説明

車外環境制御システム

【課題】エンジンの吸気側から排気側に流れるガスにおいて燃焼前後で濃度変化するガス成分の車外の空気中における濃度を精度良く検出する。
【解決手段】エンジン10において、吸気側から排気側に流れるガスにおいて燃焼前後で濃度変化するガス成分を検出対象とするガスセンサ39が、エンジン10の吸気通路11に配置されている。ECU40は、車両が走行していない状態でのエンジン燃焼中において、ガスセンサ39の検出信号に基づいて、車外の空気中に含まれる上記ガス成分の濃度を検出し、その検出した濃度が所定の異常範囲にある場合に、上記ガス成分の濃度変化に伴う車外の環境悪化を抑制する処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外環境制御システムに関し、特に、車外の空気中のガス濃度を検出し、該検出した濃度に基づき車外環境を適正化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば遠隔操作によりエンジンの始動が可能な車両や、エンジンにより発電機を駆動してバッテリを充電するハイブリッド車両では、車両を停止させた状態のまま、エンジンの運転状態(燃焼状態)が長時間に亘って継続されることがある。このとき、例えば通気性が悪い空間(例えば、密閉された車庫など)でエンジンの燃焼状態が継続されると、エンジンの排気が車外に排出されることにより、車両周囲において大気中のガス成分の濃度が変化し、大気中のCOやNOx等の濃度が高くなることが考えられる。
【0003】
そこで、従来、車庫内における車両周囲の排ガス濃度を検出するガスセンサを設け、車両停止状態でのエンジン運転中にガスセンサにより検出したガス濃度に基づいて、エンジンの運転を停止させる技術が提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。これら文献のうち、特許文献2には、車両近傍に排ガス検出装置(ガスセンサ)を配置し、この排ガス検出装置により車両近傍の排ガス濃度を検出することが開示されている。なお、特許文献1には、車両の周囲の排ガス濃度を検出するガスセンサを設けることについては開示されているが、ガスセンサを設ける具体的な位置については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−1748号公報
【特許文献2】特開平10−252519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車庫などの閉空間に車両を駐車してエンジンの燃焼を行った場合、その空間内では、種々の要因によってガス濃度に偏りが生じることがある。したがって、特許文献2のように、車両近傍にガスセンサを設けた場合、空間内のガス濃度の偏りに起因して、車両周囲のガス濃度を正確に検出できないことが考えられる。例えば、排気が滞留しやすい場所にガスセンサが設けられている場合、車庫内全体としては車外の空気中の排気の濃度はさほど高くないにもかかわらず、エンジンの燃焼が停止されてしまうことがある。また逆に、排気が滞留しにくい場所にガスセンサが設けられている場合、車庫内全体としては車外の空気中の排気濃度が高いにもかかわらず、エンジンの燃焼が継続される結果、車外の空気中のCOやNOxなどの濃度が更に高くなったり、O2濃度が更に低下したりすることが考えられる。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、エンジンの吸気側から排気側に流れるガスにおいて燃焼前後で濃度変化するガス成分について、車外の空気中の濃度を精度良く検出することができる車外環境制御システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
本発明は、エンジンの吸気側から排気側に流れるガスにおいて燃焼前後で濃度変化するガス成分を検出対象とするガスセンサを備える車両に適用される車外環境制御システムに関する。また、請求項1に記載の発明では、前記ガスセンサが、エンジンの吸気通路に配置されており、車両が走行していない状態でのエンジン燃焼中において、前記ガスセンサの検出信号に基づいて、車外の空気中に含まれる前記ガス成分の濃度を検出するガス濃度検出手段と、前記ガス濃度検出手段により検出した濃度が所定の異常範囲にある場合に、前記ガス成分の濃度変化に伴う車外の環境悪化を抑制する処理である環境悪化抑制処理を実施する処理制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
要するに、車庫などに車両を駐車した状態でエンジンの燃焼を継続した場合、車両周囲ではガス成分の濃度は必ずしも均一でなく、濃度に偏りが生じていることがある。したがって、例えばガスセンサを車庫側に設けた場合、車庫内のガス濃度の偏りに起因して、車外の空気中におけるガス濃度を正確に検出できないことが考えられる。その点、本構成では、エンジン燃焼中では、エンジンの吸気通路には車外の空気が逐次取り込まれることに着目し、ガスセンサを吸気通路に設けたため、車外空気のガス濃度の監視を適切に実施することができる。また、ガスセンサを吸気通路に設けることにより、車両の移動先での駐車場所において車外空気の濃度を監視するガスセンサが設けられていなくても、車両周囲の空気の濃度を監視することができる。したがって、本構成によれば、車外環境が悪化したことを精度良く検出することができ、ひいては、ガス成分の濃度変化に伴う車外の環境悪化を抑制するための処理を、車外環境に応じた適切なタイミングで実施することができる。
【0010】
ガスセンサの配置について、詳しくは、請求項2に記載の発明のように、前記吸気通路に、エンジンの吸入空気量を調節するスロットルバルブが配置されており、前記吸気通路のうち、前記スロットルバルブよりも上流側に前記ガスセンサが配置されている構成としてもよい。本構成によれば、吸気通路の壁面や吸気バルブなどに付着した燃料の蒸発ガスの影響による検出誤差を極力小さくすることができ、その結果、車外の空気中のガス濃度を精度良く検出することができる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明のように、前記吸気通路の最上流部に、エンジンの吸入空気を濾過するエアクリーナが配置されており、前記吸気通路のうち、前記エアクリーナよりも下流側に前記ガスセンサが配置されている構成としてもよい。上記構成によれば、大気中に含まれる粉塵が除去された後の吸気を対象としてガス濃度を検出するため、粉塵などの影響によるセンサの検出誤差を小さくすることができる。
【0012】
ガス成分の濃度変化に伴う車外の環境悪化を抑制するための処理としては、請求項4に記載の発明のように、エンジンの燃焼を停止させる燃焼停止処理を実施する構成としてもよい。この場合、車両周囲においてCOやNOxの濃度が更に高くなったり、あるいはO2濃度が更に低くなったりするのを回避することができる。
【0013】
エンジンの燃焼を停止することで車外の環境の悪化を抑制する構成では、請求項5に記載の発明のように、前記ガスセンサの検出信号に基づいて、エンジン燃焼中における前記ガス成分の濃度変化を検出する濃度変化検出手段と、前記処理制御手段による前記燃焼停止処理を実施する前に、前記濃度変化検出手段により検出した濃度変化に基づいて、前記燃焼停止処理を実施するおそれがあることをユーザに通知する処理及びエンジンの燃焼を継続したままエンジン出力を低下させる処理の少なくともいずれかを実施する停止前処理手段と、を備えるものとしてもよい。
【0014】
例えば、エンジン停止する旨の通知を事前に行うことにより、ユーザに対して車両周囲の環境の改善(例えば換気など)を促すことができる。また、エンジンの出力制限を事前に行うことにより、COやNOx等の排出量を少なくすることができる。したがって、本構成によれば、エンジンの燃焼を停止する前に、車外の環境を改善したり更なる悪化を抑制したりすることができ、エンジン燃焼停止の実行を遅らせることが可能となる。
【0015】
環境悪化抑制のための処理としては、請求項6に記載の発明のように、前記ガス成分の濃度変化に伴い車外の環境が悪化したことをユーザに通知する通知手段を設け、該通知手段によるユーザへの通知を実施する構成としてもよい。本構成によれば、同通知を認識したユーザが、例えばエンジンの運転を停止させたり、車両周囲の換気を行ったりすることにより、車外の更なる環境悪化を回避することができる。
【0016】
あるいは、請求項7に記載の発明のように、前記車両を駐車する車庫において、該車庫内の換気を行う換気手段が設けられており、前記環境悪化抑制処理として、前記換気手段を作動させて前記車庫内の換気を実施する構成としてもよい。本構成によれば、エンジンの燃焼により悪化した車外の環境を積極的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車外環境制御システムの全体概略構成図。
【図2】環境悪化抑制処理の処理手順を示すフローチャート。
【図3】他の実施形態における車外環境制御システムの全体概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、動力源としてのモータと、発電専用のエンジンとを備えるハイブリッド車両(レンジエクステンダ車両)の制御システムに具体化している。当該システムにおいては、電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢としてモータやエンジンを制御することで車両のシステム全体を制御する。本システムの全体概略構成図を図1に示す。
【0019】
図1に示すエンジン10において、吸気通路11の最上流部には、エンジン10に吸入される空気を濾過するエアクリーナ12が設けられており、エアクリーナ12の下流側には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ13によって開度調節される空気量調整手段としてのスロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14の開度(スロットル開度)は、スロットルアクチュエータ13に内蔵されたスロットル開度センサ(図示略)により検出される。
【0020】
スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク15が設けられ、サージタンク15において、吸気管圧力を検出するための吸気圧センサ16が設けられている。サージタンク15には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド17が接続されており、吸気マニホールド17において、各気筒の吸気ポート近傍には、燃料を噴射供給するインジェクタ18が取り付けられている。なお、図1では、エンジン10の吸気ポート近傍にインジェクタ18を設けたが、これに代えて、各気筒のシリンダヘッド等に設ける構成としてもよい。
【0021】
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートには、それぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられている。吸気バルブ21の開動作により、空気と燃料との混合気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により、燃焼後の排ガスが排気通路24に排出される。なお、エアクリーナ12の上流側の空気取り込み口から吸気ポートまでの通路により吸気通路11が構築されている。
【0022】
エンジン10のシリンダヘッドには、気筒毎に点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25には、点火コイル等よりなる点火装置を通じて、所望とする点火時期に高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ25の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。
【0023】
エンジン10の排気通路24には、排気中のCO,HC,NOx等を浄化するための触媒26が設けられており、本実施形態では触媒26として三元触媒が用いられている。また、触媒26の上流側には、排気を検出対象として混合気の空燃比(酸素濃度)を検出する空燃比センサ27が設けられている。
【0024】
エンジン10の出力軸であるクランク軸28にはモータMG1が接続されている。モータMG1は、発電機としても電動機としても機能する周知の同期発電電動機である。詳しくは、モータMG1は、クランク軸28の回転エネルギによって駆動されることで発電するとともに、その発電された電力でバッテリ29を充電する。また、モータMG1は、エンジン始動に際しては電動機として機能し、バッテリ29からの電力供給を受けて駆動されることで、クランク軸28に初期回転を付与する(モータリングする)。バッテリ29は、プラグPGを介して外部電源によって充電可能になっている。なお、バッテリ29は、DC−DCコンバータを介して低圧バッテリ(例えば12Vの補機バッテリ、図示略)に接続されており、バッテリ29からの電力によって低圧バッテリが充電されるようになっている。
【0025】
バッテリ29にはモータMG2が接続されている。モータMG2は、発電機としても電動機としても機能する周知の同期発電電動機であり、バッテリ29からの電力供給を受けて駆動される。モータMG2には、減速機構31等を介して車輪(駆動輪)32が接続されており、モータMG2の動力が駆動輪32に伝達されるようになっている。なお、モータMG2は、車両の減速時に回生発電する機能を有しており、発電した電力でバッテリ29を充電する。
【0026】
その他、本システムには、エンジンの吸入空気量を検出するエアフロメータ33や、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ34、エンジン10の所定クランク角毎にクランク角信号を出力するクランク角センサ35、エンジン10の冷却水温度を検出する冷却水温センサ36、バッテリ29の充放電電流を検出するバッテリセンサ37、車速を検出する車速センサ38等が設けられている。
【0027】
ECU40は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(以下、マイコン41という)を主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エンジン10の各種制御や、モータMG1及びモータMG2の駆動制御等を実施する。なお、モータMG1,MG2及びエンジン10のそれぞれは、実際には各別の電子制御装置により制御されるが、ここではこれら電子制御装置をECU40と表記している。
【0028】
エンジン制御について、ECU40のマイコン41は、前述した各種センサから各種検出信号等を入力し、これらの各種検出信号等に基づいて燃料噴射量や点火時期等を演算するとともに、その演算結果に基づいてインジェクタ18や点火装置等を制御する。詳しくは、マイコン41は、バッテリセンサ37の検出値に基づいてバッテリ29の残容量(SOC)を演算し、その演算したSOCに基づいてモータMG1を駆動してエンジン10に初期回転を付与する。また、燃料噴射及び点火を制御してエンジン10の燃焼を開始する。これにより、エンジン10が始動され、エンジン始動に伴いモータMG1が駆動されることでバッテリ29の充電が行われる。また、この充電によりバッテリ29のSOCが目標値に達すると、燃料噴射及び点火を停止してエンジン10の燃焼を停止する。なお、バッテリ29の充電は、例えばユーザから充電要求があった場合や、演算したSOCに基づきバッテリ29の充電が必要であると判断した場合等に実施される。
【0029】
ところで、本システムのように、エンジン10を車両走行の動力源として用いず発電専用に用いる車両では、例えば次回の車両走行に備えるべく、車両の駐車状態でバッテリ29の充電が行われる機会が多くなる。つまり、車両が走行していない状態でエンジン10の燃焼が継続される頻度が多くなる。一方で、エンジン10から排気通路24を介して大気中に排出される排気には、微量ではあるが、触媒26で浄化しきれなかったCOやNOx、HCなどが含まれていることがある。特に、バッテリ29を充電する運転モードでは、アイドル運転時に比べて高負荷での運転が行われ、排気中においてCOやNOxが多くなりやすい。そのため、車両停止状態でのエンジン10の燃焼が、例えば通気性の悪い空間で継続されると、排気中のCOやNOxなどがその空間内に滞り、車両周囲においてCOやNOxの濃度が高くなることが考えられる。また、エンジン10の燃焼によってO2が消費されることで、車両周囲のO2濃度が低くなることが考えられる。
【0030】
そこで、本実施形態では、エンジン10の吸気側から排気側に流れるガスにおいて燃焼前後で濃度変化するガス成分(特定ガス成分)を検出対象とするガスセンサを設け、車両が走行していない状態でのエンジン運転中において、同ガスセンサにより、車外の空気中に含まれる特定ガス成分の濃度を検出する。そして、ガスセンサの検出信号に基づき算出した特定ガス成分の濃度が所定の異常範囲にある場合、特定ガス成分の濃度変化に伴う車外の環境悪化を抑制するべく環境悪化抑制処理を実施する。本実施形態では、環境悪化抑制処理として、エンジン10の燃焼を停止する処理を実施する。これにより、車両周囲においてCOやNOxの濃度が更に高くなったり、あるいはO2濃度が更に低くなったりするのを回避するようにしている。
【0031】
ここで、エンジン10の燃焼前後で濃度変化するガス成分としては、エンジン10の燃焼に伴い増加する第1ガス成分(例えば、COやCO2、NOx、HCなど)と、エンジン10の燃焼に伴い減少する第2ガス成分(例えばO2など)とを含む。また、ガスセンサについて本実施形態では、CO濃度を検出するCOセンサと、HC濃度を検出するHCセンサと、NOx濃度を検出するNOxセンサと、O2濃度を検出する酸素センサ(大気を含む広域で検出可能なセンサ)とを備える構成としている。これにより、車外の空気中の特定ガス成分の濃度を成分ごとに検出できるようになっている。ただし、ガスセンサとしては、COセンサ、HCセンサ及びNOxセンサのうちいずれか1つ、例えばCOセンサのみを設ける構成であってもよい。
【0032】
また特に、本実施形態では、エンジン10が燃焼状態にある場合、吸気通路11には車外の空気が逐次取り込まれることに着目し、吸気通路11にガスセンサ39を配置することとしている(図1参照)。詳しくは、図1に示すように、吸気通路11のうち、エアクリーナ12とスロットルバルブ14との間にガスセンサ39を配置している。
【0033】
吸気通路11にガスセンサ39を配置する理由は以下の通りである。すなわち、車庫などの閉空間に車両を駐車した状態でエンジン10の燃焼を継続した場合、車両周囲において、種々の要因によって特定ガス成分の濃度の偏りが生じていることがある。したがって、例えば、ガスセンサ39を車庫側に設けた場合、車庫内のガス濃度の偏りに起因して、車両周囲の特定ガス成分の濃度を正確に検出できないことが考えられる。特に、車庫内においては、その空間の形状や車両の停止位置、車両の向きなどによって、空間内で特定ガス成分が滞りやすい場所又は滞りにくい場所が都度相違し、特定ガス濃度の検出精度も都度変わることが考えられる。
【0034】
より具体的には、特定ガス成分が滞留しやすい位置にガスセンサ39が配置されている場合、車庫内全体としては、車外の空気中の特定ガス成分濃度はさほど高くないにもかかわらずエンジン10の燃焼が停止され、その結果、車外環境が良好であるにもかかわらずバッテリ29の充電が中断されてしまうことがある。また逆に、特定ガス成分が滞留しにくく、他よりも希薄になりやすい位置にガスセンサ39が配置されている場合、実際には車外の空気中の特定ガス成分濃度が高いにもかかわらずエンジン10の燃焼が継続され、その結果、車外の空気中におけるCOやNOxが更に高濃度化したり、あるいはO2が更に低濃度化したりすることが考えられる。そこで、本実施形態では、エンジン燃焼中において常に空気が流れている吸気通路11にガスセンサ39を配置することとしている。また、車両側にガスセンサ39を設けることで、車両の移動先の駐車場所に、空気中の特定ガス成分の濃度を検出するガスセンサが配置されていなくても、車両周囲の空気濃度を随時監視することが可能である。
【0035】
また、エンジン燃焼中では、吸気通路11と同様に排気通路24でもガスの流れは常に発生しており、ガスの滞留が少ないと言える。ところが、排気通路24にガスセンサ39を配置した場合、エンジン10の排気の影響により、ガスセンサ周囲では特定ガス成分の濃度が高くなり、その結果、車外の空気の濃度監視を適切に実施できないことが考えられる。これに対し、吸気通路11であれば、エンジン燃焼中に車外の空気が逐次取り込まれるため、濃度の偏りの影響をさほど受けずに済む。したがって、車両周囲の空気濃度を精度良く監視することが可能となる。
【0036】
次に、本実施形態の環境悪化抑制処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ECU40のマイコン41により所定周期毎に実行される。
【0037】
図2において、ステップS11では、車両停止状態においてエンジン10が燃焼中か否かを判定する。ステップS11がYESの場合、ステップS12へ進み、ガスセンサ39の検出値を取得し、その検出値に基づいて、吸気中における各成分のガス濃度を算出する。ステップS13では、吸気温センサ34により検出した吸気温度、及びエアフロメータ33により検出した吸入空気量に基づいて、ガス濃度の算出値を補正する。なお、ガス濃度補正に用いるパラメータとしては、吸気温度及び吸入空気量以外に、吸気圧センサ16に基づき検出した吸気管圧力や、吸気の湿度等を含んでいてもよい。
【0038】
続くステップS14では、補正後のガス濃度(車外の特定ガス成分の濃度)が所定の異常範囲にあるか否かを判定する。本実施形態では、ガス成分ごとに異常範囲が予め定められており、ガスセンサ39の検出値に基づき算出した各成分のガス濃度と、そのガス成分に対応する異常範囲とを比較することにより行う。具体的には、エンジン10の燃焼に伴い増加する第1ガス成分(例えば、COやCO2、NOx、HCなど)については、ガス成分ごとに定めた閾値よりも高濃度側の場合に所定の異常範囲にあると判定する。また、エンジン10の燃焼に伴い減少する第2ガス成分(例えばO2など)については、ガス成分ごとに定めた閾値よりも低濃度側の場合に所定の異常範囲にあると判定する。
【0039】
検出対象のガス成分の少なくともいずれかが異常範囲内である場合、ステップS14がYESとなり、ステップS15へ進み、環境悪化抑制処理を実施する。本実施形態では、エンジン10への燃料供給を停止するとともに、点火プラグ25による点火を停止する。
【0040】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0041】
ガスセンサ39をエンジン10の吸気通路11に設ける構成としたため、エンジン燃焼中においてガスセンサ周囲のガス濃度の偏りが少なく、よって、車外空気のガス濃度の監視を適切に実施することができる。また、ガスセンサ39を吸気通路11に設けることにより、車両の移動先での駐車場所において車外空気の濃度を監視するガスセンサが設けられていなくても、車両周囲の空気の濃度を監視することができる。したがって、本構成によれば、車外環境が悪化したことを精度良く検出することができ、ひいては、ガス成分の濃度変化に伴う車外の環境悪化を抑制する必要があるときに適切に実施することができる。
【0042】
ガスセンサ39の配置位置について、特に、吸気通路11のうちスロットルバルブ14よりも上流側にガスセンサ39を配置したため、吸気通路11の壁面や吸気バルブ21などに付着した燃料の蒸発ガスの影響による検出誤差を極力小さくすることができる。その結果、車外の空気中のガス濃度を精度良く検出することができる。
【0043】
また、吸気通路11のうちエアクリーナ12よりも下流側にガスセンサ39を配置したため、大気中に含まれる粉塵が除去された後の吸気を対象としてガス濃度を検出することができ、粉塵などの影響によるセンサの検出誤差を小さくすることができる。
【0044】
環境悪化抑制処理として、本実施形態では、エンジンの燃焼を停止させる燃焼停止処理を実施する構成としたため、車両周囲においてCOやNOxの濃度が更に高くなったり、あるいはO2濃度が更に低くなったりするのを回避することができる。
【0045】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、吸気通路11のうち、エアクリーナ12とスロットルバルブ14との間にガスセンサ39を配置したが、吸気通路11であれば、上記以外にガスセンサ39を配置してもよく、例えばスロットルバルブ14よりも排気下流側にガスセンサ39を配置してもよい。具体的には、スロットルバルブ14とサージタンク15との間にガスセンサ39を配置してもよいし、サージタンク15に配置してもよい。あるいは、吸気マニホールド17に配置してもよい。
【0047】
・上記実施形態では、ガスセンサ39の検出値に基づき算出した特定ガス成分の濃度が所定の異常範囲にある場合、環境悪化抑制処理として、エンジン10の燃焼を停止する処理を実施したが、環境悪化抑制処理としては上記に限定しない。例えば、特定ガス成分の濃度変化に伴い車外の環境が悪化したことをユーザに通知する通知手段を設け、環境悪化抑制処理として、通知手段によるユーザへの通知を実施する構成としてもよい。
【0048】
図3に、本実施形態のシステム構成図を示す。本システムは、図3に示すように、上記通知手段として通信装置51を備えている。通信装置51は、例えば無線通信によってメッセージを表示可能な表示装置(例えば、携帯電話やモニタなど)であり、「車庫内の換気を行ってください。」「エンジンを止めてください。」等といった旨のメッセージが表示されることで、車外環境が悪化したことをユーザに通知可能になっている。なお、通信装置51は、文字以外に、音や光などによってユーザに通知するものであってもよい。
【0049】
ECU40のマイコン41は、ガスセンサ39の検出信号に基づいて、車外の空気中における特定ガス成分の濃度が所定の異常範囲にあると判定した場合、通信装置51に通知指令信号を出力する。通信装置51は、その入力した通知指令信号に基づいて、通信装置51によるユーザへの通知を行う。このとき、通信装置51によるユーザへの通知に合わせて、ECU40のマイコン41がエンジン10の燃焼を自動停止してもよい。なお、通知手段としては、通信装置51の他、車庫内や居室内等に設けられた警報器等であってもよい。
【0050】
・車両を駐車する車庫において、該車庫内の換気を行う換気手段(図3の換気装置52)を設け、環境悪化抑制処理として、換気装置52による車庫内の換気を実施する構成としてもよい。具体的には、換気装置52は、例えば車庫側に設けられた換気口と、換気口を開閉する開閉部材とを備えている。なお、換気装置52は、換気口に配置された電動ファンを更に備えていてもよい。ECU40のマイコン41は、ガスセンサ39の検出信号に基づいて、車外の空気中における特定ガス成分の濃度が所定の異常範囲にあると判定すると、換気装置52に、無線通信により換気駆動信号を出力する。換気装置52では、その入力した換気駆動信号に基づいて、開閉部材の作動により換気口が開くとともに、電動ファンが作動する。このとき、ECU40のマイコン41は、換気装置52による車庫内の換気を行うとともに、エンジン10の燃焼を自動停止してもよい。
【0051】
・図3において、ガスセンサ39の検出信号に基づいて、車外の空気中における特定ガス成分の濃度を検出する際、車両に取り付けられた電動ファン53(例えば、ラジエータファンやコンデンサファン等)を作動させる。こうすることにより、車庫内の空気が撹拌され、車庫内において特定ガス成分の濃度の偏りが生じるのを抑制することができる。
【0052】
・ガスセンサ39と、吸気通路11に配置されたガスセンサ39以外のセンサのうちの1つ又は複数とを一体化して吸気通路11に配置する。後者のセンサとしては、例えばエアフロメータ33や吸気温センサ34、吸気圧センサ16を含む。吸気通路11に既設のセンサとガスセンサ39とを一体化して配置することで、電源やグランドラインを共通化でき、システムの簡素化を図ることができる。
【0053】
・上記実施形態では、ガスセンサ39で検出した特定ガス成分の濃度が所定の異常範囲にある場合にエンジン10の燃焼を停止したが、エンジン燃焼中においてガスセンサ39の検出信号に基づいて特定ガス成分の濃度変化を検出し、その検出した濃度変化に基づいて、エンジン10の燃焼を停止する前に、その旨を事前に通知するか又はエンジン10の燃焼は継続しつつエンジン10の出力を低下するかの少なくともいずれかの処理(停止前処理)を実施する構成としてもよい。この場合、エンジン停止する旨が事前に通知されることで、ユーザに対して例えば換気等といった車両周囲の環境の改善をエンジンの燃焼停止前に促すことができる。また、エンジンの出力制限が事前に行われることで、車外へのCOやNOx等の排出量をエンジンの燃焼停止前に少なくすることができる。したがって、本構成によれば、エンジンの燃焼を停止する前に、車外の環境を改善したり更なる悪化を抑制したりすることができ、ひいては、エンジン燃焼停止の実行を遅らせることができる。
【0054】
・上記実施形態では、車両走行の動力源としてモータMG2を備えるとともに、発電専用のエンジン10を備えるハイブリッド車両(レンジエクステンダ車両)に本発明を具体化した場合について説明したが、ハイブリッド車両の構成はこれに限定せず、例えば車両走行の動力源としてモータとエンジンとを備える車両に適用してもよい。また、ハイブリッド車両に限定せず、例えば車両走行の動力源がエンジンのみである車両に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…エンジン、11…吸気通路、12…エアクリーナ、14…スロットルバルブ、24…排気通路、26…触媒、29…バッテリ、39…ガスセンサ、40…ECU、41…マイコン(ガス濃度検出手段、処理制御手段、濃度変化検出手段、停止前処理手段、通知手段)、MG1,MG2…モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気側から排気側に流れるガスにおいて燃焼前後で濃度変化するガス成分を検出対象とするガスセンサを備える車両に適用され、
前記ガスセンサが、エンジンの吸気通路に配置されており、
車両が走行していない状態でのエンジン燃焼中において、前記ガスセンサの検出信号に基づいて、車外の空気中に含まれる前記ガス成分の濃度を検出するガス濃度検出手段と、
前記ガス濃度検出手段により検出した濃度が所定の異常範囲にある場合に、前記ガス成分の濃度変化に伴う車外の環境悪化を抑制する処理である環境悪化抑制処理を実施する処理制御手段と、
を備えることを特徴とする車外環境制御システム。
【請求項2】
前記吸気通路に、エンジンの吸入空気量を調節するスロットルバルブが配置されており、
前記ガスセンサは、前記吸気通路のうち、前記スロットルバルブよりも上流側に配置されている請求項1に記載の車外環境制御システム。
【請求項3】
前記吸気通路の最上流部に、エンジンの吸入空気を濾過するエアクリーナが配置されており、
前記ガスセンサは、前記吸気通路のうち、前記エアクリーナよりも下流側に配置されている請求項1又は2に記載の車外環境制御システム。
【請求項4】
前記処理制御手段は、前記環境悪化抑制処理として、エンジンの燃焼を停止させる燃焼停止処理を実施する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車外環境制御システム。
【請求項5】
前記ガスセンサの検出信号に基づいて、エンジン燃焼中における前記ガス成分の濃度変化を検出する濃度変化検出手段と、
前記処理制御手段による前記燃焼停止処理を実施する前に、前記濃度変化検出手段により検出した濃度変化に基づいて、前記燃焼停止処理を実施するおそれがあることをユーザに通知する処理及びエンジンの燃焼を継続したままエンジン出力を低下させる処理の少なくともいずれかを実施する停止前処理手段と、
を備える請求項4に記載の車外環境制御システム。
【請求項6】
前記ガス成分の濃度変化に伴い車外の環境が悪化したことをユーザに通知する通知手段を備え、
前記処理制御手段は、前記環境悪化抑制処理として、前記通知手段によるユーザへの通知を実施する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車外環境制御システム。
【請求項7】
前記車両を駐車する車庫において、該車庫内の換気を行う換気手段が設けられており、
前記処理制御手段は、前記環境悪化抑制処理として、前記換気手段を作動して前記車庫内の換気を実施する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車外環境制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−233409(P2012−233409A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100404(P2011−100404)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】