説明

車両用経路案内装置

【課題】 音声による経路案内をユーザーの好みなどにあった話速で行なうようにする。
【解決手段】 カーナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する位置検出器2と、道路地図データ及び経路案内のための音声データを格納した地図データ記録媒体7と、スピーカ11と、制御装置9などを備えて構成されている。この制御装置9は、指定条件に応じて音声話速を設定し、地図データ記録媒体7の道路地図データなどを用いて出発点から目的地までの経路及び案内事象を決定し、車両の経路走行時に、該案内事象に対して、該当する前記音声データを前記スピーカ11から音声として前記設定された話速で出力させて経路案内を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発地から目的地までの経路における案内事象に対し音声により経路案内をするようにした車両用経路案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用経路案内装置としてのカーナビゲーション装置においては、目的地を設定し、出発地(現在地)から該目的地までの経路を決定し、その経路に含まれる案内事象を音声により案内するようになっている。例えば、「まもなく、○○町交差点を右方向です」なる音声により案内する。なお、特許文献1には、案内地点が近接している場合であっても車両が停車しているかどうかによって、案内を行なう内容、及び開始タイミングを変更することが記載されている。この特許文献1は本願とは直接関係はない。
【特許文献1】特開平10−339648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の車両用経路案内装置においては、音声案内の内容量が増加する傾向にあるが、音声案内の話速が一定であるため、ある特定期間内に必要な情報が全て音声出力できないなどの問題があった。また、詳細な音声案内を追加できないこともあった。例えば、上述の、「まもなく、○○町交差点を右方向です」なる音声案内に続いて、「右手前にコンビニエントストアがあります」なる詳細な音声案内を追加したくてもガイドの内容が長くなりすぎて、案内事象となる交差点を過ぎてしまうおそれがある。また話速が一定であるため、ユーザーによっては話速が速すぎると思っても調整ができない問題があった。そのため、例えば老人など耳の遠い人には聞き取り難いこともあった。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、経路案内を音声で行なうについて、音声話速をユーザーの好みに合わせたり、音声出力所要時間が変更可能となり、また音声内容の追加などが可能となる車両用経路案内装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、指定条件に応じて前記音声出力手段から出力する前記音声の話速を設定する音声話速設定手段を備えたから、音声による案内をユーザーの好みに合わせた話速で音声案内ができ、また音声出力所要時間も変更可能で、さらにまた音声の追加も可能となる。
この場合、外部操作されて音声話速を指令する入力手段を備え、前記指定条件は、この入力手段により入力された音声話速指令であって、前記音声話速設定手段は、入力された音声話速指令に応じて音声話速を設定するようにしても良く(請求項2の発明)、このようにすると、ユーザーの好みに応じた話速が設定でき、例えば老人など耳の遠い人にとっても使い勝手が非常に良くなる。
【0006】
また、車両情報の入力が可能であって、前記指定条件は、この入力手段により入力された車両情報であっても良く(請求項3の発明)、このようにすると、車両情報ひいては運転状況に応じて音声の話速を設定できて便利である。
この場合、前記車両情報を車速情報とし、前記音声話速設定手段を、車速が速いほど音声の話速を速めるように設定するようにしても良い(請求項4の発明)。このようにすると、車速が速くても所定の走行区間内で音声出力を完了できる。
【0007】
また、指定条件を音声データ量又は語数とし、前記音声話速設定手段は、前記音声データ量又は語数が多いほど音声の話速を速めるように設定するようにしても良い(請求項5の発明)。このようにすると、一定期間内で必要量の音声を出力することができ、案内事象を通過するまでに音声案内を完了できる。従って、音声内容の追加も可能となる。
さらにまた、指定条件を案内事象間距離とし、音声話速設定手段は、案内事象間距離が短いほど音声の話速を速めるように設定するようにしても良い(請求項6の発明)。このようにすると、案内事象間距離が短い場合でも、次の案内事象までに音声案内を完了できる。
【0008】
また、音声による経路案内の開始タイミングを設定する開始タイミング設定手段を備え、この開始タイミング設定手段が、設定された音声話速が速いほど経路案内の開始タイミングを遅めに設定し、設定された音声話速が遅いほど経路案内の開始タイミングを速めに設定するものであっても良く(請求項7の発明)、このようにすると、設定された音声話速に応じた適正な経路案内の開始タイミングで音声案内を開始できて、音声案内の開始が速過ぎたり、遅すぎたりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例につき図面を参照して説明する。車両用経路案内装置としてカーナビゲーション装置1は、自車位置検出手段としての位置検出器2を有している。この位置検出器2は、地磁気センサ3、ジャイロスコープ4、車速センサ5、GPS受信機6から構成されている。GPS受信機6により受信するGPS信号には、車両位置情報や時刻情報が含まれている。前記車速センサ5の速度情報は位置検出器2においては車両距離測定に用いられるが、車両情報(車速情報)としても制御装置9に入力するものである。
【0010】
また、カーナビゲーション装置1はCD−ROM、DVD−ROM等の地図データ記録媒体7(地図データ記憶手段)から地図データを読み取る地図データ入力器8と、ナビゲーションに必要な各種処理を実行する制御装置9と、地図などの表示を行なう表示手段たる表示装置10と、音声を出力する音声出力手段たるスピーカ11と、リモコン13からの信号を受信するリモコンセンサ12と、ナビゲーションに必要な各種操作を行なうための操作スイッチ群14、後席用表示装置15などを備えている。
【0011】
地図データ記録媒体7には、地図表示に用いられる道路地図データ、マップマッチングに用いられる地図データ、及び経路案内に用いられる地図データ、各種施設の位置データ、音声案内のための音声データ、案内事象の地点データなどが含まれている。
上記地図データ記録媒体7に格納された音声データは、圧縮アルゴリズムにより圧縮されており、制御装置9におけるデータ処理手段により音声データとして復元されて、制御装置9が内蔵する所定のD/A変換器やアンプなどを介してスピーカ11から音声として出力される。
【0012】
前記操作スイッチ群14或いはリモコン13には音声話速を設定する入力手段としての話速入力スイッチ(図示せず)が含まれている。なお、この入力手段としては表示装置10に形成されるタッチパネルスイッチにより構成しても良い。
前記制御装置9は、CPU、ROM、RAMなどを有して構成され、ナビゲーションとしての操作画面処理プログラムや、合成音声作成プログラムなどのデータをROMなどのメモリに格納している。この制御装置9は、位置検出器2からの情報を元に自車の現在位置を割り出し、前記地図データ記録媒体7に格納されている道路地図データや音声データなどを合わせて用いることにより、設定された出発点(現在位置)から目的地までの経路を探索し決定する処理を行なう。すなわち、制御装置9は、出発点から設定された目的地までの経路コストをダイクストラ法などにより計算し、目的地までの全ての経路コストの計算が終了すると、経路コストが最小となるリンクを接続して目的地までの経路を決定する。
【0013】
そして、制御装置9は決定された経路に含まれる案内事象に対して、該当する前記音声データを前記スピーカ11から音声として出力させたり、表示装置10に地図や自車位置などを表示して、経路案内を行なう経路案内手段として機能する。さらにこの制御装置9は、音声話速の初期値として標準値を設定しているが、操作スイッチ群14、リモコン13などのうちの話速入力スイッチから音声話速指令について入力があると、入力された指令を標準値に代わる音声話速として設定してRAMなどのメモリに格納するものであり、すなわち、前記スピーカ11から出す音声の話速を設定する音声話速設定手段として機能するものである。また、制御装置9は上述の話速入力スイッチによる話速設定手段のみならず、車速情報や案内事象間距離などに応じて音声話速を設定変更するところの音声話速設定手段としても機能し、また、開始タイミング設定手段としても機能する。
【0014】
図2には、制御装置9における開始タイミング設定手段としての制御内容のフローチャートを示している。制御装置9は、経路案内が開始されると、この制御を実行すると共に、図3の音声出力制御も実行する。
まず、図2において、ステップP1では、RAMなどのメモリに話速入力スイッチにより設定された話速が有るか否かを検出する。ステップP2において、話速設定があるか否かを判断し、話速設定があれば、ステップP3で話速が標準値より速めに設定されているか否かを判断し、標準値より速めに設定されていると、ステップP4で、音声案内の開始タイミング(案内事象の手前の音声出力開始地点)の初期値として開始タイミング標準値(これは予め設定されている)より遅めの開始タイミングを決定する。
【0015】
前記ステップP3で「NO」であれば、ステップP5に移行して、話速が標準値より遅めに設定されているか否かを判断し、遅めに設定されている場合には、ステップP6で音声案内の開始タイミングの初期値として開始タイミング標準値(これは予め設定されている)より遅めの開始タイミングを決定する。
図3には、制御装置9が、経路案内を実行しているときにおいて案内事象(交差点、分岐とか高速入り口とか出口、目的地など)を検出したときに制御する内容を示している。ステップQ1では、音声データの中から案内事象に応じた案内音声の内容を決定し、ステップQ2では、案内音声の出力所要時間を割り出す。つまり、一義的に話速標準値と音声データ量(音声ファイルの容量)あるいは語数から案内音声の出力所要時間を割り出す。
【0016】
ステップQ3では、話速は標準値以外に変更されているか否かを判断し、変更されていれば、ステップQ9で音声の出力所要時間を変更された話速に応じて音声案内の開始タイミングを調整する。
ステップQ3で話速が標準値から変更されていないと判断されていたときには、ステップQ4で車速は予め初期設定された基準値より速いか否かを判断し、速ければ、ステップQ6で話速を速めに設定する。ステップQ4で車速が基準値未満であるときには、ステップQ5に移行して、今回通過した案内事象から次の案内事象までの距離が短いか(案内事象間距離が短いか)否かを判断し、短いと判断されれば、前述のステップQ6に移行して話速を速めに設定する。
【0017】
ステップQ5において次の案内事象までの距離が短くないと判断されれば、ステップQ7で話速は標準値のままとし、ステップQ8で音声案内の開始タイミングをステップP4あるいはステップP6で設定した開始タイミングとする。そして、ステップQ10で音声案内の開始タイミングに相当する地点に到達したことが判断されると、設定されている話速で音声出力処理を実行する。なお、音声話速の調整は、音声データのピッチ調整やフォルマント調整などの技術や、又は予め「遅め」あるいは「早め」の音声データを設定しておいて、これを選択することなどにより実現するものである。
【0018】
このような本実施例によれば、指定条件に応じてスピーカ11から出力する音声の話速を設定し、この設定された話速で案内音声を出力するようにしたから、音声による案内をユーザーの好みや運転状況にあった話速で良好に行なうことができ、また、音声出力所要時間の変更もでき、さらに話速を速く設定すれば音声の追加も可能となる。
この場合本実施例によれば、外部操作されて音声話速を指令する話速入力スイッチにより音声話速指令を入力し、この入力された音声話速指令に応じて音声話速を設定するようにしたから、このようにすると、ユーザーの好みに応じた話速が設定でき、例えば老人など耳の遠い人にとっても使い勝手が非常に良くなる。
【0019】
また、本実施礼によれば、車速情報を得るようにし、車速が速いほど音声の話速を速めるように設定するようにしたから、車速が速くても所定の走行区間内で音声出力を完了できる。
さらにまた、音声データ量又は語数が多いほど音声の話速を速めるように設定するようにしたから、一定期間内で必要量の音声を出力することができ、案内事象を通過するまでに音声案内を完了できる。
【0020】
しかも本実施例によれば、案内事象間距離が短いほど音声の話速を速めるように設定するようにしたから、案内事象間距離が短い場合でも、次の案内事象までに音声案内を完了できる。
また、設定された音声話速が速いほど経路案内の開始タイミングを遅めに設定し、設定された音声話速が遅いほど経路案内の開始タイミングを速めに設定するようにしたから、設定された音声話速に応じた適正な経路案内の開始タイミングで音声案内を開始できて、音声案内の開始が速過ぎたり、遅すぎたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示すカーナビゲーション装置の電気的構成のブロック図
【図2】制御装置の制御内容を示すフローチャート
【図3】制御装置の別の制御内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0022】
図面中、1はカーナビゲーション装置(車両用経路案内装置)、2は位置検出器(自車位置検出手段)、5は車速センサ、7は地図データ記録媒体(地図データ記憶手段)、9は制御装置(経路案内手段、音声話速設定手段、開始タイミング)、13はリモコン(入力手段)、14は操作スイッチ群(入力手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、
道路地図データ及び経路案内のための音声データなどを格納した地図データ記憶手段と、
音声出力手段と、
前記地図データ記憶手段の道路地図データなどを用いて出発点から目的地までの経路及び案内事象を決定し、車両の経路走行時に、該案内事象に対して、該当する前記音声データを音声として前記音声出力手段から設定された話速で出力させて経路案内を行なう経路案内手段と、
指定条件に応じて前記音声出力手段から出力する前記音声の話速を設定する音声話速設定手段と
を設けたことを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用経路案内装置において、
外部操作されて音声話速を指令する入力手段を備え、
前記指定条件は、この入力手段により入力された音声話速指令であって、
前記音声話速設定手段は、入力された音声話速指令に応じて音声話速を設定することを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用経路案内装置において、
車両情報の入力が可能であって、
前記指定条件は、この入力手段により入力された車両情報であることを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用経路案内装置において、
前記車両情報は車速情報であり、
前記音声話速設定手段は、車速が速いほど音声の話速を速めるように設定することを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用経路案内装置において、
前記指定条件は前記音声データ量又は語数であり、
前記音声話速設定手段は、前記音声データ量又は語数が多いほど音声の話速を速めるように設定することを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用経路案内装置において、
前記指定条件は案内事象間距離であり、
前記音声話速設定手段は、案内事象間距離が短いほど音声の話速を速めるように設定することを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用経路案内装置において、
音声による経路案内の開始タイミングを設定する開始タイミング設定手段を備え、
この開始タイミング設定手段は、設定された音声話速が速いほど経路案内の開始タイミングを遅めに設定し、設定された音声話速が遅いほど経路案内の開始タイミングを速めに設定することを特徴とする車両用経路案内装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−84406(P2006−84406A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271464(P2004−271464)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】