説明

車輪角度変更機構

【課題】 必要とするスペースが小さく、簡単な構造で、トルクを略前後均等に伝えることが可能な車輪角度変更機構を提供する。
【解決手段】 左右一対の車輪部7の角度を変更する車輪角度変更機構1において、左右一対の車輪部7の上方を連結する上リンク部材5と、左右一対の車輪部7の下方を連結する下リンク部材6と、下リンク部材6に支持されるスライドアクチュエータ本体41と、スライドアクチュエータ本体41と、上リンク部材5と、に連結されるスライダ45と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の角度を簡単な構造で変更できるようにした車輪角度変更機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を小型化した一人乗り用二輪車として構成し、車両の旋回時に車体をリンク機構により傾斜させ、旋回性能を向上し、安定して旋回することができる車両があった。(特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開2007/052676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、リンク機構として伸縮式アクチュエータを用いていたので、広いスペースが必要となり、他の部材と干渉する場合があった。また、傾斜角度を大きくするにはアクチュエータ本体も大きくする必要があった。
【0004】
また、例えば、図7に示すように、伸縮式アクチュエータの代わりに回転式アクチュエータ101を用いることも考えられる。しかしながら、回転式アクチュエータ101は、上下リンク部材102a、102bのどちらかの中心に配置しなければならないため、乗車位置が高くなったり、最低地上高が低くなったりする。また、前後のリンク部材102a、102cのうち、一方のリンク部材のみしかトルクを伝えることができないため、トルクの伝わり方にばらつきが出る。
【0005】
前後のリンク部材102a、102cに同時にトルクを伝えるように、図8に示すような中空の回転式アクチュエータ110を用いることも可能であるが、連結シャフト103をアクチュエータ中心軸に通すことになるため、アクチュエータ本体が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、必要とするスペースが小さく、簡単な構造で、トルクを略前後均等に伝えることが可能な車輪角度変更機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明は、左右一対の車輪部の角度を変更する車輪角度変更機構において、前記左右一対の車輪部の上方を連結する上リンク部材と、前記左右一対の車輪部の下方を連結する下リンク部材と、前記下リンク部材に支持されるスライドアクチュエータ本体と、前記スライドアクチュエータ本体と、前記上リンク部材と、に連結されるスライダと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記上リンク部材は、上下方向に長い孔部を有し、前記車輪部は、前記孔部内に移動可能に連結される連結部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、左右一対の車輪部の角度を変更する車輪角度変更機構において、前記左右一対の車輪部の上方を連結する上リンク部材と、前記左右一対の車輪部の下方を連結する下リンク部材と、前記下リンク部材に支持されるスライドアクチュエータ本体と、前記スライドアクチュエータ本体と、前記上リンク部材と、に連結されるスライダと、を備えたので、必要とするスペースが小さく、簡単な構造で、トルクを略前後均等に伝えることができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、前記上リンク部材は、上下方向に長い孔部を有し、前記車輪部は、前記孔部内に移動可能に連結される連結部を有するので、円滑に作動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は第1実施形態の車輪角度変更機構1の概略正面図、図2は第1実施形態の車輪角度変更機構1の概略平面図を示す。
【0013】
図1及び図2において、1は車輪角度変更機構、2は車体の一例としてのフレーム、3は搭乗部、4はスライドアクチュエータ、5は上リンク部材、6は下リンク部材、7は車輪部、8は車輪駆動モータである。
【0014】
第1実施形態の車輪角度変更機構1は、フレーム2と車輪部7を連結する部分に設けられ、車輪部7の角度を変更するための機構である。
【0015】
車輪角度変更機構1は、フレーム2に支持される搭乗部3と、フレーム2に連結される上リンク部材5及び下リンク部材6と、下リンク部材6に支持されるスライドアクチュエータ4と、を有する。
【0016】
フレーム2は、上方に搭乗部3を載置し、下方で上リンク部材5及び下リンク部材6と連結される。フレーム2は、搭乗部3、上リンク部材5及び下リンク部材6が連結された前後2つの第1フレーム2aと、第1フレーム2a及び上リンク部材5を中央で連結する連結突部2bと、を有する。本実施形態では、連結突部2bとして、ボルトとナットを適用し、第1フレーム2aの凹部からボルトを差し込み、該ボルトを上リンク部材5側からナットで締め付けている。
【0017】
車輪部7は、図示しないホイール7aとタイヤ7bからなり、インホイールモータとしての車輪駆動モータ8を有する。また、車輪駆動モータ8は、上リンク部材5と連結するための第1突部8aと、下リンク部材6と連結するための第2突部8bと、を有する。本実施形態では、第1突部8a及び第2突部8bとして、ボルトを適用し、車輪駆動モータ8のケース等に設けた雌ネジに取り付ける構造となっている。なお、本実施形態では、上リンク部材5及び下リンク部材6と連結する第1突部8a及び第2突部8bを車輪駆動モータ8に形成したが、これに限らず、車輪部7のホイール7aとタイヤ7bを回転可能に支持する車輪支持部材に形成してもよい。
【0018】
上リンク部材5は、前後にそれぞれ設けられ、両端をそれぞれ左右の車輪部7に連結され、中央で連結突部2bにより第1フレーム2aと連結される。また、中央下方で連結部44とスライダ45を介してスライドアクチュエータ4と連結されている。上リンク部材5は、連結突部2bとの連結部分に上下に長い第1孔部5a、車輪駆動モータ8との連結部分に上下に長い第2孔部5bを有する。連結突部2bは第1孔部5a内を移動可能であり、車輪駆動モータ8の第1突部8aは、第2孔部5b内を移動可能である。
【0019】
下リンク部材6は、前後にそれぞれ設けられ、両端をそれぞれ左右の車輪駆動モータ8の第2突部8bに回転可能に連結され、中央で第1フレーム2aに回転可能に連結される。下リンク部材6の下方には、前後にわたって、スライドアクチュエータ4を設置するための設置台9が取り付けられている。
【0020】
図3は、本実施形態のスライドアクチュエータ4を示す図である。スライドアクチュエータ4は、スライドアクチュエータ本体としてのレール41にボールねじ42を設置し、ナットブロック43によりボールねじ42に保持されると共に、連結部44を設置したスライダ45を、サーボモータ等の駆動アクチュエータ46によりレール41に沿って移動させるものである。連結部44の位置は、スライダ位置センサ47により検出される。連結部44には、バッテリやECU等を利用してもよい。
【0021】
第1実施形態では、スライドアクチュエータ4のレール41が設置台9に固定され、連結部44が上リンク部材5に連結される。
【0022】
次に、第1実施形態の車輪角度変更機構1の作動について説明する。図4は、車輪部7の角度を変更した状態を示す図である。なお、図4は車両を正面から見た図である。
【0023】
車輪部7の角度を変更するには、スライドアクチュエータ4を作動させる。スライドアクチュエータ4の駆動アクチュエータ46を作動させると、レール41に対して、スライダ45及び連結部44が移動する。連結部44の移動にともない、上リンク部材5が同じ方向に移動する。
【0024】
この時、第1フレーム2aが傾斜することで、上リンク部材5と下リンク部材6の上下方向の距離が短くなる。従って、連結突部2bは第1孔部5a内を下方に移動し、車輪駆動モータ8の第1突部8aは、第2孔部5b内を下方に移動する。このようにして車輪部7の角度を変更することができる。
【0025】
また、この車輪部7の角度の変更に伴って、第1フレーム2aの角度も変化することにより、搭乗部3の角度も変化する。具体的には、搭乗部3が旋回方向内側に傾斜するため、重心が移動され、遠心力に対抗できる力が出る為、旋回時の姿勢が安定する。
【0026】
図5は第2実施形態の車輪角度変更機構1の概略平面図、図6は第2実施形態の車輪角度変更機構1の作動図を示す。
【0027】
第2実施形態では、上リンク部材5を前後方向略中央の1つのみにしたものである。そして、スライドアクチュエータ4のスライダ45を、上リンク部材5に一体に連結することにより、上リンク部材5を一つにできる。なお、スライドアクチュエータ4のスライダ45と、上リンク部材5とは、直接連結する構造に限らず、連結部45を介して連結してもよい。
【0028】
また、車輪部7と上リンク部材5との連結部分は、車輪駆動モータ8に凹部8cを設け、凹部8cに前後方向にシャフト8dを設けて、当該シャフト8dが上リンク部材5の孔部5b内を移動可能に連結する構造としている。その他は、第1実施形態と同様の構造である。
【0029】
次に、第2実施形態の車輪角度変更機構1の作動について説明する。図6は、車輪部7の角度を変更した状態を示す図である。なお、図6は車両を正面から見た図である。
【0030】
車輪部7の角度を変更するには、スライドアクチュエータ4を作動させる。スライドアクチュエータ4の駆動アクチュエータ46を作動させると、レール41に対して、スライダ45が移動する。スライダ45の移動にともない、上リンク部材5が同じ方向に移動する。
【0031】
この時、車輪部7が傾斜することで、上リンク部材5と下リンク部材6の上下方向の距離が短くなる。従って、車輪駆動モータ8のシャフト8dは、第2孔部5b内を下方に移動する。このようにして車輪部7の角度を変更することができる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、左右一対の車輪部7の角度を変更する車輪角度変更機構1において、左右一対の車輪駆動モータ8の上方を連結する上リンク部材5と、左右一対の車輪駆動モータ8の下方を連結する下リンク部材6と、下リンク部材6に支持されるレール41と、スライドアクチュエータ本体41と、上リンク部材5と、に連結されるスライダ45と、を備えたので、必要とするスペースが小さく、簡単な構造で、トルクを略前後均等に伝えることができる。
【0033】
また、上リンク部材5は、上下方向に長い孔部5bを有し、車輪駆動モータ8は、孔部5b内に移動可能に連結される第1突部8a又はシャフト8dを有するので、円滑に作動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の車輪角度変更機構の正面図である。
【図2】第1実施形態の車輪角度変更機構の平面図である。
【図3】スライドアクチュエータを示す図である。
【図4】第1実施形態の車輪角度変更機構の作動図である。
【図5】第2実施形態の車輪角度変更機構の平面図である。
【図6】第2実施形態の車輪角度変更機構の作動図である。
【図7】従来の技術を示す図である。
【図8】従来の技術を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1…車輪角度変更機構、2…フレーム(車体)、2a…第1フレーム、2b…連結突部、3…搭乗部、4…スライドアクチュエータ、41…レール、42…ボールねじ、43…ナットブロック、44…連結部、45…スライダ、46…駆動アクチュエータ、47…スライダ位置センサ、5…上リンク部材、5a…第1孔部、5b…第2孔部、6…下リンク部材、7…車輪部、7a…ホイール、7b…タイヤ、8…車輪駆動モータ、8a…第1突部、8b…第2突部、8c…凹部、8d…シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の車輪部の角度を変更する車輪角度変更機構において、
前記左右一対の車輪部の上方を連結する上リンク部材と、
前記左右一対の車輪部の下方を連結する下リンク部材と、
前記下リンク部材に支持されるスライドアクチュエータ本体と、
前記スライドアクチュエータ本体と、前記上リンク部材と、に連結されるスライダと、
を備えた
ことを特徴とする車輪角度変更機構。
【請求項2】
前記上リンク部材は、上下方向に長い孔部を有し、
前記車輪部は、前記孔部内に移動可能に連結される連結部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車輪角度変更機構。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−36786(P2010−36786A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203721(P2008−203721)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】