説明

転写型食品用包材及び当該包材を用いた食品の製造方法

【課題】ヒートシール性の合成樹脂層を外層とし、繊維材層を内層とする積層型食品用包材において、食品を充填・包装して加熱調理した際に、水性改質剤の良好な転写性能と強固なシール性能を兼備させる。
【解決手段】繊維材層とヒートシール性合成樹脂層をヒートシール性の中間樹脂層を介して積層し、繊維材層に水性改質剤を付着するとともに、繊維材層の透水度が100〜400L/cm2・時であり、ヒートシール性の中間樹脂の溶液指数が4〜12g/10分であって、繊維材層が内側で合成樹脂層が外側に臨む状態で、加熱による中間層から繊維材層へのヒートシール性の溶融樹脂の浸透により、繊維材層同士又は繊維材層と合成樹脂層を筒状にヒートシール可能に構成した転写型食品用包材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写型食品用包材並びにこの包材を用いた食品の製造方法に関して、自動包装機による加工の簡略化と、色素、調味剤、風味剤などの水性改質剤の良好な含浸を同時に達成して、製袋包材に充填した食品の表面に水性改質剤を円滑に転写できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、加工肉製品や水産練り製品などの食品用の包材においては、ガスバリア性、耐水性、耐油性、強度などの機能に加えて、食品の製造工程の簡素化、合理化、長期保管性や安定性などの付加価値を高めることが追及され、調味剤、風味剤、色素、保存剤などの食品改質剤を包材に塗工して、これらの成分を加熱調理により食品表面に良好に転写することが求められている。
上記改質剤は従来では加工性などの見地から有機溶剤を使用していたが、最近では、環境保全や労働衛生の見地から水性改質剤へと移行が進んでいる。
このような水性改質剤を塗工するには、紙や不織布などのような吸水性の良い繊維材層を包材に設けて水性改質剤を保持する必要があるが、繊維材層は単層ではガスバリア性、耐水性、強度などに乏しいため、ヒートシール可能な合成樹脂層を積層することにより、包材を補強し、包材に強度と機械適性を付与している。
【0003】
例えば、特許文献1には、合成樹脂層と吸水性を有する繊維材層を積層した食品包材が記載されている。
即ち、合成樹脂層(ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレンの3層)に吸水性の内層である繊維材層(セルロースフリース)を積層した包材であり(段落25)、この繊維材層は着色剤、芳香剤の担体としての機能を有する(段落26)。
また、上記合成樹脂層の内側のPE層1cは吸水性の内層2のための接着剤として機能することが記載されている(段落30)。
【特許文献1】特開2000−116365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このヒートシール可能な合成樹脂層を外層とし、繊維材層を内層とする積層包材にあっては、繊維材層にヒートシール機能がないため、ピロー包装用の自動包装機を用いて、内層同士を貼り合わせる合掌貼りは勿論、外層と内層を貼り合わせる封筒貼りも実施することができない。
従って、ヒートシール機能のあるオーバーテープ(例えば、包材の外層と同材質)を別途用意し、包材の端部同士を突き合わせ、合成樹脂層(外層)のうちの突き合わせ部にこのオーバーテープをヒートシールすることで、筒状に製袋することが行われる。
このオーバーテープシール方式はオーバーテープを別途必要とするため、上記合掌貼りや封筒貼りを行う従来のピロー式の自動包装機を用いることができず、特殊な設備、包装機が必要であることから、製袋加工方法が複雑化してコスト高になり、包材の加工工程の簡略化、合理化が図れない。
その一方、包材をヒートシール性の合成樹脂層のみで形成し、繊維材層を設けないと、包材の内層に転写に必要とする充分な量の水性改質剤を吸収させることができない。
【0005】
本発明は、ヒートシール性の合成樹脂層を外層とし、繊維材層を内層とする積層型食品用包材において食品を充填・包装して加熱調理する際に、強固なシール性能と水性改質剤の良好な転写性能を兼備させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、包材の内層が繊維材層であるために自動包装機で製袋できない点と、水性改質剤を充分に含浸するために繊維材層を内層にする必要がある点が問題の基本になっていることに着目し、繊維材層を内層とする包材構造は変えられないことから、繊維材層にヒートーシール性を具備させることで、自動包装機への適用を可能ならしめることを着想した。
即ち、繊維材層と合成樹脂層の間にヒートーシール性の中間樹脂層を形成し、繊維材層の目の粗さと中間樹脂層の溶融粘度を関連付けることで、ヒートーシールの際に、水性改質剤の繊維材層への吸収を妨げない範囲で、溶融樹脂を繊維材層に適正に浸み出させて、包材を合掌貼り、或は封筒貼り方式で自動包装機にて製袋可能にすること、さらには、中間の樹脂層を設ける代わりに、繊維材層に予めヒートーシール性の溶融樹脂を含浸させることでも同じ機能を具備できることを着想して、本発明を完成した。
【0007】
本発明1は、繊維材層とヒートシール性合成樹脂層をヒートシール性の中間樹脂層を介して積層し、繊維材層に水性改質剤を付着するとともに、
繊維材層の透水度が100〜400L/cm2・時であり、ヒートシール性の中間樹脂の溶液指数が4〜12g/10分であって、
繊維材層が内側で合成樹脂層が外側に臨む状態で、加熱による中間層から繊維材層へのヒートシール性の溶融樹脂の浸透により、繊維材層同士又は繊維材層と合成樹脂層を筒状にヒートシール可能に構成したことを特徴とする転写型食品用包材である。
【0008】
本発明2は、ヒートシール性樹脂を含浸した繊維材層とヒートシール性合成樹脂層とを積層し、繊維材層に水性改質剤を付着するとともに、
繊維材層の透水度が100〜400L/cm2・時であり、繊維材層に含浸したヒートシール性樹脂の溶液指数が4〜12g/10分であって、
加熱による繊維材層に含浸したヒートシール性の溶融樹脂の浸透により、繊維材層同士又は繊維材層と合成樹脂層を筒状にヒートシール可能に構成したことを特徴とする転写型食品用包材である。
【0009】
本発明3は、上記本発明1において、中間樹脂層の厚みが25〜50μmであることを特徴とする転写型食品用包材である。
【0010】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、繊維材層の坪量が10〜40g/m2であることを特徴とする転写型食品用包材である。
【0011】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、繊維材層が、天然繊維を材質とし、或はさらに合成繊維を混合した紙、布帛、不織布であることを特徴とする転写型食品用包材である。
【0012】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、ヒートシール性の合成樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする転写型食品用包材である。
【0013】
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかにおいて、水性改質剤が、調味剤、風味剤、色素、くん液剤、抗菌剤、殺菌剤、保存剤、酸化防止剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする転写型食品用包材である。
【0014】
本発明8は、上記本発明1〜7のいずれかの転写型食品用包材を繊維材層が内側に臨む状態で筒状にヒートシールし、乳製品、加工肉製品、水産練り製品などの食品原料を筒状シートに充填し、加熱処理を施すことにより、充填食品の表面に水性改質剤を転写可能にすることを特徴とする食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、繊維材層と合成樹脂層の間に中間樹脂層を介在させ、この中間樹脂層から内側の繊維材層に溶融樹脂を浸透可能に構成したため、多量の水性改質剤を繊維材層に吸収して、食品表面に改質剤を良好に転写できるとともに、封筒貼りや合掌貼り方式により自動包装機で簡便、迅速に製袋できる。
即ち、従来の繊維材層と合成樹脂層からなる2層包材を筒状にヒートシールするには、オーバーテープシール方式で特殊な包装機械を用いる必要があったが、本発明では封筒貼りや合掌貼り方式で製袋できるため、特殊な包装機を必要とせず、既存の自動包装機で簡便に製袋でき、コストを抑えて生産性を高めることができる。
また、包材にヒートシール性を付与しながら、調味剤、風味剤、色素などの様々な水性改質剤を包材の繊維材層に担持できるため、製袋した包材に加工肉製品、乳製品などの食品原料を充填して加熱することにより、食品の表面にこれらの改質剤を簡便に転写することができる。
【0016】
以上の通り、本発明の包材では、繊維材層の透水度と中間樹脂層の溶液指数を特定化することで、中間樹脂層から繊維材層への溶融樹脂の浸み出し量を適正に制御し、もって、繊維材層に水性改質剤を担持しながら、中間層から繊維材層への溶融樹脂の浸透で包材にヒートシール性を付与できるため、一般的な自動包装機での製袋が可能となる機械適性と水性改質剤を食品表面に付着させる転写性能を良好に兼備できる。
ちなみに、繊維材層にヒートシール性樹脂を含浸した2層タイプの包材(本発明2に対応)においても、繊維材層の透水度と含浸するヒートシール性樹脂の溶液指数を特定化することで、中間樹脂層を備えた3層タイプの包材(本発明1に対応)と同様に、機械適性と改質剤の転写性を有効に兼備できる。
尚、合成樹脂層と繊維材層を積層した食品包材を開示する前記特許文献1には、溶融樹脂を繊維材層(吸収性の内層2)に浸透させてヒートシールする技術的思想はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、第一に、繊維材層とヒートシール性合成樹脂層の間に中間樹脂層を介在させ、この中間樹脂層から内側の繊維材層に溶融樹脂を浸透可能に構成した3層タイプの転写型食品包材であり、第二に、ヒートシール性樹脂を含浸した繊維材層とヒートシール性樹脂とを積層した2層タイプの転写型食品包材であり、第三に、これらの包材を筒状にヒートシールして食品原料を充填し、加熱して食品の表面に水性改質剤を転写可能にする食品の製造方法である。
【0018】
本発明1の3層タイプの包材において、包材の内層を構成する繊維材層は、本発明5に示すように、天然繊維を材質とし、或はさらに合成繊維を混合した紙、布帛、不織布である。繊維材層としては、紙にビスコース溶液を含浸させたファイブラス紙、或は天然繊維の不織布が好ましい。
天然繊維は木材パルプ、脱墨パルプ、或はバガス、マニラ麻(アバカ)、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプから得られる化学パルプ繊維、砕木パルプ(グランドパルプ)繊維、サーモメカニカルパルプ繊維のなどの機械パルプ繊維を、晒し若しくは未晒しの状態で単用又は複用したものなどが使用できる。
尚、例えば、この繊維材層をヒートシール性の合成繊維だけからなる不織布にすると、合成樹脂が浸み出す中間層がなくても、繊維材層(内層)にヒートシール性能が付与できるが、合成樹脂を材質とする繊維材層では水性改質剤の吸収能力がほとんどないため、包材に適正な転写性能を付与するには、繊維材層の材質は天然繊維にする必要がある。
しかしながら、その一方で、本発明の繊維材層は、前述の通り、合成繊維が天然繊維に多少含まれる混抄きの材質であっても良い。
【0019】
本発明1では、繊維材層の透水度は100〜400L/cm2・時であることが必要であり、200〜350L/cm2・時が好ましい。
上記繊維材層の透水度は、繊維材のいわば目の粗さ度合を表す指標であり、図1に示す測定器に試料を挟持して測定される。
即ち、大径の円筒体の下部に縮径円筒部を延設し、この縮径円筒部に断面積2cm2の通路を設け、縮径円筒部の上下方向の中間に、試料を通路に対して直交方向に挟持できる保持部を設け、上記円筒体の上部の横方向に排水口を開け、排水口の下限から資料までの距離を300mmに設定することで、測定器に挟持した各種繊維材の資料に300mm高さの水圧を負荷して、各種繊維材を単位面積(cm2)当たり1時間に透過する水量(リットル)を測定し、透水度とした。
尚、この透水度の数値が大きいほど、水が通過し易いことを意味する。
繊維材層の透水度が100L/cm2・時より小さいと、繊維材の目が密につまり、中間樹脂が溶融した場合の浸み出し量が不足し、シール強度が不充分となる恐れがある。逆に、透水度が400L/cm2・時より大きいと、繊維材の目の粗さが大き過ぎて、溶融樹脂が多量に浸み出し、水性改質剤の繊維材層への担持量が低減し、転写不良になる恐れがある。
【0020】
本発明1の包材のうち、中間樹脂層はヒートシール性を具備するとともに、加熱により中間層から樹脂が溶融して内層の繊維材層に透み出し、繊維材層同士をヒートシールし(いわゆる合掌貼りを行い)、或は内層の繊維材層と外層の合成樹脂層をヒートシールして(いわゆる封筒貼りを行い)、包材を製袋可能にすることを要件とする。
中間層を構成する樹脂は加熱溶融により水性改質剤の吸収を妨げない範囲で、繊維材層に適度に浸み出すことが重要である。このため、中間樹脂の溶融粘度の指標である溶液指数(MFR)は4〜12g/10分であることが必要であり、好ましくは6〜10g/10分である。但し、樹脂の溶液指数は、JIS K7210(1999)で規定される。
中間樹脂の溶液指数が4g/10分より小さいと、溶融粘度が大き過ぎて過剰に粘り、繊維材層に樹脂が浸み出し不足になる恐れがある。逆に、溶液指数が12g/10分より大きいと、樹脂の粘りが少なく浸み出し過剰になって、繊維材層の水性改質剤に対する保持能が不足する恐れがある。
上記中間樹脂層の材質としては、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステルが使用可能であるが、具体的には、ポリエチレンが好ましく、また、ポリエチレンとポリプロピレンのポリマーブレンドなども適している。
【0021】
本発明1の包材のうち、外層を構成するヒートシール性の合成樹脂層は、基本的に包材にガスバリア性や強度を付与するためのもので、本発明6に示すように、合成樹脂はポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも一種をいう。
上記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン(PVCD)などであり、ポリエチレンには、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を初め、酢酸ビニルとの共重合体(EVA)、ビニルアルコールとの共重合体(EVOH)などを含む。また、上記ポリ塩化ビニリデンは塩化ビニルとの共重合体を含む。
上記合成樹脂層は単層、複層を問わない。具体的には、ポリエチレンやポリプロビレンの単層を初め、ポリエチレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリアミド/ポリエチレン、EVOH/ポリアミド/ポリエチレン(LLDPE)、ポリ塩化ビニリデン/ポリアミド/ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン/ポリアミド/ポリプロピレン、ポリアミド/EVOH/ポリエチレン、ポリエチレン/EVA/ポリアミド/ポリエチレン、EVA/EVOH/ポリアミド/EVAなどが挙げられる。
また、合成樹脂の材質としては、例えば、ポリエチレンと他のポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)などのポリマーブレンドであっても良い。
本発明の包材を製袋する場合、中間層から繊維材層に浸み出した樹脂と外層の合成樹脂の間でヒートシールされるため、実用性の見地からは、中間樹脂と外層の合成樹脂を共に同材質のポリエチレンにすることが好ましいが、ポリエチレンと他のポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)とのポリマーブレンドとしても有効である。
【0022】
繊維材層の坪量は、繊維材層への水性改質剤の付着量によって影響を受け、また、坪量が大き過ぎると透水度が低下するため、10〜40g/cm2が適当であり(本発明4参照)、15〜30g/cm2が好ましい。
また、中間樹脂層の溶液指数を適正範囲内に特定した場合でも、中間樹脂層の厚みにより繊維材層への浸み出し量は影響されるため、中間樹脂層の厚みは25〜50μmが適当であり(本発明3参照)、25〜35μmが好ましく、より好ましくは30μm前後である。
包材を製袋する場合、ヒートシールの温度、時間、圧力条件は互いの具体的な数値に影響されるので一概に設定できないが、ヒートシール温度としては180〜230℃程度が挙げられる。
【0023】
繊維材層に付着させる水性改質剤は、調味剤、風味剤、色素、くん液剤、抗菌剤、殺菌剤、保存剤、酸化防止剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種である。
これらの改質剤を付着した包材に練り肉原料などの食品原料を充填すると、加熱調理に際して、包材の内層の繊維材層から食品表面に転写される。
水性改質剤を付着するには、シート状の包材において、改質剤を含有する溶液又は分散液を塗布、含浸又は噴霧することにより処理される。
上記調味剤としては、醤油、ウスターソース、みそ、焼肉タレ、ニンニク、粉末のり、粉末ゴマ、ペパー(黒胡椒など)、ジンジャー、チリ、ナツメグ、パプリカ、キャラウェー、ハツカ、ワサビ、酵母エキス、肉エキス、カニエキス、カツオエキス、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、食塩、砂糖などの天然調味料、燻結晶、炒り麦粉、粉末チーズ、バター、マーガリン、お茶類などが挙げられる。
上記風味剤としては、スモークフレーバー、バナナ、イチゴ、オレンジ、メロン等の果汁フレーバー、ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバー、カツオフレーバー、ウメフレーバーなどが挙げられる。
上記色素としては、アナトー、コウリャン、シアナット、ウコン、モナスカス、カカオ、ベニバナ、クチナシ、コチニール、クロレラ、スピルリナ、カラメル、シソ、タマネギ、アカネなどの天然色素、食用赤色2号、3号、102号、106号、同黄色4号、5号、同青色1号などの合成色素が挙げられる。
上記くん液剤は食品に主にスモーク臭と保存性を付与するもので、市販品が使用できる。
上記保存剤としては、ソルビン酸類、デヒドロ酢酸、安息香酸、或はこれらの塩、プロタミン、ε−ポリリジンなどが挙げられる。
上記抗菌剤はいわば鮮度保持剤であり、からし、わさび、これらの抽出物、抗菌性カルシウム、キトサン、グレープフルーツ種子抽出物などのような、保存剤より機能が緩いが、短期の制菌作用を有するものをいう。
上記酸化防止剤としては、トコフェロール、没食子酸プロピルなどのポリフェノール類、グアヤク脂、L−アスコルビン酸、各種フラボノイド類などが挙げられる。
【0024】
尚、上記調味料、風味剤、色素などの改質剤は繊維材層の内面に直接付着しても良いが、改質剤の付着を強化する見地から、改質剤に結合剤を含有させることができる。
上記結合剤としては、各種デキストリン、プルラン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、ローカストビーンガムなどの天然ガム類、アルギン酸塩、マンナン、ペクチン、ゼラチン、ゼイン、シェラックなどの水溶性或はアルコール溶解性の糊料が挙げられる。
結合剤を使用する場合には、通常、結合剤を水又は、水とエタノールなどの加水アルコール類に溶解し、次いで、上記改質剤を混合した液を繊維材層の内面に付着するか、結合剤の水溶液を繊維材層に塗布・含浸した後、上記改質剤を振り掛け状に付着させても良い。
【0025】
本発明2の2層タイプの包材は、繊維材層とヒートシール性合成樹脂を積層し、この繊維材層にヒートシール性樹脂を含浸したものである。
前記本発明1の3層タイプの包材では、加熱により中間樹脂層から溶融した樹脂が内層の繊維材層に浸み出して、内層同士又は内層と外層(ヒートシール性合成樹脂)の間でヒートシールすることで包材を製袋するが、本発明2の2層タイプの包材では、繊維材層にヒートシール性樹脂を当初から含浸することで、これが加熱溶融して包材を製袋可能にするものである。
従って、本発明2の繊維材層の材質、透水度、その他の要件は、本発明1の3層タイプの包材の内層である繊維材層と同様である。
本発明2の繊維材層に含浸するヒートシール性樹脂の材質、溶液指数、その他の要件は、本発明1の包材で使用した中間樹脂と同様である。
本発明2のヒートシール性合成樹脂の材質、その他の要件は、本発明1の包材の外層であるヒートシール性合成樹脂と同様である。
【0026】
一方、前記3層タイプの包材の繊維材層において説明したが、繊維材層を例えば、天然繊維と合成繊維の混抄き紙、或は混抄き不織布として、この混抄き繊維材層(内層)とヒートシール性の合成樹脂層(外層)を積層して2層タイプの包材を形成すると、繊維材層にヒートシール性の合成樹脂を含浸する本発明2の包材とは別に、ヒートシール性と改質剤の転写性能を兼備する、新たな2層タイプの包材を提供することが可能である。
但し、この混抄き繊維材層(内層)では、ヒートシール性を良好に具備させるために合成繊維の含有量を増す必要があるが、合成繊維量の増加は水性改質剤の吸収性能の低下をもたらすため、この吸収性能を充分に担保するには、繊維材層をかなり厚く形成する必要があり、包材の柔軟性や生産性が低下するという問題が残る。
【0027】
本発明8は、上記3層又は2層タイプの転写型食品包材を利用して、包材を筒状に製袋した後、食品原料を包材に充填し、加熱調理して食品表面に各種の改質剤を転写する食品の製造方法である。
包材を製袋する場合、本発明1の3層タイプ又は本発明2の2層タイプの包材のいずれにおいても、繊維材層を内側に、また、合成樹脂層を外側に臨ませて筒状にヒートシールし、包材の長さ方向の一端を結紮して食品原料を充填した後、包材の他端を結紮して加熱調理する。
製袋の方法は、前述した通り、内層の繊維材層同士を合掌貼り方式で筒状にシールしても良いし、或は、内層の繊維材層と外層の合成樹脂層とを封筒貼り方式で筒状にシールしても良い。
この場合、例えば、3層タイプの包材では、繊維材層の透水度と中間樹脂層の溶液指数を特定化することで、中間層から繊維材層に溶融する樹脂量を制御できるので、繊維材層への改質剤の吸収を阻害しないで、繊維材層に中間樹脂が浸み出し、この浸み出し樹脂同士(合掌貼りに対応)、或は浸み出し樹脂と外層の合成樹脂とが(封筒貼りに対応)互いに熱融着して筒状にシールされる。
本発明の転写型包材の適用できる食品原料は乳製品、加工肉製品、水産練り製品などである。乳製品はチーズなどである。加工肉製品は、ハム、ソーセージを代表例とする畜肉、家禽などの練り肉製品をいう。水産練り製品はかまぼこ、ちくわなどである。
本発明の包材を筒状に製袋し、食品原料を充填して加熱調理すると、自動包装機の適用による簡便な製袋性(機械適性)と、水性改質剤の食品表面への良好な転写性の両方を円滑に達成できる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の食品用包材の製造実施例、実施例で得られた包材によるヒートシール試験例、包材を用いた食品への転写試験例を順次説明する。下記の実施例、試験例中の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0029】
《食品用包材の製造実施例》
下記の実施例1〜6は水性改質剤を付着する前の状態の3層タイプの包材であり、このうち、実施例1〜4は包材の中間樹脂の溶液指数(MFR)を一定に固定して、繊維材層の透水度を適正範囲内で変化させた例、実施例1と実施例5は繊維材層の材質と透水度が同じで、中間樹脂の溶液指数を変化させた例である。また、実施例6は包材の繊維材層の透水度と中間樹脂層の溶液指数が実施例1と同じで、中間樹脂層の厚みを減少させた例である。
一方、下記の比較例1〜4のうち、比較例1〜3は包材の中間樹脂層の溶液指数を一定に固定し、繊維材層の透水度を本発明の適正範囲の下限(100L/cm2・時)より小さくした例であり、比較例4は上記実施例1及び5と繊維材層の材質と透水度が同じで、中間樹脂の溶液指数を本発明の適正範囲の下限(4g/10分)より小さくした例である。
【0030】
(1)実施例1
透水度が217L/cm2・時であるファイブラス原紙(FB23.5、日本大昭和板紙(株)製、坪量23g/cm2)を内層側の繊維材層とし、複層のヒートシール性合成樹脂層(エコラップEX-NA、日本エコラップ(株)製)を外層として、ヒートシール性の中間樹脂にサンテックLDL 6810(旭化成ケミカルズ(株)製)を用いて、プレスロールにシリコンロールを使用しながら、外層と内層の間に上記中間樹脂を押出樹脂温度325℃、加工速度100m/分の条件で押出しラミネーションを行い、中間樹脂層の厚さが30μmである3層タイプの食品用包材を製造した。
尚、上記外層の合成樹脂層は、外側に低密度で直鎖状のポリエチレン樹脂フィルム、その内側にポリアミド樹脂フィルム、EVOH樹脂フィルム、同ポリエチレン樹脂フィルムを順番に積層した4層の複層フィルムである。中間層の樹脂は低密度で直鎖状のポリエチレン樹脂である。
また、押し出しラミネーションにより、繊維材層のうちの中間樹脂に臨む側ではヒートシール性の中間樹脂が一部含浸した状態を呈したが、内側寄りでは繊維材のままの状態を保持し、改質剤の付着に問題はなかった。
【0031】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、繊維材層を透水度が166L/cm2・時であるファイブラス原紙(FB18(坪量18g/m2)、日本大昭和板紙(株)製)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0032】
(3)実施例3
上記実施例1を基本として、繊維材層を透水度が313L/cm2・時であるビスコース繊維不織布(TCF602、フタムラ化学(株)製)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0033】
(4)実施例4
上記実施例1を基本として、繊維材層を透水度が326L/cm2・時であるビスコース繊維不織布(TCF2025、フタムラ化学(株)製)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0034】
(5)実施例5
上記実施例1を基本として、中間樹脂を溶液指数が4.0g/10分であるサンテックLDL2340(旭化成ケミカルズ(株)製)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0035】
(6)実施例6
上記実施例1を基本として、中間樹脂層の厚みが25μmになるように押し出し条件を変化させた以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0036】
(6)比較例1
上記実施例1を基本として、繊維材層を透水度が58L/cm2・時であるフィルター用紙(GPS−22、南国パルプ工業(株)製)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0037】
(7)比較例2
上記実施例1を基本として、繊維材層を透水度が60L/cm2・時であるケーク紙(20A、南国パルプ工業(株)製)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0038】
(8)比較例3
上記実施例1を基本として、繊維材層を透水度が23L/cm2・時である薄用紙(坪量18g/cm2)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0039】
(9)比較例4
上記実施例1を基本として、中間樹脂を溶液指数が2.0g/10分であるサンテックLDL1920(旭化成ケミカルズ(株)製)に代替した以外は、実施例1と同様に処理して、食品用包材を製造した。
【0040】
《ヒートシール試験例1》
そこで、中間樹脂層の溶液指数(MFR)が同じであり、繊維材層の透水度が異なる上記実施例1〜4及び比較例1〜3の各食品用包材について、下記の要領でヒートシール試験を行って、シール強度の優劣を評価した。
[ヒートシール試験方法]
包材のうち、外層の合成樹脂層と内層の繊維材層を重ね合わせ、ヒートシールテスター(東洋精機工業(株)製)にてシール幅10mm、圧力1kg/cm2、シール温度200℃、時間5秒の条件で封筒貼りシールを行い、シール幅方向に15mmの試料を切り出し、ロードセル型引張試験機(島津製作所(株)製)により、引張速度500mm/分、90度の剥離角度で測定し、破断時の強度をシール強度とした。
【0041】
下表はその試験結果である。
繊維材層 透水度 MFR 中間層厚み シール強度
実施例1 FB23.5 217 10.0 30 11.10
実施例2 FB18 166 10.0 30 11.04
実施例3 TCF602 313 10.0 30 11.14
実施例4 TCF2025 326 10.0 30 11.16
比較例1 GSP22 58 10.0 30 3.05
比較例2 ケーク紙20A 60 10.0 30 4.36
比較例3 薄用紙18 23 10.0 30 0.54
尚、透水度の単位はL/cm2・時、MFRの単位はg/10分、中間層厚みの単位はμm、シール強度の単位はN/15mmである。
【0042】
上表によると、中間樹脂の溶液指数が4〜12g/分の適正範囲にあり、且つ、繊維材層の透水度が100〜400L/cm2・時の適正範囲にある実施例1〜4では、中間樹脂の繊維材層への浸み出しを良好に制御でき、すべて実用レベルに耐えるのに充分なシール強度を示した。
これに対して、中間樹脂の溶液指数は4〜12g/10分の適正範囲にあるが、繊維材層の透水度が100L/cm2・時より小さい(つまり、繊維材の目が過剰に密である)比較例1〜3では、中間層からの樹脂の浸み出しが不充分であり、シール強度不足になり、特に、薄用紙を用いた比較例3は中間樹脂の浸み出しがほとんどなかった。
従って、繊維材層の透水度を100〜400L/cm2・時の適正範囲に調整することの重要性が確認できた。
尚、繊維材層の透水度が400L/cm2・時より大きい場合、繊維材の目はかなり粗くなって、中間層からの溶融樹脂が繊維材層の全体にまで浸透し、水性改質剤の吸収性を大きく阻害し、もって、転写型包材の生産性を大幅に低下させるため、透水度の適正範囲の上限を越える例を比較例として挙げなかった。
【0043】
《ヒートシール試験例2》
前記試験例1では、中間樹脂の溶液指数を固定し、繊維材層の透水度を変化させた場合のシール強度を調べたが、本試験例2では、逆に、繊維材層の透水度を固定し、中間樹脂の溶液指数(MFR)を変化させることで、シール強度の優劣を評価した。
即ち、繊維材層の透水度が同じであり、中間樹脂層の溶液指数が異なる上記実施例1と5並びに比較例4の各食品用包材について、前記試験例1と同様の要領でヒートシール試験を行った。
【0044】
下表はその試験結果である。
繊維材層 透水度 MFR 中間層厚み シール強度
実施例1 FB23.5 217 10.0 30 11.10
実施例5 FB23.5 217 4.0 30 10.49
比較例4 FB23.5 217 2.0 30 4.42
【0045】
上表において、実施例5と実施例1を比較すると、実施例5は実施例1と繊維材層の透水度は同じであり、中間樹脂層の溶液指数は実施例1よりかなり低く設定したが(10.0→4.0g/10分)、実施例1に準じたシール強度を示した。
しかしながら、中間樹脂層の溶液指数を適正範囲の下限(4.0g/10分)より低くすると、繊維材層への中間樹脂の浸み出しが不充分になり、シール強度不足になった(11.10→4.42N/15mm)。
従って、本試験例2にあっては、中間樹脂層の溶液指数を4〜12g/10分の適正範囲に調整することの重要性が確認できた。
尚、中間樹脂層の溶液指数が12g/10分を越えると、樹脂の分子量が小さくなり、樹脂自体の強度が低下し、実用上適当でなくなるため、溶液指数の上限を越える例を比較例として挙げなかった。
【0046】
《ヒートシール試験例3》
本試験例3では、中間樹脂層の溶液指数と繊維材層の透水度を固定し、中間樹脂層の厚みを変化させてシール強度の優劣を評価した。
即ち、繊維材層の透水度と中間樹脂層の溶液指数が同じであり、中間樹脂層の厚みが異なる上記実施例1と6の各食品用包材について、前記試験例1と同様の要領でヒートシール試験を行った。
【0047】
下表はその試験結果である。
繊維材層 透水度 MFR 中間層厚み シール強度
実施例1 FB23.5 217 10.0 30 11.10
実施例6 FB23.5 217 10.0 25 7.86
【0048】
実施例6は、実施例1と繊維材層の透水度と中間樹脂層の溶液指数は同じであるが、中間樹脂層の厚みが実施例1より少し薄いため(30→25μm)、繊維材層に浸み出す樹脂量が低減し、シール強度は実施例1より後退したが、実用可能な範囲内にはあると判断できた。
以上の通り、繊維材層に浸み出す樹脂量を制御して適正なシール強度を担保する見地から、中間層の厚みは25μm以上が好ましいことが分かった(厚みの上限は50μm程度が適当である)。
【0049】
そこで、上記実施例1〜5及び比較例1〜4の各包材に水性改質剤を塗工して転写型食品用包材を作成し、この包材をヒートシールにより筒状に製袋し、筒状包材中に食品原料を充填して加熱調理し、実際の食品製造でのシール強度と改質剤の転写性能の優劣を評価した。
《転写型食品用包材を用いて食品製造する際のシール強度及び転写性能試験例》
下記では、実施例や比較例の各包材を用いて、カニ風味蒲鉾とソーセージの2種類の食品を造り分けて、製造食品別の評価試験を行った。
【0050】
(1)カニ風味蒲鉾の製造法A
シート状の各包材の繊維材層(内層)にカニエキス(調味料)とモナスカス色素の混合液をコーターで付着量35g/cm2の条件で含浸、乾燥させ、転写型食品用包材を製造した。
次いで、この包材をスリットして幅70mmの長尺ロールに仕上げ、ピロー方式の自動充填包装機(ONPACK-2030ST、オリヒロ(株)製)を用いて、前記混合液の塗工層が内側に臨む状態で、上記幅方向が円周となる筒状に包材を合掌貼り方式でヒートシールしながら、カニ身と魚肉擂り身の混合物をこの筒状包材に充填した後(つまり、円筒棒状に充填・包装した後)、スチームで20分間に亘り加熱調理して、ジャンボなカニ棒(カニ風味蒲鉾)を製造した。
この場合、水性改質剤を構成する上記カニエキス(調味料)とモナスカス色素の混合液の組成については、モナスカス色素液69部にカニエキス29部とデキストリン2部を加えて合計100部とした。
また、食品原料を構成する上記カニ身と魚肉擂り身の混合物の組成については、擂り身(スケソー鱈)44部、カニ身10部、馬鈴薯デンプン4部、卵白3部、みりん2部、食塩1.4部、砂糖1部、アミノ酸2部と水を加えて100部とし、サイレントカッターで擂り潰したものを食品原料とした。
【0051】
(2)ソーセージの製造法B
シート状の各包材の繊維材層(内層)に唐辛子抽出液と黒胡椒エキスの混合液をコーターで付着量40g/cm2の条件で含浸、乾燥させ、転写型食品用包材を製造した。
次いで、この包材をスリットして幅290mmの長尺ロールに仕上げ、ソーセージ自動充填包装機(シーラーHS−3、TipperTie社製)を用いて、前記混合液の塗工層が内側に臨む状態で、上記幅方向が円周となる筒状に包材を封筒貼り方式でヒートシールしながら、ソーセージの練り肉原料をこの筒状包材に充填した後(つまり、円筒棒状に充填・包装した後)、チャンバー内でスチームにて2時間加熱調理して、ソーセージを製造した。
水性改質剤を構成する上記唐辛子抽出液と黒胡椒エキスの混合液の組成については、唐辛子抽出液30部、黒胡椒エキス30部、デキストリン2部、アルコール5部及び水33部を混合し、合計100部とした。
また、食品原料を構成する上記ソーセージの練り肉原料の組成については、豚肉60部、豚脂18部、大豆蛋白3部、食塩1.6部と少量のリン酸塩、香辛料、亜硝酸ソーダ、アスコルビン酸を添加し、さらに水を加えて100部とし、サイレントカッターで擂り潰したものを食品原料とした。
【0052】
一方、本試験例では、下記の通り、2層タイプの包材を実施例7とし、また、冒述の特許文献1に準拠した包材を比較例5として、これらの包材についても、食品製造でのシール強度と転写能力の優劣を夫々評価した。
(1)実施例7
前記実施例1で内層に用いた繊維材層(透水度217L/cm2・時のファイブラス原紙)に、溶液指数が10g/10分であるポリエチレンの水性エマルション(ケミパール、三井化学工業(株)製)をコンマコーターで30g/cm2の付着量で片面リッチに含浸付着し、この繊維材層の片面リッチ面を、同じく実施例1で外層に用いた合成樹脂層(エコラップEX−NA)に臨ませながら、ポリエチレン分散液を含浸した繊維材層と合成樹脂層とを140℃、30m/分の条件で熱ラミネーションし、2層タイプの転写型食品用包材を製造した。
【0053】
(2)比較例5
繊維材層と合成樹脂複合フィルムとを積層した、セルロース/PE/NY/PEのラミネーションフィルム(NPP、OCI(株)製)を比較例5とした。
尚、当該比較例5では、製造法Bの封筒貼り方式のみで試験した。
【0054】
製造法Aによりカニ風味蒲鉾を製造した場合、実施例1〜5の3層タイプの各包材の合掌貼りシールでは、多くの調味料及び色素を含浸しているにも拘わらず、調理に耐え得る強固なシール強度が確認できた。
また、製造後に包材を剥離すると、調味料と色素の混合物からなる改質剤層が食品表面に円滑に転写されており、試食するとカニ風味が良好に感じられた。
実施例6の2層タイプの包材にあっても、上記実施例1〜5の3層タイプの包材と同様に、強固なシール強度と改質剤の良好な転写性能が認められた。
これに対して、比較例1〜4の3層タイプの各包材では、シール強度が弱いために、ヒートシール中に充填食品原料がシール部から一部こぼれ出すとともに、加熱調理中に食品の膨張により包材が破れてしまい、実用性は低かった。
【0055】
一方、封筒貼りでヒートシールし、ソーセージを製造した製造法Bにおいても、実施例1〜6はすべて製造法Aと同様に、強固なシール強度と良好な転写性能を示したが、比較例1〜4はすべて製造法Aと同様に、シール強度不足で包材としての実用性は低かった。 また、冒述の特許文献1に準拠した比較例5では、紙とポリエチレンとの間にわずかな熱融着性能しかなく、シール強度がほとんどないため、封筒貼りシールができず、従って包装充填作業は中止した。
【0056】
以上の通り、繊維材層の透水度、或は中間樹脂層の溶液指数が適正範囲から外れる比較例では、シール強度が弱く、食品の充填が困難であるのに対して、繊維材層の透水度と中間樹脂層の溶液指数を共に適正範囲に特定化した実施例では、中間層から繊維材層への溶融樹脂の浸み出し量を制御することで、強固なシール性能と水性改質剤の良好な転写性能を兼備できることが裏付けられた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】繊維材層の透水度試験に用いる測定器の概略説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材層とヒートシール性合成樹脂層をヒートシール性の中間樹脂層を介して積層し、繊維材層に水性改質剤を付着するとともに、
繊維材層の透水度が100〜400L/cm2・時であり、ヒートシール性の中間樹脂の溶液指数が4〜12g/10分であって、
繊維材層が内側で合成樹脂層が外側に臨む状態で、加熱による中間層から繊維材層へのヒートシール性の溶融樹脂の浸透により、繊維材層同士又は繊維材層と合成樹脂層を筒状にヒートシール可能に構成したことを特徴とする転写型食品用包材。
【請求項2】
ヒートシール性樹脂を含浸した繊維材層とヒートシール性合成樹脂層とを積層し、繊維材層に水性改質剤を付着するとともに、
繊維材層の透水度が100〜400L/cm2・時であり、繊維材層に含浸したヒートシール性樹脂の溶液指数が4〜12g/10分であって、
加熱による繊維材層に含浸したヒートシール性の溶融樹脂の浸透により、繊維材層同士又は繊維材層と合成樹脂層を筒状にヒートシール可能に構成したことを特徴とする転写型食品用包材。
【請求項3】
中間樹脂層の厚みが25〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の転写型食品用包材。
【請求項4】
繊維材層の坪量が10〜40g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の転写型食品用包材。
【請求項5】
繊維材層が、天然繊維を材質とし、或はさらに合成繊維を混合した紙、布帛、不織布であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の転写型食品用包材。
【請求項6】
ヒートシール性の合成樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の転写型食品用包材。
【請求項7】
水性改質剤が、調味剤、風味剤、色素、くん液剤、抗菌剤、殺菌剤、保存剤、酸化防止剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の転写型食品用包材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の転写型食品用包材を繊維材層が内側に臨む状態で筒状にヒートシールし、乳製品、加工肉製品、水産練り製品などの食品原料を筒状シートに充填し、加熱処理を施すことにより、充填食品の表面に水性改質剤を転写可能にすることを特徴とする食品の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−99563(P2008−99563A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282255(P2006−282255)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(591264197)OCI株式会社 (5)
【出願人】(591062489)東和化工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】