説明

車体下部構造

【課題】荷物用スペースと乗員用スペースを確保することのできる車体構造を提供する。
【解決手段】車体の前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム10,10と、前記サイドフレーム10,10に連結されてサスペンション13,13を支持するサブフレーム12,12と、サブフレーム12,12よりも下方に設けられて車体の下面の少なくとも一部を形成するアンダーカバー20と、アンダーカバー20の上面に設けられて、車体の前後方向に延びる補強部材22,22とを設け、補強部材22,22を、前記アンダーカバー20が当該補強部材22,22の下面に支持された状態で前記サイドフレーム10,10に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向に延びる左右一対のサイドフレームとサスペンションを支持するサブフレームとを備えた車体下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体下部構造については、車体下方における空力特性の向上等を目的として、種々の改良がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中空の上下二重構造を有するとともに下壁が略平坦面に形成されたアンダーカバーによって車体前部のエンジンルームの下方が覆われた構造が開示されている。この構造では、アンダーカバーの下壁が平坦であることで車体の下方の流れが整流されており車体前部に発生するダウンフォースを増大させることができる。しかも、アンダーカバーが二重構造であって、ダウンフォースの増大に対抗可能な面剛性が確保されており、アンダーカバーの振動等を抑制しつつ走行安定性を改善することができる。
【特許文献1】特開2000−190873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の車体下部構造については、前記のような空力特性の向上に加えて、走行安定性のより一層の向上および衝突時等における乗員の保護等を目的として車体自体の剛性の向上も求められている。しかしながら、前記従来の構造では、単にアンダーカバーの剛性が高められるだけである。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構成でアンダーカバーの剛性に加えて車体自体の剛性を高めることのできる車体下部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、車体の前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、前記サイドフレームに連結されてサスペンションを支持するサブフレームと、前記サブフレームよりも下方に設けられて車体の下面の少なくとも一部を形成するアンダーカバーと、前記アンダーカバーの上面に設けられて、車体の前後方向に延びる補強部材とを備え、前記補強部材は、前記アンダーカバーが当該補強部材の下面に支持された状態で前記サイドフレームに支持されていることを特徴とする車体下部構造を提供する(請求項1)。
【0007】
この構造によれば、アンダーカバーの上面に前記補強部材が設けられているため、アンダーカバーによる車体下方の整流効果を維持しつつアンダーカバーの剛性を高めることができる。しかも、前記補強部材が前記サイドフレームに支持されており、サイドフレームひいては車体自体の剛性を高めることができる。特に、前記補強部材が前後方向に延びるものであり、車両の前後方向の衝突に対して乗員等をより確実に保護することができる。
【0008】
さらに、本構造は、前記アンダーカバーの上面に設けられた補強部材をサイドフレームに支持するという簡単な構成をとっており、車体に対してアンダーカバーと補強部材とを取り付けるだけでよい。そのため、プラットフォームが同じ車に対して車体あるいはアンダーカバー等を設計変更することなく容易に対応することができ、コストを削減することが可能となる。
【0009】
また、本発明において、前記補強部材を前記サイドフレームに支持する支持部材を備え、前記支持部材は、前記補強部材から当該補強部材の上方に位置する前記サイドフレームまで延びる形状を有するのが好ましい(請求項2)。
【0010】
このようにすれば、上方に設けられたサイドフレームに対して前記補強部材を容易に支持することができる。
【0011】
本車体下部構造の具体的な位置は特に限定されるものではないが、例えば、前記アンダーカバーが車体前部に設けられたエンジンの下方を覆う位置に配設されている場合が挙げられる(請求項3)。
【0012】
この場合には、アンダーカバーによりエンジンを保護することができる。
【0013】
また、前記アンダーカバーが、車体後部に設けられた燃料タンクおよびサイレンサの下方を覆う位置に配設されており、このアンダーカバーの後端部が車体後部に設けられたバンパーフェースに支持されている場合が挙げられる(請求項4)。
【0014】
この場合には、アンダーカバーにより燃料タンクおよびサイレンサを保護することができる。また、この場合には、アンダーカバーを前記バンパーフェースによってより安定して支持することができる。
【0015】
また、本発明において、車体の左右両側辺部にそれぞれ配設されて車体前後方向に延びる一対のサイドシルと、車室の下面を構成するフロアパネルの左右方向中央付近において上方に突出するように形成された車体前後方向に延びるフロアトンネルと、前記フロアトンネル内に設けられて車体前後方向に延びるフロアトンネルメンバと、前記フロアパネルの下方に設けられて、車体の下面の少なくとも一部を形成するサブアンダーカバーと、前記サブアンダーカバーの上面に設けられるサブ補強部材とを備え、前記サブ補強部材は、前記サブアンダーカバーが当該サブ補強部材の下面に支持された状態で、前記サイドシルおよび前記フロアトンネルメンバの少なくとも一方に支持されているのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このようにすれば、サブアンダーカバーによりフロアパネル下方の流れを整流することができるとともに、サブアンダーカバーによりフロアパネルが保護されることでこのフロアパネルの膜振動を抑制することができる。しかも、この構造では、前記サブ補強部材が車体を構成するサイドシルあるいはフロアトンネルメンバに支持されており車室付近における車体の剛性を高めることができる。
【0017】
ここで、前記サブ補強部材は、車体の左右方向に延びる形状を有する左右方向補強部材を含み、当該左右方向補強部材の左右方向の一端が前記サイドシルに支持されるとともに、他端が前記フロアトンネルメンバに支持されているのが好ましい(請求項6)。
【0018】
このようにすれば、前記左右方向補強部材によって側突時などにおける車室内の変形を効果的に抑制できるとともに、車体のねじり剛性の強度を高めることができる。
【0019】
また、本発明において、前記サブ補強部材が、車体の前後方向に延びる形状を有する前後方向補強部材を含むのが好ましい(請求項7)。
【0020】
このようにすれば、車体前後方向の剛性をより一層高めることができ、前後突時における車室内の変形を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成で車体下方の流れを整流しつつアンダーカバーおよび車体自体の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は本発明に係る車体下部構造を備えた車両1の概略底面図を示したものであり、図2は図1のII−II線における概略断面図である。
【0024】
前記車両1は、図2に示すように、その前部にエンジン3が収容されたエンジンルーム2が設けられている車両であって、車室の下面を構成するフロアパネル5上には前後2列のシート(前部シート6aと後部シート6b)が設けられている。前記フロアパネル5は後部シート6bの下方で上方にキックアップしており、このフロアパネル5には、上方に突出する立壁5aより後方においてキックアップ部5bが形成されている。このキックアップ部5bの下方には、燃料タンク7とサイレンサ8とが設けられている。
【0025】
前記車両1の下部には、図1に示すように、車体の一部を構成するフレームとして、前から順にフロントサイドフレーム10,10、フロアフレーム18,18、リヤサイドフレーム110,110がそれぞれ設けられている。これら各フレーム10,18,110はいずれも前後方向に延びる形状を有しており、それぞれ左右対称に設けられている。前記フロントサイドフレーム10,10は主に前記エンジンルーム2の下面に設けられている。前記フロアフレーム18,18は前記フロントサイドフレーム10,10の後端に連結されて、前記立壁5aまで延びている。前記リヤサイドフレーム110,110は前記キックアップ部5bの下面に設けられている。
【0026】
また、前記車両1の下部には、前記各フレーム10,18,110の下方に、フロントアンダーカバー(アンダーカバー)20、リヤアンダーカバー(アンダーカバー)120、第1サブアンダーカバー(サブアンダーカバー)220および第2サブアンダーカバー(サブアンダーカバー)320が、それぞれ設けられている。これらカバー20,120,220,320は略水平方向に延びて、車体の所定部分の下面をそれぞれ覆うものである。各カバー20,120,220,320の上面には、フロント補強部材(補強部材)22、リヤ補強部材(補強部材)122、第1サブ補強部材(サブ補強部材、左右方向補強部材)222、第2サブ補強部材(サブ補強部材、左右方向補強部材)322がそれぞれ固定されている。
【0027】
具体的には、前記エンジンルーム2の下方を覆う位置に前記フロントアンダーカバー20が設けられており、このフロントアンダーカバー20の上面に左右一対のフロント補強部材22,22が固定されている。また、前記キックアップ部5bの下方を覆う位置に前記リヤアンダーカバー120が設けられており、このリヤアンダーカバー120の上面に左右一対のリヤ補強部材122,122が固定されている。また、前記フロアパネル5のうち前記キックアップ部5bより前側の部分の下方を覆う位置に前記第1サブアンダーカバー220および第2サブアンダーカバー320が車幅方向に並んだ状態で設けられており、前後一対の第1サブ補強部材222,222が前記第1サブアンダーカバー220の上面に、前後一対の第2サブ補強部材322,322が前記第2サブアンダーカバー320の上面にそれぞれ固定されている。
【0028】
前記フロントアンダーカバー20、リヤアンダーカバー120、第1サブアンダーカバー220、第2サブアンダーカバー320は、略平板状であり、例えば合成樹脂からなる。本車両1では、車体の下面がこれら水平方向に延びる略平板状のカバー20,120,220,320で覆われることで、車体の下方の流れが整流されて車体に発生するダウンフォースを増大させることができる。前記フロントアンダーカバー20の例を図3に示す。
【0029】
前記フロント補強部材22、リヤ補強部材122、第1サブ補強部材222,第2サブ補強部材322は、互いに同様の構造を有しており、例えば図3に示すように、略コ字断面を有して所定方向に延びる金属部材からなる。本車両1では、これら補強用の部材22,122,222,322が各カバー20,120,220,320の上面に沿って固定されることで各カバー20,120,220,320の剛性が高められており、各カバー20,120,220,320の変形等が抑制されている。ここで、各補強用の部材22,122,222,322は、例えば図3に示すように、ボルト90により各カバー20,120,220,320の上面に固定されている。
【0030】
前記カバー20,120,220,320および補強用の部材22,122,222,322がそれぞれ取り付けられた各部分の詳細な構造について次に説明する。
【0031】
前記フロントアンダーカバー20が取り付けられたエンジンルーム2付近の底面図を図4に示す。また、図4に対して前記フロントアンダーカバー20およびフロント補強部材22を取り外した状態を図5に示す。これらの図に示すように、エンジンルーム2には、前述のように車体の一部を構成する左右一対のフロントサイドフレーム(サイドフレーム)10,10と、フロントサスペンションと、サブフレーム12とが設けられている。
【0032】
前記フロントサイドフレーム10,10は、前記エンジン3の左右外側の位置でそれぞれ互いに平行な状態で車両前後方向に伸びるとともに、図2に示すように、後方に向けて水平に延びた後下方に湾曲する形状を有している。そして、これらフロントサイドフレーム10,10は、各下端において前記フロアフレーム18,18にそれぞれ連結している。
【0033】
前記サブフレーム12は、左右の前輪4a,4aにそれぞれ取り付けられたフロントサスペンションを支持するものである。本実施形態では、図4等に示すように、エンジンルーム2の下面の外周に沿ってフレームが配置されるペリメーターフレーム形状のサブフレーム12が用いられており、このサブフレーム12の左右両端部分により左右各フロントサスペンションのアーム13,13がそれぞれ支持されている。このサブフレーム12は、その前端が前記フロントサイドフレーム10の前端に連結され、その後端が前記フロアパネル5に連結されることで、前記フロントサイドフレーム10,10の下方に、これらフロントサイドフレーム10,10と略平行に前後方向に延びるように固定されている。
【0034】
前記フロントアンダーカバー20および前記フロント補強部材22は、前記サブフレーム12のさらに下方に設けられている。
【0035】
前記フロントアンダーカバー20は、略正方形の板状部材であって前記エンジン3の下方を全体的に覆うように広がっている。具体的には、このフロントアンダーカバー20は、車両1の前端に設けられたフロントバンパー9の後端から前記サブフレーム12の後端まで延びるとともに、前記フロントサイドフレーム10,10間にわたって延びており、路面から飛散した石等が前記エンジン3に衝突するのを回避してエンジン3の損傷を抑制することができるよう構成されている。このフロントアンダーカバー20は、その前端において前記フロントバンパー9にボルト92で固定されている。また、このフロントアンダーカバー20は、前述のようにフロント補強部材22,22の下面に固定されており、このフロント補強部材22,22を介して後述するように前記フロントサイドフレーム10,10に支持されている。
【0036】
前記左右一対のフロント補強部材22,22は、前記フロントバンパー9の後端から前記フロントサイドフレーム10,10の後端まで水平に延びる形状を有し、平面視で前記各フロントサイドフレーム10,10にそれぞれ沿うように配置されている。これらフロント補強部材22,22は、その前端において前記フロントバンパー9にボルト92で固定されているとともに、第1ブラケット(支持部材)24,24および第2ブラケット(支持部材)25,25により、前記フロントサイドフレーム10,10にそれぞれ固定されている。
【0037】
前述のように、前記フロントサイドフレーム10,10は後端に向かうに従って下方に湾曲する一方、前記フロント補強部材22,22はフロントアンダーカバー20の上面に沿って水平に延びており、フロントサイドフレーム10,10とフロント補強部材22,22とは、前側において上下方向に離間する一方、後方において近接している。前記第1ブラケット24,24は、このフロントサイドフレーム10,10とフロント補強部材22,22とが互いに上下方向に離間する部分に設けられており、前記第2ブラケット25はこれらが互いに近接する部分に設けられている。
【0038】
前記第1ブラケット24近傍の拡大図を図6の(a)に、図6の(a)のVI−VI線断面図を図6の(b)に示す。これらの図に示すように、第1ブラケット24は、本体部24aと、この本体部24aの上下両端部に設けられたフランジ部24b,24cとからなり、全体として前記フロント補強部材22から前記フロントサイドフレーム10まで延びる形状を有している。前記本体部24aは上下方向に延びる柱状の部材であり比較的高い剛性を有している。この第1ブラケット24は、上端に設けられた前記フランジ部24bがボルト94等により前記フロントサイドフレーム10の下面に固定され、下端に設けられた前記フランジ部24cがボルト94等により前記フロント補強部材22の上面に固定されることで、フロントサイドフレーム10とフロント補強部材22とを連結する。
【0039】
前記第2ブラケット25付近の拡大図を図7の(a)に、図7の(a)のVII−VII線断面図を図7の(b)に示す。これらの図に示すように、第2ブラケット25は、板状の固定板25aと、この固定板25aから前方に突出する囲み部25bとからなる。前記囲み部25bは、中空の角パイプ形状を有しており、その内側に前記フロント補強部材22の後端を挿入できるようになっている。
【0040】
前記第2ブラケット25は、前記固定板25aが前記フロントサイドフレーム10の側面に沿い、前記囲み部25bが前方に向けて突出するように、このフロントサイドフレーム10にボルト94等で取り付けられる。そして、この第2ブラケット25は、前記フロント補強部材22の後端が前記囲み部25b内に挿入されてボルト25c等によりこの囲み部25bに固定されることで、フロント補強部材22とフロントサイドフレーム10とを連結する。
【0041】
このようにして前記第1ブラケット24と第2ブラケット25とにより前記フロント補強部材22,22とフロントサイドフレーム10,10とがそれぞれ連結されることで、これらフロント補強部材22,22およびフロント補強部材22,22に固定された前記フロントアンダーカバー20は、前記フロントサイドフレーム10,10に固定される。
【0042】
以上のように、本車両1の車体前部には上方から順に比較的剛性の高い部材である、前記フロントサイドフレーム10、前記サブフレーム12、前記フロント補強部材22がそれぞれ略平行に設けられており、これらの部材によってこの車体前部の剛性が高められている。特に、前記各ブラケット24,25により、前記フロント補強部材22およびフロントアンダーカバー20と前記フロントサイドフレーム10すなわち車体とが連結されており、この連結構造によって車体自体の剛性が高められている。また、本車両1では、前記フロント補強部材22が前後方向に延びる形状を有しており、前記前後方向に延びるフロントサイドフレーム10およびサブフレーム12に加えてこのフロント補強部材22によって前突時における車体の変形が効果的に抑制されるので、乗員をより確実に保護することが可能となる。
【0043】
ここで、前記フロント補強部材22には、図3に示すように、前記第1ブラケット24、第2ブラケット25とをそれぞれ連結するためのボルト94を挿通するための複数のボルト用孔22a,22bが形成されている。
【0044】
前記リヤアンダーカバー120が取り付けられた前記キックアップ部5b付近の底面図を図8に示す。この図に示すように、キックアップ部5bの下方には、前述のように車体の一部を構成する左右一対のリヤサイドフレーム(サイドフレーム)110,110と、リヤサスペンションとが設けられている。
【0045】
前記リヤサイドフレーム110,110は、後方に向けて、左右内側かつ上方に向けて湾曲した後、互いに平行な状態で水平に延びる形状を有している。前記燃料タンク7およびサイレンサ8は平面視でこれらリヤサイドフレーム110,110間に設けられている。
【0046】
本実施形態では、前記リヤサスペンションとしてトーションビーム式サスペンションが用いられており、左右方向に延びるトーションビーム112が、リヤサスペンションの各アーム113,113を支持するサブフレームとして機能している。このトーションビーム112は、その左右両端が各リヤサイドフレーム110,110の底面に連結されることで、各リヤサイドフレーム110,110の下方に固定されている。
【0047】
前記リヤアンダーカバー120および前記リヤ補強部材122は、前記トーションビーム112のさらに下方に設けられている。
【0048】
前記リヤアンダーカバー120は、略正方形の板状部材であって前記キックアップ部5bの下方を全体的に覆うように広がっている。具体的には、このリヤアンダーカバー120は、前記キックアップ部5bの前端にあたる前記立壁5aから車両1の後端に設けられたリヤバンパーフェース(バンパーフェース)109まで延びるとともに、前記リヤサイドフレーム110,110間にわたって延びており、前記燃料タンク7およびサイレンサ8の下方を覆い、これら燃料タンク7およびサイレンサ8に路面から飛散した石等が衝突して損傷するのを抑制できるよう構成されている。このリヤアンダーカバー120は、その後端において前記リリヤバンパーフェース109に固定用プレート80を介して固定されている。また、このリヤアンダーカバー120は、前述のようにリヤ補強部材122,122の下面に固定されており、このリヤ補強部材122,122を介して後述するようにフロアパネル5およびリヤサイドフレーム110,110に支持されている。
【0049】
前記左右一対のリヤ補強部材122,122は、前記フロアフレーム18,18の後端から前記リヤサイドフレーム110,110の後端まで水平に延びる形状を有し、平面視で前記各リヤサイドフレーム110,110にそれぞれ略沿うように配置されている。これらリヤ補強部材122,122は、各前端が第3ブラケット124,124により前記フロアフレーム18に固定されているとともに、後方において第4ブラケット(支持部材)125,125により前記リヤサイドフレーム110,110にそれぞれ固定されている。
【0050】
前記第3ブラケット124付近の拡大図を図9の(a)に、図9の(a)のIX−IX線断面図を図9の(b)に示す。これらの図に示すように、第3ブラケット124は、板状の固定板124aと、この固定板124aに対してほぼ垂直方向に突出する囲み部124bとからなる。前記囲み部124bは中空の角パイプ形状を有しており、その内側に前記リヤ補強部材122の前端を挿入できるようになっている。
【0051】
前記第3ブラケット124は、前記固定板124aが前記フロアフレーム18の後端に沿い前記囲み部124bが後方に向けて突出するように、前記フロアフレーム18の後端にボルト94等で取り付けられる。そして、この第3ブラケット124は、前記リヤ補強部材122の前端が前記囲み部124b内に挿入されてボルト124c等によりこの囲み部124b内に固定されることで、リヤ補強部材122とフロアフレーム18とを連結する。この連結により、前記リヤ補強部材122,122およびこれらリヤ補強部材122に固定された前記リヤアンダーカバー120は前記フロアフレーム18に支持される。
【0052】
前記第4ブラケット125は、前記第1ブラケット24と同様の構造を有しておりその詳細な説明は省略するが、全体として前記リヤ補強部材122から前記リヤサイドフレーム110まで延びる形状を有しており、前記リヤサイドフレーム110の下面と前記リヤ補強部材122の上面とを連結する。この連結により、前記リヤ補強部材122,122およびこれらリヤ補強部材122に固定された前記リヤアンダーカバー120は前記リヤサイドフレーム110に支持される。
【0053】
このように、本車両1の車体後部には上方から順に比較的剛性の高い部材である、前記リヤサイドフレーム110、前記トーションビーム112、前記リヤ補強部材122がそれぞれ設けられており、これらの部材よってこの車体後部の剛性が高められている。特に、前記第4ブラケット125により前記リヤ補強部材122およびリヤアンダーカバー120と前記フロアフレーム18および前記リヤサイドフレーム110すなわち車体とが連結されており、この連結構造によって車体自体の剛性がより一層高められている。また、本車両1では、前記リヤ補強部材122は前後方向に延びる形状を有しており、前記前後方向に延びるリヤサイドフレーム110に加えてこのリヤ補強部材122によっても前記後突時における車体の変形が効果的に抑制されるので、乗員をより確実に保護することが可能となる。
【0054】
図10に、図2のX−X線断面図であって、前記第1サブアンダーカバー220および第2サブアンダーカバー320が取り付けられた前記フロアパネル5の下面の構造を示す図を示す。この図に示すように、車体の左右両側辺部には、それぞれ前後方向に延びるサイドシル14,14が設けられている。前記フロアパネル5は、これらサイドシル14,14間に広がる形状を有している。このフロアパネル5の左右方向中央には上方に突出するフロアトンネル15が形成されている。前記フロアトンネル15は前後方向に延びる形状を有しており、その内側にはプロペラシャフト70が収容されている。このフロアトンネル15の内側には、前後方向に延びる左右一対のトンネルメンバ16,16および前後方向に延びる左右一対のフロアトンネルメンバ17,17が固定されている。前記トンネルメンバ16,16はフロアトンネル15の上壁に固定されており、前記フロアトンネルメンバ17,17はフロアトンネル15の下端に固定されている。前記フロアトンネルメンバ17,17は前記フロアパネル5から下方に向けて突出する形状を有している。また、前記フロアパネル5の下方の、前記フロアトンネル15と前記各サイドシル14,14との間には、前記車体の一部を構成するフロアフレーム18,18が配置されている。
【0055】
前記第1サブアンダーカバー220、第2サブアンダーカバー320、前記第1サブ補強部材222および前記第2サブ補強部材322は、前記フロアフレーム18,18のさらに下方に設けられている。
【0056】
前記第1サブアンダーカバー220および第2サブアンダーカバー320は、それぞれ略長方形の板状部材である。前記第1サブアンダーカバー220は前記フロアパネル5のうち前記キックアップ部5bより前方の右側部分の下方を全体的に覆うように広がっており、前記第2サブアンダーカバー320は前記フロアパネル5のうち前記キックアップ部5bより前方の左側部分の下方を全体的に覆うように広がっている。具体的には、第1サブアンダーカバー220は、前記フロアパネル5の前端から前記立壁5aまで延びるとともに、右側に設けられたサイドシル14aと右側に設けられた前記フロアトンネルメンバ17aとの間にわたって延びており、第2サブアンダーカバー320は、前記フロアパネル5の前端から前記立壁5aまで延びるとともに、左側に設けられたサイドシル14bと左側に設けられた前記フロアトンネルメンバ17bとの間にわたって延びている。これら第1サブアンダーカバー220および第2サブアンダーカバー320は、前述のようにそれぞれ前記第1サブ補強部材222,222および前後一対の第2サブ補強部材322,322の下面に固定されている。
【0057】
前記前後一対の第1サブ補強部材222,222は、それぞれ前記右側のフロアトンネルメンバ17aから前記右側のサイドシル14aまで左右方向に水平に延びる形状を有している。これら第1サブ補強部材222,222は、前後方向に互いに略平行に配置されており、第5ブラケット224,224により各右端が前記サイドシル14aにそれぞれ固定されているとともに、第6ブラケット225,225により各左端が前記フロアトンネルメンバ17aにそれぞれ固定されている。一方、前記前後一対の第2サブ補強部材322,322は、それぞれ前記左側のフロアトンネルメンバ17bから前記左側のサイドシル14bまで左右方向に水平に延びる形状を有している。そして、これら第2サブ補強部材322,322は、前後方向に互いに略平行に配置されており、第7ブラケット324,324により各左端が前記サイドシル14bにそれぞれ固定されているとともに、第8ブラケット325,325により各右端が前記フロアトンネルメンバ17bにそれぞれ固定されている。
【0058】
前記第5ブラケット224は、前記第3ブラケット124と同様の構造を有しており、板状の固定板224aと、この固定板224aに対してほぼ垂直に突出する角パイプ状の囲み部224bとからなる。
【0059】
前記第5ブラケット224は、前記固定板224aが前記サイドシル14aに沿い前記囲み部224bが左右中央に向けて突出するように、前記サイドシル14aにボルト94等で取り付けられる。そして、この第5ブラケット224は、前記第1サブ補強部材222の右端が前記囲み部224b内に挿通されてボルト224c等によりこの囲み部224b内に固定されることで、第1サブ補強部材222とサイドシル14aとを連結する。この連結により、前記第1サブ補強部材222およびこの第1サブ補強部材222に固定された前記第1サブアンダーカバー220は前記サイドシル14aに固定される。
【0060】
ここで、前記第6ブラケット225、前記第7ブラケット324および第8ブラケット325は、それぞれ前記第5ブラケット224と同様の構造を有しており、前記第6ブラケット225は前記フロアトンネルメンバ17aに固定されて前記第1サブ補強部材222とフロアトンネルメンバ17aとを連結し、前記第7ブラケット324は前記サイドシル14bに固定されて前記第2サブ補強部材322とサイドシル14bとを連結し、前記第8ブラケット325は前記フロアトンネルメンバ17bに固定されて前記第2サブ補強部材322とフロアトンネルメンバ17bとを連結する。
【0061】
このようにして、本車両1では、前記各ブラケット224,225,324,325により前記第1サブ補強部材222および第2サブ補強部材322が前記サイドシル14および前記フロアトンネルメンバ17すなわち車体に固定され、これら前記第1サブ補強部材222および第2サブ補強部材322によって車体自体の剛性がより一層高められることになる。特に、これら第1サブ補強部材222および第2サブ補強部材322は左右方向に延びており、本車両1では、車体のねじり剛性が高められるとともに、側突時における車体の変形が効果的に抑制されて、乗員をより確実に保護することが可能となる。また、前記フロアパネル5は比較的薄い板状部材で構成されており走行時に膜振動する場合があるが、前記のようにフロアパネル5の下方にサブアンダーカバー220,320がそれぞれ取り付けられることでこの膜振動を抑制することが可能となる。
【0062】
以上のように、本車両1では、フロントアンダーカバー20およびリヤアンダーカバー120の上面にフロント補強部材22およびリヤ補強部材122をそれぞれ設けるとともに、これらフロント補強部材22およびリヤ補強部材122を前記フロントサイドフレーム10およびリヤサイドフレーム110にそれぞれ固定することで、車体下方の整流効果を維持しつつフロントアンダーカバー20およびリヤアンダーカバー120の剛性に加えて車体自体の剛性を高めることができる。
【0063】
特に、本車両1では、前記フロントアンダーカバー20の上面に設けられたフロント補強部材22をフロントサイドフレーム10に支持するという簡単な構成をとっており、フロントサイドフレーム10の形状等のプラットフォームが同じ車であれば異なる車種の車であっても、図3に示すフロントアンダーカバー20とフロント補強部材22のセットをその車のフロントサイドフレーム10に取り付けるだけで対応することができる。すなわち、異なる車種毎にプラットフォームあるいはフロントアンダーカバー20等を設計変更することなく容易に対応することができ、コストを削減することが可能となる。この効果は、前記リヤアンダーカバー120およびリヤ補強部材122の取り付けに関しても同様に得ることができる。
【0064】
ここで、前記実施形態では、アンダーカバーとしてフロントアンダーカバー20を前記エンジン3の下方に設けるとともに、アンダーカバーとしてリヤアンダーカバー120を前記燃料タンク7およびサイレンサ8の下方に設けた場合について示したが、アンダーカバーを設ける位置はこれらに限らない。フロントアンダーカバー20とリヤアンダーカバー120の一方のみを設けるようにしてもよい。ただし、フロントアンダーカバー20をエンジン3の下方に設ければ、エンジン3を保護することができ、リヤアンダーカバー120を燃料タンク7およびサイレンサ8の下方に設ければ、これら燃料タンク7およびサイレンサ8を保護することができる。
【0065】
また、前記第1,第2サブアンダーカバー220,320および第1,第2サブ補強部材222,322は省略可能である。ただし、フロアパネル5の下方にこれらサブアンダーカバー220,320を設けておけば、フロアパネル5の下方の整流効果を維持することができるとともに、車体の剛性をより一層高めることができる。さらに、フロアパネル5を保護してこのフロアパネル5の膜振動を抑制することが可能となる。なお、前記第1、第2サブ補強部材222,322の具体的構成は前記に限らない。例えば、図12に示すように、サブ補強部材として、前後方向に延びる前後方向補強部材522,622を前記サイドシル14あるいはフロアトンネルメンバ17に固定するようにしてもよい。この場合には、車体の前後方向の剛性を高めることができる。さらに、サブ補強部材を左右方向および前後方向どちらにも設けるようにしてもよい。
【0066】
また、前記フロント補強部材22を前記フロントサイドフレーム10に固定するための具体的構造、リヤ補強部材122を前記リヤサイドフレーム110あるいは前記フロアフレーム18に固定するための具体的構造、前記第1,第2サブ補強部材222,322を前記サイドシル14あるいは前記フロアトンネルメンバ17に固定するための具体的構造は前記に限らない。例えば、前記第1ブラケット24等の代わりに図13に示すブラケット724を用いてもよい。すなわち、前記フロント補強部材22を貫通して前記フロントアンダーカバー20から前記フロントサイドフレーム10まで延びる形状を有するこのブラケット724を用い、このブラケット724の上端部分をフロントサイドフレーム10に固定することで、前記フロント補強部材22を前記フロントアンダーカバー20の上面に支持した状態でフロントアンダーカバー20をフロントサイドフレーム10に固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る車体下部構造を備えた車両の概略底面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示すフロントアンダーカバーの概略斜視図である。
【図4】エンジンルーム2付近の底面図である。
【図5】図4に対してフロントアンダーカバーおよびフロント補強部材を取り外した状態を示す図である。
【図6】(a)第1ブラケット近傍の拡大図である。(b)(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】(a)第2ブラケット近傍の拡大図である。(b)(a)のVII−VII線断面図である。
【図8】キックアップ部付近の底面図である。
【図9】(a)第3ブラケット近傍の拡大図である。(b)(a)のIX−IX線断面図である。
【図10】図2のX−X線断面図である。
【図11】サブ補強部材の他の実施形態を示す図である。
【図12】第1ブラケットの他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
3 エンジン
5 フロアパネル
7 燃料タンク
8 サイレンサ
10 フロントサイドフレーム(サイドフレーム)
12 サブフレーム
15 フロアトンネル
17 フロアトンネルメンバ
20 フロントアンダーカバー(アンダーカバー)
22 フロント補強部材(補強部材)
24 第1ブラケット(支持部材)
25 第2ブラケット(支持部材)
109 リヤバンパーフェース(バンパーフェース)
110 リヤサイドフレーム(サイドフレーム)
112 トーションビーム(サブフレーム)
120 リヤアンダーカバー(アンダーカバー)
124 第3ブラケット
125 第4ブラケット(支持部材)
220 第1サブアンダーカバー(サブアンダーカバー)
222 第1サブ補強部材(左右方向補強部材)
320 第2サブアンダーカバー(サブアンダーカバー)
322 第2サブ補強部材(左右方向補強部材)
522 前後方向補強部材
622 前後方向補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、
前記サイドフレームに連結されてサスペンションを支持するサブフレームと、
前記サブフレームよりも下方に設けられて車体の下面の少なくとも一部を形成するアンダーカバーと、
前記アンダーカバーの上面に設けられて、車体の前後方向に延びる補強部材とを備え、
前記補強部材は、前記アンダーカバーが当該補強部材の下面に支持された状態で前記サイドフレームに支持されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体下部構造であって、
前記補強部材を前記サイドフレームに支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記補強部材から当該補強部材の上方に位置する前記サイドフレームまで延びる形状を有することを特徴とする車体下部構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車体下部構造であって、
車体前部に設けられたエンジンを備え、
前記アンダーカバーが前記エンジンの下方を覆う位置に配設されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の車体下部構造であって、
車体後部にそれぞれ設けられた燃料タンクとサイレンサとバンパーフェースとを備え、
前記アンダーカバーが前記燃料タンクおよびサイレンサの下方を覆う位置に配設されるとともに、
前記アンダーカバーの後端部が前記バンパーフェースに支持されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の車体下部構造であって、
車体の左右両側辺部にそれぞれ配設されて車体前後方向に延びる一対のサイドシルと、
車室の下面を構成するフロアパネルの左右方向中央付近において上方に突出するように形成された車体前後方向に延びるフロアトンネルと、
前記フロアトンネル内に設けられて車体前後方向に延びるフロアトンネルメンバと、
前記フロアパネルの下方に設けられて、車体の下面の少なくとも一部を形成するサブアンダーカバーと、
前記サブアンダーカバーの上面に設けられるサブ補強部材とを備え、
前記サブ補強部材は、前記サブアンダーカバーが当該サブ補強部材の下面に支持された状態で、前記サイドシルおよび前記フロアトンネルメンバの少なくとも一方に支持されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車体下部構造であって、
前記サブ補強部材は、車体の左右方向に延びる形状を有する左右方向補強部材を含み、
当該左右方向補強部材の左右方向の一端が前記サイドシルに支持されるとともに、他端が前記フロアトンネルメンバに支持されていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項7】
請求項5または6に記載の車体下部構造であって、
前記サブ補強部材が、車体の前後方向に延びる形状を有する前後方向補強部材を含むことを特徴とする車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−286157(P2009−286157A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137658(P2008−137658)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】