説明

車両用制御装置および車両用制御方法

【課題】電動機を駆動源とした搭載した車両の異音の発生を低減する。
【解決手段】MG−ECUは、車両の停止中にブレーキペダルの踏み込み量が減少されたときに、第2MG14からの出力トルクを増加させるとともに、出力トルクの増加の期間中に第2MG14からの出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、第2MG14を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を駆動源として搭載した車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の1つとして、駆動用の電動機からの駆動力により走行する電気自動車やハイブリッド車両が注目されている。このような車両の発進時においては、電動機が出力トルクを発生させる際に動力伝達装置に含まれる複数のギヤの歯部同士の接触等により異音が発生する場合がある。
【0003】
このような問題に鑑みて、特開平11−018214号公報(特許文献1)に開示された電気自動車の制御装置によると、トルク指令にステップ関数のみならず無駄時間要素や遅れ要素を取り入れることにより、駆動・回生時にあってギヤの接触を円滑にできて不快音や不快振動を低減でき、またアクセルフィーリングやブレーキフィーリングを良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−018214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の駆動力の要求に対する応答性を考慮した場合には、上述した公報に開示された電気自動車の制御装置のように無断時間要素や遅れ要素を取り入れても異音の発生を抑制できない場合がある。そのため、異音の発生の抑制には改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電動機を駆動源とした搭載した車両の異音の発生を低減する車両用制御装置および車両用制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に係る車両用制御装置は、ギヤ機構を介して車両の駆動軸に連結される電動機と、ブレーキペダルとを備える車両に搭載される車両用制御装置である。この車両用制御装置は、車両の停止中にブレーキペダルの踏み込み量が減少されたときに、電動機からの出力トルクを増加させるとともに、出力トルクの増加の期間中に電動機からの出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、電動機を制御する。
【0008】
好ましくは、車両用制御装置は、踏み込み量がゼロのときに予め定められた出力トルクを電動機から出力させるように電動機を制御し、車両の停車中に踏み込み量がゼロになったときに予め定められた出力トルクを電動機から出力させる場合には、出力トルクが予め定められた出力トルクまで増加する前に出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、電動機を制御する。
【0009】
さらに好ましくは、車両用制御装置は、車両の停止中に踏み込み量が減少されたときに、出力トルクが増加するように電動機に対する出力トルクの指令値を車両の状態に応じた目標値まで増加させる場合に、指令値が目標値に到達する前に出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように指令値を変化させる。
【0010】
さらに好ましくは、車両用制御装置は、車両の停止中に踏み込み量が減少されたときに指令値を目標値まで増加させる場合に、指令値が目標値に到達する前に目標値よりも低い第1の値になるまで増加させた後に第1の値よりも低い第2の値まで減少するように指令値を変化させる。
【0011】
さらに好ましくは、車両用制御装置は、指令値が第2の値まで減少した後に予め定められた期間が経過するまで第2の値を指令値として維持し、予め定められた期間が経過した後に目標値まで前記指令値を増加させる。
【0012】
さらに好ましくは、車両用制御装置は、ギヤ機構が出力トルクを駆動軸に伝達する際に接触するギヤの歯部間の隙間が予め定められた期間が経過するまでになくなるように指令値を変化させる。
【0013】
さらに好ましくは、車両は、アクセルペダルをさらに含む。車両用制御装置は、車両の停止時において踏み込み量がしきい値よりも低下した場合、アクセルペダルが踏み込まれていないときに車両がクリープ走行に相当する走行状態に移行するための目標値を選択し、アクセルペダルが踏み込まれているときにアクセルペダルの踏み込み量に応じた目標値を選択する。
【0014】
この発明の他の局面に係る車両用制御方法は、ギヤ機構を介して車両の駆動軸に連結される電動機と、ブレーキペダルとを備える車両に搭載される車両用制御方法である。この車両用制御方法は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するステップと、車両の停止中に踏み込み量が減少されたときに、電動機からの出力トルクを増加させるとともに、出力トルクの増加の期間中に電動機からの出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、電動機を制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、車両の停車中にブレーキペダルの踏み込み量が減少されたときに、出力トルクの増加の期間中に電動機からの出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように電動機を制御する。これによって、出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有しない場合と比較して、ギヤ機構における機械的な隙間を緩やかに減少させることができる。そのため、ギヤ機構が電動機の出力トルクを駆動軸に伝達させる際の異音の発生を抑制することができる。したがって、電動機を駆動源とした搭載した車両の異音の発生を低減する車両用制御装置および車両用制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る車両用制御装置を搭載したハイブリッド車両の全体構成を示す図である。
【図2】ブレーキペダルの踏込解除後のq軸電流指令値の変化を示すタイミングチャート(その1)である。
【図3】ブレーキペダルの踏込解除後のq軸電流指令値の変化を示すタイミングチャート(その2)である。
【図4】本実施の形態に係る車両用制御装置であるMG−ECUの機能ブロック図である。
【図5】本実施の形態におけるブレーキペダルの踏込解除後のq軸電流指令値の変化の一例を示す図(その1)である。
【図6】本実施の形態に係る車両用制御装置であるMG−ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態に係る車両用制御装置であるMG−ECUの動作を示すタイミングチャートである。
【図8】本実施の形態におけるブレーキペダルの踏込解除後のq軸電流指令値の変化の一例を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両用制御装置が搭載された車両10は、第1モータジェネレータ(以下、MGと記載する)12と、第2MG14と、PCU16と、メインバッテリ28と、補機バッテリ100と、エアコンディショナコンプレッサ(以下、A/Cコンプレッサと記載する)102と、パワーマネージメントECU(Electronic Control Unit)300(以下、P−ECU300と記載する)と、エンジンECU400と、エンジン402と、動力分割装置404と、駆動輪406とを含む。本実施の形態においては、トランスミッション408は、第1MG12と、第2MG14と、動力分割装置404とを含む。
【0019】
本実施の形態において、車両10は、複数のギヤを有するギヤ機構を用いて第2MG14の出力トルクを駆動輪406に伝達するためのトランスミッション408を有するハイブリッド車両であるとして説明するが、特にハイブリッド車両に限定されるものではなく、回転電機を駆動源とし、ギヤ機構を有するトランスミッションを経由して駆動源の動力を駆動輪に伝達する車両であればよい。したがって、車両10は、電気自動車であってもよい。電気自動車としては、車体側に電動機が設けられるものであってもよいし、車輪側に電動機が設けられるものであってもよい。さらに、車両10は、前輪駆動車であるとして説明するが、後輪駆動車であってもよいし、車両10の構成に加えて、後輪を駆動するリアモータを搭載した車両であってもよい。
【0020】
また、本実施の形態においては、MG−ECU200と、P−ECU300と、エンジンECU400との3つのECUを用いて車両10の動作を制御するとして説明するが、上記3つのECUの機能を統合した1つのECU(たとえば、図1の一点鎖線の枠で囲われるECUが一例である)を用いて車両10の動作を制御するようにしてもよい。
【0021】
第1MG12、第2MG14およびエンジン402の各出力軸は、動力分割装置404に連結される。この車両10は、エンジン402および第2MG14の少なくともいずれか一方の駆動源からの駆動力によって走行する。エンジン402が発生する動力は、動力分割装置404によって2経路に分割される。一方は駆動輪406へ伝達される経路であり、もう一方は第1MG12へ伝達される経路である。
【0022】
第1MG12および第2MG14の各々は、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える三相交流回転電機である。第1MG12および第2MG14の各々は、U、VおよびW相の3つのステータコイルを含む。第1MG12および第2MG14の各々のU、VおよびW相の3つのステータコイルの一端は、中性点に共通接続されている。各相の他端は、各相上下アームのスイッチング素子の中間点と接続されている。
【0023】
第1MG12は、動力分割装置404によって分割されたエンジン402の動力を用いて発電する。たとえば、メインバッテリ28の残容量を示すSOC(State of Charge)が予め定められた値よりも低くなると、エンジン402が始動して第1MG12により発電が行なわれる。その発電された電力がPCU16に供給される。
【0024】
第2MG14は、PCU16から供給される電力を用いて駆動力を発生させる。第2MG14の駆動力は、駆動輪406に伝達される。なお、車両10の制動時等には、駆動輪406により第2MG14が駆動させられ、第2MG14が発電機として作動する。このようにして、第2MG14は、制動エネルギーを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。第2MG14により発電された電力は、PCU16を経由してメインバッテリ28に供給される。
【0025】
動力分割装置404は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤ(いずれも図示せず)とを含む遊星歯車である。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン402のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、第1MG12の回転軸に連結される。リングギヤは第2MG14の回転軸に連結される。
【0026】
メインバッテリ28は、再充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池や、大容量キャパシタ等である。
【0027】
なお、本実施の形態においては、メインバッテリ28を主電源として車両10に搭載された場合について説明するが、特にこのような構成に限定されるものではなく、たとえば、メインバッテリ28に加えて、1または2以上のサブバッテリが搭載されていてもよい。
【0028】
PCU16は、インバータ18と、昇圧コンバータ20と、DC/DCコンバータ22と、第1コンデンサ24と、システムメインリレー(以下、SMRと記載する)26と、MG−ECU200とを含む。
【0029】
インバータ18は、第1IPM(Intelligent Power Module)32と、第2IPM34と、第2コンデンサ36と、放電抵抗38とを含む。第1IPM32および第2IPM34の各々は、互いに並列に第1電力線MPLおよび第1アース線MNLに接続される。第1IPM32は、昇圧コンバータ20から供給される直流電力を交流電力に変換して第1MG12に出力する。第2IPM34は、昇圧コンバータ20から供給される直流電力を交流電力に変換して第2MG14に出力する。
【0030】
さらに、第1IPM32は、第1MG12において発電される交流電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ20に出力する。第2IPM34は、第2MG14において発電される交流電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ20に出力する。
【0031】
なお、第1IPM32および第2IPM34の各々は、たとえば、三相分のスイッチング素子を含むブリッジ回路から成る。
【0032】
第IPM32は、U相、V相、W相の上下アームを含む。各相の上下アームは第1電力線MPLと第1アース線MNLの間に互いに並列に接続される。各相の上下アームは、第1電力線MPLおよび第1アース線MNLの間に直列接続されたスイッチング素子を含む。
【0033】
たとえば、U相の上下アームは、スイッチング素子Q3,Q4を含む。V相の上下アームは、スイッチング素子Q5,Q6を含む。W相の上下アームは、スイッチング素子Q7,Q8を含む。また、スイッチング素子Q3−Q8に対して、逆並列ダイオードD3−D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3−Q8のオンオフは、MG−ECU200からのインバータ駆動信号によって制御される。
【0034】
スイッチング素子Q3−Q8として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等の電力用半導体スイッチング素子が用いられる。
【0035】
なお、第2IPM34は、第1IPM32と同様の構成を有する。そのため、その詳細な説明は繰返さない。
【0036】
第1IPM32は、MG−ECU200からのインバータ駆動信号に応じてスイッチング動作を行なうことにより第1MG12を駆動させる。第2IPM34は、MG−ECU200からのインバータ駆動信号に応じてスイッチング動作を行なうことにより第2MG14を駆動させる。
【0037】
MG−ECU200には、第1電流センサ60および第2電流センサ62が接続される。第1電流センサ60は、第1MG12に流れるモータ電流(相電流)を検出し、その検出したモータ電流をMG−ECU200に出力する。なお、三相電流iu1,iv1,iw1の瞬時値の和は零であるので、図1に示すように第1電流センサは、第1MG12の2相分のモータ電流(たとえば、V相電流iv1およびW相電流iw1)を検出するように配置すれば足りる。第2電流センサ62は、第2MG12に流れるモータ電流(相電流)を検出し、その検出したモータ電流をMG−ECU200に出力する。図1に示すように第2電流センサ62も、第1電流センサ60と同様に第2MG14の2相分のモータ電流(たとえば、V相電流iv2およびW相電流iw2)を検出するように配置すれば足りる。
【0038】
MG−ECU200には、第1レゾルバ50および第2レゾルバ52が接続される。第1レゾルバ50は、第1MG12の回転軸の回転角θ1を検出し、その検出した回転角θ1をMG−ECU200に出力する。MG−ECU200は、回転角θ1に基づき第1MG12の回転速度および角速度ω1(rad/s)を算出することができる。第2レゾルバ52は、第2MG14の回転軸の回転角θ2を検出し、その検出した回転角θ2をMG−ECU200に出力する。MG−ECU200は、回転角θ2に基づき第2MG14の回転速度および角速度ω2(rad/s)を算出することができる。
【0039】
なお、第1レゾルバ50および第2レゾルバ52については、回転角θ1,θ2をMG−ECU200にてモータ電圧や電流から直接演算する場合には配置を省略してもよい。
【0040】
また、MG−ECU200は、インバータ18からインバータ情報を受信する。インバータ情報は、たとえば、インバータ18の温度と、昇圧コンバータ20側の電圧および電流と、第1MG12に供給される各相の電流と、第2MG14に供給される各相の電流とのうちの少なくともいずれか一つの情報を含む。インバータ18には、上述したインバータ情報を取得するための各種センサ(図示せず)が設けられる。
【0041】
MG−ECU200は、予め記憶されたプログラムを図示しないCPU(Central Processing Unit)で実行することによるソフトウェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、インバータ18および昇圧コンバータ20の動作を制御する。
【0042】
メインバッテリ28は、SMR26を介在して昇圧コンバータ20に接続される。メインバッテリ28は、第2電力線PLの一方端と第2アース線NLの一方端とに接続される。第2電力線PLの他方端と第2アース線NLの他方端とは、昇圧コンバータ20に接続される。
【0043】
SMR32は、P−ECU300からの制御信号に基づいて、メインバッテリ28と昇圧コンバータ20とを電気的に接続する導通状態と、メインバッテリ28と昇圧コンバータ20とを電気的に遮断する遮断状態とのうちのいずれか一方の状態から他方の状態に切り替える。
【0044】
昇圧コンバータ20は、第1電力線MPLおよび第1アース線MNLに接続される。昇圧コンバータ20は、MG−ECU200からの昇圧コンバータ駆動信号に基づいて、メインバッテリ28と、第1電力線MPLおよび第1アース線MNLとの間で電圧変換を行なう。
【0045】
MG−ECU200は、昇圧コンバータ20から昇圧コンバータ情報を受信する。昇圧コンバータ情報は、たとえば、昇圧コンバータ温度と、インバータ18側の電圧および電流と、メインバッテリ28側の電圧および電流と、リアクトル44を流れる電流とのうちの少なくともいずれか1つの情報を含む。昇圧コンバータ20には、上述した昇圧コンバータ情報を取得するための各種センサ(図示せず)が設けられる。
【0046】
MG−ECU200は、昇圧コンバータ20からの昇圧コンバータ情報と、車両10に搭載される電気機器の状態(たとえば、A/Cコンプレッサ102が作動を開始する状態や第1MG12を用いてエンジン402を始動させる状態等)とに基づいて目標電圧を設定し、メインバッテリ28の電圧が目標電圧に変化するように昇圧コンバータ20を制御する。目標電圧としては、たとえば、昇圧ゼロとして設定される場合もある。
【0047】
昇圧コンバータ20は、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトル44とを含む。スイッチング素子Q1,Q2は、第1電力線MPLと第1アース線MNLとの間に互いに直列に接続される。スイッチング素子Q1,Q2として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等の電力用半導体スイッチング素子が用いられる。
【0048】
リアクトル44は、環状のコア部と、コア部の外周に巻き付けられたコイルとによって構成される。リアクトル44のコイルの一方端は、第1電力線MPLを経由してメインバッテリ28の正極端子に接続される。リアクトル44のコイルの他方端は、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続ノードに接続される。
【0049】
ダイオードD1は、スイッチング素子Q1に逆並列に接続される。すなわち、ダイオードD1は、第1電力線MPLへ向かう方向を順方向として、スイッチング素子Q1に並列に接続される。
【0050】
ダイオードD2は、スイッチング素子Q2に逆並列に接続される。すなわち、ダイオードD2は、リアクトル44へ向かう方向を順方向として、スイッチング素子Q2に並列に接続される。
【0051】
昇圧コンバータ20のスイッチング素子Q1,Q2は、MG−ECU200からの昇圧コンバータ駆動信号(duty信号)に基づいて、互いに逆の状態(すなわち、Q1オンのときはQ2オフ、Q1オフのときはQ2オン)となるように制御される。Q1オン期間(Q2オフ期間)とQ2オン期間(Q1オフ期間)とが交互に繰返されることによって、第1電力線MPLおよび第1アース線MNLの間の電圧がメインバッテリ28の出力電圧以上の電圧に制御される。
【0052】
第1コンデンサ24は、第2電力線PLと第2アース線NLとの間に接続され、第2電力線PLおよび第2アース線NLの間の直流電圧に含まれる交流成分を低減する。第2コンデンサ36は、第1電力線MPLと第1アース線MNLとの間に接続され、第1電力線MPLおよび第1アース線MNLに含まれる電力変動成分を低減する。
【0053】
P−ECU300には、ブレーキペダル踏力センサ302と、アクセルポジションセンサ304とが接続される。
【0054】
ブレーキペダル踏力センサ302は、ブレーキペダル306の踏み込み量に対応する踏力Pfを検出する。ブレーキペダル踏力センサ302は、検出したブレーキペダル306の踏力Pfを示す信号をP−ECU300に送信する。なお、ブレーキペダル踏力センサ302に代えてブレーキペダル306の踏み込み量を直接検出するブレーキポジションセンサを用いてもよい。
【0055】
アクセルポジションセンサ304は、アクセルペダル308の踏み込み量Accを検出する。アクセルポジションセンサ304は、アクセルペダル308の踏み込み量Accを示す信号をP−ECU300に送信する。
【0056】
DC/DCコンバータ22は、P−ECU300からの制御信号に基づいてメインバッテリ28の電力を用いて補機バッテリ100を充電する。DC/DCコンバータ22の正極は、第2電力線PLに接続され、DC/DCコンバータ22の負極は、第2アース線NLに接続される。同様に、A/Cコンプレッサ102の正極は、第2電力線PLに接続され、A/Cコンプレッサ102の負極は、第2アース線NLに接続される。
【0057】
以上のような構成を有する車両において、P−ECU300は、アクセルポジションセンサ304およびブレーキペダル踏力センサ302の各検出信号および走行状況などに基づいて車両要求パワーPsを算出し、その算出した車両要求パワーPsに基づいて第1MG12および第2MG14のトルク指令値を算出する。
【0058】
MG−ECU200は、インバータ18からのインバータ情報と、P−ECU300から第1MG12および第2MG14のトルク指令値とに基づいてインバータ18を駆動するためのインバータ駆動信号を生成する。
【0059】
MG−ECU200は、たとえば、停止状態の車両10を発進させる場合、基本的には、エンジン402を停止させた状態で、第2MG14を駆動させて車両10を発進させる。このとき、MG−ECU200は、車両要求パワーPsに基づいて第2MG14のトルク指令値Trqcomを算出する。MG−ECU200は、算出されたトルク指令値Trqcomからメモリ等に記憶された予め定められたマップにしたがってd軸電流指令値Idcomおよびq軸電流指令値Iqcomを生成する。なお、MG−ECU200は、車両10が停止状態であるか否かを第2レゾルバ52の検出値が車両10の停止状態に対応する範囲の値であるか否かによって判断してもよい。
【0060】
MG−ECU200は、生成したd軸電流指令値Idcomおよびq軸電流指令値Iqcomに基づいてd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを算出し、算出されたd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqと第2MG14の回転軸の回転角θ2とに基づいて二相から三相への座標変換をして、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwを生成する。MG−ECU200は、生成した三相電圧指令値Vu,Vv,Vwをインバータ駆動信号としてインバータ18に送信する。
【0061】
MG−ECU200は、インバータ駆動信号をインバータ18に送信することによって、第2MG14においてトルク指令値Trqcomに従ったトルクを発生させて、車両10を発進させる。
【0062】
なお、MG−ECU200は、d軸電流の検出値と指令値との偏差およびq軸電流の検出値と指令値との偏差をそれぞれ算出して、それぞれについて所定ゲインによるPI(比例積分)演算を行なって制御偏差を求め、この制御偏差に応じたd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを生成するようにしてもよい。MG−ECU200は、たとえば、第2MG14のW相電流iw2およびV相電流iv2と第2MG14の回転軸の回転角θ2とに基づいて三相から二相への座標変換を行なうことによりd軸電流の検出値およびq軸d電流の検出値を取得するようにしてもよい。
【0063】
また、MG−ECU200は、第1MG12を駆動させる場合も同様にインバータ駆動信号を生成するものであるため、その詳細な説明は繰返さない。
【0064】
また、MG−ECU200は、たとえば、車両10が停止状態である場合において、ブレーキペダル306の踏込が解除されるとともにアクセルペダル308が踏み込まれるときには、アクセルペダル308の踏み込み量Accに対応したトルクが発生するように第2MG14に対するトルク指令値Trqcomを算出する。
【0065】
一方、MG−ECU200は、ブレーキペダル306が踏み込まれていないときに予め定められた出力トルクを第2MG14から出力させるように第2MG14を制御する。具体的には、MG−ECU200は、車両10が停止状態である場合において、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも低下することによってブレーキペダル306の踏込が解除され、かつ、アクセルペダル308が踏み込まれていないときには、車両10がクリープ走行に相当する走行状態になるように第2MG14に対するトルク指令値Trqcomを算出する。
【0066】
なお、クリープ走行とは、トルクコンバータを有する自動変速機が搭載された車両において、アクセルペダル308が踏み込まれていなくとも車両の進行方向に一定の駆動力が発生する現象によって車両が走行する状態をいう。
【0067】
たとえば、車両10が停止状態である場合を想定する。図2に示すように、時間T(0)にて、ブレーキペダル306の踏込が解除されて、踏力Pfがしきい値Pf(0)以下に低下した場合に、第2MG14において発生するトルクと比例関係にあるq軸電流指令値Iqcomをゼロからクリープ走行に相当する走行状態に対応する(すなわち、予め定められたクリープ力を発生させる)q軸電流指令値Iq(0)にステップ的に急激に変化させる場合には、第2MG14において発生するトルクが急激に増加する。そのため、発生したトルクによってトランスミッション408内に有する複数のギヤの歯部同士が接触するなどして異音が発生する場合がある。
【0068】
一方、異音の発生を抑制するために、図3に示すように、時間T(0)にて、q軸電流指令値Iqcomをゼロからクリープ走行に相当する走行状態に対応するq軸電流指令値Iq(0)まで単調増加で緩やかに変化させる場合には、運転者がブレーキペダル306の踏込を解除してから車両10に駆動力が発生するまでに時間を要するため、応答性が悪化する場合がある。
【0069】
そこで、本実施の形態においては、MG−ECU200が車両10の停止中にブレーキペダル306の踏み込み量が減少されたときに、第2MG14からの出力トルクを増加させるとともに、出力トルクの増加の期間中に第2MG14からの出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、第2MG14を制御する点に特徴を有する。
【0070】
具体的には、MG−ECU200は、車両10の停止時においてブレーキペダル306の踏力Pfが減少するとともに第2MG14の出力トルクが増加するように第2MG14に対するトルク指令値Trqcom(すなわち、q軸電流指令値Iqcom)を車両10の状態に応じた目標値(すなわち、Iq(0))まで増加させる場合に、トルク指令値Trqcomが目標値に到達する前に第2MG14の出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するようにトルク指令値Trqcomを変化させる。
【0071】
本実施の形態においては、MG−ECU200は、車両10の停止時においてブレーキペダル306の踏力Pfの減少とともにq軸電流指令値Iqcomを最終目標値Iq(0)まで増加させる場合に、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達する前に最終目標値Iq(0)よりも低い第1目標値Iq(1)になるまで増加させた後に第1目標値Iq(1)よりも低い第2目標値Iq(2)まで減少するようにq軸電流指令値Iqcomを変化させる。
【0072】
また、MG−ECU200は、q軸電流指令値Iqcomが第2目標値Iq(2)まで減少した後に期間Tbが経過するまで第2目標値Iq(2)をq軸電流指令値Iqcomとして維持し、期間Tbが経過した後に最終目標値Iq(0)までq軸電流指令値Iqcomを増加させる。
【0073】
さらに、MG−ECU200は、期間Tbが経過するまでにトランスミッション408が第2MG14のトルクを駆動輪406に伝達する際に接触するように変化する複数のギヤの歯部間の隙間がなくなるようにq軸電流指令値Iqcomを変化させる。
【0074】
図4に、本実施の形態に係る車両用制御装置であるMG−ECU200の機能ブロック図を示す。MG−ECU200は、踏力判定部202と、q軸電流指令値算出部204と、三相電圧指令値算出部206と、インバータ制御部208とを含む。
【0075】
踏力判定部202は、車両10が停止状態である場合にブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下したか否かを判定する。なお、しきい値Pf(0)は、停止状態からクリープ走行に相当する走行状態への移行を開始するタイミングを規定する値であって、実験等によって適合される。たとえば、しきい値Pf(0)は、ゼロであってもよい。踏力判定部202は、たとえば、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合に、踏力判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0076】
q軸電流指令値算出部204は、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合であって、かつ、アクセルペダル308が踏み込まれていない場合には、車両10の状態をクリープ走行に相当する走行状態にするための最終目標値Iq(0)になるまで予め定められた態様で変化するようにq軸電流指令値Iqcomを算出する。なお、q軸電流指令値算出部204は、たとえば、踏力判定フラグがオンされた場合にq軸電流指令値Iqcomの算出を開始するようにしてもよい。
【0077】
具体的には、q軸電流指令値算出部204は、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達する前に第2MG14の出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するようにq軸電流指令値Iqcomが変化するようにq軸電流指令値Iqcomを算出する。
【0078】
すなわち、q軸電流指令値算出部204は、図5に示すように、時間T(0)にて、q軸電流指令値Iqcomの増加を開始する場合に、q軸電流指令値Iqcomが第1目標値Iq(1)になるように増加させる。この場合にトランスミッション408において異音が発生しないようにこのときの変化量に対して上限値を設けておくことが望ましい。
【0079】
q軸電流指令値算出部204は、時間T(2)にて、q軸電流指令値Iqcomが第1目標値Iq(1)に到達した場合に、第2目標値Iq(2)になるようにq軸電流指令値Iqcomを減少させる。第2目標値Iq(2)は、第1目標値Iq(1)よりも低い値であれば特に限定されるものではないが、少なくとも第2MG14の出力トルクを増加側から減少側に変化させることができる値であればよい。本実施の形態においては、第2目標値Iq(2)は、たとえば、ゼロである。
【0080】
q軸電流指令値算出部204は、時間T(3)にて、q軸電流指令値Iqcomが第2目標値Iq(2)に到達した場合にq軸電流指令値Iqcomを予め定められた期間Tbが経過するまで保持する。本実施の形態においては、q軸電流指令値算出部204は、予め定められた期間Tbが経過するまでゼロをq軸電流指令値Iqcomとして維持する。
【0081】
q軸電流指令値算出部204は、時間T(4)にて、予め定められた期間Tbが経過した場合に、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)になるようにq軸電流指令値Iqcomを増加させる。この場合にトランスミッション408において異音が発生しないようにこのときの変化量に対して上限値を設けておくことが望ましい。上限値は第1目標値Iq(1)になるように増加させる場合の上限値と同一であってもよいし、異なっていてもよい。q軸電流指令値算出部204は、図5に示すようにq軸電流指令値Iqcomが変化するように計算サイクル毎にq軸電流指令値Iqcomを算出する。
【0082】
q軸電流指令値算出部204は、たとえば、1回の計算サイクルにおいて、前回算出されたq軸電流指令値Iqcom(n−1)に対して変化量ΔIqcomを加算した値を今回のq軸電流指令値Iqcom(n)として算出する。なお、q軸電流指令値Iqcomの初期値Iqcom(0)は、ゼロである。変化量ΔIqcomは、たとえば、前回のq軸電流指令値Iqcom(n−1)が目標値よりも小さい場合は正の値となり、前回のq軸電流指令値Iqcom(n−1)が目標値よりも大きい場合は負の値となる。また、変化量ΔIqcomは、一定の値であってもよい。あるいは、変化量ΔIqcomは、前回のq軸電流指令値Iqcom(n−1)と目標値との偏差が大きくなるほど変化量ΔIqcomの絶対値が大きくなるように決定されるようにしてもよい。すなわち、偏差が第1の値である場合の変化量ΔIqcom(1)は、偏差が第1の値よりも大きい第2の値である場合の変化量ΔIqcom(2)よりも小さくなるようにしてもよい。
【0083】
また、q軸電流指令値Iqcomの増加を開始する時間T(0)からq軸電流指令値Iqcomが第2目標値Iq(2)(ゼロ)に到達する時間T(3)までの期間Ta、時間T(3)から時間T(4)までの期間Tbおよび時間T(4)からq軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達する時間T(5)までの期間Tcが実験的あるいは設計的に予め規定される。q軸電流指令値算出部204は、規定された期間Ta、TbおよびTcに基づいて変化量ΔIqcomを決定する。
【0084】
たとえば、期間Taは、第2MG14においてトランスミッション408内の複数のギヤのガタ詰め(動力伝達時に接触するギヤの歯部間の機械的隙間の縮小)を行なうためのトルクが発生した後に減少するようにq軸電流指令値Iqcomを変化させる期間として規定される。期間Tbは、q軸電流指令値Iqcomを保持する期間として規定される。たとえば、期間Tbは、q軸電流指令値Iqcomを保持することによって期間Taにおいて発生したトルクを用いたガタ詰めの動作が継続するように規定される。さらに、期間Tcは、車両10がクリープ走行に相当する走行状態へ移行する際の応答性が悪化しないようにq軸電流指令値Iqcomを増加させる期間として規定される。
【0085】
三相電圧指令値算出部206は、q軸電流指令値算出部204において算出されたq軸電流指令値Iqcomに基づいて三相電圧指令値Vu,Vv,Vwを算出する。具体的には、三相電圧指令値算出部は、d軸電流指令値Idcomおよびq軸電流指令値Iqcomに基づいてd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを生成する。三相電圧指令値算出部206は、生成したd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを第2MG14の回転軸の回転角θ2を用いて座標変換(二相→三相)することによって、三相電圧指令値Vu,Vv,Vwを算出する。
【0086】
インバータ制御部208は、三相電圧指令値算出部206において算出された三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに基づいてインバータ駆動信号を生成して、インバータ18に送信する。
【0087】
本実施の形態において、踏力判定部202と、q軸電流指令値算出部204と、三相電圧指令値算出部206と、インバータ制御部208とは、いずれもMG−ECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0088】
図6を参照して、本実施の形態に係る車両用制御装置であるMG−ECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0089】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、MG−ECU200は、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下したか否かを判定する。ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)以下に低下した場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS102に移される。
【0090】
S102にて、MG−ECU200は、q軸電流指令値Iqcomを算出する。q軸電流指令値Iqcomの算出方法については上述したとおりであり、その詳細な説明は繰返さない。
【0091】
S104にて、MG−ECU200は、算出されたq軸電流指令値Iqcomに基づいて三相電圧指令値Vu,Vv,Vwを算出する。三相電圧指令値Vu,Vv,Vwの算出方法については上述したとおりであり、その詳細な説明は繰返さない。
【0092】
S106にて、MG−ECU200は、算出された三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに基づいてインバータ駆動信号を生成して、インバータ18に送信することによって第2MG14のトルクを制御する。
【0093】
S108にて、MG−ECU200は、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達したか否かを判定する。q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達した場合(S108にてYES)、この処理は終了する。一方、MG−ECU200は、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達していない場合(S108にてNO)、処理はS102に戻す。
【0094】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両用制御装置であるMG−ECU200の動作について図7を用いて説明する。
【0095】
たとえば、車両10が停止している場合を想定する。運転者は、しきい値Pf(0)よりも大きい踏力でブレーキペダル306を踏み込んでいるものとする。
【0096】
運転者がブレーキペダル306の踏込を解除していくとブレーキペダル306の踏力Pfは踏込の解除量に応じて低下していく。ブレーキペダル306への踏力Pfがしきい値Pf(0)以下になる場合に(S100にてYES)、MG−ECU200は、車両10をクリープ走行に相当する走行状態になるように第2MG12の出力トルクの制御を開始する。
【0097】
すなわち、MG−ECU200は、q軸電流指令値Iqcomを算出し(S102)、算出されたq軸電流指令値Iqcomに基づいて三相電圧指令値Vu,Vv,Vwを算出する(S104)。算出された三相電圧指令値Vu,Vv,Vwに基づいて第2MG14のトルクが制御される(S106)。そして、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達するまで(S108にてNO)、上記のような制御が計算サイクル毎に繰返される。
【0098】
時間T(0)以降において、q軸電流指令値Iqcomが第1目標値Iq(1)になるまで増加することによって第2MG14のトルクが発生する。発生したトルクによって第2MG14の回転軸が回転する。第2MG14の回転軸の回転によってトランスミッション408内の複数のギヤの歯部間のガタ詰めが行なわれる。
【0099】
時間(2)以降において、q軸電流指令値Iqcomがゼロになるまで減少することによって第2MG14において発生したトルクが増加側から減少側に変化する。このとき、ガタ詰めが完了する前にトルクが増加側から減少側に変化するため、トルクを減少させずにガタ詰めを行なった場合よりもガタ詰め完了時において発生する異音の程度を極力低減することができる。
【0100】
時間T(3)から時間T(4)までq軸電流指令値Iqcomとしてゼロが維持される。時間T(4)以降において、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)になるまで増加することによって第2MG14のトルクが発生する。発生したトルクによって第2MG14の回転軸が回転する。トランスミッション408内の複数のギヤの歯部間のガタ詰めが行なわれているため、歯部間の衝突を回避することができる。そのため、第2MG14のトルクがトランスミッション408に伝達されたときに異音の発生が抑制される。
【0101】
時間T(5)において、q軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)になることによって(S108にてYES)、車両10はクリープ走行に相当する走行状態への移行が完了する。
【0102】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両用制御装置によると、車両10の停車中にブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)以下に減少されたときに(たとえば、ブレーキペダル306の踏み込み量がゼロになったときに)、第2MG14の出力トルクの増加の期間中に第2MG14からの出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように第2MG14を制御する。これによって、第2MG14の出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有しない場合と比較して、ギヤ機構における機械的な隙間を緩やかに減少させることができる。このように、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)以下に減少されたときに、出力トルクを一旦増加させた後に、減少させることによってギヤ機構が第2MG14の出力トルクを駆動軸に伝達させる際の異音の発生を抑制することができる。したがって、電動機を駆動源とした搭載した車両の異音の発生を低減する車両用制御装置および車両用制御方法を提供することができる。
【0103】
さらに、第2MG14の出力トルクが増加側から減少側に変化する期間とq軸電流指令値Iqcomを第2目標値Iq(2)で保持する期間Tbとを設けることにより、動力伝達時に接触するトランスミッション408内の複数のギヤ間のガタ詰めを行なうことができる。
【0104】
さらに、第2目標値Iq(2)を保持する期間経過後にq軸電流指令値Iqcomを最終目標値Iq(0)まで増加する場合に、ガタ詰めが行われているため、動力伝達時にトランスミッション408において異音が発生することを抑制することができる。
【0105】
さらに、第2MG14の出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を設けることにより、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下してからq軸電流指令値Iqcomが最終目標値Iq(0)に到達するまでの期間を短くすることができる。たとえば、図5の時間T(0)から時間T(5)までの期間は、図3に示す時間T(0)から時間T(1)までの期間よりも短い。すなわち、ブレーキペダル306の踏込の解除後にクリープ走行に相当する走行状態になるまでの応答性が向上する。
【0106】
なお、本実施の形態においては、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合であって、かつ、アクセルペダル308が踏み込まれていない場合に、車両10を第2MG14を用いてクリープ走行に相当する走行状態に移行するときの第2MG14の制御について説明したが、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合であって、かつ、アクセルペダル308が踏み込まれている場合にも本発明を適用することができる。
【0107】
たとえば、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合であって、かつ、アクセルペダル308が踏み込まれている場合に、MG−ECU200は、アクセルペダル308の踏み込み量Accに対応したq軸電流指令値Iq(3)を最終目標値としてq軸電流指令値を変化させればよい。ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合であって、かつ、アクセルペダル308が踏み込まれている場合における上記期間Ta、TbおよびTcおよび変化量ΔIqcomは、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合であって、かつ、アクセルペダル308が踏み込まれていない場合の上記期間Ta、TbおよびTcおよび変化量ΔIqcomと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0108】
また、本実施の形態においては、第2目標値Iq(2)がゼロである場合を一例として説明したが、特にゼロに限定されるものではない。たとえば、図8に示すように、第1目標値Iq(1)よりも小さく、かつ、ゼロよりも大きい値を第2目標値Iq(2)として設定してもよい。このようにしても上述した作用効果と同様の作用効果を発生させることができる。
【0109】
また、第1目標値Iq(1)および第2目標値Iq(2)の各々は、たとえば、予め定められた値であってもよいし、車両10が上り坂で停止しているか、あるいは、車両10が下り坂で停止しているかによって変更するようにしてもよい。さらに、第1目標値Iq(1)および第2目標値Iq(2)の各々は、車速ゼロ以下となる期間が所定時間継続した後に車両が発進する場合と、車速ゼロ以下となる期間が所定時間継続するまでに車両が発進する場合とで変更するようにしてもよい。
【0110】
さらに、MG−ECU200は、車両10が停止状態である場合に加えて、車両10が低速で走行している場合あるいは坂道等で後退している場合に、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下したときに、上記した第2MG14の制御を実行するようにしてもよい。
【0111】
さらに、MG−ECU200は、車両10が停止状態であって、ブレーキペダル306の踏力Pfがしきい値Pf(0)よりも高い状態からしきい値Pf(0)以下に低下した場合であっても、走行モードとしてたとえば高い加速度あるいは高い応答性が要求されるモード(たとえば、スポーツ走行モード)が選択されているとき、あるいは、アクセルペダル308の踏み込み量ACCが車両10の急発進を判定するためのしきい値以上であるとき、あるいは、アクセルペダル308の踏み込み量ACCの変化量が車両10の急発進を判定するためのしきい値以上であるときには、上記した第2MG14の制御を実行しないようにしてもよい。
【0112】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
10 車両、18 インバータ、20 昇圧コンバータ、22 コンバータ、24,36 コンデンサ、28 メインバッテリ、38 放電抵抗、44 リアクトル、50,52 レゾルバ、60,62 電流センサ、100 補機バッテリ、102 A/Cコンプレッサ、200 MG−ECU、202 踏力判定部、204 q軸電流指令値算出部、206 三相電圧指令値算出部、208 インバータ制御部、300 P−ECU、302 ブレーキペダル踏力センサ、304 アクセルポジションセンサ、306 ブレーキペダル、308 アクセルペダル、400 エンジンECU、402 エンジン、404 動力分割装置、406 駆動輪、408 トランスミッション、Q1−Q8 スイッチング素子、D1−D8 ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤ機構を介して車両の駆動軸に連結される電動機と、ブレーキペダルとを備える車両に搭載される車両用制御装置であって、
前記車両の停止中に前記ブレーキペダルの踏み込み量が減少されたときに、前記電動機からの出力トルクを増加させるとともに、前記出力トルクの増加の期間中に前記電動機からの前記出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、前記電動機を制御する、車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両用制御装置は、前記踏み込み量がゼロのときに予め定められた出力トルクを前記電動機から出力させるように前記電動機を制御し、前記車両の停車中に前記踏み込み量がゼロになったときに前記予め定められた出力トルクを前記電動機から出力させる場合には、前記出力トルクが前記予め定められた出力トルクまで増加する前に前記出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、前記電動機を制御する、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両用制御装置は、前記車両の停止中に前記踏み込み量が減少されたときに、前記出力トルクが増加するように前記電動機に対する前記出力トルクの指令値を前記車両の状態に応じた目標値まで増加させる場合に、前記指令値が前記目標値に到達する前に前記出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように前記指令値を変化させる、請求項1または2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記車両用制御装置は、前記車両の停止中に前記踏み込み量が減少されたときに前記指令値を前記目標値まで増加させる場合に、前記指令値が前記目標値に到達する前に前記目標値よりも低い第1の値になるまで増加させた後に前記第1の値よりも低い第2の値まで減少するように前記指令値を変化させる、請求項3に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記車両用制御装置は、前記指令値が前記第2の値まで減少した後に予め定められた期間が経過するまで前記第2の値を前記指令値として維持し、前記予め定められた期間が経過した後に前記目標値まで前記指令値を増加させる、請求項4に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記車両用制御装置は、前記ギヤ機構が前記出力トルクを前記駆動軸に伝達する際に接触するギヤの歯部間の隙間が前記予め定められた期間が経過するまでになくなるように前記指令値を変化させる、請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記車両は、アクセルペダルをさらに含み、
前記車両用制御装置は、前記車両の停止時において前記踏み込み量がしきい値よりも低下した場合、前記アクセルペダルが踏み込まれていないときに前記車両がクリープ走行に相当する走行状態に移行するための前記目標値を選択し、前記アクセルペダルが踏み込まれているときに前記アクセルペダルの踏み込み量に応じた前記目標値を選択する、請求項3〜6のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項8】
ギヤ機構を介して車両の駆動軸に連結される電動機と、ブレーキペダルとを備える車両に搭載される車両用制御方法であって、
前記ブレーキペダルの踏み込み量を検出するステップと、
前記車両の停止中に前記踏み込み量が減少されたときに、前記電動機からの出力トルクを増加させるとともに、前記出力トルクの増加の期間中に前記電動機からの前記出力トルクが増加側から減少側に変化する期間を有するように、前記電動機を制御するステップとを含む、車両用制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115014(P2012−115014A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261011(P2010−261011)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】