車載潤滑油供給装置
【課題】対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることのできる車載潤滑油供給装置を提供する。
【解決手段】この潤滑油供給装置2は、内燃機関1の対象部位に潤滑油を供給する供給油路21内の圧力を制御するための制御圧力PCを変更するものであり、制御圧力PCとして第1制御圧力PC1とこれよりも高圧の第2制御圧力PC2とを有する油圧制御機構30と、内燃機関1の温度を検出する冷却水温センサ54とを含む。そして、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に維持する異常時制御を行う。
【解決手段】この潤滑油供給装置2は、内燃機関1の対象部位に潤滑油を供給する供給油路21内の圧力を制御するための制御圧力PCを変更するものであり、制御圧力PCとして第1制御圧力PC1とこれよりも高圧の第2制御圧力PC2とを有する油圧制御機構30と、内燃機関1の温度を検出する冷却水温センサ54とを含む。そして、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に維持する異常時制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記潤滑油供給装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。
この潤滑油供給装置では、装置温度としての内燃機関の温度と相関する冷却水温センサの出力値に基づいて制御圧力を決定している。すなわち、冷却水温センサの出力が高いときには、制御圧力を高圧側の制御圧力に設定してピストンジェットを稼動させる。
【0003】
また、機関駆動式のウォータポンプと、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチとを備え、ウォータジャケットにおける冷却水の循環態様をクラッチにより調整することが考えられる。この場合、内燃機関の低温時にウォータジャケットにおける冷却水の循環を制限することで、内燃機関の暖機を促進することができる。また、こうした構成を備える内燃機関に適用される潤滑油供給装置では、冷却水の循環が制限される機関運転状態のとき、すなわち内燃機関の低温時には、ピストンジェットを稼動する必要性が低いため、制御圧力を低圧側の制御圧力に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−107485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば冷却水温センサの出力に異常が生じているときには、内燃機関に要求される潤滑油による冷却性能を把握することができない。また、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチの作動状態に異常が生じているときには、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達が的確に行なわれなくなり、内燃機関の低温時以外のときに、冷却水の循環を制限する循環制限制御の実行が解除されなくなる。このような状態が継続されたときには、潤滑油を多量に供給する必要のある高温状態において潤滑油が不足して装置温度が過度に高くなるおそれがある。また、これに起因して内燃機関の焼き付きをまねく可能性が高くなる。
【0006】
なお、こうした問題は車載内燃機関に限られるものではなく、内燃機関の出力軸の回転を変速する変速機においても同様に生じるものと考えられる。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることのできる車載潤滑油供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記高圧制御圧力に維持する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0008】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を低圧制御圧力よりも大きい高圧制御圧力に維持している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記低圧制御圧力にすることを禁止する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0010】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を低圧制御圧力にすることを禁止している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常が生じているとき、前記システムの作動状態に異常が生じていないときよりも前記制御圧力を大きくする異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0012】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常が生じているとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力をシステムの作動状態に異常が生じていないときよりも大きくしている。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0013】
(4)請求項4に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力の低圧側への変更を禁止する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0014】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力の低圧側への変更を禁止している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0015】
(5)請求項5に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がある状態を状態Aとし、前記システムの作動状態に異常がない状態であるとともにこの点を除いては前記状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、前記状態Aのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを禁止し、前記状態Bのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを許可する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0016】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がある状態Aのとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を低圧側に変更することを禁止している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0017】
(6)請求項6に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の駆動状態について、潤滑油の圧力を相対的に低い圧力に維持することが許容される駆動状態を低圧駆動状態とし、潤滑油の圧力を相対的に高い圧力に維持することが要求される駆動状態を高圧駆動状態とし、前記制御圧力について、相対的に低い制御圧力を低圧制御圧力とし、相対的に高い制御圧力を高圧制御圧力として、前記圧力制御手段は、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がないとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記低圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記高圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0018】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、かつ潤滑型車載装置の駆動状態が低圧駆動状態にあるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を高圧制御圧力に設定している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0019】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態の異常を検出する異常検出手段を備え、この異常検出手段により異常が検出されたとき、前記異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0020】
この発明では、異常検出手段により異常が検出されたとき、異常時制御を行う。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況を適切に判定することができる。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置としての内燃機関について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御するものであり、前記システムは内燃機関の温度制御に関連するシステムであることをその要旨としている。
【0021】
この発明では、内燃機関の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、異常時制御を行う。このため、内燃機関において対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0022】
(9)内燃機関の温度制御に関連するシステムとしては、例えば請求項9に記載の発明によるように、冷却水通路に冷却水を循環させて機関冷却を行なう機関冷却システムであるといった態様をもって具体化することができる。そして、機関冷却システムの作動状態に異常があるとき、すなわち機関温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、機関温度上昇が進行する場合を想定して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0023】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の潤滑油供給装置において、前記機関冷却システムは前記内燃機関の温度を検出する機関温度検出手段を含むものであり、前記機関温度検出手段の出力に異常があるとき、前記異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0024】
機関温度検出手段の出力に異常があるとき、すなわち機関温度検出手段の出力に基づいて内燃機関に必要とされる潤滑油の供給量を確認することが困難なとき、機関温度上昇が進行する場合を想定して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、機関温度検出手段の出力の異常に起因して対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0025】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の潤滑油供給装置において、前記機関冷却システムは機関内部における冷却水の循環態様を調整する循環態様調整手段を含むものであり、前記循環態様調整手段の作動態様に異常があるとき、前記異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0026】
循環態様調整手段の作動態様に異常があるとき、すなわち機関温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、機関温度上昇が進行する場合を想定して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0027】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の潤滑油供給装置において、前記循環態様調整手段は内燃機関の低温時に前記冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なうものであり、内燃機関の低温時以外のときに、前記循環制限制御の実行が解除されない異常があるとき、前記異常時制御を行なうことをその要旨としている。
【0028】
内燃機関の低温時に冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を実行することで内燃機関の暖機を促進することができる。ただし、こうした循環制限制御を行なうものにあって、内燃機関の低温時以外のときに、循環制限制御の実行が解除されない異常があり、しかもこのときの制御圧力が低く設定されていると、意図しない機関温度の上昇を、冷却水の循環及び潤滑油の供給のいずれによっても抑制することができず、機関温度上昇が進行するおそれがある。この点、本発明に対して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができ、機関温度上昇の進行を抑制することができる。
【0029】
(13)内燃機関の低温時に冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なう循環態様調整手段としては、請求項13に記載の発明によるように、機関駆動式のウォータポンプと、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチとを含むといった態様をもって具体化することができる。ちなみに、この場合、例えば、クラッチの作動状態に異常が生じることで、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達が的確に行なわれなくなり、内燃機関の低温時以外のときに、冷却水の循環を制限する循環制限制御の実行が解除されなくなる。このような異常があるとき、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、請求項12に記載の発明に準じた作用効果を奏することができる。
【0030】
(14)また、内燃機関の低温時に冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なう循環態様調整手段としては、請求項14に記載の発明によるように、電動式のウォータポンプであるといった態様をもって具体化することができる。ちなみに、この場合、例えば、ウォータポンプとこれを制御する制御装置との間で断線等の異常が生じることで、ウォータポンプが駆動されなくなり、内燃機関の低温時以外のときに、冷却水の循環を制限する循環制限制御の実行が解除されなくなる。このような異常があるとき、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、請求項12に記載の発明に準じた作用効果を奏することができる。
【0031】
(15)請求項15に記載の発明は、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置としての変速機について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御することをその要旨としている。
【0032】
この発明によれば、変速機の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、異常時制御を行う。このため、変速機において対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0033】
(16)請求項16に記載の発明は、請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記圧力制御手段は、前記供給油路内の圧力が前記制御圧力よりも大きいときに前記供給油路内の潤滑油をリリーフすることにより、前記供給油路内の圧力を変更するものであることをその要旨としている。
【0034】
この発明では、供給油路内の圧力が制御圧力よりも大きいときに供給油路内の潤滑油をリリーフする圧力制御手段を備える車載潤滑油供給装置において、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の車載潤滑油供給装置の第1実施形態について、同装置を含めた内燃機関の全体構成を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の油圧制御において用いられる機関回転速度および燃料噴射量と制御圧力との関係を規定したマップ。
【図3】同実施形態の油圧制御の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図4】同実施形態の電子制御装置により実行される「センサ異常時処理」について、その手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態の「センサ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図6】同実施形態の「センサ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図7】本発明の車載潤滑油供給装置の第2実施形態について、機関冷却システムを模式的に示す模式図。
【図8】同実施形態の電子制御装置により実行される「ウォータポンプ異常時処理」について、その手順を示すフローチャート。
【図9】同実施形態の「ウォータポンプ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図10】同実施形態の「ウォータポンプ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
図1〜図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。なお、本実施形態では、潤滑型車載装置として内燃機関の対象部位に潤滑油を供給する潤滑油供給装置として本発明を具体化した一例を示している。
【0037】
図1に示すように内燃機関1は、空気および燃料からなる混合気を燃焼する機関本体10と、潤滑油を内燃機関1の各潤滑部位に供給する潤滑油供給装置2と、これら装置を統括的に制御する制御装置50とを含む。
【0038】
機関本体10は、混合気を燃焼させるための燃焼室13を有するシリンダブロック11と、潤滑油を貯留するオイルパン12と、吸気通路に燃料を噴射するインジェクタ16とを含む。シリンダブロック11には、混合気燃焼により往復運動するピストン14と、ピストン14の往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト15とが設けられている。
【0039】
潤滑油供給装置2は、機関本体10の各対象部位に潤滑油を供給する機関潤滑機構20と、各対象部位に供給される潤滑油の圧力(以下、「供給圧力PS」)を制御する油圧制御機構30とを含む。
【0040】
機関潤滑機構20は、オイルパン12と機関本体10とを接続する供給油路21と、この供給油路21に設けられてクランクシャフト15により駆動されるオイルポンプ22と、ピストン14に向けて潤滑油を噴射するピストンジェット25とを含む。
【0041】
供給油路21のうちオイルポンプ22よりも上流側にある上流供給油路21Aには、オイルパン12内の潤滑油に含まれる異物のうち比較的大きなものを濾過するオイルストレーナ23が設けられている。供給油路21のうちオイルポンプ22よりも下流側にある下流供給油路21Bには、潤滑油に含まれる微小な異物を濾過するオイルフィルタ24が設けられている。
【0042】
油圧制御機構30は、オイルポンプ22を迂回して下流供給油路21Bと上流供給油路21Aとを互いに接続するリリーフ油路32と、供給圧力PSである下流供給油路21Bの潤滑油の圧力が所定の圧力(以下、「制御圧力PC」)を上回るときに開弁するリリーフ弁31と、リリーフ弁31の制御圧力PCの大きさを変更する制御圧切替機構40とにより構成されている。
【0043】
リリーフ油路32は、リリーフ弁31の入口側に設けられた吐出側油路33と、リリーフ弁31の出口側に設けられた吸込側油路34と、リリーフ弁31内に設けられた弁内部油路35とにより構成されている。
【0044】
リリーフ弁31が開弁状態にあるとき、リリーフ油路32が開放されることにより、下流供給油路21Bの潤滑油がリリーフ油路32を介して上流供給油路21Aにリリーフされる。
【0045】
リリーフ弁31には、供給圧力PSに基づいて弁内部油路35を開放または閉鎖する弁体としてのピストン31Aと、リリーフ弁31の出口を含みピストン31Aに対して移動可能なスリーブ31Bと、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置を切り替えるための切替室31Cとが設けられている。切替室31Cは、弁内部油路35とは独立して制御圧切替機構40により潤滑油の供給および排出が行われる。
【0046】
制御圧切替機構40は、電子制御装置51からの指令により切替室31Cの潤滑油の供給状態を切り替える切替弁44と、切替弁44に接続される3つの油路、すなわち第1切替油路41および第2切替油路42および第3切替油路43とを含む。
【0047】
第1切替油路41は、吐出側油路33と切替弁44とを互いに接続する。第2切替油路42は、切替弁44と切替室31Cとを互いに接続する。第3切替油路43は、切替弁44と吸込側油路34とを互いに接続する。
【0048】
切替弁44は、各切替油路41〜43に対応して設けられたポート間の連通状態を変更することにより、切替室31Cに潤滑油が供給される状態と、切替室31Cから潤滑油が排出される状態とを切り替える。
【0049】
各ポートの連通状態が第1連通状態にあるとき、第1切替油路41と第2切替油路42とが互いに連通され、かつ第1切替油路41と第3切替油路43とが互いに遮断される。これにより、下流供給油路21Bの潤滑油が吐出側油路33および第1切替油路41および第2切替油路42を介して切替室31Cに供給される。
【0050】
各ポートの連通状態が第2連通状態にあるとき、第1切替油路41と第2切替油路42および第3切替油路43とが互いに遮断され、かつ第2切替油路42と第3切替油路43とが互いに連通される。これにより、切替室31Cの潤滑油が第2切替油路42および第3切替油路43および吸込側油路34を介して上流供給油路21Aにリリーフされる。
【0051】
リリーフ弁31は、切替室31Cの油圧に応じて次のように動作する。
切替室31Cに潤滑油が供給されているとき、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置が第1切替位置に維持される。これにより、制御圧力PCが低圧側の第1制御圧力PC1に設定される。
【0052】
切替室31Cから潤滑油がリリーフされているとき、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置が第2切替位置に維持される。これにより、制御圧力PCが高圧側の第2制御圧力PC2に設定される。
【0053】
制御圧力PCが第1制御圧力PC1に設定され、かつ供給圧力PSが第1制御圧力PC1未満のとき、リリーフ弁31は閉弁状態に維持される。一方、制御圧力PCが第1制御圧力PC1に設定され、かつ供給圧力PSが第1制御圧力PC1以上のとき、リリーフ弁31は開弁状態に維持される。
【0054】
制御圧力PCが第2制御圧力PC2に設定され、かつ供給圧力PSが第2制御圧力PC2未満のとき、リリーフ弁31は閉弁状態に維持される。一方、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に設定され、かつ供給圧力PSが第2制御圧力PC2以上のとき、リリーフ弁31は開弁状態に維持される。
【0055】
供給圧力PSが第1制御圧力PC1またはその付近に維持されているとき、ピストンジェット25に潤滑油を供給する油路上の弁が閉弁される。これにより、ピストンジェット25からピストン31Aには潤滑油が噴射されない。
【0056】
供給圧力PSが第2制御圧力PC2またはその付近に維持されているとき、ピストンジェット25に潤滑油を供給する油路上の弁が開弁される。これにより、ピストンジェット25からピストン31Aに向けて潤滑油が噴射される。
【0057】
制御装置50には、機関運転状態等をモニタする各種センサ、すなわちクランクポジションセンサ52、油圧センサ53および冷却水温センサ54を含む各種センサと、これらセンサの出力に基づいて各装置の動作を制御する電子制御装置51と、冷却水温センサ54に異常が生じているときに点灯する警告灯61が設けられている。
【0058】
クランクポジションセンサ52は、クランクシャフト15の回転角度(以下、「クランク角度CA」)に応じた信号を電子制御装置51に出力する。油圧センサ53は、供給油路21の供給圧力PSに応じた信号を出力する。冷却水温センサ54は、シリンダを冷却する冷却水の温度(以下、「冷却水温度TW」)に応じた信号を電子制御装置51に出力する。
【0059】
電子制御装置51は、各種の制御に用いるためのパラメータとして次のものを算出する。すなわち、クランクポジションセンサ52からの出力信号に基づいてクランク角度CAに相当する演算値を算出する。また、クランク角度CAの演算値に基づいてクランクシャフト15の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)に相当する演算値を算出する。また、冷却水温センサ54からの出力信号に基づいて冷却水温度TWに相当する演算値を算出する。また、インジェクタ16から噴射される燃料量(以下、「燃料噴射量Q」)の指令値を算出する。
【0060】
電子制御装置51により行われる制御としては、機関の各潤滑部位に供給する油圧を制御するための油圧制御、冷却水温センサ54に異常が生じているときに警告灯61を点灯するための警告制御、および冷却水温センサ54の異常に対応するためのセンサ異常時制御が挙げられる。
【0061】
図2を参照して、油圧制御の内容について説明する。
油圧制御機構30において、制御圧力PCが第1制御圧力PC1に設定されている状態を「低圧制御状態」とし、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に設定されている状態を「高圧制御状態」としたとき、これら制御状態において燃料消費率および機関潤滑性能は次のような関係にある。
【0062】
すなわち、低圧制御状態においては高圧制御状態よりもオイルポンプ22の負荷が小さいため、制御圧力PCの大きさのみが異なることを前提としたとき、低圧制御状態の燃料消費率は高圧制御状態の燃料消費率よりも小さくなる。一方、高圧制御状態においては低圧制御状態よりも供給圧力PSが大きくなるため、制御圧力PCの大きさのみが異なることを前提としたとき、高圧制御状態の機関潤滑性能は低圧制御状態の機関潤滑性能よりも高くなる。
【0063】
このため、燃料消費率の低減および内燃機関1の適切な潤滑という2つの要求を満たすためには、基本的には油圧制御機構30を高圧制御状態に維持し、内燃機関1に必要とされる潤滑油量が少ないとき、油圧制御機構30を低圧制御状態に維持することが望ましいといえる。
【0064】
内燃機関1に必要とされる潤滑油量は主に以下のときに多くなる。
すなわち、機関回転速度NEが大きいときにはピストン14の運動速度が大きいため、機関本体10においてピストン14等の潤滑のために必要となる潤滑量が多くなる。また、燃料噴射量Qが大きいときには燃焼により生じるトルクが大きいため、内燃機関1においてクランクシャフト15等の潤滑のために必要となる潤滑油量が多くなる。また、内燃機関1の温度が高いとき、すなわち冷却水温度TWが高いとき、ピストン14の温度が過度に高くなりやすいため、ピストンジェット25によるピストン14の冷却のために必要となる潤滑油量が多くなる。
【0065】
そこで油圧制御においては、機関運転状態の指標としての冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qに基づいて内燃機関1に必要とされる潤滑油量を把握し、この潤滑油量に応じた制御圧力PCを設定する。具体的には、冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qにより規定される機関運転状態が図2の制御圧切替マップ上のいずれの領域に属するかを把握し、機関運転状態が属する領域に応じて制御圧力PCを設定する。
【0066】
図2に示されるように、制御圧切替マップにおいては機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qをパラメータとする運転領域Rが境界ラインLにより2つの領域、すなわち低圧領域R1および高圧領域R2に区画されている。低圧領域R1は、境界ラインLよりも低回転速度側かつ低噴射量側の運転領域Rを示す。高圧領域R2は、境界ラインLよりも高回転速度側かつ高噴射量側の運転領域Rを示す。
【0067】
境界ラインLとしては、冷却水温度TWに応じて3種類のものが用意されている。
すなわち、冷却水温度TWが下限温度TWX以上かつ第1境界温度TW1(>TWX)未満のときに用いられる境界ラインL1と、冷却水温度TWが境界温度TW1以上かつ第2境界温度TW2(>TW1)未満のときに用いられる境界ラインL2と、冷却水温度TWが境界温度TW2以上かつ上限温度TWY(>TW2)未満のときに用いられる境界ラインL3とが用意されている。
【0068】
運転領域Rが境界ラインL1により区画されるときの低圧領域R1は、運転領域Rが境界ラインL2により区画されるときの低圧領域R1よりも大きい。運転領域Rが境界ラインL2により区画されるときの低圧領域R1は、運転領域Rが境界ラインL3により区画されるときの低圧領域R1よりも大きい。
【0069】
電子制御装置51は、上記マップに基づいて次のように制御圧力PCを設定する。
そのときどきの機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1に属するときには、制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定する。一方、高圧領域R2に属するときには、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0070】
冷却水温度TWが下限温度TWX以上かつ第1境界温度TW1未満のときには、境界ラインL1を基準として機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1および高圧領域R2のいずれに属するかを判定する。
【0071】
冷却水温度TWが第1境界温度TW1以上かつ第2境界温度TW2未満のときには、境界ラインL2を基準として機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1および高圧領域R2のいずれに属するかを判定する。
【0072】
冷却水温度TWが第2境界温度TW2以上かつ上限温度TWY未満のときには、境界ラインL3を基準として機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1および高圧領域R2のいずれに属するかを判定する。
【0073】
冷却水温度TWが下限温度TWX未満のときには、冷却水温度TWが所定の冷却水温度TWX以上のときと比較して潤滑油の粘度が高い。すなわち、対象部位への潤滑油の供給量が不足するおそれが高い。このため、冷却水温度TWが下限温度TWX未満のときには、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0074】
冷却水温度TWが上限温度TWY以上のときには、内燃機関1に対して、高い冷却性能が要求される。このため、冷却水温度TWが上限温度TWY以上のときには、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0075】
電子制御装置51は、制御圧切替マップに基づいて第1制御圧力PC1または第2制御圧力PC2を選択したとき、選択した制御圧力PCを維持するため、または選択した制御圧力PCに変更するための信号処理を行う。すなわち、制御圧切替マップに基づいて第1制御圧力PC1を選択したとき、切替弁44を第1連通状態に維持するための指令信号Sをオンに設定し、この指令信号Sを制御圧切替機構40に送信する。一方、制御圧切替マップに基づいて第2制御圧力PC2を選択したとき、切替弁44を第2連通状態に維持するために指令信号Sをオフに設定し、同指令信号Sの制御圧切替機構40への送信を停止する。
【0076】
図3を参照して、制御圧力PCの切替態様の一例について説明する。
時刻t11すなわち、機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qの属する運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。そして、制御圧切替機構40が指令信号Sのオフに基づいて動作したとき、実際の制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。これにより、供給圧力PSが第2制御圧力PC2に向けて次第に上昇する。
【0077】
時刻t12すなわち、供給圧力PSが第2制御圧力PC2を上回るところまで上昇したとき、リリーフ弁31が開弁される。これにより、下流供給油路21Bの潤滑油がリリーフ油路32を介して上流供給油路21Aにリリーフされるため、供給圧力PSが第2制御圧力PC2またはその付近に維持される。なお、機関回転速度NEが高いときにはオイルポンプ22の吐出量が多くなるため、供給圧力PSが第2制御圧力PC2を上回ることもある。
【0078】
時刻t13すなわち、機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qの属する運転領域Rが高圧領域R2から低圧領域R1に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフからオンに変更される。そして制御圧切替機構40が指令信号Sに基づいて動作したとき、実際の制御圧力PCが第2制御圧力PC2から第1制御圧力PC1に切り替えられる。これにより、供給圧力PSが第1制御圧力PC1に向けて次第に低下する。
【0079】
時刻t14すなわち、供給圧力PSが第1制御圧力PC1を下回るところまで低下したとき、リリーフ弁31が閉弁される。このため、下流供給油路21Bの潤滑油がリリーフされなくなる。その後、供給圧力PSが第1制御圧力PC1を上回るところまで上昇したとき、リリーフ弁31が開弁される。これにより、供給圧力PSが第1制御圧力PC1またはその付近に維持される。
【0080】
ところで、冷却水温センサ54の回路に断線が生じている場合、同センサ54の出力値が「0」を示す。また、冷却水温センサ54の回路にショートが生じている場合、同センサ54の出力値が通常の運転状態では出力されない過度に高い値を示す。
【0081】
これらのいずれの場合にも、冷却水温センサ54の出力値には実際の冷却水温度TWが反映されていないため、上記のように制御圧切替マップに基づいた油圧制御を適切に行うことができない。このような状態において、冷却水温度TWが上昇したことにより運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したときには、潤滑部位での潤滑油の不足をまねくことが考えられる。
【0082】
そこで電子制御装置51は、上述のように冷却水温センサ54の異常に起因した潤滑不足が生じる頻度を低減するため、冷却水温センサ54の異常の有無を監視するとともにその結果に基づいて制御圧切替機構40を制御するセンサ異常時制御を行う。
【0083】
図4を参照して、センサ異常時制御の具体的な処理手順を定めた「センサ異常時処理」について説明する。なお、この処理は、内燃機関1の運転中において電子制御装置51により所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0084】
ステップS11では、冷却水温センサ54に異常が生じているか否かを判定する。ここでは、次の診断条件1および診断条件2のいずれか一方が成立していることに基づいて、冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定する。
・診断条件1:冷却水温センサ54の出力値が「0」を示している。
・診断条件2:冷却水温センサ54の出力値が上限値よりも大きい。
【0085】
ステップS11において冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定したとき、次のステップS12において制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。すなわち、制御圧切替機構40に対する指令信号Sをオフにする。
【0086】
ステップS11において冷却水温センサ54に異常が生じていない旨判定したとき、そのときに選択している制御圧力PCを継続して選択する。すなわち、指令信号Sをオンに設定しているときにはこれを継続し、指令信号Sをオフに設定しているときにはこれを継続する。
【0087】
図5および図6を参照して、「センサ異常時処理」の実行態様について説明する。
図5に、第2制御圧力PC2が選択された状態でセンサ異常が生じたときの例を示す。
時刻t21すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。
【0088】
時刻t22すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフに維持される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じた時刻t22以降は、機関運転状態の属する運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0089】
図6に、第1制御圧力PC1が選択された状態でセンサ異常が生じたときの例を示す。
時刻t31すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2から低圧領域R1に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフからオンに変更される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2から第1制御圧力PC1に切り替えられる。
【0090】
時刻t32すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じた時刻t32以降は、運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0091】
本実施形態によれば以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、すなわち内燃機関1に必要とされる潤滑油の供給量を確認することが困難なとき、制御圧力PCを第1制御圧力PC1よりも大きい第2制御圧力PC2に維持している。このため、冷却水温センサ54の異常に起因して対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0092】
(2)本実施形態では、機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qおよび冷却水温度TWに基づいて供給圧力PSを制御している。このため、ピストン14への潤滑油の供給量が不足することに起因して内燃機関1の回転抵抗が過度に大きくなることを抑制することができる。また、ピストン14への潤滑油の供給量が不足することに起因してピストン14の温度が過度に高くなることを抑制することができる。
<第2実施形態>
図7〜図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、先の第1実施形態と同様の潤滑油供給装置を備えるとともに、ウォータジャケット71に冷却水を循環させて機関冷却を行なう機関冷却システムを備えている。
【0093】
以下、本実施形態における機関冷却システムについて説明する。
図7に示すように、機関本体10を構成するシリンダブロック11の内部にはシリンダ18が形成されている。シリンダ18の内部には、その内周面、ピストンの頂面、及びシリンダヘッド17の下面により燃焼室13が区画形成されている。シリンダブロック11及びシリンダヘッド17においてこの燃焼室13の周囲には冷却水が循環するウォータジャケット71が形成されている。
【0094】
機関冷却システムを構成する冷却水通路70は、このウォータジャケット71の他、ラジエータ通路73と迂回通路74とにより構成されている。ラジエータ通路73は、ウォータジャケット71から流出する冷却水を、ラジエータ72を介してサーモスタット75に戻す。迂回通路74は、このラジエータ通路73から分岐してラジエータ72を迂回する態様でサーモスタット75に接続され、同ウォータジャケット71から流出する冷却水をサーモスタット75に戻す。このように冷却水通路70を通じてサーモスタット75に戻された冷却水は、ウォータポンプ80により再び同ウォータジャケット71の内部に吐出される。
【0095】
このようにウォータポンプ80から吐出された冷却水は、冷却水通路70を循環しつつシリンダブロック11及びシリンダヘッド17、即ち内燃機関1を冷却する。また、サーモスタット75は、内燃機関1の熱により冷却水の温度が上昇して所定の開弁温度以上になると開弁する。このようにサーモスタット75が開弁すると、ラジエータ通路73にも冷却水が循環するようになり、ラジエータ72において冷却水の放熱が行われるようになる。
【0096】
ウォータポンプ80の駆動軸(図示略)には、電磁式のクラッチ81を介してプーリ82が取り付けられている。このプーリ82とクランクシャフト15に取り付けられたプーリ(いずれも図示略)との間にはベルト83が掛架されている。従って、クラッチ81が係合状態にあるときには、クランクシャフト15の回転力がウォータポンプ80の駆動軸に伝達され、同ウォータポンプ80が運転されるようになる。一方、クラッチ81が解放状態にあるときには、こうした動力伝達が遮断されるため、ウォータポンプ80の運転は停止される。このように、機関運転中においてクラッチ81の係合/解放状態を切り替えることにより、ウォータポンプ80を運転/停止させることができる。このようなクラッチ81の係合/開放状態の切り替えは、電子制御装置51によって実行される。
【0097】
電子制御装置51は、クラッチ81の係合/解放状態の切り替え、換言すればウォータポンプ80の吐出制御や、内燃機関1の燃料噴射制御等、各種制御を統括して実行する。また、内燃機関1には、こうした各種制御を実行するための各種センサが設けられている。ちなみに、冷却水温センサ54は、シリンダヘッド17においてウォータジャケット71に連通する迂回通路74の最も上流側の位置に設けられている。
【0098】
電子制御装置51は、機関始動時から冷却水温度THWを監視し、この冷却水温度THWが、内燃機関1の低温時であるか否かを判断するための所定の温度THWth以下であるときには、ウォータポンプ80の運転を停止して迂回通路74やラジエータ通路73といった冷却水通路70における冷却水の循環を停止する(以下、「循環停止制御」)。そしてこうした循環停止制御が実行されることにより、冷却水による冷却能力が低下するため、内燃機関1の暖機が促進されるようになる。
【0099】
ところで、こうした暖機促進処理の実行条件の成立時以外のときに、すなわち冷却水温度THWが所定の温度THWthよりも高いときに、上記循環停止制御の実行が解除されない異常がウォータポンプ80に生じ、しかもこのとき機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1であると、意図しない機関温度の上昇を、冷却水の循環及び潤滑油の供給のいずれによっても抑制することができず、機関温度上昇が進行するおそれがある。
【0100】
そこで電子制御装置51は、上述のようにウォータポンプ80の異常に起因した機関温度上昇の進行を抑制するため、ウォータポンプ80の異常の有無を監視するとともにその結果に基づいて制御圧切替機構40を制御するウォータポンプ異常時制御を行なう。
【0101】
図8を参照して、ウォータポンプ異常時制御の具体的な処理手順を定めた「ウォータポンプ異常時処理」について説明する。なお、この処理は、内燃機関1の運転中において電子制御装置51により所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0102】
ステップS21では、ウォータポンプ80に異常が生じているか否かを判定する。ここでは、例えばクラッチ81の作動を制御するための電気回路において断線やショートが生じているといった条件が成立していることに基づいて、ウォータポンプ80に異常が生じている旨判定する。
【0103】
ステップS21においてウォータポンプ80に異常が生じている旨判定したとき、次のステップS22において制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。すなわち、制御圧切替機構40に対する指令信号Sをオフにする。
【0104】
ステップS21においてウォータポンプ80に異常が生じていない旨判定したとき、そのときに選択している制御圧力PCを継続して選択する。すなわち、指令信号Sをオンに設定しているときにはこれを継続し、指令信号Sをオフに設定しているときにはこれを継続する。
【0105】
図9および図10を参照して、「ウォータポンプ異常時処理」の実行態様について説明する。
図9に、第2制御圧力PC2が選択された状態でウォータポンプ異常が生じたときの例を示す。
【0106】
時刻t31すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。
【0107】
時刻t32すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフに維持される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じた時刻t32以降は、機関運転状態の属する運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0108】
図10に、第1制御圧力PC1が選択された状態でウォータポンプ異常が生じたときの例を示す。
時刻t41すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2から低圧領域R1に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフからオンに変更される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2から第1制御圧力PC1に切り替えられる。
【0109】
時刻t42すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じた時刻t42以降は、運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0110】
本実施形態によれば以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態では、内燃機関1の低温時以外のときに、循環停止制御の実行が解除されない異常があり、しかもこのときの制御圧力PCが低く設定されていると、意図しない機関温度の上昇を、冷却水の循環及び潤滑油の供給のいずれによっても抑制することができず、機関温度上昇が進行するおそれがあるとして、制御圧力PCを第1制御圧力PC1よりも大きい第2制御圧力PC2に維持している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができ、機関温度上昇の進行を抑制することができる。
【0111】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば同実施形態を以下のように変形して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0112】
・上記第2実施形態では、機関始動時において冷却水温度THWが所定の温度THWth以下であるときに、ウォータポンプ80の運転を停止して迂回通路74やラジエータ通路73といった冷却水通路70における冷却水の循環を停止する循環停止制御を行なうようにした。しかし、例えば電動式のウォータポンプを備える内燃機関にあっては、冷却水温度THWが所定の温度THWth以下のときに、同所定の温度THWthよりも高いときに比べて、ウォータポンプから吐出される冷却水量を少なくすることにより、冷却水通路における冷却水の循環を制限するようにしてもよい。
【0113】
・上記第1実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sをオフに設定することにより制御圧力PCを第2制御圧力PC2に維持したが、制御圧力PCの操作態様を例えば以下の(A)〜(C)のいずれかに変更することもできる。
【0114】
(A)冷却水温センサ54の出力に異常があるときに、制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定することを禁止する旨の信号を制御圧切替機構40に送信する。反対に、冷却水温センサ54の出力に異常がないときには、この信号を制御圧切替機構40に送信しない。
【0115】
(B)冷却水温センサ54の出力に異常がある状態を状態Aとし、冷却水温センサ54の出力に異常がない状態であるとともにこの点を除いては状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、状態Aのときには制御圧力PCを第1制御圧力PC1に変更することを禁止し、状態Bのときには制御圧力PCを第1制御圧力PC1に変更することを許可する。
【0116】
(C)内燃機関1の駆動状態について、潤滑油の圧力を相対的に低い第1制御圧力PC1に維持することが許容される駆動状態を低圧駆動状態(機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1にある状態)とし、潤滑油の圧力を相対的に高い第2制御圧力PC2に維持することが要求される駆動状態を高圧駆動状態(機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2にある状態)とし、冷却水温センサ54の状態および内燃機関1の駆動状態に基づいて以下の制御を行う。
【0117】
すなわち、冷却水温センサ54の出力に異常がないとき、かつ内燃機関1の駆動状態が低圧駆動状態のとき、制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定する。また、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、かつ内燃機関1の駆動状態が低圧駆動状態にあるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。また、内燃機関1の駆動状態が高圧駆動状態にあるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0118】
また、これらの上記変形については、上記第2実施形態に対して適用することもできる。すなわち、ウォータポンプ80に異常があるとき、制御圧力PCの操作態様を上記(A)〜(C)のいずれかに変更することもできる。
【0119】
・上記第1実施形態では、診断条件1および診断条件2の少なくとも一方が成立していることに基づいて冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定したが、冷却水温センサ54の異常を判定するための条件は上記実施形態に例示した内容に限られるものではない。例えば、診断条件1および診断条件2のいずれか一方についての判定を省略し、診断条件1および診断条件2のいずれか一方のみが成立していることに基づいて冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定することもできる。
【0120】
・冷却水温センサ54の出力異常としては上記第1実施形態で例示した出力異常の他に次のものが挙げられる。すなわち、冷却水温センサ54に断線は生じていないものの出力値が通常の運転状態では出力されない過度に低い値を示す異常が生じることもある。また、冷却水温センサ54の出力値が運転状態等に基づいて推定される値から過度に乖離する異常が生じることもある。そこで、冷却水温センサ54の異常を判定するための条件を例えば以下の(A)〜(C)のいずれかに変更することもできる。
【0121】
(A)診断条件1および診断条件2にさらに以下の診断条件3および診断条件4を加え、これら4つの条件の少なくとも1つが成立していることに基づいて冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定する。
・条件3:冷却水温センサ54の出力値が「0」よりも大きくかつ下限値よりも小さい。
・条件4:冷却水温センサ54の出力値と、機関運転状態等に基づいて推定される冷却水温度TWとの差が判定値よりも大きい。
【0122】
(B)診断条件1および診断条件2のいずれか一方が成立していることに代えて、診断条件3および診断条件4のいずれか一方が成立していることに基づいて、冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定する。
【0123】
(C)上記(A)において診断条件1〜4のいずれか1つについての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件1および3についての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件1および4についての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件2および3についての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件2および4についての判定を省略する。
【0124】
・上記各実施形態では、図2の制御圧切替マップに例示した冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qに基づいて制御圧力PCを設定したが、制御圧切替マップの内容は同実施形態に例示した内容に限られない。また、冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qのうちの機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qの少なくとも一方を省略して制御圧力切替マップを構成することもできる。また、冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qにさらに別のパラメータを加えて制御圧切替マップを構成することもできる。別のパラメータとしては、例えば変速比および車速の少なくとも一方を採用することができる。
【0125】
・上記第1実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に維持したが、次のように変更することもできる。すなわち、冷却水温度TWに関わらず潤滑油の圧力を相対的に低い第1制御圧力PC1に維持することが許容される運転領域Rを有する内燃機関においては、同運転領域Rにある状態のときには制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定することもできる。
【0126】
・上記各実施形態では、制御切替マップの境界ラインLを冷却水温センサ54の出力に基づいて変更したが、内燃機関1の温度を反映するパラメータをモニタするセンサであれば、いずれのセンサを用いることもできる。例えば、潤滑油の温度に応じた信号を出力する油温センサを内燃機関1に備えた場合には、この油温センサの出力に基づいて制御切替マップの境界ラインLを設定することができる。このとき、上記第1実施形態における、「センサ異常時処理」のステップS11では、冷却水温センサ54についての判定に代えて油温センサに異常が生じているか否かの判定が行われる。
【0127】
・上記各実施形態では、切替弁44を第1連通状態に維持するときの指令信号Sをオンにするとともに、切替弁44を第2連通状態に維持するときの指令信号Sをオフにしたが、切替弁44の第1連通状態および第2連通状態と指令信号Sのオンおよびオフとの関係を上記とは反対の関係に変更することもできる。
【0128】
・上記各実施形態では、制御圧力PCを第1制御圧力PC1および第2制御圧力PC2の2段階で切り替えることのできる油圧制御機構30を採用したが、制御圧力PCを3段階以上で切り替えることのできる油圧制御機構を採用することもできる。その一例としては以下の(A)および(B)が挙げられる。
【0129】
(A)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、第1制御圧力PC1および第2制御圧力PC2、ならびにこれら制御圧力の間にある第3制御圧力PC3の3段階で制御圧力PCを切り替えることのできる油圧制御機構を採用することもできる。この場合には、冷却水温センサ54の出力に異常が生じたとき、或いはウォータポンプ80に異常が生じたとき、制御圧力PCを低圧制御圧力としての第1制御圧力PC1または第3制御圧力PC3よりも大きい制御圧力に維持する。すなわち、低圧制御圧力が第1制御圧力PC1のときには第2制御圧力PC2または第3制御圧力PC3に、また低圧制御圧力が第3制御圧力PC3のときには第2制御圧力PC2に維持する。
【0130】
(B)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、制御圧力PCを所定の範囲内において無段階に設定することのできる油圧制御機構を採用することもできる。この場合には、冷却水温センサ54の出力に異常が生じたとき、或いはウォータポンプ80に異常が生じたとき、制御圧力PCを予め設定された低圧制御圧力PCXよりも大きな圧力に維持する。または、冷却水温センサ54の出力に異常が生じている状態を状態Aとし、冷却水温センサ54の出力に異常が生じていない状態であるとともにこの点を除いては状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、状態Aのときには状態Bのときよりも制御圧力PCを大きくすることもできる。または、冷却水温センサ54の出力に異常が生じたときの制御圧力PCを制御圧力PCYとしたとき、異常が生じているときは制御圧力PCYよりも大きな制御圧力PCに変更することもできる。
【0131】
・上記各実施形態では、センサ異常時処理(第1実施形態)或いはウォータポンプ異常時処理(第2実施形態)のいずれか一方を行なうものについて例示したが、これらセンサ異常時処理とウォータポンプ異常時処理との双方を行なうものに変更することもできる。
【0132】
・上記各実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるときや、ウォータポンプ80に異常があるときに、制御圧力PCを高圧制御圧力に維持する等の異常時制御を行うようにした。しかし、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ラジエータ72による放熱機能に異常があるときや、ラジエータ72は正常であるもののサーモスタット75が閉弁固着してラジエータ通路73での冷却水の循環が行なわれないといった異常があるときには、機関冷却システムを通じて冷却水を好適に冷却することができず、機関温度上昇が進行することとなり、内燃機関1の温度制御を的確に行なうことができない。そのため、上記各実施形態にて例示した異常以外の機関冷却システムにおける他の作動異常があるときにも、上記異常時制御を実行するようにしてもよい。
【0133】
・上記各実施形態及びその変形例では、機関冷却システムの作動異常が生じたときに、異常時制御を実行するものについて例示した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、インジェクタ16を含む燃料噴射システムの作動異常があるとき、具体的にはインジェクタ16から必要以上の量の燃料が噴射供給されるときには、機関冷却システムの作動が正常であったとしても機関温度上昇が進行することとなり、内燃機関1の温度制御を的確に行なうことができない。そのため、上記各実施形態及びそれらの変形例にて例示した異常以外の内燃機関の温度制御に関連するシステムにおける他の作動異常が生じているときに、上記異常時制御を実行するようにしてもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置を切替室31Cの油圧により第1切替位置および第2切替位置に変更したが、スリーブ31Bの位置をソレノイド等の油圧以外の手段により変更することもできる。
【0135】
・上記実施形態では、下流供給油路21B内の潤滑油をリリーフすることにより供給圧力PSを制御圧力PCまたはその付近に維持する油圧制御機構30を採用したが、これとは別のしくみにより供給圧力PSを制御する油圧制御機構を採用することもできる。その一例としては以下の(A)および(B)が挙げられる。
【0136】
(A)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、第1制御圧力PC1に相当する開弁圧力を有する低圧チェック弁、第2制御圧力PC2に相当する開弁圧力を有する高圧チェック弁、低圧チェック弁の有効および無効を切り替える電子制御弁を含む回路を供給油路21に接続する。そして、供給圧力PSを第1制御圧力PC1またはその付近に維持する要求があるときには、電子制御弁の制御により低圧チェック弁を有効にする。また、供給圧力PSを第2制御圧力PC2またはその付近に維持する要求があるときには、電子制御弁の制御により低圧チェック弁を無効にする。
【0137】
(B)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、吐出圧を変更することのできる電動のオイルポンプを採用する。そして、供給圧力PSを第1制御圧力PC1またはその付近に維持する要求があるときには、供給圧力PSおよび第1制御圧力PC1に基づいてオイルポンプの吐出圧を制御する。また、供給圧力PSを第2制御圧力PC2またはその付近に維持する要求があるときには、供給圧力PSおよび第2制御圧力PC2に基づいてオイルポンプの吐出圧を制御する。
【0138】
・上記実施形態では、機関駆動式のオイルポンプ22を備える潤滑油供給装置2を採用したが、同オイルポンプ22に代えて電動式のオイルポンプを備える潤滑油供給装置を採用することもできる。
【0139】
・上記実施形態では、内燃機関1に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に本発明を適用したが、変速機に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0140】
1…内燃機関(潤滑型車載装置)、2…潤滑油供給装置、10…機関本体、11…シリンダブロック、12…オイルパン、13…燃焼室、14…ピストン、15…クランクシャフト、16…インジェクタ、17…シリンダヘッド、18…シリンダ、20…機関潤滑機構、21…供給油路、21A…上流供給油路、21B…下流供給油路、22…オイルポンプ、23…オイルストレーナ、24…オイルフィルタ、25…ピストンジェット、30…油圧制御機構(圧力制御手段)、31…リリーフ弁、31A…ピストン、31B…スリーブ、31C…切替室、32…リリーフ油路、33…吐出側油路、34…吸込側油路、35…弁内部油路、40…制御圧切替機構、41…第1切替油路、42…第2切替油路、43…第3切替油路、44…切替弁、50…制御装置、51…電子制御装置(異常検出手段)、52…クランクポジションセンサ、53…油圧センサ、54…冷却水温センサ(機関温度検出手段)、61…警告灯、70…冷却水通路、71…ウォータジャケット、72…ラジエータ、73…ラジエータ通路、74…迂回通路、75…サーモスタット、80…ウォータポンプ(循環態様調整手段)、81…クラッチ(循環態様調整手段)、82…プーリ、83…ベルト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記潤滑油供給装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。
この潤滑油供給装置では、装置温度としての内燃機関の温度と相関する冷却水温センサの出力値に基づいて制御圧力を決定している。すなわち、冷却水温センサの出力が高いときには、制御圧力を高圧側の制御圧力に設定してピストンジェットを稼動させる。
【0003】
また、機関駆動式のウォータポンプと、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチとを備え、ウォータジャケットにおける冷却水の循環態様をクラッチにより調整することが考えられる。この場合、内燃機関の低温時にウォータジャケットにおける冷却水の循環を制限することで、内燃機関の暖機を促進することができる。また、こうした構成を備える内燃機関に適用される潤滑油供給装置では、冷却水の循環が制限される機関運転状態のとき、すなわち内燃機関の低温時には、ピストンジェットを稼動する必要性が低いため、制御圧力を低圧側の制御圧力に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−107485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば冷却水温センサの出力に異常が生じているときには、内燃機関に要求される潤滑油による冷却性能を把握することができない。また、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチの作動状態に異常が生じているときには、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達が的確に行なわれなくなり、内燃機関の低温時以外のときに、冷却水の循環を制限する循環制限制御の実行が解除されなくなる。このような状態が継続されたときには、潤滑油を多量に供給する必要のある高温状態において潤滑油が不足して装置温度が過度に高くなるおそれがある。また、これに起因して内燃機関の焼き付きをまねく可能性が高くなる。
【0006】
なお、こうした問題は車載内燃機関に限られるものではなく、内燃機関の出力軸の回転を変速する変速機においても同様に生じるものと考えられる。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることのできる車載潤滑油供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記高圧制御圧力に維持する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0008】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を低圧制御圧力よりも大きい高圧制御圧力に維持している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記低圧制御圧力にすることを禁止する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0010】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を低圧制御圧力にすることを禁止している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常が生じているとき、前記システムの作動状態に異常が生じていないときよりも前記制御圧力を大きくする異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0012】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常が生じているとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力をシステムの作動状態に異常が生じていないときよりも大きくしている。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0013】
(4)請求項4に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力の低圧側への変更を禁止する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0014】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力の低圧側への変更を禁止している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0015】
(5)請求項5に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がある状態を状態Aとし、前記システムの作動状態に異常がない状態であるとともにこの点を除いては前記状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、前記状態Aのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを禁止し、前記状態Bのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを許可する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0016】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がある状態Aのとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を低圧側に変更することを禁止している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0017】
(6)請求項6に記載の発明は、潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の駆動状態について、潤滑油の圧力を相対的に低い圧力に維持することが許容される駆動状態を低圧駆動状態とし、潤滑油の圧力を相対的に高い圧力に維持することが要求される駆動状態を高圧駆動状態とし、前記制御圧力について、相対的に低い制御圧力を低圧制御圧力とし、相対的に高い制御圧力を高圧制御圧力として、前記圧力制御手段は、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がないとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記低圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記高圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定する異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0018】
この発明では、潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、かつ潤滑型車載装置の駆動状態が低圧駆動状態にあるとき、すなわち潤滑型車載装置の温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、潤滑型車載装置の温度上昇が進行する場合を想定して、制御圧力を高圧制御圧力に設定している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0019】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態の異常を検出する異常検出手段を備え、この異常検出手段により異常が検出されたとき、前記異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0020】
この発明では、異常検出手段により異常が検出されたとき、異常時制御を行う。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況を適切に判定することができる。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置としての内燃機関について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御するものであり、前記システムは内燃機関の温度制御に関連するシステムであることをその要旨としている。
【0021】
この発明では、内燃機関の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、異常時制御を行う。このため、内燃機関において対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0022】
(9)内燃機関の温度制御に関連するシステムとしては、例えば請求項9に記載の発明によるように、冷却水通路に冷却水を循環させて機関冷却を行なう機関冷却システムであるといった態様をもって具体化することができる。そして、機関冷却システムの作動状態に異常があるとき、すなわち機関温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、機関温度上昇が進行する場合を想定して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0023】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の潤滑油供給装置において、前記機関冷却システムは前記内燃機関の温度を検出する機関温度検出手段を含むものであり、前記機関温度検出手段の出力に異常があるとき、前記異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0024】
機関温度検出手段の出力に異常があるとき、すなわち機関温度検出手段の出力に基づいて内燃機関に必要とされる潤滑油の供給量を確認することが困難なとき、機関温度上昇が進行する場合を想定して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、機関温度検出手段の出力の異常に起因して対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0025】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の潤滑油供給装置において、前記機関冷却システムは機関内部における冷却水の循環態様を調整する循環態様調整手段を含むものであり、前記循環態様調整手段の作動態様に異常があるとき、前記異常時制御を行うことをその要旨としている。
【0026】
循環態様調整手段の作動態様に異常があるとき、すなわち機関温度を的確に制御することができないおそれのあるとき、機関温度上昇が進行する場合を想定して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0027】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の潤滑油供給装置において、前記循環態様調整手段は内燃機関の低温時に前記冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なうものであり、内燃機関の低温時以外のときに、前記循環制限制御の実行が解除されない異常があるとき、前記異常時制御を行なうことをその要旨としている。
【0028】
内燃機関の低温時に冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を実行することで内燃機関の暖機を促進することができる。ただし、こうした循環制限制御を行なうものにあって、内燃機関の低温時以外のときに、循環制限制御の実行が解除されない異常があり、しかもこのときの制御圧力が低く設定されていると、意図しない機関温度の上昇を、冷却水の循環及び潤滑油の供給のいずれによっても抑制することができず、機関温度上昇が進行するおそれがある。この点、本発明に対して、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができ、機関温度上昇の進行を抑制することができる。
【0029】
(13)内燃機関の低温時に冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なう循環態様調整手段としては、請求項13に記載の発明によるように、機関駆動式のウォータポンプと、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチとを含むといった態様をもって具体化することができる。ちなみに、この場合、例えば、クラッチの作動状態に異常が生じることで、内燃機関からウォータポンプへの駆動力の伝達が的確に行なわれなくなり、内燃機関の低温時以外のときに、冷却水の循環を制限する循環制限制御の実行が解除されなくなる。このような異常があるとき、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、請求項12に記載の発明に準じた作用効果を奏することができる。
【0030】
(14)また、内燃機関の低温時に冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なう循環態様調整手段としては、請求項14に記載の発明によるように、電動式のウォータポンプであるといった態様をもって具体化することができる。ちなみに、この場合、例えば、ウォータポンプとこれを制御する制御装置との間で断線等の異常が生じることで、ウォータポンプが駆動されなくなり、内燃機関の低温時以外のときに、冷却水の循環を制限する循環制限制御の実行が解除されなくなる。このような異常があるとき、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明を適用すれば、請求項12に記載の発明に準じた作用効果を奏することができる。
【0031】
(15)請求項15に記載の発明は、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記潤滑型車載装置としての変速機について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御することをその要旨としている。
【0032】
この発明によれば、変速機の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、異常時制御を行う。このため、変速機において対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0033】
(16)請求項16に記載の発明は、請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、前記圧力制御手段は、前記供給油路内の圧力が前記制御圧力よりも大きいときに前記供給油路内の潤滑油をリリーフすることにより、前記供給油路内の圧力を変更するものであることをその要旨としている。
【0034】
この発明では、供給油路内の圧力が制御圧力よりも大きいときに供給油路内の潤滑油をリリーフする圧力制御手段を備える車載潤滑油供給装置において、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の車載潤滑油供給装置の第1実施形態について、同装置を含めた内燃機関の全体構成を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の油圧制御において用いられる機関回転速度および燃料噴射量と制御圧力との関係を規定したマップ。
【図3】同実施形態の油圧制御の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図4】同実施形態の電子制御装置により実行される「センサ異常時処理」について、その手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態の「センサ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図6】同実施形態の「センサ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図7】本発明の車載潤滑油供給装置の第2実施形態について、機関冷却システムを模式的に示す模式図。
【図8】同実施形態の電子制御装置により実行される「ウォータポンプ異常時処理」について、その手順を示すフローチャート。
【図9】同実施形態の「ウォータポンプ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図10】同実施形態の「ウォータポンプ異常時処理」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
図1〜図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。なお、本実施形態では、潤滑型車載装置として内燃機関の対象部位に潤滑油を供給する潤滑油供給装置として本発明を具体化した一例を示している。
【0037】
図1に示すように内燃機関1は、空気および燃料からなる混合気を燃焼する機関本体10と、潤滑油を内燃機関1の各潤滑部位に供給する潤滑油供給装置2と、これら装置を統括的に制御する制御装置50とを含む。
【0038】
機関本体10は、混合気を燃焼させるための燃焼室13を有するシリンダブロック11と、潤滑油を貯留するオイルパン12と、吸気通路に燃料を噴射するインジェクタ16とを含む。シリンダブロック11には、混合気燃焼により往復運動するピストン14と、ピストン14の往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト15とが設けられている。
【0039】
潤滑油供給装置2は、機関本体10の各対象部位に潤滑油を供給する機関潤滑機構20と、各対象部位に供給される潤滑油の圧力(以下、「供給圧力PS」)を制御する油圧制御機構30とを含む。
【0040】
機関潤滑機構20は、オイルパン12と機関本体10とを接続する供給油路21と、この供給油路21に設けられてクランクシャフト15により駆動されるオイルポンプ22と、ピストン14に向けて潤滑油を噴射するピストンジェット25とを含む。
【0041】
供給油路21のうちオイルポンプ22よりも上流側にある上流供給油路21Aには、オイルパン12内の潤滑油に含まれる異物のうち比較的大きなものを濾過するオイルストレーナ23が設けられている。供給油路21のうちオイルポンプ22よりも下流側にある下流供給油路21Bには、潤滑油に含まれる微小な異物を濾過するオイルフィルタ24が設けられている。
【0042】
油圧制御機構30は、オイルポンプ22を迂回して下流供給油路21Bと上流供給油路21Aとを互いに接続するリリーフ油路32と、供給圧力PSである下流供給油路21Bの潤滑油の圧力が所定の圧力(以下、「制御圧力PC」)を上回るときに開弁するリリーフ弁31と、リリーフ弁31の制御圧力PCの大きさを変更する制御圧切替機構40とにより構成されている。
【0043】
リリーフ油路32は、リリーフ弁31の入口側に設けられた吐出側油路33と、リリーフ弁31の出口側に設けられた吸込側油路34と、リリーフ弁31内に設けられた弁内部油路35とにより構成されている。
【0044】
リリーフ弁31が開弁状態にあるとき、リリーフ油路32が開放されることにより、下流供給油路21Bの潤滑油がリリーフ油路32を介して上流供給油路21Aにリリーフされる。
【0045】
リリーフ弁31には、供給圧力PSに基づいて弁内部油路35を開放または閉鎖する弁体としてのピストン31Aと、リリーフ弁31の出口を含みピストン31Aに対して移動可能なスリーブ31Bと、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置を切り替えるための切替室31Cとが設けられている。切替室31Cは、弁内部油路35とは独立して制御圧切替機構40により潤滑油の供給および排出が行われる。
【0046】
制御圧切替機構40は、電子制御装置51からの指令により切替室31Cの潤滑油の供給状態を切り替える切替弁44と、切替弁44に接続される3つの油路、すなわち第1切替油路41および第2切替油路42および第3切替油路43とを含む。
【0047】
第1切替油路41は、吐出側油路33と切替弁44とを互いに接続する。第2切替油路42は、切替弁44と切替室31Cとを互いに接続する。第3切替油路43は、切替弁44と吸込側油路34とを互いに接続する。
【0048】
切替弁44は、各切替油路41〜43に対応して設けられたポート間の連通状態を変更することにより、切替室31Cに潤滑油が供給される状態と、切替室31Cから潤滑油が排出される状態とを切り替える。
【0049】
各ポートの連通状態が第1連通状態にあるとき、第1切替油路41と第2切替油路42とが互いに連通され、かつ第1切替油路41と第3切替油路43とが互いに遮断される。これにより、下流供給油路21Bの潤滑油が吐出側油路33および第1切替油路41および第2切替油路42を介して切替室31Cに供給される。
【0050】
各ポートの連通状態が第2連通状態にあるとき、第1切替油路41と第2切替油路42および第3切替油路43とが互いに遮断され、かつ第2切替油路42と第3切替油路43とが互いに連通される。これにより、切替室31Cの潤滑油が第2切替油路42および第3切替油路43および吸込側油路34を介して上流供給油路21Aにリリーフされる。
【0051】
リリーフ弁31は、切替室31Cの油圧に応じて次のように動作する。
切替室31Cに潤滑油が供給されているとき、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置が第1切替位置に維持される。これにより、制御圧力PCが低圧側の第1制御圧力PC1に設定される。
【0052】
切替室31Cから潤滑油がリリーフされているとき、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置が第2切替位置に維持される。これにより、制御圧力PCが高圧側の第2制御圧力PC2に設定される。
【0053】
制御圧力PCが第1制御圧力PC1に設定され、かつ供給圧力PSが第1制御圧力PC1未満のとき、リリーフ弁31は閉弁状態に維持される。一方、制御圧力PCが第1制御圧力PC1に設定され、かつ供給圧力PSが第1制御圧力PC1以上のとき、リリーフ弁31は開弁状態に維持される。
【0054】
制御圧力PCが第2制御圧力PC2に設定され、かつ供給圧力PSが第2制御圧力PC2未満のとき、リリーフ弁31は閉弁状態に維持される。一方、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に設定され、かつ供給圧力PSが第2制御圧力PC2以上のとき、リリーフ弁31は開弁状態に維持される。
【0055】
供給圧力PSが第1制御圧力PC1またはその付近に維持されているとき、ピストンジェット25に潤滑油を供給する油路上の弁が閉弁される。これにより、ピストンジェット25からピストン31Aには潤滑油が噴射されない。
【0056】
供給圧力PSが第2制御圧力PC2またはその付近に維持されているとき、ピストンジェット25に潤滑油を供給する油路上の弁が開弁される。これにより、ピストンジェット25からピストン31Aに向けて潤滑油が噴射される。
【0057】
制御装置50には、機関運転状態等をモニタする各種センサ、すなわちクランクポジションセンサ52、油圧センサ53および冷却水温センサ54を含む各種センサと、これらセンサの出力に基づいて各装置の動作を制御する電子制御装置51と、冷却水温センサ54に異常が生じているときに点灯する警告灯61が設けられている。
【0058】
クランクポジションセンサ52は、クランクシャフト15の回転角度(以下、「クランク角度CA」)に応じた信号を電子制御装置51に出力する。油圧センサ53は、供給油路21の供給圧力PSに応じた信号を出力する。冷却水温センサ54は、シリンダを冷却する冷却水の温度(以下、「冷却水温度TW」)に応じた信号を電子制御装置51に出力する。
【0059】
電子制御装置51は、各種の制御に用いるためのパラメータとして次のものを算出する。すなわち、クランクポジションセンサ52からの出力信号に基づいてクランク角度CAに相当する演算値を算出する。また、クランク角度CAの演算値に基づいてクランクシャフト15の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)に相当する演算値を算出する。また、冷却水温センサ54からの出力信号に基づいて冷却水温度TWに相当する演算値を算出する。また、インジェクタ16から噴射される燃料量(以下、「燃料噴射量Q」)の指令値を算出する。
【0060】
電子制御装置51により行われる制御としては、機関の各潤滑部位に供給する油圧を制御するための油圧制御、冷却水温センサ54に異常が生じているときに警告灯61を点灯するための警告制御、および冷却水温センサ54の異常に対応するためのセンサ異常時制御が挙げられる。
【0061】
図2を参照して、油圧制御の内容について説明する。
油圧制御機構30において、制御圧力PCが第1制御圧力PC1に設定されている状態を「低圧制御状態」とし、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に設定されている状態を「高圧制御状態」としたとき、これら制御状態において燃料消費率および機関潤滑性能は次のような関係にある。
【0062】
すなわち、低圧制御状態においては高圧制御状態よりもオイルポンプ22の負荷が小さいため、制御圧力PCの大きさのみが異なることを前提としたとき、低圧制御状態の燃料消費率は高圧制御状態の燃料消費率よりも小さくなる。一方、高圧制御状態においては低圧制御状態よりも供給圧力PSが大きくなるため、制御圧力PCの大きさのみが異なることを前提としたとき、高圧制御状態の機関潤滑性能は低圧制御状態の機関潤滑性能よりも高くなる。
【0063】
このため、燃料消費率の低減および内燃機関1の適切な潤滑という2つの要求を満たすためには、基本的には油圧制御機構30を高圧制御状態に維持し、内燃機関1に必要とされる潤滑油量が少ないとき、油圧制御機構30を低圧制御状態に維持することが望ましいといえる。
【0064】
内燃機関1に必要とされる潤滑油量は主に以下のときに多くなる。
すなわち、機関回転速度NEが大きいときにはピストン14の運動速度が大きいため、機関本体10においてピストン14等の潤滑のために必要となる潤滑量が多くなる。また、燃料噴射量Qが大きいときには燃焼により生じるトルクが大きいため、内燃機関1においてクランクシャフト15等の潤滑のために必要となる潤滑油量が多くなる。また、内燃機関1の温度が高いとき、すなわち冷却水温度TWが高いとき、ピストン14の温度が過度に高くなりやすいため、ピストンジェット25によるピストン14の冷却のために必要となる潤滑油量が多くなる。
【0065】
そこで油圧制御においては、機関運転状態の指標としての冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qに基づいて内燃機関1に必要とされる潤滑油量を把握し、この潤滑油量に応じた制御圧力PCを設定する。具体的には、冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qにより規定される機関運転状態が図2の制御圧切替マップ上のいずれの領域に属するかを把握し、機関運転状態が属する領域に応じて制御圧力PCを設定する。
【0066】
図2に示されるように、制御圧切替マップにおいては機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qをパラメータとする運転領域Rが境界ラインLにより2つの領域、すなわち低圧領域R1および高圧領域R2に区画されている。低圧領域R1は、境界ラインLよりも低回転速度側かつ低噴射量側の運転領域Rを示す。高圧領域R2は、境界ラインLよりも高回転速度側かつ高噴射量側の運転領域Rを示す。
【0067】
境界ラインLとしては、冷却水温度TWに応じて3種類のものが用意されている。
すなわち、冷却水温度TWが下限温度TWX以上かつ第1境界温度TW1(>TWX)未満のときに用いられる境界ラインL1と、冷却水温度TWが境界温度TW1以上かつ第2境界温度TW2(>TW1)未満のときに用いられる境界ラインL2と、冷却水温度TWが境界温度TW2以上かつ上限温度TWY(>TW2)未満のときに用いられる境界ラインL3とが用意されている。
【0068】
運転領域Rが境界ラインL1により区画されるときの低圧領域R1は、運転領域Rが境界ラインL2により区画されるときの低圧領域R1よりも大きい。運転領域Rが境界ラインL2により区画されるときの低圧領域R1は、運転領域Rが境界ラインL3により区画されるときの低圧領域R1よりも大きい。
【0069】
電子制御装置51は、上記マップに基づいて次のように制御圧力PCを設定する。
そのときどきの機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1に属するときには、制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定する。一方、高圧領域R2に属するときには、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0070】
冷却水温度TWが下限温度TWX以上かつ第1境界温度TW1未満のときには、境界ラインL1を基準として機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1および高圧領域R2のいずれに属するかを判定する。
【0071】
冷却水温度TWが第1境界温度TW1以上かつ第2境界温度TW2未満のときには、境界ラインL2を基準として機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1および高圧領域R2のいずれに属するかを判定する。
【0072】
冷却水温度TWが第2境界温度TW2以上かつ上限温度TWY未満のときには、境界ラインL3を基準として機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qが低圧領域R1および高圧領域R2のいずれに属するかを判定する。
【0073】
冷却水温度TWが下限温度TWX未満のときには、冷却水温度TWが所定の冷却水温度TWX以上のときと比較して潤滑油の粘度が高い。すなわち、対象部位への潤滑油の供給量が不足するおそれが高い。このため、冷却水温度TWが下限温度TWX未満のときには、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0074】
冷却水温度TWが上限温度TWY以上のときには、内燃機関1に対して、高い冷却性能が要求される。このため、冷却水温度TWが上限温度TWY以上のときには、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0075】
電子制御装置51は、制御圧切替マップに基づいて第1制御圧力PC1または第2制御圧力PC2を選択したとき、選択した制御圧力PCを維持するため、または選択した制御圧力PCに変更するための信号処理を行う。すなわち、制御圧切替マップに基づいて第1制御圧力PC1を選択したとき、切替弁44を第1連通状態に維持するための指令信号Sをオンに設定し、この指令信号Sを制御圧切替機構40に送信する。一方、制御圧切替マップに基づいて第2制御圧力PC2を選択したとき、切替弁44を第2連通状態に維持するために指令信号Sをオフに設定し、同指令信号Sの制御圧切替機構40への送信を停止する。
【0076】
図3を参照して、制御圧力PCの切替態様の一例について説明する。
時刻t11すなわち、機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qの属する運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。そして、制御圧切替機構40が指令信号Sのオフに基づいて動作したとき、実際の制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。これにより、供給圧力PSが第2制御圧力PC2に向けて次第に上昇する。
【0077】
時刻t12すなわち、供給圧力PSが第2制御圧力PC2を上回るところまで上昇したとき、リリーフ弁31が開弁される。これにより、下流供給油路21Bの潤滑油がリリーフ油路32を介して上流供給油路21Aにリリーフされるため、供給圧力PSが第2制御圧力PC2またはその付近に維持される。なお、機関回転速度NEが高いときにはオイルポンプ22の吐出量が多くなるため、供給圧力PSが第2制御圧力PC2を上回ることもある。
【0078】
時刻t13すなわち、機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qの属する運転領域Rが高圧領域R2から低圧領域R1に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフからオンに変更される。そして制御圧切替機構40が指令信号Sに基づいて動作したとき、実際の制御圧力PCが第2制御圧力PC2から第1制御圧力PC1に切り替えられる。これにより、供給圧力PSが第1制御圧力PC1に向けて次第に低下する。
【0079】
時刻t14すなわち、供給圧力PSが第1制御圧力PC1を下回るところまで低下したとき、リリーフ弁31が閉弁される。このため、下流供給油路21Bの潤滑油がリリーフされなくなる。その後、供給圧力PSが第1制御圧力PC1を上回るところまで上昇したとき、リリーフ弁31が開弁される。これにより、供給圧力PSが第1制御圧力PC1またはその付近に維持される。
【0080】
ところで、冷却水温センサ54の回路に断線が生じている場合、同センサ54の出力値が「0」を示す。また、冷却水温センサ54の回路にショートが生じている場合、同センサ54の出力値が通常の運転状態では出力されない過度に高い値を示す。
【0081】
これらのいずれの場合にも、冷却水温センサ54の出力値には実際の冷却水温度TWが反映されていないため、上記のように制御圧切替マップに基づいた油圧制御を適切に行うことができない。このような状態において、冷却水温度TWが上昇したことにより運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したときには、潤滑部位での潤滑油の不足をまねくことが考えられる。
【0082】
そこで電子制御装置51は、上述のように冷却水温センサ54の異常に起因した潤滑不足が生じる頻度を低減するため、冷却水温センサ54の異常の有無を監視するとともにその結果に基づいて制御圧切替機構40を制御するセンサ異常時制御を行う。
【0083】
図4を参照して、センサ異常時制御の具体的な処理手順を定めた「センサ異常時処理」について説明する。なお、この処理は、内燃機関1の運転中において電子制御装置51により所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0084】
ステップS11では、冷却水温センサ54に異常が生じているか否かを判定する。ここでは、次の診断条件1および診断条件2のいずれか一方が成立していることに基づいて、冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定する。
・診断条件1:冷却水温センサ54の出力値が「0」を示している。
・診断条件2:冷却水温センサ54の出力値が上限値よりも大きい。
【0085】
ステップS11において冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定したとき、次のステップS12において制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。すなわち、制御圧切替機構40に対する指令信号Sをオフにする。
【0086】
ステップS11において冷却水温センサ54に異常が生じていない旨判定したとき、そのときに選択している制御圧力PCを継続して選択する。すなわち、指令信号Sをオンに設定しているときにはこれを継続し、指令信号Sをオフに設定しているときにはこれを継続する。
【0087】
図5および図6を参照して、「センサ異常時処理」の実行態様について説明する。
図5に、第2制御圧力PC2が選択された状態でセンサ異常が生じたときの例を示す。
時刻t21すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。
【0088】
時刻t22すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフに維持される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じた時刻t22以降は、機関運転状態の属する運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0089】
図6に、第1制御圧力PC1が選択された状態でセンサ異常が生じたときの例を示す。
時刻t31すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2から低圧領域R1に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフからオンに変更される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2から第1制御圧力PC1に切り替えられる。
【0090】
時刻t32すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じた時刻t32以降は、運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0091】
本実施形態によれば以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、すなわち内燃機関1に必要とされる潤滑油の供給量を確認することが困難なとき、制御圧力PCを第1制御圧力PC1よりも大きい第2制御圧力PC2に維持している。このため、冷却水温センサ54の異常に起因して対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができる。
【0092】
(2)本実施形態では、機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qおよび冷却水温度TWに基づいて供給圧力PSを制御している。このため、ピストン14への潤滑油の供給量が不足することに起因して内燃機関1の回転抵抗が過度に大きくなることを抑制することができる。また、ピストン14への潤滑油の供給量が不足することに起因してピストン14の温度が過度に高くなることを抑制することができる。
<第2実施形態>
図7〜図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、先の第1実施形態と同様の潤滑油供給装置を備えるとともに、ウォータジャケット71に冷却水を循環させて機関冷却を行なう機関冷却システムを備えている。
【0093】
以下、本実施形態における機関冷却システムについて説明する。
図7に示すように、機関本体10を構成するシリンダブロック11の内部にはシリンダ18が形成されている。シリンダ18の内部には、その内周面、ピストンの頂面、及びシリンダヘッド17の下面により燃焼室13が区画形成されている。シリンダブロック11及びシリンダヘッド17においてこの燃焼室13の周囲には冷却水が循環するウォータジャケット71が形成されている。
【0094】
機関冷却システムを構成する冷却水通路70は、このウォータジャケット71の他、ラジエータ通路73と迂回通路74とにより構成されている。ラジエータ通路73は、ウォータジャケット71から流出する冷却水を、ラジエータ72を介してサーモスタット75に戻す。迂回通路74は、このラジエータ通路73から分岐してラジエータ72を迂回する態様でサーモスタット75に接続され、同ウォータジャケット71から流出する冷却水をサーモスタット75に戻す。このように冷却水通路70を通じてサーモスタット75に戻された冷却水は、ウォータポンプ80により再び同ウォータジャケット71の内部に吐出される。
【0095】
このようにウォータポンプ80から吐出された冷却水は、冷却水通路70を循環しつつシリンダブロック11及びシリンダヘッド17、即ち内燃機関1を冷却する。また、サーモスタット75は、内燃機関1の熱により冷却水の温度が上昇して所定の開弁温度以上になると開弁する。このようにサーモスタット75が開弁すると、ラジエータ通路73にも冷却水が循環するようになり、ラジエータ72において冷却水の放熱が行われるようになる。
【0096】
ウォータポンプ80の駆動軸(図示略)には、電磁式のクラッチ81を介してプーリ82が取り付けられている。このプーリ82とクランクシャフト15に取り付けられたプーリ(いずれも図示略)との間にはベルト83が掛架されている。従って、クラッチ81が係合状態にあるときには、クランクシャフト15の回転力がウォータポンプ80の駆動軸に伝達され、同ウォータポンプ80が運転されるようになる。一方、クラッチ81が解放状態にあるときには、こうした動力伝達が遮断されるため、ウォータポンプ80の運転は停止される。このように、機関運転中においてクラッチ81の係合/解放状態を切り替えることにより、ウォータポンプ80を運転/停止させることができる。このようなクラッチ81の係合/開放状態の切り替えは、電子制御装置51によって実行される。
【0097】
電子制御装置51は、クラッチ81の係合/解放状態の切り替え、換言すればウォータポンプ80の吐出制御や、内燃機関1の燃料噴射制御等、各種制御を統括して実行する。また、内燃機関1には、こうした各種制御を実行するための各種センサが設けられている。ちなみに、冷却水温センサ54は、シリンダヘッド17においてウォータジャケット71に連通する迂回通路74の最も上流側の位置に設けられている。
【0098】
電子制御装置51は、機関始動時から冷却水温度THWを監視し、この冷却水温度THWが、内燃機関1の低温時であるか否かを判断するための所定の温度THWth以下であるときには、ウォータポンプ80の運転を停止して迂回通路74やラジエータ通路73といった冷却水通路70における冷却水の循環を停止する(以下、「循環停止制御」)。そしてこうした循環停止制御が実行されることにより、冷却水による冷却能力が低下するため、内燃機関1の暖機が促進されるようになる。
【0099】
ところで、こうした暖機促進処理の実行条件の成立時以外のときに、すなわち冷却水温度THWが所定の温度THWthよりも高いときに、上記循環停止制御の実行が解除されない異常がウォータポンプ80に生じ、しかもこのとき機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1であると、意図しない機関温度の上昇を、冷却水の循環及び潤滑油の供給のいずれによっても抑制することができず、機関温度上昇が進行するおそれがある。
【0100】
そこで電子制御装置51は、上述のようにウォータポンプ80の異常に起因した機関温度上昇の進行を抑制するため、ウォータポンプ80の異常の有無を監視するとともにその結果に基づいて制御圧切替機構40を制御するウォータポンプ異常時制御を行なう。
【0101】
図8を参照して、ウォータポンプ異常時制御の具体的な処理手順を定めた「ウォータポンプ異常時処理」について説明する。なお、この処理は、内燃機関1の運転中において電子制御装置51により所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0102】
ステップS21では、ウォータポンプ80に異常が生じているか否かを判定する。ここでは、例えばクラッチ81の作動を制御するための電気回路において断線やショートが生じているといった条件が成立していることに基づいて、ウォータポンプ80に異常が生じている旨判定する。
【0103】
ステップS21においてウォータポンプ80に異常が生じている旨判定したとき、次のステップS22において制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。すなわち、制御圧切替機構40に対する指令信号Sをオフにする。
【0104】
ステップS21においてウォータポンプ80に異常が生じていない旨判定したとき、そのときに選択している制御圧力PCを継続して選択する。すなわち、指令信号Sをオンに設定しているときにはこれを継続し、指令信号Sをオフに設定しているときにはこれを継続する。
【0105】
図9および図10を参照して、「ウォータポンプ異常時処理」の実行態様について説明する。
図9に、第2制御圧力PC2が選択された状態でウォータポンプ異常が生じたときの例を示す。
【0106】
時刻t31すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1から高圧領域R2に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。
【0107】
時刻t32すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフに維持される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。すなわち、冷却水温センサ54に異常が生じた時刻t32以降は、機関運転状態の属する運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0108】
図10に、第1制御圧力PC1が選択された状態でウォータポンプ異常が生じたときの例を示す。
時刻t41すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じていないとき、かつ機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2から低圧領域R1に移行したとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオフからオンに変更される。これにより、制御圧力PCが第2制御圧力PC2から第1制御圧力PC1に切り替えられる。
【0109】
時刻t42すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じたとき、かつ異常が生じる直前の機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1のとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sがオンからオフに変更される。これにより、制御圧力PCが第1制御圧力PC1から第2制御圧力PC2に切り替えられる。すなわち、ウォータポンプ80に異常が生じた時刻t42以降は、運転領域Rにかかわらず制御圧力PCが第2制御圧力PC2に維持される。
【0110】
本実施形態によれば以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態では、内燃機関1の低温時以外のときに、循環停止制御の実行が解除されない異常があり、しかもこのときの制御圧力PCが低く設定されていると、意図しない機関温度の上昇を、冷却水の循環及び潤滑油の供給のいずれによっても抑制することができず、機関温度上昇が進行するおそれがあるとして、制御圧力PCを第1制御圧力PC1よりも大きい第2制御圧力PC2に維持している。このため、対象部位への潤滑油の供給量が不足する状況が生じる頻度を少なくすることができ、機関温度上昇の進行を抑制することができる。
【0111】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば同実施形態を以下のように変形して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0112】
・上記第2実施形態では、機関始動時において冷却水温度THWが所定の温度THWth以下であるときに、ウォータポンプ80の運転を停止して迂回通路74やラジエータ通路73といった冷却水通路70における冷却水の循環を停止する循環停止制御を行なうようにした。しかし、例えば電動式のウォータポンプを備える内燃機関にあっては、冷却水温度THWが所定の温度THWth以下のときに、同所定の温度THWthよりも高いときに比べて、ウォータポンプから吐出される冷却水量を少なくすることにより、冷却水通路における冷却水の循環を制限するようにしてもよい。
【0113】
・上記第1実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、制御圧切替機構40に対する指令信号Sをオフに設定することにより制御圧力PCを第2制御圧力PC2に維持したが、制御圧力PCの操作態様を例えば以下の(A)〜(C)のいずれかに変更することもできる。
【0114】
(A)冷却水温センサ54の出力に異常があるときに、制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定することを禁止する旨の信号を制御圧切替機構40に送信する。反対に、冷却水温センサ54の出力に異常がないときには、この信号を制御圧切替機構40に送信しない。
【0115】
(B)冷却水温センサ54の出力に異常がある状態を状態Aとし、冷却水温センサ54の出力に異常がない状態であるとともにこの点を除いては状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、状態Aのときには制御圧力PCを第1制御圧力PC1に変更することを禁止し、状態Bのときには制御圧力PCを第1制御圧力PC1に変更することを許可する。
【0116】
(C)内燃機関1の駆動状態について、潤滑油の圧力を相対的に低い第1制御圧力PC1に維持することが許容される駆動状態を低圧駆動状態(機関運転状態の属する運転領域Rが低圧領域R1にある状態)とし、潤滑油の圧力を相対的に高い第2制御圧力PC2に維持することが要求される駆動状態を高圧駆動状態(機関運転状態の属する運転領域Rが高圧領域R2にある状態)とし、冷却水温センサ54の状態および内燃機関1の駆動状態に基づいて以下の制御を行う。
【0117】
すなわち、冷却水温センサ54の出力に異常がないとき、かつ内燃機関1の駆動状態が低圧駆動状態のとき、制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定する。また、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、かつ内燃機関1の駆動状態が低圧駆動状態にあるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。また、内燃機関1の駆動状態が高圧駆動状態にあるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に設定する。
【0118】
また、これらの上記変形については、上記第2実施形態に対して適用することもできる。すなわち、ウォータポンプ80に異常があるとき、制御圧力PCの操作態様を上記(A)〜(C)のいずれかに変更することもできる。
【0119】
・上記第1実施形態では、診断条件1および診断条件2の少なくとも一方が成立していることに基づいて冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定したが、冷却水温センサ54の異常を判定するための条件は上記実施形態に例示した内容に限られるものではない。例えば、診断条件1および診断条件2のいずれか一方についての判定を省略し、診断条件1および診断条件2のいずれか一方のみが成立していることに基づいて冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定することもできる。
【0120】
・冷却水温センサ54の出力異常としては上記第1実施形態で例示した出力異常の他に次のものが挙げられる。すなわち、冷却水温センサ54に断線は生じていないものの出力値が通常の運転状態では出力されない過度に低い値を示す異常が生じることもある。また、冷却水温センサ54の出力値が運転状態等に基づいて推定される値から過度に乖離する異常が生じることもある。そこで、冷却水温センサ54の異常を判定するための条件を例えば以下の(A)〜(C)のいずれかに変更することもできる。
【0121】
(A)診断条件1および診断条件2にさらに以下の診断条件3および診断条件4を加え、これら4つの条件の少なくとも1つが成立していることに基づいて冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定する。
・条件3:冷却水温センサ54の出力値が「0」よりも大きくかつ下限値よりも小さい。
・条件4:冷却水温センサ54の出力値と、機関運転状態等に基づいて推定される冷却水温度TWとの差が判定値よりも大きい。
【0122】
(B)診断条件1および診断条件2のいずれか一方が成立していることに代えて、診断条件3および診断条件4のいずれか一方が成立していることに基づいて、冷却水温センサ54に異常が生じている旨判定する。
【0123】
(C)上記(A)において診断条件1〜4のいずれか1つについての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件1および3についての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件1および4についての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件2および3についての判定を省略する。また、上記(A)において診断条件2および4についての判定を省略する。
【0124】
・上記各実施形態では、図2の制御圧切替マップに例示した冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qに基づいて制御圧力PCを設定したが、制御圧切替マップの内容は同実施形態に例示した内容に限られない。また、冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qのうちの機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qの少なくとも一方を省略して制御圧力切替マップを構成することもできる。また、冷却水温度TWおよび機関回転速度NEおよび燃料噴射量Qにさらに別のパラメータを加えて制御圧切替マップを構成することもできる。別のパラメータとしては、例えば変速比および車速の少なくとも一方を採用することができる。
【0125】
・上記第1実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるとき、制御圧力PCを第2制御圧力PC2に維持したが、次のように変更することもできる。すなわち、冷却水温度TWに関わらず潤滑油の圧力を相対的に低い第1制御圧力PC1に維持することが許容される運転領域Rを有する内燃機関においては、同運転領域Rにある状態のときには制御圧力PCを第1制御圧力PC1に設定することもできる。
【0126】
・上記各実施形態では、制御切替マップの境界ラインLを冷却水温センサ54の出力に基づいて変更したが、内燃機関1の温度を反映するパラメータをモニタするセンサであれば、いずれのセンサを用いることもできる。例えば、潤滑油の温度に応じた信号を出力する油温センサを内燃機関1に備えた場合には、この油温センサの出力に基づいて制御切替マップの境界ラインLを設定することができる。このとき、上記第1実施形態における、「センサ異常時処理」のステップS11では、冷却水温センサ54についての判定に代えて油温センサに異常が生じているか否かの判定が行われる。
【0127】
・上記各実施形態では、切替弁44を第1連通状態に維持するときの指令信号Sをオンにするとともに、切替弁44を第2連通状態に維持するときの指令信号Sをオフにしたが、切替弁44の第1連通状態および第2連通状態と指令信号Sのオンおよびオフとの関係を上記とは反対の関係に変更することもできる。
【0128】
・上記各実施形態では、制御圧力PCを第1制御圧力PC1および第2制御圧力PC2の2段階で切り替えることのできる油圧制御機構30を採用したが、制御圧力PCを3段階以上で切り替えることのできる油圧制御機構を採用することもできる。その一例としては以下の(A)および(B)が挙げられる。
【0129】
(A)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、第1制御圧力PC1および第2制御圧力PC2、ならびにこれら制御圧力の間にある第3制御圧力PC3の3段階で制御圧力PCを切り替えることのできる油圧制御機構を採用することもできる。この場合には、冷却水温センサ54の出力に異常が生じたとき、或いはウォータポンプ80に異常が生じたとき、制御圧力PCを低圧制御圧力としての第1制御圧力PC1または第3制御圧力PC3よりも大きい制御圧力に維持する。すなわち、低圧制御圧力が第1制御圧力PC1のときには第2制御圧力PC2または第3制御圧力PC3に、また低圧制御圧力が第3制御圧力PC3のときには第2制御圧力PC2に維持する。
【0130】
(B)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、制御圧力PCを所定の範囲内において無段階に設定することのできる油圧制御機構を採用することもできる。この場合には、冷却水温センサ54の出力に異常が生じたとき、或いはウォータポンプ80に異常が生じたとき、制御圧力PCを予め設定された低圧制御圧力PCXよりも大きな圧力に維持する。または、冷却水温センサ54の出力に異常が生じている状態を状態Aとし、冷却水温センサ54の出力に異常が生じていない状態であるとともにこの点を除いては状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、状態Aのときには状態Bのときよりも制御圧力PCを大きくすることもできる。または、冷却水温センサ54の出力に異常が生じたときの制御圧力PCを制御圧力PCYとしたとき、異常が生じているときは制御圧力PCYよりも大きな制御圧力PCに変更することもできる。
【0131】
・上記各実施形態では、センサ異常時処理(第1実施形態)或いはウォータポンプ異常時処理(第2実施形態)のいずれか一方を行なうものについて例示したが、これらセンサ異常時処理とウォータポンプ異常時処理との双方を行なうものに変更することもできる。
【0132】
・上記各実施形態では、冷却水温センサ54の出力に異常があるときや、ウォータポンプ80に異常があるときに、制御圧力PCを高圧制御圧力に維持する等の異常時制御を行うようにした。しかし、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ラジエータ72による放熱機能に異常があるときや、ラジエータ72は正常であるもののサーモスタット75が閉弁固着してラジエータ通路73での冷却水の循環が行なわれないといった異常があるときには、機関冷却システムを通じて冷却水を好適に冷却することができず、機関温度上昇が進行することとなり、内燃機関1の温度制御を的確に行なうことができない。そのため、上記各実施形態にて例示した異常以外の機関冷却システムにおける他の作動異常があるときにも、上記異常時制御を実行するようにしてもよい。
【0133】
・上記各実施形態及びその変形例では、機関冷却システムの作動異常が生じたときに、異常時制御を実行するものについて例示した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、インジェクタ16を含む燃料噴射システムの作動異常があるとき、具体的にはインジェクタ16から必要以上の量の燃料が噴射供給されるときには、機関冷却システムの作動が正常であったとしても機関温度上昇が進行することとなり、内燃機関1の温度制御を的確に行なうことができない。そのため、上記各実施形態及びそれらの変形例にて例示した異常以外の内燃機関の温度制御に関連するシステムにおける他の作動異常が生じているときに、上記異常時制御を実行するようにしてもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、ピストン31Aに対するスリーブ31Bの位置を切替室31Cの油圧により第1切替位置および第2切替位置に変更したが、スリーブ31Bの位置をソレノイド等の油圧以外の手段により変更することもできる。
【0135】
・上記実施形態では、下流供給油路21B内の潤滑油をリリーフすることにより供給圧力PSを制御圧力PCまたはその付近に維持する油圧制御機構30を採用したが、これとは別のしくみにより供給圧力PSを制御する油圧制御機構を採用することもできる。その一例としては以下の(A)および(B)が挙げられる。
【0136】
(A)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、第1制御圧力PC1に相当する開弁圧力を有する低圧チェック弁、第2制御圧力PC2に相当する開弁圧力を有する高圧チェック弁、低圧チェック弁の有効および無効を切り替える電子制御弁を含む回路を供給油路21に接続する。そして、供給圧力PSを第1制御圧力PC1またはその付近に維持する要求があるときには、電子制御弁の制御により低圧チェック弁を有効にする。また、供給圧力PSを第2制御圧力PC2またはその付近に維持する要求があるときには、電子制御弁の制御により低圧チェック弁を無効にする。
【0137】
(B)上記実施形態の油圧制御機構30に代えて、吐出圧を変更することのできる電動のオイルポンプを採用する。そして、供給圧力PSを第1制御圧力PC1またはその付近に維持する要求があるときには、供給圧力PSおよび第1制御圧力PC1に基づいてオイルポンプの吐出圧を制御する。また、供給圧力PSを第2制御圧力PC2またはその付近に維持する要求があるときには、供給圧力PSおよび第2制御圧力PC2に基づいてオイルポンプの吐出圧を制御する。
【0138】
・上記実施形態では、機関駆動式のオイルポンプ22を備える潤滑油供給装置2を採用したが、同オイルポンプ22に代えて電動式のオイルポンプを備える潤滑油供給装置を採用することもできる。
【0139】
・上記実施形態では、内燃機関1に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に本発明を適用したが、変速機に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0140】
1…内燃機関(潤滑型車載装置)、2…潤滑油供給装置、10…機関本体、11…シリンダブロック、12…オイルパン、13…燃焼室、14…ピストン、15…クランクシャフト、16…インジェクタ、17…シリンダヘッド、18…シリンダ、20…機関潤滑機構、21…供給油路、21A…上流供給油路、21B…下流供給油路、22…オイルポンプ、23…オイルストレーナ、24…オイルフィルタ、25…ピストンジェット、30…油圧制御機構(圧力制御手段)、31…リリーフ弁、31A…ピストン、31B…スリーブ、31C…切替室、32…リリーフ油路、33…吐出側油路、34…吸込側油路、35…弁内部油路、40…制御圧切替機構、41…第1切替油路、42…第2切替油路、43…第3切替油路、44…切替弁、50…制御装置、51…電子制御装置(異常検出手段)、52…クランクポジションセンサ、53…油圧センサ、54…冷却水温センサ(機関温度検出手段)、61…警告灯、70…冷却水通路、71…ウォータジャケット、72…ラジエータ、73…ラジエータ通路、74…迂回通路、75…サーモスタット、80…ウォータポンプ(循環態様調整手段)、81…クラッチ(循環態様調整手段)、82…プーリ、83…ベルト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記高圧制御圧力に維持する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項2】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記低圧制御圧力にすることを禁止する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項3】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常が生じているとき、前記システムの作動状態に異常が生じていないときよりも前記制御圧力を大きくする異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項4】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力の低圧側への変更を禁止する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項5】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がある状態を状態Aとし、前記システムの作動状態に異常がない状態であるとともにこの点を除いては前記状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、
前記状態Aのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを禁止し、前記状態Bのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを許可する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項6】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の駆動状態について、潤滑油の圧力を相対的に低い圧力に維持することが許容される駆動状態を低圧駆動状態とし、潤滑油の圧力を相対的に高い圧力に維持することが要求される駆動状態を高圧駆動状態とし、前記制御圧力について、相対的に低い制御圧力を低圧制御圧力とし、相対的に高い制御圧力を高圧制御圧力として、
前記圧力制御手段は、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がないとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記低圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記高圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態の異常を検出する異常検出手段を備え、この異常検出手段により異常が検出されたとき、前記異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置としての内燃機関について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御するものであり、
前記システムは内燃機関の温度制御に関連するシステムである
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の潤滑油供給装置において、
前記システムは冷却水通路に冷却水を循環させて機関冷却を行なう機関冷却システムである
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載の潤滑油供給装置において、
前記機関冷却システムは前記内燃機関の温度を検出する機関温度検出手段を含むものであり、
前記機関温度検出手段の出力に異常があるとき、前記異常時制御を行う
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の潤滑油供給装置において、
前記機関冷却システムは機関内部における冷却水の循環態様を調整する循環態様調整手段を含むものであり、
前記循環態様調整手段の作動態様に異常があるとき、前記異常時制御を行う
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項12】
請求項11に記載の潤滑油供給装置において、
前記循環態様調整手段は内燃機関の低温時に前記冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なうものであり、
内燃機関の低温時以外のときに、前記循環制限制御の実行が解除されない異常があるとき、前記異常時制御を行なう
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項13】
請求項12に記載の潤滑油供給装置において、
前記循環態様調整手段は、機関駆動式のウォータポンプと、内燃機関から前記ウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチとを含む
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項14】
請求項12に記載の潤滑油供給装置において、
前記循環態様調整手段は、電動式のウォータポンプである
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置としての変速機について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御する
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項16】
請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記圧力制御手段は、前記供給油路内の圧力が前記制御圧力よりも大きいときに前記供給油路内の潤滑油をリリーフすることにより、前記供給油路内の圧力を変更するものである
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項1】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記高圧制御圧力に維持する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項2】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更するものであり、前記制御圧力として低圧制御圧力とこれよりも高圧の高圧制御圧力とを有する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力を前記低圧制御圧力にすることを禁止する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項3】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常が生じているとき、前記システムの作動状態に異常が生じていないときよりも前記制御圧力を大きくする異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項4】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、前記制御圧力の低圧側への変更を禁止する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項5】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がある状態を状態Aとし、前記システムの作動状態に異常がない状態であるとともにこの点を除いては前記状態Aと同じ条件の状態を状態Bとして、
前記状態Aのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを禁止し、前記状態Bのときには前記制御圧力を低圧側に変更することを許可する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項6】
潤滑型車載装置の対象部位に潤滑油を供給する供給油路内の圧力を制御するための制御圧力を変更する圧力制御手段を含む車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の駆動状態について、潤滑油の圧力を相対的に低い圧力に維持することが許容される駆動状態を低圧駆動状態とし、潤滑油の圧力を相対的に高い圧力に維持することが要求される駆動状態を高圧駆動状態とし、前記制御圧力について、相対的に低い制御圧力を低圧制御圧力とし、相対的に高い制御圧力を高圧制御圧力として、
前記圧力制御手段は、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常がないとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記低圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態に異常があるとき、かつ前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記低圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定し、前記潤滑型車載装置の駆動状態が前記高圧駆動状態にあるときには前記制御圧力を前記高圧制御圧力に設定する異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置の温度制御に関連するシステムの作動状態の異常を検出する異常検出手段を備え、この異常検出手段により異常が検出されたとき、前記異常時制御を行う
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置としての内燃機関について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御するものであり、
前記システムは内燃機関の温度制御に関連するシステムである
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の潤滑油供給装置において、
前記システムは冷却水通路に冷却水を循環させて機関冷却を行なう機関冷却システムである
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載の潤滑油供給装置において、
前記機関冷却システムは前記内燃機関の温度を検出する機関温度検出手段を含むものであり、
前記機関温度検出手段の出力に異常があるとき、前記異常時制御を行う
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の潤滑油供給装置において、
前記機関冷却システムは機関内部における冷却水の循環態様を調整する循環態様調整手段を含むものであり、
前記循環態様調整手段の作動態様に異常があるとき、前記異常時制御を行う
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項12】
請求項11に記載の潤滑油供給装置において、
前記循環態様調整手段は内燃機関の低温時に前記冷却水通路における冷却水の循環を制限する循環制限制御を行なうものであり、
内燃機関の低温時以外のときに、前記循環制限制御の実行が解除されない異常があるとき、前記異常時制御を行なう
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項13】
請求項12に記載の潤滑油供給装置において、
前記循環態様調整手段は、機関駆動式のウォータポンプと、内燃機関から前記ウォータポンプへの駆動力の伝達態様を切り替えるクラッチとを含む
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項14】
請求項12に記載の潤滑油供給装置において、
前記循環態様調整手段は、電動式のウォータポンプである
ことを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記潤滑型車載装置としての変速機について、前記供給油路内の潤滑油の圧力を制御する
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【請求項16】
請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載の車載潤滑油供給装置において、
前記圧力制御手段は、前記供給油路内の圧力が前記制御圧力よりも大きいときに前記供給油路内の潤滑油をリリーフすることにより、前記供給油路内の圧力を変更するものである
ことを特徴とする車載潤滑油供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−7598(P2012−7598A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158215(P2010−158215)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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