説明

車車間通信装置

【課題】車車間通信装置において、自車両の現在位置を高精度に推定する。
【解決手段】車車間通信装置は、自車両(10)の測位位置を取得する測位位置取得手段(110)と、地図データに基づいて測位位置に対してマップマッチング処理を行うことにより、測位位置を補正して自車両の現在位置を推定する現在位置推定手段(121)と、現在位置の第1の信頼度を決定する信頼度決定手段(122)と、自車両と他車両(20a、20b)との間で情報の送受信を行う通信手段(130)と、複数の他車両における、それぞれの位置精度から求まる第2の信頼度が自車両の第1の信頼度よりも高い場合には、複数の他車両の各々の測位位置と現在位置との差分を複数の他車両の各々の第1の信頼度で重み付けして加算することにより補正量を算出し、該補正量及び自車両の測位位置に基づいて自車両の現在位置を変更する現在位置変更手段(124)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両間で通信を行う車車間通信装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車車間通信装置として、無線通信を利用して車両間で自車両の位置情報(以下、「自車位置情報」と適宜称する)を送受信するものがある(例えば特許文献1参照)。また、自車両の現在位置を推定する方法として、GPS(Global positioning system)衛星から電波を受信して自車両の測位位置を算出し、この測位位置に対してマップマッチング処理を行うことにより自車両の現在位置を推定する方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、車両間で、自車位置情報及びこの自車位置情報の確からしさの指標である自信度を送受信して、他車両から受信した自信度が自車両の自信度よりも高い場合には、他車両から受信した自車位置情報に基づいて、自車両の自車位置情報の補正を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−178270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術によれば、自車両は、当該自車両よりも高い自信度を有する一の他車両から受信した自車位置情報に基づいて、当該自車両の自車位置情報を補正する。このため、この一の他車両から受信した自車位置情報が誤っている場合には、自車両の自車位置情報を誤って補正してしまうことになる。よって、自車両の現在位置を推定する精度が低下してしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、自車両の現在位置を高精度に推定することが可能な車車間通信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車車間通信装置は上記課題を解決するために、複数の車両の各々に搭載され、前記車両間で通信を行う車車間通信装置であって、自車両の測位位置を取得する測位位置取得手段と、地図データに基づいて前記測位位置に対してマップマッチング処理を行うことにより、前記測位位置を補正して自車両の現在位置を推定する現在位置推定手段と、前記現在位置の確からしさの指標である第1の信頼度を決定する信頼度決定手段と、自車両と他車両との間で前記測位位置、前記現在位置及び前記第1の信頼度を含む情報の送受信を行う通信手段と、複数の他車両の各々の前記第1の信頼度に基づいて前記複数の他車両における、それぞれの位置精度から求まる第2の信頼度を算出し、該算出した第2の信頼度が自車両の前記第1の信頼度よりも高い場合には、前記複数の他車両の各々の前記測位位置と前記現在位置との差分を前記複数の他車両の各々の前記第1の信頼度で重み付けして加算することにより補正量を算出し、該補正量及び自車両の前記測位位置に基づいて自車両の前記現在位置を変更する現在位置変更手段とを備える。
【0008】
本発明の車車間通信装置によれば、その動作時には、各車両において、例えばGPS受信機等として構成される測位位置取得手段によって、例えばGPS衛星からの電波が受信され、緯度及び経度の組み合わせとして表現される自車両の測位位置が取得される。該取得された測位位置に対して現在位置推定手段によってマップマッチング処理が行われることで、自車両の現在位置が推定される。マップマッチング処理は、例えば、測位位置と地図データに含まれる道路データとを比較することにより、自車両が走行している道路を検出し、該道路上に自車両の現在位置を推定する処理である。
【0009】
本発明では、自車両の現在位置についての第1の信頼度(或いは「自信度」と呼ぶこともできる)が信頼度決定手段によって決定される。第1の信頼度は、自車両の現在位置の確からしさの指標であり、例えば、GPS衛星から受信する電波についてのマルチパスの度合い、地形の影響度、或いは地図データの自信度等に基づいて決定される。信頼度は、例えば、所定範囲の数値(例えば1、2、・・・、9、10など)として決定される。
【0010】
上述した測位位置、現在位置及び信頼度を含む情報は、車両間で通信手段によって送受信される。
【0011】
本発明では特に、複数の他車両の測位位置、現在位置及び第1の信頼度に基づいて、自車両の現在位置を変更する現在位置変更手段を備える。具体的には、現在位置変更手段は、先ず、複数の他車両の各々の第1の信頼度に基づいて複数の他車両における、それぞれの位置精度から求まる第2の信頼度を算出する。第2の信頼度は、例えば、複数の他車両の第1の信頼度の二乗和を複数の他車両の第1の信頼度の和で割ることにより算出される。尚、第2の信頼度は、複数の他車両の全体としての現在位置の確からしさの指標として算出されればよく、例えば、複数の他車両の信頼度の平均であってもよいし、二乗平均平方根であってもよい。第2の信頼度は、複数の他車両の全体としての現在位置の確からしさの指標となるという意味で、「複数の他車両の総合的な信頼度」と呼ぶこともできる。次に、現在位置変更手段は、算出した第2の信頼度が自車両の第1の信頼度よりも高い場合には、複数の他車両の各々の測位位置と現在位置との差分を複数の他車両の各々の信頼度で重み付けして加算することにより補正量を算出する。尚、複数の他車両の各々の測位位置と現在位置との差分は、典型的には、ベクトル量であり、補正量もベクトル量として算出される。次に、現在位置変更手段は、算出した補正量及び自車両の測位位置に基づいて自車両の現在位置を変更する。具体的には、現在位置変更手段は、算出した補正量及び自車両の測位位置に基づいて変更後現在位置を算出し、現在位置推定手段によって推定された自車両の現在位置を変更後現在位置に変更する。
【0012】
よって、例えば、仮に、上述した特許文献1に開示された技術のように、自車両よりも高い信頼度を有する一の他車両のみの現在位置等によって自車両の現在位置を補正する場合と比較して、自車両の現在位置の精度を高めることができる。即ち、自車両よりも高い信頼度を有する一の他車両の現在位置が誤っている場合にも、該誤った他車両の現在位置に基づいて自車両の現在位置を誤って補正してしまうことを抑制或いは防止できる、或いは、誤って補正してしまう量を低減することができる。従って、自車両の現在位置を高精度に推定することができる。
【0013】
以上説明したように、本発明の車車間通信装置によれば、自車両の現在位置を高精度に推定することが可能となる。
【0014】
本発明の車車間通信装置の一態様では、前記現在位置変更手段は、前記複数の他車両の前記第1の信頼度の二乗和を前記複数の他車両の前記第1の信頼度の和で割ることにより、前記第2の信頼度を算出する。
【0015】
この態様によれば、複数の他車両の全体としての現在位置の確からしさの指標として好適な第2の信頼度を算出することができる。よって、自車両の現在位置の精度をより一層高めることが可能となる。
【0016】
本発明の車車間通信装置の他の態様では、前記現在位置変更手段は、前記補正量及び自車両の前記測位位置に基づいて変更後現在位置を算出し、前記信頼度決定手段は、前記現在位置と前記変更後現在位置とが一致する場合には、前記第1の信頼度を高める。
【0017】
この態様によれば、現在位置推定手段によって推定された現在位置と変更後現在位置とが一致する場合(言い換えれば、現在位置推定手段によって推定された現在位置が、複数の他車両の現在位置等を考慮しても確からしい場合)に第1の信頼度を高めるので、現在位置の確からしさの指標である第1の信頼度の精度を高めることができる。この結果、後に変更後現在位置が算出される場合に、変更後現在位置の精度を高めることができる。
【0018】
本発明の車車間通信装置の他の態様では、前記現在位置変更手段によって前記現在位置が変更された場合に、前記複数の他車両に前記変更された旨を通知する変更通知手段を更に備える。
【0019】
この態様によれば、他車両における現在位置変更手段による補正量の算出の精度を高めることができ、他車両における現在位置の精度を高めることができる。尚、現在位置が変更された旨が他車両に通知された場合には、例えば、他車両側では、改めて、自車両から測位位置、現在位置及び第1の信頼度が通信手段によって受信され、現在位置変更手段による処理が行われる。
【0020】
本発明の車車間通信装置の他の態様では、前記信頼度決定手段は、前記測位位置取得手段がGPS衛星から受信する電波についてのマルチパスの度合い、地形の影響度、及び前記地図データの自信度の少なくとも一つに基づいて前記第1の信頼度を決定する。
【0021】
この態様によれば、現在位置の確からしさの指標である第1の信頼度の精度を高めることができる。従って、現在位置変更手段によって変更された後の現在位置の精度を高めることができる。
【0022】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る車車間通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る車車間通信装置の動作を説明するための概念図である。
【図3】第1実施形態に係る自車両情報及び他車両情報を示す概念図である。
【図4】第1実施形態に係る車車間通信装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0025】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る車車間通信装置について、図1から図4を参照して説明する。
【0026】
先ず、本実施形態に係る車車間通信装置の構成について、図1を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る車車間通信装置の構成を示すブロック図である。
【0028】
図1において、本実施形態に係る車車間通信装置100は、複数の車両の各々に搭載され、車両間で通信を行う車車間通信装置である。
【0029】
車車間通信装置100は、GPS受信機110、演算制御部120、車車間通信無線機130及び地図データベース(地図DB)140を備えている。
【0030】
GPS受信機110は、本発明に係る「測位位置取得手段」の一例であり、GPS衛星から電波を受信して、自車両(即ち、当該車車間通信装置100が搭載された車両)の測位位置を取得するように構成されたGPS受信機である。測位位置は、緯度及び経度の組み合わせとして表現される。測位位置を含む情報は、後述する車車間通信無線機130によって、車両間で送受信される。
【0031】
演算制御部120は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータとして構成されており、マッチング処理部121、信頼度決定部122、他車両総合信頼度算出部123、マッチング位置変更処理部124及びマッチング位置変更通知処理部125を備えている。
【0032】
マッチング処理部121は、本発明に係る「現在位置推定手段」の一例であり、地図データベース140に記憶された地図データに基づいて、GPS受信機110によって取得された測位位置に対してマップマッチング処理を行うことにより、測位位置を補正して自車両の現在位置を推定する。マップマッチング処理は、例えば、測位位置と地図データに含まれる道路データとを比較することにより、自車両が走行している道路を検出し、該道路上に自車両の現在位置を推定する処理である。マップマッチング処理としては、公知のマップマッチング処理を用いることができる。尚、以下では、マッチング処理部121によって推定される自車両の現在位置を「マッチング位置」と適宜称する。マッチング位置を含む情報は、後述する車車間通信無線機130によって、車両間で送受信される。
【0033】
信頼度決定部122は、本発明に係る「信頼度決定手段」の一例であり、マッチング処理部121によって推定されたマッチング位置についての信頼度を決定する。信頼度は、マッチング位置の確からしさの指標であり、例えば、GPS衛星から受信する電波についてのマルチパスの度合い、地形の影響度、或いは地図データの自信度等に基づいて決定される。信頼度は、例えば、所定範囲の数値(例えば1、2、・・・、9、10など)として決定される。信頼度を含む情報は、後述する車車間通信無線機130によって、車両間で送受信される。
【0034】
他車両総合信頼度算出部123は、後述するマッチング位置変更処理部124と共に本発明に係る「現在位置変更手段」の一例を構成し、複数の他車両の各々の信頼度に基づいて複数の他車両の総合的な信頼度を算出する。尚、複数の他車両の総合的な信頼度は、本発明に係る「第2の信頼度」の一例である。以下では、複数の他車両の総合的な信頼度を「他車両総合信頼度」と適宜称する。他車両総合信頼度は、複数の他車両の信頼度の二乗和を複数の他車両の信頼度の和で割ることにより算出される。即ち、他車両総合信頼度Tは、以下の式に基づいて算出される。
【0035】
T=(C1×C1+…+Ck×Ck+…+Cn×Cn)/(C1+…+Ck+…Cn)
但し、Ckは他車両の信頼度であり、nは他車両の車両数である。
【0036】
マッチング位置変更処理部124は、他車両総合信頼度が自車両の信頼度よりも高い場合には、複数の他車両の各々の測位位置とマッチング位置との差分を複数の他車両の各々の信頼度で重み付けして加算することにより補正量を算出する。尚、複数の他車両の各々の測位位置とマッチング位置との差分は、ベクトル量であり、補正量もベクトル量として算出される。マッチング位置変更処理部124は、算出した補正量及び自車両の測位位置に基づいて自車両のマッチング位置を変更する。具体的には、マッチング位置変更処理部124は、算出した補正量及び自車両の測位位置に基づいて変更後マッチング位置を算出し、マッチング処理部121によって推定された自車両のマッチング位置を変更後マッチング位置に変更する。
【0037】
マッチング位置変更通知処理部125は、本発明に係る「変更通知手段」の一例であり、マッチング位置変更処理部124によってマッチング位置が変更された場合に、複数の他車両にマッチング位置が変更された旨を通知する。尚、マッチング位置が変更された旨の通知は、後述する車車間通信無線機130によって、車両間で送受信される。
【0038】
車車間通信無線機130は、本発明に係る「通信手段」の一例であり、車両間での通信(即ち、車車間通信)を行うことが可能に構成された無線通信機である。本実施形態では、上述した測位位置、マッチング位置及び信頼度を含む情報が車両間で送受信される。
【0039】
地図データベース140は、例えばハートディスクドライブ、DVDドライブ等の記憶装置から構成されており、上述したマッチング処理部121によるマップマッチング処理のための地図データが記憶されている。地図データとしては、例えば、道路名、道路の種別、道路上におけるノード(例えば交差点や端点)、ノード間のつながりを示すリンク等がある。尚、ノードは緯度及び経度の組み合わせとして表現されている。
【0040】
次に、本実施形態に係る車車間通信装置の動作について、図2から図4を参照して説明する。
【0041】
図2は、本実施形態に係る車車間通信装置の動作を説明するための概念図である。
【0042】
以下では、自車両10に搭載された車車間通信装置100が、2台の他車両20a及び20bの測位位置、マッチング位置、信頼度等に基づいて、自車両10のマッチング位置を変更する動作について説明する。尚、本実施形態に係る車車間通信装置100は、他車両20の車両数が3台以上の場合にも同様に適用可能である。
【0043】
図2に示すように、自車両10の周辺に、他車両20a及び20bが走行していると仮定する。自車両10、他車両20a及び20bの各々には、上述した本実施形態に係る車車間通信装置100が搭載されている。
【0044】
図2に示すように、ある時点において、自車両10の測位位置(即ち、当該自車両10に搭載された車車間通信装置100のGPS受信機110によって取得される測位位置)は、測位位置10Pであり、自車両10のマッチング位置(即ち、当該自車両10に搭載された車車間通信装置100のマッチング処理部121によって推定されるマッチング位置)は、マッチング位置10Q1であると仮定する。マッチング位置10Q1は、道路R1上に位置している。つまり、この時点においては、自車両10は道路R1を走行中であると当該自車両10の車車間通信装置100によって推定されている。一方、この時点において、他車両21aの測位位置(即ち、当該他車両21aに搭載された車車間通信装置100のGPS受信機110によって取得される測位位置)は、測位位置20aPであり、他車両20aのマッチング位置(即ち、当該他車両20aに搭載された車車間通信装置100のマッチング処理部121によって推定されるマッチング位置)は、マッチング位置20aQであると仮定する。マッチング位置20aQは、道路R2上に位置している。また、この時点において、他車両21bの測位位置(即ち、当該他車両21bに搭載された車車間通信装置100のGPS受信機110によって取得される測位位置)は、測位位置20bPであり、他車両20bのマッチング位置(即ち、当該他車両20bに搭載された車車間通信装置100のマッチング処理部121によって推定されるマッチング位置)は、マッチング位置20bQであると仮定する。マッチング位置20bQは、道路R3上に位置している。
【0045】
自車両10、他車両20a及び20bの各々では、各々に搭載された車車間通信装置100(より具体的には、その信頼度決定部122)によってマッチング位置についての信頼度が決定されている。
【0046】
ここで、自車両10と他車両20(即ち、他車両20a或いは20b)との間(即ち、自車両10及び他車両20の各々に搭載された車車通信装置100間)で送受信される自車両情報及び他車両情報について、図3を参照して説明する。
【0047】
図3は、自車両情報及び他車両情報を示す概念図である。
【0048】
図3に示すように、自車両情報10iには、自車両10の測位位置(即ち、自車両測位位置)と、自車両10のマッチング位置(即ち、自車両マッチング位置)と、この自車両マッチング位置についての信頼度とが含まれている。一方、他車両情報20iには、他車両20の測位位置(即ち、他車両測位位置)と、他車両20のマッチング位置(即ち、他車両マッチング位置)と、この他車両マッチング位置についての信頼度とが含まれている。
【0049】
図4は、本実施形態に係る車車間通信装置の動作を示すフローチャートである。尚、図4では、本実施形態に係る車車間通信装置によるマッチング位置の変更処理の流れを示している。
【0050】
図2及び図4において、先ず、自車両10の車車間通信装置100は、車車間通信により他車両20a及び20bの各々の車車間通信装置100から他車両情報20i(図3参照)を取得する(ステップS10)。即ち、他車両20a及び20bの各々の車車間通信無線機130から他車両情報20iが送信されて、自車両10の車車間通信無線機130によって受信される。
【0051】
次に、自車両10の車車間通信装置100は、他車両総合信頼度を算出する(ステップS20)。即ち、自車両10では、車車間通信装置100の他車両総合信頼度算出部123(図1参照)によって、2台の他車両20a及び20bの信頼度に基づいて他車両総合信頼度が算出される。この例では、他車両総合信頼度Tは、以下の式に基づいて算出される。
【0052】
T=(Ca×Ca+Cb×Cb)/(Ca+Cb)
但し、Caは他車両20aの信頼度であり、Cbは他車両20bの信頼度である。
【0053】
次に、自車両10の車車間通信装置100は、他車両総合信頼度が自車両10の信頼度よりも高いか否かを判定する(ステップS30)。即ち、自車両10では、車車間通信装置100のマッチング位置変更処理部124によって、他車両総合信頼度が自車両10の信頼度よりも高いか否かが判定される。
【0054】
他車両総合信頼度が自車両10の信頼度よりも高くない(即ち、他車両総合信頼度が自車両10の信頼度以下である)と判定された場合には(ステップS30:No)、自車両10のマッチング位置の変更は行われずに処理は終了する。
【0055】
一方、他車両総合信頼度が自車両10の信頼度よりも高いと判定された場合には(ステップS30:Yes)、自車両10の車車間通信装置100は、他車両20a及び20bの各々についての他車両情報20iに基づいて、変更後マッチング位置を算出する(ステップS40)。具体的には、自車両10では、車車間通信装置100のマッチング位置変更処理部124が、先ず、他車両20a及び20bの各々の測位位置とマッチング位置との差分を他車両20a及び20bの各々の信頼度で重み付けして加算することにより補正量を算出する。即ち、図2において、他車両20aの測位位置20aPとマッチング位置20aQとの差分B1と、他車両20bの測位位置20bPとマッチング位置20bQとの差分B2とを、他車両20aの信頼度Ca及び他車両20bの信頼度Cbで重み付けして加算することにより補正量を算出する。つまり、この例では、補正量Aは、以下の式に基づいて算出される。
【0056】
A=(Ca×B1+Cb×B2)/(Ca+Cb)
尚、差分B1及びB2はベクトル量であり、補正量Aもベクトル量として算出される。
【0057】
続いて、マッチング位置変更処理部124は、算出した補正量及び自車両10の測位位置10Pに基づいて変更後マッチング位置を算出する。具体的には、マッチング位置変更処理部124は、測位位置10Pに、算出した補正量Aを加えることにより変更後マッチング位置を算出する。この例では、変更後マッチング位置は、位置10Q2(図2参照)となる。変更後マッチング位置10Q2は、他車両20aのマッチング位置20aQと同様に、道路R2上に位置している。
【0058】
次に、自車両10の車車間通信装置100は、推定済みのマッチング位置と変更後マッチング位置とが異なるか否かを判定する(ステップS50)。即ち、自車両10では、車車間通信装置100のマッチング位置変更処理部124によって、推定済みのマッチング位置10Q1と、算出した変更後マッチング位置10Q2とが異なるか否かが判定される。
【0059】
推定済みのマッチング位置と変更後マッチング位置とが異ならない(即ち、推定済みのマッチング位置と変更後マッチング位置とが一致する)場合には(ステップS50:No)、自車両10の車車間通信装置100は、信頼度を増加させる(ステップS70)。即ち、推定済みのマッチング位置と変更後マッチング位置とが一致する場合には、他車両20a及び20bについての他車両情報20iを考慮しても推定済みのマッチング位置が確からしいとして、自車両10のマッチング位置についての信頼度を高める。これにより、信頼度の精度を高めることができる。
【0060】
一方、推定済みのマッチング位置と変更後マッチング位置とが異なる場合には(ステップS50:Yes)、自車両10の車車間通信装置100は、マッチング位置を更新する(ステップS60)。即ち、図2に示す例のように推定済みのマッチング位置10Q1と変更後マッチング位置10Q2とが異なる場合には、自車両10では、車車間通信装置100のマッチング位置変更処理部124が、マッチング位置を推定済みのマッチング位置10Q1から変更後マッチング位置10Q2に変更する。
【0061】
このように、本実施形態では特に、自車両10の車車間通信装置100は、2台の他車両20a及び20bの各々についての他車両情報20i(図3参照)に基づいて、変更後マッチング位置を算出し(ステップS40)、推定済みのマッチング位置と変更後マッチング位置とが異なる場合には(ステップS50:Yes)、マッチング位置を推定済みのマッチング位置10Q1を変更後マッチング位置10Q2に変更する(ステップS60)。よって、例えば、仮に、自車両10よりも高い信頼度を有する一の他車両20a(又は20b)のみのマッチング位置20aQ(又は20bQ)等によって自車両10のマッチング位置を補正する場合と比較して、自車両10のマッチング位置の精度を高めることができる。即ち、自車両10よりも高い信頼度を有する一の他車両20a(又は20b)のマッチング位置が誤っている場合にも、該誤った他車両のマッチング位置に基づいて自車両10のマッチング位置を誤って補正してしまうことを抑制或いは防止できる、或いは、誤って補正してしまう量を低減することができる。従って、本実施形態に係る車車間通信装置100によれば、自車両10のマッチング位置を高精度に推定することができる。
【0062】
図2及び図4において、マッチング位置を更新した(ステップS60)後、自車両10の車車間通信装置100は、他車両20a及び20bに、マッチング位置が変更された旨を通知する(ステップS80)。即ち、自車両10の車車間通信装置100のマッチング位置変更通知処理部125によって、マッチング位置が変更された旨が車車間通信無線機130を介して他車両20側に送信される。このようにマッチング位置が変更された旨を通知された他車両20側では、改めて、自車両10から測位位置、マッチング位置、信頼度等を含む情報が受信され、マッチング位置の変更処理が行われる。これにより、他車両20a及び20bにおけるマッチング位置の変更処理の精度を高めることができる、言い換えれば、他車両20a及び20bにおけるマッチング位置の精度を高めることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る車車間通信装置100は、GPS受信機110、演算制御部120、車車間通信無線機130及び地図データベース140を備えているので、自車両10のマッチング位置を高精度に推定することができる。
【0064】
本実施形態では特に、上述したように、他車両総合信頼度算出部123(図1参照)は、複数の他車両の信頼度の二乗和を複数の他車両の信頼度の和で割ることにより他車両総合信頼度を算出する。よって、本実施形態によれば、複数の他車両の全体としてのマッチング位置の確からしさの指標として好適な他車両総合信頼度を算出することができる。従って、自車両10のマッチング位置の精度をより一層高めることが可能となる。
【0065】
更に、本実施形態では特に、上述したように、信頼度決定部122(図1参照)は、GPS衛星から受信する電波についてのマルチパスの度合い、地形の影響度、或いは地図データの自信度に基づいて信頼度を決定する。よって、本実施形態によれば、マッチング位置の確からしさの指標である信頼度の精度を高めることができる。従って、マッチング位置変更処理部124によって複数の他車両の信頼度等に基づいて算出される変更後マッチング位置の精度を高めることができる。
【0066】
尚、本発明に係る車車間通信装置を、GPS衛星からの電波を受信する性能の比較的高いGPS受信機を搭載した車両に適用することで、GPS受信機の性能が比較的低い複数の他車両の現在位置(即ち、マッチング位置)を精度良く補正することが可能となる。ここで、現在位置が精度良く補正された他車両によって、これとは別の他車両の現在位置が補正されることで、複数の他車両の全ての現在位置を精度良く補正することが可能となる。つまり、本発明に係る車車間通信装置が適用された複数の車両のうち、比較的高性能なGPS受信機を搭載した車両によって、複数の他車両の現在位置を正しい位置に収束させることが可能となる。
【0067】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車車間通信装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
10…自車両、20a、20b…他車両、10i…自車両情報、20i…他車両情報、100…車車間通信装置、110…GPS受信機、120…演算制御部、121…マッチング処理部、122…信頼度決定部、123…他車両総合信頼度算出部、124…マッチング位置変更処理部、125…マッチング位置変更通知処理部、130…車車間通信無線機、140…地図データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両の各々に搭載され、前記車両間で通信を行う車車間通信装置であって、
自車両の測位位置を取得する測位位置取得手段と、
地図データに基づいて前記測位位置に対してマップマッチング処理を行うことにより、前記測位位置を補正して自車両の現在位置を推定する現在位置推定手段と、
前記現在位置の確からしさの指標である第1の信頼度を決定する信頼度決定手段と、
自車両と他車両との間で前記測位位置、前記現在位置及び前記第1の信頼度を含む情報の送受信を行う通信手段と、
複数の他車両の各々の前記第1の信頼度に基づいて前記複数の他車両における、それぞれの位置精度から求まる第2の信頼度を算出し、該算出した第2の信頼度が自車両の前記第1の信頼度よりも高い場合には、前記複数の他車両の各々の前記測位位置と前記現在位置との差分を前記複数の他車両の各々の前記第1の信頼度で重み付けして加算することにより補正量を算出し、該補正量及び自車両の前記測位位置に基づいて自車両の前記現在位置を変更する現在位置変更手段と
を備えることを特徴とする車車間通信装置。
【請求項2】
前記現在位置変更手段は、前記複数の他車両の前記第1の信頼度の二乗和を前記複数の他車両の前記第1の信頼度の和で割ることにより、前記第2の信頼度を算出する請求項1に記載の車車間通信装置。
【請求項3】
前記現在位置変更手段は、前記補正量及び自車両の前記測位位置に基づいて変更後現在位置を算出し、
前記信頼度決定手段は、前記現在位置と前記変更後現在位置とが一致する場合には、前記第1の信頼度を高める
請求項1又は2に記載の車車間通信装置。
【請求項4】
前記現在位置変更手段によって前記現在位置が変更された場合に、前記複数の他車両に前記変更された旨を通知する変更通知手段を更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載の車車間通信装置。
【請求項5】
前記信頼度決定手段は、前記測位位置取得手段がGPS衛星から受信する電波についてのマルチパスの度合い、地形の影響度、及び前記地図データの自信度の少なくとも一つに基づいて前記第1の信頼度を決定する請求項1から4のいずれか一項に記載の車車間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−58909(P2011−58909A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207878(P2009−207878)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】