説明

輸送システム、及び、輸送方法

【課題】マイクロ流路内において、低粘度流体だけではなく、高粘度の流体や半固形物、固形物分散物なども輸送が可能となる輸送システム、及び、輸送方法を提供すること。
【解決手段】刺激付与により体積変化を生じる刺激応答性高分子又は架橋体により内壁面の少なくとも一部が形成されているマイクロ流路と、前記体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させることができる刺激付与手段とを少なくとも備えることを特徴とする輸送システム、並びに、前記輸送システムを準備する工程、前記マイクロ流路内を流体で満たす工程、及び、前記刺激付与手段により刺激応答性高分子又は架橋体に刺激を付与し、体積変化を生じさせ、さらに体積変化を伝播させることにより、マイクロ流路内の物質を輸送する工程を含むことを特徴とする輸送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送システム、及び、輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロリアクタ内での物質輸送は、一般に外部ポンプ(ダイアフラムポンプ、シリンジポンプ、ペリスタリックポンプ、ギアポンプなど)が用いられている。
また、圧電素子(圧電体素子)や電気浸透流を利用してマイクロリアクタ内に送液システムを設置した例も知られている。
例えば、特許文献1には、圧電体素子の駆動によりキャビティの容積を変化させ、チャネルとの間で試料を送受液する注入ポートと、当該チャネルを介して注入ポートに連通し、化学反応後の試料を回収するための排出ポートを備えたマイクロリアクタが提案されており、また、特許文献2には、複数の液体入口と、それら液体入口に連通する混合路と、該複数の液体入口から離れて該混合路に設けられる液体出口と、該混合路に収容された液体に、該複数の液体入口から該液体出口へ向かう電気浸透流を生起させる電界形成手段とを具備する液体混合装置において、液体に接触する前記混合路の壁面の状態を局所的に変化させて、該混合路を流れる液体の速度場に局部的変動を生じさせる壁面状態変更手段を具備し、前記電界形成手段は、前記混合路に収容される液体に作用する単一の電界を、前記複数の液体入口と前記液体出口との間に形成すること、を特徴とする液体混合装置が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−228159号公報
【特許文献2】特開2004−156964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、マイクロ流路内において、低粘度流体だけではなく、高粘度の流体や半固形物、固形物分散物なども輸送が可能となる輸送システム、及び、輸送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、手段<1>及び<5>によって解決された。好ましい実施態様である<2>、<3>、<4>、<6>、<7>及び<8>と共に以下に示す。
<1> 刺激付与により体積変化を生じる刺激応答性高分子又は架橋体により内壁面の少なくとも一部が形成されているマイクロ流路と、前記体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させることができる刺激付与手段とを少なくとも備えることを特徴とする輸送システム、
<2> 前記刺激応答性高分子又は架橋体が、流路径に対して1/10以上の範囲の厚さで形成されている上記<1>に記載の輸送システム、
<3> 前記刺激が、化学反応、光、熱(温度変化)、刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動、電界の付与、電流の付与、pHの変化、イオン濃度の変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、及び、磁場よりなる群から選ばれた上記<1>又は<2>に記載の輸送システム、
<4> 前記刺激が、化学反応、光、温度変化、電気化学反応、刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動、及び、電界の印加よりなる群から選ばれた上記<1>乃至<3>のいずれか1つに記載の輸送システム。
<5> 刺激付与により体積変化を生じる刺激応答性高分子又は架橋体により内壁面の少なくとも一部が形成されているマイクロ流路と、前記体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させる刺激付与手段とを少なくとも備えた輸送システムを準備する工程、前記マイクロ流路内を流体で満たす工程、及び、前記刺激付与手段により刺激応答性高分子又は架橋体に刺激を付与し、体積変化を生じさせ、さらに体積変化を伝播させることができることにより、マイクロ流路内の物質を輸送する工程を含むことを特徴とする輸送方法、
<6> 前記刺激応答性高分子又は架橋体が、流路径に対して1/10以上の範囲の厚さで形成されている上記<5>に記載の輸送方法、
<7> 前記刺激が、化学反応、光、熱(温度変化)、刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動、電界の付与、電流の付与、pHの変化、イオン濃度の変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、及び、磁場よりなる群から選ばれたものである上記<5>又は<6>に記載の輸送方法、
<8> 前記刺激が、化学反応、光、温度変化、電気化学反応、刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動、及び、電界の印加よりなる群から選ばれたものである上記<5>乃至<7>のいずれか1つに記載の輸送方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、マイクロ流路内において、低粘度流体だけではなく、高粘度の流体や半固形物、固形物分散物なども輸送が可能となる輸送システム、及び、輸送方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面等を参照し、本発明を詳細に説明する。
【0008】
(輸送システム)
本発明の輸送システムは、刺激付与により体積変化を生じる刺激応答性高分子又は架橋体(以下、「刺激応答性高分子又は架橋体」を「刺激応答性ゲル」ともいう。)により内壁面の少なくとも一部が形成されているマイクロ流路と、前記体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させることができる刺激付与手段とを少なくとも備えることを特徴とする。
前記刺激応答性高分子は、刺激の付与によって、液体を吸脱(吸収・放出)して体積変化(膨潤・収縮)する非架橋の高分子であり、また、前記刺激応答性架橋体は、刺激の付与によって、液体を吸脱(吸収・放出)して体積変化(膨潤・収縮)する高分子架橋体である。
【0009】
本発明の輸送システムにおいて、マイクロ流路の内壁面の少なくとも一部に形成されている刺激応答性ゲルの厚さDは、流路径Lに対して、D/L=1/10以上であることが好ましい。また、D/L=1/10以上かつ、D/L=9/10以下の範囲であることが好ましく、D/L=1/5以上、かつ、D/L=4/5以下の範囲であることがより好ましく、D/L=3/10以上、かつ、D/L=7/10以下の範囲であることがさらに好ましい。刺激応答性ゲルの厚さが上記範囲であると、マイクロ流路内における高粘度の流体や半固形物、固形物分散物などの輸送が容易となり、また、刺激応答性ゲルの体積変化及び伝播により生じる流れ方向への推進力を流体や流体中の固形物へ効率的に伝えることができ、効率的な輸送が可能となる。また、D/Lが9/10以下であると、十分な輸送量を達成でき、また、1/10以上であると、十分な推進力を得ることができる。
なお、流路径とは、流れ方向に対して垂直な面により切断した流路の断面積から求めた円相当径(直径)である。
【0010】
刺激応答性ゲルに付与する刺激としては、化学反応、光、熱(温度変化)、刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動、電界の付与、電流の付与、pHの変化、イオン濃度の変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、磁場等のような刺激の付与によって、液体を吸脱(吸収・放出)等が例示できる。
これらの中でも、刺激付与手段における簡便性の点から、前記刺激は、化学反応、光、温度変化、電気化学反応、刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動、及び、電界の印加よりなる群から選ばれたものであることが好ましく、光、温度変化、電気化学反応、刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動、及び、電界の印加よりなる群から選ばれたものであることがより好ましい。
また、マイクロ流路の外部から刺激を容易に付与できる点から、前記刺激は、光、温度変化、刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動、及び、電界の印加よりなる群から選ばれたものであることが好ましい。
【0011】
本発明の輸送システムにおける刺激付与手段は、刺激応答性高分子又は架橋体に刺激を付与し、刺激応答性高分子又は架橋体に体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させることができる手段である。
本発明における前記「体積変化を伝播させる」とは、刺激応答性高分子又は架橋体における体積変化を移動させることを表す。なお、伝播されるものは、刺激応答性高分子又は架橋体の体積変化のみであり、刺激応答性高分子又は架橋体自体は移動しない。
【0012】
本発明に用いることができる刺激付与手段は、刺激応答性ゲルに体積変化を起こさせる刺激を与えることができ、かつ前記体積変化を伝播させることができる手段であれば、特に制限はなく、また、付与する刺激の種類に応じ、適切な手段を選択すればよい。
刺激付与手段としては、例えば、光や熱などの刺激を付与し、かつ刺激を付与する位置を変更することができる装置や、マイクロ流路中に振動反応性の試薬を含む流体を充填させる手段、刺激応答性ゲルが設けられたマイクロ流路部分全体に刺激を付与する機器群を設け、これら機器を制御装置により刺激の付与する部分を制御する手段等が挙げられる。
刺激付与手段による刺激の付与は、連続的であっても、間欠的であっても、パルス的であっても、漸次的に変化するものであってもよく、マイクロ流路内の流体を輸送することが可能であれば、特に制限はない。
また、刺激付与手段による刺激を付与する部分は、特に制限はなく、マイクロ流路の刺激応答性ゲル部分において、1箇所のみ与えても、複数の箇所に与えても、全体に一様に与えても、漸次的に変化させて与えてもよい。
【0013】
より具体的には、以下のような手段が好ましく例示できる。
刺激として化学反応であるベローゾフ・ジャボチンスキー反応を用いる場合では、刺激応答性ゲル中に触媒を含有させ、マロン酸、臭素酸ナトリウム及び酸を含有する溶液をマイクロ流路中に充填させる手段が例示できる。
刺激として光を用いる場合では、光を透過する透明な基材によりマイクロ流路を作製し、公知の光源によるスポット照射を流路の流れ方向に移動させていく手段が例示できる。
刺激として温度変化を用いる場合では、公知のレーザーを照射し加熱を行い、該照射を流路の流れ方向に移動させていく手段が例示できる。
刺激として電気化学反応を用いる場合では、流路に沿って複数の電極を備えたマイクロ流路を作製し、マイクロ流路の各電極において電気化学反応(酸化還元反応)を制御する手段が例示できる。
刺激として刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動を用いる場合では、流路に沿って複数の電極を備えたマイクロ流路を作製し、マイクロ流路の各電極において印加電圧の正負を伝播させイオンの局在化を制御する手段が例示できる。
刺激として電界の印加を用いる場合では、流路に沿って複数の電極を備えたマイクロ流路を作製し、マイクロ流路の各電極において電界の正負を適宜変更していく手段が例示できる。
【0014】
図1は、内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成したマイクロ流路を使用し、刺激の付与により刺激応答性高分子又は架橋体が体積変化を生じる一例を示す模式断面図である。
また、図1は、内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成したマイクロ流路が、図1(A)、図1(B)、図1(C)と順に変化していく様子を模式的に示した図である。
図1(A)は、刺激応答性高分子又は架橋体12を内壁面14に形成したマイクロ流路10の一部の流路方向における断面図である。マイクロ流路10は、公知の基材からなるマイクロ流路形成基材部16により形成されている。また、マイクロ流路10内は、水等の刺激応答性高分子又は架橋体12が吸収及び排出可能な液体を含む流体が満たされている。
図1(A)に示すマイクロ流路10の一部分に対し、刺激付与手段(不図示)により刺激を付与していることを示す図が、図1(B)である。刺激を付与している部分を刺激付与部18として模式的に表した。
図1(B)に示すように、水等の刺激応答性高分子又は架橋体12が吸収及び排出可能な液体を含む流体で満たされたマイクロ流路10の一部分に刺激を付与することにより、刺激を付与した部分の刺激応答性高分子又は架橋体12が前記液体を吸収して膨潤し、図1(C)に示す図のように変化する。図1(B)において、刺激を付与した部分の刺激応答性高分子又は架橋体12が膨潤し、膨潤部20が形成される。また、刺激を付与しなかった部分の刺激応答性高分子又は架橋体12は特に変化せず、非膨潤部22となる。
図1においては、刺激応答性高分子又は架橋体12として刺激の付与により膨潤するものを一例として挙げたが、刺激応答性高分子又は架橋体12として刺激の付与により収縮するものを使用すれば、図1(C)において収縮部が形成されることは言うまでもない。
また、マイクロ流路10内に満たされる流体は、水でなくとも、刺激応答性高分子又は架橋体12が吸収及び排出し、膨潤及び収縮することが可能な液体を含むものであればよい。
【0015】
図2は、内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成したマイクロ流路を使用し、刺激の付与により刺激応答性高分子又は架橋体の体積変化を伝播させる一例を示す模式断面図である。
刺激応答性高分子又は架橋体12を内壁面14に形成したマイクロ流路10は、公知の基材からなるマイクロ流路形成基材部16により形成されており、さらに、マイクロ流路10内は刺激応答性高分子又は架橋体12が吸収及び排出可能な液体を含む流体が満たされている。
前記液体で満たされたマイクロ流路10の1以上の部分に、刺激付与手段(不図示)を用いて刺激を付与することにより、刺激を付与した部分の刺激応答性高分子又は架橋体12が前記液体を吸収して膨潤し、膨潤部20a,20bが形成される。さらに、刺激の付与を継続しながら、刺激付与部18a,18bを流れ方向へ徐々に移動していくことにより、膨潤部20a,20bも徐々に移動させることができる。
【0016】
このように、膨潤部20a,20bが移動すること、すなわち、刺激応答性高分子又は架橋体の体積変化を伝播させることにより、本発明の輸送システムは、低粘度流体だけではなく、高粘度の流体や半固形物、固形物分散物なども輸送が可能となる。
これは、刺激応答性高分子又は架橋体が膨潤又は収縮する際における体積を変化させる力が、非常に強力であることに起因する。
【0017】
図3は、内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成し、かつ、複数の電極を配列したマイクロ流路の一例において、その一部を拡大した模式断面図である。
刺激応答性高分子又は架橋体12を内壁面14に形成したマイクロ流路10は、公知の基材からなるマイクロ流路形成基材部16により形成されており、さらに、マイクロ流路10の対向する二面にそれぞれ対向するように設置した一対の電極24を流路の流れ方向に複数備えている。また、図3におけるマイクロ流路内壁面の刺激応答性高分子又は架橋体12は、特に刺激と付与していない状態を表している。
刺激として、例えば、電気化学反応、刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動、又は、電界の印加を用いる場合では、図3に示すような、内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成し、かつ、複数の電極を配列したマイクロ流路を好適に用いることができる。
マイクロ流路に設ける電極は、その形状、数、大きさ、配置等に特に制限はなく、必要に応じて設ければよい。例えば、図3に示すようにマイクロ流路の内壁面の上下に対となった電極を複数配列してもよく、マイクロ流路の内壁面の上下左右にそれぞれ対となった電極を複数配列してもよく、マイクロ流路の内壁面の上下全体に電極を配置してもよく、マイクロ流路の周囲にリング状の電極を設けてもよい。また、電極は、必要に応じて、マイクロ流路の内壁面において流路内に露出するように設置しても、露出させずに設置してもよい。
また、マイクロ流路に設けた電極は、必要に応じ、電圧や電流を制御すればよい。また、電極を設けた場合、刺激応答性ゲルに必要な刺激に応じ、マイクロ流路内において通電してもよく、通電しなくともよい。
【0018】
本発明の輸送システムが、内壁の少なくとも一部に刺激応答性ゲルを化学結合により修飾したマイクロ流路を有するものであると、刺激応答性ゲルの使用量を必要に応じた量に容易に調整することができ、コストの面で優れるため好ましい。また、刺激応答性ゲルを内壁に化学結合により修飾することで、刺激応答性ゲルの膨潤・収縮の繰り返しや外力による内壁からの刺激応答性ゲルの脱落や剥離を防ぐことができる。
また、前記化学結合は、共有結合であることがより好ましい。
本発明の輸送システムは、刺激応答性ゲルを一種のみ用いても、複数種用いてもよい。また、本発明の輸送システムは、1つのマイクロ流路内に刺激応答性ゲルを一種のみ用いても、複数種用いてもよい。
【0019】
本発明に用いることができる刺激応答性ゲルは、例えば、化学反応、光、熱(温度変化)、刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動、電界の付与、電流の付与、pHの変化、イオン濃度の変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、磁場等のような刺激の付与によって、液体を吸脱(吸収・放出)して体積変化(膨潤・収縮)するものである。
【0020】
化学反応としては、振動反応が例示でき、酸化還元の伴う振動反応であることが好ましく、ベローゾフ・ジャボチンスキー反応(Belousov-Zhabotinskii反応、BZ反応)であることがより好ましい。
化学反応、特に酸化還元反応によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、酸化還元反応を可逆的に発現する官能基を有する材料が好適に用いられる。
【0021】
ベローゾフ・ジャボチンスキー反応によって刺激応答する刺激応答性ゲルを用いる場合、刺激応答性ゲル中に触媒を有していることが好ましい。
前記触媒としては、第3族乃至第11族の遷移金属触媒が例示でき、ルテニウム、セリウム、鉄、マンガンを含む触媒であることが好ましく、ルテニウムを含む触媒であることがより好ましい。
また、前記触媒は、刺激応答性ゲル中に単に含まれていても、化学結合により刺激応答性ゲルと結合していてもよい。
前記触媒の含有量としては、刺激応答性ゲルに対して、0.1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0022】
光の付与によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、その例として、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
また、光の付与によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、アゾ基(特にアゾベンゼン構造)を有する化合物などの光によってシス−トランス異性化を生じる基を有する高分子化合物の架橋物が好ましい。その例としては、(メタ)アクリロイル基含有アゾベンゼンと(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
【0023】
熱(温度変化)によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、ある温度以上で疎水性相互作用によって凝集し水溶液中から析出してくる性質を持つLCST(下限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体、及びUCST(上限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体や、互いに水素結合する高分子鎖を持つ高分子ゲル、又は互いに水素結合する2成分の高分子のIPN体(相互侵入網目構造体)やセミIPN体、結晶性などの凝集性の側鎖を持つ高分子ゲルなどが好ましい。これらの中でも疎水性相互作用を利用したLCSTゲルは特に好ましい。LCSTゲルは高温において収縮し、UCSTゲルやIPNゲル、セミIPNゲル、結晶性ゲルでは、逆に高温で膨潤する特性をもっている。
【0024】
高温において収縮するゲルの具体的な化合物としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体やN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸及びその塩、又は(メタ)アクリルアミド、又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの2成分以上の共重合体の架橋体、ポリビニルメチルエーテルの架橋物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体などが挙げられる。これらの中でも、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドは好ましい。
一方、高温において膨潤するゲルの具体的な化合物としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体、セミIPN体及びそれらの部分中和体(アクリル酸単位を部分的に塩化したもの)、ポリ(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体、セミIPN体及びそれらの部分中和体などが挙げられる。より好ましくは、ポリN−アルキル置換アルキルアミドの架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体、セミIPN体及びそれらの部分中和体などが挙げられる。
【0025】
また、前記結晶性ゲルとしては、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基等の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩があげられる。この熱応答性高分子ゲルの体積変化を示す温度(相転移温度)は、高分子ゲルの構造、組成により種々の設計が可能である。なお、好ましい相転移温度は溶媒の沸点や凝固点内であり、より好ましくは−30℃以上300℃以下の範囲であり、さらに好ましくは−10℃以上150℃以下の範囲であり、特に好ましくは0℃以上60℃以下の範囲である。
【0026】
熱によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては前記例示した具体例の他に、温度変化に応じて複数の相転移点を示すゲルも好適に使用することができる。具体的に例示すると、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのポリアルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN(相互侵入網目構造体)体若しくはセミIPN体などが挙げられる。これらのゲルは、温度上昇に伴い膨潤−収縮−膨潤という2つの相転移点を示すことが知られている。
【0027】
また、熱によって刺激応答する刺激応答性ゲルの体積変化量を増大させる目的でイオン性官能基を高分子ゲル中に含有させることも好ましい。イオン性官能基としてはカルボン酸、スルホン酸、アンモニウム基、リン酸基などが挙げられる。イオン性官能基はゲルを調製する際にこれら官能基をもつモノマーを共重合する、合成後の刺激応答性ゲルにモノマーを含浸させて重合しIPN体又はセミIPN体とする、前記刺激応答性ゲル中の官能基を部分的に加水分解や酸化反応などの化学反応によって変換するなどの方法で含有させることができる。
【0028】
電気化学反応によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、フェロセン誘導体、コバルトセニウム、ルテニウムなどの金属錯体、遷移金属、フラーレン誘導体、ポルフィリン、拡大ポルフィリン、ピロール系化合物、フェノチアジン、ビオロゲン誘導体、フェノチアジン誘導体、チオフェン系化合物、アニリン系化合物、カルバゾール誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、ジアミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体等が挙げられ、その他ポルフィリンや酸化還元タンパクなどの生態由来物質などを官能基として有するゲル構造体やポリピロール、ポリアニリンなど高分子マトリックスが酸化還元する高分子が挙げられる。
【0029】
刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、ポリエーテル誘導体、ポリピロール誘導体、フッ素系イオン交換樹脂誘導体、ポリエステル誘導体、ポリイミン誘導体、イオン液体を含浸させた高分子ゲル、それらを含有した高分子などが挙げられる。
【0030】
電流又は電界の付与によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、カチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)が好ましく、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物;ポリスチレンの架橋物;ポリビニルピリジンの架橋物;ポリビニルカルバゾールの架橋物;ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられ、特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系高分子が好ましい。これらは、ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などの電子受容性化合物とを組み合わせて使用することができる。
【0031】
pHの変化によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、電解質系高分子ゲルが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリマレイン酸の架橋物やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩、アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその四級化物や塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその四級化物や塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが例示できる。
【0032】
前記pHの変化は、液体の電気分解や添加される化合物の酸化還元反応などの電極反応、あるいは、導電性高分子の酸化還元反応、さらには、pHを変化させる化学物質の添加や脱離によるものであることが好ましい。
【0033】
イオン濃度の変化によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、前記したpH変化による刺激応答性ゲルと同様なイオン性の高分子材料(高分子ゲル)が使用できる。また、前記イオン濃度の変化は、塩等の添加、イオン交換性樹脂の使用などによるものが好ましい。
【0034】
化学物質の吸脱着によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、強イオン性高分子ゲルが好ましく、その例として、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物や(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物などが挙げられ、特に、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系高分子が好ましく使用される。
【0035】
また、この場合の化学物質としては、界面活性剤、例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤を好ましく使用することができる。
【0036】
また、化学物質の吸脱着によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、ジオール化合物、糖、又は、ヌクレオチド等の多価アルコール化合物の吸脱着によって刺激応答する刺激応答性ゲルである、フェニルボロン酸単量体とエチレン性不飽和単量体との共重合体の架橋物が挙げられる。また、このような刺激応答性ゲルとしては、特開平7−304971号公報、特開平11−322761号公報、特開2000−309614号公報に記載の刺激応答性ゲルが例示できる。
【0037】
前記フェニルボロン酸単量体としては、4−(ジヒドロキシボロノ)スチレン、3−(メタ)アクリルアミドフェニルボロン酸、N−(4’−ビニルベンジル)−4−フェニルボロン酸カルボキサミド3−((メタ)アクリルアミジルグリシルアミド)フェニルボロン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−トリフルオロメチルフェニルボロン酸、3−(メタ)アクリルアミド−4−ペンタフルオロエチルフェニルボロン酸、3−(メタ)アクリルアミド−6−ヘプタフルオロプロピルフェニルボロン酸、3−((メタ)アクリルアミジルグリシルアミド)−6−ヘプタフルオロプロピルフェニルボロン酸、3−(メタ)アクリルアミド−4、6−ビス(ヘプタフルオロプロピル)フェニルボロン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロピル)フェニルボロン酸、3−(メタ)アクリルアミド−4−(1−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロピル)フェニルボロン酸、3−(メタ)アクリルアミド−6−(ペルフルオロ−1,4−ジメチル−2,5−ジオキサオクチル)フェニルボロン酸等が好ましく例示できる。
前記エチレン性不飽和単量体としては、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸等が好ましく挙げられる。
【0038】
溶媒組成の変化によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、ほとんどの高分子ゲルが挙げられ、その高分子ゲルの良溶媒と貧溶媒とを利用することで膨潤、収縮を引き起こすことが可能である。
【0039】
磁場の付与によって刺激応答する刺激応答性ゲルとしては、強磁性体粒子や磁性流体を含有するポリビニルアルコールの架橋物等が挙げられるが、磁場の刺激に応答するゲルであれば、ゲル自体は特に限定されるものではなく、ゲルの範疇に含まれるものであればよい。
【0040】
本発明に用いることができる刺激応答性ゲルは、架橋剤を使用して合成してもよい。前記架橋剤としては、公知のものを用いることができる。
刺激応答性ゲルに使用する架橋剤の使用量は、全単量体の重量に対し、0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上1.0重量%以下であることがより好ましい。上記範囲であると、自己支持性に優れるだけでなく十分な体積変化量が得られ、さらにマイクロ流路内壁面への刺激応答性ゲルの修飾が容易にできる。
【0041】
刺激応答性ゲルの最大体積変化量は特に限定されないが、高いほど好ましく、最大膨潤時及び最小収縮時の体積比が3以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましい。
さらに、刺激応答性ゲルの最大膨潤時における液体の吸収量は(刺激応答性ゲルが吸収した液体の質量/乾燥時の刺激応答性ゲルの質量)=5以上500以下の範囲が好ましい。5以上であれば刺激応答性ゲルの体積変化を十分取ることができ、500以下であればゲルの強度を十分確保できるため好ましい。
【0042】
刺激応答性ゲル中にはその特性を損なわない範囲で紫外線吸収剤、光安定剤等、種々の安定剤を共重合あるいは結合させることが可能である。例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の化合物や光安定化機能を持つ化合物などを共重合あるいは結合することが好ましく実施できる。これらの化合物の共重合量あるいは結合量は、刺激応答性ゲルに対して0.01重量%以上5重量%以下の範囲が好ましい。
【0043】
本発明の輸送システムに流すことができる流体は、完全な液体でなくともよく、使用用途に応じ、固体や気体を含むものであってもよく、その組成や濃度等も必要に応じ選択することができる。特に、本発明の輸送システムは、一般にはマイクロ流路中を輸送することができない、高粘度の流体や、半固形物及び/又は固形物分散物を輸送することができる。高粘度の流体としては、例えば、流速や流路断面積及び長さによっても変わるが、一般にはマイクロ流路中を輸送することができない1,000cs(センチストークス)以上の粘度の流体が挙げられる。
前記流体としては、使用する刺激応答性ゲルが膨潤・収縮するのに必要な化合物を含むものであれば、特に制限はないが、有機溶媒、又は、水やアルコール類等の水系媒体を含むことが好ましく、水系媒体を含むことがより好ましく、水を含むことがさらに好ましい。
また、半固形物及び/又は固形物分散物としては、一般にはマイクロ流路中を輸送することができない、半固形物及び/又は固形物を5重量%以上95重量%以下含有する分散物が挙げられる。
【0044】
前記マイクロ流路は、マイクロスケールの流路である。すなわち、流路の幅(流路径)は、5,000μm以下であり、好ましくは10μm以上1,000μm以下の範囲であり、より好ましくは30μm以上500μm以下の範囲である。また、流路の深さは10μm以上500μm以下の範囲程度である。さらに、流路の長さは、形成される流路の形状にもよるが、好ましくは5mm以上400mm以下の範囲であり、より好ましくは10mm以上200mm以下の範囲である。
また、マイクロ流路の形状については特に制限はなく、所望の形状とすればよい。マイクロ流路の断面形状としては、例えば、流れ方向に対し垂直な方向での断面形状が円形、楕円形、多角形など所望の形状とすることができる。
【0045】
本発明の輸送システムにおいて、マイクロ流路を形成する材質としては、刺激応答性ゲル以外に、金属、セラミック、ガラス、ヒューズドシリカ、シリコーン、樹脂などの材料が例示でき、ガラスが好ましく挙げられる。刺激応答性ゲルをマイクロ流路の内壁に修飾する場合において、材質がガラス又は樹脂であると内壁への修飾が容易であるため好ましい。
また、前記材質は、安価、透明性及び加工性などの観点からはガラスを用いることが好ましい。
【0046】
前記ガラスとしては、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、クリスタルガラスなど一般的なものが使用できる。また、ガラスのガラス転移点としては、500℃以上600℃以下であることがより好ましい。
前記樹脂としては、耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性、透明性などが、行う反応や単位操作に適した樹脂が好ましく、具体的には、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミド樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が好ましく例示できるが、より好ましくは、メチルメタクリレート樹脂などのアクリル樹脂、スチレン樹脂である。また、前記樹脂としては、ガラス転移点を有する樹脂であることが好ましく、前記樹脂のガラス転移点は、90℃以上150℃以下の範囲であることが好ましく、100℃以上140℃以下の範囲であることがより好ましい。
【0047】
本発明におけるマイクロ流路の形成方法は、特に制限されず、公知の方法により製造すればよい。また、市販されているマイクロ流路を有するデバイスを用い、刺激応答性ゲルをマイクロ流路内に設けてもよい。
市販されているマイクロ流路を有するデバイスとしては、マイクロ化学技研社製集積ガラスチップ等が例示できる。
また、本発明におけるマイクロ流路の形成方法は、以下の方法が好ましく挙げられる。
【0048】
マイクロ流路の内壁面に刺激応答性ゲルを修飾したマイクロ流路の形成方法としては、マイクロ流路を形成したデバイスを作製又は準備する工程(以下、「流路作製又は準備工程」ともいう。)、前記マイクロ流路の内壁に反応性基を修飾する工程(以下、「内壁修飾工程」ともいう。)、及び、前記反応性基に刺激応答性ゲル前駆組成物を反応させ、前記マイクロ流路の内壁に刺激応答性ゲルを形成する工程(以下、「ゲル形成工程」ともいう。)を含む製造方法が好ましく例示できる。
【0049】
前記流路作製又は準備工程におけるマイクロ流路の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、公知の方法を用いることができる。マイクロ流路は、例えば、微細加工技術により作製することができる。微細加工方法としては、例えば、X線を用いたLIGA技術を用いる方法、フォトリソグラフィー法によりレジスト部を構造体として使用する方法、レジスト開口部をエッチング処理する方法、マイクロ放電加工法、レーザー加工法、ダイアモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法がある。これらの技術は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
これらの中で、樹脂を用いる場合には、機械的マイクロ切削加工法を用いることが好ましい。
また、市販されているマイクロ流路を有するデバイスを使用する場合、刺激応答性ゲルを修飾が容易である点から、前記デバイスは樹脂又はガラス製であることが好ましい。
【0050】
前記内壁修飾工程における内壁に反応性基を修飾する方法としては、特に制限はないが、マイクロ流路デバイスの基材がガラスである場合は、例えば、反応性基を有するシラン化合物を内壁表面に反応させる方法が挙げられ、また、基材が樹脂である場合は、例えば、樹脂中の官能基と反応可能な基及び反応性基を少なくとも有する化合物を内壁表面に反応させる方法が挙げられる。
【0051】
前記ゲル形成工程は、刺激応答性ゲル前駆組成物と前記反応性基とを反応させ、内壁と刺激応答性ゲルとが共有結合により結合したマイクロ流路を形成する工程である。
前記刺激応答性ゲル前駆組成物は、所望の刺激応答性ゲルに応じて、刺激応答性ゲルを形成するための単量体、架橋剤、反応開始剤、溶媒等を含むことができるものである。
前記反応性基は、所望の刺激応答性ゲルに応じて適宜選択することができる。例えば、刺激応答性ゲルをラジカル重合反応により形成する場合は、前記反応性基はラジカル重合性基であることが好ましく、刺激応答性ゲルをカチオン重合反応により形成する場合は、前記反応性基はカチオン重合性基であることが好ましい。
前記反応性基としては、ラジカル重合性基であるエチレン性不飽和基やカチオン重合性基である環状エーテル基等が好ましく挙げられ、反応性などの面から、ビニル基、エポキシ基、オキセタニル基等がより好ましく挙げられる。
【0052】
本発明の輸送システムは、必要に応じて、マイクロ流路の少なくとも内壁に刺激応答性ゲルを備えたマイクロ流路を1つ有していても、2つ以上有していてもよく、流路の分岐、合流部分、刺激応答性ゲルのないマイクロ流路等を有していてもよい。
また、本発明の輸送システムは、その用途に応じて、反応、混合、分離、精製、分析、洗浄等の機能を有する部位を有していてもよい。
また、本発明の輸送システムには、必要に応じて、例えば、輸送システムに流体を送液するための送液口や、輸送システムから流体を回収するための回収口などを設けてもよい。
【0053】
また、本発明の輸送システムは、その用途に応じて、複数を組み合わせてもよく、また、反応、混合、分離、精製、分析、洗浄等の機能を有する装置や、送液装置、回収装置、他のマイクロ流路デバイス等を組み合わせてもよい。
【0054】
本発明の輸送方法は、刺激付与により体積変化を生じる刺激応答性高分子又は架橋体により内壁面の少なくとも一部が形成されているマイクロ流路と、前記体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させることができる刺激付与手段とを少なくとも備えた輸送システムを準備する工程(以下、「準備工程」ともいう。)、前記マイクロ流路内を流体で満たす工程(以下、「充填工程」ともいう。)、及び、前記刺激付与手段により刺激応答性高分子又は架橋体に刺激を付与し、体積変化を生じさせ、さらに体積変化を伝播させることにより、マイクロ流路内の物質を輸送する工程(以下、「輸送工程」ともいう。)を含むことを特徴とする。
【0055】
本発明の輸送方法における輸送システムとしては、前述した本発明の輸送システムを好適に使用することができ、また、輸送システムにおける好ましい態様も同様である。
前記輸送工程においてマイクロ流路内を満たす流体は、刺激応答性高分子又は架橋体が吸収及び排出し、膨潤及び収縮することが可能なものであれば、特に制限はない。また、前記輸送工程においてマイクロ流路内を満たす流体は、本発明の輸送方法により輸送する物質を含む流体でなくともよく、マイクロ流路内に別の流体を最初に満たしておいてもよい。
例えば、マイクロ流路内に別の流体を最初に満たしておき、輸送工程における輸送の進行に合わせて、本発明の輸送方法により輸送したい物質を含む流体をマイクロ流路内に導入することも好ましい。
前記マイクロ流路内の物質は、使用用途に応じ、固体や液体、気体を含むものであってもよく、その組成や濃度等も必要に応じ選択することができる。
また、前記マイクロ流路内の物質は、マイクロ流路内において刺激応答性高分子又は架橋体が吸収及び排出し、膨潤及び収縮することが可能な化合物を含む流体中に混合、溶解、又は、分散等の状態で含有されている。
特に、本発明の輸送方法は、一般にはマイクロ流路中を輸送することができない、高粘度の流体や、半固形物及び/又は固形物分散物を輸送することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例で詳しく説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【0057】
(実施例1:ベローゾフ・ジャボチンスキー反応(BZ反応)による刺激)
直径100μmの筒状の流路を有するガラス製のマイクロリアクタに10%トリクロロビニルシランのイソオクタン溶液を流し、流路内壁にビニル基を導入した。その後メタノールで洗浄した。
N−イソプロピルアクリルアミド、トリス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)錯体、メチレンビスアクリルアミド及びアゾビス(イソブチロニトリル)のメタノール溶液を流路内に流し、流路内壁にモノマーを付着させた後に60℃に加熱し流路内壁にゲルを修飾した。顕微鏡観察により、25μmの厚さのゲルが修飾されていることが確認できた。
マロン酸、臭素酸ナトリウム及び硝酸それぞれ0.06M、0.08M、0.09M
の水溶液を流路内に充填したところ、顕微鏡観察により流路内壁のゲルが自律的に膨潤収縮挙動を伝播していることが確認された。ここで混合溶媒に酸化チタン粒子(粒径:5μm)を添加しその重量比が30%になるようなスラリーを調製した。前記スラリーをテフロン(登録商標)チューブ及びカプラで流路入り口まで導入し、シリンジポンプで加圧したところ、流路内のゲルの体積変化の伝播によって、酸化チタン粒子を含むスラリーは10μL/hrの流速で輸送された。
【0058】
(実施例2:光による刺激)
ガラス製のマイクロ流路(マイクロ化学技研社製スタンダードチップ、ICC−IR01、溝幅200μm、溝深さ90μm、流路長さ60mm)内に0.1Mクロロジメチルビニルシランのイソオクタン溶液を充填し、密封状態で10時間静置し、ガラス表面にビニル基を修飾した。溶液を排出後、ヘキサン、メタノールで洗浄した。
アクリルアミド12重量部、4−アクロイルアミノアゾベンゼン2重量部、架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)(和光純薬工業(株)製)0.02重量部、開始剤アセトアミノフェノン(和光純薬工業(株)製)0.2重量部をジオキサン51.7重量部に溶解し、十分に窒素置換した。この溶液を、ビニル基を修飾したマイクロ流路内壁にコートし、UV光を照射して光重合を行うと、内壁が高分子ゲルで覆われたマイクロ流路が得られた。顕微鏡観察により、20μmの厚さのゲルが修飾されていることが確認できた。
得られたマイクロ流路に水を充填するとコートゲルは収縮状態であった。高圧水銀ランプとカラーフィルターを用いた366nmの光のスポット照射を流路方向に移動させることによって、アゾベンゼン基がトランス→シス転移することでゲルが膨潤しゲルの膨潤が波状に伝播した。ここで水に酸化チタン粒子を添加しその重量比が30%になるようなスラリーを調製した。前記スラリーをテフロン(登録商標)チューブ及びカプラで流路入り口まで導入し、シリンジポンプで加圧し、366nmの光のスポット照射を流路方向に移動させたところ、流路内のゲルの体積変化の伝播によって、酸化チタン粒子を含むスラリーは10μL/hrの流速で輸送された。
【0059】
(実施例3:温度変化による刺激)
ガラス製のマイクロ流路(マイクロ化学技研社製スタンダードチップ、ICC−IR01、溝幅200μm、溝深さ90μm、流路長さ60mm)内に0.1Mクロロジメチルビニルシランのイソオクタン溶液を充填し、密封状態で10時間静置し、ガラス表面にビニル基を修飾した。溶液を排出後、ヘキサン、メタノールで洗浄した。
アクリルアミド12重量部、架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)(和光純薬工業(株)製)0.02重量部、開始剤アセトアミノフェノン(和光純薬工業(株)製)0.2重量部をジオキサン51.7重量部に溶解し、十分に窒素置換した。この溶液を、ビニル基を修飾したマイクロ流路内壁にコートしUV光を照射し光重合を行い、洗い流すと内壁がアクリルアミドゲルで覆われたマイクロ流路が得られた。
この流路に0.5mMの過酸化ベンゾイル及びジメチルアニリンを添加した3重量%のアクリル酸水溶液を充填し2時間重合反応を行った。重合後、余分なポリアクリル酸及び未反応物を純水で洗い流した。以上の操作でマイクロ流路壁面にポリアクリルアミド/ポリアクリル酸セミIPN(interpenetrating polymer networks)ゲルがコートされた。このゲルは高温で膨潤し低温で収縮する。顕微鏡観察により、30μmの厚さのゲルが修飾されていることが確認できた。
得られたマイクロ流路に水を充填するとコートゲルは室温で収縮状態であった。レーザーを流路方向に移動させることによって、ゲルの膨潤が波状に伝播した。ここで水に酸化チタン粒子を添加し、酸化チタン粒子の重量比が30%になるようなスラリーを調製した。前記スラリーをテフロン(登録商標)チューブ及びカプラで流路入り口まで導入しシリンジポンプで加圧したところ、レーザーを流路方向に移動させたところ、流路内のゲルの体積変化の伝播によって、酸化チタン粒子を含むスラリーは10μL/hrの流速で輸送された。
【0060】
(実施例4:電気化学反応による刺激)
流路壁面に微小電極(作用極)を配列したガラス製マイクロ流路内(溝幅1,000μm、溝深さ1,000μm、流路長さ50mm)に0.5M硫酸水溶液を充填し電極に1.9V(対SCE)を印加し陽極酸化した(5分間)。その後−0.1〜1.1V(対SCE)の範囲でサイクリックリクボルタモグラムが定常になるまで掃引を繰り返したのちに1.1Vに保持し電流値が一定になるまで放置した。以上の操作で電極上に水酸基を導入することができた。流路を洗浄して、0.1Mクロロジメチルビニルシランのイソオクタン溶液を充填し密封状態で10時間静置し、ガラス表面及び電極表面にビニル基を修飾した。溶液を排出後、ヘキサン、メタノールで洗浄した。
N−イソプロピルアクリルアミド12重量部、ビニルフェロセン2重量、架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)(和光純薬工業(株)製)0.02重量部、開始剤アセトアミノフェノン(和光純薬工業(株)製)0.2重量部をN,N’−ジメチルホルムアミド50重量部に溶解し、十分に窒素置換した。この溶液を、内壁にビニル基が修飾されたマイクロ流路内に充填し、UV光を照射し光重合を行い、水で洗い流すと内壁が高分子ゲルで覆われた図3に示すようなマイクロ流路が得られた。顕微鏡観察により、200μmの厚さのゲルが修飾されていることが確認できた。
得られたマイクロ流路のコートゲルは収縮状態であった。酸化チタン粒子を添加しその重量比が30%になるようなスラリーを調製した。前記スラリーをテフロン(登録商標)チューブ及びカプラで流路入り口まで導入しシリンジポンプで加圧し、流路入り口の位置の電極電位を+5Vに印加し局所のゲルを膨潤させた後に0Vにてゲルを収縮させ、このサイクルを入り口から遠方まで伝播させると流路内のゲルの体積変化の伝播によって、酸化チタン粒子を含むスラリーは5μL/hrの流速で輸送された。
【0061】
(実施例5:刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動による刺激)
流路壁面に微小電極(作用極)を配列したガラス製マイクロ流路内(溝幅1,000μm、溝深さ1,000μm、流路長さ50mm)にNafion20%溶液(デュポン社製)、続いて窒素を流し、流路の内壁面にNafion膜をコートした。この流路内にフェナントロリン金錯体水溶液を流し、これを吸着させた後に硫酸ナトリウム水溶液を流し、内壁が高分子ゲルで覆われた図3に示すようなマイクロ流路を得た。顕微鏡観察により、250μmの厚さの高分子膜が修飾されていることが確認できた。
酸化チタン粒子を水に添加し、酸化チタン粒子の重量比が30%になるようなスラリーを調製した。前記スラリーをテフロン(登録商標)チューブ及びカプラで流路入り口まで導入しシリンジポンプで加圧し、流路入り口の位置の電極電位を−5Vに印加し局所のNafion膜を膨張させた後に+5VてNafion膜を収縮させ、このサイクルを入り口から遠方まで伝播させると流路内のNafion膜の体積変化の伝播によって、酸化チタン粒子を含むスラリーは3μL/hrの流速で輸送された。
【0062】
(実施例6:電界の印加による刺激)
流路壁面に微小電極(作用極)を配列したガラス製マイクロ流路内(溝幅1,000μm、溝深さ1,000μm、流路長さ50mm)に0.5M硫酸水溶液を充填し電極に1.9V(対SCE)を印加し陽極酸化した(5分間)。その後−0.1〜1.1V(対SCE)の範囲でサイクリックリクボルタモグラムが定常になるまで掃引を繰り返したのちに1.1Vに保持し電流値が一定になるまで放置した。以上の操作で電極上に水酸基を導入することができた。流路を洗浄して、0.1Mクロロジメチルビニルシランのイソオクタン溶液を充填し密封状態で10時間静置しガラス表面及び電極表面にビニル基を修飾した。溶液を排出後、ヘキサン、メタノールで洗浄した。
N−イソプロピルアクリルアミド12重量部、アクリル酸2重量部と1.5倍モル量トリエチルアミン、架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BIS)(和光純薬工業(株)製)0.02重量部、開始剤アセトアミノフェノン(和光純薬工業(株)製)0.2重量部を水50重量部に溶解し、十分に窒素置換した。この溶液を、内壁にビニル基が修飾されたマイクロ流路内に充填し、UV光を照射し光重合を行い、洗い流すと内壁が高分子ゲルで覆われた図3に示すようなマイクロ流路が得られた。顕微鏡観察により、200μmの厚さのゲルが修飾されていることが確認できた。
得られたマイクロ流路の全ての作用極を−20Vに保持するとコートゲルは収縮状態であった。酸化チタン粒子を水に添加し、酸化チタン粒子の重量比が30%になるようなスラリーを調製した。前記スラリーをテフロン(登録商標)チューブ及びカプラで流路入り口まで導入しシリンジポンプで加圧し、流路入り口の位置の電極電位を+20Vに印加し局所のゲルを膨潤させた後に−20Vにてゲルを収縮させ、このサイクルを入り口から遠方まで伝播させると流路内のゲルの体積変化の伝播によって、酸化チタン粒子を含むスラリーは10μL/hrの流速で輸送された。
【0063】
(比較例1)
直径1,000μmの筒状の流路を有するガラス製のマイクロリアクタを使用した。酸化チタン粒子/水の重量比が30%になるようにスラリーを調製し、これをシリンジポンプ(PHD2000、ハーバード社製)にて加圧して、前記マイクロリアクタの流路内に注入を試みた。しかしながら、流路内におけるスラリーの移動は確認できなかった。
【0064】
(比較例2)
直径1,000μmの筒状の流路を有するガラス製のマイクロリアクタを使用した。水を充填したマイクロ流路にポリアクリル酸を添加し動粘度を1,000cs(センチストークス)に調製した水溶液をシリンジポンプ(PHD2000、ハーバード社製)にて加圧して、前記マイクロリアクタの流路内に注入を試みた。しかしながら、流路内における水溶液の移動は確認できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成したマイクロ流路を使用し、刺激の付与により刺激応答性高分子又は架橋体が体積変化を生じる一例を示す模式断面図である。
【図2】内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成したマイクロ流路を使用し、刺激の付与により刺激応答性高分子又は架橋体の体積変化を伝播させる一例を示す模式断面図である。
【図3】内壁面の少なくとも一部に刺激応答性高分子又は架橋体を形成し、かつ、複数の電極を配列したマイクロ流路の一例において、その一部を拡大した模式断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 マイクロ流路
12 刺激応答性高分子又は架橋体(刺激応答性ゲル)
14 マイクロ流路内壁面
16 マイクロ流路形成基材部
18,18a,18b 刺激付与部
20,20a,20b 膨潤部
22 非膨潤部
24 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激を付与することにより体積変化を生じる刺激応答性ゲルを内壁面の少なくとも一部に形成したマイクロ流路と、
前記体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させることができる刺激付与手段とを備えることを特徴とする
輸送システム。
【請求項2】
前記刺激応答性ゲルを、流路径に対して1/10以上の範囲の厚さで形成した請求項1に記載の輸送システム。
【請求項3】
前記刺激が、化学反応、光、熱(温度変化)、刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動、電界の付与、電流の付与、pHの変化、イオン濃度の変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、及び、磁場よりなる群から選ばれた請求項1又は2に記載の輸送システム。
【請求項4】
前記刺激が、化学反応、光、温度変化、電気化学反応、刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動、及び、電界の印加よりなる群から選ばれた請求項1乃至3のいずれか1つに記載の輸送システム。
【請求項5】
刺激付与により体積変化を生じる刺激応答性高分子又は架橋体により内壁面の少なくとも一部が形成されているマイクロ流路と、前記体積変化を生じさせ、かつ前記体積変化を伝播させることができる刺激付与手段とを少なくとも備えた輸送システムを準備する工程、
前記マイクロ流路内を流体で満たす工程、及び、
前記刺激付与手段により刺激応答性高分子又は架橋体に刺激を付与し、体積変化を生じさせ、さらに体積変化を伝播させることにより、マイクロ流路内の物質を輸送する工程を含むことを特徴とする
輸送方法。
【請求項6】
前記刺激応答性高分子又は架橋体が、流路径に対して1/10以上の範囲の厚さで形成されている請求項5記載の輸送方法。
【請求項7】
前記刺激が、化学反応、光、熱(温度変化)、刺激応答性ゲル内におけるイオンの移動、電界の付与、電流の付与、pHの変化、イオン濃度の変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、及び、磁場よりなる群から選ばれたものである請求項5又は6に記載の輸送方法。
【請求項8】
前記刺激が、化学反応、光、温度変化、電気化学反応、刺激応答性高分子又は架橋体内におけるイオンの移動、及び、電界の印加よりなる群から選ばれたものである請求項5乃至7のいずれか1つに記載の輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−108769(P2009−108769A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282125(P2007−282125)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】