説明

車体用、特に車両ルーフ用の複合部材およびその製造方法

本発明は、繊維のない外板(12)と、その外板を支持するために外板の内側に堆積される繊維強化された支持層(16)とを有する、車体用、特に車両ルーフ用の複合部材に関する。本発明によれば、支持層(16)は外板(12)から離れて面する側において、支持層を強化するための繊維強化された強化層(18)を設けられ、この強化層は支持層よりも高い繊維濃度を有する。さらに本発明は、かかる複合部材を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体、特に請求項1の前段ならびに対応する製造方法による車両ルーフ用の複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
その前段による複合部材は例えばDE10202911CIにより知られ、その複合部材は、外板と支持層の間の境界領域において、境界層が支持層内に設けられており、その支持層においては、複合部材に高度な温度安定性をもたらすために、繊維濃度が支持層の境界層の外部の領域と比較して増加されている。支持層は長い繊維を注入することによって強化されたポリウレタンからなり、境界層は、同様に長い繊維を注入することによって強化されたポリウレタンからなるか、または付加的なガラス繊維マットを埋め込むことによって実現される(established)。
【0003】
車両用のルーフ・モジュールを形成し、均一に繊維が分布する繊維強化されたポリウレタンの支持層を設けられた、該前段による付加的な複合部材が、例えばDE10205295A1、DE10207295A1、US6378208B1ならびにEP0995667A1およびEP1384655A2により知られており、後者の2つの文書にはまた、組織または織物および不織布を埋め込むことによってポリウレタン層を強化することについても述べられている。
【0004】
これらの複合部材の欠点は、支持層の十分な安定性を達成するためには、必要となる繊維濃度により、特に熱負荷の後に外板の表面に不均一が生じることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、外板の良好な表面品質ならびに支持層の十分な安定性を達成することができる、車体用、特に車両ルーフ用の複合部材を提供することである。さらには、かかる複合部材の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、本発明によれば、請求項1に記載の複合部材および請求項17に記載の製造方法によって解決される。本発明による解決法は、外板から離れて面する支持層の側において、繊維強化された強化層が支持層よりも高い繊維濃度をもたらされ、その結果、熱負荷の後にも外板の良好な表面品質を達成するために支持層の繊維濃度を低下させることができる一方で、それにもかかわらず強化層によって複合部材の十分な機械的安定性を実現することができるという利点を有する。
【0007】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項(sub−claims)によるものである。
【0008】
以下で、本発明について図に基づいて例示的な方式で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に、繊維のない外板12と、外板の内部表面上の、繊維14で強化された支持層16と、外板から離れて面する支持層16の表面上の、繊維強化された強化層18とを備える車体用の複合部材10を通じた断面を示す。この支持層は外板12の強化材として機能し、強化層18は支持層16の強化材として機能する。
【0010】
好ましくは、複合部材10は車両ルーフ、特にいわゆるルーフ・モジュールの一部分である。この場合、外板12は一体型ルーフ表面の外側を形成する。
【0011】
原則的には、強化層18は支持層16よりも高い繊維濃度を有している。図1の例の場合、これは、実質的に製造工程の間に支持層16上に配置されたガラス繊維マットとして強化層18を設けることによって達成される。
【0012】
支持層16の母材は好ましくはポリウレタンであり、これは長い繊維を注入することによって強化される。
【0013】
好ましくは、外板12は背面射出される(rear injected)か、または支持層16で裏張りされる(rear lined)。
【0014】
外板12は、例えば繊維のないプラスチック層または薄いアルミニウムもしくは鋼のシートである。
【0015】
好ましくは、繊維14は支持層16内で均一に分布しており、ここで支持層内の繊維濃度は10重量パーセント未満であることが好ましい。
【0016】
強化層18のガラス繊維マットは、好ましくは225g/mと450g/mの間の単位面積当たりの質量を有し、このガラス繊維マットには支持層16のポリウレタンが含浸される。
【0017】
繊維14は好ましくはガラス繊維である。
【0018】
複合部材10の製造は、例えば、下方の鋳型内に外板12を配置し、対応する上方の鋳型にガラス繊維マットを固定し、外板12上のポリウレタンに長い繊維を注入して支持層16を堆積し、上方および下方の鋳型を閉じ、複合部材10を硬化させ、次いでそれを工具から取り外すことによって実施することができる。
【0019】
図2は改良された実施形態を示しており、ここで強化層18は、埋め込まれたガラス繊維マットからだけでなく、長い繊維を挿入することによって強化されたポリウレタンの層からも形成されているが、その繊維濃度は支持層16における繊維濃度よりも高くなるように調整される。例えば、強化層18の繊維濃度は30重量パーセントよりも高くすることができるが、強化層18内の繊維14は好ましくは実質的に均一に分布する。
【0020】
この場合、支持層16および強化層18は原理的には単一の工程段階で製造することができ、その工程段階において、外板12上に堆積された層の、外板から離れて面する領域における繊維濃度が増大し、それによって強化層18が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態による複合部材を通じた断面図である。
【図2】第2の実施形態による複合部材を通じた断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 複合部材
12 外板
14 繊維
16 支持層
18 強化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維のない外板(12)と、前記外板を強化するために前記外板の内側に設けられた繊維強化された支持層(16)とを備える、車体、特に車両ルーフ用の複合部材であって、前記支持層(16)を強化するために、繊維強化された強化層(18)が前記支持層の前記外板(12)から離れて面する側に設けられ、前記強化層が前記支持層よりも高い繊維濃度を有することを特徴とする複合部材。
【請求項2】
前記複合部材(10)がルーフ・モジュールの一部分であることを特徴とする、請求項1に記載の複合部材。
【請求項3】
前記支持層(16)の母材がポリウレタンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合部材。
【請求項4】
前記支持層(16)が長い繊維を注入することによって製造されることを特徴とする、請求項3に記載の複合部材。
【請求項5】
前記外板(12)が背面射出される、または前記支持層(16)で裏張りされることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の複合部材。
【請求項6】
前記外板がプラスチック層またはアルミニウムもしくは鋼の層であることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の複合部材。
【請求項7】
前記支持層(16)内の繊維濃度が実質的に均一であることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の複合部材。
【請求項8】
前記支持層(16)内の前記繊維濃度が10重量パーセント未満であることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の複合部材。
【請求項9】
前記強化層(18)がガラス繊維マットによって形成されることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の複合部材。
【請求項10】
前記ガラス繊維マットが225g/mと450g/mの間の単位面積当たりの質量を有することを特徴とする、請求項9に記載の複合部材。
【請求項11】
前記ガラス繊維マットがポリウレタンで含浸されることを特徴とする、請求項9または10の一項に記載の複合部材。
【請求項12】
前記強化層(18)の母材がポリウレタンであることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の複合部材。
【請求項13】
前記強化層(18)が長い繊維を注入することによって製造されることを特徴とする、請求項12に記載の複合部材。
【請求項14】
前記強化層(18)内の前記繊維濃度が実質的に均一であることを特徴とする、請求項1から13の一項に記載の複合部材。
【請求項15】
前記強化層(18)の繊維濃度が30重量パーセントを超えることを特徴とする、請求項1から14の一項に記載の複合部材。
【請求項16】
前記繊維(14)がガラス繊維であることを特徴とする、請求項1から15の一項に記載の複合部材。
【請求項17】
繊維のない外板(12)がその内側に、前記外板を強化するための繊維強化された支持層(16)を設けられる、車体用、特に車両ルーフ用の複合部材(10)の製造方法であって、前記支持層(16)が前記外板(12)から離れて面する側において、前記支持層(16)を強化するための繊維強化された強化層(18)を設けられ、前記強化層が前記支持層よりも高い繊維濃度を有することを特徴とする製造方法。
【請求項18】
前記外板(12)が下方の鋳型内に配置され、ガラス繊維マットが上方の鋳型に固定され、前記支持層(16)が前記外板に堆積され、前記上方の鋳型および前記下方の鋳型が閉じられ、前記複合部材が硬化され、前記複合部材(10)が前記上方の鋳型および前記下方の鋳型から取り外されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記支持層(16)が長い繊維をポリウレタンに注入することによって製造されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記外板(12)が工具内に配置され、前記支持層(16)が長い繊維をポリウレタンに注入することによって前記外板に堆積され、前記外板から離れて面する領域において、より高い繊維濃度を有する混合物が堆積され、前記工具が閉じられ、前記複合部材(10)が硬化され、前記複合部材が前記工具から取り外されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−533501(P2007−533501A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508722(P2007−508722)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000705
【国際公開番号】WO2005/102697
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(591018763)ベバスト・アクチィエンゲゼルシャフト (102)
【出願人】(506346244)バイエル マテリアルサイエンス アクチィエンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】BAYER MATERIALSCIENCE AG
【住所又は居所原語表記】51368 Leverkusen(DE)
【Fターム(参考)】