説明

車両部品用の安全弁

【課題】車両部品内の可動部分の息付き作用において、外部からの汚染物質が部品内部の空洞に流入するのを防止する安全弁を提供する。
【解決手段】車両部品の開口端に取り付けられた安全弁14であり、前記安全弁14は前記開口端を閉塞するプラグ中央部に取り付けられる。安全弁14は、外周に取付部分40を配置し、内部にスリット状の流路56を有する可撓膜52を配置すると共に、前記可撓膜52の外周を前記取付部分40の内周部に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、車両部品用の安全弁に関し、その安全弁は、安全弁を通り抜ける双方向流れを可能にする。
【背景技術】
【0002】
駆動シャフトアセンブリ用の駆動系スリップヨークは、自在継手に近い開口端面に挿入されたプラグを含む。スリップヨークは、スプラインシャフト部材と嵌合するスプラインの付いた面を含む内部穴を開口面に有する。プラグはスプラインの露出した端部を覆う。従来から、プラグは、スプラインの中心線に対して平行な軸によって画定される中心円形穴を含む。この穴は、内部穴内でスプラインシャフト部材が軸方向に動くためにスリップヨーク内で発生する圧力を補償する。
【0003】
スプラインシャフト部材が、駆動シャフトアセンブリの長さを延長するために外側に移動すると、スプラインシャフト部材の端部とプラグとの間に形成された空洞に真空が生じる。同様に、スプラインシャフト部材が、駆動シャフトアセンブリの長さを短縮するために内側に移動すると、スプラインシャフト部材の端部とプラグとの間の空洞に圧力が形成される。プラグ内の中心円形穴により、空気が内外に移動することで、スリップヨークアセンブリの外部と内部との間で圧力を等しくすることが可能になる。スプラインシャフト部材が外側に動く場合、空洞に生じた真空のために、スプラインシャフト部材用の封止境界部でスリップシャフトアセンブリが汚染される恐れがある。スプラインシャフト部材が内側に移動したときに、空気圧の増加が一様でない場合、スリップヨークの端部に挿入されたプラグが定位置から押し出される恐れがあり、これは、潤滑流体を流出させるのに加えて、スプラインを汚染の可能性のあるものにさらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この現状の構成の1つの欠点は、現状の円形穴構成の場合、その穴自体が、水、塩類、埃などの外部汚染物の漏入経路になることである。したがって、改良したスリップヨークプラグが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両部品は、通気目的の双方向流れを可能にし、一方で、外部汚染物が車両部品の内部空洞に流入するのを防止する安全弁付きプラグを含む。
【0006】
一例では、スリップヨークアセンブリは、プラグを開口端に受け入れたスリップヨークを含む。安全弁はプラグに取り付けられ、外部汚染物がスリップヨークに流入するのを防止しながら、通気目的の双方向流れを可能にする。
【0007】
一例では、安全弁は、通気位置と封止位置との間を移動可能な可撓性膜を貫通する少なくとも1つの細長い流路を有する。
【0008】
一例では、安全弁は、プラグに形成された開口に安全弁を取り付けるように機能する、外縁部のまわりに形成された取付部分を含む。一例では、取付部分は溝を含む。可撓性膜は、その溝に対して半径方向内側に配置される。
【0009】
一例では、少なくとも1つの細長い流路は細長いスリットからなる。単一のスリットを使用しても良いし、または複数のスリットを使用しても良い。通気の際に、スリットのフラップが開いてプラグの両側にかかる空気圧を等しくする。閉じた際に、スリットのフラップは互いに接触して、車両部品の内部空洞に汚染物が流入するのを防止する封止境界部を形成する。
【0010】
別の例では、ブレーキアセンブリはプラグ安全弁を備えたブレーキ部品を含み、このプラグ安全弁は、ブレーキ部品の内部空洞に外部汚染物が流入するのを防止しながら、通気目的の双方向流れを可能にする。
【0011】
本発明のこれらのおよび他の特徴は、下記の説明および図面により最も深く理解することができ、以下は簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】安全弁付きプラグを備えたスリップヨークアセンブリの側面図である。
【図2】図1の安全弁の斜視図である。
【図3A】図1の端面図である。
【図3B】図1の側面図である。
【図4A】封止位置にある安全弁の概略側面図である。
【図4B】一方の通気位置にある安全弁の概略側面図である。
【図4C】もう一方の通気位置にある安全弁の概略側面図である。
【図5A】複数の細長い流路を備えた構成を示す、安全弁の概略端面図である。
【図5B】細長い流路の別の構成例を示す、安全弁の概略端面図である。
【図6】安全弁付きプラグを含むブレーキアセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、内部圧力を逃がすように構成された車両部品を示している。一例では、車両部品は、スリップヨーク12および安全弁14を含むスリップヨークアセンブリ10である。スリップヨークアセンブリ10は、ヨーク中心軸Aに沿って延びるスリップシャフト体16と、公知のように、継手アセンブリを形成するように別のヨーク部分(図示せず)と連結可能なヨーク部分18とを含む。ヨーク部分18は、スリップヨークアセンブリ10の一方の端部に形成され、スリップヨークアセンブリ10の反対側の端部20は、一方のシャフト端部26の外周のまわりに延びるスプライン付き面24を有するシャフト22に連結可能である。
【0014】
プラグ28は、スリップヨークアセンブリ10に取り付けられ、安全弁14は、プラグ28によって支持されている。スリップシャフト体16は、シャフト22のスプライン付き面24と結合するスプライン付き嵌合面32を有する内部中心穴30を含む。中心穴30は、シャフト22によって一端で閉じられ、ヨーク部分18に近い、34で示す反対側のシャフト端部で開いている。安全弁14は、ヨーク部分18の近くで、スリップヨークアセンブリ10によってプラグ28内に支持されて、開口端34において中心穴30を閉鎖している。
【0015】
安全弁14が、図2、図3A、および図3Bにさらに詳細に示されている。安全弁14は、プラグ28に形成された開口に取り付く取付部分40を含む。一例では、取付部分40は、安全弁14の(中心穴30の方を向いた)内側縁部44と(中心穴30から見て外側を向いた)外側縁部46とに形成された大直径のフランジ部分42を含む。大直径のフランジ部分42間には、小直径の溝48がある。溝48は、安全弁14を所定の位置に確実に保持するプラグ28の開口に置かれる。
【0016】
プラグ28の縁部は、スリップヨークアセンブリ10の開口端34に形成された溝50に置かれる。プラグ28は、例えば、金属やプラスチックで作られた、剛性、非可撓性の部材からなる。さらに、プラグ28は、湾曲したまたは平坦な部材からなることができる。
【0017】
安全弁14は、取付部分40の半径方向内側に配置された薄い可撓性膜52を含む。可撓性膜52は、可撓性膜52を軸方向に貫通する少なくとも1つの細長い流路56を含む。細長い流路56は、ヨーク中心軸Aに対して平行でない方向に延びる長さ寸法によって画定される。
【0018】
安全弁14は、例えば、ゴムや他のポリマー材料などの、非腐食性で一般的な可撓性材料から作られる。これは、安全弁14をプラグ28に容易に取り付けることを可能にし、可撓性膜52の移動を可能にする。
【0019】
図2、図3A、および図3Bに示した例では、細長い流路56は、可撓性膜52を貫いて形成されたスリットからなる。示すように、スリットは、長さ寸法が高さ寸法よりもはるかに長い。可撓性膜52は、安全弁14の両側にかかる圧力が等しくないのに反応して、通気位置と封止位置との間を移動することができる。
【0020】
図4Aは、封止位置にある可撓性膜を示している。細長い流路56により、フラップ60が形成され、これらのフラップ60は、封止位置にあるときにフラップ60の縁部62に沿って互いに接触する。これは、埃、塩類、水などの汚染物が中心穴30に流入するのを防止する。
【0021】
可撓性部材52により、シャフト22の端部と、スリップヨークアセンブリ10の中心穴30に挿入された安全弁14との間に設けられた空洞66(図1)内の空気差圧分を、安全弁14を通り抜ける双方向流れによってなくすことが可能になる。スリップヨークアセンブリ10の中心穴30内をシャフト22が軸方向に移動することで、空洞内の空気圧が変わることがある。可撓性膜52は、必要に応じて、軸Aに沿って内側(図4B)か、または外側(図4C)のいずれかに曲がって空気圧を均一にすることができる。このように、可撓性膜52の細長い流路56を通り抜ける双方向流れにより、単純な態様で、スリップヨークアセンブリの外部と内部との間で空気圧が等しくなり、その上で、圧力が等しくなった(図4A)場合に、境界部が封止される。
【0022】
単一の細長い流路56が示されているが、当然のことながら、可撓性膜52は、図5Aおよび図5Bに示すように、複数の細長い流路56を含むこともできる。さらに、細長い流路は、可撓性膜52を貫通する、様々に異なる軸方向向きに向けることができる。また、概ね直線として示しているが、細長い流路は、湾曲した円弧などの非直線部分を含むこともでき、互いに交差しても、交差しなくても良い。
【0023】
図6は、安全弁14付きのプラグ28を含む車両部品の別の例を示している。この例では、車両部品は車両用ブレーキ機構70からなる。安全弁付きのプラグ28は、ブレーキ76を作動させるのに使用される空気チャンバ用のハウジング74内に形成された開口72に取り付けられている。安全弁14により、安全弁14を通り抜ける双方向流れで、空気チャンバの空洞78内の空気差圧分をなくすことが可能になる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者ならば、特定の修正が本発明の範囲に入ると分かるであろう。この理由から、本発明の範囲および内容を特定するために、添付の特許請求の範囲が検討されるべきである。
【符号の説明】
【0025】
14 安全弁
28 プラグ
40 取付部分
42 フランジ部分
44 内側縁部
46 外側縁部
48 溝
52 可撓性膜
56 細長い流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部品用の弁アセンブリであって、
車両部品に形成した開口に挿入されるプラグと、
前記プラグに取り付けられ、可撓性膜を貫通する少なくとも1つの細長い流路を有する安全弁と、
を含み、前記可撓性膜は、通気位置と封止位置との間を移動できる、弁アセンブリ。
【請求項2】
前記安全弁は、外縁部のまわりに形成された取付部分を含み、前記可撓性膜は、前記取付部分の半径方向内側に配置され、前記取付部分は、前記プラグに形成されたプラグ開口に取り付け可能である、請求項1に記載の弁アセンブリ。
【請求項3】
前記取付部分は、前記安全弁を前記プラグに取り付けるための、前記外縁部のまわりに形成された溝を含む、請求項2に記載の弁アセンブリ。
【請求項4】
前記取付部分は、前記安全弁の内側および外側端面に拡大フランジ部分を含み、前記溝は、前記拡大フランジ部分間の、直径を縮小した部分として形成される、請求項3に記載の弁アセンブリ。
【請求項5】
前記プラグは中心軸を画定し、前記少なくとも1つの細長い流路は、前記中心軸に対して平行でない方向に延びる少なくとも1つのスリットからなる、請求項2に記載の弁アセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのスリットには複数のスリットが含まれる、請求項5に記載の弁アセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのスリットにより、一対の可動性フラップが形成され、前記フラップは、前記封止位置にある場合に互いに接触し、前記可撓性膜が前記通気位置にある場合に、前記プラグ開口に対して内側または外側に移動して互いに接触しない、請求項5に記載の弁アセンブリ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのスリットは、高さ寸法よりも長さ寸法がはるかに長い、請求項5に記載の弁アセンブリ。
【請求項9】
前記安全弁は、可撓性ゴムまたはポリマー材料からなる、請求項2に記載の弁アセンブリ。
【請求項10】
前記車両部品には、開口端を有する中心穴があるスリップヨークが含まれ、前記プラグは、前記中心穴に受け入れられて、前記開口端を閉鎖する、請求項1に記載の弁アセンブリ。
【請求項11】
前記車両部品には、内部空洞への開口を有するハウジングがあるブレーキ部品が含まれ、前記プラグは前記開口に受け入れられる、請求項1に記載の弁アセンブリ。
【請求項12】
車両部品であって、
前記車両部品内に形成された内部空洞への開口を含む車両部品本体と、
前記開口に挿入されて、前記内部空洞を実質的に閉鎖するプラグと、
前記プラグに形成されたプラグ開口に取り付けられ、可撓性膜を貫通する少なくとも1つの細長い流路を有する安全弁と、
を有し、前記可撓性膜は、通気位置と封止位置との間を移動できて、前記内部空洞から生じる双方向流れを可能にする、車両部品。
【請求項13】
前記車両部品本体にはスリップヨークが含まれる、請求項12に記載の車両部品。
【請求項14】
前記車両部品本体にはブレーキ部品が含まれる、請求項12に記載の車両部品。
【請求項15】
前記少なくとも1つの細長い流路は少なくとも1つのスリットからなる、請求項12に記載の車両部品。
【請求項16】
前記少なくとも1つのスリットにより、一対の可動性フラップが形成され、前記フラップは、前記封止位置にある場合に互いに接触し、前記可撓性膜が前記通気位置にある場合に、前記プラグ開口に対して内側または外側に移動して互いに接触しない、請求項15に記載の車両部品。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−21747(P2011−21747A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−146373(P2010−146373)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(501050690)アーヴィンメリター テクノロジー エルエルスィー (29)
【Fターム(参考)】