説明

車体骨格構造

【課題】適用された車体の変形を抑制することができる車体骨格構造を得る。
【解決手段】ロッカ構造10は、CFRP製のロッカ12と、該ロッカ12内に設けられた金属製のメタルリインフォースメント42とを備える。メタルリインフォースメント42は、ロッカ12を構成するロッカリインフォースメント40の側壁部40Aに固定された縦補強壁部42Aと、ロッカリインフォースメント40の横壁部40Bに固定された横補強壁部42Bとを有し、横補強壁部42Bにおけるロッカ12の長手方向の一部には、脆弱部としての切欠部42Cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維と樹脂との複合材にて閉断面構造を成す車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車台フレームにアクリル樹脂製のボデーを搭載した自動車のボデー構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3108250号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
樹脂を含む材料で車体骨格を形成する場合、特定部位に荷重が集中的に入力されると、該車体骨格が局所的に大きく変形することが懸念される。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、適用された車体の変形を抑制することができる車体骨格構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車体骨格構造は、繊維と樹脂との複合材にて構成された閉断面構造の骨格体と、金属材より成り、前記骨格体における車体外側を向く第1壁部に該骨格体の長手方向の所定範囲に亘り固定された第1補強壁部と、前記第1補強壁部の幅方向端部から延設されると共に前記骨格体における前記第1壁部とで角部を成す第2壁部に固定された第2補強壁部と有し、かつ前記第2補強壁部における前記骨格体の長手方向の一部に設けられた脆弱部が形成された補強部材と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体骨格構造では、例えば、複合材より成る骨格体の長手方向における補強部材の脆弱部が設けられた部位に所定値以上の荷重が入力された場合には、この荷重は、複合材と比較して延性に富む金属材より成る補強部材の第1補強壁によって、一部が骨格体の長手方向に分散される一方、他の一部が骨格体の第2壁部を変形するのに消費される。すなわち、補強部材に脆弱部が設けられているので、骨格体の長手方向の特定部位に荷重が入力された場合には、複合材より成る第2壁部の変形が許容され、衝撃吸収ストロークを確保することができる。これにより、例えば局部的な衝突荷重が骨格体の長手方向における脆弱部が設けられた部位に入力された場合に、該衝突荷重(エネルギ)の分散と吸収とが図られる。
【0007】
このように、請求項1記載の車体骨格構造では、適用された車体の変形を抑制することができる。なお、脆弱部は、例えば、第2補強壁に設けた切欠部、孔、薄肉部等として設定することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項1記載の車体骨格構造において、前記骨格体は、前記骨格体は、外側骨格形成部と内側骨格形成部との接合によって形成された閉断面構造の外郭部内で、該外郭部における前記第1壁部と対向する第3壁部と前記第1壁部とが、前記第2壁部によって連結されて構成されている。
【0009】
請求項2記載の車体骨格構造では、外郭部における外側骨格形成部が構成する車体外向きの外側壁、又は該外側壁に沿うように外郭部内に配置された壁部が第1壁部とされており、該第1壁部は第2壁部によって第3壁部に連結されている。すなわち、骨格体は、外郭部の内部空間が荷重入力方向に延在する第2壁部によって区画されて、例えば「日」、「目」字状の断面を有する。補強部材は、外郭部の内側で、第1補強壁部が第1壁部に固定されると共に第2補強壁部が第2壁部に固定されることで骨格体を補強している。これにより、骨格体の剛性、強度が向上し、補強部材の第1補強壁を利用した骨格体の長手方向への荷重分散が良好に果たされる。また、第2壁部の変形によるエネルギ吸収特性の調整が容易になる。
【0010】
請求項3記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項2記載の車体骨格構造において、前記骨格体は、前記外側骨格形成部における車体外側を向く外側壁の内面に沿って配置された前記第1壁部と、該第1壁部の幅方向両端からそれぞれ延設された一対の前記第2壁部とを有する内部強材を前記外郭部内に設けて構成されており、前記補強部材は、前記第1補強壁が前記外側壁と前記第1壁部との間に挟まれて固定されると共に、前記第2補強壁が前記一対の第2壁部にそれぞれ固定され、かつ前記脆弱部が前記2つの第2補強壁の少なくとも一方に設けられて構成されている。
【0011】
請求項3記載の車体骨格構造では、第1壁部と一対の第2壁部とで断面コ字状を成す複合材製補強部材が外郭部内に配設されて複合材製の骨格体が構成されている。そして、第1補強壁部と一対の第2補強壁部とで断面コ字状を成す補強部材は、断面コ字状を成す複合材製補強部材を外側(三方)から覆って骨格体を補強している。これにより、骨格体の剛性、強度が向上し、補強部材の第1補強壁を利用した骨格体の長手方向への荷重分散が一層良好に果たされる。特に、一対の第2補強壁部の双方に脆弱部を設けた構成とすれば、一対の第2壁部がそれぞれ変形して良好に衝撃吸収を果たすことができる。
【0012】
請求項4記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体骨格構造において、車幅方向の外端部で車体前後方向に延在するロッカに適用され、前記脆弱部が乗員着座用のシートの設置範囲内に配置されている。
【0013】
請求項4記載の車体骨格構造では、ロッカにおけるシートの設置(可動)範囲に脆弱部が配置されているので、例えば、ロッカ長手方向の脆弱部設置部位に局所的に衝撃荷重が作用した場合に、第1補強壁部によってロッカの長手方向に荷重が分散されると共に脆弱部の設置位置での第2壁部の変形によって衝撃吸収が果たされ、シート側部での車体変形が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明に係る車体骨格構造は、適用された車体の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造としてのロッカ構造10について、図1乃至図4に基づいて説明する。先ず、ロッカ構造10が適用された自動車車体Bの概略全体構成を説明し、次いで、ロッカ構造10の詳細構成を説明することとする。なお、図中矢印FRは車体前後方向の前方向を、矢印UPは車体上下方向の上方向を、矢印INは車幅方向内側を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。
【0016】
(自動車車体の概略全体構成)
図4には、ロッカ構造10が適用された自動車車体Bの概略全体構成が斜視図にて示されている。この図に示される如く、自動車車体Bは、それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のロッカ12を備えている。左右のロッカ12には、それぞれ車体フロアFを構成するフロアパネル14の車幅方向の外端部が接合されており、左右のフロアパネル14の車幅方向内端部は、車体前後方向に長手とされたフロアトンネル16にそれぞれ接合されている。
【0017】
具体的には、フロアトンネル16は、車体上下方向の下向きに開口したトンネル部としてトンネル本体18と、該トンネル本体18の車幅方向両側の開口縁部に形成された閉断面構造のトンネルサイド骨格部20とを含んで構成されている。図4に示される如く、フロアトンネル16を構成するトンネル本体18、トンネルサイド骨格部20は、それぞれフロアパネル14の全長に亘り形成されている。一方、詳細は後述するが、各ロッカ12は、それぞれ閉断面構造を成している。フロアパネル14は、ロッカ12の下面、トンネルサイド骨格部20の下面にそれぞれ接合されている。
【0018】
また、各ロッカ12は、それぞれの前端12Aが、略車体上下方向に沿って延在するフロントピラー22の下端22Aに連続している。図示は省略するが、左右のフロントピラー22は、図4に示すよりも車体上下方向に延出され、互いの間にウインドシールドガラスを保持するようになっている。さらに、左右のフロントピラー22には、それぞれダッシュパネル24の車幅方向の異なる端部が接合されている。ダッシュパネル24は、車幅方向及び車体上下方向に延在し、車室Cと該車室Cよりも前方に位置する空間Rfとを隔てている。このダッシュパネル24には、図示しない左右一対のフロントサイドメンバの後端部が接続されるようになっており、左右のフロントサイドメンバの前端間はフロントバンパを構成するバンパリインフォースメントによって架け渡されている。このダッシュパネル24の車幅方向中央部には、フロアトンネル16を構成するトンネル本体18の前端を前方空間Rfに開口させる切欠部24Aが形成されている。
【0019】
一方、左右のロッカ12の後端12Bは、それぞれ略車体上下方向に沿って延在するリヤピラー(センタピラーとして把握することも可能である)26の下端26Aに連続している。左右のロッカ12の後端12B、リヤピラー26には、図示しないリヤサイドメンバが連続している。
【0020】
さらに、左右のリヤピラー26には、それぞれルームパーティションパネル28の車幅方向の異なる端部が接合されている。ルームパーティションパネル28は、車幅方向及び車体上下方向に延在し、車室Cと該車室Cよりも後方の空間Rrとを隔てている。ルームパーティションパネル28の車幅方向中央部には、フロアトンネル16の後端を後方空間Rrに開口させる切欠部(図示省略)が形成されている。
【0021】
また、自動車車体Bは、車幅方向に長手とされ、フロアパネル14の上側でロッカ12とフロアトンネル16のトンネルサイド骨格部20とを連結するクロスメンバ30を備えている。この実施形態では、それぞれ車体前後方向に並列すると共にフロアパネル14とで閉断面を成す前後一対のクロスメンバ30が設けられている。前後のクロスメンバ30には、左右一対のシートレール32を固定的に取り付けるために、締結用孔30Aが形成されている。左右一対のシートレール32は、図示しない乗員着座用のシートを車体前後方向にスライド可能に支持するようになっている。なお、前後のクロスメンバ30を一体的に取り扱い可能なシート保持用クロスメンバの構成部品としてアセンブリ化しても良い。
【0022】
さらに、図4に示される如く、自動車車体Bは、前後のクロスメンバ30よりも車体前後方向の前側でロッカ12とフロアトンネル16のトンネルサイド骨格部20とを連結するフロントクロスメンバ36を備えている。
【0023】
以上説明した自動車車体Bは、その主要部を成すロッカ12(の後述するメタルリインフォースメント42を除く主要部)、フロアパネル14、フロアトンネル16のトンネル本体18及びトンネルサイド骨格部20、フロントピラー22、ダッシュパネル24、リヤピラー26、ルームパーティションパネル28、クロスメンバ30、フロントクロスメンバ36がそれぞれ炭素繊維と樹脂との複合材である炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)にて構成されている。
【0024】
また、図示は省略するが、自動車車体Bは、左右のトンネルサイド骨格部20間を架け渡す連結部材としての複数のトンネルブレースを備えている。この実施形態では、トンネルブレースは、トンネルサイド骨格部20における前後のクロスメンバ30の連結部位、及びフロントクロスメンバ36の連結部位間をそれぞれ架け渡すように、計3つ設けられている。この実施形態では、トンネルブレースは、金属材料にて構成されている。
【0025】
(ロッカ構造の詳細構成)
以上説明した自動車車体Bにおける車幅方向外端で車体前後方向に延在する車体骨格を成すロッカ12のロッカ構造10について、図1乃至図3に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図2には、ロッカ12の長手方向直角断面図が示されている。この図に示される如く、ロッカ12は、本発明における外郭部としてのロッカ本体38と、ロッカ本体38内に設けられた複合材製補強部材としてのロッカリインフォースメント40と、金属製の補強部材としてのメタルリインフォースメント42とを主要部として構成されている。以下、具体的に説明する。
【0027】
ロッカ本体38は、外側骨格形成部としてのロッカアウタパネル44と、内側骨格形成部としてのロッカインナパネル46との接合により、断面視で略矩形枠状の閉断面構造を成している。この実施形態では、ロッカアウタパネル44は、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状を成しており、平板状に形成されたロッカインナパネル46の幅方向両端46Aがそれぞれ異なるフランジ44Aに、CFRPの焼成を共に行うことによって接合されている。ロッカインナパネル46における幅方向両端46A間の部分は、第3壁部としての内側壁46Bとされており、ロッカアウタパネル44が構成する外側壁44Bと対向している。
【0028】
ロッカリインフォースメント40は、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状を成している。より具体的には、ロッカリインフォースメント40は、第1壁部としての側壁部40Aと、それぞれ側壁部40Aの幅方向両端から車幅方向内向きに延設された第2壁部としての上下一対の横壁部40Bと、各横壁部40Bにおける側壁部40Aとは反対側の端部(ロッカリインフォースメント40の開口端)から上下外向きに延設されたフランジ40Cとを有して構成されている。
【0029】
このロッカリインフォースメント40は、その上下のフランジ40Cがロッカ本体38を構成する内側壁46Bに、例えば接着やCFRPの焼成を共に行うこと等によって接合されている。これにより、ロッカリインフォースメント40の側壁部40Aは、ロッカ本体38の外側壁44Bに沿うような(略平行な)姿勢で保持されている。また、各横壁部40Bは、ロッカアウタパネル44におけるフランジ44Aと外側壁44Bの上下端とを連結する上壁44C、下壁44Dと対向している。
【0030】
さらに、メタルリインフォースメント42は、断面視で車体上下方向に延在する第1補強壁部としての縦補強壁部42Aと、それぞれ縦補強壁部42Aの幅方向両端から車幅方向内向きに延設された第2補強壁部としての上下一対の横補強壁部42Bとを有して構成されている。そして、ロッカ本体38の内部を斜視図にて示す図1に示される如く、上下一対の横補強壁部42Bには、それぞれロッカ12の長手方向の一部の範囲が切り欠かれて形成された脆弱部としての切欠部42Cが設けられている(下側の切欠部42Cについて図示省略)。
【0031】
このメタルリインフォースメント42は、ロッカリインフォースメント40に固定的に保持されている。そして、図4に示される如く、メタルリインフォースメント42の切欠部42Cは、左右一対のシートレール32の設置範囲内(乗員着座用のシートの可動範囲内)に設定されている。
【0032】
メタルリインフォースメント42のロッカリインフォースメント40に対する固定構造について補足すると、図1に示される如く、メタルリインフォースメント42は、上下の横補強壁部42Bにおけるロッカ12の長手方向のそれぞれ複数箇所において、締結手段48にて締結されている。より具体的には、図3(A)に示される如く、締結手段48は、各横壁部40Bに形成した透孔40Dにポップナット48Aに挿通させ、該ポップナット48Aのかしめて図3(B)に示される如く各横壁部40Bに固定する。
【0033】
そして、メタルリインフォースメント42を貫通させたボルト48Bをポップナット48Aに螺合させることで、メタルリインフォースメント42は、上下の横補強壁部42Bにおいてロッカリインフォースメント40に締結される。また、図1に示される如く、メタルリインフォースメント42は、切欠部42Cに対する車体前後方向の両側で、それぞれ締結手段48にてロッカリインフォースメント40に締結されている。
【0034】
さらに、ロッカ構造10では、上記の通りロッカリインフォースメント40がロッカ本体38(内側壁46B)に接合された状態では、縦補強壁部42Aは、ロッカ本体38を構成する外側壁44Bの内面に接触している。この実施形態では、縦補強壁部42Aと外側壁44Bとは、接着剤にて接着固定(接着層を介して接触)されている。このロッカ構造10では、図4に示される如く、ロッカリインフォースメント40、メタルリインフォースメント42は、ロッカ12の略全長に亘って設けられている。
【0035】
図示は省略するが、ロッカ本体38の内部は、ポリウレタンフォーム等の充填材にて充填されている。これにより、ロッカ構造10(ロッカ12)では、メタルリインフォースメント42のロッカ本体38に対する姿勢が保持されると共にガタツキが防止されるようになっている。
【0036】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0037】
上記構成のロッカ構造10では、適用された自動車車体Bを有する自動車に側面衝突が生じると、ロッカ12に車幅方向内向きの荷重が入力される。この荷重は、メタルリインフォースメント42によって車体前後方向に分散され、前後のクロスメンバ30、フロントクロスメンバ36、及びフロアパネル14を介してフロアトンネル16(トンネルサイド骨格部20)に伝達され、さらに左右のトンネルサイド骨格部20を架け渡すトンネルブレースによって車幅方向の反対側まで伝達される。
【0038】
ここで、ロッカ構造10では、メタルリインフォースメント42の縦補強壁部42Aが長手方向に連続する板体として構成されると共に、該メタルリインフォースメント42の上下の横補強壁部42Bが切欠部42Cを有するため、該切欠部42Cの設置範囲にポールPが側面衝突した場合に、該衝突による荷重は、CFRPと比較して延性に富む金属製の縦補強壁部42A(及び上下の横補強壁部42Bにおける切欠部42C以外の部分)によって一部が上記の如く車体前後方向に分散されると共に、切欠部42Cの設置範囲では他の一部がCFRP製の横壁部40B、上壁44C、下壁44Dが設置範囲にポールPによって幅方向に潰される。
【0039】
この際、設置範囲にポールPの衝突部位には上下の横補強壁部42Bすなわち金属板が存在しないので、車体前後方向への荷重分散を図るメタルリインフォースメント42が、CFPR製の横壁部40B、上壁44C、下壁44Dの潰れきり(ロッカ12の全幅に亘る破断に相当する)を阻害することがない。このため、ロッカ構造10では、CFRP製構造体である横壁部40B、上壁44C、下壁44Dの変形(破壊)に伴って、ポールPの衝突エネルギが効果的に吸収される。すなわち、CFRP製構造体では、局部的な荷重を受けて潰れきることでエネルギ吸収ストロークを確保できる点にメリットがあるが、メタルリインフォースメント42に切欠部42Cを設けることで、このメリットを活かしつつ、縦補強壁部42Aによる荷重分散を実現し、全体としてポールPの側面衝突による自動車車体Bの変形を抑制することができる。
【0040】
また、ロッカ構造10では、ロッカリインフォースメント40に固定されたメタルリインフォースメント42に作用する張力によって主に車体前後方向に分散されるが、このメタルリインフォースメント42の縦補強壁部42Aがロッカ本体38の外側壁44Bに接着されているため、縦補強壁部42Aによるロッカ12の長手方向への荷重分散性を向上することができる。
【0041】
さらに、ロッカ構造10では、ロッカ本体38内にロッカリインフォースメント40を配設してCFRP構造体が構成されているため、上壁44C、下壁44Dに対向する横壁部40Bによってロッカ12の剛性を向上させることができると共に、該横壁部40Bによるロッカ12の変形量(衝撃吸収ストローク)に対する荷重の特性(FS特性)即ちエネルギ吸収特性の調整を行いやすい。例えば、横壁部40Bにおける炭素繊維の積層構造(配向)等によって、他の要求によるロッカ12の強度、剛性を確保しつつポールPの側面衝突に対する所要のFS特性の設定が可能である。特に、上下一対の各横壁部40Bを有するため、換言すれば、側壁部40Aと各横壁部40Bと内側壁46Bとで構成する閉断面構造を成すため、ロッカ12の剛性を一層向上させることができると共に、FS特性の調整の自由度が高く、ポールPの側面衝突に対し一層効果的に自動車車体Bの変形を抑制することができる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略し、図示を省略する場合もある。
【0043】
(第2の実施形態)
図5には、本発明の第2の実施形態に係るロッカ構造50が模式的な長手方向直角断面図にて示されている。この図に示される如く、ロッカ構造50が適用されたロッカ52は、ロッカ本体38の内部における車体上下方向中間部に、第1壁部としての外側壁44Bと内側壁46Bとを連結する第2壁部としての隔壁54が設けられている。
【0044】
そして、ロッカ本体38内にはメタルリインフォースメント42が配設されている。この実施形態では、縦補強壁部42Aは、外側壁44Bの内面に接着されると共に、それぞれ第2壁部としての隔壁54及び下壁44Dに締結手段48にて締結されている(図示省略)。すなわち、メタルリインフォースメント42は、隔壁54に対する車体上下方向の下側(クロスメンバ30、フロントクロスメンバ36との接合側)に配設されている。ロッカ構造50の他の構成は、ロッカ構造10の対応する構成と同じである。
【0045】
したがって、第2の実施形態に係るロッカ構造50によっても、上下一対の各横壁部40Bを有するロッカリインフォースメント40による効果を除いて、基本的に第1の実施形態に係るロッカ構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0046】
(第3の実施形態)
図6には、本発明の第3の実施形態に係るロッカ構造60が模式的な長手方向直角断面図にて示されている。この図に示される如く、ロッカ構造60は、ロッカ62を構成するロッカ本体38の内部における隔壁54に対する車体上下方向の両側に、メタルリインフォースメント64が配設されている点で、第2の実施形態に係るロッカ構造50とは異なる。メタルリインフォースメント64は、外側壁44Bに接合された縦補強壁64Aと、隔壁54に接合された横補強壁部64Bと、横補強壁部64Bにおける長手方向の一部に形成された脆弱部としての図示しない切欠部を主要部として構成されている。すなわち、上下のメタルリインフォースメント64は、隔壁54に対し対称に形成されている。ロッカ構造60の他の構成は、ロッカ構造50の対応する構成と同じである。
【0047】
したがって、第3の実施形態に係るロッカ構造60によっても、基本的に第2の実施形態に係るロッカ構造50と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第4の実施形態)
図7には、本発明の第4の実施形態に係るロッカ構造70が模式的な長手方向直角断面図にて示されている。この図に示される如く、ロッカ構造70が適用されたロッカ72は、ロッカ本体38の内部における隔壁54の一方側にのみメタルリインフォースメント64が配設されている点で、第3の実施形態に係るロッカ構造60とは異なる。この実施形態では、隔壁54に対する車体上下方向の下側に配設されている。ロッカ構造70の他の構成は、ロッカ構造60の対応する構成と同じである。
【0049】
したがって、第4の実施形態に係るロッカ構造70によっても、基本的に第3の実施形態に係るロッカ構造60と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0050】
(第5の実施形態)
図8には、本発明の第5の実施形態に係るロッカ構造80が模式的な長手方向直角断面図にて示されている。この図に示される如く、ロッカ構造80は、ロッカ82がロッカ本体38の内部空間を区画する部材を有しない点で、第4の実施形態に係るロッカ構造70とは異なる。このため、メタルリインフォースメント64の横補強壁部64Bは、ロッカ本体38の上壁44Cに接合されている。ロッカ構造80の他の構成は、ロッカ構造70の対応する構成と同じである。
【0051】
したがって、第5の実施形態に係るロッカ構造80によっても、基本的に第4の実施形態に係るロッカ構造70と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0052】
(第6の実施形態)
図9には、本発明の第6の実施形態に係るロッカ構造90が模式的な長手方向直角断面図にて示されている。この図に示される如く、ロッカ構造90は、ロッカ92を構成するロッカ本体38の内部空間に配設されたメタルリインフォースメント64の姿勢が、第5の実施形態に係るロッカ構造80とは異なる。この実施形態では、メタルリインフォースメント64の横補強壁部64Bは、ロッカ本体38の下壁44Dに接合されている。ロッカ構造90の他の構成は、ロッカ構造80の対応する構成と同じである。
【0053】
したがって、第6の実施形態に係るロッカ構造90によっても、基本的に第5の実施形態に係るロッカ構造80と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、上記した各実施形態では、メタルリインフォースメント42、64が設けられたロッカ12、52、62、72、82、92を例示したが、本発明はこれに限定されず、ロッカ12等の内部構造(ロッカリインフォースメント40、隔壁54等による補強構造)に応じて各種の形態を取り得る。例えば、ロッカ82、92(のロッカ本体38内)にメタルリインフォースメント42を配設して本発明のロッカ構造を構成しても良い。
【0055】
また、上記した各実施形態では。車体骨格である骨格体としてのロッカ12等に本発明が適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えばピラー、ルーフサイドレール、ドアインパクトビーム等の骨格体に本発明を適用しても良い。
【0056】
さらに、上記した各実施形態では、メタルリインフォースメント42等の脆弱部として切欠部42C等を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、横補強壁部42Bに形成した孔(切抜き部)、薄肉部にて脆弱部を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロッカ構造の内部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るロッカ構造を示す長手方向直角断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るロッカ構造に適用される締結手段を示す図であって、(A)は締結前の断面図、(B)は締結状態の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るロッカ構造が適用された自動車車体を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るロッカ構造を示す長手方向直角断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るロッカ構造を示す長手方向直角断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るロッカ構造を示す長手方向直角断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係るロッカ構造を示す長手方向直角断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係るロッカ構造を示す長手方向直角断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ロッカ構造(車体骨格構造)
12 ロッカ(骨格体)
32 シートレール(乗員着座用のシート)
38 ロッカ本体(外郭部)
40 ロッカリインフォースメント(内部部材)
40A 側壁部(第1壁部)
40B 横壁部(第2壁部)
42 メタルリインフォースメント(補強部材)
42A 縦補強壁部(第1補強壁部)
42B 横補強壁部(第2補強壁部)
42C 切欠部(脆弱部)
44 ロッカアウタパネル(外側骨格形成部材)
44B 外側壁(第1壁部)
46 ロッカインナパネル(内側骨格形成部材)
46B 内側壁(第3壁部)
50・60・70・80・90 ロッカ構造(車体骨格構造)
52・62・72・82・92 ロッカ(骨格体)
64 メタルリインフォースメント(補強部材)
64A 縦補強壁部(第1補強壁部)
64B 横補強壁部(第2補強壁部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維と樹脂との複合材にて構成された閉断面構造の骨格体と、
金属材より成り、前記骨格体における車体外側を向く第1壁部に該骨格体の長手方向の所定範囲に亘り固定された第1補強壁部と、前記第1補強壁部の幅方向端部から延設されると共に前記骨格体における前記第1壁部とで角部を成す第2壁部に固定された第2補強壁部と有し、かつ前記第2補強壁部における前記骨格体の長手方向の一部に設けられた脆弱部が形成された補強部材と、
を備えた車体骨格構造。
【請求項2】
前記骨格体は、外側骨格形成部と内側骨格形成部との接合によって形成された閉断面構造の外郭部内で、該外郭部における前記第1壁部と対向する第3壁部と前記第1壁部とが、前記第2壁部によって連結されて構成されている請求項1記載の車体骨格構造。
【請求項3】
前記骨格体は、前記外側骨格形成部における車体外側を向く外側壁の内面に沿って配置された前記第1壁部と、該第1壁部の幅方向両端からそれぞれ延設された一対の前記第2壁部とを有する内部強材を前記外郭部内に設けて構成されており、
前記補強部材は、前記第1補強壁が前記外側壁と前記第1壁部との間に挟まれて固定されると共に、前記第2補強壁が前記一対の第2壁部にそれぞれ固定され、かつ前記脆弱部が前記2つの第2補強壁の少なくとも一方に設けられて構成されている請求項2記載の車体骨格構造。
【請求項4】
車幅方向の外端部で車体前後方向に延在するロッカに適用され、前記脆弱部が乗員着座用のシートの設置範囲内に配置されている請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−155699(P2008−155699A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344476(P2006−344476)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】