説明

車両用入力装置

【課題】操舵時でも運転者が意図した操作ができる車両用入力装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ステアリングホイールから各種入力を行うための車両用入力装置1であって、ステアリングホイールに設けられ、運転者が操作方向を入力するための操作方向入力手段10と、操作方向入力手段で入力された操作方向を検出する操作方向検出手段10と、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段20と、操作方向入力手段による操作方向にステアリングホイールの操舵角に応じた補正角を加味して指示方向に変換する指示方向変換手段51とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールから各種入力を行うための車両用入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、運転者が運転中にステアリングホイールを握ったままで各種入力操作が行えるように、ステアリングホイールに操作デバイスを設けたものがある。このような操作デバイスとしては、例えば、タッチトレーサ、トラックボール、ジョイスティックがある。特許文献1に記載の装置では、ステアリングホイールにジョイスティックを設け、運転者のジョイスティックによる操作方向に応じてディスプレイに表示されているナビゲーションシステムの画面上のカーソルを移動させて表示選択項目を選択する。
【特許文献1】特開2001−160336号公報
【特許文献2】特開2001−322516号公報
【特許文献3】特開2006−264615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運転者がステアリングホイールを介して操舵を行った場合、その操舵角に応じてステアリングホイールに設けられた操作デバイスによる操作方向と運転者が意図した方向とにずれが生じるため、画面上のカーソルなどの動きが運転者の意図する動きと異なる場合がある。特に、操舵角が大きくなるほど、ステアリングホイールを握っている運転者は指を動かし難くなるため、運転者が意図した操作からのずれが大きくなる。
【0004】
そこで、本発明は、操舵時でも運転者が意図した操作ができる車両用入力装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用入力装置は、ステアリングホイールから各種入力を行うための車両用入力装置であって、ステアリングホイールに設けられ、運転者が操作方向を入力するための操作方向入力手段と、操作方向入力手段で入力された操作方向を検出する操作方向検出手段と、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段と、操作方向検出手段で検出した操作方向入力手段による操作方向に操舵角検出手段で検出したステアリングホイールの操舵角に応じた補正角を加味して指示方向に変換する指示方向変換手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
この車両用入力装置では、運転者によってステアリングホイールに設けられている操作方向入力手段で操作方向が入力されると、操作方向検出手段によりその操作方向を検出する。また、車両用入力装置では、操舵角検出手段によりステアリングホイールの操舵角を検出する。そして、車両用入力装置では、指示方向変換手段により操作方向入力手段の実際の操作方向にステアリングホイールの操舵角に応じた補正角を加味し、運転者の指示方向に変換する。このように、車両用入力装置では、運転者による実際の操作方向にステアリングホイールの操舵角に応じた補正角を加味して運転者の指示方向とすることにより、操舵時でも指示方向と運転者の意図した方向とのずれを極力抑制でき、運転者が意図した操作入力を行うことができる。
【0007】
本発明の上記車両用入力装置では、指示方向変換手段は、操舵角検出手段で検出したステアリングホイールの操舵角が大きくなるほど当該操舵角との差の大きい補正角とすると好適である。このように、車両用入力装置では、ステアリングホイールの操舵角が大きくなるほどその操舵角との差の大きい補正角とすることにより、操舵角が大きくなるほど運転者は指を動かし難くなるが、大きな操舵角でも適正な補正角を加味した指示方向に変換でき、指示方向と運転者の意図した方向とずれを極力抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、運転者による実際の操作方向にステアリングホイールの操舵角に応じた補正角を加味して運転者の指示方向とすることにより、操舵時でも指示方向と運転者の意図した方向とのずれを極力抑制でき、運転者が意図した操作入力を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用入力装置の実施の形態を説明する。
【0010】
本実施の形態では、本発明に係る車両用入力装置を、ステアリングホイールに設けられるタッチトレーサによって入力操作を行うタッチトレーサ装置に適用する。本実施の形態に係るタッチトレーサ装置は、ナビゲーションシステムの各種設定に用いられる入力装置であり、ディスプレイの設定画面から離れた遠隔式の入力装置である。本実施の形態には、操舵角と補正角との関係が異なる3つの形態があり、第1の実施の形態が補正角=操舵角とする線形の関係であり、第2の実施の形態が補正角=k(0<k<1)×操舵角とする線形の関係であり、第3の実施の形態が操舵角と補正角とが非線形の関係である。
【0011】
図1〜図3を参照して、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係るタッチトレーサ装置の構成図である。図2は、タッチトレーサ部によるナビゲーションシステムの設定画面の一例であり、(a)が操舵していない場合であり、(b)が操舵している場合である。図3は、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置で用いる操舵角と補正角との関係を示すグラフである。
【0012】
タッチトレーサ装置1は、運転者がタッチトレーサによって入力操作することによって、ディスプレイに表示される各種設定画面の複数のボタンに対する選択及び決定をするための入力装置である。特に、タッチトレーサ装置1では、操舵時でも運転者が意図した操作ができるように、タッチトレーサに入力された実際の操作方向に操舵角自体(補正角)を加味して運転者の指示方向とする。タッチトレーサ装置1は、タッチトレーサ部10、操舵角センサ20、ナビECU[Electronic Control Unit]30、ディスプレイ40及びECU51から構成される。
【0013】
なお、第1の実施の形態では、タッチトレーサ部10が特許請求の範囲に記載する操作方向入力手段及び操作方向検出手段に相当し、操舵角センサ20が特許請求の範囲に記載する操舵角検出手段に相当し、ECU51における処理が特許請求の範囲に記載する指示方向変換手段に相当する。
【0014】
図2を参照して、タッチトレーサ装置1における設定画面について説明しておく。図2に示す例は、ナビゲーションシステムでの目的地設定画面DSにおいて施設ボタンIBが選択操作された場合を示している。本実施の形態では、設定画面におけるボタンに対する太枠表示でカーソルを示し、設定画面における矢印でポインタを示している。カーソルは、設定画面の複数のボタンの中で選択されているボタンを示す。ポインタは、設定画面上でのタッチトレーサによる指示位置を示す。
【0015】
各種設定画面には、複数のボタンが配置され、各ボタンに対して領域が設定されている。運転者がタッチトレーサ部10上で指を上下左右方向に動かすと、そのタッチトレーサ部10上での操作方向(ECUで変換した指示方向)に対応した設定画面上の位置にポインタ(矢印)が表示される。ポインタがあるボタンの設定領域に入ると、そのボタンがカーソル表示(太枠表示)される。ボタンがカーソル表示されているときに、運転者がタッチトレーサ部10に指で決定操作(例えば、強く押す)すると、そのカーソル表示されているボタンの項目が決定される。そして、次の設定画面又は地図などに画面が遷移する。図2に示す例の場合、運転者がタッチトレーサ部10によって目的地設定画面DSにおいて施設ボタンIBを選択操作したので、施設ボタンIBにカーソルが表示されるとともに施設ボタンIB内にポインタが表示されている。
【0016】
それでは、タッチトレーサ装置1の各部について説明する。
【0017】
タッチトレーサ部10は、遠隔操作でディスプレイ40に表示される画面上のポインタの位置を動かしながらボタンを選択するための操作手段であり、さらに、選択されているボタン(カーソル表示されているボタン)を決定するための操作手段である。タッチトレーサ部10は、ステアリングホイールの所定部位(例えば、ボス、スポーク)に取り付けられ、運転者がステアリングホイールを握っている場合に親指で操作可能な箇所に配置される。タッチトレーサ部10は、指を動かすための略正方形状の平面のタッチ部を有しており、指の動きで上下左右2方向にアナログ的に動作可能ある。また、タッチトレーサ部10は、タッチ部への指の接触状態を検出する触覚センサを有している。この触覚センサでは、タッチ部に指が接触しているか否か、接触している場合には接触している指が動いた操作方向(例えば、タッチ部の上方向を0°とした場合の右回転方向の角度)、接触している場合には接触している指が押す強さなどを検出し、それらの検出情報を操作検出信号としてECU51に送信する。
【0018】
操舵角センサ20は、運転者によってステアリングホイールに入力された操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ20では、ステアリングホイールの操舵角を検出し、その検出した操舵角を操舵角信号としてECU51に送信する。
【0019】
ナビECU30は、ナビゲーションシステム用のECUであり、自車両の現在位置や走行方向の検出及び目的地までの経路案内制御などを行う。特に、ナビECU30では、各種設定を行う場合、複数のボタンを配置させた各設定画面のディスプレイ40に表示するための画像を生成する。この画像を生成する際に、ECU51からタッチトレーサ情報信号を受信すると、ナビECU30では、タッチトレーサ情報信号に含まれる指示方向に応じた画面上の位置を算出し、設定画面画像においてその算出した位置にポインタ表示するための画像を加える。また、ナビECU30では、その指示方向に応じた画面上の位置が設定画面の複数のボタンの各設定領域内に入っているか否かを判定し、あるボタンの設定領域内に入っている場合には設定画面画像においてそのボタンをカーソル表示するための画像を加える。そして、ナビECU30では、その生成した設定画面画像を画像信号としてディスプレイ40に送信する。
【0020】
図2に示す例の場合、目的地設定画面DSがディスプレイ40に表示され、目的地設定画面DSの施設ボタンIBにカーソルが表示されるとともに、施設ボタンIB内にポインタが表示されている。
【0021】
また、設定画面のあるボタンをカーソル表示している場合にECU51からタッチトレーサ情報信号を受信すると、ナビECU30では、タッチトレーサ情報信号に含まれる決定のON/OFF情報に基づいてONの場合にはそのカーソル表示されているボタンの項目を決定し、次の画面に遷移する。
【0022】
ディスプレイ40は、車載の各種システムで共用されるディスプレイである。ディスプレイ40では、ナビECU30からの画像信号を受信すると、その画像信号に示される画像を画面表示する。
【0023】
ECU51は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[ReadOnly Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなり、タッチトレーサ装置1を統括制御する電子制御ユニットである。ECU51では、一定時間毎に、タッチトレーサ部10から操作検出信号及び操舵角センサ20から操舵角信号を受信する。そして、ECU51では、これら各信号に基づいて各処理を行い、タッチトレーサ情報信号をナビECU30に送信する。
【0024】
具体的には、ECU51では、操舵角信号を受信する毎に、操舵角信号に示される操舵角を補正角として設定する。このように補正角を設定した場合、図3に示すように、操舵角αと補正角βとは、比例定数を1とする線形な関係(α=β)である。なお、補正角の設定については、常に操舵角信号を受信する毎に設定するのではなく、タッチトレーサ部10に対して操作入力がある場合に操舵角信号を受信する毎に設定してもよい。
【0025】
ECU51では、操作検出信号を受信する毎に、操作検出信号に含まれる接触の有無情報に基づいて、タッチトレーサ部10に操作入力があるか否かを判定する。操作入力がある場合、ECU51では、操作検出信号に含まれるタッチトレーサ部10での操作方向を補正角で補正し、指示方向を算出する。操舵角が右回転方向の角度の場合には操作方向に右回転方向に補正角を加味して指示方向を算出し、操舵角が左回転方向の角度の場合には操作方向に左回転方向に補正角を加味して指示方向を算出する。そして、ECU51では、その指示方向を示すタッチトレーサ情報信号をナビECU30に送信する。
【0026】
図2に示す例で説明する。ここでは、運転者の意図する操作方向として、右方向への操作入力とする。図2(a)に示すように、操舵されていない場合、操舵角が0°なので、補正角は0°となり、タッチトレーサ部10での実際の操作方向(右方向)がそのまま指示方向となる。図2(b)に示すように、右回転方向にα°操舵された場合、補正角はα°となり、タッチトレーサ部10での実際の操作方向(右斜め上方向)に対して右回転方向にα°が加味され、右方向の指示方向となる。
【0027】
また、操作入力がある場合、ECU51では、操作検出信号に含まれる接触の強さが閾値以上か否かを判定する。そして、ECU51では、接触の強さが閾値以上の場合には決定のON/OFF情報としてONを設定し、接触の強さが閾値未満の場合には決定のON/OFF情報としてOFFを設定し、そのON/OFF情報を示すタッチトレーサ情報信号をナビECU30に送信する。閾値は、運転者によるタッチトレーサへの決定操作を判定するための閾値であり、実験などによって予め設定される。
【0028】
図1〜図3を参照して、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1の動作について説明する。ここでは、図2に示す目的地設定の例で説明する。
【0029】
操舵角センサ20では、一定時間毎に、ステアリングホイールの操舵角を検出し、操舵角信号をECU51に送信している。操舵角信号を受信すると、ECU51では、操舵角信号に示される操舵角をそのまま補正角として設定する。
【0030】
タッチトレーサ部10では、一定時間毎に、指の接触の有無、接触している場合には操作方向や接触の強さを検出し、その操作検出信号をECU51に送信している。操作検出信号を受信すると、ECU51では、操作検出信号に含まれる接触の有無情報に基づいてタッチトレーサ部10に操作入力があるか否かを判定し、操作入力がある場合には指示方向の算出処理や決定操作の判定処理を行う。
【0031】
例えば、図2に示すように、目的地を設定するために、ディスプレイ40に目的地設定画面DSが表示されている場合、運転者が施設ボタンを選択するためにタッチトレーサ部10のタッチ部上で指を動かす。この場合、タッチトレーサ部10では、そのタッチ部での指の操作方向を検出し、その操作方向を操作検出信号としてECU51に送信する。この操作検出信号を受信すると、ECU51では、補正角を用いて操作検出信号に示される操作方向を補正して指示方向に変換し、その指示方向を示すタッチトレーサ情報信号をナビECU30に送信する。
【0032】
このタッチトレーサ情報信号を受信すると、ナビECU30では、指示方向に応じて画面上の位置を算出し、目的地設定画面DS内の施設ボタンIB内にポインタを表示しかつ目的地設定画面DSの施設ボタンIBにカーソルを表示する目的地設定画面画像を画像信号としてディスプレイ40に送信する。この画像信号を受信すると、ディスプレイ40では、施設ボタンIB内でポインタ表示するとともに施設ボタンIBをカーソル表示した目的地設定画面DSを表示する。
【0033】
このタッチトレーサ装置1によれば、実際の操作方向を操舵角に応じた補正角で補正して運転者の指示方向とすることにより、操舵時でも画面上での操作位置と運転者の意図した操作位置とずれを極力抑制でき、運転者が意図した操作入力を行うことができる。特に、タッチトレーサ装置1では、補正角として操舵角をそのまま設定するので、補正時の処理負荷を軽減できる。
【0034】
図1及び図4を参照して、第2の実施の形態に係るタッチトレーサ装置2について説明する。図4は、第2の実施の形態に係るタッチトレーサ装置で用いる操舵角と補正角との関係を示すグラフである。タッチトレーサ装置2では、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
タッチトレーサ装置2は、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1と比較すると、操舵角から補正角を求める処理だけが異なる。そこで、その点のみ詳細に説明する。タッチトレーサ装置2は、タッチトレーサ部10、操舵角センサ20、ナビECU30、ディスプレイ40及びECU52から構成される。第2の実施の形態では、ECU52における第1の実施の形態と異なる処理についてのみ詳細に説明する。なお、第2の実施の形態では、ECU52における処理が特許請求の範囲に記載する指示方向変換手段に相当する。
【0036】
ECU52では、操舵角センサ20からの操舵角信号を受信する毎に、操舵角信号に示される操舵角に定数k(0<k<1)を乗算し、その乗算値を補正角として設定する。このように補正角を設定した場合、図4に示すように、操舵角αと補正角βとは比例定数を1未満の正値とする線形な関係(β=k×α)であり、第1の実施の形態のように操舵角αを補正角βとしてそのまま設定する場合よりも操舵角αが大きくなるほど操舵角αとの差が大きくなる補正角βが設定される。このように補正角を設定するのは、操舵角が大きくなるほど運転者は指を動かし難くなるので、操舵中の運転者の指の動きにより合った補正角を設定するためである。この定数kは、実験などによって予め設定される(特に、運転者毎に設定されるとよい)。そして、ECU52では、第1の実施の形態に係るECU51と同様に、操作検出信号に含まれるタッチトレーサ部10での操作方向をその補正角で補正し、指示方向を算出する。
【0037】
タッチトレーサ装置2の動作は、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1の動作と比較すると、操舵角センサ20から操舵角信号を受信すると操舵角信号に示される操舵角に定数kを乗算して補正角を算出する点だけが異なる。
【0038】
このタッチトレーサ装置2によれば、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1と同様の効果を有する。特に、タッチトレーサ装置2では、補正角として操舵角に対して比例定数が1未満の線形な値を設定することにより、操舵角が大きくなるほど運転者の指が動かし難くなるが、大きな操舵角でもより適正な補正角を加味した指示方向に変換でき、操舵時でも画面上での操作位置と運転者の意図した操作位置とずれを極力抑制できる。
【0039】
図1及び図5を参照して、第3の実施の形態に係るタッチトレーサ装置3について説明する。図5は、第3の実施の形態に係るタッチトレーサ装置で用いる操舵角と補正角との関係を示すグラフである。タッチトレーサ装置3では、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
タッチトレーサ装置3は、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1と比較すると、操舵角から補正角を求める処理だけが異なる。そこで、その点のみ詳細に説明する。タッチトレーサ装置3は、タッチトレーサ部10、操舵角センサ20、ナビECU30、ディスプレイ40及びECU53から構成される。第3の実施の形態では、ECU53における第1の実施の形態と異なる処理についてのみ詳細に説明する。なお、第3の実施の形態では、ECU53における処理が特許請求の範囲に記載する指示方向変換手段に相当する。
【0041】
ECU53では、操舵角センサ20からの操舵角信号を受信する毎に、操舵角信号に示される操舵角を変数として非線形関数f(操舵角:α)により補正角を算出する。このように補正角を設定した場合、例えば、操舵角αと補正角βとは図5に示すような非線形な関係になり、第1の実施の形態のように操舵角αを補正角βとしてそのまま設定する場合よりも操舵角αが小さい領域では操舵角αより大きな非線形な値が設定され、操舵角αが大きい領域では操舵角αより小さい非線形な値が設定される。このように補正角を設定するのは、第2の実施の形態で記載した同様の理由である。この非線形関数f(α)は、実験などによって予め設定される(特に、運転者毎に設定されるとよい)。そして、ECU53では、第1の実施の形態に係るECU51と同様に、操作検出信号に含まれるタッチトレーサ部10での操作方向をその補正角で補正し、指示方向を算出する。
【0042】
タッチトレーサ装置3の動作は、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1の動作と比較すると、操舵角センサ20から操舵角信号を受信すると操舵角信号に示される操舵角を変数として非線形関数f(α)で補正角を算出する点だけが異なる。
【0043】
このタッチトレーサ装置3によれば、第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置1と同様の効果を有する。特に、タッチトレーサ装置3では、補正角として操舵角に対して非線形な値を設定することにより、操舵角が大きくなるほど運転者の指が動かし難くなるが、操舵角に対してより適正な補正角を加味した指示方向に変換でき、操舵時でも画面上での操作位置と運転者の意図した操作位置とずれを極力抑制できる。
【0044】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0045】
例えば、本実施の形態では操作デバイスとしてステアリングホイールに設けられるタッチトレーサに適用したが、タッチトレーサ以外にもジョイスティック、トラックボールなどの他の操作デバイスにも適用可能である。
【0046】
また、本実施の形態ではナビゲーションシステムの設定画面への入力に適用したが、他の様々な画面(例えば、エアコンの設定画面、オーディオの設定画面)に対する入力、車載の各種装置(例えば、各種ミラーの角度設定、周辺監視カメラの撮影方向設定)に対する入力などの様々な入力に適用可能である。
【0047】
また、本実施の形態では操舵角と補正角との関係として3つの関係を示したが、操舵中の指の動き難さを考慮した他の操舵角と補正角との関係でもよい。例えば、比例定数が1より大きい線形な関係、操舵角が小さい領域では操舵角より小さくなり、操舵角が大きい領域では操舵角より大きくなる非線形な関係がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施の形態に係るタッチトレーサ装置の構成図である。
【図2】タッチトレーサ部によるナビゲーションシステムの設定画面の一例であり、(a)が操舵していない場合であり、(b)が操舵している場合である。
【図3】第1の実施の形態に係るタッチトレーサ装置で用いる操舵角と補正角との関係を示すグラフである。
【図4】第2の実施の形態に係るタッチトレーサ装置で用いる操舵角と補正角との関係を示すグラフである。
【図5】第3の実施の形態に係るタッチトレーサ装置で用いる操舵角と補正角との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1,2,3…タッチトレーサ装置、10…タッチトレーサ部、20…操舵角センサ、30…ナビECU、40…ディスプレイ、51,52,53…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールから各種入力を行うための車両用入力装置であって、
ステアリングホイールに設けられ、運転者が操作方向を入力するための操作方向入力手段と、
前記操作方向入力手段で入力された操作方向を検出する操作方向検出手段と、
ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操作方向検出手段で検出した操作方向入力手段による操作方向に前記操舵角検出手段で検出したステアリングホイールの操舵角に応じた補正角を加味して指示方向に変換する指示方向変換手段と
を備えることを特徴とする車両用入力装置。
【請求項2】
前記指示方向変換手段は、前記操舵角検出手段で検出したステアリングホイールの操舵角が大きくなるほど当該操舵角との差の大きい補正角とすることを特徴とする請求項1に記載する車両用入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−143324(P2010−143324A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321108(P2008−321108)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】