説明

車両用衝突エネルギー吸収材及びそれを用いた車両の衝突エネルギー吸収構造

簡単な構成の衝突エネルギー吸収材により、衝突エネルギーを効率的に吸収することを可能となして、歩行者に対する保護性能を高めたり、乗員の保護性能を高め得る車両用衝突エネルギー吸収材及びそれを用いた車両の衝突エネルギー吸収構造を提供する。 具体的には、圧縮変形による圧縮エネルギー吸収材10と、坐屈変形による坐屈エネルギー吸収材20とを備え、両エネルギー吸収材10,20の組み合わせにより、車体への衝突エネルギーを吸収したり、衝撃力のピーク値が設定値以下となる坐屈特性を持つとともに、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングと、衝突してから衝撃力がピーク値となるピーク値タイミングの少なくとも一方を、段階的又は連続的に異なるように設定した坐屈エネルギー吸収部11a、11bを有し、この坐屈エネルギー吸収部11a、11bの坐屈変形により車体への衝突エネルギーを吸収したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、バンパーやサイドドアやピラーなどに好適に利用可能な車両用衝突エネルギー吸収材及びそれを用いた車両の衝突エネルギー吸収構造に関する。
【背景技術】
車両の衝突エネルギー吸収構造として、歩行者に対する保護性能を高めるため、バンパーフェイシャーの内側に衝突エネルギー吸収材を組み込んだものや、乗員の保護性能を高めるため、ピラーやサイドドアなどの車室側のトリムの内側に衝突エネルギー吸収材を組み込んだものが種々提案され、実用化されている。
例えば、車両用バンパーでは、車両の前端部に配置されるバンパー補強材と、バンパー補強材を覆うバンパーフェイシャー間に、ポリプロピレン系樹脂製の発泡成形体からなる衝突エネルギー吸収材を設け、衝突エネルギー吸収材が圧縮変形することにより、バンパーに作用する衝突エネルギーを吸収するように構成した車両用バンパー(例えば、特開2002−144989号公報参照。)や、バンパー前部に前後隔壁によって中空部を2重に形成するとともに、前後隔壁のいずれか一方に、他方の隔壁と離間して対峙する複数個のリブを突設してなり、バンパーが障害物と比較的弱く衝突した場合には、バンパーの前壁が撓んで衝突エネルギーが緩衝され、強く衝突した場合には、リブが坐屈変形することによって衝突エネルギーを緩衝するように構成した車両用バンパーが提案されている(例えば、実開昭57−37051号公報参照。)。
一方、バンパーによる衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって、衝突エネルギー吸収材に作用する衝撃力が略一様になるように設定することで、バンパーに作用する衝突エネルギーを効率よく吸収できることが知られている(例えば、特開2002−172987号公報参照。)。
また、ピラーでは、ピラートリムとピラーインナパネル間の隙間にクッション材を配置させたピラー構造が提案されている(例えば、特開平6−211088号公報参照。)。
更に、サイドドアでは、ドアトリムに着座した乗員の胸部と腰部に対応させて車室側へ突出する上下1対の突部を形成し、ドアトリムとドアインナパネル間において突部の内側にクッション材を配置させたサイドドア構造が提案されている(例えば、特開平8−67144号公報参照。)。
前述した従来のバンパーやピラーやサイドドアにおけるエネルギー吸収構造では、基本的には、発泡成形体の圧縮変形又はリブの坐屈変形により衝突エネルギーを吸収しているが、図3に示すように、圧縮エネルギー吸収材においてはその変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、坐屈エネルギー吸収材においては衝撃力が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示す。このため、歩行者や乗員の安全性能を高めるため衝撃力のピーク値を低く設定しようとすると、圧縮エネルギー吸収材においては、衝突エネルギーの吸収初期において衝突エネルギーを十分に吸収できず、また坐屈エネルギー吸収部においては、衝撃力がピーク値を迎えた後の衝突エネルギーの吸収後期において衝突エネルギーを十分に吸収できないという問題がある。もっとも、エネルギー吸収材の変位量を大きく設定すれば、衝突エネルギーの吸収量もそれに応じて大きくなるのであるが、自動車等の車両用に適用する場合には極限られたスペース内にエネルギー吸収材を配置させる必要があることから、衝撃力を抑制しつつ衝突エネルギーを十分に吸収することが困難であった。
本発明の目的は、簡単な構成の衝突エネルギー吸収材により、衝突エネルギーを効率的に吸収することが可能となり、歩行者に対する保護性能を高めたり、乗員の保護性能を高め得る車両用衝突エネルギー吸収材及びそれを用いた車両の衝突エネルギー吸収構造を提供することである。
【発明の開示】
図3に示すように、圧縮エネルギー吸収材においてはその変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、坐屈エネルギー吸収材においては衝撃力が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示す。一方、歩行者や乗員の保護性能を高めるには、歩行者や乗員に対する衝撃力が過剰に大きくならないように設定する必要がある。本発明者らは、歩行者や乗員の保護性能を向上し得る車両用衝突エネルギー吸収材の構成について鋭意検討した結果、圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材の衝突エネルギー吸収特性を組み合わせることで、車両用衝突エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたってそれに対する衝撃力を、歩行者や乗員を保護可能な目標値に維持させて、歩行者や乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収可能な車両用衝突エネルギー吸収材を実現できるとの発想を得て、本発明を完成するに至った。
本発明に係る第1の車両用衝突エネルギー吸収材は、圧縮変形による圧縮エネルギー吸収材と、坐屈変形による坐屈エネルギー吸収材とを備え、両エネルギー吸収材の組み合わせにより、車体への衝突エネルギーを吸収するものである。
前述のように圧縮エネルギー吸収材においてはその変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、坐屈エネルギー吸収材においては衝撃力が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示すことになるが、この車両用衝突エネルギー吸収材では、圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とを組み合わせて衝突エネルギーを吸収するので、車両用衝突エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって、車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を略一定に維持することが可能となる。したがって、車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を歩行者や乗員を保護可能な目標値に設定することで、衝撃力を抑えて歩行者や乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項2,3)
ここで、前記圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とが衝撃力に対して略同一タイミングでエネルギー吸収変形を開始してもよいし、異なるタイミングでエネルギー吸収変形を開始してもよい。前者の場合には、車体に組付可能な車両用衝突エネルギー吸収材の配置スペースを最大限有効活用して、衝突エネルギーを吸収することが可能となる。後者の場合には、圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材のエネルギー吸収変形の開示タイミングを調整することで、全体として最適なエネルギー吸収特性を実現できる。
(請求項4)
前記両エネルギー吸収材に対する衝撃力が、両エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって略一様になるように設定することが好ましい。このようにエネルギー吸収材に対する衝撃力が衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって略一様になるように設定すると、歩行者に作用する衝撃力を低く抑えつつ、衝突エネルギー吸収期間全体を有効利用して衝突エネルギーを効率的に吸収することが可能となる。
(請求項5)
前記圧縮エネルギー吸収材を両エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって圧縮変形するように配置し、坐屈エネルギー吸収材を衝突エネルギー吸収期間の初期において坐屈変形するように配置できる。圧縮衝撃材は、衝突エネルギー吸収期間の終了側へ行くにしたがって衝撃力が大きくなり、坐屈エネルギー吸収材は坐屈変形しているときに衝撃力が大きくなり、それ以外では衝撃力が小さくなる。この発明では、衝突エネルギー吸収期間の初期において、坐屈エネルギー吸収材が坐屈変形して衝撃力が吸収され、衝突エネルギー吸収期間の後期において、圧縮エネルギー吸収材による衝撃力が大きくなるので、両エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収作用の合成により、歩行者に作用する衝撃力を低く抑えつつ、衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって略一様な衝撃力で衝突エネルギーを吸収でき、衝突エネルギー吸収期間全体を有効利用して衝突エネルギーを効率的に吸収することが可能となる。
(請求項6、7)
前記圧縮エネルギー吸収材を合成樹脂からなる発泡成形体で構成したり、発泡成形体で構成してその発泡倍率を2〜150倍に設定できる。このように構成すると、エネルギー吸収性能を十分に確保しつつ、発泡倍率の調整により要求の衝突エネルギー吸収特性を実現できると共に、車両用衝突エネルギー吸収材を軽量に構成できる。
(請求項8、9、10)
前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成してもよい。また、この場合には、前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成したり、発泡体で構成してその発泡倍率を20倍以下に設定することが好ましい。このように構成すると、衝突エネルギー吸収性能を十分に確保しつつ、圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とを一体成形でき、組立て作業工数を削減できると共に、バンパーの車両用衝突エネルギー吸収材を軽量に構成できる。
(請求項11)
前記坐屈エネルギー吸収材の上下両側に、例えば図1、図2に符号13で示すような坐屈許容空間を設けることができる。この場合には、坐屈エネルギー吸収材を坐屈許容空間内において坐屈変形させることが可能となるので、坐屈エネルギー吸収材が坐屈変形するときに、坐屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とが干渉したり、坐屈エネルギー吸収材同士が干渉したりすることが抑制されるので、必要とする衝突エネルギー吸収効果を得ることが可能となる。
(請求項12)
前記圧縮エネルギー吸収材に対して坐屈エネルギー吸収材をインサート成形により一体的に形成してもよい。この場合には、坐屈エネルギー吸収材を予め製作し、これを金型内にセットして、圧縮エネルギー吸収材をインサート成形するので、成形工程は多少複雑になるが、圧縮エネルギー吸収材に対する坐屈エネルギー吸収材の取付け強度を向上でき、後工程での車両組立て工数を少なくする事ができる。
(請求項13)
前記坐屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とを別個に成形して一体化させてもよい。この場合には、部品点数は増えるものの、圧縮エネルギー吸収材の成形を容易にでき、両エネルギー吸収材を接着剤等により強固に一体化できる。
(請求項14)
前記車両用衝突エネルギー吸収材を用いて車両用バンパーの芯材を構成することもできる。この場合には、歩行者を保護可能な目標値に車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を設定することこで、バンパーとの接触時における歩行者の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項15)
前記坐屈エネルギー吸収材をバンパーの前後方向の全幅にわたって設けることも好ましい。この場合には、坐屈エネルギー吸収材に対して衝突初期の段階から衝突荷重を作用させることが可能となり、坐屈エネルギー吸収材により衝突初期における衝突エネルギーを効果的に吸収できる。
(請求項16)
前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなる板状部材で構成し、この坐屈エネルギー吸収材を略水平面内において、バンパーの長さ方向に沿い且つバンパーの前後方向の全幅にわたって設けることもできる。
(請求項17)
前記坐屈エネルギー吸収材をバンパーフェイシャーに一体的に設け、圧縮エネルギー吸収材に坐屈エネルギー吸収材を受け入れる組付空間を形成することもできる。この場合には、芯材を構成する部品点数を少なくできるので好ましい。
(請求項18)
また、本発明者らは、坐屈エネルギー吸収材のみを用いた場合でも、衝突してから複数のピーク値が順次発生するように構成することで、車両用衝突エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたってそれに対する衝撃力を例えば歩行者や乗員を保護可能な目標値に維持させて、歩行者や乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収可能な車両用衝突エネルギー吸収材を実現できるとの発想を得て、本発明に係る第2の車両用衝突エネルギー吸収材を完成するに至った。
本発明に係る第2の車両用衝突エネルギー吸収材は、衝撃力のピーク値が設定値以下となる坐屈特性を持つとともに、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングと、衝突してから衝撃力がピーク値となるピーク値タイミングの少なくとも一方を、段階的又は連続的に異なるように設定した坐屈エネルギー吸収部を有し、この坐屈エネルギー吸収部の坐屈変形により車体への衝突エネルギーを吸収するものである。
前述のように坐屈エネルギー吸収材においては、衝撃力が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示すことになるが、この車両用衝突エネルギー吸収材では、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングと、衝突してから衝撃力がピーク値となるピーク値タイミングの少なくとも一方を、段階的又は連続的に異なるように設定した坐屈エネルギー吸収部を有するので、車両用衝突エネルギー吸収材による衝撃吸収の開始から完了まで間において段階的あるいは連続的に坐屈エネルギー吸収部がピーク値となり、車両用衝突エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって、車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を略一定に維持することが可能となる。したがって、車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を歩行者や乗員を保護可能な許容値に設定することで、衝撃力を抑えて歩行者や乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項19、20)
ここで、前記衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なる組み合わせの複数の坐屈エネルギー吸収部を独立に設け、これら複数の坐屈エネルギー吸収部が段階的又は連続的に坐屈変形することで衝突エネルギーを吸収すること、前記衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なる坐屈エネルギー吸収部を一体的に設け、この一体的な坐屈エネルギー吸収部が段階的又は連続的に坐屈変形することで衝突エネルギーを吸収することが好ましい。独立に設ける場合には、衝撃力吸収ピーク値、並びに変形量の設定を比較的自由に設計することが可能となる。また、一体的に設ける場合には、坐屈エネルギー吸収部の設計は複雑となるが、衝突エネルギー吸収材トータルでは構造を簡略化することが可能となる。
(請求項21〜25)
前記坐屈エネルギー吸収部の高さを変えて衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なるように設定すること、前記坐屈エネルギー吸収部の厚み、幅、配設密度、断面形状を変えてピーク値タイミングが異なるように設定すること、これらの組み合わせを任意に変えることで、衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なるように設定することも好ましい。
(請求項26、27)
前記坐屈エネルギー吸収部は、合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成できる。この場合には、前記坐屈エネルギー吸収部を車両側部材に一体形成してもよい。例えば、バンパーやドアやピラーに本発明を適用する場合には、バンパーフェイシャーやドアトリムやピラートリムに坐屈エネルギー吸収部を一体的に形成することで、部品点数を極力少なくしつつ衝突エネルギー吸収性能を向上できる。
(請求項28〜31)
前記坐屈エネルギー吸収部を合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成すること、前記坐屈エネルギー吸収部として、合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成した坐屈エネルギー吸収部と、合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成した坐屈エネルギー吸収部とを備えたものを用いることも好ましい。また、このような発泡成形体を用いる場合には、坐屈エネルギー吸収部の発泡倍率を変えてピーク値タイミングが異なるように設定してもよい。更に、車両用衝突エネルギー吸収材を軽量に構成しつつ、衝突エネルギー吸収性能を十分に確保するため、前記坐屈エネルギー吸収部を構成する発泡成形体の発泡倍率を45倍以下に設定することもできる。
(請求項32)
前記坐屈エネルギー吸収部の両側に、例えば図34に符号112で示すような坐屈許容空間を設けることも好ましい。この場合には、坐屈エネルギー吸収部を坐屈許容空間内において坐屈変形させることが可能となるので、坐屈エネルギー吸収部が坐屈変形するときに、坐屈エネルギー吸収部同士が干渉することが抑制されるので、必要とする衝突エネルギー吸収効果を容易に且つ確実に得ることが可能となる。
(請求項33)
請求項1記載の車両用衝突エネルギー吸収材における坐屈エネルギー吸収材に、前記請求項18〜32のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材を適用することも可能である。
(請求項34)
本発明に係る第1の車両の衝突エネルギー吸収構造は、請求項1〜33のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材を車体の前端部に車幅方向に設けたバンパー補強材と、それを覆うバンパーフェイシャー間の空間内に設けてなるものである。このような構造のバンパーにおいては、歩行者を保護可能な目標値に車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を設定することこで、バンパーとの接触時における歩行者の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項35)
本発明に係る第2の車両の衝突エネルギー吸収構造は、請求項1〜13、18〜33のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材をドアインナパネルとドアトリム間の空間内に設けてなるものである。このような構造のドアにおいては、乗員を保護可能な目標値に車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を設定することで、ドアとの接触時における乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項36)
本発明に係る第3の車両の衝突エネルギー吸収構造は、請求項1〜13、18〜33のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材をピラーインナパネルとピラートリム間の空間内に設けてなるものである。このような構造のピラーにおいては、乗員を保護可能な目標値に車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を設定することこで、ピラーとの接触時における乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は第1の車両用衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図2は同衝突エネルギー吸収材の正面図、図3は変位と衝撃力の関係を示すグラフ、図4は他の構成の衝突エネルギー吸収材の正面図、図5は他の構成の衝突エネルギー吸収材の正面図、図6は他の構成の衝突エネルギー吸収材の正面図、図7は他の構成の衝突エネルギー吸収材の正面図、図8は他の構成の衝突エネルギー吸収材の正面図、図9は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図10は衝突エネルギー吸収材の構成を一部変更した変位と衝撃力の関係を示すグラフ、図11は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図12は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図13は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図14は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図15は他の構成の衝突エネルギー吸収材の正面図、図16は他の構成の坐屈エネルギー吸収材の斜視図、図17は他の構成の坐屈エネルギー吸収材の斜視図、図18は他の構成の坐屈エネルギー吸収材の平面図、図19は他の構成の坐屈エネルギー吸収材の斜視図、図20は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図21は第1の車両用衝突エネルギー吸収材を適用したフロントサイドドアの車室側から見た側面図、図22は図21のA−A線断面図、図23は第1の車両用衝突エネルギー吸収材を適用したピラーを備えた車体の要部側面図、図24は図23のB−B線断面図、図25は評価試験で用いた試験片の斜視図、図26は同試験片の縦断面図、図27は比較例の変位と加速度の関係を示すグラフ、図28は本発明例1の変位と加速度の関係を示すグラフ、図29は本発明例2の変位と加速度の関係を示すグラフ、図30は本発明例3の変位と加速度の関係を示すグラフ、図31は本発明例4の変位と加速度の関係を示すグラフ、図32は本発明例5の変位と加速度の関係を示すグラフ、図33は本発明例6の変位と加速度の関係を示すグラフ、図34は第2の車両用衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図35は同衝突エネルギー吸収材の正面図、図36は同衝突エネルギー吸収材の要部の斜視図、図37は変位と衝撃力の関係を示すグラフ、図38は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図39は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図40は同フロントバンパーで用いる衝突エネルギー吸収材の要部の斜視図、図41は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの要部の斜視図、図42は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの要部の斜視図、図43は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図44は同フロントバンパーで用いる衝突エネルギー吸収材の要部の斜視図、図45は他の構成の衝突エネルギー吸収材の平面図、図46は同衝突エネルギー吸収材の要部の斜視図、図47(a)〜(d)はそれぞれ他の構成の衝突エネルギー吸収材の要部の斜視図、図48は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図49は他の構成の衝突エネルギー吸収材を適用したフロントバンパーの縦断面図、図50は第2の車両用衝突エネルギー吸収材を適用したフロントサイドドアの車室側から見た側面図、図51は図50のC−C線断面図、図52は第2の車両用衝突エネルギー吸収材を適用したピラーを備えた車体の要部側面図、図53は図52のD−D線断面図、図54(a)〜(d)はそれぞれ評価試験で用いた本発明例の試験片の斜視図、図55(a)(b)はそれぞれ評価試験で用いた比較例の試験片の斜視図、図56は本発明例11の変位と加速度の関係を示すグラフ、図57は本発明例12の変位と加速度の関係を示すグラフ、図58は本発明例13の変位と加速度の関係を示すグラフ、図59は本発明例14の変位と加速度の関係を示すグラフ、図60は比較例11の変位と加速度の関係を示すグラフ、図61は比較例12の変位と加速度の関係を示すグラフ、図62は比較例13の変位と加速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施例)
この第1実施例は、本発明に係る第1の車両用衝突エネルギー吸収材を自動車のバンパーに適用した場合のものである。
図1に示すように、車体の前端部には車幅方向に延びるバンパー補強材1が設けられ、バンパー補強材1の前側にはそれを覆うように合成樹脂材料や金属材料からなる周知の構成のバンパーフェイシャー2が設けられ、バンパー補強材1とバンパーフェイシャー2間にはバンパーの芯材としての第1の衝突エネルギー吸収材3が装着されている。
フロントバンパー4は、バンパーフェイシャー2と衝突エネルギー吸収材3とで構成され、前突時における衝突荷重は、バンパーフェイシャー2を介して衝突エネルギー吸収材3に伝達されて、両者が変形することで受け止められ、更に大きな衝突荷重が作用すると、バンパー補強材1に衝突荷重が作用して、バンパー補強材1が変形することで受け止められる。尚、本発明に係る衝突エネルギー吸収構造はリアバンパーに対しても同様に適用することが可能である。
衝突エネルギー吸収材3は、図1、図2に示すように、合成樹脂発泡成形体からなる圧縮エネルギー吸収材10と、合成樹脂成形体からなる坐屈エネルギー吸収材20とを備え、衝突エネルギー吸収材3に作用する衝突エネルギーは、圧縮エネルギー吸収材10が衝突エネルギー吸収期間の略全期間にわたって圧縮変形することにより吸収されるとともに、坐屈エネルギー吸収材20が衝突エネルギー吸収期間の初期を中心に坐屈変形することにより吸収されることになる。
圧縮エネルギー吸収材10は、バンパー補強材1とバンパーフェイシャー2間の空間に適合する形状に形成されて該空間に略隙間なく装着され、衝突エネルギー吸収期間の略全期間にわたって圧縮変形するようにバンパー補強材1の前側に配置され、圧縮エネルギー吸収材10の高さ方向の途中部には車幅方向に延びる1つの開口部11が圧縮エネルギー吸収材10の両端部付近まで形成されている。
坐屈エネルギー吸収材20は、合成樹脂からなる断面II字状の部材で、細長い略平板状の固定部21と、固定部21の途中部に相互に間隔をあけて直交状に固定した1対の坐屈部22であって、固定部21と略同じ長さの細長い略平板状の1対の坐屈部22とを有している。尚、固定部21は坐屈部22を所定の配設位置に固定するためのものであるが、衝突エネルギー吸収特性に直接的に影響を及ぼすものではないので、省略することも可能である。
固定部21は圧縮エネルギー吸収材10の開口部11よりも大きな外形に形成されて、開口部11の後面を塞ぐように圧縮エネルギー吸収材10の後面に取り付けられている。そして、バンパーフェイシャー2及び圧縮エネルギー吸収材10とともにバンパー補強材1の前面に組み付けた状態で、固定部21の外周部が圧縮エネルギー吸収材10とバンパー補強材1間に挟持されるように構成されている。
坐屈部22の両端部は圧縮エネルギー吸収材10の固定溝12内に装着されて圧縮エネルギー吸収材10に固定され、衝突エネルギー吸収期間の初期において坐屈部22が坐屈変形するように、坐屈部22の先端部は圧縮エネルギー吸収材10の開口部11を通ってバンパーフェイシャー2付近に配置されている。圧縮エネルギー吸収材10の開口部11の内壁と坐屈部22間及び上下の坐屈部22間には坐屈許容空間13が形成され、坐屈部22が坐屈するときに、圧縮エネルギー吸収材10の内壁や坐屈部22同士が相互に干渉しないように設定して、坐屈部22の坐屈変形が円滑に且つ確実になされるように構成されている。坐屈許容空間13は、バンパーの前後方向の全幅に貫通孔状に設けてもよいが、前方へ向けて開口する有底孔状に設けてもよく、この場合にはバンパーの前後方向の全幅の1/3以上の深さに設定することが好ましい。更に、坐屈部22の坐屈変形が円滑に且つ確実になされるように、図1において坐屈部22同士の間隔と、坐屈部22と圧縮エネルギー吸収材10の間隔は、バンパーの前後方向の全幅の1/3以上に設定することが好ましい。
圧縮エネルギー吸収材10としては、圧縮変形により衝突荷重を緩衝可能なものであれば、合成樹脂材料や合成ゴム材料などを採用でき、例えば、ポリスチレン系合成樹脂や、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系合成樹脂や、これらの合成樹脂の共重合体などからなる発泡成形体を好適に利用できる。
このような発泡成形体をビーズ法にて成形する場合には、素材自体に柔軟性を有することから、例えばエチレンプロピレンランダムポリプロピレン樹脂、エチレンプロピレンブロックポリプロピレン樹脂、ホモポリプロピレンエチレンプロピレンブテンランダムターポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、架橋低密度ポリエチレン(架橋LDPE)などのポリオレフィン系樹脂を好適に利用できる。また、発泡成形体の発泡倍率は、原料ビーズの素材にもよるが、2〜150倍の範囲内が好ましい。具体的には、ポリオレフィン系合成樹脂材料からなる予備発泡ビーズにおいては、発泡倍率が低すぎると衝撃力が大きくなり、高すぎると十分に衝突エネルギーを吸収できないので、3倍以上で90倍以下、好ましくは3倍以上で60倍以下のものを採用することになる。
坐屈エネルギー吸収材20の素材としては、坐屈変形により衝突荷重を緩衝可能なものであれば、合成樹脂材料や高密度発泡体あるいは金属材料などを採用できる。具体的には、ポリスチレン系合成樹脂や、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系合成樹脂や、これらの合成樹脂の共重合体などからなる合成樹脂材料やその高密度発泡体を採用できる。高密度発泡体で構成する場合には、坐屈エネルギー吸収材20が確実に坐屈するように、その発泡倍率を20倍以下に設定することが好ましい。
エネルギー吸収材の選定に際し、リサイクルの観点から、圧縮エネルギー吸収材ならびに坐屈エネルギー吸収材の両方をポリプロピレン系樹脂で構成することが好ましい。
このような衝突エネルギー吸収材3においてフロントバンパー4に対して衝撃荷重が作用した際には、図3に示すように、圧縮エネルギー吸収材10単体ではその変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、坐屈エネルギー吸収材20単体では衝突荷重が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示すことになるが、この衝突エネルギー吸収材3では圧縮エネルギー吸収材10と坐屈エネルギー吸収材20とが併設されているので、両エネルギー吸収材10,20への衝撃力が合成されて、衝突エネルギー吸収材3による衝突エネルギー吸収期間の略全期間にわたって衝突エネルギー吸収材3に対する衝撃力が略一様となる。このため、衝撃力を比較的低く設定して歩行者に対する保護性能を十分に確保しつつ、衝突エネルギー吸収期間の略全期間にわたって衝突エネルギーを効果的に吸収することが可能となる。
尚、衝突エネルギー吸収材3を設計する際には、このような衝突エネルギー吸収特性が得られるように、圧縮エネルギー吸収材10においては素材や発泡倍率や各部のサイズを設定し、坐屈エネルギー吸収材20においては、素材や形状や各部のサイズ、数を設定することになる。また、圧縮エネルギー吸収材10と坐屈エネルギー吸収材20の発泡倍率、素材、形状、各部のサイズを組み合わせることで、衝突エネルギー吸収材3の衝突エネルギー吸収特性すなわちエネルギー吸収曲線を自由に設計することが可能となる。
次に、衝突エネルギー吸収材3の構成を部分的に変更した他の実施例について説明する。尚、前記第1実施例と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
(圧縮エネルギー吸収材)
(1) 圧縮エネルギー吸収材10の開口部11の個数やサイズや形成位置は任意に設定可能で、例えば図4に示す衝突エネルギー吸収材3Aのように、圧縮エネルギー吸収材10に代えて、3つの開口部11Aを有する圧縮エネルギー吸収材10Aを用いたり、図5に示す衝突エネルギー吸収材3Bのように、圧縮エネルギー吸収材10に代えて、2つの開口部11Bを有する圧縮エネルギー吸収材10Bを用いたりして、開口部11A、11B間の区画壁部15で坐屈部22の途中部を保持させてもよい。
(2) 図6に示す衝突エネルギー吸収材3Cのように、圧縮エネルギー吸収材10に代えて、坐屈許容空間13を設けないで、坐屈エネルギー吸収材20に略隙間なく配置される圧縮エネルギー吸収材10Cを用いてもよい。尚、両坐屈エネルギー吸収材20間に配置される圧縮エネルギー吸収材10Cと、両坐屈エネルギー吸収材20の外側に配置される圧縮エネルギー吸収材10Cとは、異なる発泡倍率の同素材あるいは異なる素材の樹脂で構成してもよい。この場合には、衝突エネルギー吸収材3Cの設計は多少煩雑になるが、圧縮エネルギー吸収材10Cによる緩衝効果を最大限に活用できるので、緩衝効果を高める上で好ましい。
(坐屈エネルギー吸収材)
(3) 坐屈エネルギー吸収材20に設ける坐屈部22の枚数や厚さや長さは任意に設定可能で、例えば、図7に示す衝突エネルギー吸収材3Dのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、1枚の坐屈部22を設けたり坐屈エネルギー吸収材20Dを設けたり、図8に示す衝突エネルギー吸収材3Eのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、3枚の坐屈部22を設けた坐屈エネルギー吸収材20Eを設けてもよい。また、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、左右方向に短尺な坐屈部を左右に間隔をあけて固定部21に一体的に設けた坐屈エネルギー吸収材を用いてもよい。更に、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、略鉛直面内に配置される縦向きの板状部材からなる坐屈部を一定間隔おきに固定部21に突出状に設けた坐屈エネルギー吸収材や、水平面内に配置される坐屈部と鉛直面内に配置される坐屈部とを所定の配列で固定部21に突出状に設けた坐屈エネルギー吸収材を設けてもよい。
(4) 図9に示す衝突エネルギー吸収材3Fのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、先端部が圧縮エネルギー吸収材10よりも前方へ突出する坐屈部22Fを有する坐屈エネルギー吸収材20Fを用いてもよい。この場合には、図10に示すように、坐屈エネルギー吸収材20によるエネルギー吸収変形の開始タイミングが圧縮エネルギー吸収材10によるエネルギー吸収変形の開始タイミングよりも早くなって、坐屈に至るまでの変位量が大きい坐屈エネルギー吸収材20Fであっても、衝突エネルギー吸収材3によるエネルギー吸収期間の略全期間にわたって衝突エネルギー吸収材3に対する衝撃力が略一様になるように設定できる。
また、複数枚の坐屈部を設ける場合には、その内の少なくとも1枚を先端部が圧縮エネルギー吸収材10よりも前方へ突出する坐屈部22Fで構成し、他は先端部を圧縮エネルギー吸収材10の外面付近まで延ばした坐屈部22で構成してもよい。例えば、図11に示す衝突エネルギー吸収材3Gのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、2枚の坐屈部22Fとその間に配置して1枚の坐屈部22とからなる3枚の坐屈部を有する坐屈エネルギー吸収材20Gを用いてもよい。
(5) 図12に示すように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、板状の部材の両側部を折曲させて固定部21Hと1対の坐屈部22Hとを形成した坐屈エネルギー吸収材20Hを用いてもよい。
(6) 図13に示す衝突エネルギー吸収材3Iのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、固定部21に固定される基部に閉断面部23を有し、この閉断面部23に前方へ延びる坐屈部22Iを形成した坐屈エネルギー吸収材20Iを設けてもよい。
(7) 図14に示す衝突エネルギー吸収材3Jのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、坐屈部22の先端部に衝撃荷重を受け止める板状の受け部24を一体的に形成した坐屈エネルギー吸収材20Jを設けてもよい。この場合には、衝撃荷重を受け部24により面的に受け止めることが可能なので、歩行者の保護性能を一層向上できる。但し、衝突エネルギー吸収材3J以外の衝突エネルギー吸収材に関しても、前後を逆向きにして固定部をバンパーフェイシャー側に配置させることによって、同様の効果が得られる。
(8) 図15に示す衝突エネルギー吸収材3Kのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、長さ方向に適当間隔おきにリブ25を形成した坐屈部22Kを有する坐屈エネルギー吸収材20Kを設けてもよい。また、図16に示す坐屈エネルギー吸収材20Lように、坐屈エネルギー吸収材20Kにおける固定部21を省略した、坐屈部22Lとリブ25だけの坐屈エネルギー吸収材20Lを用いてもよい。
(9) 図17に示す坐屈エネルギー吸収材20Mのように、坐屈エネルギー吸収材20に代えて、固定部21に正面視波形の坐屈部22Mを立設したものを用いたり、図18に示す坐屈エネルギー吸収材20Nのように、固定部21に先端部を平面視波形状に形成した坐屈部22Nを立設したものを用いてもよい。
(10) 板状の坐屈部22に代えて固定部21に円筒状や円錐台状や角筒状などの坐屈部を突出状に設けてもよい。これら立体的な坐屈部は、先端側を閉鎖した有底状に形成してもよいし、固定部21側を有底状に形成してもよいし、両端を開放した筒状に形成してもよい。また、固定部21を省略した単品ものを複数配置してもよい。具体的には、図19に示す坐屈エネルギー吸収材20Pのように、固定部21及び坐屈部22に代えて、円筒状の坐屈部22Pと、坐屈部22Pの基端部に外方へ突出状に形成したフランジ状の固定部21Pとを有するものを用い、この坐屈エネルギー吸収材20Pをバンパーの長さ方向に設定間隔おきに中心を前後方向に向けて配置させてもよい。
尚、前記第1実施例及び他の実施例で説明した圧縮エネルギー吸収材及び坐屈エネルギー吸収材は任意に組み合わせることが可能である。また、圧縮エネルギー吸収材及び坐屈エネルギー吸収材は、別個に製作したものを接着剤等で一体化させてもよいし、圧縮エネルギー吸収材を成形する金型に予め製作した坐屈エネルギー吸収材をセットして、インサート成形により圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とを一体成形してもよい。図20に示す衝突エネルギー吸収材3Qのように、坐屈エネルギー吸収材20を省略するとともにバンパーフェイシャー2に代えて、後方へ延びる坐屈部22Qを一体的に形成し、この坐屈部22Qを開口部11及び固定溝12からなる組付空間に挿入させて、圧縮エネルギー吸収材10を組み付け可能となしたバンパーフェイシャー2Qを設けてもよい。
(第2実施例)
この第2実施例は、本発明に係る第1の車両用衝突エネルギー吸収材を自動車のフロントサイドドアに適用した場合のものである。
図21、図22に示すように、フロントサイドドア40について説明すると、ドアアウタパネル41とドアインナパネル42とからなる閉断面状のサイドドア本体43が設けられ、サイドドア本体43の車室側にはドアトリム46が設けられている。ドアトリム46にはその車体前後方向の全長にわたって延びる上側突部44と下側突部45とが乗員の胸部と腰部に対応させて車室側へ突出状に設けられ、ドアインナパネル42とドアトリム46間において上側突部44内には上部衝突エネルギー吸収材47が設けられ、ドアインナパネル42とドアトリム46間において下側突部45内には下部衝突エネルギー吸収材48が設けられている。
上下の衝突エネルギー吸収材47,48は、前記第1実施例における衝突エネルギー吸収材3とサイズは異なるが基本的には同様に構成され、前記第1実施例におけるバンパー補強材1をドアインナパネル42と読み替え、バンパーフェイシャー2をドアトリム46を読み替え、車幅方向を車体前後方向と読み替えることでサイドドア40に組み付けることができる。
具体的には、上下の衝突エネルギー吸収材47,48は、前記第1実施例の圧縮エネルギー吸収材10及び坐屈エネルギー吸収材20に相当する部材として、合成樹脂発泡成形体からなる圧縮エネルギー吸収材50,55と合成樹脂成形体からなる坐屈エネルギー吸収材60,65とを備え、衝突エネルギー吸収材47,48に作用する衝突エネルギーは、圧縮エネルギー吸収材50,55が衝突エネルギー吸収期間の略全期間にわたって圧縮変形することによりそれぞれ吸収されるとともに、坐屈エネルギー吸収材60,65が衝突エネルギー吸収期間の初期を中心に坐屈変形することによりそれぞれ吸収されるように構成されている。
圧縮エネルギー吸収材50,55は、ドアインナパネル42とドアトリム46の上側突部44及び下側突部45間の空間にそれぞれ適合する形状に形成されて該空間に略隙間なく装着され、乗員への衝突エネルギーを吸収できるようにドアインナパネル42の車室に配置され、圧縮エネルギー吸収材50,55の高さ方向の途中部には車体前後方向に延びる1つの開口部51,56が圧縮エネルギー吸収材50,55の両端部付近までそれぞれ形成されている。
坐屈エネルギー吸収材60,65は、合成樹脂からなる断面II字状の部材で、細長い略平板状の固定部61,66と、固定部61,66の途中部に相互に間隔をあけて直交状に固定した上下1対の坐屈部62,67であって、固定部61,66と略同じ長さの細長い略平板状の1対の坐屈部62,67を有している。
尚、上下の衝突エネルギー吸収材47,48のうちの一方を省略することも可能であるし、上下の衝突エネルギー吸収材47,48に代えて、前記第1実施例で例示した種々の構成の衝突エネルギー吸収材47,48を同様にして組み付けることが可能である。
また、この第2実施例では、運転席側のフロントサイドドア40に本発明を適用したが、助手席側のフロントサイドドアに適用することも可能であるし、左右のリアサイドドアに対しても同様に本発明を適用できる。
(第3実施例)
この第3実施例は、本発明に係る第1の車両用衝突エネルギー吸収材を自動車のフロントピラー70に適用した場合のものである。
図23、図24に示すように、フロントピラー70について説明すると、ピラーアウタパネル71とピラーインナパネル72とからなる閉断面状のピラー本体74が設けられ、ピラー本体74の車室側にはピラートリム73が設けられている。ピラーインナパネル72とピラートリム73間には衝突エネルギー吸収材75が設けられている。
衝突エネルギー吸収材75は、前記第1実施例における衝突エネルギー吸収材3とサイズは異なるが基本的には同様に構成され、前記第1実施例におけるバンパー補強材1をピラーインナパネル72と読み替え、バンパーフェイシャー2をピラートリム73と読み替え、車幅方向をピラー70の長さ方向と読み替えることでフロントピラー70に組み付けることができる。
具体的には、衝突エネルギー吸収材75は、前記第1実施例の圧縮エネルギー吸収材10及び坐屈エネルギー吸収材20に相当する部材として、合成樹脂発泡成形体からなる圧縮エネルギー吸収材80と合成樹脂成形体からなる坐屈エネルギー吸収材90とを備え、衝突エネルギー吸収材75に作用する衝突エネルギーは、圧縮エネルギー吸収材80が衝突エネルギー吸収期間の略全期間にわたって圧縮変形することにより吸収されるとともに、坐屈エネルギー吸収材90が衝突エネルギー吸収期間の初期を中心に坐屈変形することにより吸収されるように構成されている。
圧縮エネルギー吸収材80は、ピラーインナパネル72とピラートリム73間の空間にそれぞれ適合する形状に形成されて該空間に略隙間なく装着され、乗員への衝突エネルギーを吸収できるようにピラーインナパネル72の車室に配置され、圧縮エネルギー吸収材80の高さ方向の途中部にはピラー70の長さ方向に延びる1つの開口部81が圧縮エネルギー吸収材80の両端部付近まで形成されている。
坐屈エネルギー吸収材90は、合成樹脂からなる断面II字状の部材で、細長い略平板状の固定部91と、固定部91の途中部に相互に間隔をあけて直交状に固定した上下1対の坐屈部92であって、固定部91と略同じ長さの細長い略平板状の1対の坐屈部92を有している。
尚、衝突エネルギー吸収材75に代えて、前記第1実施例で例示した種々の構成の衝突エネルギー吸収材75を同様にして組み付けることが可能である。
また、本第3実施例では、フロントピラー70に本発明を適用したが、センターピラーやリアピラーに対しても同様に本発明を適用できる。
更に、前記第1〜3実施例では、車両のバンパーとサイドドアとピラーに本発明を適用した場合について説明したが、これら以外の部位に対しても本発明を同様に適用できる。
次に、緩衝性能の性能試験について説明する。
(試験片)
圧縮エネルギー吸収材として、ポリプロピレン系樹脂からなる予備発泡ビーズを用い、成形体倍率が11倍(鐘淵化学製原料エペラン−PP使用)になるように、金型内に予備発泡ビーズを充填して、図25、図26に示すようなサイズの発泡成形体からなる圧縮エネルギー吸収材30をビーズ法にて製作し、また坐屈エネルギー吸収材として、ポリプロピレン系樹脂からなる非発泡の板状部材からなり、図25、図26に示すようなサイズの坐屈エネルギー吸収材31を製作した。そして、2枚の坐屈エネルギー吸収材31を圧縮エネルギー吸収材30に間隔をあけて組み付けてなる試験片を6個製作した。
また、比較例として、圧縮エネルギー吸収材30の中央部の開口部を省略し、外形サイズを圧縮エネルギー吸収材30と同じに設定した発泡成形体からなる試験片を1個製作した。
(試験方法)
7個の各試験片を受け台に順次セットして、試験片の長さ方向の中央部に幅方向に沿って衝突物重量21.3kgのφ70mmの丸棒からなる衝突物を4.0m/sの速度で衝突させ、そのときの試験片の変位とその加速度を測定し、図27に示す比較例の測定結果と、図28〜図33に示す本発明例1〜6の測定結果とを得た。また、これらの測定結果から、試験片の変位、最大加速度、衝撃力、エネルギー吸収量、エネルギー吸収効率を求め、表1を得た。

表1から、圧縮エネルギー吸収材30と坐屈エネルギー吸収材31を用いた本発明例1〜6は、発泡成形体のみからなる比較例と比較して、衝撃値において22.6%の軽減、エネルギー吸収効率において10%も効率が良くなっており、歩行者の保護性能が高められていることが分かる。
次に、本発明に係る第2の車両用衝突エネルギー吸収材について説明する。
(第4実施例)
この第4実施例は、本発明に係る第2の車両用衝突エネルギー吸収材を自動車のフロントバンパーに適用した場合のものである。
図34に示すように、車体の前端部には車幅方向に延びるバンパー補強材101が設けられ、バンパー補強材101の前側にはそれを覆うようにバンパーフェイシャー102が設けられ、バンパー補強材101とバンパーフェイシャー102間には衝突エネルギー吸収材103が装着されている。
フロントバンパー104は、バンパーフェイシャー102と衝突エネルギー吸収材103とで構成され、前突時における衝突荷重は、バンパーフェイシャー102を介して衝突エネルギー吸収材103に伝達されて、両者が変形することで受け止められ、更に大きな衝突荷重が作用すると、バンパー補強材101に衝突荷重が作用して、バンパー補強材101が変形することで受け止められる。但し、リアバンパーの衝突エネルギー吸収材103に対しても本発明を同様に適用することが可能である。
衝突エネルギー吸収材103は、図34〜図36に示すように、バンパー補強材101の前側に車幅方向に沿って配設される固定部110と、固定部110から前方へ延びる4枚の坐屈エネルギー吸収部111とを備え、この衝突エネルギー吸収材103はバンパーフェイシャー102の内側に車幅方向の略全長にわたって設けられている。
衝突エネルギー吸収材103の素材としては、坐屈変形により衝突荷重を緩衝可能なものであれば、合成樹脂材料からなるソリッド状部材や高密度発泡体、あるいは金属材料などを採用できる。合成樹脂材料としては、ポリスチレン系合成樹脂や、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系合成樹脂や、これらの合成樹脂の共重合体などからなる合成樹脂材料のソリッド状部材や高密度発泡体を採用できる。高密度発泡体で構成する場合には、坐屈エネルギー吸収部111が確実に坐屈するように、その発泡倍率を45倍以下に設定することが好ましい。特に、リサイクルの観点から、衝突エネルギー吸収材103をポリプロピレン系樹脂で構成することが好ましい。また、金属材料としては、軽量でしかも坐屈変形が容易なアルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽合金を好適に採用できる。
固定部110としては坐屈エネルギー吸収部111をバンパー補強材101に固定可能なものであれば、任意の構成のものを採用することが可能で、衝突エネルギー吸収材103の全長にわたって設けてもよいし、車幅方向に一定間隔おきに設けてもよい。
4枚の坐屈エネルギー吸収部111は上下方向に相互に間隔をあけて略平行に配置され、そのうちの2枚の坐屈エネルギー吸収部111aは他の2枚の坐屈エネルギー吸収部111bよりも前後方向に多少長く(多少高く)構成され、坐屈エネルギー吸収部111bよりも前方へ突出されている。
隣接する坐屈エネルギー吸収部111間には坐屈許容空間112が形成され、坐屈エネルギー吸収部111が坐屈するときに、坐屈エネルギー吸収部111同士が相互に干渉しないように設定して、坐屈エネルギー吸収部111の坐屈変形が円滑に且つ確実になされるように構成されている。
このような衝突エネルギー吸収材103においては、図39に示すように、坐屈エネルギー吸収部111a、111bの長さの差分だけ、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングが坐屈エネルギー吸収部111aよりも坐屈エネルギー吸収部111bの方が遅くなるので、両坐屈エネルギー吸収部111a、111bの長さを調整することで、両坐屈エネルギー吸収部111a、111bの見かけ上のピーク値タイミングを異なるタイミングに調整することが可能となる。このため、衝撃吸収の開始から完了までの間において、両坐屈エネルギー吸収部111a、111bの衝撃力が順次にピーク値となるように設定して、衝突エネルギー吸収材103による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって、車両用衝突エネルギー吸収材103に対する衝撃力を略一定に維持することが可能となる。そして、車両用衝突エネルギー吸収材103に対する衝撃力が歩行者や乗員の保護性能を確保可能な許容値(例えば200〜300m/s)以下になるように設定することで、衝撃力を抑えて歩行者や乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
前記第4実施例では、両坐屈エネルギー吸収部111a、111bの突出長さを変えることによって、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングに差を持たせ、坐屈エネルギー吸収部111の衝撃力が2段階にピーク値となるように設定したが、坐屈エネルギー吸収部111の枚数や配列、厚さや幅、発泡倍率、配設密度や断面形状などの少なくとも1つを変えて、衝突後の坐屈エネルギー吸収部111の坐屈特性に差を持たせ、実際に衝突してから衝撃力がピーク値となるピーク値タイミングを異なる特性に調整し、ピーク値タイミングを適正に設定してもよい。また、合成樹脂材料製の発泡成形体からなる坐屈エネルギー吸収部と、合成樹脂材料製のソリッド状部材からなる坐屈エネルギー吸収部と、金属材料からなる坐屈エネルギー吸収部の少なくとも2つを任意に組み合わせて、坐屈エネルギー吸収部の衝撃力が段階的あるいは連続的にピーク値となるように設定してもよいし、衝突タイミングの異なる坐屈エネルギー吸収部と、ピーク値タイミングの異なる坐屈エネルギー吸収部を組み合わせて、坐屈エネルギー吸収部の衝撃力が段階的あるいは連続的にピーク値となるように設定してもよい。
具体的には、前記第4実施例の衝突エネルギー吸収材の構成を部分的に変更して、次のように構成してもよい。尚、前記第4実施例と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
(1) 前記第4実施例では、短尺な1対の坐屈エネルギー吸収部111bの上下両側に長尺な坐屈エネルギー吸収部111aを配置したが、図38に示す衝突エネルギー吸収材103Aのように、長尺な1対の坐屈エネルギー吸収部111aの上下両側に短尺な坐屈エネルギー吸収部111bを設けてもよいし、坐屈エネルギー吸収部111b、111aが交互に配置されるように構成してもよい。
(2) 衝突エネルギー吸収材103では2種類の突出長さの坐屈エネルギー吸収部111a、111bを設けたが、3種類以上の異なる長さの坐屈エネルギー吸収部を用いてもよい。この場合には、衝突時における衝突エネルギー吸収材103の衝撃力をよりきめ細かく調整することが可能となる。
(3) 衝突エネルギー吸収材103として、厚さの異なる複数種類の坐屈エネルギー吸収部を用いてもよい。また、図39、図40に示す衝突エネルギー吸収材103Bのように、坐屈許容空間112に代えて深さの異なる複数種類の坐屈許容空間112Bを形成し、先端側と基部側とで肉厚の異なる上下1対の坐屈エネルギー吸収部120と、その間に配置した坐屈エネルギー吸収部111aとを有する坐屈エネルギー吸収部111Bを設けてもよい。
(4) 図41に示す衝突エネルギー吸収材103Cのように、固定部110からバンパーフェイシャー102付近まで前方へ延びる坐屈エネルギー吸収部111Cを設け、この坐屈エネルギー吸収部111Cの前端部121を略水平面内において前後方向に連続的或いは段階的に振幅する波形状に形成して、衝突後のピーク値タイミングが山部と谷部とにわたって連続的或いは段階的に変化するように設定してもよい。但し、隣接する坐屈エネルギー吸収部111Cの波の位相をずらしたり、波の周期を変えて衝突タイミングを調整してもよい。
(5) 図42に示す衝突エネルギー吸収材103Dのように、固定部110からバンパーフェイシャー102付近まで前方へ延びる坐屈エネルギー吸収部111Dを設け、この坐屈エネルギー吸収部111Dに前縁から後部側へ延びるスリット122を車幅方向に設定間隔おきに形成するとともに、このスリット122の後端部が前後方向に段階的に振幅する波形状に配置されるように、隣接するスリット122の深さを設定してもよい。但し、隣接する坐屈エネルギー吸収部111Dの波の位相をずらしたり、波の周期を変えて衝突タイミングを調整してもよい。
(6) 図43、図44に示す衝突エネルギー吸収材103Eのように、固定部110に対して車幅方向に設定間隔おきに前方へ延びる複数枚の坐屈エネルギー吸収部111Eを縦向きに設け、バンパーフェイシャー102付近に配置される坐屈エネルギー吸収部111Eの前縁部を鉛直面内において前後方向に連続的或いは段階的に振幅する波形状に形成して、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングが山部と谷部とにわたって連続的或いは段階的に変化するように設定してもよい。
(7) 図45、図46に示す衝突エネルギー吸収材103Fのように、固定部110に対して車幅方向に設定間隔おきに前方へ延びる複数枚の坐屈エネルギー吸収部111Fを縦向きに設け、坐屈エネルギー吸収部111Fの前端部が水平面内において前後方向に段階的に振幅する波形状になるように坐屈エネルギー吸収部111Fの高さを設定してもよい。
(8) 坐屈エネルギー吸収部111としては、板状以外の任意形状のものを採用でき、図47(a)(b)に示す衝突エネルギー吸収材103G、3Hのように、円柱状や角柱状の坐屈エネルギー吸収部125を用いてもよいし、図47(c)に示す衝突エネルギー吸収材103Iのように、小判型や細長いリブ状の坐屈エネルギー吸収部126、127を用いてもよいし、図47(d)に示す衝突エネルギー吸収材103Jのように、円筒状や角筒状や円錐状な円錐台状の坐屈エネルギー吸収部128を用いてもよい。
(9) 衝突後におけるピーク値タイミングを遅らせたい部分に関しては、他の部分よりも坐屈エネルギー吸収部の配設密度を高めたり、坐屈エネルギー吸収部の断面積を大きく設定してもよい。例えば、図47(b)に示す衝突エネルギー吸収材103Hのように、高さ方向の途中部における坐屈エネルギー吸収部125の配設密度を高めて、衝突後におけるピーク値タイミングを遅らせてもよい。また、図47(c)に示す衝突エネルギー吸収材103Iのように、上下両側の坐屈エネルギー吸収部126における車幅方向の長さを高さ方向の途中部における坐屈エネルギー吸収部127の長さよりも短く設定して、高さ方向の途中部における坐屈エネルギー吸収部127の断面積を大きく設定して、その分だけ衝突後におけるピーク値タイミングを遅らせてもよい。
(10) 坐屈エネルギー吸収部111と固定部110とは一体成形してもよいし、別個に成形して接着剤等で一体化させてもよい。このように構成すると、衝突エネルギー吸収材103の組立作業が必要となるが、例えば発泡倍率の異なる複数種類の坐屈エネルギー吸収部を有する衝突エネルギー吸収材を容易に製作できるし、合成樹脂材料製の発泡成形体からなる坐屈エネルギー吸収部と、合成樹脂材料製のソリッド状部材からなる坐屈エネルギー吸収部と、金属材料からなる坐屈エネルギー吸収部の少なくとも2つを任意に組み合わせてなる衝突エネルギー吸収材を容易に製作できる。例えば発泡倍率に関しては、発泡倍率が高くなるにしたがって坐屈変形し易くなるので、異なる発泡倍率の複数種類の坐屈エネルギー吸収部を用いることで、衝突後における坐屈エネルギー吸収部の衝撃力が所定値付近になるように調整することが可能となる。
(11) 図48に示す衝突エネルギー吸収材103Kのように、坐屈エネルギー吸収部111に代えて、坐屈エネルギー吸収部111の先端部に衝撃荷重を受け止める板状の受け部130を一体的に形成した坐屈エネルギー吸収部111Kを設けてもよい。この場合には、衝撃荷重を受け部130により面的に衝撃力を受け止めることが可能なので、歩行者の保護性能を一層向上できる。但し、衝突エネルギー吸収材103K以外の衝突エネルギー吸収材に関しても、前後を逆向きにして固定部110をバンパーフェイシャー102側に配置させることによって、同様の効果が得られる。
(12) 図49に示す衝突エネルギー吸収材103Lのように、バンパーフェイシャー102に後方へ延びる坐屈エネルギー吸収部131を車幅方向に形成し、3枚の坐屈エネルギー吸収部111aを上下に間隔をあけて設けた坐屈エネルギー吸収部111Lを設け、坐屈エネルギー吸収部131と坐屈エネルギー吸収部111aよりも短尺に構成して、両坐屈エネルギー吸収部111a、131により衝撃エネルギーを吸収するように構成してもよい。また、バンパー補強材101側の坐屈エネルギー吸収部111Lを省略して、バンパーフェイシャー102に坐屈エネルギー吸収部111a、131を形成してもよい。
(第5実施例)
この第5実施例は、本発明に係る第2の車両用衝突エネルギー吸収材を自動車のフロントサイドドアに適用した場合のものである。
図50、図51に示すように、フロントサイドドア140について説明すると、ドアアウタパネル141とドアインナパネル142とからなる閉断面状のサイドドア本体143が設けられ、サイドドア本体143の車室側にはドアトリム146が設けられている。ドアトリム146にはその車体前後方向の全長にわたって延びる上側突部144と下側突部145とが乗員の胸部と腰部に対応させて車室側へ突出状に設けられ、ドアインナパネル142とドアトリム146間において上側突部144内には上部衝突エネルギー吸収材147が設けられ、ドアインナパネル142とドアトリム146間において下側突部145内には下部衝突エネルギー吸収材148が設けられている。
上下の衝突エネルギー吸収材147,148は、前記第4実施例における衝突エネルギー吸収材103とサイズは異なるが基本的には同様に構成され、前記第4実施例におけるバンパー補強材101をドアインナパネル142と読み替え、バンパーフェイシャー102をドアトリム146と読み替え、車幅方向を車体前後方向と読み替えることでサイドドア140に組み付けることができる。
具体的には、衝突エネルギー吸収材147は、車体前後方向に細長い略平板状の固定部151と、固定部151からドアトリム146側へ延びる3枚の坐屈エネルギー吸収部152とを備えている。坐屈エネルギー吸収部152のうち上下の坐屈エネルギー吸収部152aはドアトリム146付近まで配置され、両坐屈エネルギー吸収部152a間に配置される坐屈エネルギー吸収部152bは坐屈エネルギー吸収部152aよりも短尺に構成されている。また、衝突エネルギー吸収材148は、車体前後方向に細長い略平板状の固定部153と、固定部153からドアトリム146側へ延びる3枚の坐屈エネルギー吸収部154とを備えている。坐屈エネルギー吸収部154のうち上下の坐屈エネルギー吸収部154aはドアトリム146付近まで配置され、両坐屈エネルギー吸収部154a間に配置される1対の坐屈エネルギー吸収部154bは坐屈エネルギー吸収部154aよりも短尺に構成されている。
そして、このような長さの異なる坐屈エネルギー吸収部152a、152b及び坐屈エネルギー吸収部154a、154bを用いることで、坐屈エネルギー吸収部における衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングをずらして、衝撃力が許容値以上にならないようにしつつ、衝突エネルギーを極力吸収することが可能となる。
尚、上下の衝突エネルギー吸収材147,148のうち一方を省略することも可能であるし、上下の衝突エネルギー吸収材147,148に代えて、前記第4実施例で例示した種々の構成の衝突エネルギー吸収材を同様にして組み付けることが可能である。
また、この第5実施例では、運転席側のフロントサイドドア140に本発明を適用したが、助手席側のフロントサイドドアに適用することも可能であるし、左右のリアサイドドアに対しても同様に本発明を適用できる。
(第6実施例)
この第6実施例は、本発明に係る第2の車両衝突エネルギー吸収材を自動車のフロントピラー160に適用した場合のものである。
図52、図53に示すように、フロントピラー160について説明すると、ピラーアウタパネル162とピラーインナパネル161とからなる閉断面状のピラー本体164が設けられ、ピラー本体164の車室側にはピラートリム163が設けられている。ピラーインナパネル161とピラートリム163間には衝突エネルギー吸収材165が設けられている。
衝突エネルギー吸収材165は、前記第4実施例における衝突エネルギー吸収材103とサイズは異なるが基本的には同様に構成され、前記第4実施例におけるバンパー補強材101をピラーインナパネル161と読み替え、バンパーフェイシャー102をピラートリム163と読み替え、車幅方向をフロントピラー160の長さ方向と読み替えることでフロントピラー160に組み付けることができる。
具体的には、衝突エネルギー吸収材165は、ピラーインナパネル161に沿って延びる細長い固定部171と、固定部171からピラートリム163側へ延びる7枚の坐屈エネルギー吸収部172とを備えている。坐屈エネルギー吸収部172のうちの坐屈エネルギー吸収部172aはピラートリム163付近まで配置され、坐屈エネルギー吸収部172bは坐屈エネルギー吸収部172aよりも短尺に構成され、両坐屈エネルギー吸収部172a、172bは交互に配置されている。
そして、このような長さの異なる坐屈エネルギー吸収部172a、172bを用いることで、坐屈エネルギー吸収部172における衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングをずらして、衝撃力が許容値以上にならないようにしつつ、衝突エネルギーを極力吸収することが可能となる。
尚、衝突エネルギー吸収材165に代えて、前記第4実施例で例示した種々の構成の衝突エネルギー吸収材を同様にして組み付けることが可能である。
また、本第6実施例では、フロントピラー160に本発明を適用したが、センターピラーやリアピラーに対しても同様に本発明を適用できる。
更に、前記4〜6実施例では、車両のバンパーとサイドドアとピラーに本発明を適用した場合について説明したが、これら以外の部位に対しても本発明を同様に適用できる。
次に、衝突エネルギー吸収性能の性能試験について説明する。
(試験片)
坐屈エネルギー吸収材として、ポリプロピレン系樹脂(鐘淵化学製原料エペラン−PP使用)からなる予備発泡ビーズを用いてビーズ法にて成形した坐屈エネルギー吸収材であって、成形体倍率が4.8倍で、図54に示すように、高さ60mm、厚さ10mm、長さ300mmの板状の坐屈エネルギー吸収材180と、高さ45mm、厚さ10mm、長さ300mmの板状の坐屈エネルギー吸収材181と、幅20mm、厚さ10mm、長さ300mmの板状の底板182と、坐屈エネルギー吸収材180、181と同じサイズではあるが、成形体倍率を4.0倍(鐘淵化学製原料エペラン−PP使用)に設定した坐屈エネルギー吸収材180A、181Aを製作した。
本発明例11:図54(a)に示すように、2枚の坐屈エネルギー吸収材180を80mmの間隔をあけて略平行に立設し、その内側に2枚の坐屈エネルギー吸収材181を20mmの間隔をあけて立設して、これら4枚の坐屈エネルギー吸収材180、181を3枚の底板182で一体的に結合した試験片を製作した。
本発明例12:図54(b)に示すように、本発明例11から底板182を省略した試験片を製作した。
本発明例13:図54(c)に示すように、2枚の坐屈エネルギー吸収材181Aを80mmの間隔をあけて略平行に立設し、その内側に2枚の坐屈エネルギー吸収材180Aを20mmの間隔をあけて立設した試験片を製作した。
本発明例14:図54(d)に示すように、2枚の坐屈エネルギー吸収材180を80mmの間隔をあけて略平行に立設し、その内側に2枚の坐屈エネルギー吸収材180Bを20mmの間隔をあけて立設した試験片を製作した。
比較例11:図55(a)に示すように、成形体倍率が17倍(鐘淵化学製原料エペラン−PP使用)で、高さ60mm、幅100mm、長さ300mmの板状の圧縮エネルギー吸収材185からなる試験片を製作した。
比較例12:図55(b)に示すように、厚さが3.0mm、高さが38mm、長さが300mmのソリッドのポリプロピレン系樹脂からなる2枚の坐屈エネルギー吸収材180Bを25mmの間隔をあけて略平行に立設した試験片を製作した。
比較例13:厚さが2.5mm、高さが38mm、長さが300mmのソリッドのポリプロピレン系樹脂からなる2枚の坐屈エネルギー吸収材を比較例2と同様に25mmの間隔をあけて略平行に立設した試験片を製作した。
(試験方法)
本発明例においては、試験片を受け台に順次セットして、試験片の長さ方向の中央部に幅方向に沿って、本発明例11、12では重量が34.8kg、本発明例13では重量が40.8、本発明例14では重量が28.8kgで、直径がφ70mmの丸棒からなる衝突物を落下高さ81.6cmから落下衝突させ、そのときの試験片の変位と加速度の関係をそれぞれ測定し、図56〜図59に示す測定結果を得た。また、比較例においては、試験片を受け台に順次セットして、試験片の長さ方向の中央部に幅方向に沿って、比較例11では重量が40.8kgで直径がφ70mmの丸棒からなる衝突物を81.6cmの落下高さから落下衝突させ、比較例12では重量が21.3kgで直径がφ70mmの丸棒からなる衝突物を落下高さ21.0cmから落下衝突させ、比較例13では、21.3kgで直径がφ70mmの丸棒からなる衝突物を落下高さ16.0cmから落下衝突させ、そのときの試験片の変位と加速度の関係をそれぞれ測定し、図60〜図62に示す測定結果を得た。これらの測定結果から、試験片の変位、最大加速度、衝撃力、エネルギー吸収量、エネルギー吸収効率を求め、表2を得た。

このため、変位、エネルギー吸収量、エネルギー吸収効率は求めることができなかった。
図56〜図62から判るように、比較例11では、右肩上がりに加速度が増大し、また衝突タイミング及びピーク値タイミングを同じに設定したソリッドのポリプロピレン系樹脂製の板材を用いた比較例12、13では衝突初期に加速度が急激に増大しているのに対して、本発明例11〜14では、衝突からの変位量が0〜40mmの範囲内における加速度が、概ね200〜300m/sと一様になっており、衝突エネルギーの吸収量はグラフの下側の面積で決定されることから、本発明例では最大加速度を抑えつつ、衝突エネルギーの吸収量が多くなっていることが判る。
また、比較例12,13では、最大加速度が高くなるにも係わらず、衝突エネルギーの吸収量が少なく、衝撃エネルギーを完全に吸収することができず、また比較例1は衝突エネルギーを吸収できるものの、表2に示すように、本発明例11〜14は比較例11と比較すると、衝撃値においてはそれぞれ約27%、約45%、約42%、約46%軽減でき、エネルギー吸収効率においてはそれぞれ約6%、約17%、18%、約14%も効率が良くなっており、歩行者及び乗員の保護性能が高められていることが判る。
【産業上の利用可能性】
(請求項1)
本発明に係る第1の車両用衝突エネルギー吸収材によれば、圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材との衝突エネルギー吸収特性を組み合わせて衝突エネルギーを吸収するので、車両用衝突エネルギー吸収材における衝撃荷重の衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって、車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を略一定に維持することが可能となり、車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を歩行者や乗員の保護性能を確保可能な目標値に設定することこで、衝撃力を抑えて歩行者や乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項2、3)
前記圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とが衝撃力に対して略同一タイミングでエネルギー吸収変形を開始するように構成すると、車体に組付可能な車両用衝突エネルギー吸収材の配置スペースを最大限有効活用して、衝突エネルギーを吸収することが可能となる。また、異なるタイミングでエネルギー吸収変形を開始するように構成すると、圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材のエネルギー吸収変形の開示タイミングを調整することで、全体として最適なエネルギー吸収特性を実現できる。
(請求項4)
前記両エネルギー吸収材に対する衝撃力が、両エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって略一様になるように設定したり、圧縮エネルギー吸収材を衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって圧縮変形するように配置し、坐屈エネルギー吸収材を衝突エネルギー吸収期間の初期において坐屈変形するように配置すると、歩行者に作用する衝撃力を低く抑えつつ、衝突エネルギー吸収期間全体を有効利用して衝突エネルギーを効率的に吸収することが可能となる。
(請求項5)
前記坐屈エネルギー吸収材をバンパーの前後方向の全幅にわたって設けたり、前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなる板状部材で構成し、この坐屈エネルギー吸収材を略水平面内において、バンパーの長さ方向に沿い且つバンパーの前後方向の全幅にわたって設けると、坐屈エネルギー吸収材に対して衝突初期の段階から衝突荷重を作用させることが可能となり、坐屈エネルギー吸収材により衝突初期における衝突エネルギーを効果的に吸収できる。
(請求項6、7)
前記圧縮エネルギー吸収材を合成樹脂からなる発泡成形体で構成したり、発泡成形体で構成してその発泡倍率を2〜150倍に設定すると、エネルギー吸収性能を十分に確保しつつ、発泡倍率の調整により要求の衝突エネルギー吸収特性を実現できると共に、車両用衝突エネルギー吸収材を軽量に構成できる。
(請求項9、10)
前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成したり、発泡体で構成してその発泡倍率を20倍以下に設定すると、衝突エネルギー吸収性能を十分に確保しつつ、圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とを一体成形でき、組立て作業工数を削減できると共に、バンパーの車両用衝突エネルギー吸収材を軽量に構成できる。
(請求項11)
前記坐屈エネルギー吸収材の両側に坐屈許容空間を設けると、坐屈エネルギー吸収材を坐屈許容空間内において坐屈変形させることが可能となるので、坐屈エネルギー吸収材が坐屈変形するときに、坐屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とが干渉したり、坐屈エネルギー吸収材同士が干渉したりすることが抑制されるので、必要とする衝突エネルギー吸収効果を得ることが可能となる。
(請求項12)
前記圧縮エネルギー吸収材に対して坐屈エネルギー吸収材をインサート成形により一体的に形成すると、成形工程は多少複雑になるが、圧縮エネルギー吸収材に対する坐屈エネルギー吸収材の取付け強度を向上でき、後工程での車両組立て工数を少なくする事ができる。
(請求項13)
前記坐屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とを別個に成形して一体化させると、部品点数は増えるものの、圧縮エネルギー吸収材が成形を容易にでき、両エネルギー吸収材を接着剤等により強固に一体化できる。
(請求項14)
前記車両用衝突エネルギー吸収材で車両用バンパーの芯材を構成すると、歩行者を保護可能な目標値に車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を設定することこで、バンパーとの接触時における歩行者の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項17)
前記坐屈エネルギー吸収材をバンパーフェイシャーに一体的に設け、圧縮エネルギー吸収材に坐屈エネルギー吸収材を受け入れる組付空間を形成すると、芯材を構成する部品点数を少なくできるので好ましい。
(請求項18)
本発明に係る第2の車両用衝突エネルギー吸収材によれば、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングと、衝突してから衝撃力がピーク値となるピーク値タイミングの少なくとも一方を、段階的又は連続的に異なるように設定した坐屈エネルギー吸収部を有するので、車両用衝突エネルギー吸収材による衝撃吸収の開始から完了まで間において段階的あるいは連続的に坐屈エネルギー吸収部がピーク値となり、車両用衝突エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を略一定に維持することが可能となる。したがって、車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を歩行者や乗員の保護性能を確保可能な許容値に設定することで、衝撃力を抑えて歩行者や乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
(請求項19、20)
前記衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なる組み合わせの複数の坐屈エネルギー吸収部を独立に設け、これら複数の坐屈エネルギー吸収部が段階的又は連続的に坐屈変形することで衝突エネルギーを吸収してもよいし、前記衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なる坐屈エネルギー吸収部を一体的に設け、この一体的な坐屈エネルギー吸収部が段階的又は連続的に坐屈変形することで衝突エネルギーを吸収してもよい。独立に設ける場合には、衝撃力吸収ピーク値、並びに変形量の設定を比較的自由に設計することが可能となる。また、一体的に設ける場合には、坐屈エネルギー吸収部の設計は複雑となるが、衝突エネルギー吸収材トータルでは構造を簡略化することが可能となる。
(請求項21〜25)
前記坐屈エネルギー吸収部の高さを変えて衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なるように設定してもよいし、前記坐屈エネルギー吸収部の厚み、幅、配設密度、断面形状を変えてピーク値タイミングが異なるように設定してもよいし、これらの組み合わせを任意に変えることで、衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なるように設定してもよい。
(請求項26、27)
前記坐屈エネルギー吸収部は、合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成してもよい。この場合には、前記坐屈エネルギー吸収部を車両側部材に一体形成することで、部品点数を極力少なくしつつ衝突エネルギー吸収性能を向上できるので好ましい。
(請求項30、31)
坐屈エネルギー吸収部を合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成すると、坐屈エネルギー吸収部の発泡倍率を変えてピーク値タイミングが異なるように設定できる。また、坐屈エネルギー吸収部を構成する発泡成形体の発泡倍率を45倍以下に設定すると、車両用衝突エネルギー吸収材を軽量に構成しつつ、衝突エネルギー吸収性能を十分に確保できる。更に、坐屈エネルギー吸収部として、合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成した坐屈エネルギー吸収部と、合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成した坐屈エネルギー吸収部とを備えると、衝突エネルギー吸収開始時より、合成樹脂からなるソリッド状部材で構成した坐屈エネルギー吸収部が機能し短時間で衝撃力を設定に近づけることが可能となる。その後、発泡体からなる坐屈エネルギー吸収部により衝撃エネルギーを吸収することが可能となるため、さらに衝突エネルギー吸収効率を高めることができる。
(請求項32)
坐屈エネルギー吸収部の両側に坐屈許容空間を設けると、坐屈エネルギー吸収部が坐屈変形するときに、坐屈エネルギー吸収部同士が相互に干渉することが抑制されるので、必要とする衝突エネルギー吸収効果を容易に且つ確実に得ることが可能となる。
(請求項34〜36)
本発明に車両の衝突エネルギー吸収構造によれば、これをバンパーに適用した場合には、歩行者を保護可能な目標値に車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を設定することこで、バンパーとの接触時における歩行者の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。また、ドアやピラーに適用した場合には、乗員を保護可能な目標値に車両用衝突エネルギー吸収材に対する衝撃力を設定することこで、ドアやピラーとの接触時における乗員の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収することが可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53】

【図54】

【図55】

【図56】

【図57】

【図58】

【図59】

【図60】

【図61】

【図62】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮変形による圧縮エネルギー吸収材と、坐屈変形による坐屈エネルギー吸収材とを備え、両エネルギー吸収材の組み合わせにより、車体への衝突エネルギーを吸収する車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項2】
前記圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とが衝撃力に対して略同一タイミングでエネルギー吸収変形を開始する請求項1記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項3】
前記圧縮エネルギー吸収材と坐屈エネルギー吸収材とが衝撃力に対して異なるタイミングでエネルギー吸収変形を開始する請求項1記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項4】
前記両エネルギー吸収材に対する衝撃力が、両エネルギー吸収材による衝突エネルギーの衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって略一様になるように設定した請求項1記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項5】
前記圧縮エネルギー吸収材を衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって圧縮変形するように配置し、坐屈エネルギー吸収材を衝突エネルギー吸収期間の初期において坐屈変形するように配置した請求項1又は4記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項6】
前記圧縮エネルギー吸収材を合成樹脂からなる発泡成形体で構成した請求項1〜5のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項7】
前記圧縮エネルギー吸収材を構成する発泡成形体の発泡倍率を2〜150倍に設定した請求項6記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項8】
前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成した請求項1〜7のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項9】
前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成した請求項1〜8のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項10】
前記坐屈エネルギー吸収材を構成する発泡成形体の発泡倍率を20倍以下に設定した請求項9記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項11】
前記坐屈エネルギー吸収材の両側に坐屈許容空間を設けた請求項1〜10のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項12】
前記圧縮エネルギー吸収材に対して坐屈エネルギー吸収材をインサート成形により一体的に形成した請求項1〜11のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項13】
前記坐屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とを別個に成形して一体化させた請求項1〜12のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項14】
前記車両用衝突エネルギー吸収材が車両用バンパーの芯材であるところの請求項1〜13のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項15】
前記坐屈エネルギー吸収材をバンパーの前後方向の全幅にわたって設けた請求項4記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項16】
前記坐屈エネルギー吸収材を合成樹脂材料からなる板状部材で構成し、この坐屈エネルギー吸収材を略水平面内において、バンパーの長さ方向に沿い且つバンパーの前後方向の全幅にわたって設けた請求項14又は15記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項17】
前記坐屈エネルギー吸収材をバンパーフェイシャーに一体的に設け、圧縮エネルギー吸収材に坐屈エネルギー吸収材を受け入れる組付空間を形成した請求項14〜16のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項18】
衝撃力のピーク値が設定値以下となる坐屈特性を持つとともに、衝突エネルギーの吸収を開始する衝突タイミングと、衝突してから衝撃力がピーク値となるピーク値タイミングの少なくとも一方を、段階的又は連続的に異なるように設定した坐屈エネルギー吸収部を有し、この坐屈エネルギー吸収部の坐屈変形により車体への衝突エネルギーを吸収する車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項19】
前記衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なる組み合わせの複数の坐屈エネルギー吸収部を独立に設け、これら複数の坐屈エネルギー吸収部が段階的又は連続的に坐屈変形することで衝突エネルギーを吸収する請求項18記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項20】
記衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なる坐屈エネルギー吸収部を一体的に設け、この一体的な坐屈エネルギー吸収部が段階的又は連続的に坐屈変形することで衝突エネルギーを吸収する請求項18又は19記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項21】
前記坐屈エネルギー吸収部の高さを変えて衝突タイミングとピーク値タイミングの少なくとも一方が異なるように設定した請求項18〜20のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項22】
前記坐屈エネルギー吸収部の厚みを変えてピーク値タイミングが異なるように設定した請求項18〜21のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項23】
前記坐屈エネルギー吸収部の幅を変えてピーク値タイミングが異なるように設定した請求項18〜22のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項24】
前記坐屈エネルギー吸収部の配設密度を変えてピーク値タイミングが異なるように設定した請求項18〜23のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項25】
前記坐屈エネルギー吸収部の断面形状を変えてピーク値タイミングが異なるように設定した請求項18〜24のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項26】
前記坐屈エネルギー吸収部を合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成した請求項18〜25のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項27】
前記坐屈エネルギー吸収部を車両側部材に一体形成した請求項26記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項28】
前記坐屈エネルギー吸収部を合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成した請求項18〜27のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項29】
前記坐屈エネルギー吸収部として、合成樹脂材料からなるソリッド状部材で構成した坐屈エネルギー吸収部と、合成樹脂材料からなる発泡成形体で構成した坐屈エネルギー吸収部とを備えた請求項18〜28のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項30】
前記坐屈エネルギー吸収部の発泡倍率を変えてピーク値タイミングが異なるように設定した請求項28又は29記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項31】
前記坐屈エネルギー吸収部を構成する発泡成形体の発泡倍率を45倍以下に設定した請求項28〜30のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項32】
前記坐屈エネルギー吸収部の両側に坐屈許容空間を設けた請求項18〜31のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項33】
請求項1記載の車両用衝突エネルギー吸収材における坐屈エネルギー吸収材が、請求項18〜32のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材であるところの請求項1記載の車両用衝突エネルギー吸収材。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材を車体の前端部に車幅方向に設けたバンパー補強材とそれを覆うバンパーフェイシャー間の空間内に設けてなる車両の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項35】
請求項1〜13、18〜33のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材をドアインナパネルとドアトリム間の空間内に設けてなる車両の衝突エネルギー吸収構造。
【請求項36】
請求項1〜13、18〜33のいずれか1項記載の車両用衝突エネルギー吸収材をピラーインナパネルとピラートリム間の空間内に設けてなる車両の衝突エネルギー吸収構造。

【国際公開番号】WO2004/020256
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569729(P2004−569729)
【国際出願番号】PCT/JP2003/010821
【国際出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】