ブラケット
26B 第1傾斜部
28 下側ブラケット
28B 第2外側傾斜部(繋ぎ部)
28C 第2内側傾斜部(第2傾斜部)
52 屈曲部(第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位)
60 衝撃吸収ブラケット
62 上側ブラケット
62B 第1傾斜部
64 下側ブラケット
64A’ 第2外側傾斜部(繋ぎ部)
64C 第2内側傾斜部(第2傾斜部)
70 衝撃吸収ブラケット
72 衝撃吸収ブラケット
74 衝撃吸収ブラケット
76B 第1傾斜部
78B 第2外側傾斜部(繋ぎ部)
78C 第2内側傾斜部(第2傾斜部)
90 衝撃吸収ブラケット
92 衝撃吸収ブラケット
94 衝撃吸収ブラケット
96 スリット(変形荷重調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部側面に配置されるフェンダパネルの上端側取付部と、
このフェンダパネルの上端側取付部よりも車両幅方向外側でかつ車両下方側に配置され、フェンダパネルの上端側取付部の取付相手となる車体側構成部材と、
フェンダパネルの上端側取付部と車体側構成部材とを連結すると共に、車体前部上面に配置されるフードの車両幅方向外側の端部とフェンダパネルの上端部との見切り部付近にフード上方側から衝突体が衝突することにより変形して衝突時のエネルギーを吸収する衝撃吸収ブラケットと、
を含んで構成された車両用フェンダパネル取付構造であって、
前記衝撃吸収ブラケットは、
フェンダパネルの上端側取付部と車体側構成部材とを直線的に繋ぐ第1傾斜部と、
この第1傾斜部の上端位置から車体側構成部材が備える縦壁部と車両幅方向に対向する位置又は対向可能な位置まで延設された第2傾斜部と、
この第2傾斜部の下端部と第1傾斜部の下端部とを繋ぐ繋ぎ部と、
備えている、
ことを特徴とする車両用フェンダパネル取付構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収ブラケットは、衝突体との衝突時に、第1傾斜部の下端部を回転中心としかつ第1傾斜部の辺長を回転半径として車両幅方向内側へ倒れ込み、第2傾斜部と繋ぎ部との接続部位が車体側構成部材の縦壁部に当接した後は、第2傾斜部の辺長を減少させつつその分だけ繋ぎ部の辺長を縦壁部に沿って増加させていく曲げ変形を生じる、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用フェンダパネル取付構造。
【請求項3】
前記第2傾斜部と前記繋ぎ部との接続部位は、前記車体側構成部材が縦壁部の上端位置に備える横壁部よりも車両下方側でかつ当該縦壁部に隣接又は近接して配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用フェンダパネル取付構造。
【請求項4】
前記第2傾斜部及び前記繋ぎ部の少なくとも一方には、衝突体との衝突時の変形荷重を調整するための変形荷重調整手段が設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用フェンダパネル取付構造。
【請求項5】
前記衝撃吸収ブラケットは、前記第1傾斜部側を構成する上側ブラケットと、この上側ブラケットの下面側に配置されかつ前記第2傾斜部及び前記繋ぎ部側を構成する下側ブラケットと、に分割されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用フェンダパネル取付構造。
【請求項6】
前記衝撃吸収ブラケットは、前記第1傾斜部、前記第2傾斜部、及び前記繋ぎ部を一体に備えたプレス成形品として構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用フェンダパネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−105548(P2008−105548A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290059(P2006−290059)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】