説明

車両用自動変速機の制御装置

【課題】車両走行中であってもソレノイドバルブの学習を実施することができる車両用自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90に供給されるマスタ圧Pmを略零の状態に制御した状態で、セレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124およびシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に基準電流cを出力し、その基準電流cと実際に流された計測実電流dとに基づいて補正ゲインKを算出するため、走行中に基準電流cが出力されてもセレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78が作動することがないので、車両走行中であっても補正ゲインKを算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用自動変速機の制御装置に係り、特に、その制御精度向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータによって変速状態が切り替えられる自動変速機と、その油圧アクチュエータの駆動状態を制御するソレノイドバルブとを、備えた車両用自動変速機が知られている。例えば特許文献1の自動変速機がその一例である。特許文献1の自動変速機は、第1のリニアソレノイドバルブ2によって制御されるシフトアクチュエータ3および第2のリニアソレノイドバルブ5によって制御されるセレクトアクチュエータ6を備え、それらシフトアクチュエータ3およびセレクトアクチュエータ6の作動位置に応じて自動変速機の変速状態が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−182826号公報
【特許文献2】特開2000−337543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1において、第1のリニアソレノイドバルブ2および第2のリニアソレノイドバルブ5の指示電流に対して実際に出力される電流値は温度の影響等で変化するため、逐次その電流特性を学習補正する必要がある。例えば、特許文献2の比例電磁弁(リニアソレノイドバルブ)においては、比例電磁弁の駆動電流を増加および減少方向にそれぞれ徐々に変化させたときに、アクチュエータの作動が停止する電流値、および停止した状態から作動する電流値を逐次検出し、それらの電流値に基づいてアクチュエータの作動状態が切り替わる境界の電流を逐次学習することが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2の比例電磁弁においては、学習中においてアクチュエータを作動させる必要があるため、車両走行中に実施すれば何らかの影響が生じるので、車両走行中には実施が困難であった。したがって、学習回数が少なくなり、逐次最新の学習値に基づいて制御を実行することができない問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両走行中であってもソレノイドバルブの学習補正を実施することができる車両用自動変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)油圧アクチュエータによって変速状態が切り替えられる自動変速機と、その油圧アクチュエータの駆動状態を制御するトランスミッションソレノイドバルブと、そのトランスミッションソレノイドバルブに供給される元圧を制御するマスタソレノイドバルブとを、備えた車両用自動変速機の制御装置であって、(b)前記油圧アクチュエータが非作動状態であり、且つ、前記トランスミッションソレノイドバルブに供給される元圧を略零の状態に制御した状態で、前記トランスミッションソレノイドバルブのソレノイドに所定の指示電流を出力し、その所定の指示電流と実際にそのソレノイドに流された実電流とに基づいて前記指示電流と実電流とのずれを解消するための補正制御量を算出することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用自動変速機の制御装置において、前記補正制御量は、前記所定の指示電流と前記実電流との比で算出される補正ゲインであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両用自動変速機の制御装置において、前記補正ゲインを用いて、前記トランスミッションソレノイドバルブのヌル点を補正することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両用自動変速機の制御装置において、前記補正ゲインを用いて、前記トランスミッションソレノイドバルブへの指示電流を補正することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用自動変速機の制御装置において、前記補正制御量は、前記指示電流と実電流とのずれを小さくするための補正ゲインであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、前記油圧アクチュエータが非作動状態であり、且つ、前記トランスミッションソレノイドバルブに供給される元圧を略零の状態に制御した状態で、該トランスミッションソレノイドバルブのソレノイドに所定の指示電流を出力し、該所定の指示電流と実際にそのソレノイドに流された実電流とに基づいて補正制御量を算出するため、走行中に指示電流が出力されても前記油圧アクチュエータが作動することがないので、車両走行中であっても補正制御量を算出することができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、前記所定の指示電流と前記実電流との比に基づいて補正ゲインが算出されるため、トラスミッションソレノイドバルブのソレノイドの特性が温度変化によって変化しても、算出された補正ゲインに基づいてその特性が補正される。
【0014】
また、請求項3にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、前記補正ゲインを用いて、前記トランスミッションソレノイドバルブのヌル点を補正するため、温度変化によって変化するヌル点のずれを防止することができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、前記補正ゲインを用いて、前記トランスミッションソレノイドバルブへの指示電流を補正するため、トランスミッションソレノイドバルブのソレノイドにおいて適宜狙った実電流値を出力させることができる。
【0016】
また、請求項5にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、前記補正制御量は、前記指示電流と実電流とのずれを小さくするための補正ゲインであるため、温度変化によって変化するソレノイドの特性を補正ゲインを用いて補正することで、前記指示電流と実電流とのずれを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用された車両用駆動装置の概略構成を説明する骨子図である。
【図2】図1のクラッチアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、シフトアクチュエータ等に供給される油圧を制御する油圧制御回路(HPU:Hydraulic Power Unit)を示す回路図である。
【図3】図2の油圧制御回路において、セレクトソレノイドバルブおよびシフトソレノイドバルブの制御流量と自動変速機のシフトセレクト位置との関係を一例として示す図である。
【図4】図2に示すシフトソレノイドバルブのソレノイドに供給される電流と流量の関係を示している。
【図5】図2の電子制御装置の制御作動の要部を説明するための機能ブロック線図である。
【図6】電子制御装置から出力される指示電流と実際に出力された実電流との関係(指示−実電流特性)を示している。
【図7】電子制御装置の制御作動の要部すなわちシフトソレノイドバルブ(およびセレクトソレノイドバルブ)のソレノイドの指示電流を補正して実際に出力される実電流を狙った電流値とする制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図8】補正ゲインを算出する制御作動を説明するためのフローチャートであり、図7のフローチャートにおいてステップSA4およびSA7に対応するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、好適には、前記油圧アクチュエータが非作動状態であるとは、油圧アクチュエータのピストンストロークが停止した状態に相当する。具体的には、自動変速機において、所定の変速段が成立している状態に対応している。
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の概略構成を説明する骨子図で、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、走行用駆動源としてのエンジン12、自動クラッチ14、自動変速機(同期噛合式変速機)16、差動歯車装置18等を備えている。
【0021】
自動クラッチ14は、例えば公知である乾式単板式の摩擦クラッチで構成され、クラッチアクチュエータ34(図2参照)によりその断続状態が制御される。
【0022】
自動変速機16は、差動歯車装置18と共に共通のハウジング40内に配設されてトランスアクスルを構成しており、そのハウジング40内に所定量だけ充填された潤滑油に浸漬され、差動歯車装置18と共に潤滑されるようになっている。自動変速機16は、所謂常時噛合型平行軸式変速機であって、平行な2軸すなわち入力軸42、出力軸44間に、その平行な2軸の一方に相対回転可能に設けられた第1ギヤと該平行な2軸の他方に相対回転不能に設けられた第2ギヤとから成る、ギヤ比が異なる複数の変速ギヤ対(ギヤ対)46a〜46eが配設されるとともに、それ等の変速ギヤ対46a〜46eの被同期側歯車すなわち第1ギヤを入力軸42或いは出力軸44に選択的に連結するためのシンクロメッシュタイプの複数の同期噛合クラッチ(同期噛合装置)48a〜48eが設けられた、2軸噛合式の変速機構を備えている。
【0023】
また、それ等同期噛合クラッチ48a〜48eの構成に含まれる3つのクラッチハブスリーブ(結合スリーブ)50a、50b、50cに対して入力軸42または出力軸44の軸心まわりに相対回転可能にそれぞれ係合させられてクラッチハブスリーブ50a、50b、50cを入力軸42または出力軸44の軸心方向に選択的に移動させることにより何れかの変速段を成立させる3つのフォーク51(他の2本は図示せず)が設けられた、互いに平行な3本のフォークシャフト52(他の2本は図示せず)と、それらフォークシャフト52に略直角な方向に設けられて、後述のセレクトアクチュエータ76(本発明の油圧アクチュエータに対応)の作動に従って機械的に上記フォークシャフト52に略直角な軸方向であるセレクト方向へ移動させられることにより上記3本のフォークシャフト52のうちの任意の一つに選択的に係合させられるとともに、後述のシフトアクチュエータ78(本発明の油圧アクチュエータに対応)の作動に従ってたとえば本実施例では上記フォークシャフト52に略直角な軸心まわりに回動させられることによりフォークシャフト52をそのフォークシャフト52の軸方向へ移動させて、所定の変速段を成立させるシフトアンドセレクトシャフト59とを備えている。
【0024】
さらに、入力軸42および出力軸44には、互いに噛み合わない状態にて後進ギヤ対54が配設され、図示しないカウンタシャフトに配設された後進用アイドル歯車がその後進ギヤ対54のそれぞれと噛み合わされることにより後進変速段が成立させられるようになっている。なお、入力軸42は、スプライン嵌合継手55を介して前記自動クラッチ14のクラッチ出力軸24に連結されているとともに、出力軸44には出力歯車56が配設されて差動歯車装置18のリングギヤ58と噛み合わされている。差動歯車装置18は傘歯車式のものであり、一対のサイドギヤ60R、60Lにはそれぞれドライブシャフト62R、62Lがスプライン嵌合などによって連結され、左右の前車輪(車両の駆動輪)64R、64Lがドライブシャフト62R、62Lにより回転駆動される。なお、図1は、入力軸42、出力軸44、およびリングギヤ58の軸心を共通の平面内に示した展開図である。
【0025】
前述のようにシフトアンドセレクトシャフト59はセレクトアクチュエータ76のストロークにより3本のフォークシャフト52のうちの任意の一つに選択的に係合させられるセレクト方向の3位置、たとえば本実施例では、フォークシャフト52およびフオーク51を介してクラッチハブスリーブ50cと係合可能な第1セレクト位置、クラッチハブスリーブ50bと係合可能な第2セレクト位置、あるいはクラッチハブスリーブ50aと係合可能な第3セレクト位置に位置決めされる(図3参照)。
【0026】
また、上述のようにシフトアンドセレクトシャフト59はシフトアクチュエータ78のストロークによりフォークシャフト52に略直角な軸心まわりに回動させられることにより、たとえば本実施例では、フォークシャフト52およびフォーク51を介してクラッチハブスリーブ50a、50b、50cが図1の右方向に移動されて同期クラッチ48a、48c、48eのいずれか1が係合される第1シフト位置、クラッチハブスリーブ50b、50cが図1の左方向に移動されて同期クラッチ48bまたは48dが係合される第2シフト位置、あるいは同期噛合クラッチ48a〜48eのいずれも係合されないニュートラル状態となるニュートラル位置に位置決めされる(図3参照)。
【0027】
上記第1セレクト位置の第1シフト位置では、噛合クラッチ48eが連結されることにより変速比(=入力軸42の回転数Nin/出力軸44の回転数Nout )が最も大きい第1変速段G1が成立させられ、第1セレクト位置の第2シフト位置では、噛合クラッチ48dが連結されることにより変速比が2番目に大きい第2変速段G2が成立させられる(図3参照)。第2セレクト位置の第1シフト位置では、噛合クラッチ48cが連結されることにより変速比が3番目に大きい第3変速段G3が成立させられ、第2セレクト位置の第2シフト位置では、噛合クラッチ48bが連結されることにより変速比が4番目に大きい第4変速段G4が成立させられる(図3参照)。この第4変速段G4の変速比は略1である。第3セレクト位置の第1シフト位置では、噛合クラッチ48aが連結されることにより変速比が最も小さい第5変速段G5が成立させられ、第3セレクト位置の第2シフト位置では後進変速段が成立させられる(図3参照)。フォークシャフト52を移動させるセレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78は、運転者の操作力を要しないで自動変速機16のギヤ段を切り換える変速アクチュエータとして機能している。
【0028】
図2は、クラッチアクチュエータ34、セレクトアクチュエータ76、シフトアクチュエータ78に供給される油圧等を制御する油圧制御回路(HPU:Hydraulic Power Unit)80を示す回路図である。油圧制御回路80は、オイルポンプ81から吐出された作動油圧を調圧するリリーフ式のレギュレータバルブ83と、レギュレータバルブ83によって調圧された作動油圧を畜圧するアキュムレータ82と、そのアキュムレータ82に接続されている第1油路84と、その第1油路84に接続されてクラッチアクチュエータ34への作動油流量を制御するためのクラッチソレノイドバルブ86と、第1油路84に接続されて後述するセレクトソレノイドバルブ88および後述するシフトソレノイドバルブ90へ供給されるマスタ圧Pm(元圧)を制御するためのマスタソレノイドバルブ92と、マスタソレノイドバルブ92とセレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90との間を接続する第2油路94と、第2油路94に設けられてマスタソレノイドバルブ92から供給された元圧を蓄圧するとともに所定量の作動油を貯溜する畜圧器として機能するマスタコンプライアンス96とを、主に備えて構成されている。また、第1油路84には、第1油路84のアキューム圧Pacを検出するアキューム圧センサ98が設けられ、第2油路94には、第2油路94のマスタ圧Pm(元圧)を検出するためのマスタ圧センサ100が設けられている。なお、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90が、本発明のトランスミッションソレノイドバルブに対応している。
【0029】
クラッチソレノイドバルブ86は、クラッチアクチュエータ34の油室102の第1油路84への接続、その接続の遮断、または油室102のリザーバ104への接続を切り替える3ポートリニアスプール式のソレノイドバルブである。
【0030】
上記クラッチアクチュエータ34の油室102の第1油路84への接続がなされてクラッチソレノイドバルブ86から油室102に作動油が供給されることによって、自動クラッチ14が遮断され、上記油室102のリザーバ104への接続がなされてクラッチアクチュエータ34の作動油の流出が許容されると、自動クラッチ14が係合される。クラッチソレノイドバルブ86は、流量(流通断面積)を連続的に制御することが可能であり、自動クラッチ14の係合時には、クラッチアクチュエータ34の作動油の流出流量を変更することにより、変速の種類(アップダウンなど)や車速、エンジン回転数などの変速条件に応じて接続速度(接続に要する所要時間)を適宜設定できるようになっている。
【0031】
また、マスタソレノイドバルブ92は、第1油路84の第2油路94への接続(接続状態)、その遮断(遮断状態)、または上記遮断状態としつつ第2油路94のリザーバ104への接続(排出状態)を切り替えることにより、マスター圧Pmをたとえば自動変速機16の入力トルク或いはスロットル開度に応じた値に調圧する3ポートリニアスプール式のソレノイドバルブである。マスタソレノイドバルブ92は、第1油路84に接続されている供給ポート106と、第2油路94に接続されている出力ポート108と、リザーバ104に接続されているドレンポート110と、それら各ポートの連通状態を切り替える図示しないスプール弁子と、そのスプール弁子を出力ポート108とドレンポート110とを連通させる共に供給ポート106の連通を遮断する位置に常時付勢するスプリング112と、そのスプール弁子を供給される電流値に応じた位置に移動させるソレノイド114とを、備えて構成されている。
【0032】
マスタソレソレノイドバルブ92において、例えばソレノイド114に駆動電流が供給されない場合、スプリング112の付勢力によって図示しないスプール弁子が図2において右側に移動させられ、図2に示す連通位置(図2において左側の連通位置)となり、出力ポート108とドレンポート110が連通させられて第2油路94の作動油がドレンポート110からリザーバ104に排出される。このとき、第2油路94のマスタ圧Pmが減圧される。また、ソレノイド114に所定の電流が供給されると、スプリング112の付勢力に抗って図示しないスプール弁子が図2において左側に移動させられ、供給ポート106、出力ポート108、およびドレンポート110の全ての連通が遮断される(図2において中央の連通位置)。さらに、ソレノイド114に前記所定の電流よりも強い電流が供給されると、図示しないスプール弁子がさらに左側に移動させられ、供給ポート106と出力ポート108とが連通されると共にドレンポート110の連通が遮断される(図2において右側の連通位置)。このとき、第1油路84の作動油が第2油路94へ供給され、第2油路94のマスタ圧Pmが増圧される。なお、マスタソレノイドバルブ92のソレノイド114に供給される電流値とマスタソレノイドバルブ92の作動油の給排状態の関係は予め求められて図2に示す電子制御装置150に記憶されている。
【0033】
セレクトソレノイドバルブ88は、第2油路94のセレクトアクチュエータ76の第1油室114への接続、その遮断、または第1油室114のリザーバ104への接続を切り替えることで、第1油室114に供給される作動油量を制御する3ポートリニアスプール式の流量制御弁である。セレクトソレノイドバルブ88は、第2油路94と接続されている供給ポート116と、セレクトアクチュエータ76の第1油室114に接続されている出力ポート108と、リザーバ104に接続されているドレンポート120と、それら各ポートの連通状態を切り替える図示しないスプール弁子と、そのスプール弁子を出力ポート118とドレンポート120とを連通させると共に供給ポート116の連通を遮断する位置に常時付勢するスプリング122と、そのスプール弁子を供給される電流値に応じた位置に移動させるソレノイド124とを、備えて構成されている。
【0034】
セレクトソレノイドバルブ88において、例えばソレノイド124に電流が供給されない場合、スプリング122の付勢力によって図示しないスプール弁子が図2において右側に移動させられ、図2に示す連通位置(図2のセレクトソレノイドバルブ88において左側の連通位置)となり、出力ポート118とドレンポート120とが連通させられ、セレクトアクチュエータ76の第1油室114の作動油がドレンポート120を通ってリザーバ104へ排出される。このとき、セレクトアクチュエータ76において、第1油室114の作動油が排出されると共に、セレクトアクチュエータ76の第2油室126に第2油路94の作動油が流入することで、セレクトアクチュエータ76のピストン128がそのピストンストロークslstの減少する側(図2において左側)に移動する。
【0035】
また、ソレノイド124に所定の電流が供給されると、スプリング122の付勢力に抗って図示しないスプール弁子が図2において左側に移動させられ、供給ポート116、出力ポート118、およびドレンポート12の全ての連通が遮断される(図2のセレクトソレノイドバルブ88において中央の連通位置)。このとき、セレクトアクチュエータ76の第1油室114の作動油の給排が停止するため、ピストン128の移動が停止する。
【0036】
さらに、ソレノイド124に前記所定の電流よりも強い電流が供給されると、図示しないスプール弁子がさらに左側に移動させられ、供給ポート116と出力ポート118とが連通されると共にドレンポート120の連通が遮断される(図2のセレクトソレノイドバルブ88において右側の連通位置)。このとき、第2油路94の作動油がセレクトアクチュエータ76の第1油室114に供給され、第1油室114と第2油室126との受圧面積差に基づいて、ピストン128がピストンストロークslstの増加する側(図2において右側)に移動する。なお、ソレノイド124に供給される電流値とセレクトソレノイドバルブ88の給排状態との関係は予め求められて電子制御装置150のROMに記憶されている。
【0037】
セレクトソレノイドバルブ88によって制御されるセレクトアクチュエータ76は、上記第1油室114および第2油室126を備えた複動式の油圧アクチュエータである。また、このセレクトアクチュエータ76のピストン128のピストンストロークslstを検出するストロークセンサ129が設けられており、このストロークセンサ129によってピストンスロトークslstが逐次検出される。そして、検出された実際のピストンスロトークslstが車両の走行状態に応じたピストンストロークslst1となるようにセレクトソレノイドバルブ88の給排状態が制御される。なお、第1変速段G1〜第5変速段G5、後進変速段に対応するピストン128のピストンストロークslstは予めそれぞ求められて電子制御装置150のROMに記憶されている。
【0038】
シフトソレノイドバルブ90は、第2油路94のシフトアクチュエータ78の第1油室130への接続、その遮断、または第1油室130のリザーバ104への接続を切り替えることで、第1油室130に供給される作動油量を制御する3ポートリニアスプール式の流量制御弁である。シフトソレノイドバルブ90は、第2油路94と接続されている供給ポート132と、シフトアクチュエータ78の第1油室に接続されている出力ポート134と、リザーバ104に接続されているドレンポート136と、それら各ポートの連通状態を切り替える図示しないスプール弁子と、そのスプール弁子を出力ポート134とドレンポート136とを連通させると共に供給ポート132の連通を遮断する位置に常時付勢するスプリング138と、そのスプール弁子を供給される電流値に応じた位置に移動させるソレノイド140とを、備えて構成されている。
【0039】
シフトソレノイドバルブ90において、例えばソレノイド140に電流が供給されない場合、スプリング138の付勢力によって図示しないスプール弁子が図2において右側に移動させられ、図2に示す連通位置(図2のシフトソレノイドバルブ90において左側の連通位置)となり、出力ポート134とドレンポート136とが連通させられ、シフトアクチュエータ78の第1油室130の作動油がドレンポート136を通ってリザーバ104へ排出される。このとき、シフトアクチュエータ78において、第1油室130の作動油が排出されると共に、シフトアクチュエータ78の第2油室142に第2油路94の作動油が流入することで、シフトアクチュエータ78のピストン146がそのピストンストロークsfstの減少する側(図2において左側)に移動する。
【0040】
また、ソレノイド140に所定の電流が供給されると、スプリング138の付勢力に抗って図示しないスプール弁子が図2において左側に移動させられ、供給ポート132、出力ポート134、およびドレンポート136の全ての連通が遮断される。(図2のシフトソレノイドバルブ90において中央の位置)。このとき、シフトアクチュエータ78の第1油室130の作動油の給排が停止するため、ピストン146の移動が停止する。
【0041】
さらに、ソレノイド140に前記所定の電流よりも強い電流が供給されると、図示しないスプール弁子がさらに左側に移動させられ、供給ポート132と出力ポート134とが連通させられると共にドレンポート136の連通が遮断される(図2のシフトソレノイドバルブ90において右側の連通位置)。このとき、第2油路94の作動油がシフトソレノイドバルブ90の第1油室130に供給され、第1油室130の受圧面積と第2油室142の受圧面積との受圧面積差に基づいて、ピストン146がクラッチストロークsfstの増加する側(図2において右側)に移動する。なお、ソレノイド140に供給される電流値とシフトソレノイドバルブ90の作動油の給排状態との関係は予め求められて電子制御装置150のROMに記憶されている。
【0042】
シフトソレノイドバルブ90によって制御されるシフトアクチュエータ78は、上記第1油室130および第2油室142を備えた複動式の油圧アクチュエータである。また、このシフトアクチュエータ78のピストン142のピストンストロークsfstを検出するストロークセンサ148が設けられており、このストロークセンサ148によってピストン142のピストンストロークsfstが逐次検出される。そして、検出されたピストンストロークsfstが車両の走行状態に応じたピストンストロークsfst1となるようにシフトソレノイドバルブ90の流量が制御される。なお、第1変速段G1〜第5変速段G5、後進変速段に対応するピストン148のピストンストロークsfstは予め求められて電子制御装置150のROMに記憶されている。
【0043】
上記のように構成される油圧制御回路80において、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90の給排状態と自動変速機16の変速段との関係を図3に示す。なお、図3において、横軸がセレクトソレノイドバルブ88の制御流量を示し、縦軸がシフトソレノイドバルブ90の制御流量を示している。例えば、セレクトソレノイドバルブ88によってセレクトアクチュエータ76の第1油室114へ作動油が供給されると、図3に示すように、セレクト位置が第1セレクト位置から第3セレクト位置側へ移動させられる。一方、セレクトソレノイドバルブ88によって第1油室114の作動油が排出されると、セレクト位置が第3セレクト位置から第1セレクト位置側へ移動させられる。また、シフトソレノイドバルブ90によってシフトアクチュエータ78の第1油室130に作動油が供給されると、図3に示すように、シフト位置が第1シフト位置から第2シフト位置側に移動させられる。一方、シフトソレノイドバルブ90によって第1油室130の作動油が排出されると、シフト位置が第2シフト位置から第1シフト位置側へ移動させられる。このように、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90の給排状態が制御されることにより、自動変速機16のシフトセレクト位置が切り替えられて、所定の変速段に変速させられる。
【0044】
ここで、シフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に供給される電流値Iと流量との関係Q、および、セレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124に供給される電流値Iと流量Qとの関係は、予め求められて電子制御装置150のROMに記憶されている。シフトソレノイドバルブ90を一例に説明する。図4は、シフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に供給される電流Iと流量Qの関係を示している。例えば電流Iが零である場合、図2において、出力ポート134とドレンポート136との開口面積が最も大きくなるため、ドレンポート136から排出される作動油の排出量Qが最大となる。そして、電流を徐々に大きくすると、作動油の排出量Qがそれに従って減少し、電流Iが所定の電流値に到達すると、出力ポート134の連通が遮断されるため、シフトソレノイドバルブ90の作動油の給排が零となる。そして、所定区間だけ作動油の給排が零に保持され、さらに電流を増加させると、図2において供給ポート132と出力ポート134とが徐々に連通されるに従い、第2油路94からシフトアクチュエータ78の第1油室130に作動油が徐々に供給される。そして、電流Iが予め設定されている定格値に到達すると、供給ポート132と出力ポート134との開口面積が最大となり、第1油室130への作動油の流量Qが最大となる。なお、上記図4に示す電流と流量との関係は、シフトソレノイドバルブ90だけでなく、クラッチソレノイドバルブ86、セレクトソレノイドバルブ88、マスタソレノイドバルブ92においてもそれぞれ同様に予め求められて電子制御装置150のROMに記憶されている。
【0045】
上記各ソレノイドバルブは、電子制御装置150によって制御される。電子制御装置150は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。電子制御装置150には、例えばアキューム圧センサ98によって検出される第1油路84の作動油圧であるアキューム圧Pacを表すアキューム圧力信号、マスタ圧センサ100によって検出される第2油路94の作動油圧であるマスタ圧Pmを表すマスタ圧信号、ストロークセンサ148によって検出されるセレクトアクチュエータ78のピストン146のピストンスロトークslstを表すストローク信号、ストロークセンサ129によって検出されるシフトアクチュエータ80のピストン128のピストンストロークsfstを表すストローク信号、電流センサ151によって検出されるセレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124に出力された実電流Islを表す実電流信号、電流センサ153によって検出されるシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に出力された実電流Isfを表す実電流信号等が供給される。また、電子制御装置150は、クラッチソレノイドバルブ86を駆動するための指示電流Icl、セレクトソレノイドバルブ88を駆動するための指示電流Isli、シフトソレノイドバルブ90を駆動するための指示電流Isfi、マスタソレノイドバルブ92を駆動するための指示電流Im等を出力する。
【0046】
ところで、例えば図4に示す電流と流量との関係を示す図に基づいて、シフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に供給される電流を制御することで、シフトソレノイドバルブ90の給排状態を制御することはできるが、電力出力回路の特性は、温度の影響等でも変化するため、指示電流値Isfiと実際に流される実電流Isfとの関係にズレが生じる。これより、例えばシフトソレノイドバルブ90の給排が零となる電流値(以下、Null点と定義する)にズレが生じると、シフトアクチュエータ78の制御精度が低下することとなる。この問題はセレクトソレノイドバルブ88においても同様に発生する。そこで、本実施例では、セレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78が非作動状態にある場合において、指示電流値(Isli、Isfi)と実際の電流値(実電流)(Isl、Isf)との関係において、温度変化によって生じるその関係のズレを解消するための補正ゲインKを算出する制御を適宜実施し、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90の作動油の給排が零(停止する)となるNull点(指示値)や出力電流(指示電流)をこの補正ゲインKを用いて適宜補正する。このように、補正ゲインKを用いて補正されることで、温度変化による影響が小さくなる。
【0047】
図5は、電子制御装置150の制御作動の要部を説明するための機能ブロック線図である。一点鎖線で囲まれる電子制御装置150の作動を示す各手段において、初期学習判断手段152は、現在初期学習を実行中であるか否かを判断する。初期学習は、例えば車両工場において車両の組付終了後、或いは、サービス工場で所定の部品を交換した際に実行される。初期学習時においては、所定のクラッチが完全係合されるクラッチストローク値(クランプ点)や自動変速機16の各変速段に対応する、セレクトアクチュエータ76のピストンストロークおよびシフトアクチュエータ78のピストンストローク、各ソレノイドバルブ(シフトソレノイドバルブ90等)の作動油の給排が停止するソレノイドのNull点(電流値)等が学習される。これらの学習値は、電子制御装置150のROMに記憶される。初期学習判断手段152は、例えば初期学習実施時に立てられるフラグ等に基づいて、初期学習実施中であることを判断する。
【0048】
Null点学習判断手段154は、初期学習中においてセレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90の作動油の給排が零となる各Null点の学習が完了したか否かが判断される。この初期学習中に学習される各Null点は、車両工場またはサービス工場において厳密に計測される実測値である。
【0049】
学習値補正完了判断手段156は、初期学習中に学習された実測値であるNull点の学習値補正が完了したか否かが判断される。Null点学習補正とは、初期学習中に学習された実測値であるNull点を実際に出力する為に必要な指示電流を求めるものである。すなわち、補正された指示電流を出力すると、例えばシフトソレノイドバルブ90において学習されたNull点に対応する電流値が実際に出力されると、シフトソレノイドバルブ90の作動油の給排が停止される。なお、Null点学習補正の具体的な算出方法については後述するものとする。
【0050】
学習値補正完了判断手段156が否定されると、本発明の補正制御量に対応する補正ゲインKを算出するゲイン算出手段158実行される。ゲイン算出手段158は、算出可能判断手段160、マスタ圧減圧手段162、指示電流出力手段164、および電流値測定手段166とを含んで構成されている。なお、以下については、シフトソレノイドバルブ90を一例として説明するが、セレクトソレノイドバルブ88についても同様の算出方法によってセレクトソレノイドバルブ88の補正ゲインKが算出される。
【0051】
算出可能判断手段160は、現在初期学習中であるか否かに基づいて補正ゲインKが算出可能な条件が成立したか否かを判断する。補正ゲインKが算出可能な条件とは、上記初期学習中である場合が対応する。また、現在初期学習中でない場合であっても、算出可能判断手段160は、補正のゲインKが算出可能な条件が成立したか否かを所定時間間隔(例えば40秒程度)の時間間隔で実行する。ここで、初期学習時以外において、補正ゲインKが算出可能な条件とは、自動変速機16の変速段を切り替えるセレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78が非作動状態である場合に対応する。例えば、自動変速機16が所定の変速段で走行している場合、セレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78は、その変速段が成立した状態で停止するため、補正ゲインKの算出が可能な条件が成立したものと判断される。算出可能判断手段160は、例えば電子制御装置150から出力される変速指令信号や、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90に供給される指示電流等に基づいて、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90が非作動状態であることを判断して、補正ゲインKを算出可能な条件が成立しているものと判断する。一方、変速段の切替が判断され、セレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78の少なくとも一方が作動状態にある場合には、算出可能判断手段160は、補正ゲインKを算出可能な条件が成立していないものと判断する。また、補正ゲインKの算出が不可能であると判断されると、算出可能判断手段160は、補正ゲインKの算出不可能な状態から算出可能な状態に変化たことを検出して、ゲイン算出手段158に補正ゲインKの算出を実行させる指令を出力させることもできる。これより、補正ゲインKが算出される頻度が高くなる。
【0052】
このように、逐次補正ゲインKが算出可能な条件が成立したか否かを判断するのは、補正ゲインKが気温変化等に応じて逐次変化するためである。したがって、逐次最適な補正ゲインKを用いて後述するNull点や電流値補正が実行されるように、補正ゲインKが算出可能であるか否かが判断され、補正ゲインKが算出可能な場合には、後述する補正ゲインKの算出が実施される。したがって、補正ゲインKの算出は、初期学習時や車両停止中だけでなく、車両走行中においても逐次実施される。
【0053】
算出可能判断手段160によって、補正ゲインKの算出可能な条件が成立したものと判断されると、マスタ圧減圧手段162が実行される。マスタ圧減圧手段162は、図2に示すマスタソレノイドバルブ92の出力ポート108とドレンポート110とが連通される電流値Imをソレノイド114に供給することで、第2油路94のマスタ圧Pmを零にする。具体的には、マスタソレノイドバルブ92において、図示しないスプール弁子を移動させて出力ポート108とドレンポート110とを連通することで、第2油路94の作動油をリザーバ104へ排出することで、マスタ圧Pmを零または略零まで減圧する。なお、上記電流値Imは、本実施例では零となる。また、マスタ圧Pmが本発明のトランスミッションソレノイドバルブに供給される元圧に対応している。
【0054】
マスタ圧減圧手段162は、第2油路94のマスタ圧Pmの減圧を開始してからの経過時間、或いは、マスタ圧センサ100から検出されるマスタ圧Pmに基づいて、第2油路94のマスタ圧Pmが零になったか否かを判断する。具体的には、マスタ圧Pmの減圧を開始してからの経過時間が、予め実験的に求めたマスタ圧Pmが零となる所定時間に到達したか否か、或いは、検出されたマスタ圧Pmが予め設定されている零近傍の所定値まで低下したか否かに基づいて、マスタ圧Pmが零になったか否かを判断する。
【0055】
そして、マスタ圧減圧手段162によってマスタ圧Pmが零になったと判断されると、指示電流出力手段164が実行される。指示電流出力手段164は、シフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に予め設定されている基準電流c1を出力する指令を電子制御装置150のPF層に出力する。同様に、指示電流出力手段164は、セレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124に予め設定されている基準電流c2を出力指令を電子制御装置150のPF層(プラットフォーム層)に出力する。なお、各ソレノイドに出力される基準電流c1、c2(以下、特に区別しない場合には、単に基準電流cと記載する)は、予め設定されており、零から各ソレノイドの定格値(最大値)の間で補正ゲインKの算出に適した最適な値に設定される。ここで、PF層とは、各ソレノイドバルブに出力する電流を制御するためのドライバ(ソフトウェア)であり、そのPF層を介してシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140およびセレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124に基準電流cが出力される。このとき、マスタ圧減圧手段162によってマスタ圧Pmが予め零まで減圧されているため、シフトソレノイド90のソレノイド140に基準電流cが出力されて、ポートの連通状態が切り替えられても、第2油路94のマスタ圧Pmおよびリザーバ104の油圧が共に零であるため、シフトアクチュエータ78のピストン146およびセレクトアクチュエータ76のピストン128は移動しない。すなわち、マスタ圧Pmが零まで減圧させることで、走行中であってもシフトアクチュエータ78およびセレクトアクチュエータ76に影響を及ぼすことなく、基準電流cの出力を可能としている。したがって、補正ゲインKの算出回数が増加する。なお、基準電流cが本発明の所定の指示電流に対応している。
【0056】
また、指示電流出力手段164は、シフトソレノイドバルブ90およびセレクトソレノイドバルブ88への基準電流cの出力が開始されてからの経過時間が予め設定されている安定化待機時間Taを経過したか否かに基づいて、基準電流cが安定したか否かを判断する。上記安定化待機時間Taは、予め求められており電流の立ち上がりの遅れ時間等を考慮して、基準電流cが安定するのに要する時間に設定されている。
【0057】
そして、安定化待機時間Taが経過すると、電流値計測手段166は、実際にシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に流された計測実電流d1およびセレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124に出力された計測実電流d2(以下、d1、d2を特に区別しない場合には、単に計測実電流dと記載する)を計測する。計測実電流dは、ソレノイド140と電子制御装置150との間に設けられている電流センサ153を含む電流モニタ回路、および、ソレノイド124と電子制御装置150との間に設けられている電流センサ151を含む電流モニタ回路によって計測される。このとき、電流計のノイズやディザ成分を取り除くため所定区間(時間)の間計測され、その間に計測(サンプリング)された複数個の電流値の平均値が計測実電流dとして算出される。なお、上記ディザとは、スプール弁子などで、摩擦、固着現象などの影響を減少させて、その特性を改善するために与える比較的高い周波数の微細振動(ディザ電流)のことである。 そして、計測実電流dが計測されると、指示電流出力手段164は、PF層に基準電流cの出力を終了する指令を出力する。なお、計測実電流dが本発明の実電流に対応している。
【0058】
ゲイン算出手段158は、前記基準電流cおよび計測実電流dに基づいて補正ゲインKを算出する。補正ゲインKは、下式(1)に基づいて算出される。式(1)において、O1は実電流のオフセット量であり、予め電流を制御する制御回路の特性等に基づいて決定される。式(1)は、基準電流c(指示電流)と計測実電流dとの比に基づいて補正ゲインKが算出されることを示している。この補正ゲインKは、後述する予め設定されている基本特性αに対して、実際の出力特性βが温度に応じて変化するため、その温度変化によるずれを解消するために用いられる補正係数である。すなわち、補正ゲインKは、温度変化による指示電流と実電流との関係のずれを小さくするための補正係数である。
K=(c-O1)/(d-O1)・・・(1)
【0059】
学習値補正完了判断手段156が否定され、次いで、補正ゲイン算出手段158によって補正ゲインKが算出されると、Null点学習値補正手段168が実行される。Null点学習値補正手段168は、初期学習中に学習された実測値であるNull点を実際に流す為に必要な指示電流Nullc(以下、補正Null点Nullcと記載)に補正する。補正Null点Nullcは、式(1)で算出された補正ゲインKを用いて、下式(2)に基づいて求められる。式(2)において、Kは補正ゲインKであり、Nullは初期学習時に計測された学習値(電流値)である。また、O2は指示電流のオフセット量であり、予め電流を制御する制御回路の特性等に基づいて設定される。
Nullc=(1/K)×(Null-O2)+O2・・・(2)
【0060】
そして、補正ゲインKおよび補正Null点Nullcが算出されると、学習値補正完了判断手段156は、初期学習の完了を判断する。
【0061】
システム停止判断手段170は、システム停止中であるか否か、具体的には、自動変速機16において所定の変速段が成立した状態であるか否かが判断される。なお、自動変速機16が変速中である場合、システムが作動しているものと判断され、システム停止判断手段170が否定される。
【0062】
システム停止判断手段170が肯定されると、前述したゲイン算出手段158が実行される。なお、ゲイン算出手段158の具体的な算出方法については、初期学習時の算出方法と同様であるため、その説明を省略する。一方、システム停止判断手段170が否定されると、電流補正手段172が実行される。
【0063】
電流補正手段172は、実際にシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140、および、セレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124に出力する指示電流を、補正ゲインKを用いて正確な指示電流に補正するものである。電流補正手段172によって補正される電流の算出方法を図6を用いて説明する。図6は、電子制御装置150から出力される指示電流と実際に流された実電流との関係(指示−実電流特性)を示している。なお、図6において、横軸が指示電流、縦軸が実電流を示している。
【0064】
図6において、実線は、シフトソレノイドバルブ90のソレノイド140(およびセレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124)の指示電流に対して出力される実電流の基本特性αを示しており予め電子制御装置150のROMに記憶されている。また、一点鎖線は、温度変化によって変化した実際の出力特性βを示している。例えば、実電流aを出力したい場合、基本特性αに基づくと、基本指示電流Aを出力する必要がある。しかしながら、温度変化によって実際には出力特性βに変化しているため、基本指示電流Aが出力されると、出力特性βに基づいて、実電流bが出力されてしまう。したがって、実電流aを出力するには、出力特性βに基づいて、出力指示電流Bを出力する必要がある。電流補正手段172は、実際に出力したい実電流aを流すために必要な出力指示電流Bを算出する。
【0065】
図6において、下式(3)の関係が成立し、その式(3)を変形すると、出力指示電流Bを算出する式(4)が求められる。式(3)、(4)において、Aが基本指示電流すなわち基本特性αに基づく補正前の指示電流値を示し、Bが実電流aを実際に流すための出力指示電流すなわち出力特性βに基づく補正後の指示電流値を示し、aが実際に流したい狙いの実電流を示し、bが補正無しの場合に出力される実電流を示し、O1が予め回路特性等に基づいて設定される実電流オフセット量(一定値)を示し、O2が予め回路特性等に基づいて設定される指示電流オフセット量(一定値)を示している。
(B-O2):(a-O1)=(A-O2):(b-O1)・・・(3)
B={(a-O1)/(b-O1)}×(A-O2)+O2・・・(4)
【0066】
また、図6において下式(5)の関係が成立し、その式(5)を変形すると、下式(6)となる。式(5)、(6)において、cが補正ゲインKを算出する際に出力される予め設定されている基準電流を示し、dが補正ゲインKを算出する際、すなわち基準電流cを出力した際に実際に計測された実電流を示している。
(a-O1):(b-O1)=(c-O1):(d-O1)・・・(5)
(a-O1)/(b-O1)=(c-O1)/(d-O1)・・・(6)
【0067】
ここで、式(4)に式(6)を代入すると下式(7)となり、その式(7)に式(1)で示す補正ゲインKで表すと下式(8)となる。この式(8)は、補正ゲインKが算出されると、実電流aを流すために必要な補正後の指示電流値Bが算出されることを示している。すなわち、基本特性αを補正ゲインKを用いて温度変化に対応した実際の出力特性βに変化させて、実際に実電流aを流すことができる補正後の指示電流Bが算出されることを示している。
B={(c-O1)/(d-O1)}×(A-O2)+O2・・・(7)
B=K×(A-O2)+O2・・・(8)
【0068】
電流補正手段172は、式(8)および式(1)によって予め算出されている補正ゲインKを用いて、出力したい実電流aに応じた補正後の指示電流Bを算出し、指示電流Aをその算出された指示電流Bに補正する指令を出力する。言い換えれば、式(9)に示すように、基本特性αに基づく実電流aを、補正ゲインKを用いて温度変化によって変化した出力特性βに基づく実電流bに補正する。なお、式(9)において、a(α)は、基本特性αに基づいて求められる実電流aを示している。
b=K×a(α)・・・(9)
【0069】
図7は、電子制御装置150の制御作動の要部すなわちシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140およびセレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124の指示電流を補正して、実際に流される実電流を狙った電流値とする制御作動を説明するためのフローチャートであり、数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。なお、以下の説明は、シフトソレノイドバルブ90について為されているが、セレクトソレノイドバルブ88においても本フローと同様の制御が実行される。
【0070】
先ず、初期学習判断手段152に対応するステップSA1(以下、ステップを省略)において、現在初期学習中であるか否かが判断される。SA1が肯定される場合、Null点学習完了判断手段154に対応するSA2において、その初期学習中において、シフトソレノイドバルブ90の給排が零となる電流値すなわちNull点の学習が完了したか否かが判断される。SA2が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、SA2が肯定される場合、学習値補正完了判断手段156に対応するSA3において、Null点学習値の補正が完了したか否かが判断される。SA3が肯定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、SA3が否定される場合、ゲイン算出手段158に対応するSA4において、初期学習における補正ゲインKが式(1)に基づいて算出される。SA4において補正ゲインKが算出されると、次いで、Null点学習値補正手段168に対応するSA5において、初期学習中に学習されたNull点を、SA4において算出された補正ゲインKおよび式(2)に基づいて補正して、その補正されたNullcを電子制御装置150に記憶させる。これより、初期学習時における補正ゲインKおよび補正されたNull点が算出される。なお、SA2〜SA5は、初期学習時のみ実施されるものである。
【0071】
SA1に戻り、初期学習中でないと判断されると、システム停止判断手段170に対応するSA6が実行される。SA6では、現在システム停止中であるか否かが判断される。具体的には、自動変速機16の変速段が何れかの変速段に入った状態であるか否かに基づいて判断される。なお、SA6は、車両の走行状態に拘わらず判断される。また、SA6が否定される場合とは、自動変速機16が変速中であり、シフトアクチュエータ78が作動している状態に対応する。SA7が肯定される場合、ゲイン算出手段158に対応するSA7において、式(1)に基づいて補正ゲインKが新たに算出される。SA6が否定される場合、電流補正手段172に対応するSA8において、シフトソレノイドバルブ90のソレノイド140の電流補正が、式(8)および式(1)によって算出された補正ゲインKに基づいて実行される。そして、補正された電流値(指示電流B)に基づいてシフトソレノイドバルブ90が制御されることで、温度変化に応じた指示電流に基づいて、シフトソレノイドバルブ90が精度良く制御される。
【0072】
図8は、上記補正ゲインKを算出する制御作動を説明するためのフローチャートであり、図7のフローチャートのステップSA4およびSA7に対応するものである。なお、図8のフローは、シフトソレノイドバルブ90の補正ゲインKの算出について説明されているが、セレクトソレノイドバルブ88においても同様の制御が実行される。
【0073】
補正ゲインKを算出する指令が出力されると、先ず、算出可能判断手段160に対応するステップSB1(以下、ステップを省略)において、補正ゲインKが算出可能な条件が成立したか否かが判断される。補正ゲインKが算出可能な条件とは、初期学習時およびシフトアクチュエータ78が非作動状態にある場合、すなわち自動変速機16において所定の変速段が成立した状態に相当する。SB1が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。
【0074】
一方、SB1が肯定される場合、マスタ圧減圧手段162に対応するSB2において、マスタソレノイドバルブ92を制御することにより、第2油路94のマスタ油圧Pmが零となるまで減圧される。さらに、マスタ圧減圧手段162に対応するSB3において、そのマスタ圧Pmが零になったか否かが判断される。例えば、マスタPmを検出し、その油圧Pmが予め設定されている零近傍の閾値Pa以下となると、マスタ圧Pmが零になったものと判断される。SB3が否定される場合、SB2に戻ってマスタ圧Pmの減圧が継続して実施される。
【0075】
そして、マスタ圧Pmが閾値Pa以下まで低下すると、SB3が肯定され、指示電流出力手段164に対応するSB4において、シフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に予め設定されている基準電流cを出力する指令が、電子制御装置150の各ソレノイドバルブに出力する電流を制御するPF層(プラットフォーム層)へ出力される。次いで、指示電流出力手段164に対応するSB5において、出力された基準電流cの電流値が安定したか否かが判断される。基準電流cが安定したか否かは、例えば基準電流cの出力を開始してから安定化待機時間Taが経過したか否か等に基づいて判定される。そして、基準電流cの電流値が安定したと判断されると、電流値計測手段166に対応するSB6において、実際にシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に流された計測実電流dが計測される。この計測実電流dの計測においては、所定時間の間に計測された複数個の電流値の平均値が計測実電流dとされる。計測実電流dの計測が終了すると、指示電流出力手段164に対応するSB8において、基準電流cの出力が終了させられる。そして、ゲイン算出手段158に対応するSB8において、基準電流c、計測された計測実電流d、および式(1)に基づいて補正ゲインKが算出される。
【0076】
上述のように、本実施例によれば、セレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78が非作動状態であり、且つ、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90に供給されるマスタ圧Pmを略零の状態に制御した状態で、セレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124およびシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140に基準電流cを出力し、その基準電流cと実際にソレノイド124、140に流された計測実電流dとに基づいて、補正ゲインKを算出するため、走行中に基準電流cが出力されてもセレクトアクチュエータ76およびシフトアクチュエータ78が作動することがないので、車両走行中であっても補正ゲインKを算出することができる。
【0077】
また、本実施例によれば、基準電流cと計測実電流dとの比に基づいて補正ゲインKが算出されるため、セレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124およびシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140の出力特性が温度変化によって変化しても、算出された補正ゲインKに基づいてその特性が補正される。
【0078】
また、本実施例によれば、補正ゲインKを用いて、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90のヌル点Nullを補正するため、温度変化によって変化するヌル点Nullのずれを防止することができる。
【0079】
また、本実施例によれば、補正ゲインKを用いて、セレクトソレノイドバルブ88およびシフトソレノイドバルブ90の電流特性を補正するため、セレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124およびシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140において適宜狙った実電流値を出力させることができる。
【0080】
また、本実施例によれば、温度変化によって変化するセレクトソレノイドバルブ88のソレノイド124およびシフトソレノイドバルブ90のソレノイド140の特性を、補正ゲインKを用いて補正することで、指示電流と実電流とのずれを小さくすることができる。
【0081】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0082】
例えば、前述の実施例では、車両用駆動装置10がフロントエンジン・フロントドライブ形式(FF形式)の車両であったが、本発明は、必ずしもフロントエンジン・フロントドライブ形式に限定されず、フロントエンジン・リアドライブなど、他の形式の車両であっても適用することができる。すなわち、油圧アクチュエータによってシフト切替が実行される自動変速機を備えた車両であれば、適宜適用することができる。
【0083】
また、前述の実施例では、自動変速機16が前進5段、後進1段の変速が可能に構成されているが、必ずしも変速段数が上記に限定されず、例えば前進6段、後進1段など、自由に変更しても構わない。
【0084】
また、前述の実施例では、補正ゲインKの算出に際して、実電流のオフセット量O1および指示電流のオフセット量O2が用いられているが、上記オフセット量O1およびオフセット量O2が微小であれば、無視しても構わない。
【0085】
また、前述の実施例では、基準電流cの安定を安定化待機時間Taに基づいて判断したが、電流センサで直接電流値を測定して安定したか否かを判断しても構わない。
【0086】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
16:自動変速機
76:セレクトアクチュエータ(油圧アクチュエータ)
78:シフトアクチュエータ(油圧アクチュエータ)
88:セレクトソレノイドバルブ(トランスミッションソレノイドバルブ)
90:シフトソレノイドバルブ(トランスミッションソレノイドバルブ)
92:マスタソレノイドバルブ
124:ソレノイド
140:ソレノイド
150:電子制御装置
A:基本指示電流(補正前の指示電流)
B:出力指示電流(補正後の指示電流)
c:基準電流(所定の指示電流)
d:計測実電流(実電流)
K:補正ゲイン(補正制御量)
Null:ヌル点
Pm:マスタ圧(元圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータによって変速状態が切り替えられる自動変速機と、該油圧アクチュエータの駆動状態を制御するトランスミッションソレノイドバルブと、該トランスミッションソレノイドバルブに供給される元圧を制御するマスタソレノイドバルブとを、備えた車両用自動変速機の制御装置であって、
前記油圧アクチュエータが非作動状態であり、且つ、前記トランスミッションソレノイドバルブに供給される元圧を略零の状態に制御した状態で、該トランスミッションソレノイドバルブのソレノイドに所定の指示電流を出力し、該所定の指示電流と実際に該ソレノイドに流された実電流とに基づいて前記指示電流と実電流とのずれを解消するための補正制御量を算出することを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記補正制御量は、前記所定の指示電流と前記実電流との比で算出される補正ゲインであることを特徴とする請求項1の車両用自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記補正ゲインを用いて、前記トランスミッションソレノイドバルブのヌル点を補正することを特徴とする請求項2の車両用自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記補正ゲインを用いて、前記トランスミッションソレノイドバルブへの指示電流を補正することを特徴とする請求項2の車両用自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記補正制御量は、前記指示電流と実電流とのずれを小さくするための補正ゲインであることを特徴とする請求項1の車両用自動変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112507(P2012−112507A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264434(P2010−264434)
【出願日】平成22年11月27日(2010.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】