説明

転がり直動装置の異常判定方法および異常判定装置

【課題】ボールねじ装置の異常判定における誤判定を防止すると共に、初期段階における異常の判定を可能にする手段を提供する。
【解決手段】ねじ軸3と、ねじ軸3に複数のボール2を介して移動可能に支持されたナット5と、ボール2が循環する循環路と、循環路を循環するボール2による振動を検出する振動センサ10とを備えたボールねじ装置1の異常判定方法において、振動センサ10によりナット5の移動に伴う生振動データを取得し、この生振動データから周波数範囲に制限を加えて抽出した抽出振動データを取得し、その抽出振動データを基にボール通過周期Tiのバラツキを評価する標準偏差σを求め、その標準偏差σに基づいて異常の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置やリニアガイド装置等の工作機械や精密機械、半導体製造装置、射出成形機等の機械装置の送り機構等に用いられる転がり直動装置の異常判定方法および異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の転がり直動装置としてのボールねじ装置は、外周面に螺旋状の軸軌道溝を形成したねじ軸と、内周面に軸軌道溝に対向するナット軌道溝を形成したナットと、対向配置されたナット軌道溝と軸軌道溝とにより形成される負荷路の両端を連通するリターンチューブと、負荷路とリターンチューブにより形成された循環路を循環する複数のボールとで構成され、リターンチューブの外周面に設けた振動センサで検出した振動の振幅が、閾値を超えたことにより、軸軌道溝やナット軌道溝の磨耗による異常を判定している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、転がり軸受において、外輪の近傍に振動センサを設けると共に、内輪の回転数を検出する回転センサを設け、振動センサの出力から、ローパスフィルタを用いて外輪、内輪、転動体等に損傷がある場合に発生する異常時の特定周波数を含む周波数帯の振動を切り出して周波数解析を行い、特定周波数のピーク値を閾値と比較して、傷や剥離等の損傷の発生した部位を特定した異常の判定を行っているものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−349407号公報(段落0035−0042、第1図)
【特許文献2】特開2004−93185号公報(主に、段落0015−0018、段落0023−0032、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術においては、ボールねじ装置のリターンチューブの外周面に振動センサを設け、振動センサで検出した振動の振幅が閾値を超えたことにより、ボールねじ装置の異常を判定しているため、磨耗等の損傷による異常を検出することは可能であるが、定常運転時におけるリターンチューブで検出した振動の振幅は、正常時に常に低いレベルを示し、異常時に常に高いレベルを示すとは限らず、例えばリターンチューブ内のボールは、曲り部における内面への衝突や、ボール同士の衝突を繰り返しながら移動するため、その挙動が安定せず、リターンチューブ内面への衝突時等に検出される大きな振幅により異常を判定してしまうと、誤判定が生ずることになる。
【0005】
このため、特許文献2のようにボールねじ装置のナット等に設けた振動センサで、負荷路を転動するボールによる振動を検出し、周波数解析によって各部位の特定周波数のピーク値を基に異常を判定することが考えられる。
しかしながら、一般的な周波数解析の手法においては、時間領域波形から周波数領域波形へと変換する際に積分や平均化の手法が用いられるため、変化の度合いが急峻な場合は異常を判定することが可能であるが、変化の度合いが緩慢な場合、つまり正常な状態から異常が発生するまでの遷移的な段階の異常の判定が難しいという問題がある。
【0006】
また、ボールねじ装置において、正常時に他に較べて大きな振動を発生させ、ボールや各軌道溝に異常がある場合に際立った変化が認められやすい、複数のボールが定点を通過するときの周波数(ボール通過周波数という。)に着目した場合には、全てのボールが負荷路を等間隔で正常に転動している場合は、ボール通過周期は常に一定の通過周期であるために、ボール通過周波数の振幅は一定であり、シャープな形状の解析結果が得られる。
【0007】
一方、ボールの一つに異常が発生した場合には、異常が発生したボールは正常に転動することができないため、そのボール通過周期が他の正常なボールの場合と異なるようになり、異常が発生したボールによる異常ボール通過周波数成分が発生することになる。
この異常ボール通過周波数成分は、正常なボールによる正常ボール通過周波数成分の近傍に現れる。また正常ボール通過周波数の振動振幅は、異常が発生したボール数に相当する分減少する、つまり異常が発生したボールによる振動振幅が、正常なボールによる振動振幅より大きいとしても、周波数解析においては、複数回のサンプリングデータの平均値を計算周波数で評価しているため、ボール通過周期がバラツクと計算周波数とずれた所がピークとなり、計算周波数における値が減少して振動振幅が減少することになる。
【0008】
このため、異常が発生したボール数が正常なボールに較べて多くなったときに、振動振幅が増大して異常が発生したと判定され、異常が発生したボール数が少ない場合、つまり異常発生の初期段階においては、振動振幅が減少してしまい、異常を検出することができないという問題がある。
このことは、周波数解析の手法において、時間領域波形から周波数領域波形へと変換する際に積分や平均化の手法を用いることに起因する現象であり、周波数解析を用いる場合には避け得ない現象である。
【0009】
また、負荷路をリターンチューブにより連通した循環路を有するボールねじ装置においては、負荷路からリターンチューブへボールを掬い上げ、またはリターンチューブから負荷路へボールを進入させる接続部に設けられるタングに、割れや変形、磨耗等の損傷が生ずると、ボールの詰りや滑り等により正常な循環が阻害される循環異常が発生する場合があり、この循環異常によってもボール通過周期のバラツキが発生し、接続部、特にタングの損傷等が軽度の場合には、その前兆として現出するボール通過周期の乱れの頻度が少ないために、前記と同様の理由により振動振幅が減少して初期段階の循環異常を検出することができないという問題がある。
【0010】
このような循環異常は、リターンチューブの破損による運転不能といった重大な不具合に発展する虞があるため、特に重要である。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、異常判定における誤判定を防止すると共に、初期段階における異常の判定を可能にする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、支持体と、前記支持体に複数の転動体を介して移動可能に支持された移動体と、前記転動体が循環する循環路と、前記循環路を循環する前記転動体による振動を検出する振動センサと、を備えた転がり直動装置の異常判定方法において、前記振動センサにより前記移動体の移動に伴う生振動データを取得し、前記生振動データから周波数範囲に制限を加えて抽出した抽出振動データを基に前記転動体の通過周期のバラツキを評価し、その評価結果に基づいて、異常の有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
これにより、本発明は、外部からの振動や不規則な振動の影響を排除して、誤判定を防止することができると共に、通過周期のバラツキの経時変化を監視することにより、初期段階における異常発生を判定することができ、循環異常による運転不能等の不具合を未然に防止することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明による転がり直動装置の異常判定方法および異常判定装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1のボールねじ装置の断面を示す説明図、図2は実施例1の異常判定装置を示すブロック図、図3は実施例1の異常判定処理を示すフローチャートである。
図1において、1は転がり直動装置としてのボールねじ装置である。
2は転動体としてのボールであり、合金鋼等の鋼材で製作された球体である。
3はボールねじ装置1の支持体としてのねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その外周面には2つの円弧凹面を略V字状に配置して構成されたゴシックアーク形状の溝である軸軌道溝4が所定のリードで螺旋状に形成されている。
【0015】
5はボールねじ装置1の移動体としてのナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には、2つの円弧凹面を略V字状に配置して構成されたゴシックアーク形状の溝であるナット軌道溝6が軸軌道溝4と対向して軸軌道溝4と同じリードで形成されている。
8はフランジ部であり、ナット5の外周部の一方の端部に設けられ、フランジ部8に設けられた取付ボルト穴8aにより図示しない機械装置のテーブル等に取付ボルト等で固定される。
【0016】
9はボールねじ装置1の連通部材としてのリターンチューブであり、鋼材や樹脂材料等で製作され、ボール2が通過可能な内径を有する略U字形に曲折した管であって、ナット5の外周面の一部を軸方向と平行に切欠いた平面5aに設けられたナット軌道溝6に達する穴にその端部が嵌合してナット軌道溝6に連通しており、図示しないチューブ固定具等によりナット5に固定される。
【0017】
これにより、軸軌道溝4とナット軌道溝6とにより形成される負荷路の両端部はリターンチューブ9の内径として形成された連通路により連通され、ボール2が循環する循環路が形成される。
上記の循環路には、複数のボール2が装填されると共に、所定の量のグリース等の潤滑剤が封入される。
【0018】
そして、ねじ軸3を回転させることによってボール2が循環路を循環し、負荷路を転動するボール2がナット5に加えられた荷重を往復動自在に支持してナット5をねじ軸3の軸方向に沿って直線的に往復移動させ、ねじ軸3の回転運動がナット5の直線運動に変換され、ボールねじ装置1が転がり直動装置として機能する。
10は振動センサであり、循環路を循環するボール2による振動に伴う微細な変位を、加速度の変化によって検出する加速度センサ等であって、ナット5の、負荷路を構成するナット軌道溝6の半径方向外側の外周面に取付けられており、循環路を循環するボール2、特に負荷路を転動するボール2による振動を検出する機能を有している。
【0019】
12は回転センサであり、ねじ軸3の軸端に同軸に設けられた歯付回転板12aと、その歯の通過を検出する光学式センサ12b等で構成されたロータリエンコーダ等であって、ねじ軸3の回転速度をパルス波形として出力する機能を有している。
14はフィルタ手段としてのバンドパスフィルタであり、振動センサ10からの出力信号に含まれる周波数の異なる複数の出力の中から、設定された周波数帯に含まれる周波数を選択的に出力する電気回路を用いたフィルタであって、設定された周波数帯に含まれる周波数の出力をパーソナルコンピュータ等の異常判定装置20へ出力する機能を有している。
【0020】
16は周波数分析器であり、振動センサ10から複数回のサンプリングデータを取込み、これを積分や平均化処理して時間領域波形から周波数領域波形へ変換し、振動センサ10からの出力信号に含まれる種々の周波数の振動強度を、周波数毎に出力する機能を有している。
図2において、21は異常判定装置20の制御部であり、異常判定装置20内の各部を制御して異常判定処理等を実行すると共に、図示しない機械装置の主制御装置との間のデータ通信等も制御する。
【0021】
22は記憶部であり、制御部21が実行するプログラムやそれに用いる各種のデータおよび制御部21による処理結果等が格納される。
23は時計部であり、水晶発振器等を有する周波数発生器等を備えており、発生した周波数を基に経過時間等を計数する機能を有している。
24は表示部であり、LCD等の表示画面を備えており、異常判定時の警告画面等を表示する機能を有している。
【0022】
25は入力部であり、キーボードやマウス等を備えており、ボールねじ装置1が組込まれた機械装置の操作担当者等からの寸法諸元等の入力を受付ける機能を有すると共に、振動センサ10、回転センサ12および周波数分析器16からの入力を受入れるインターフェース機能を備えている。
上記の異常判定装置20の記憶部22には、ボールねじ装置1の寸法諸元、および回転センサから取得したねじ軸3の回転速度を基にボール2の正常運転時におけるナット5、ねじ軸3、ボール2の特定周波数(後述)を算出し、これらを基に周波数解析による異常の判定、およびボール通過周波数のボール2の通過周期を基に循環異常の判定を行う異常判定処理(詳細は図3を用いて後述する。)を実行する機能等を有する異常判定処理プログラムが予め格納されており、制御部21が実行する異常判定処理プログラムのステップにより本実施例の異常判定装置20のハードウェアとしての各機能手段が形成される。
【0023】
また、記憶部22には、振動センサ10からの出力を基に、ナット5、ねじ軸3、ボール2の異常を判定するための、周波数解析における振動強度であるナット異常判定値、ねじ軸異常判定値、ボール異常判定値、および振動センサ10により取得した一定時間のボール2の通過周期の標準偏差σの経時変化を基に、ボール2の循環における循環異常を判定するための周期異常判定値(本実施例では、予め得られた正常な状態での取付け直後のボール2の通過周期の標準偏差σの2倍の値)等の各閾値、並びにねじ軸3の回転速度の変化率(上昇率または減少率)により、ボールねじ装置1の定常運転を判定するための定常判定変化率が、予め設定されて格納されている。
【0024】
更に、記憶部22には、入力部25を用いて担当者等が入力した異常判定の対象となるボールねじ装置1のボール直径Dw(mm)、ボールピッチ円直径Dm(mm)、接触角α(度)、リード角β(度)等の寸法諸元が格納されている。
本実施例で用いる特定周波数は、以下のようにして算出する。
ねじ軸3が回転する形式のボールねじ装置1のボール公転周波数Fc(単位:Hz)、ボール公転周波数Fcに対するねじ軸相対回転周波数Fi(Hz)、ボール自転周波数Fb(Hz)は次式で算出される。
【0025】
【数1】

ここに、Frはねじ軸3の回転周波数(Hz)を示す。
また、負荷路における1リード当りの負荷ボール数Zは、
Z=πDm/(Dw・cosβ) ・・・・・・・・・・・(4)
で表される。
【0026】
上記の式(1)〜式(4)を用いて、各部位を特定した異常の検出を行うためには、ナット5のナット軌道溝6の損傷を検出するための特定周波数として、負荷ボール数Zにボール公転周波数Fcを乗じた、ナット5におけるボール通過周波数であるZFcを、ねじ軸3の軸軌道溝4の損傷を検出するための特定周波数として、負荷ボール数Zにねじ軸相対回転周波数Fiを乗じた、ねじ軸3におけるボール通過周波数であるZFiを、ボール2の損傷を検出するための特定周波数として、ボール自転周波数Fbを2倍した、ボール転がり振動周波数である2Fbを用いる。これらは前記記憶部22に格納された寸法諸元に基づき、予め制御部21により所定のプログラムを用いて演算され、記憶部22に格納される。
【0027】
また、ボール通過周期のバラツキを評価するための標準偏差σを算出するための周波数としては、ナット5におけるボール通過周波数ZFcを用い、標準偏差σは、通過周期の相加平均をμ、ボール通過周期をTi(本実施例では、図5に示すピーク間の時間間隔Tiに相当する。)、標本数をnとして、
【0028】
【数2】

で算出する。
このように、本実施例の異常判定においては、ボール通過周期Tiのバラツキを評価するための周波数としてボール通過周波数ZFcを用いるので、バンドパスフィルタ14に設定する周波数帯としては、リターンチューブ9から負荷路に進入するボール2の間隔のバラツキを考慮して、ボール通過周波数ZFcを中心とした、0.8ZFc以上、1.2ZFc以下の周波数帯に設定されている。
【0029】
以下に、図3に示すフローチャートを用い、Sで示すステップに従って本実施例の異常判定処理について説明する。
ボールねじ装置1が組込まれた機械装置の操作担当者が、始業時等に機械装置および異常判定装置20へ電源を投入すると、異常判定装置20の記憶部22に格納されている異常判定処理プログラムが自動的に起動される。
【0030】
機械装置が稼動を開始すると、図示しない機械装置の主制御装置は、異常判定装置20へストロークの開始を通知するストローク開始通知を送信すると共に、所定の駆動スケジュールに従って、図示しないモータ等の駆動装置によりボールねじ装置1のねじ軸3を回転させ、ねじ軸3によるナット5の駆動を開始する。
S1、一方、異常判定処理プログラムが起動すると、異常判定装置20の制御部21は、主制御装置からのストローク開始通知の着信を待って待機し、ストローク開始通知を受信したときに、異常判定処理の開始を認識してステップS2へ移行する。ストローク開始通知を受信しない場合は、前記の待機を継続する。
【0031】
S2、異常判定処理の開始を認識した制御部21は、回転センサ12からのパルス数によりねじ軸3の回転速度を監視しながら待機し、回転速度の変化率が、定常判定変化率以下になったときに、定常運転と判定してステップS3へ移行する。回転速度の変化率が、定常判定変化率を超えている場合は、前記の待機を継続する。
S3、ボールねじ装置1の定常運転を判定した制御部21は、時計部23により時間を計数しながら、振動センサ10からのボールねじ装置1の定常運転時の一定時間の周波数範囲に制限を加えない振動データ(生振動データという。)を取得し、これを時間と振動強度との関係として、記憶部22に格納する。
【0032】
S4、生振動データを取得した制御部21は、周波数分析器16により、取得した生振動データを周波数と振動強度との関係に整理した周波数解析結果を取得し、これを記憶部22に格納する。
S5、制御部21は、取得した周波数解析結果から、予め記憶部22に格納されているナット5におけるボール通過周波数ZFcの整数倍(例えば、1〜4倍)の振動強度をそれぞれ読取り、これを記憶部22に格納されているナット異常判定値と比較し、読取ったいずれかの振動強度が、ナット異常判定値以上のときはナット5の異常発生を判定してステップS6へ移行する。
【0033】
読取った全ての振動強度が、ナット異常判定値未満のときはステップS7へ移行する。
この場合に取得された周波数解析結果の例を図4に示す。
図4に示すように、比較のために細い実線で示した初期状態の解析結果から、今回取得した太い実線で示した解析結果は、その振動強度が上昇しており、図に実線の矢印で示すボール通過周波数ZFcの整数倍の振動強度は、初期状態に較べて上昇しており、ステップS6におけるナット5の異常判定では異常発生と判定される。
【0034】
また、この例では、図に破線の矢印で示すボール転がり振動周波数2Fbの整数倍の振動強度も、初期状態に較べて上昇しており、後述するステップS9におけるボール2の異常判定では異常発生と判定される。
S6、ナット5の異常発生を判定した制御部21は、記憶部22にナット異常の発生の旨をコード等で保存してステップS7へ移行する。
【0035】
S7、制御部21は、取得した周波数解析結果から、予め記憶部22に格納されているねじ軸3におけるボール通過周波数ZFiの整数倍の振動強度をそれぞれ読取り、これを記憶部22に格納されているねじ軸異常判定値と比較し、読取ったいずれかの振動強度が、ねじ軸異常判定値以上のときはねじ軸3の異常発生を判定してステップS8へ移行する。
【0036】
読取った全ての振動強度が、ねじ軸異常判定値未満のときはステップS9へ移行する。
S8、ねじ軸3の異常発生を判定した制御部21は、記憶部22にねじ軸異常の発生の旨をコード等で保存してステップS9へ移行する。
S9、制御部21は、取得した周波数解析結果から、予め記憶部22に格納されているボール2におけるボール転がり振動周波数2Fbの整数倍の振動強度をそれぞれ読取り、これを記憶部22に格納されているボール異常判定値と比較し、読取ったいずれかの振動強度が、ボール異常判定値以上のときはボール2の異常発生を判定してステップS10へ移行する。
【0037】
読取った全ての振動強度が、ボール異常判定値未満のときはステップS11へ移行する。
S10、ボール2の異常発生を判定した制御部21は、記憶部22にボール異常の発生の旨をコード等で保存してステップS11へ移行する。
S11、周波数解析結果を用いた異常判定を終えた制御部21は、記憶部22を確認し、記憶部22に異常発生の旨のコード等が少なくとも一つ保存されている場合は、周波数解析における異常の発生を認識し、保存されている異常発生の旨のコード等を全て読出して、ステップS12へ移行する。
【0038】
記憶部22に異常発生の旨のコード等が保存されていない場合は、ステップS13へ移行する。
S12、周波数解析における異常の発生を認識した制御部21は、読出した全ての異常発生の旨のコード等を文言にした警告画面を表示部24に表示し、操作担当者等に異常の発生を報知してステップS17へ移行する。
【0039】
S13、周波数解析による異常判定と並行して制御部21は、時計部23により時間を計数しながら、バンドパスフィルタ14を介して振動センサ10からのボールねじ装置1の定常運転時の一定時間の周波数範囲に制限を加えた振動データ(抽出振動データという。)を取込み、取込んだボール通過周波数ZFcを含む周波数帯の抽出振動データから、図5示す振動波形のピーク間の時間間隔Ti、つまりボール通過周期Tiを順次に読取って一群のデータ群を抽出し、これを記憶部22に保存する。
【0040】
S14、一定時間のボール通過周期Tiのデータ群の抽出を終えた制御部21は、ボール通過周波数ZFcのボール通過周期Tiのバラツキを評価するために、記憶部22に保存したデータ群を読出し、上記式(5)を用いてその標準偏差σを算出する。
S15、一定時間のボール通過周期Tiの標準偏差σを算出した制御部21は、記憶部22に格納されている周期異常判定値(本実施例では、初期の標準偏差σの2倍の値)と、算出した標準偏差σとを比較し、算出した標準偏差σが周期異常判定値以上のときは、循環異常の発生を判定してステップS16へ移行する。
【0041】
算出した標準偏差σが周期異常判定値未満のときは、正常運転と判定し、ステップS1へ戻って、主制御装置からの次のストローク開始通知の着信を待って待機する。
この場合の標準偏差σは、循環路に何らかの異常、例えばリターンチューブ9と負荷路の接続部に損傷等が発生していると、その部位においてボール2の詰り(停滞)や滑りが生じ、ボール2の移動間隔に乱れが生じて、図6に示すように、初期の正常な状態の標準偏差σから損傷等の進行に従って、標準偏差σ、σへと拡大していき、その分布形もなだらかになっていく。
【0042】
そして、この標準偏差σの経時変化の様子は、図7に示すように、ボールねじ装置1の運転時間の増加に伴って、初期状態のσから徐々に増加していき、標準偏差σが周期異常判定値(2σ)になったときに、循環異常の発生を判定する。
なお、図6に示すμは、ボール通過周期Tiの平均値であり、図においては標準偏差σから、σ、σへと拡大しても変化しないように図示しているが、場合によって平均値μが異なることもある。このため本実施例では標準偏差σの変化に着目して異常判定を行っている。
【0043】
S16、循環異常の発生を判定した制御部21は、循環異常の発生の旨を文言にした警告画面を表示部24に表示し、操作担当者等に循環異常の発生を報知してステップS17へ移行する。
S17、各部位における異常の発生、または循環異常の発生を報知した制御部21は、異常発生通知を図示しない主制御装置に送信し、これを受信した主制御装置は機械装置の運転を停止する。
【0044】
その後に、操作担当者等によるボールねじ装置1の保守、点検が行われる。
このようにして、本実施例の異常判定処理が行われる。
上記のように、本実施例の異常判定処理においては、ボール通過周波数ZFcのボール通過周期Tiの標準偏差σは、正常な状態においては小さく、異常が発生し始めると大きくなることに着目し、ボール通過周期Tiのバラツキの大きさを示す標準偏差σの経時変化を監視することにより異常の発生を判定するので、初期段階における循環異常の発生を容易に判定することができる。
【0045】
また、周波数解析によっては、異常を判定し難いリターンチューブ9と負荷路の接続部における循環異常をも判定することが可能になり、より精度よくボールねじ装置1の異常を検出することができると共に、循環異常に伴うリターンチューブ9の破損等による運転不能といった重大な不具合を未然に防止することができる。
更に、負荷路の近傍のナット5の外周面に設けた振動センサ10により取得したボール通過周波数ZFcの抽出振動データにより算出したボール通過周期Tiの標準偏差σを用いて異常を検出するので、外部からの振動の影響を排除することができ、リターンチューブ9の内面へのボール2の衝突等により大きな振幅が生じたとしても、これを異常と判定することはなく、外部からの振動や不規則な振動の影響を排除して、誤判定を防止することができる。
【0046】
更に、周波数解析に用いる生振動データを取得する振動センサ10と、ボール通過周期Tiのバラツキを評価するための抽出振動データを取得する振動センサ10とを共用することができるので、振動センサ10を増設することなく、多角的な異常判定を行うことができる。
以上説明したように、本実施例では、ナットに設けた振動センサによりナットの移動に伴う生振動データを取得し、この生振動データから周波数範囲に制限を加えて抽出した抽出振動データから一定時間のボールの通過周期のデータ群を抽出し、そのデータ群の標準偏差σを求めてボール通過周期のバラツキを評価し、その標準偏差σが周期異常判定値以上になったときに、異常の発生を判定するようにしたことことによって、外部からの振動や不規則な振動の影響を排除して、誤判定を防止することができると共に、ボール通過周期のバラツキを示す標準偏差σの経時変化を監視することにより、初期段階における循環異常の発生を容易に判定することができ、循環異常による運転不能等の不具合を未然に防止することができる。
【0047】
なお、本実施例においては、抽出振動データを取得するためのフィルタ手段として、ボール通過周波数ZFcを含む周波数帯のバンドパスフィルタを用いるとして説明したが、ボール通過周波数ZFcは、一般的にボールねじ装置1から発生する他の振動より低い場合が多いので、ボール通過周波数ZFcを含む周波数帯を通過させるローパスフィルタであってもよい。
【0048】
また、本実施例においては、ねじ軸を回転させる形式のボールねじ装置に適用した場合を例に説明したが、ナットを回転させる形式のボールねじ装置においても同様である。
この場合に、振動センサをねじ軸に設け、ボール通過周期のバラツキを評価するための周波数は、
【0049】
【数3】

で算出されるボール通過周波数ZFcを用いるとよい。
【実施例2】
【0050】
図8は実施例2の異常判定処理を示すフローチャートである。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
発明者は、リターンチューブ9で連通された循環路を有するボールねじ装置1においては、循環するボール2がリターンチューブ9から負荷路に進入する際に、軸軌道溝4やナット軌道溝6に衝突するときの衝突エネルギによりねじ軸3やナット5の自由振動が励起され、幾何学的な形状や材質により定まるそれぞれの部材の固有振動数を周波数とする振動が発生する。
【0051】
ナット5に振動センサ10が取付けられる本実施例では、使用する固有振動数は、ナット5の大きさ等によって異なるが4kHz〜100kHzを超える範囲の高周波領域である。
このような高周波領域の振動は、正常な運転状態において発生する振動であり、その振幅は、例えば個々のボール2の負荷路への進入角度の相違等による衝突エネルギの変化によって容易に変化するため、高周波領域の振動振幅の増減をもって、循環路を有するボールねじ装置1の循環異常を検出しようとすると、循環異常が発生していない正常な運転状態において、誤判定が生じてしまうことになる。
【0052】
しかしながら、発明者は、ボール2と、軸軌道溝4およびナット軌道溝6との衝突による高周波領域の振動は直ぐに減衰され、再度他のボール2の衝突により次の振動が励起されるという現象が繰返されることに着目し、励起される振動はナット5またはねじ軸3の固有振動数であるが、その振動が励起される周期(振動の強弱の変化の周期)は、実際のボール2の通過周期であることを利用し、この固有振動数を含む高周波領域に限定した抽出振動データに基づいて、実際のボール2のボール通過周期Tiを測定することが可能であり、その標準偏差σの経時変化を監視すれば、循環異常の発生の判定を行うことが可能であると考えた。
【0053】
このため、本実施例のボールねじ装置1および異常判定装置20の構成は、上記実施例1と同様であるが、振動センサ10としては、4kHz以上の高周波領域の振動の検出が可能なセンサを用いる。
また、バンドパスフィルタ14の周波数帯の設定は、ナット5およびねじ軸3のいずれか一方、本実施例ではナット5の固有振動数を含む周波数帯に設定する。
【0054】
この場合に選定する固有振動数は、ナット5等の特定周波数の数倍以上の高周波とすることが望ましい。
本実施例の異常判定装置20の記憶部22には、上記実施例1と同様にしてボール2の正常運転時におけるナット5、ねじ軸3、ボール2の特定周波数ZFc、ZFi、2Fbを算出し、これらを基に周波数解析による異常の判定、およびナット5の固有振動数の発生周期から求めたボール2の通過周期を基に循環異常の判定を行う異常判定処理(詳細は図8を用いて後述する。)を実行する機能等を有する異常判定処理プログラムが予め格納されており、制御部21が実行する異常判定処理プログラムのステップにより本実施例の異常判定装置20のハードウェアとしての各機能手段が形成される。
【0055】
また、記憶部22には、実施例1と同様のナット異常判定値、ねじ軸異常判定値、ボール異常判定値、および固有振動数の発生周期から求めた一定時間のボール通過周期Tiの標準偏差σの経時変化を基に、ボール2の循環における循環異常を判定するための周期異常判定値(本実施例では、予め得られた正常な状態での取付け直後のボール2の通過周期の標準偏差σの2倍の値)等の各閾値、並びに実施例1と同様の定常判定変化率が、予め設定されて格納されている。
【0056】
更に、記憶部22には、実施例1と同様の寸法諸元、およびそれらにより得られた特定周波数ZFc、ZFi、2Fbが格納されている。
以下に、図8に示すフローチャートを用い、SAで示すステップに従って本実施例の異常判定処理について説明する。
本実施例ステップSA1〜SA12の作動は、上記実施例1のステップS1〜S12の作動と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
SA13、周波数解析による異常判定と並行して制御部21は、時計部23により時間を計数しながら、バンドパスフィルタ14を介して振動センサ10からのボールねじ装置1の定常運転時の一定時間の抽出振動データを取込み、取込んだナット5の固有振動数を含む周波数帯の振動データから、その振動波形のピーク間の時間間隔Ti、つまりボール通過周期Tiを順次に読取って一群のデータ群を抽出し、これを記憶部22に保存する。
【0058】
このときの振動波形は、図9示すように、ボール2の通過周期のピークが明確に現れ、ピーク間の時間間隔Tiをより正確に読取ることができる。
SA14、一定時間のボール通過周期Tiのデータ群の抽出を終えた制御部21は、固有振動数によるボール通過周期Tiのバラツキを評価するために、記憶部22に保存したデータ群を読出し、上記式(5)を用いてその標準偏差σを算出する。
【0059】
SA15、固有振動数による一定時間のボール通過周期Tiの標準偏差σを算出した制御部21は、上記実施例1のステップS15と同様にして、算出した標準偏差σが周期異常判定値以上のときは、循環異常の発生を判定してステップSA16へ移行する。
算出した標準偏差σが周期異常判定値未満のときは、正常運転と判定し、ステップSA1へ戻って、主制御装置からの次のストローク開始通知の着信を待って待機する。
【0060】
その後のステップSA16、SA17の作動は、上記実施例1のステップS16、S17の作動と同様であるので、その説明を省略する。
このようにして、本実施例の異常判定処理が行われる。
上記のように、本実施例の異常判定処理においては、ナット5の固有振動数によるボール通過周期Tiの標準偏差σは、正常な状態においては小さく、異常が発生し始めると大きくなることに着目し、ボール通過周期Tiのバラツキの大きさを示す標準偏差σの経時変化を監視することにより、循環異常の発生を判定するので、初期段階における循環異常の発生を容易に判定することができる。
【0061】
また、ナット5の固有振動数によるボール通過周期Tiの振動波形は、そのピークがより明確になり、かつリターンチューブ9と負荷路の接続部において発生する固有振動数の発生周期を用いてボール通過周期Tiを測定するので、周波数解析によっては、異常を判定しにくいリターンチューブ9と負荷路の接続部における循環異常をより正確に判定することが可能になり、ボールねじ装置1の異常を早期に検出することができると共に、循環異常に伴うリターンチューブ9の破損等による運転不能といった重大な不具合を未然に防止することができる。
【0062】
更に、特定周波数の数倍の高い周波数となる固有振動数の発生周期を用いて測定した、ボール通過周期Tiの標準偏差σを用いて異常を検出するので、外部からの振動の影響を排除することができ、リターンチューブ9の内面へのボール2の衝突等により大きな振幅が生じたとしても、これを異常と判定することはなく、外部からの振動や不規則な振動の影響を排除して、誤判定を防止することができる。
【0063】
更に、周波数解析に用いる生振動データを取得する振動センサ10と、ボール通過周期Tiのバラツキを評価するための抽出振動データを取得する振動センサ10とを共用することができるので、振動センサ10を増設することなく、多角的な異常判定を行うことができる。
以上説明したように、本実施例では、上記実施例1と同様の効果に加えて、ナットに設けた振動センサによりナットの固有振動数を含む周波数帯の振動データを取得し、この振動データから抽出した一定時間のボールの通過周期のデータ群から標準偏差σを求めてボール通過周期のバラツキを評価し、その標準偏差σが周期異常判定値以上になったときに、異常の発生を判定するようにしたことことによって、リターンチューブと負荷路との接続部において発生する固有振動数の発生周期を用いてボール通過周期Tiを測定することが可能になり、リターンチューブと負荷路との接続部における循環異常をより正確かつ早期に判定することができる。
【0064】
なお、本実施例においては、ボール通過周期Tiを測定するための固有振動数は、ナットの固有振動数として説明したが、ねじ軸の固有振動数を用いた場合も、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本実施例においては、固有振動数を含む周波数帯のバンドパスフィルタを用いるとして説明したが、固有振動数以上(例えば、4kHz以上)を通過させるハイパスフィルタであってもよい。
【0065】
上記各実施例においては、周期異常判定値は、初期の正常な状態での標準偏差σの2倍として説明したが、算出した標準偏差σが、標準偏差σの2倍以上になったときに、初期異常発生としてボールねじ装置1の様子を伺いながらの運転モードに変更し、その後に算出した標準偏差σが標準偏差σの3倍以上になったときに、循環異常の発生を判定するようにしてもよい。
【0066】
また、上記各実施例においては、ボール通過周期Tiのバラツキによる異常の判定は、周期異常判定値を閾値として判定するとして説明したが、直前の算出した標準偏差σを記憶部に保存しておき、直前の標準偏差σと今回算出した標準偏差σとを比較し、その増加率が設定した増加率異常判定値以上の場合に、循環異常の発生を判定するようにしてもよい。
【0067】
更に、上記各実施例においては、ボール通過周期Tiのバラツキを評価するための振動データの取得は、ボールねじ装置1の1ストローク当り1回として説明したが、数往復について1回であってもよく、数往復分の振動データを母集団としてランダムに選んだ1往復に相当する振動データであってもよい。
更に、上記各実施例においては、振動センサはナットの外周面に設けるとして説明したが、取付場所の関係でナットへの取付ができないときは、ナットに固定されるテーブルのナットの近傍に取付るとよい。
【0068】
更に、上記各実施例においては、バンドパスフィルタ等のフィルタは、電気回路を用いたフィルタであるとして説明したが、制御部による演算処理により上記した各周波数帯の振動データを取得するようにしてもよい。
更に、上記各実施例においては、周波数解析結果は周波数分析器から取得するとして説明したが、制御部による演算処理により上記した周波数解析を実行して、周波数毎の周波数解析結果を取得するようにしてもよい。
【0069】
この演算処理により、抽出振動データの取得および周波数解析を行うようにした場合は、生振動データを記憶部に格納し、両演算処理に共用するようにすることが好ましい。
更に、上記各実施例では、バラツキを評価するのに標準偏差を用いることにより精度の高い異常の判定を可能にしているが、これに限られることななく、例えば、より簡便な方法として、得られた1群のボール通過周期Tiの中の最大値と最小値との偏差が、基準値を超えるかにより評価してもよく、ボール通過周期Tiの理論値を中心として所定時間間隔毎に区切った範囲に1群のボール通過周期Tiを分類し、度数分布により評価するようにしてもよい。
【0070】
この度数分布により評価する場合には、例えば、理論値を含む中央の範囲、またはこれを含む両隣の複数の範囲に属するデータ数が、所定数を下回ったときに異常を判定する等により評価するとよい。
更に、上記各実施例においては、リターンチューブを連通部材としてボールを循環させるチューブ式の循環方式を用いたボールねじ装置を例に説明したが、連通部材は前記に限らず、連通部材をこまやエンドキャップ、デフレクタ等とした循環方式のボールねじ装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【0071】
更に、上記各実施例においては、転がり直動装置は、ボールねじ装置であるとして説明したが、転がり直動装置は前記に限らず、転動体としてボールまたはころを用いたリニアガイド装置であってもよく、転動体としてころを用いた送りねじ装置等であってもよい。このような転がり直動装置に本発明を適用しても上記と同様の効果を得ることができる。
この場合に、リニアガイド装置においては、振動センサをスライダに設けるのがよく、取付場所の関係でスライダへの取付ができないときは、スライダに固定されるテーブルのスライダの近傍に取付ることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1のボールねじ装置の断面を示す説明図
【図2】実施例1の異常判定装置を示すブロック図
【図3】実施例1の異常判定処理を示すフローチャート
【図4】実施例1の周波数解析結果を示すグラフ
【図5】実施例1のボール通過周波数の振動波形を示すグラフ
【図6】実施例1の通過周期の標準偏差の変化を示す模式図
【図7】実施例1の通過周期の標準偏差の経時変化を示すグラフ
【図8】実施例2の異常判定処理を示すフローチャート
【図9】実施例2のボール通過周通過周期を示すグラフ
【符号の説明】
【0073】
1 ボールねじ装置
2 ボール
3 ねじ軸
4 軸軌道溝
5 ナット
5a 平面
6 ナット軌道溝
8 フランジ部
8a 取付ボルト穴
9 リターンチューブ
10 振動センサ
12 回転センサ
14 バンドパスフィルタ
16 周波数分析器
20 異常判定装置
21 制御部
22 記憶部
23 時計部
24 表示部
25 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体に複数の転動体を介して移動可能に支持された移動体と、前記転動体が循環する循環路と、前記循環路を循環する前記転動体による振動を検出する振動センサと、を備えた転がり直動装置の異常判定方法において、
前記振動センサにより前記移動体の移動に伴う生振動データを取得し、前記生振動データから周波数範囲に制限を加えて抽出した抽出振動データを基に前記転動体の通過周期のバラツキを評価し、その評価結果に基づいて、異常の有無を判定することを特徴とする転がり直動装置の異常判定方法。
【請求項2】
前記抽出振動データが、前記転動体の通過振動の周波数を含む周波数帯に制限した振動データであり、前記抽出振動データから一定時間の前記転動体の通過周期のデータ群を抽出し、前記通過周期のデータ群によりバラツキを評価し、その評価結果に基づいて、異常の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の転がり直動装置の異常判定方法。
【請求項3】
前記抽出振動データが、前記支持体および移動体のいずれか一方の固有振動数を含む周波数帯に制限した振動データであり、前記抽出振動データから一定時間の前記転動体の通過周期のデータ群を抽出し、前記通過周期のデータ群によりバラツキを評価し、その評価結果に基づいて、異常の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の転がり直動装置の異常判定方法。
【請求項4】
前記バラツキの評価を、前記通過周期のデータ群を基に求めた標準偏差により行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の転がり直動装置の異常判定方法。
【請求項5】
前記生振動データから、前記支持体と、前記移動体と、前記転動体と、の特定周波数における振動強度を抽出し、前記振動強度に基づいて、前記支持体および前記移動体および前記転動体のそれぞれの異常の判定を行い、その判定結果を併せて異常の判定を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の転がり直動装置の異常判定方法。
【請求項6】
支持体と、前記支持体に複数の転動体を介して移動可能に支持された移動体と、前記転動体が循環する循環路と、前記循環路を循環する前記転動体による振動を検出する振動センサと、を備えた転がり直動装置の異常判定装置において、
前記振動センサから前記移動体の移動に伴う生振動データを取得する手段と、前記生振動データから周波数範囲に制限を加えた抽出振動データを取得するフィルタ手段と、前記抽出振動データを基に前記転動体の通過周期のバラツキを評価する手段と、その評価結果に基づいて、異常の有無を判定する手段と、を備えることを特徴とする転がり直動装置の異常判定装置。
【請求項7】
前記バラツキを評価する手段が、前記抽出振動データから一定時間の前記転動体の通過周期のデータ群を抽出するものであることを特徴とする請求項6に記載の転がり直動装置の異常判定装置。
【請求項8】
前記フィルタ手段が、前記転動体の通過振動の周波数を含む周波数帯に制限した抽出振動データを取得する手段であることを特徴とする請求項7に記載の転がり直動装置の異常判定装置。
【請求項9】
前記フィルタ手段が、前記支持体および移動体のいずれか一方の固有振動数を含む周波数帯の抽出振動データを取得する手段であることを特徴とする請求項7に記載の転がり直動装置の異常判定装置。
【請求項10】
前記通過周期のデータ群によりバラツキを評価する手段が、前記通過周期のデータ群を基に標準偏差を算出する手段と、前記標準偏差により前記通過周期のバラツキを評価する手段と、を備えることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の転がり直動装置の異常判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−257806(P2009−257806A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104268(P2008−104268)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】