説明

車両用情報記録システム及び車両用情報記録方法

【課題】事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することが可能な車両用情報記録装置を提供する。
【解決手段】ドライブレコーダ200が、車両の関わる事故の発生を検出した場合、その事故の発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報をデジタルタコグラフ100に送信するとともに、イベント発生時刻を含む期間に撮影する画像情報をデジタルタコグラフ100に送信し、デジタルタコグラフ100が、検出した走行状況を時系列順に記録するとともに、ドライブレコーダ200から受信した画像情報をイベント発生時刻に対応付けて記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故発生時などの必要な際に、トラック等の車両の運行に係る情報と車両周辺の画像情報とを関連付けて記録する車両用情報記録システム及び車両用情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運行状況を管理する運行管理装置としてデジタルタコグラフが一般的に利用されている。デジタルタコグラフは、車両の速度とエンジンの回転数を取得することで、車両の走行時間、走行距離、最高速度、平均速度、速度オーバー時間、速度オーバー回数、エンジンオーバー時間、エンジンオーバー回数、急発進、急加速、急減速、アイドリング時間などの車両の走行状況を数値化した運行データを時系列で取得するもので、その運行データに基づいて走行状況の解析も行われている。一方、近年、車両周辺、主に車両前方、の状況を画像情報として記録するドライブレコーダを搭載する車両も増加している。
【0003】
しかし、それらの装置はそれぞれ独立した記録手段を有し、別々に運行情報、画像情報を記録するため、両方の情報を関連付けた解析を行うことができなかった。そのため、例えば、記録した情報に基づいて事故発生時などの車両の状況を解析する際、運行データと画像データの対応付けは目視等手動に頼らざるを得ず、精度の高い解析が困難であるという課題があった。
【0004】
これまでにも、運行データの一情報として画像データを記録する運行管理装置も提案されているが(例えば、特許文献1参照)、この運行管理装置は、運行データ(画像データを除く)と画像データとの対応付けを図るものではなかった。
【特許文献1】特開2002−42288号公報(第9頁−第12頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
事故等のイベント発生時における車両の状況の解析では、任意時刻における運行データと画像データとが関連付けられた状態で参照できることが好ましい。そのためには、運行データと画像データとを同期して記録する必要がある。しかしながら、記録手段に係るコストの抑制や情報処理量の増加防止といった制約等から、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを常時同期させながら記録することは非効率である。一方、イベント発生時以降のデータだけでは適切な状況解析は行えないため、イベント発生前の所定時間についても運行データと画像データとが同期して記録されている必要がある。
【0006】
また、新たな装置を装備するのではなく、車両に既設された従来のデジタルタコグラフとドライブレコーダを利用して、解析等に有用なデータが格納できるようにすることは、コスト面からも好ましいことである。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することが可能な車両用情報記録システム及び車両用情報記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用情報記録システムは、下記(1)〜(2)、(3)〜(4)を特徴としている。
(1) 車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフと、を備えた車両用情報記録システムであって、
前記ドライブレコーダは、
前記車両の周辺の映像を撮影する撮像手段と、
前記車両の関わるイベントの発生の有無を検出するイベント検知手段と、
前記デジタルタコグラフとの間で情報を送受信するドライブレコーダ通信手段と、
前記ドライブレコーダ通信手段による通信を制御するドライブレコーダ制御部と、
を有し、
前記デジタルタコグラフは、
前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、
前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、
情報を記録するデジタルタコグラフ記録手段と、
前記走行状況検知手段から入力した走行状況および前記デジタルタコグラフ通信手段から受信した情報を受けて、前記デジタルタコグラフ記録手段に情報を記録するデジタルタコグラフ制御部と、
を有し、
前記ドライブレコーダ制御部は、前記イベント検知手段によって前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、そのイベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間に前記撮像手段によって撮影する前記画像情報を前記デジタルタコグラフに送信するよう、前記ドライブレコーダ通信手段を制御し、
前記デジタルタコグラフ制御部は、前記走行状況検知手段によって検出した走行状況に基づく運行情報を前記デジタルタコグラフ記録手段に記録するとともに、前記デジタルレコーダ通信手段によって前記ドライブレコーダから受信した前記画像情報を前記イベント発生時刻に対応付け、前記デジタルタコグラフ記録手段に記録する、
こと。
(2) 上記(1)の構成の車両用情報記録システムであって、
前記デジタルタコグラフ制御部は、前記デジタルタコグラフ通信手段によって前記ドライブレコーダから受信した前記画像情報を、前記ドライブレコーダから前記イベント発生情報を受信する度に割り当てられる該画像情報を識別するための画像イベント情報番号を介して前記イベント発生時刻に対応付け、前記デジタルタコグラフ記録手段に記録するよう制御する、
こと。
(3) 車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフと、を備えた車両用情報記録システムであって、
前記ドライブレコーダは、
前記車両の周辺の映像を撮影する撮像手段と、
前記車両の関わるイベントの発生の有無を検出するイベント検知手段と、
前記デジタルタコグラフとの間で情報を送受信するドライブレコーダ通信手段と、
情報を記録するドライブレコーダ記録手段と、
前記撮像手段から入力した画像情報および前記ドライブレコーダ通信手段から受信した情報を受けて、前記ドライブレコーダ記録手段に情報を記録するドライブレコーダ制御部と、
を有し、
前記デジタルタコグラフは、
前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、
前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、
前記デジタルタコグラフ通信手段による通信を制御するデジタルタコグラフ制御部と、
を有し、
前記ドライブレコーダ制御部は、前記イベント検知手段によって前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、その事故の発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するよう前記ドライブレコーダ通信手段を制御するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間において前記撮像手段によって撮影する前記画像情報を前記ドライブレコーダ記録手段に記録し、
前記デジタルタコグラフ制御部は、前記デジタルタコグラフ通信手段によって前記イベント発生情報を前記ドライブレコーダから受信した場合に、前記イベント発生時刻を含む期間において前記走行状況検知手段によって検出する前記走行状況に基づく運行情報を前記ドライブレコーダに送信するよう、前記デジタルタコグラフ通信手段を制御し、
前記ドライブレコーダ制御部は、前記ドライブレコーダ通信手段によって前記デジタルタコグラフから受信した前記走行状況に基づく運行情報を前記イベント発生時刻に対応付けて前記ドライブレコーダ記録手段に記録する、
こと。
(4) 上記(4)の構成の車両用情報記録システムであって、
前記ドライブレコーダ制御部は、前記ドライブレコーダ通信手段によって前記デジタルタコグラフから受信した前記走行状況に基づく運行情報を、前記ドライブレコーダから前記イベント発生情報を送信する度に割り当てられる該走行状況を識別するための画像イベント情報番号を介して前記イベント発生時刻に対応付け、前記ドライブレコーダ記録手段に記録する、
こと。
【0009】
上記(1)の構成の車両用情報記録システムによれば、運行データと画像データとが関連付けられてデジタルタコグラフ内に記録され、両方の情報を時刻をキーとして参照することができるので、事故発生時等の車両の状況について精度の高い解析を行うことができる。
上記(2)の構成の車両用情報記録システムによれば、ドライブレコーダにおいて複数のイベントが同時期に発生した場合に、各イベント毎に異なる画像イベント情報番号を割り当てることで、各イベントを区別して参照(解析)することができる。
上記(3)の構成の車両用情報記録システムによれば、運行データと画像データとが関連付けられてドライブレコーダ内に記録され、両方の情報を時刻をキーとして参照することができるので、事故発生時等の車両の状況について精度の高い解析を行うことができる。
上記(4)の構成の車両用情報記録システムによれば、ドライブレコーダにおいて複数のイベントが同時期に発生した場合に、各イベント毎に異なる画像イベント情報番号を割り当てることで、各イベントを区別して参照(解析)することができる。
【0010】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用情報記録方法は、下記(5)、(6)を特徴としている。
(5) 車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフとによる、前記画像情報と前記走行状況を記録するための車両用情報記録方法であって、
前記ドライブレコーダが、前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、そのイベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間に撮影する前記画像情報を前記デジタルタコグラフに送信し、
前記デジタルタコグラフが、検出した走行状況に基づく運行情報を記録するとともに、前記ドライブレコーダから受信した前記画像情報を前記イベント発生時刻に対応付けて記録する、
こと。
(6) 車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフとによる、前記画像情報と前記走行状況を記録するための車両用情報記録方法であって、
前記ドライブレコーダが、前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、そのイベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間において撮影する前記画像情報を記録し、
前記デジタルタコグラフが、前記イベント発生情報を前記ドライブレコーダから受信した場合に、前記イベント発生時刻を含む期間において検出する前記走行状況に基づく運行情報を前記ドライブレコーダに送信し、
前記ドライブレコーダが、前記デジタルタコグラフから受信した前記走行状況に基づく運行情報を前記イベント発生時刻に対応付けて記録する、
こと。
【0011】
上記(5)の構成の車両用情報記録方法によれば、運行データと画像データとが関連付けられてデジタルタコグラフ内に記録され、両方の情報を時刻をキーとして参照することができるので、事故発生時等の車両の状況について精度の高い解析を行うことができる。
上記(6)の構成の車両用情報記録方法によれば、運行データと画像データとが関連付けられてドライブレコーダ内に記録され、両方の情報を時刻をキーとして参照することができるので、事故発生時等の車両の状況について精度の高い解析を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、事故等のイベント発生時前後における車両の状況を高い精度で解析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態における車両用情報記録装置のブロック構成図である。車両用情報記録装置は、デジタルタコグラフ100と、ドライブレコーダ200と、双方を接続する通信回線300とで構成される。
【0015】
デジタルタコグラフ100は、車両の走行状況を検出するための車両の速度入力センサー120、エンジンの回転数入力センサー130、テンキー140、外部入力150などがそれぞれのインターフェースを介してCPU110に接続される。デジタルタコグラフ100の制御動作は、予めEEPROM180などに格納されたプログラムをCPU110で実行することにより実現される。また、デジタルタコグラフ100は、後述する運行データ(運行情報と称することがある。)や画像データ(画像情報と称することがある。)を一緒に記録する記録手段としてのCFカード160を備えている。
【0016】
一方、ドライブレコーダ200は、車両周辺を撮影するためのカメラ220、衝突事故発生などのイベントを検知する検知手段としての加速度センサー230(加速度センサー230は、衝突事故発生時や急ブレーキ時における車両の加速度の急激な変化を検出することにより、上記イベントが発生したことを検知する。)などが、CPU210に接続される。なお、上記イベントの発生を検知する検知手段は、加速度センサーに限られるものではなく、事故発生時の衝突音を以ってイベントの発生を検知するための収音マイクや、事故発生時の車両ボディの歪みを以ってイベントの発生を検知するための圧電センサや、などを検知手段として用いる構成であってもよく、さらに、カメラ220により撮影した画像に対する画像処理によってイベントの発生を検知する構成であってもよい。ドライブレコーダ200も、その制御動作は予めSDRAM250などに格納されたプログラムをCPU210で実行することにより実現される。
【0017】
デジタルタコグラフ100とドライブレコーダ200とは、それぞれの通信インターフェースを介して通信回線300で接続されており、通信に係る制御動作も双方のCPU110、210により実行される。
【0018】
次に、上記構成の車両用情報記録装置の情報記録動作について説明する。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施の形態における車両用情報記録装置の情報記録動作手順を示すフローチャートである。はじめに、ドライブレコーダ200は、イベント検知手段としての加速度センサー230が、イベントを検知するか否かを判断する(ステップS101)。ここでのイベントとは、例えば、事故などで車両に衝撃が加わることにより生じる加速度変化のことである。従って、事故のみならず急ブレーキをかけた場合などもイベントとして検知される。
【0020】
ステップS101でイベントが検知されると、ドライブレコーダ200は、SDRAM250に記録するイベントフラグを「1」とし(ステップS102)、イベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報をデジタルタコグラフ100へ送信する(ステップS103)。
【0021】
一方、デジタルタコグラフ100は、イベント発生情報の受信を常時判断している(ステップS201)。デジタルタコグラフ100は、イベント発生情報をドライブレコーダ200から受信すると、SDRAM(図1に図示せず)に記録するイベントフラグを「1」にする(ステップS202)。さらに、デジタルタコグラフ100は、イベント発生情報をドライブレコーダ200から受信した時刻を表すイベント発生時刻をデータとして保持するとともに、そのイベント発生時刻に対応付けて、上記イベント発生情報毎に固有の画像イベント情報番号を関連付けて記録する(ステップS203。後述する図3参照。)。
【0022】
ドライブレコーダ200は、イベント発生情報送信後、ドライブレコーダ内に上記イベント発生時刻を含む期間において撮影した画像データが記録されているか否かを判断し(ステップS104)、画像データがある場合、当該画像データを通信回線300を介してデジタルタコグラフ100へ送信する(ステップS105)。
【0023】
一方、デジタルタコグラフ100は、画像データ受信の有無を判断し(ステップS204)、受信データがある場合、受信した画像データを前述の画像イベント情報番号に関連付けて記録する(ステップS205。後述する図3参照。)。
【0024】
図3は、本発明の第1の実施の形態における車両用情報記録装置で記録されるデータの構造例を示す模式図である。デジタルタコグラフ100は、ステップS203では、図3に示すように、イベント発生時刻を表す時刻データに画像イベント情報番号を付加して記録し、また、ステップS205では、図3に示すように、ドライブレコーダ200から受信した画像データに、上記時刻データに付加した同一の画像イベント情報番号を付加して記録する。これにより、ドライブレコーダ200で生成した画像データと、デジタルタコグラフ100で時系列で生成した速度や総距離に関する運行データとが、対応付けることが可能になる。つまり、デジタルタコグラフ100において、一つの画像イベント情報番号を指定することによって、その画像データが撮影された時間帯(すなわち、イベントが発生した時刻を含む期間)を特定し、さらに、その特定した時間帯を参照してデジタルタコグラフ100がその時間帯において生成していた運行データを抽出することによって、イベントが発生したときの画像データと、その画像データが撮影された時間帯における運行データと、を関連付けることができる。この結果、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することができる。なお、画像イベント情報番号の記憶位置は図3に示す箇所に限るものではない。
【0025】
なお、第1の実施の形態では、図3に示すように、イベント発生時刻と画像データとを画像イベント情報番号を介して対応付けるように説明した。これは、ドライブレコーダ200において複数のイベントが同時期に発生した場合に、各イベント毎に異なる画像イベント情報番号を割り当てることで、各イベントを区別して参照(解析)することを実現するためである。本発明は、イベント発生時刻と画像データとを画像イベント情報番号を介して対応付ける構成に限られるものではなく、イベント発生時刻と画像データとを直接対応付ける、例えば、画像データのフッターの冗長部分に該イベント発生時刻を表すデータを付加する構成でもよい。
【0026】
図2のフローチャートに戻り、次に、ステップS104でドライブレコーダ200から送信する画像データがなくなると、ドライブレコーダ200はイベントフラグを0とし(ステップS106)、画像終了情報をデジタルタコグラフ100へ送信する(ステップS107)。ステップS106でいう画像データがなくなる場合とは、なんらかの原因でドライブレコーダ200のカメラ220が撮影を中止したために画像データがNULLになる場合も含まれるが、イベント発生時刻からそのイベントが収まるために要する充分な時間が経過した場合のような、デジタルタコグラフ100に送信する必要のある画像データがなくなった場合も含まれる。一方、画像終了情報を受信したデジタルタコグラフ100も、イベントフラグを0とし(ステップS206)、一連の記録動作を終了する。ドライブレコーダ200は、再びステップS101へ戻り、イベントの発生検知を繰り返すことになる。なお、デジタルタコグラフ100およびドライブレコーダ200に記録されるイベントフラグは、デジタルタコグラフ100に送信すべき画像データの有無を識別するフラグであることを補足しておく。
【0027】
尚、ドライブレコーダ200が撮影した画像データはレコーダ内のバッファ(図示省略)に所定時間分が記録され、古いデータから順番に新しいデータで更新される。そのため、イベント発生時に、当該時刻から所定時間前の画像データをFIFO方式でデジタルタコグラフ100に送信することができる。上記所定時間については予め設定しておいてもよいし、バッファの容量を適切に設計することによりその時間が決定されるようにしてもよい。また、イベント発生時刻以降に生成する画像データについても取得(送信)する時間を予め設定しておけば、イベント発生時刻前後の所定時間にわたって画像データを記録することができる。
【0028】
以上のように、イベント発生をトリガとして、イベント発生時刻前後の所定時間について取得した運行データと画像データと関連付けられてデジタルタコグラフ100側に記録される。従って、CFカード160に記録された運行データと画像データを参照することにより、発生したイベントについてより簡易に解析を行うことができる。
【0029】
次に、図4は、本発明の第2の実施の形態における車両用情報記録装置のブロック構成図である。第1の実施の形態のそれと比較して、運行データや画像データを一緒に記録する記録手段としてのCFカード260が、デジタルタコグラフ100側でなく、ドライブレコーダ200側に付加されている点が異なる。その他の構成は第1の実施の形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0030】
次に、上記構成の車両用情報記録装置の情報記録動作について説明する。
【0031】
図5は、本発明の第2の実施の形態における車両用情報記録装置の情報記録動作手順を示すフローチャートである。本例では、記憶媒体であるCFカードがドライブレコーダ側となるため、デジタルタコグラフより得られた速度、走行距離等のデータは通信I/Fを介してドライブレコーダに送られ、CFカードに記録される。以下にドライブレコーダ側で検出したイベントによる画像記録について説明する。はじめに、ドライブレコーダ200は、イベント検知手段としての加速度センサー230が、イベントを検知するか否かを判断する(ステップS301)。ここでのイベントとは、例えば、事故などで車両に衝撃が加わることにより生じる加速度変化のことである。従って、事故のみならず急ブレーキをかけた場合などもイベントとして検知される。
【0032】
ステップS301でイベントが検知されると、ドライブレコーダ200は、SDRAM250に記録するイベントフラグを1とし(ステップS302)、イベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報をデジタルタコグラフ100へ送信する(ステップS303)。
【0033】
一方、デジタルタコグラフ100は、イベント発生情報の受信を常時判断している(ステップS401)。デジタルタコグラフ100は、イベント発生情報をドライブレコーダ200から受信すると、SDRAM(図1に図示せず)に記録するイベントフラグを「1」にする(ステップS402)。さらに、デジタルタコグラフ100は、ドライブレコーダ200へ送信する走行状況に係る運行データの有無を判断する(ステップS403)。運行データがある場合、当該運行データをドライブレコーダ200へ送信する(ステップS404)。
【0034】
ステップS303でイベント発生情報を送信した後、ドライブレコーダ200は、イベント発生情報をデジタルタコグラフ100に送信した時刻を表すイベント発生時刻をデータとして保持するとともに、そのイベント発生時刻に対応付けて、上記イベント発生情報毎に固有の画像イベント情報番号を関連付けて記録する(ステップ304)。ドライブレコーダ200は、更に、走行状況に係る運行データの受信の有無を判断し(ステップS305)、受信できる運行データがある場合、受信した運行データを前述の画像イベント情報番号に関連付けて記録する(ステップS306。後述する図6参照。)。
【0035】
一方、デジタルタコグラフ100は、画像データ受信の有無を判断し(ステップS204)、受信データがある場合、受信した画像データを前述の画像イベント情報番号に関連付けて記録する(ステップS205。後述する図6参照。)。
【0036】
図6は、本発明の第2の実施の形態における車両用情報記録装置で記録されるデータの構造例を示す模式図である。ドライブレコーダ200は、ステップS304では、図6に示すように、イベント発生時刻を表す時刻データに画像イベント情報番号を付加して記録し、また、ステップS306では、図6に示すように、デジタルタコグラフ100から受信した運行データに、上記時刻データに付加した同一の画像イベント情報番号を付加して記録する。これにより、デジタルタコグラフ100で生成した運行データと、ドライブレコーダ200で時系列で生成した画像データとが、対応付けられることになる。つまり、ドライブレコーダ200において、一つの画像イベント情報番号を指定することによって、その運行データが撮影された時間帯(すなわち、イベントが発生した時刻を含む期間)を特定し、さらに、その特定した時間帯を参照してドライブレコーダ200がその時間帯において生成していた画像データを抽出することによって、イベントが発生したときの画像データと、その画像データが撮影された時間帯における運行データと、を関連付けることができる。この結果、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することができる。なお、画像イベント情報番号の記憶位置は図6に示す箇所に限るものではない。
【0037】
ステップS403でデジタルタコグラフ100から送信するデータがなくなると、デジタルタコグラフ100はイベントフラグを0とし(ステップS405)、終了情報をドライブレコーダ200へ送信して一連の記録動作を終了する(ステップS406)。一方、終了情報を受信したドライブレコーダ200も、イベントフラグを0とし(ステップS307)、再びステップS301へ戻り、イベントの発生検知を繰り返す。
【0038】
以上のように、イベント発生をトリガとして、イベント発生時刻前後の所定時間について取得した運行データと画像データとがドライブレコーダ200側に記録される。従って、CFカード260に記録された運行データと画像データを参照することにより、発生したイベントについて解析を行うことができる。
【0039】
以上、詳述したように、本発明の車両用情報記録装置によれば、解析が必要な時間だけ運行データと画像データとが関連付けて記録されるので、記録手段のコストや情報処理量を上昇させることなく、事故等のイベント発生時おける車両の状況を高い精度で解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両用情報記録装置のブロック構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態における車両用情報記録装置の情報記録動作手順を示すフローチャート
【図3】本発明の第1の実施の形態における車両用情報記録装置で記録されるデータの構造例を示す模式図
【図4】本発明の第2の実施の形態における車両用情報記録装置のブロック構成図
【図5】本発明の第2の実施の形態における車両用情報記録装置の情報記録動作手順を示すフローチャート
【図6】本発明の第2の実施の形態における車両用情報記録装置で記録されるデータの構造例を示す模式図
【符号の説明】
【0041】
100 デジタルタコグラフ
110 CPU
120 速度入力
130 回転入力
140 テンキー
150 外部入力
160 CFカード
170 LCD
180 EEPROM
200 ドライブレコーダ
210 CPU
220 カメラ
230 Gセンサー
240 速度入力
250 SDRAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフと、を備えた車両用情報記録システムであって、
前記ドライブレコーダは、
前記車両の周辺の映像を撮影する撮像手段と、
前記車両の関わるイベントの発生の有無を検出するイベント検知手段と、
前記デジタルタコグラフとの間で情報を送受信するドライブレコーダ通信手段と、
前記ドライブレコーダ通信手段による通信を制御するドライブレコーダ制御部と、
を有し、
前記デジタルタコグラフは、
前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、
前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、
情報を記録するデジタルタコグラフ記録手段と、
前記走行状況検知手段から入力した走行状況および前記デジタルタコグラフ通信手段から受信した情報を受けて、前記デジタルタコグラフ記録手段に情報を記録するデジタルタコグラフ制御部と、
を有し、
前記ドライブレコーダ制御部は、前記イベント検知手段によって前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、そのイベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間に前記撮像手段によって撮影する前記画像情報を前記デジタルタコグラフに送信するよう、前記ドライブレコーダ通信手段を制御し、
前記デジタルタコグラフ制御部は、前記走行状況検知手段によって検出した走行状況に基づく運行情報を前記デジタルタコグラフ記録手段に記録するとともに、前記デジタルレコーダ通信手段によって前記ドライブレコーダから受信した前記画像情報を前記イベント発生時刻に対応付け、前記デジタルタコグラフ記録手段に記録する、
ことを特徴とする車両用情報記録システム。
【請求項2】
前記デジタルタコグラフ制御部は、前記デジタルタコグラフ通信手段によって前記ドライブレコーダから受信した前記画像情報を、前記ドライブレコーダから前記イベント発生情報を受信する度に割り当てられる該画像情報を識別するための画像イベント情報番号を介して前記イベント発生時刻に対応付け、前記デジタルタコグラフ記録手段に記録するよう制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用情報記録システム。
【請求項3】
車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフと、を備えた車両用情報記録システムであって、
前記ドライブレコーダは、
前記車両の周辺の映像を撮影する撮像手段と、
前記車両の関わるイベントの発生の有無を検出するイベント検知手段と、
前記デジタルタコグラフとの間で情報を送受信するドライブレコーダ通信手段と、
情報を記録するドライブレコーダ記録手段と、
前記撮像手段から入力した画像情報および前記ドライブレコーダ通信手段から受信した情報を受けて、前記ドライブレコーダ記録手段に情報を記録するドライブレコーダ制御部と、
を有し、
前記デジタルタコグラフは、
前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、
前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、
前記デジタルタコグラフ通信手段による通信を制御するデジタルタコグラフ制御部と、
を有し、
前記ドライブレコーダ制御部は、前記イベント検知手段によって前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、その事故の発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するよう前記ドライブレコーダ通信手段を制御するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間において前記撮像手段によって撮影する前記画像情報を前記ドライブレコーダ記録手段に記録し、
前記デジタルタコグラフ制御部は、前記デジタルタコグラフ通信手段によって前記イベント発生情報を前記ドライブレコーダから受信した場合に、前記イベント発生時刻を含む期間において前記走行状況検知手段によって検出する前記走行状況に基づく運行情報を前記ドライブレコーダに送信するよう、前記デジタルタコグラフ通信手段を制御し、
前記ドライブレコーダ制御部は、前記ドライブレコーダ通信手段によって前記デジタルタコグラフから受信した前記走行状況に基づく運行情報を前記イベント発生時刻に対応付けて前記ドライブレコーダ記録手段に記録する、
ことを特徴とする車両用情報記録システム。
【請求項4】
前記ドライブレコーダ制御部は、前記ドライブレコーダ通信手段によって前記デジタルタコグラフから受信した前記走行状況に基づく運行情報を、前記ドライブレコーダから前記イベント発生情報を送信する度に割り当てられる該走行状況を識別するための画像イベント情報番号を介して前記イベント発生時刻に対応付け、前記ドライブレコーダ記録手段に記録する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用情報記録システム。
【請求項5】
車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフとによる、前記画像情報と前記走行状況を記録するための車両用情報記録方法であって、
前記ドライブレコーダが、前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、そのイベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間に撮影する前記画像情報を前記デジタルタコグラフに送信し、
前記デジタルタコグラフが、検出した走行状況に基づく運行情報を記録するとともに、前記ドライブレコーダから受信した前記画像情報を前記イベント発生時刻に対応付けて記録する、
ことを特徴とする車両用情報記録方法。
【請求項6】
車両の周辺の映像を撮影し、その撮影した画像情報を記録するドライブレコーダと、前記車両の走行状況を記録するデジタルタコグラフとによる、前記画像情報と前記走行状況を記録するための車両用情報記録方法であって、
前記ドライブレコーダが、前記車両の関わるイベントの発生を検出した場合、そのイベントの発生したイベント発生時刻を通知するためのイベント発生情報を前記デジタルタコグラフに送信するとともに、前記イベント発生時刻を含む期間において撮影する前記画像情報を記録し、
前記デジタルタコグラフが、前記イベント発生情報を前記ドライブレコーダから受信した場合に、前記イベント発生時刻を含む期間において検出する前記走行状況に基づく運行情報を前記ドライブレコーダに送信し、
前記ドライブレコーダが、前記デジタルタコグラフから受信した前記走行状況に基づく運行情報を前記イベント発生時刻に対応付けて記録する、
ことを特徴とする車両用情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−55272(P2010−55272A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218092(P2008−218092)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】