説明

車載システム

【課題】共通のデータを互いに共有する複数の制御装置からなる車載システムにおいて、各制御装置間の不必要なデータの送受信を低減することを目的とする。
【解決手段】車載LANを介して起動情報を受信すると、通信用マイコン10は不揮発性メモリ14に記憶された設定情報ファイルの識別情報をオーディオマイコン20に送信し、オーディオマイコン20は、通信用マイコン10から送信された識別情報が、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルの識別情報と一致するか否かを判定する。ここで、各識別情報が一致しないと判定した場合には、識別情報が不一致である旨を示す判断結果を通信用マイコン10に送信し、一方、通信用マイコン10は、オーディオマイコン20から識別情報が不一致である旨を示す判断結果を受信した場合に、不揮発性メモリ14に記憶された設定情報ファイルをオーディオマイコン20に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、互いに通信可能に構成された複数の制御装置を備えた車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CD・DVDの再生、TV・FM/AMラジオの受信といったAV機能とナビゲーション機能を一体化したナビゲーションシステムが知られている。
そして、このようなナビゲーションシステムは一般に、複数の制御装置(例えば、ナビゲーション制御装置、オーディオ制御装置等)を備えており、例えば、複数の制御装置のうちの1つであるオーディオ制御装置が車載LANに接続されてシステムの外部の装置との間で通信可能に構成されており、ナビゲーション制御装置等の他の制御装置は、オーディオ制御装置を介してシステム外部からの情報を取得するように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
また、この提案のシステムにおいては、車両の種別に関わらず共通のハードウェア及びソフトウェアを用いることができるように構成されている。つまり、システム内の制御装置に、車種間で共通のプログラムと、車種毎に設定されたパラメータ(操作スイッチに割り当てるべき機能、表示装置に表示すべき初期画面等)と、が記憶されており、外部から入力された車両の種別を表す信号に従い対応するパラメータを選択し、共通のプログラムを実行する際にこのパラメータを用いることで、夫々の車種に対応した処理を行うものである。
【特許文献1】特開2004−196183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記提案のシステムにおいて、各制御装置にて特定の車種に対応した処理を実行させるために、上述したパラメータからなるデータ(以下、共通データともいう)を予め生成しておき、システムを構成する複数の制御装置の夫々に、この共通データを用いて処理を実行させるように構成することが考えられる。
【0005】
つまり、各制御装置の機能を実現するための固有のプログラムと、各制御装置間で共有される特定の車種に対応した共通データと、を各制御装置のメモリに予め記憶しておき、各制御装置が共通データを用いて固有のプログラムを実行することで、各制御装置にて特定の車種に対応したナビゲーション機能や、オーディオ機能等の所定の機能を実現し、全体として特定の車種に対応したナビゲーションシステムとするものである。
【0006】
そして、このようなシステムにおいて、共通データはバージョンアップ等のために適宜更新されることが想定されるが、上記提案のシステムのように、車載LANに接続されてシステム外部の装置と通信可能な制御装置(例えば、オーディオ制御装置)に対して他の制御装置(例えば、ナビゲーション制御装置)が接続されているような場合には、まず、このオーディオ制御装置の共通データの更新を行い、オーディオ制御装置を介してナビゲーション制御装置の共通データを更新することになる。このため、常時、各制御装置間に同一の共通データを記憶させておくために、オーディオ制御装置から所定のタイミングで(例えばシステムの起動時)ナビゲーション制御装置に共通データを送信し、オーディオ制御装置に記憶された共通データで、ナビゲーション制御装置に記憶された共通データを更新することが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記のように、所定のタイミングでオーディオ制御装置がナビゲーション制御装置に共通データを送信するように構成した場合には、オーディオ制御装置における共通データの送信処理、ナビゲーション制御装置における共通データの受信処理が繰り返し実行される。このため、例えば、各制御装置に記憶された共通データが当初から一致しており、ナビゲーション制御装置の共通データの更新をする必要がない場合には、共通データの送受信により無駄に制御装置間の通信負荷を上げてしまうという問題があった。
【0008】
また、このような問題は、ナビゲーションシステムに関わらず、共通のデータを互いに共有する複数の制御装置からなるシステムにおいても発生する問題である。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、共通のデータを互いに共有する複数の制御装置からなる車載システムにおいて、各制御装置間の不必要なデータの送受信を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の車載システムは、少なくとも制御データの一部を共通データとして互いに共用する複数の制御装置からなり、複数の制御装置の1つである第1制御装置が、共通データの供給源として、共通データの供給先として予め設定された第2制御装置に共通データを送信することにより、第2制御装置の共通データを更新するよう構成されている。
【0010】
そして、第2制御装置の共通データを更新する第1更新条件が成立すると、共通データ一致判定手段は、第2制御装置に記憶された共通データが第1制御装置に記憶された共通データと一致するか否かを、各共通データに付与された識別情報に基づき判定し、共通データ一致判定手段により共通データが一致しないと判定されると、共通データ送信許可手段は、第1制御装置から第2制御装置への共通データの送信を許可する。
【0011】
従って、本発明の車載システムによれば、第1更新条件が成立すると、第1制御装置の共通データと第2制御装置の共通データとが一致するか否かが判定され、共通データが一致していないと判定されたときに、第1制御装置から第2制御装置への共通データの送信が許可されるので、共通データが一致しており第2制御装置の共通データの更新の必要がない場合に、第1制御装置から第2制御装置への共通データの送信が禁止され、共通データを第1制御装置と第2制御装置との間で送受信するといった無駄なデータの送受信を低減できる。
【0012】
このため、例えば、車載システムが、制御データの一部を共通データとして互いに共有するナビゲーション制御装置、オーディオ制御装置等の複数の制御装置からなり、例えば、オーディオ制御装置が、他の制御装置に共通データを送信することにより各制御装置間で共通データを共有するように構成されたナビゲーションシステムである場合に、オーディオ制御装置と他の制御装置に記憶された共通データが一致しているときには、オーディオ制御装置から他の制御装置への共通データの送信は許可されず、共通データは送信されないので、各制御装置間の無駄なデータの送受信を低減することが可能となる。
【0013】
なお、本発明の車載システムは、上記のようなナビゲーションシステムに関わらず、制御データの一部を共通データとして互いに共有する複数の制御装置からなり、特定の制御装置から他の制御装置へ共通データを送信することにより制御装置間で共通データを共有するように構成された種々のシステムに適用することができ、上記のナビゲーションシステムと同様の効果を得ることができる。
【0014】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載システムにおいて、第2制御装置が、共通データを、共通データの供給先として予め設定された第3制御装置に送信する供給源としての機能を有するように構成されている。
【0015】
そして、第3制御装置の共通データを更新する第2更新条件が成立すると、共通データ一致判定手段が、第3制御装置に記憶された共通データが、第2制御装置に記憶された共通データと一致するか否かを各共通データに付与された識別情報に基づいて判定する。一方、共通データ送信許可手段は、共通データ一致判定手段により、共通データが一致しないと判定されると、第2制御装置から第3制御装置への共通データの送信を許可する。
【0016】
従って、請求項2に記載の車載システムによれば、第2制御装置と第3制御装置の共通データが一致しており第3制御装置の共通データの更新の必要がない場合に、第2制御装置から第3制御装置への共通データの送信が禁止され、共通データを第2制御装置と第3制御装置との間で送受信するといった無駄なデータの送受信を低減できる。
【0017】
また、請求項1または請求項2に記載の車載システムは、請求項3に記載のように、第2制御装置を複数設けるようにしてもよく、このようにすれば、複数の第2制御装置のうち共通データが一致しない第2制御装置への共通データの送信が許可され、共通データが一致する第2制御装置に対して共通データが送信されないので、第1制御装置の処理負荷や、各制御装置間の通信負荷を低減できる。
【0018】
一方、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の車載システムにおいて、共通データの供給源となる制御装置に、この制御装置に記憶された共通データの識別情報を読み取り共通データの供給先となる制御装置に送信する識別情報送信手段が設けられている。また、共通データ一致判定手段は、共通データの供給先となる制御装置に設けられており、識別情報送信手段から送信された識別情報が、供給先となる制御装置に記憶された共通データの識別情報と一致するか否かを判定する。
【0019】
例えば、共通データ一致判定手段は、共通データの供給源及び供給先となる制御装置とは別に設けることも可能であるが、請求項4に記載のようにすると、別に制御装置を設けることなく、共通データ一致判定手段を構成することができる。なお、識別情報は単に共通データの識別を表す情報であり、共通データに比べて非常に少ないデータ量で設定されるため、共通データを送受信する場合に比べ通信負荷が低減される。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の車載システムにおいて、共通データの供給先となる制御装置に、共通データの供給源となる制御装置に対して共通データ要求を送信する共通データ要求手段が設けられている。また、共通データ送信許可手段は共通データの供給源となる制御装置に設けられており、共通データ要求手段から送信された共通データ要求を受信した場合に、この供給源となる制御装置からの共通データの送信を許可する。
【0021】
例えば、共通データ送信許可手段は、共通データの供給源及び供給先となる制御装置とは別に設けることも可能であるが、請求項5に記載のようにすると、別に制御装置を設けることなく、共通データ送信許可手段を構成することができる。
【0022】
一方、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れかに記載の車載システムにおいて、制御データは、各制御装置が特定の機能を実現するためのプログラムを有しており、共通データが、上記プログラムが実行される際に用いられるパラメータ情報にて構成されている。
【0023】
従って、請求項6に記載の車載システムによれば、共通データを変更することで、同じプログラムを有する同一の制御装置にて、例えば車種や、車両が使用される地域等の種別に対応させた異なる処理を実行させることができる。
【0024】
また、請求項1〜請求項6の何れかに記載の車載システムは、請求項7に記載のように、識別情報を、共通データの識別番号、チェックサム、及び、バージョンのうちの少なくとも1つとし、共通データ一致判定手段が、共通データの識別番号、チェックサム、及び、バージョンのうちの少なくとも1つが一致することで、共通データが一致すると判定するようにしてもよく、このようにすれば、判定すべきデータ量が少ないので、共通データが一致するか否かの判定を短時間で行うことができる。
【0025】
また、請求項1〜請求項6の何れかに記載の車載システムは、請求項8に記載のように、識別情報として、共通データの識別番号、チェックサム、及び、バージョンを含み、共通データ一致判定手段が、共通データの識別番号とチェックサムとバージョンとの全てが一致することで、共通データが一致すると判定するようにしてもよく、このようにすれば、共通データが一致するか否かの判定をより確実なものとすることができる。
【0026】
一方、請求項1〜請求項8の何れかに記載の車載システムは、請求項9に記載のように、共通データ一致判定手段が、当該車載システムの起動時に、第1更新条件が成立したと判断して共通データが一致するか否かを判定するようにしてもよい。
【0027】
そして、このようにすれば、車載システムの起動時に共通データが一致するか否かの判定が行われるので、各制御装置間で共通データが一致している場合には、各制御装置にて制御データに基づいて夫々の機能を実現するための処理が開始されるタイミングが早くなる。その結果、車載システム全体が機能するまでの時間を低減することができる。
【0028】
また、請求項1〜請求項8の何れかに記載の車載システムは、請求項10に記載のように、第1制御装置を車載LANと接続し、車載LANを介して共通データの更新指令が入力されると、共通データ一致判定手段は第1更新条件が成立したと判断して、共通データが一致するか否かを判定するようにしてもよい。
【0029】
このようにすれば、車載LANを介して第1制御装置に更新指令を送信することで、共通データが一致するか否かを判定させ、第2制御装置の共通データを更新することができる。また、請求項11に記載のように、更新指令を車載システムの起動指令とすることで、車載システムの起動時に共通データが更新されるようにすることができる。
【0030】
また、請求項1〜請求項11の何れかに記載の車載システムは、請求項12に記載のように、制御装置のうちの1つをナビゲーション制御装置としてもよく、このようにすると、本発明の車載システムを、ナビゲーション制御装置を有するナビゲーションシステムとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の車載システムが適用された第1実施形態のナビゲーションシステム1の概略構成を示すブロック図である。
【0032】
第1実施形態のナビゲーションシステム1は、CD・DVDの再生、TV・FM/AMラジオの受信といったAV機能とナビゲーション機能を一体化したものであり、通信用マイコン10、オーディオマイコン20、ナビマイコン30、ディスプレイマイコン40等の複数のマイクロコンピュータ(以下、マイコンともいう)から構成されている。なお、本実施形態においては、本発明の制御装置をマイクロコンピュータにて構成したが、本発明の制御装置は、マイクロコンピュータを中心として構成される電子制御ユニットにより構成してもよい。
【0033】
通信用マイコン10は、CPU11、ROM12、RAM13、データを書き換え可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ等)14、通信部15を備えている。通信部15は、車載LANと接続されてナビゲーションシステム1の外部の装置と通信するための通信回路、及び、オーディオマイコン20と通信するための通信回路とを備えている。
【0034】
そして、CPU11は、ROM12、不揮発性メモリ14に記憶されたデータに基づいて処理を実行し、通信用マイコン10は、車載LANを介してナビゲーションシステム1の外部の装置と通信するための通信用のインタフェースとして機能する。
【0035】
オーディオマイコン20は、CPU21、ROM22、RAM23、データを書き換え可能な不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)24、通信部25を備えている。通信部25は、通信用マイコン10、ナビマイコン30、及び、ディスプレイマイコン40と夫々通信するための通信回路を備えている。また、オーディオマイコン20は、図示しないI/Oポートを備え、アンプ、スピーカ等からなる音声出力装置51と接続されている。
【0036】
そして、CPU21は、ROM22、不揮発性メモリ24に記憶されたデータに基づいて、CD・DVDの再生、TV・FM/AMラジオの受信等の各種処理を行う。例えば、CD・DVD、ラジオ等の音声を音声出力装置51から出力し、DVD等の画像の表示指令をディスプレイマイコン40に送信する。また、ナビマイコン30から受信した音声出力指令に応じて、音声出力装置51からガイド用の音声を出力したり、ナビマイコン30から受信した表示指令等の情報を、ディスプレイマイコン40に送信する。
【0037】
ナビマイコン30は、CPU31、ROM32、RAM33、データを書き換え可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)34、通信部35を備えている。通信部35は、オーディオマイコン20と通信するための通信回路を備えている。また、ナビマイコン30は、図示しないI/Oポートを備え、車両の現在位置を検出する位置検出器52、ユーザが各種指令を入力するための操作スイッチ群53、記憶媒体から地図データ等を読み込むための地図データ入力装置54等が接続されている。
【0038】
そして、CPU31は、ROM32、不揮発性メモリ34に記憶されたデータに基づいて各種処理を実行する。例えば、位置検出器52にて検出された車両の現在位置に基づいて、車両の現在位置を含む地図データを、地図データ入力装置54を介して記憶媒体から読み取り、その読み取った地図データに基づき、車両の現在位置や走行軌跡を含む道路地図を表示装置50に表示するための表示指令をオーディオマイコン20に送信する。また、操作スイッチ群53から入力される指令に従い、目的地までの走行経路を設定し、設定した走行経路に従って走行経路案内画像を表示装置50に表示させる表示指令をオーディオマイコン20に送信したり、走行経路案内用のガイド音声を音声出力装置51から出力させる音声出力指令をオーディオマイコン20に送信する。
【0039】
ディスプレイマイコン40は、CPU41、ROM42、RAM43、データを書き換え可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)44、通信部45を備えている。通信部45は、オーディオマイコン20と通信するための通信回路を備えている。また、ディスプレイマイコン40は、図示しないI/Oポートを備え、液晶ディスプレイ等からなる表示装置50と接続されている。
【0040】
そして、CPU41は、ROM42、不揮発性メモリ44に記憶されたデータに基づいて処理を実行し、オーディオマイコン20、ナビマイコン30から送信された表示指令を受けて表示装置50への画像の表示を行う。
【0041】
次に、上記各マイコンのROM12,22,32,42と不揮発性メモリ14,24,34,44とに記憶されたデータについて説明する。
本実施形態のナビゲーションシステム1は、ナビゲーションシステム1が搭載される車両の車種、車両が利用される地域等の種別に対応可能に構成されている。詳述すると、各マイコン10,20,30,40のROM12,22,32,42には、各マイコン10,20,30,40の機能(例えば、オーディオ管理、ナビゲーション等)を実現するためのベースとなるプログラムが予め記憶されており、一方、書き換え可能な不揮発性メモリ14,24,34,44には、車種、地域等の種別に対応した情報が、ROM12,22,32,42に記憶された上記各プログラムが実行される際に用いられるパラメータとして記憶されている。このため、不揮発性メモリ14,24,34,44に異なるパラメータを書き込むことで、同一に構成されたナビゲーションシステム1を、異なる種別に対応したナビゲーションシステム1とすることができる。
【0042】
ここで、上記パラメータは、図2に示すような設定情報ファイルとして不揮発性メモリ14,24,34,44に記憶される。なお、図2は、設定情報ファイルの一例を示す説明図である。設定情報ファイルは、複数種類(図2では、設定情報ファイルA,B,Cの3種類)あり、各ジャンル毎に設けられている。なお、ジャンルとは、例えば、オーディオ関連(スピーカ、イコライザーの設定)、ラジオ・TV関連(周波数帯、シーク感度等のチューナの設定)、カメラ関連、その他オプション関連、等である。
【0043】
各設定情報ファイルは、上記パラメータとしての設定データと、この設定データを識別するための識別情報と、から構成されている。本実施形態では、識別情報として、各設定情報ファイルの識別番号(図2では、A1,A2,B1等)、設定データのチェックサム、設定データのバージョンを使用している。
【0044】
なお、設定情報ファイルは、異なる車種、車両のオプション、車両が使用される地域、車両のブランド、車両の大きさ・形状等に対応した内容で、各ジャンル毎(A,B,C毎)に予め複数種類用意されている。そして、各ジャンルについて、複数の設定情報ファイルの中からナビゲーションシステム1が搭載される車両に適した設定情報ファイル(つまり、種別に対応した設定情報ファイル)が選択され、ナビゲーションシステム1を構成する各マイコン10,20,30,40の不揮発性メモリ14,24,34,44に書き込まれる。
【0045】
以下、3種類(つまり、3ジャンル)の設定情報ファイルA〜Cが用いられた本実施形態のナビゲーションシステム1を説明する。図1に示すように、ナビマイコン30には、上述したナビゲーションとしての処理を行う際に用いられる設定情報ファイルBが予め記憶されており、ディスプレイマイコン40には、表示装置50への表示処理を行う際に用いられる設定情報ファイルAが予め記憶されている。また、オーディオマイコン20には、上記2種類の設定情報ファイルA,Bの両方が予め記憶されており、通信用マイコン10には、通信用マイコン10のみにて用いられる設定情報ファイルCを含め、本ナビゲーションシステム1にて用いられる全ての設定情報ファイル(つまり、設定情報ファイルA〜C)が予め記憶されている。
【0046】
ここで、通信用マイコン10の不揮発性メモリ14に記憶された設定情報ファイルA〜Cは、バージョンアップ等のため、車載LANを介して適宜更新される。このため、本実施形態のナビゲーションシステム1においては、各マイコン10,20,30,40の不揮発性メモリ14,24,34,44に記憶された各設定情報ファイルを常時同一のものとするために、ナビゲーションシステム1の起動時に、予め規定された通信手順に従って各マイコン10,20,30,40間で通信が行われ、通信用マイコン10の設定情報ファイルA〜Cにより、適宜、その他のマイコン20,30,40の設定情報ファイルが更新される。
【0047】
以下、起動時の各マイコン間の通信手順の概要を、図3を用いて説明する。なお、図3は、起動時の各マイコン間の通信手順を示すシーケンス図である。
本実施形態のナビゲーションシステム1は、車両のACCスイッチがオンされたことに基づいて起動される。つまり、図3に示すように、車両のACCスイッチがオンされることにより、車載LANを介して通信用マイコン10に起動情報が送信される。そして、通信用マイコン10が起動情報を受信すると、その後、通信用マイコン10からオーディオマイコン20に起動情報が送信され、さらに、オーディオマイコン20からナビマイコン30及びディスプレイマイコン40に起動情報が送信されて、ナビゲーションシステム1全体が動作を開始する。
【0048】
その後、各マイコンが以下に説明する起動処理を夫々実行する中で、通信用マイコン10とオーディオマイコン20との間、オーディオマイコン20とナビマイコン30との間、また、オーディオマイコン20とディスプレイマイコン40との間で、図3のシーケンス図に示すような手順で通信が行われる。なお、例えば、図3では、オーディオマイコン20は、ナビマイコン30との通信が終了した後に、ディスプレイマイコン40との通信を開始する手順としているが、オーディオマイコン20は、夫々のマイコンと個々に通信するための通信回路を有しているので、必ずしも図3の手順で通信を行う必要はない。また、他のマイコン間の通信手順に関しても、必ずしも図3の手順である必要はなく、適宜変更することが可能である。
【0049】
以下、各マイコンにて起動時に実行される起動処理について順に説明する。図4は、通信用マイコン10にて実行される起動処理を示すフローチャートである。
通信用マイコン10は、起動情報を受信すること(本発明の第1更新条件が成立することに相当)により処理が開始され、処理が開始されると、図4に示すように、S100にて、オーディオマイコン20に起動情報を送信する。そして、続くS110では、不揮発性メモリ14に記憶された設定情報ファイルA〜Cの夫々に含まれる識別情報A〜C(ファイル識別番号、チェックサム、バージョン)を読み取り、S120にて、読み取った識別情報A〜Cをオーディオマイコン20に送信する。
【0050】
次に、S130では、オーディオマイコン20から受信した判断結果に基づいて、通信用マイコン10とオーディオマイコン20に記憶された設定情報ファイルが不一致か否かを判断する。そして、設定情報ファイルが不一致であると判断した場合には(S130:YES)、S140に移行して、不揮発性メモリ14に記憶された設定情報ファイルA,Bを読み取り、続くS150にて読み取った設定情報ファイルA,Bをオーディオマイコン20に送信し、当該処理を終了する。
【0051】
一方、S130にて、設定情報ファイルが一致したと判断した場合には(S130:NO)、設定情報ファイルをオーディオマイコン20に送信することなく当該処理を終了する。
【0052】
次に、オーディオマイコン20の起動処理について説明する。図5は、オーディオマイコン20にて実行される起動処理を示すフローチャートである。
オーディオマイコン20は、通信用マイコン10から起動情報を受信すること(本発明の第2更新条件が成立することに相当)により処理が開始され、処理が開始されると、まず図5に示すように、S200にて、起動情報をナビマイコン30及びディスプレイマイコン40に送信する。続くS210では、通信用マイコン10から送信された識別情報A〜Cを取得し、S220では、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルA,Bのファイル識別番号と、取得した識別情報A,Bに含まれるファイル識別番号とが一致するか否かを判断する。
【0053】
そして、S220にて、ファイル識別番号が一致したと判断した場合には(S220:YES)、S230に移行して、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルA,Bのチェックサムと、取得した識別情報A,Bに含まれるチェックサムが一致するか否かを判断する。
【0054】
そして、S230にて、チェックサムが一致したと判断した場合には(S230:YES)、S240に移行して、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルA,Bのバージョンと、取得した識別情報A,Bに含まれるバージョンが一致するか否かを判断する。
【0055】
S240にて、バージョンが一致したと判断した場合には(S240:YES)、S250に移行して、識別情報が一致した旨を示す判断結果を通信用マイコン10に送信し、続くS260では、S210にて取得した識別情報A〜Cをそのままナビマイコン30及びディスプレイマイコン40に送信し、S280に移行する。
【0056】
一方、S220にて、ファイル識別番号が一致しないと判断した場合(S220:NO)、S230にて、チェックサムが一致しないと判断した場合(S230:NO)、S240にて、バージョンが一致しないと判断した場合には(S240:NO)、S270に移行して、識別情報が一致しない旨を示す判断結果を通信用マイコン10に送信し、S280に移行する。
【0057】
次に、S280では、設定情報ファイルA,Bを、通信用マイコン10から受信したか否かを判断し、受信しないと判断した場合には(S280:NO)、S290に移行して、ナビマイコン30からから受信した判断結果に基づいて、オーディオマイコン20と、ナビマイコン30に記憶された設定情報ファイルが不一致か否かを判断する。そして、設定情報ファイルが不一致であると判断した場合には(S290:YES)、S300に移行して、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルBを読み取り、読み取った設定情報ファイルBをナビマイコン30に送信してS310に移行する。一方、設定情報ファイルが一致すると判断した場合には(S290:NO)、そのままS310に移行する。
【0058】
そして、S310では、ディスプレイマイコン40からから受信した判断結果に基づいて、オーディオマイコン20と、ディスプレイマイコン40に記憶された設定情報ファイルが不一致か否かを判断する。そして、設定情報ファイルが不一致であると判断した場合には(S310:YES)、S320に移行して、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルAを読み取り、読み取った設定情報ファイルAをディスプレイマイコン40に送信し、当該処理を終了する。一方、設定情報ファイルが一致すると判断した場合には(S310:NO)、そのまま当該処理を終了する。
【0059】
一方、S280にて、通信用マイコン10から設定情報ファイルA,Bを受信した場合には(S280:YES)、S330に移行して、受信した設定情報ファイルA,Bを不揮発性メモリ24に書き込み、設定情報ファイルA,Bを更新する。そして、続くS340では、受信した設定情報ファイルBをナビマイコン30に送信してS350に移行し、S350では、受信した設定情報ファイルAをディスプレイマイコン40に送信し、当該処理を終了する。
【0060】
次に、ナビマイコン30の起動処理について説明する。図6は、ナビマイコン30にて実行される起動処理を示すフローチャートである。
ナビマイコン30は、オーディオマイコン20から起動情報を受信することにより開始され、処理が開始されると、図6に示すように、S410では、オーディオマイコン20から送信された識別情報A〜Cを取得し、S420では、不揮発性メモリ34に記憶された設定情報ファイルBのファイル識別番号と、取得した識別情報Bに含まれるファイル識別番号が一致するか否かを判断する。
【0061】
そして、S420にて、ファイル識別番号が一致したと判断した場合には(S420:YES)、S430に移行して、不揮発性メモリ34に記憶された設定情報ファイルBのチェックサムと、取得した識別情報Bに含まれるチェックサムが一致するか否かを判断する。
【0062】
そして、S430にて、チェックサムが一致したと判断した場合には(S430:YES)、S440に移行して、不揮発性メモリ34に記憶された設定情報ファイルBのバージョンと、取得した識別情報Bに含まれるバージョンが一致するか否かを判断する。
【0063】
S440にて、バージョンが一致したと判断した場合には(S440:YES)、S450に移行して、識別情報が一致した旨を示す判断結果をオーディオマイコン20に送信する。
【0064】
一方、S420にて、ファイル識別番号が一致しないと判断した場合(S420:NO)、S430にて、チェックサムが一致しないと判断した場合(S430:NO)、S440にて、バージョンが一致しないと判断した場合には(S440:NO)、S460に移行して、識別情報が一致しない旨を示す判断結果をオーディオマイコン20に送信し、S470に移行する。
【0065】
次に、S470にて、オーディオマイコン20から設定情報ファイルBを受信した場合には(S470:YES)、S480に移行して、受信した設定情報ファイルBを不揮発性メモリ34に書き込み、設定情報ファイルBを更新し、当該処理を終了する。一方、S470にて設定情報ファイルBを受信しなかった場合には(S470:NO)、不揮発性メモリ34に記憶された設定情報ファイルBを更新することなく、当該処理を終了する。
【0066】
なお、ディスプレイマイコン40にて実行される起動処理は、ナビマイコン30が実行する処理とほぼ同様であり、設定情報ファイルBの代わりに設定情報ファイルAに関する処理が実行される点のみが異なるものであるため、詳細については省略する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のナビゲーションシステム1は、設定情報ファイルを互いに共用する複数のマイコン10,20,30,40からなり、通信用マイコン10が車載LANを介して起動情報を受信すると、不揮発性メモリ14に記憶された設定情報ファイルから識別情報を読み取ってオーディオマイコン20に送信し、オーディオマイコン20は、通信用マイコン10から送信された識別情報が、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルの識別情報と一致するか否かを判定する。ここで、各識別情報が一致すると判定した場合には、通信用マイコン10に識別情報が一致した旨を示す判断結果を送信し、一致しないと判定した場合には、識別情報が不一致である旨を示す判断結果を送信する。
【0068】
一方、通信用マイコン10は、オーディオマイコン20から識別情報が不一致である旨を示す判断結果を受信した場合に、不揮発性メモリ14に記憶された設定情報ファイルをオーディオマイコン20に送信する。
【0069】
また、オーディオマイコン20は、通信用マイコン10から送信された識別情報をナビマイコン30及びディスプレイマイコン40に送信し、ナビマイコン30及びディスプレイマイコン40は、夫々、オーディオマイコン20から送信された識別情報が、不揮発性メモリ34または不揮発性メモリ44に記憶された設定情報ファイルの識別情報と一致するか否かを判定する。ここで、各識別情報が一致すると判定した場合には、オーディオマイコン20に識別情報が一致した旨を示す判断結果を送信し、一致しないと判定した場合には、識別情報が不一致である旨を示す判断結果を送信する。
【0070】
一方、オーディオマイコン20は、ナビマイコン30やディスプレイマイコン40から識別情報が不一致である旨を示す判断結果を受信した場合に、不揮発性メモリ24に記憶された設定情報ファイルを、不一致である旨を示す判断結果を受信したマイコンに対して送信する。
【0071】
従って、本実施形態のナビゲーションシステム1によれば、各マイコン10,20,30,40間の設定情報ファイルが一致しており、オーディオマイコン20、ナビマイコン30、ディスプレイマイコン40の設定情報ファイルの更新の必要がない場合に、設定情報ファイルを各マイコン10,20,30,40間で送受信するといった無駄なデータの送受信を低減できる。つまり、不必要なデータの送受信を行うことなく、オーディオマイコン20、ナビマイコン30、ディスプレイマイコン40の設定情報ファイルを更新することができる。
【0072】
また、通信用マイコン10が設定情報ファイルの識別情報を読み取ってオーディオマイコン20に送信するので、別途識別情報を判定するためのマイコン等を設けることなく、オーディオマイコン20が、通信用マイコン10から送信された識別情報が、オーディオマイコン20に記憶された設定情報ファイルの識別情報と一致するか否かを判定できる。
【0073】
さらに、オーディオマイコン20が、識別情報が一致しないと判定した場合に、不一致であるか否かを示す判断結果を通信用マイコン10に送信するので、別途通信用マイコン10からオーディオマイコン20への設定情報ファイルの送信を許可または禁止するためのマイコン等を設けることなく、通信用マイコン10が、設定情報ファイルのオーディオマイコン20への送信の許可または禁止を、自ら判断することができる。なお、オーディオマイコン20とナビマイコン30、オーディオマイコン20とディスプレイマイコン40との間の識別情報、設定情報ファイルの送受信も通信用マイコン10とオーディオマイコン20との間と同様に実行され、同様の効果を有している。
【0074】
また、本実施形態のナビゲーションシステム1においては、識別情報として、設定情報ファイルの識別番号、チェックサム、及び、バージョンを採用しているので、識別情報のデータ量は設定情報ファイルに比べて非常に少なく、設定情報ファイルを送受信する場合に比べ、各マイコン間の通信負荷が低減される。また、少ないデータ量で、設定情報ファイルを確実に識別することができる。
【0075】
さらに、設定情報ファイルの識別番号とチェックサムとバージョンとの全てが一致することで、設定情報ファイルが一致すると判定するようにしているので、設定情報ファイルが一致するか否かの判定をより確実なものとすることができる。
【0076】
一方、本実施形態のナビゲーションシステム1においては、各マイコン10,20,30,40のROM12,22,32,42に、各マイコン10,20,30,40の機能(例えば、オーディオ管理、ナビゲーション等)を実現するためのベースとなるプログラムが予め記憶されており、一方、書き換え可能な不揮発性メモリ14,24,34,44には、車種、地域等の種別に対応した設定情報ファイルが、ROM12,22,32,42に記憶された上記各プログラムが実行される際に用いられるパラメータとして記憶されている。このため、設定情報ファイルを変更することで、同じプログラムを有する同一のマイコンにて、例えば車種や、車両が使用される地域等の種別に対応させた異なる処理を実行させることができ、このような種別に対応したナビゲーションシステム1とすることができる。
【0077】
また、ナビゲーションシステム1は、ACCスイッチがオンされて、車載LANを介して起動情報を受信することにより起動され、各マイコン間の設定情報ファイルが一致するか否かの判定が行われるので、各マイコン10,20,30,40間で設定情報ファイルが一致している場合には、設定情報ファイルが一致していない場合に比べ、各マイコン10,20,30,40にて夫々の機能を実現するための処理が開始されるタイミングが早くなる。その結果、ナビゲーションシステム1全体が機能するまでの時間を低減することができる。
【0078】
なお、本実施形態において、通信用マイコン10は本発明の第1制御装置、オーディオマイコン20は本発明の第2制御装置に相当し、ナビマイコン30及びディスプレイマイコン40は本発明の第3制御装置、各マイコン10,20,30,40のROM12,22,32,42及び不揮発性メモリ14,24,34,44に記憶されたデータが本発明の制御データに相当し、設定データが本発明の共通データに相当する。
【0079】
また、S100、S260の処理は本発明の識別情報送信手段に相当し、S220〜S240、S420〜S440の処理は本発明の共通データ一致判定手段に相当し、S270、S460の処理は本発明の共通データ要求手段に相当し、S130、S290、S310の処理は本発明の共通データ送信許可手段に相当する。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
上記実施形態においては、車載LANを介してシステム外の装置と通信するための通信用マイコン10を設けたが、通信用のマイコン10を設けることなく、CD・DVDの再生、TV・FM/AMラジオの受信等の管理を行うオーディオマイコン20に、通信用マイコン10の機能を設けるようにしてもよい。つまり、図7に示すに変形例1のナビゲーションシステム1のように、オーディオマイコン20を、システム外の装置と通信可能に構成し、不揮発性メモリ24には、システム内の全てのマイコンで用いられる設定情報ファイルを記憶させておけばよい。そして、この場合には、車載LANを介して起動情報がオーディオマイコン20に入力されたときに、オーディオマイコン20に記憶された設定情報ファイルA〜Cの識別情報にて、オーディオマイコン20に記憶された設定情報ファイルと、ナビマイコン30、ディスプレイマイコン40に記憶された設定情報ファイルとが一致するか否かを判断し、必要に応じて、オーディオマイコン20に記憶された設定情報ファイルにて、他のマイコンの設定情報ファイルを更新するように構成すればよい。
【0081】
そして、このように構成された変形例1のナビゲーションシステム1においても、上記実施形態のナビゲーションシステム1と同様に、各マイコン間の設定情報ファイルが一致している場合に、オーディオマイコン20から更新の必要の無いマイコンへの設定情報ファイルの送信が行われないので、ナビマイコン30、ディスプレイマイコン40の設定情報ファイルの更新の必要がない場合に、設定情報ファイルを送受信するといった無駄なデータの送受信を低減できる。
【0082】
なお、本変形例1において、オーディオマイコン20は本発明の第1制御装置に相当し、ナビマイコン30及びディスプレイマイコン40は本発明の第2制御装置に相当する。
一方、本実施形態のナビゲーションシステム1は、図8に示す変形例2のナビゲーションシステム1のように、通信用マイコン10を、オーディオマイコン20と、ナビマイコン30との夫々と通信可能に構成してもよい。そして、この場合には、通信用マイコン10から各マイコン20,30の両方に直接識別情報を送信することで、各マイコン20,30に記憶された設定情報ファイルが通信用マイコン10に記憶された設定情報ファイルと一致するか否かを判断し、必要に応じて、通信用マイコン10に記憶された設定情報ファイルを、通信用マイコン10から直接各マイコン20,30に送信することで、各マイコン20,30に記憶された設定情報ファイルを更新するように構成すればよい。
【0083】
そして、このように構成された変形例2のナビゲーションシステム1においても、上記実施形態のナビゲーションシステム1と同様に、各マイコン間の設定情報ファイルが一致している場合に、通信用マイコン10から更新の必要の無いマイコンへの設定情報ファイルの送信が行われないので、オーディオマイコン20、ナビマイコン30の設定情報ファイルの更新の必要がない場合に、設定情報ファイルを送受信するといった無駄なデータの送受信を低減できる。
【0084】
なお、本変形例2において、通信用マイコン10は本発明の第1制御装置に相当し、オーディオマイコン20及びナビマイコン30は本発明の第2制御装置に相当する。
なお、図8に示す変形例2のナビゲーションシステム1では、ナビマイコン30はディスプレイマイコン40の機能を備え、ナビマイコン30が表示装置50への画像の表示を行うようにしているが、上記実施形態のようにオーディオマイコン20と通信可能にディスプレイマイコン40を設けてもよく、ナビマイコン30と通信可能にディスプレイマイコン40を設けてもよい。また、通信用マイコン10と直接通信可能にディスプレイマイコン40を設けてもよい。
【0085】
また、上記実施形態においては、起動時に通信用マイコン10に識別情報を送信させ、オーディオマイコン20にて識別情報が一致するか否かの判定をさせることにより、本発明の共通データ一致判定手段を実現したが、起動時に、オーディオマイコン20から識別情報を通信用マイコン10に送信させ、通信用マイコン10にて識別情報が一致するか否かの判定をするようにしてもよい。一方、各マイコン10,20,30,40と通信可能に構成された監視用のマイコンを別途設け、この監視用のマイコンにて起動時に各マイコンに記憶された設定情報ファイルの識別情報が一致するか否かを判定し、一致しない場合に、通信用マイコン10に設定情報ファイルをオーディオマイコン20に送信させるようにしてもよい。また、各設定情報ファイルの更新は、必ずしも起動時に実行する必要はなく、車載LANを介して更新指令を入力した場合に実行するように構成してもよい。
【0086】
さらに、上記実施形態においては、識別情報として、各設定情報ファイルの識別番号、設定データのチェックサム、設定データのバージョンを使用したが、識別情報はこれらに限ることはなく、例えば、設定情報ファイルの作成日、作成者、また、国や地域、工場等の設定情報ファイルが作成された場所を示す情報(例えば、中国工場、ヨーロッパ工場等)を識別情報としてもよい。また、上記実施形態においては、各設定情報ファイルの識別番号、設定データのチェックサム、設定データのバージョンの全てが一致することで、設定情報ファイルが一致すると判定したが、例えば、上述したような複数の識別情報のうち、所定数以上の種類の識別情報が一致することで、設定情報ファイルが一致すると判定してもよい。
【0087】
一方、上記実施形態においては、本発明の車載システムとして、オーディオマイコン20、ナビマイコン30、ディスプレイマイコン40を有するナビゲーションシステム1を説明したが、例えば、エンジン、ブレーキ、トランスミッション、サスペンション等を夫々制御するための複数の制御装置(マイコン、または、電子制御ユニット等)からなる統合制御システム等、複数の制御装置からなる様々な車載システムに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態のナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】設定情報ファイルの一例を示す説明図である。
【図3】起動時の各マイコン間の通信手順を示すシーケンス図である。
【図4】通信用マイコンの起動処理を示すフローチャートである。
【図5】オーディオマイコンの起動処理を示すフローチャートである。
【図6】ナビマイコンの起動処理を示すフローチャートである。
【図7】変形例1のナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図8】変形例2のナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0089】
1…ナビゲーションシステム、10…通信用マイコン、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…不揮発性メモリ、15…通信部、20…オーディオマイコン、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…不揮発性メモリ、25…通信部、30…ナビマイコン、31…CPU、32…ROM、33…RAM、34…不揮発性メモリ、35…通信部、40…ディスプレイマイコン、41…CPU、42…ROM、43…RAM、44…不揮発性メモリ、45…通信部、50…表示装置、51…音声出力装置、52…位置検出器、53…操作スイッチ群、54…地図データ入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも制御データの一部を共通データとして互いに共用する複数の制御装置からなり、
該複数の制御装置の1つである第1制御装置が、前記共通データの供給源として、前記共通データの供給先として予め設定された第2制御装置に前記共通データを送信することにより、該第2制御装置の共通データを更新するよう構成された車載システムであって、
前記第2制御装置の共通データを更新する第1更新条件が成立すると、前記第2制御装置に記憶された共通データが前記第1制御装置に記憶された共通データと一致するか否かを、前記各共通データに付与された識別情報に基づき判定する共通データ一致判定手段と、
該共通データ一致判定手段により前記共通データが一致しないと判定されると、前記第1制御装置から第2制御装置への前記共通データの送信を許可する共通データ送信許可手段と、
を備えたことを特徴とする車載システム。
【請求項2】
前記第2制御装置は、前記共通データを、該共通データの供給先として予め設定された第3制御装置に送信する供給源としての機能を有し、
前記共通データ一致判定手段は、前記第3制御装置の共通データを更新する第2更新条件が成立すると、前記第3制御装置に記憶された共通データが前記第2制御装置に記憶された共通データと一致するか否かを、前記各共通データに付与された識別情報に基づき判定し、
前記共通データ送信許可手段は、前記共通データ一致判定手段により、前記第2制御装置と前記第3制御装置とに記憶された共通データが一致しないと判定されると、前記第2制御装置から第3制御装置への前記共通データの送信を許可することを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記第2制御装置を複数備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載システム。
【請求項4】
前記共通データの供給源となる制御装置は、該制御装置に記憶された共通データの識別情報を読み取り前記共通データの供給先となる制御装置に送信する識別情報送信手段を備え、
前記共通データ一致判定手段は前記供給先となる制御装置に設けられ、前記識別情報送信手段から送信された識別情報が、該供給先となる制御装置に記憶された共通データの識別情報と一致するか否かを判定することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の車載システム。
【請求項5】
前記共通データの供給先となる制御装置は、前記共通データの供給源となる制御装置に共通データ要求を送信する共通データ要求手段を備え、
前記共通データ送信許可手段は、前記供給源となる制御装置に設けられ、前記共通データ要求手段から送信された共通データ要求を受信した場合に、該供給源となる制御装置からの前記共通データの送信を許可することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の車載システム。
【請求項6】
前記制御データは、前記各制御装置が特定の機能を実現するためのプログラムを有しており、
前記共通データは、前記プログラムが実行される際に用いられるパラメータ情報であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の車載システム。
【請求項7】
前記識別情報は、前記共通データの識別番号、チェックサム、及び、バージョンのうちの少なくとも1つであり、
前記共通データ一致判定手段は、前記識別番号、前記チェックサム、及び、前記バージョンのうちの少なくとも1つが一致することで、前記共通データが一致すると判定することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の車載システム。
【請求項8】
前記識別情報は、前記共通データの識別番号、チェックサム、及び、バージョンを含んでなり、
前記共通データ一致判定手段は、前記識別番号と前記チェックサムと前記バージョンとの全てが一致することで、前記共通データが一致すると判定することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の車載システム。
【請求項9】
前記共通データ一致判定手段は、当該車載システムの起動時に、前記第1更新条件が成立したと判断して、前記共通データが一致するか否かを判定することを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の車載システム。
【請求項10】
前記第1制御装置は車載LANに接続されており、
前記共通データ一致判定手段は、前記車載LANを介して共通データの更新指令が入力されると、前記第1更新条件が成立したと判断して、前記共通データが一致するか否かを判定することを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の車載システム。
【請求項11】
前記更新指令は、当該車載システムの起動指令であることを特徴とする請求項10に記載の車載システム。
【請求項12】
前記複数の制御装置のうちの1つは、ナビゲーション制御装置であることを特徴とする請求項1〜請求項11の何れかに記載の車載システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−143478(P2008−143478A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336179(P2006−336179)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】