説明

車体前部構造

【課題】メインフレーム前端部の支持剛性を向上した車体前部構造を提供する。
【解決手段】車室前部隔壁110から前方へ突き出しかつエンジンルームの左右側部にそれぞれ配置されたメインフレーム130と、車室前部隔壁におけるメインフレームとの接合部よりも上方かつ車幅方向外側の部分から前方へ突き出し、車両前方側の領域において前方側が後方側に対して下がりかつ車幅方向内側となるように傾斜して形成されたアッパフレーム140とを備える車体前部構造を、アッパフレームの前端部における車幅方向内側の側面部をメインフレームの車幅方向外側の側面部に結合した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車体の前部構造に関し、特にメインフレーム前端部の車体に対する支持剛性を向上したものに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の自動車の車体前部構造は、車室前部隔壁から前方へ突き出し、エンジンルームの左右にそれぞれ配置されたメインフレーム、及び、メインフレームに対して上方かつ車幅方向外側に配置されたアッパフレームを備えている。
メインフレームは、車両の前面衝突時にアコーディオン状に圧壊したり、屈曲変形することによって、エネルギを吸収して車室における加速度ピークを低減するようになっている。
【0003】
しかし、車両の衝突は必ずしも正確に前方から荷重が入力されるとは限らず、メインフレームの前端部に対して車幅方向や上下方向の荷重が同時に入力されることが通常である。このとき、メインフレームが車室との接合部(基部)を支点として倒れる(転ぶ)ようにして変形すると、メインフレームを想定通りに変形、破壊させてエネルギ吸収をすることが困難となってしまう。
【0004】
車体前部構造に関する従来技術として、例えば特許文献1には、アッパメンバ(アッパフレーム)を前下がりに形成し、アッパメンバの前端部とフロントサイドフレーム(メインフレーム)の前端部とを、車幅方向に延びた連結部材によって連結したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3974567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術によれば、ある程度はメインフレーム前端部の支持剛性を高めることができると考えられるが、メインフレームとアッパフレームとは平面視において略平行に配置されており、メインフレーム前端部に車幅方向の入力を受けた場合には、メインフレームとアッパフレームとが平行四辺形状に倒れる懸念がある。
本発明の課題は、メインフレーム前端部の支持剛性を向上した車体前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車室前部隔壁から前方へ突き出しかつエンジンルームの左右側部にそれぞれ配置されたメインフレームと、車室前部隔壁における前記メインフレームとの接合部よりも上方かつ車幅方向外側の部分から前方へ突き出し、車両前方側の領域において前方側が後方側に対して下がりかつ車幅方向内側となるように傾斜して形成されたアッパフレームとを備える車体前部構造であって、前記アッパフレームの前端部における車幅方向内側の側面部を前記メインフレームの車幅方向外側の側面部に結合したことを特徴とする車体前部構造である。
【0008】
請求項2の発明は、車体に対して揺動可能に取り付けられたサスペンションアームを備え、前記サスペンションアームの車体側取付部の少なくとも一部を、前記アッパフレームの前端部と前記メインフレームとの結合部近傍に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造である。
請求項3の発明は、前記アッパフレームの前端部と前記メインフレームとの結合部よりも車両後方側に設けられ、左右の前記メインフレーム間を連結する第1の連結部材と、前記メインフレームにおける前記第1の連結部材との接合箇所近傍と、前記アッパフレームとを連結する第2の連結部材とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)アッパフレームの前端部における車幅方向内側の側面部をメインフレームの車幅方向外側の側面部に結合したことによって、車両前部においてメインフレームとアッパフレームとがトラス構造に近似した構造を構成することから、メインフレーム先端部の支持剛性を高め、仮に車幅方向や上下方向の荷重が作用した場合であってもメインフレームの倒れを抑制し、車両の衝突時にメインフレームを設計意図に近い状態で変形、破壊させてエネルギ吸収能力を確保し、車両の前面衝突性能を向上できる。
(2)サスペンションアームの車体側取付部の少なくとも一部を、アッパフレームの前端部とメインフレームとの結合部近傍に配置したことによって、サスペンションアームの支持剛性を高め、コーナリング等によって車幅方向の荷重が作用した際のサスペンション取付部の変位を抑制し、サスペンションジオメトリの変化を防止して車両の走行性能を向上できる。
(3)アッパフレームの前端部とメインフレームとの結合部よりも車両後方側に設けられ、左右のメインフレーム間を連結する第1の連結部材と、メインフレームにおける第1の連結部材との接合箇所近傍と、アッパフレームとを連結する第2の連結部材とを備える構成とすることによって、左右のアッパフレーム及びメインフレームを順次結合し、車両前方側から見たときにU字状となる補剛構造体を形成することができる。この補剛構造体でメインフレームの中間部の支持剛性を高めることによって、メインフレームの先端部の変位をより低減し、上述した効果をよりいっそう向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した車体前部構造の実施例の斜視図である。
【図2】実施例の車体前部構造における車体本体及びクレードルの斜視図である。
【図3】実施例の車体前部構造における車体本体の斜視図である。
【図4】実施例の車体前部構造におけるクレードルの斜視図である。
【図5】図4のクレードルに排気管等を搭載した状態を示す斜視図である。
【図6】実施例の車体前部構造の平面図である。
【図7】図6のa−a部、b−b部、c−c部矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、メインフレーム前端部の支持剛性を向上した車体前部構造を提供する課題を、アッパフレームの前端部を下方かつ車幅方向内側へ傾斜させて形成するとともに、この側面部をメインフレームの側面部に直接接合することによって解決した。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を適用した車体前部構造の実施例について説明する。実施例の車体前部構造は、例えばフロントエンジンの乗用車等の自動車に適用されるものである。
車体前部構造は、車体本体100、クレードル200を有し、さらに、エンジンマウント310、排気管320、ステアリングギアボックス330、サスペンションアーム340等が取り付けられている。
【0013】
車体本体100は、例えば鋼板モノコック構造の車室を有するホワイトボディ(未艤装車体)であって、主に鋼板をプレス加工した部材を集成し、スポット溶接やレーザ溶接等によって接合して形成されている。
図1等に示すように、車体本体100は、トーボード110、フロアパネル120、メインフレーム130、アッパフレーム140、サスペンション支持部150、バンパビーム160、ラジエータアッパサポート170、ラジエータロワサポート180等を備えている。
【0014】
トーボード110は、図示しない車室(キャビン)前方に設けられ、車室とその前方のエンジンルームとを区画する隔壁である。
フロアパネル120は、車室の床面を構成する部分であって、トーボード110の下端部から車両後方側へ伸びている。
フロアパネル120の車幅方向における中央部には、車両前後方向に延びたフロアトンネル121が形成されている。フロアトンネル121は、上方に張り出して形成され、その内部(床下側)には、トランスミッション、プロペラシャフト、排気管の一部等が収容される。
【0015】
メインフレーム130は、エンジンルームの左右に設けられ車両の前後方向に略沿って延びた構造部材である。メインフレーム130は、略矩形の横断面を有する閉断面の梁状部材である。なお、本明細書等において、横断面とは梁状の部材をその長手方向と直交する平面で切って見た断面を示すものとする。メインフレーム130の前半部は、トーボード110の下部から車両前方側へ突き出して配置されている。メインフレーム130の後半部は、車幅方向から見た形状がS字状となるように湾曲し、トーボード110の下部からフロアパネル120の下面に沿って配置され、これらと溶接等によって結合されている。
【0016】
メインフレーム130は、クレードル200が結合される前側ブラケット131及び後側ブラケット132を備えている。前側ブラケット131及び後側ブラケット132は、メインフレーム130の前端部及び中間部にそれぞれ設けられ、メインフレーム130の下面部から下方へ突き出して形成されている。前側ブラケット131及び後側ブラケット132は、水平面で切って見た断面が略矩形状の閉断面となっている。
また、メインフレーム130の中間部における車幅方向外側の側面部には、必要に応じて大舵角転舵時における前輪との干渉を防止する逃げ凹部が形成される。
【0017】
アッパフレーム140は、トーボード110におけるメインフレーム130との結合箇所よりも上方かつ車幅方向外側の部分から車両前方側に延びた部材である。アッパフレーム140は、図示しないAピラーの基部から、図示しないフードの両側部に沿って配置されている。アッパフレーム140は、略矩形の横断面を有する閉断面の梁状部材である。
アッパフレーム140の中間部から後端部にかけての領域は、車両の前後方向に略沿って配置されている。この領域は、メインフレーム130に対して上方かつ車幅方向外側に配置されている。
アッパフレーム140の前端部近傍の領域は、前端部が下がりかつ車幅方向内側にオフセットするように、車両前後方向に対して傾斜して配置されている。
【0018】
図7(c)に示すように、アッパフレーム140の前端部における車幅方向内側の側面部は、メインフレーム130の車幅方向外側の側面部に結合されている。
また、図1等に示すように、この結合部の直前には、上述した前側ブラケット131が配置されている。
【0019】
サスペンション支持部150は、前輪用サスペンションであるマクファーソンストラット型サスペンションのストラット上端部を支持するブラケットを備えている。サスペンション支持部150は、図7(a)等に示すように、メインフレーム130とアッパフレーム140との間に、これらにわたして配置されている。また、サスペンション支持部150には、メインフレーム130とアッパフレーム140とを連結する図示しない閉断面部が形成されている。
サスペンション支持部150は、メインフレーム130とアッパフレーム140とを連結する本発明にいう第2の連結手段として機能する。
【0020】
バンパビーム160は、メインフレーム130の前端部に取り付けられ、車幅方向に略沿って延びた横梁状の部材であって、図示しないバンパフェイスの内側に配置されている。
ラジエータアッパサポート170及びラジエータロワサポート180は、図示しないラジエータコア及びエアコンディショナ用のコンデンサコアの上端部及び下端部を支持する部材である。
ラジエータアッパサポート170は、左右のアッパフレーム140の間にわたして設けられている。
ラジエータロワサポート180は、左右のメインフレーム130の前側ブラケット131の下端部間にわたして設けられている。
【0021】
クレードル200は、車体本体100のメインフレーム130の下側に取り付けられ、各種部品が搭載される構造部材(サブフレーム)である。また、クレードル200は、アッパフレーム140の先端部のメインフレーム130との接合部よりも後方で左右のメインフレーム130を連結する本発明にいう第1の連結部材として機能する。
図4等に示すように、クレードル200は、縦通メンバ210、前側横通メンバ220、後側横通メンバ230、連結部材240、前端部メンバ250、ロワメンバ260(図4には図示しない。図1等参照。)等を備えて構成されている。
【0022】
縦通メンバ210は、左右のメインフレーム130の下側にそれぞれ設けられ、車両前後方向に略沿って延びた部材である。縦通メンバ210の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。縦通メンバ210は、ブラケット211、前側アーム取付部212、後側アーム取付部213等を備えている。
ブラケット211は、縦通メンバ210の中間部から上方へ突き出して形成されている。ブラケット211の上端部には、メインフレーム130の後側ブラケット132の下端部が接続される。
前側アーム取付部212及び後側アーム取付部213は、縦通メンバ210の車幅方向外側の側面部に前後方向に離間して設けられている。前側アーム取付部212及び後側アーム取付部213には、サスペンションアーム340の前側ブッシュ341及び後側ブッシュ342がそれぞれ取り付けられる。
図4等に示すように、前側アーム取付部212は縦通メンバ210の中間部(メインフレーム130の前側ブラケット131との接合部近傍)に配置され、後側アーム取付部213は縦通メンバ210の後端部近傍に配置されている。
また、縦通メンバ210の後方の領域は、後端部が他の部分よりも高くなるように立ち上げられている。
【0023】
前側横通メンバ220は、車幅方向に略沿って延び、左右の縦通メンバ210を連結する部材である。前側横通メンバ220の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。前側横通メンバ220の縦通メンバ210との接合部は、ブラケット211の近傍に配置されている。
なお、このような構成とした結果、アッパフレーム140とメインフレーム130とをサスペンション支持部150により連結し、その下部において後側ブラケット132及びブラケット211によりメインフレーム130とクレードルの縦通メンバ210とを連結し、さらにその近傍で前側横通メンバ220により左右の縦通メンバ210を連結することができ、メインフレーム130の中間部近傍に、車両前方から見たときに略U字状となる連続した強固な補剛構造体が形成される。
【0024】
後側横通メンバ230は、車幅方向に略沿って延び、左右の縦通メンバ210を連結する部材である。後側横通メンバ230の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。後側横通メンバ230は、前側横通メンバ220の後方側に、前後方向に間隔を隔てて配置されている。後側横通メンバ230の縦通メンバ210との接合部は、後側アーム取付部213の近傍に配置されている。
これらの前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230の横断面形状は、中間部に対して縦通メンバ210との接合部付近が拡大されている。
また、前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230は、その中央部における下側に排気管320を通すため、中央部が持ち上がるように湾曲して形成されている。
【0025】
連結部材240は、車両の前後方向に略沿って延び、前側横通メンバ220の中間部と後側横通メンバ230の中間部との間を連結する部材である。連結部材の横断面形状は、略矩形状の閉断面となっている。連結部材240は、例えば車幅方向に離間して一対が設けられる。連結部材240の横断面形状は、中間部に対して前側横通メンバ220及び後側横通メンバ230との接合部付近が拡大されている。この閉断面の拡大は徐々にかつ連続的に行われ、その結果連結部材240の両端部は、テーパ状に広がって形成されている。
【0026】
前端部メンバ250は、左右の縦通メンバ210の先端部間を連結する横梁状の部材である。
【0027】
図1等に示すロワメンバ260は、縦通メンバ210の後部における下面部とフロアパネル120の下面に沿って配置されたメインフレーム130の下面部との間にわたして設けられる縦梁状の部材である。縦通メンバ210の後端部下面とロワメンバ260の上面部との間には隙間が形成され、ステアリングギアボックス330の両端部はこの隙間を通されている。
なお、縦通メンバ210、前側横通メンバ220、後側横通メンバ230、連結部材240、前端部メンバ250は、溶接等によって接合され1部品とされており、ロワメンバ260は、別体に形成され、ボルトナット等によって締結されている。
【0028】
エンジンマウント310は、図示しないエンジンを防振性を有するゴムを介して支持するものである。エンジンマウント310は、例えば左右一対設けられ、クレードル200の前側横通メンバ220の上面部における連結部材240との接合部近傍に固定されている。
本実施例では、エンジンは例えば縦置き搭載される下方排気の水平対向エンジンである。
【0029】
排気管320は、エンジン下部の排気ポートから排出される排ガスを車両後方側から排出するものである。
排気管320は、図5等に示すように、フランジ321、第1触媒コンバータ322、第2触媒コンバータ323等を備えて構成されている。また、排気管320は、エンジンから第2触媒コンバータ323まではエンジンの左右バンク毎に左右略対象に一対設けられ、第2触媒コンバータ323の後方側で合流している。
【0030】
フランジ321は、エンジンの排気ポートに接続される部分である。
第1触媒コンバータ322及び第2触媒コンバータ323は、それぞれアルミナ系等の担体に、触媒成分として白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属を担持させた三元触媒である。上流側に配置された第1触媒コンバータ322は、その上部がクレードル200における左右の連結部材240の間隔の空間部内に収容されている。また、下流側に配置された第2触媒コンバータ323は、フロアパネル120の下方に配置されている。
【0031】
ステアリングギアボックス330は、図示しないステアリングホイールの回転が図示しないステアリングシャフト等を介して入力され、この回転運動を車幅方向の往復運動に変換するラックアンドピニオン機構等を備えている。
ステアリングギアボックス330の左右端部には、それぞれタイロッド331が設けられている。
タイロッド331は、ステアリングギアボックス330内の図示しないステアリングラックと、左右前輪の図示しないハウジングに形成されたナックルアームとを連結する伝達軸である。タイロッド331は、ドライバによる操舵操作時にナックルアームを押し引きして前輪を操向するとともに、前輪からのステア反力をドライバ側に伝達する。
【0032】
サスペンションアーム340は、クレードル200に対して車両の前後方向に略沿った軸回りに揺動可能に取り付けられ、前輪のハウジング下端部をボールジョイントを介して支持するものである。
サスペンションアーム340は、車体側の端部に、前後方向に離間して配置された前側ブッシュ341及び後側ブッシュ342を備えている。
前側ブッシュ341及び後側ブッシュ342は、クレードル200における縦通メンバ210の前側アーム取付部212及び後側アーム取付部213にそれぞれボルトナット等を用いて取付られる。
【0033】
以上説明した実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)アッパフレーム140の前端部における車幅方向内側の側面部をメインフレーム130の車幅方向外側の側面部に結合したことによって、車両前部においてメインフレーム130とアッパフレーム140とがトラス構造に近似した構造を構成することから、メインフレーム130の先端部の支持剛性を高め、仮に車幅方向や上下方向の荷重が作用した場合であってもメインフレーム130の倒れを抑制し、車両の衝突時にメインフレーム130を設計意図に近い状態で変形、破壊させてエネルギ吸収能力を確保し、車両の前面衝突性能を向上できる。
(2)サスペンションアーム340の前側ブッシュ341を、アッパフレーム140の前端部とメインフレーム130との結合部近傍に配置したことによって、サスペンションアーム340の支持剛性を高め、コーナリング等によって車幅方向の荷重が作用した際の前側ブッシュ341の変位を抑制し、サスペンションジオメトリの変化を防止して車両の走行性能を向上できる。
(3)アッパフレーム140の前端部とメインフレーム130との結合部よりも車両後方側に設けられ、左右のメインフレーム間を連結する後側ブラケット132及びクレードル200と、メインフレーム130における後側ブラケット132近傍と、アッパフレーム140とを連結するサスペンション支持部150とを備える構成とすることによって、左右のアッパフレーム140及びメインフレーム130を順次結合し、車両前方側から見たときにU字状となる補剛構造体を形成することができる。この補剛構造体でメインフレーム130の中間部の支持剛性を高めることによって、メインフレーム130の先端部の変位をより低減し、上述した効果をよりいっそう向上することができる。
【0034】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、車体前部構造の詳細な構造は上述した実施例のものに限定されず、適宜変更することができる。例えば、各部材の形状、材質、製法等は適宜変更することができる。
また、サスペンション形式も実施例のようなマクファーソンストラット式に限らず、例えばダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式のサスペンションを適用することができる。この場合、アッパフレームとメインフレームとの間のサスペンション支持部はショックアブソーバ(ダンパ)の車体側取付部とすることができる。また、サスペンションアームをこれらの形式のサスペンションにおけるアッパアーム又はロワアームとすることができ、その支点の一部をアッパアームの先端部とメインフレームとの接合部近傍に設ける構成とすることができる。
【符号の説明】
【0035】
100 車体本体 110 トーボード
120 フロアパネル 121 フロアトンネル
130 メインフレーム 131 前側ブラケット
132 後側ブラケット 140 アッパフレーム
150 サスペンション支持部 160 バンパビーム
170 ラジエータアッパサポート 180 ラジエータロワサポート
200 クレードル 210 縦通メンバ
211 ブラケット 212 前側アーム取付部
213 後側アーム取付部 220 前側横通メンバ
230 後側横通メンバ 240 連結部材
250 前端部メンバ 260 ロワメンバ
310 エンジンマウント 320 排気管
321 フランジ 322 第1触媒コンバータ
323 第2触媒コンバータ 330 ステアリングギアボックス
331 タイロッド 340 サスペンションアーム
341 前側ブッシュ 342 後側ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部隔壁から前方へ突き出しかつエンジンルームの左右側部にそれぞれ配置されたメインフレームと、
車室前部隔壁における前記メインフレームとの接合部よりも上方かつ車幅方向外側の部分から前方へ突き出し、車両前方側の領域において前方側が後方側に対して下がりかつ車幅方向内側となるように傾斜して形成されたアッパフレームと
を備える車体前部構造であって、
前記アッパフレームの前端部における車幅方向内側の側面部を前記メインフレームの車幅方向外側の側面部に結合したこと
を特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
車体に対して揺動可能に取り付けられたサスペンションアームを備え、
前記サスペンションアームの車体側取付部の少なくとも一部を、前記アッパフレームの前端部と前記メインフレームとの結合部近傍に配置したこと
を特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記アッパフレームの前端部と前記メインフレームとの結合部よりも車両後方側に設けられ、左右の前記メインフレーム間を連結する第1の連結部材と、
前記メインフレームにおける前記第1の連結部材との接合箇所近傍と、前記アッパフレームとを連結する第2の連結部材とを備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264775(P2010−264775A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115184(P2009−115184)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】