説明

車両用フードエアバッグ装置のシール構造

【課題】エアバッグモジュールをフード下方側から組み付ける場合において、エアバッグモジュール廻りからエンジンルーム内へ水が浸入するのを効果的に防ぐ。
【解決手段】フードインナパネル20にはエアバッグモジュール22の組付用のフードインナ側開口部26が形成されており、当該エアバッグモジュール22とは前側合わせ部54A及び後側合わせ部54Bにてシールされている。ここで、フードインナパネル20の底面基準Pで見た場合にエンジンルーム13により近い前側合わせ部54Aの高さを後側合わせ部54Bよりも高くした。従って、前側合わせ部54Aから水が漏れ出すことを効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突体との衝突時にフード上面側にエアバッグを膨張展開させる車両用フードエアバッグ装置のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フード後端側に車両幅方向に長い開口を形成して当該開口を展開可能なカバー(リッド)で覆うと共に、カバーと開口との見切り部から入った雨水等の水がエアバッグケース内へ浸入するのを阻止するために樋状の水受け部及び排水用の導水材を設けた車両用フードエアバッグ装置が開示されている。
【0003】
上記構成によれば、カバーと開口との見切り部から入った雨水等の水は樋状の水受け部に入ってから導水材によって排水される。これにより、エアバッグケース内への水の浸入を阻止すると共にエンジンルーム内の部品が被水するのを防止している。
【特許文献1】特許第3245489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、以下に説明する点で改良の余地がある。
【0005】
すなわち、何らかの理由、例えば組付性等の理由から、エアバッグモジュールをフード下方側から組み付けることがある。具体的には、フードインナパネルにモジュール組付用の開口部を形成しておき、フードインナパネルの下方側からエアバッグモジュールを開口部を通してフード内に組み付けることが考えられる。
【0006】
上記構成を採った場合、モジュール組付用の開口部とエアバッグモジュールとの合わせ部からエンジンルーム内に水が落ちないように合わせ部をシールすることが必要となる。しかし、エアバッグが大型であった場合にはモジュール組付用の開口部も車両幅方向に大きくなるため、開口部を完全にシールすることは困難である。従って、上記先行技術はかかる観点から改良の余地がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、エアバッグモジュールをフード下方側から組み付ける場合において、エアバッグモジュール廻りからエンジンルーム内へ水が浸入するのを効果的に防ぐことができる車両用フードエアバッグ装置のシール構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置のシール構造は、衝突体との前面衝突時にガスを噴出するガス発生手段と、折り畳み状態で格納されかつガス発生手段によって発生したガスの供給を受けて膨張しフードアウタパネルに形成されたバッグ膨出用開口部を覆うカバーを展開させてフード上へ膨張展開されるエアバッグと、ガス発生手段及びエアバッグを収容するエアバッグケースと、を含んで構成されたエアバッグモジュールを、フードインナパネルに形成された組付用開口部内へフードインナパネルの下方側から挿入して当該組付用開口部の周辺に固定する車両用フードエアバッグ装置に適用されるシール構造であって、フードインナパネルの底面基準で見て、フードインナパネルとエアバッグケースの前側合わせ部をフードインナパネルとエアバッグケースの後側合わせ部よりも高い位置に設定した、ことを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置のシール構造において、前記バッグ膨出用開口部におけるフード前後方向の長さは、前記エアバッグケースにおける上方側開放部のフード前後方向の長さよりも長く設定されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、ガス発生手段によってガスが噴出される。噴出されたガスは折り畳み状態でエアバッグケース内に格納されたエアバッグ内に供給され、エアバッグを膨張させる。これにより、カバーがバッグ膨張圧によって展開され、エアバッグがフードアウタパネルに形成されたバッグ膨出用開口部からフード上へ膨張展開される。その結果、膨張展開したエアバッグに歩行者等の衝突体が受け止められ、衝突時の衝突エネルギーが吸収されて歩行者等の衝突体が車体から受ける反力を下げることができる。
【0011】
ここで、本発明では、エアバッグモジュールがフードインナパネルに形成された組付用開口部内へフードインナパネルの下方側から挿入されて、組付用開口部の周辺に固定される構成を採っているので、仮にフードインナパネル上に水が浸入すると、エアバッグケースにおけるフードインナパネルとの合わせ部から水が漏れ出してフードインナパネルの下方、つまりエンジンルーム内へ落ちることが懸念される。
【0012】
しかし、本発明では、フードインナパネルの底面基準で見て、フードインナパネルとエアバッグケースの前側合わせ部をフードインナパネルとエアバッグケースの後側合わせ部よりも高い位置に設定したので、エンジンルームにより近いエアバッグケースの前側合わせ部からは水が漏れ出し難い構造となる。特にフードは後端から前端に向かうにつれて下り勾配で傾斜しているので、前記構造を採るだけでも水の浸入防止効果は大きい。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、フードアウタパネルに形成されたバッグ膨出用開口部におけるフード前後方向の長さがエアバッグケースにおける上方側開放部のフード前後方向の長さよりも長く設定されているため、カバーとバッグ膨出用開口部との合わせ部から浸入した水はエアバッグケース内には入らず、フードインナパネル上に落ちて底部に至る。
【0014】
ここで、本発明では、上記の如く、フードインナパネルの底面基準で見て、フードインナパネルとエアバッグケースの前側合わせ部をフードインナパネルとエアバッグケースの後側合わせ部よりも高い位置に設定したので、エアバッグケースの前側合わせ部から水が漏れ出してエンジンルーム内に落ちる可能性は非常に低い。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置のシール構造は、フードインナパネルの底面基準で見て、フードインナパネルとエアバッグケースの前側合わせ部をフードインナパネルとエアバッグケースの後側合わせ部よりも高い位置に設定したので、エアバッグモジュールをフード下方側から組み付ける場合において、エアバッグモジュール廻りからエンジンルーム内へ水が浸入するのを効果的に防ぐことができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置のシール構造は、バッグ膨出用開口部におけるフード前後方向の長さを、エアバッグケースにおける上方側開放部のフード前後方向の長さよりも長く設定したので、請求項1記載の本発明の効果に加え、カバーとバッグ膨出用開口部との合わせ部からエアバッグケース内へ水が浸入するのを効果的に防ぐことができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置のシール構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0018】
図3には、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10が作動した状態の車両12の外観斜視図が示されている。また、図2には、当該車両用フードエアバッグ装置10を搭載した車両12の外観斜視図が示されている。さらに、図1には、組付状態の車両用フードエアバッグ装置10を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図(図2の1−1線拡大断面図)が示されている。
【0019】
これらの図に示されるように、車両用フードエアバッグ装置10は、エンジンルーム13を開閉するフード14の後端側に車両幅方向に沿って配設されている。フード14は、フード外板を構成すると共にフード14の意匠面を構成するフードアウタパネル16と、フードアウタパネル16に対して所定距離だけ車両下方側に離間した位置に配設されてフード内板を構成するフードインナパネル20と、を含んで構成されている。
【0020】
図2に示されるように、フードアウタパネル16の後端側には、フード幅方向(車両幅方向)に沿って長いバッグ膨出用開口部18が形成されている。なお、バッグ膨出用開口部18は、平面視で略矩形状に形成されている。これに対応して、図1に示されるように、フードインナパネル20におけるバッグ膨出用開口部18と対向する位置には、バッグ膨出用開口部18と同様形状とされた組付用開口部としてのフードインナ側開口部26が形成されている。
【0021】
上記バッグ膨出用開口部18の下方側には、エアバッグモジュール22が配設されている。エアバッグモジュール22は、フードインナ側開口部26を下方側から閉塞する高強度のロアプレート24を備えている。ロアプレート24は平面視でフードインナ側開口部26よりも一回り大きく形成されており、フードインナ側開口部26に対して車両下方側から当接配置されることにより、フードインナ側開口部26を閉塞している。
【0022】
ロアプレート24の前端部24Aは、フードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の前縁下面にスポンジ等のシール材27を間に介して配置されており、側面視で略Z字状に形成された図示しない前側リインフォースの下端部と共にボルト及びナットでフードインナパネル20に共締めされている。同様に、ロアプレート24の後端部24Bは(後述するようにエアバッグケース46の後壁46Bの下端フランジ部が重合された状態で)、フードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の後縁下面にスポンジ等のシール材27を間に介して配置されており、側面視で略Z字状に形成された図示しない後側リインフォースの下端部と共にボルト及びナットでフードインナパネル20に共締めされている。なお、図示しない前側リインフォースの上端部及び後側リインフォースの上端部は、接着剤(マスチック)等の固定手段によりフードアウタパネル16の裏面に固定されている。
【0023】
上述したロアプレート24におけるフードインナ側開口部26に臨む部位は車両下方側へ凹んだ形状を成しており、深く凹んだ前底部24Cと浅く凹んだ後底部24Dとが形成されている。そして、これらの前底部24C及び後底部24Dを底壁部として、上方側が開放されて前壁46A及び後壁46Bを備えた金属製かつ略箱体形状のエアバッグケース46が取り付けられている。
【0024】
より具体的に説明すると、エアバッグケース46の前壁46Aの下端部はロアプレート24の前底部24Cの傾斜面に沿うようにフード後方側へ所定角度屈曲されており、後述するインフレータ58を固定するためのブラケット28と共に図示しないボルト及びナットで前底部24Cの傾斜面に共締めされている。また、エアバッグケース46の後壁46Bの下端部はフード後方側へ屈曲されてロアプレート24の後端部24Bの上面に重ねられている。そして、この二枚重ねの部分でスポット溶接されている。なお、前述したスポンジ等のシール材27はエアバッグケース46の後壁46Bの下端フランジ部の上面とフードインナ側開口部26の後縁下面との間に介装されている。
【0025】
上述したエアバッグケース46内には、略円柱形状に形成されたガス発生手段としてのインフレータ58が車両幅方向を長手方向として配置されていると共に、所定の折り畳み方によって折り畳まれたエアバッグ60が収容されている。インフレータ58はロアプレート24の前底部24C上に配置されており、エアバッグ60はロアプレート24の後底部24D上に配置されている。
【0026】
また、インフレータ58の外周部には軸方向の数箇所に各々六角形を成すブラケット28が装着されており、これらのブラケット28がエアバッグケース46の前壁46Aの下端部に当接された状態で、インフレータ46の外周部から半径方向に立設された図示しないボルト及びナットによって、ロアプレート24の前底部24Cの傾斜面に共締めされて固定されている。
【0027】
なお、インフレータ58としては機械着火式、電気着火式のいずれを使用してもよく、又ガス発生剤封入タイプ、高圧ガス封入タイプのいずれでも適用可能である。また、インフレータ58の周壁部の所定位置には、複数のガス噴出孔がインフレータ58の周方向に形成されている。
【0028】
また、図3に示されるように、エアバッグ60は、複数のセルから成り車両幅方向に沿って扁平に展開する本体部60Aと、この本体部60Aの両サイドに連通されかつフロントピラー66側へ延長された左右一対の延長部60Bと、によって構成されている。エアバッグ60が膨張展開した状態では、本体部60Aによってフード14の後端部14A及びカウル62(更にウインドシールドガラス64の下端部)が覆われると共に、左右の延長部60Bによってフロントピラー66の下部が覆われるようになっている。
【0029】
一方、エアバッグケース46の上方側開放部としての開放側端部30、即ちバッグ膨出用開口部18は、カバーとしてのエアバッグドア48によって開放可能に塞がれている。具体的には、バッグ膨出用開口部18はフードアウタパネル16の一般面16Aに対して車両下方側へ一段下がる段差形状に形成されており、エアバッグドア48はこの段差部50に納まる厚さ及び大きさに形成されている。なお、エアバッグドア48は、金属製のプレート48A上に樹脂層48Bが設けられた二層構造とされている。また、エアバッグドア48のプレート48Aの後端部には、図示しない展開ヒンジ部が一体に形成されており、図示しない後側リインフォースにボルト及びナットで固定されている。従って、エアバッグドア46は、展開ヒンジ部の締結点を中心として展開ヒンジ部を塑性変形させながら、フード後方側へ展開される構成である。なお、このエアバッグドア48は金属と樹脂の二層構造であったが、アルミニウム合金等のパネルのみで構成してもよい。
【0030】
次に、上述した車両用フードエアバッグ装置10のシール構造について詳細に説明する。
【0031】
本実施形態の場合、前述したようにフードインナパネル20にフードインナ側開口部26が形成されており、エアバッグモジュール22はフードインナ側開口部26内へフード下方側から挿入されて組み付けられる。このため、ロアプレート24の前端部24Aの上面及びエアバッグケース46の後壁46Bの下端フランジ部の上面とフードインナパネル20の下面との間にスポンジ等のシール材27が介装され、これによりフードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の周縁部とエアバッグモジュール22との間がシールされている。なお、本実施形態の場合、エアバッグケース46及びロアプレート24の二部材で、請求項1記載の「エアバッグケース」が構成されている。
【0032】
以下、ロアプレート24の前端部24Aとフードインナパネル20との合わせ部を「前側合わせ部54A」と称し、エアバッグケース46の後壁46Bの下端フランジ部とフードインナパネル20との合わせ部を「後側合わせ部54B」と称し、双方を総称するときは単に「合わせ部54」と称す。
【0033】
また、ロアプレート24の後底部24Dの下面には、フード14の後端部14Aとウインドシールドガラス64の下端部との間に車両幅方向に沿って延在する樹脂製のカウルルーバ52の先端部が配置されている。
【0034】
具体的には、カウルルーバ52は、フードインナパネル20の後端部下方に配置されて車両前方上側へ緩やかな傾斜角度で傾斜する基部52Aと、この基部52Aの前端部から急角度で車両前方上側へ傾斜する(立ち上がる)傾斜部52Bと、この傾斜部52Bの上端部からロアプレート24の後底部24Dに沿って略平行に車両前方側へ延出するシール材保持部52Cと、を含んで構成されている。シール材保持部52Cにはゴム等の弾性材料によって構成されたシール材56が装着されており、フードインナパネル20の下面に弾性的に圧接されている。これにより、カウルルーバ52とフードインナパネル20の下面とのシールラインSが確定されている。
【0035】
ここで、通常、フード14は、後端から前端へかけて所定角度前傾した傾斜面として配置されている。このときのフードインナパネル20の底面20Aを基準として見た場合(底面基準線を一点鎖線Pで示す)に、前側合わせ部54Aの方が後側合わせ部54Bよりも高い位置に設定されており、この点に本実施形態の特長がある。さらに言及すると、前側合わせ部54Aの高さは、ウインドシールドガラス64の下端部側に車両幅方向に沿って延在する樋状のカウル62の長手方向の両端部にある図示しない排水口の高さQよりも高く設定されている。
【0036】
一方、前述したようにフードアウタパネル16には、バッグ膨出用開口部18が形成されている。このバッグ膨出用開口部18はエアバッグドア48によって開放可能に塞がれているが、このエアバッグドア48はバッグ膨出用開口部18の上方側から組み付けられる。このため、エアバッグドア48の周縁部とバッグ膨出用開口部18との間にも、スポンジ等のシール材68が介装されており、これによりフードアウタパネル16におけるフードインナ側開口部26とエアバッグドア48との前側合わせ部70A及び後側合わせ部70Bがシールされている。
【0037】
さらに、本実施形態では、バッグ膨出用開口部18におけるフード前後方向の長さL1が、エアバッグケース46における開放側端部30のフード前後方向の長さL2よりも長く設定されている。従って、エアバッグケース46の前壁46A及び後壁46Bは、バッグ膨出用開口部18の内側に納められている。なお、前壁46A及び後壁46Bの上端部はエアバッグケース46の内方側へ屈曲されて絞り形状とされている。
【0038】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0039】
車両12が歩行者等の衝突体と前面衝突すると、インフレータ58が作動して複数のガス噴出孔からガスが噴出される。このため、エアバッグケース46内に折り畳み状態で格納されたエアバッグ60が膨張し、エアバッグドア48を下面側から押圧する。エアバッグドア48に作用するバッグ膨張圧が所定値に達すると、エアバッグドア48は展開ヒンジ部を中心としてフード外方側(ウインドシールドガラス64側)へ展開される。これにより、フード後端側に形成されたバッグ膨出用開口部18が開放されて、図3に示されるように、エアバッグ60が車両平面視で略コ字状になるように膨張展開される。その結果、膨張展開したエアバッグ60の本体部60A或いは延長部60Bに、フード上方側から歩行者等の衝突体が受け止められることにより、前面衝突時の衝突エネルギーが吸収されて歩行者等の衝突体がボディーから受ける反力を下げることができる。
【0040】
ここで、本実施形態では、エアバッグモジュール22がフードインナパネル20に形成されたフードインナ側開口部26内へフードインナパネル20の下方側から挿入されて、フードインナ開口部26の周縁部に固定される構成を採っているので、仮にフードインナパネル20上に水が浸入すると、エアバッグケース46、ロアプレート24におけるフードインナパネル20との合わせ部54から水が漏れ出してフードインナパネル20の下方、つまりエンジンルーム13内へ落ちることが懸念される。特に、フード14は後端から前端にかけて所定角度で傾斜されているので、エンジンルーム13により近い前側合わせ部54Aでの水漏れが懸念される。なお、仮に後側合わせ部54Bから水がフードインナパネル20の下方へ漏れ出したとしても、カウルルーバ52で受け止められて図示しないカウルインナパネル内に流れてカウルインナパネルの両サイドから車外へ排水されるので、エンジンルーム13内へ水が落ちる心配はない。
【0041】
しかし、本実施形態では、フードインナパネル20の底面基準線Pを基準として見た場合に、前側合わせ部54Aの高さを後側合わせ部54Bの高さよりも高く設定したので、前側合わせ部54Aには水が廻り難い。従って、エンジンルーム13内へ水が落ちる心配はない。その結果、本実施形態によれば、エアバッグモジュール22廻りからエンジンルーム13内へ水が浸入するのを効果的に防ぐことができる。
【0042】
特に本実施形態では、フードインナパネル20の底面基準線Pだけでなく、カウルインナパネルの図示しない排水口の高さQよりも高くなるように前側合わせ部54Aの高さが設定されているので、カウルインナパネルから水が溢れるような状況下においても、前側合わせ部54Aからの漏水を防ぐことができる。
【0043】
また、本実施形態では、フードアウタパネル16に形成されたバッグ膨出用開口部18におけるフード前後方向の長さL1がエアバッグケース46における開放側端部30のフード前後方向の長さL2よりも長く設定されているため、エアバッグドア48とバッグ膨出用開口部18との合わせ部70から浸入した水はエアバッグケース46内には入らず、フードインナパネル20上に落ちる。ここで、本実施形態では、フードインナパネル20の底面基準線Pを基準として見た場合に、前側合わせ部54Aの高さを後側合わせ部54Bの高さよりも高く設定したので、フードインナパネル20上に落ちた水が、エアバッグケース46とフードインナ側開口部26との合わせ部54Aから水が漏れ出す可能性は非常に低い。なお、万一後側合わせ部54Bから水が漏れ出したとしても、カウルルーバ52におけるフードインナパネル20とのシールラインSを越えることはなく、上記と同様にしてカウルインナパネルから車外へ排水される。
【0044】
総括すると、エアバッグドア48とバッグ膨出用開口部18との合わせ部70はシール材68によってシールされているが、バッグ膨出用開口部18が車両幅方向に長い大きな開口であることから、シール材68は合わせ部70の全周に配置されている訳ではない。このため、当該合わせ部70から雨水等の水が浸入することが考えられるが、バッグ膨出用開口部18の前後長L1をエアバッグケース46の開放側端部30の前後長L2よりも大きくしているので、合わせ部70から万一水が浸入してもその水はエアバッグケース46内に落下することはなく、エアバッグケース46の外方へ落ちる。この水はフードインナパネル20のフードインナ側開口部26を塞いでいるロアプレート24側へ流れて溜まるが、前側合わせ部54Aは後側合わせ部54Bよりも高い位置に設定されているため、前側合わせ部54Aから水がから漏れ出そうとすることはなく、万一の場合でも後側合わせ部54Bから漏れ出そうとする。そして、万一、後側合わせ部54Bから水が漏れ出したとしても、フードインナパネル20の下方側に延在し図示しないカウルインナパネルへ導水する下り勾配のカウルルーバ52上に落ち、カウルインナパネル内へ排水される。上記より、エンジンルーム13への水の浸入を効果的に防ぐことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、カウルルーバ52を基部52Aと傾斜部52Bとシール材保持部52Cとを備えた構成としたが、最終的なシールラインSの手前に急角度の傾斜部52Bを設定することにより、以下の効果が得られる。すなわち、通常は、降雨時等の水はウインドシールドガラス64を伝ってカウルインナパネル内へ流下し、カウルインナパネルの長手方向の両端部から車外へ排水されるが、大雨のとき等は排水が追いつかないことも考えられ、その場合、カウルルーバ52側へ水が流れ込む可能性がある。しかし、カウルルーバ52には急角度の傾斜部52BがシールラインSの手前に設定されているため、逆流する水の勢いが当該傾斜部52Bで堰き止められることによって一旦勢いを無くす。つまり、傾斜部52Bには、カウルルーバ52を逆流する水が勢いのあるままシール材56に当たるのを防ぐ効果がある。
【0046】
また、ロアプレート24の下方側にはエンジンルーム13内に配設されたエンジン部品がかなり近いところまで配置されるため、カウルルーバ52をロアプレート24とエンジン部品との狭い隙間に延設させること自体が難しく、通常は行われない。つまり、通常は、カウルルーバ52のシールラインSの位置はロアプレート24の後底部24Dの下面に設定される。そのような状況下において、前側合わせ部54Aの高さを後側合わせ部54Bの高さよりも高くしておくところにこの防水構造の創意工夫がある。これにより、カウルルーバ52のシールラインSの位置を従来通りとすることができ、設計変更せずに済む。
【0047】
さらに、本実施形態のエアバッグケース46の底壁部を構成するロアプレート24は深底の前底部24Cと浅底の後底部24Dとを備えており、フードインナ側開口部26よりもかなり低い位置まで下げられているが、この点も前側合わせ部54Aに水が届くのを抑制する効果がある。
【0048】
〔本実施形態の補足説明〕
上述した本実施形態では、エアバッグ60が膨張展開すると、フード14の後端部14A及びカウル62のみならず、(ウインドシールドガラス64の下端部や)左右のフロントピラー66の下部をも覆う構成としたが、少なくともフード14の後端部14A(フードアウタパネル16の後端部16A)及びカウル62を覆う構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る組付状態の車両用フードエアバッグ装置を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図(図2の1−1線拡大断面図)である。
【図2】図1に示される車両用フードエアバッグ装置の非作動状態を示す車両の外観斜視図である。
【図3】図2に示される車両用フードエアバッグ装置の作動状態を示す車両の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用フードエアバッグ装置
12 車両
13 エンジンルーム
14 フード
14A 後端部
16 フードアウタパネル
18 バッグ膨出用開口部
20 フードインナパネル
22 エアバッグモジュール
24 ロアプレート(エアバッグケース)
26 フードインナ側開口部(組付用開口部)
27 シール材
30 開放側端部(上方側開放部)
46 エアバッグケース
48 エアバッグドア(カバー)
52 カウルルーバ
54A 前側合わせ部
54B 後側合わせ部
56 シール材
58 インフレータ(ガス発生手段)
60 エアバッグ
64 ウインドシールドガラス
P 底面基準線
L1 バッグ膨出用開口部におけるフード前後方向の長さ
L2 エアバッグケースにおける開放側端部のフード前後方向の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突体との前面衝突時にガスを噴出するガス発生手段と、折り畳み状態で格納されかつガス発生手段によって発生したガスの供給を受けて膨張しフードアウタパネルに形成されたバッグ膨出用開口部を覆うカバーを展開させてフード上へ膨張展開されるエアバッグと、ガス発生手段及びエアバッグを収容するエアバッグケースと、を含んで構成されたエアバッグモジュールを、フードインナパネルに形成された組付用開口部内へフードインナパネルの下方側から挿入して当該組付用開口部の周辺に固定する車両用フードエアバッグ装置に適用されるシール構造であって、
フードインナパネルの底面基準で見て、フードインナパネルとエアバッグケースの前側合わせ部をフードインナパネルとエアバッグケースの後側合わせ部よりも高い位置に設定した、
ことを特徴とする車両用フードエアバッグ装置のシール構造。
【請求項2】
前記バッグ膨出用開口部におけるフード前後方向の長さは、前記エアバッグケースにおける上方側開放部のフード前後方向の長さよりも長く設定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−196801(P2007−196801A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16599(P2006−16599)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】