説明

農作業車の姿勢制御装置

【課題】 姿勢変化速度が低い場合には機体本体の姿勢が不安定になることがなく姿勢変更操作を安定した状態で行うことができ、しかも、姿勢変化速度が高くて急激に姿勢が変化したような場合における姿勢修正動作の追従性の向上を図ることが可能となる農作業車の姿勢制御装置を提供する。
【解決手段】 機体本体Vの傾斜角が設定傾斜角から外れたときに姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体Vにおける一端側箇所及び他端側箇所のうちの一方を昇降停止して、他方を機体本体Vの傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、複数の駆動手段C2〜C5の一部を作動させ、且つ、姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記一端側箇所及び前記他端側箇所を同時に昇降させるべく、前記複数の駆動手段C2〜C5を夫々作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置に対する機体本体の姿勢を変更操作自在な姿勢変更操作手段と、前記姿勢変更操作手段の作動を制御する制御手段と、機体本体の水平基準面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出手段とを備えて構成され、前記姿勢変更操作手段が、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所及び他端側箇所夫々を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な複数の駆動手段を備えて構成され、前記制御手段が、前記傾斜角検出手段の検出情報に基づいて、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢変更制御を実行するように構成されている農作業車の姿勢制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の農作業車の姿勢制御装置において、従来では、次のように構成したものがあった。
すなわち、前記姿勢変更操作手段が、機体本体の左側前部箇所、左側後部箇所、右側前部箇所、及び、右側後部箇所の夫々について、各別に前記走行装置の接地部に対して昇降自在な4個の駆動手段を備えて構成され、前記制御手段が姿勢変更制御として、次のような処理を行う構成である。つまり、前記4個の駆動手段のうち左側前部及び右側前部に位置する2個の駆動手段と左側後部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を駆動停止させた状態で他方の2個の駆動手段を駆動することにより、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角にするピッチング作動、及び、前記4個の駆動手段のうち左側前部及び右側前部に位置する2個の駆動手段と左側後部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を駆動停止させた状態で他方の2個の駆動手段を駆動することにより、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を設定左右傾斜角にするローリング作動を実行するようになっていた(例えば、特許文献1参照。)。説明を加えると、制御手段は、姿勢変更制御として、ピッチング作動及びローリング作動のいずれにおいても、常に、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所又は他端側箇所のいずれか一方の昇降を停止して、他方を機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべくそれに対応する駆動手段を作動させる構成となっていた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−96772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成は、機体本体の前後傾斜角や左右傾斜角を変更操作するときは、常に、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所又は他端側箇所のいずれか一方の昇降を停止して、他方を機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるようにしているので、機体本体の姿勢修正動作を行うときに、機体本体における前記一端側箇所又は他端側箇所のうちのいずれか一方の箇所が昇降を停止しており、安定的に接地支持されている状態で機体本体を姿勢変更させるものであるから、機体本体の姿勢が不安定になることがなく姿勢変更操作を極力安定した状態で行える利点を有するものである。
【0005】
しかし、上記従来構成においては、例えば、農作業車が圃場で走行しているような場合において、圃場における走行面の凹凸に起因して機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から離れる方向に向けて大きな姿勢変化速度にて急激に変化したような場合には、上述したような姿勢修正動作では充分に追従できずに機体本体の傾斜角を設定傾斜角に戻すのに時間がかかり、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れた状態が継続してしまうおそれがあった。説明を加えると、上記従来構成における姿勢修正動作は、機体本体における前記一端側箇所又は前記他端側箇所のいずれか一方の昇降を停止して他方を昇降させるものであるから、機体本体の水平基準面に対する傾斜角を設定傾斜角に戻すために、駆動手段による操作量を大きくさせる必要があり、それだけ機体本体の傾斜角を設定傾斜角に戻すのに時間がかかる不利がある。
【0006】
本発明の目的は、姿勢変化速度が低い場合には機体本体の姿勢が不安定になることがなく姿勢変更操作を安定した状態で行うことができるものでありながら、姿勢変化速度が高くて急激に姿勢が変化したような場合における姿勢修正動作の追従性の向上を図ることが可能となる農作業車の姿勢制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、走行装置に対する機体本体の姿勢を変更操作自在な姿勢変更操作手段と、前記姿勢変更操作手段の作動を制御する制御手段と、機体本体の水平基準面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出手段とを備えて構成され、前記姿勢変更操作手段が、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所及び他端側箇所夫々を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な複数の駆動手段を備えて構成され、前記制御手段が、前記傾斜角検出手段の検出情報に基づいて、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢変更制御を実行するように構成されている農作業車の姿勢制御装置であって、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から離れる方向に変化する姿勢変化速度を検出する姿勢変化速度検出手段が備えられ、前記制御手段が、前記姿勢変更制御において、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに前記姿勢変化速度検出手段にて検出される前記姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体における前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちの一方を昇降停止して、他方を機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、前記複数の駆動手段の一部を作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、且つ、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに前記姿勢変化速度検出手段にて検出される前記姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記一端側箇所及び前記他端側箇所を同時に機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、前記複数の駆動手段を夫々作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成されている点にある。
【0008】
第1特徴構成によれば、姿勢変化速度検出手段によって機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から離れる方向に変化する姿勢変化速度を検出して、その姿勢変化速度検出手段の検出結果に応じて、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに行う姿勢変更操作における駆動形式を異ならせるようにしている。
【0009】
すなわち、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに姿勢変化速度検出手段にて検出される姿勢変化速度が設定値未満であれば、例えば、図21(イ)に示すように、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所及び他端側箇所のうちの一方を昇降停止して、他方を機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角(図21のSHにて示す状態)になるように昇降させるべく、複数の駆動手段の一部を作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行する。このように、姿勢変化速度が設定値未満であって機体本体の姿勢変化速度が遅いときには、片側駆動形式の姿勢変更操作を実行することにより、機体本体における前記一端側箇所又は前記他端側箇所のうちのいずれかの箇所が昇降停止されて走行装置にて安定的に支持されている状態で、機体本体を姿勢変更させることになるので、機体本体の姿勢が安定した状態で姿勢変更操作を行うことができる。しかも、この場合、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から離れる方向に向けて変化するときの姿勢変化速度が遅いので、上述したような片側駆動形式の姿勢変更操作であっても充分に追従しながら機体本体の傾斜角を設定傾斜角に戻すことが可能となる。
【0010】
そして、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに前記姿勢変化速度検出手段にて検出される前記姿勢変化速度が設定値以上であれば、例えば、図21(ロ)に示すように、前記一端側箇所及び前記他端側箇所を同時に機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、前記複数の駆動手段を夫々作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行する。例えば、前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちのいずれかを上昇させると同時に他方を下降させることにより、機体本体の姿勢修正操作をより速く行うことができるのである。つまり、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角(図21のSHにて示す状態)から離れる方向に向けて大きな姿勢変化速度にて急激に変化したような場合には、両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するのである。
【0011】
そして、図21の記載からも明らかなように、両側駆動形式の姿勢変更操作を実行すると、片側駆動形式のときに比べて、駆動手段による昇降操作量が少ない状態で、言い換えれると、駆動手段による操作速度が同じであればそれだけ短い時間で機体本体の傾斜角を設定傾斜角に戻すことが可能となるのである。
【0012】
従って、姿勢変化速度が低い場合には機体本体の姿勢が不安定になることがなく姿勢変更操作を安定した状態で行うことができるものでありながら、姿勢変化速度が高くて急激に姿勢が変化したような場合における姿勢修正動作の追従性の向上を図ることが可能となる農作業車の姿勢制御装置を提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記姿勢変更操作手段が、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を変更操作するローリング作動、及び、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を変更操作するピッチング作動を夫々実行するように構成され、前記傾斜角検出手段が、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を検出する左右傾斜角検出手段とを備えて構成され、前記姿勢変化速度検出手段が、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角から離れる方向に変化する前後姿勢変化速度を検出する前後姿勢変化速度検出手段と、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角から離れる方向に変化する左右姿勢変化速度を検出する左右姿勢変化速度検出手段とを備えて構成され、前記制御手段が、前記姿勢変更制御として、前記前後傾斜角検出手段の検出情報に基づいて、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角にすべく前記ピッチング作動を実行するように前記姿勢変更操作手段を制御するピッチング制御、及び、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を設定左右傾斜角にすべく前記ローリング作動を実行するように前記姿勢変更操作手段を制御するローリング制御を実行するように構成され、前記ピッチング制御において、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに前記前後姿勢変化速度検出手段にて検出される前記前後姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体における前後方向の一端側箇所及び他端側箇所のうちの一方に作用する駆動手段の作動を停止して、他方に作用する駆動手段を機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角から外れたときに前記前後姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記前後方向の一端側箇所に作用する駆動手段及び前記前後方向の他端側箇所に作用する駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成され、前記ローリング制御において、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに前記左右姿勢変化速度検出手段にて検出される前記左右姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体における左右方向の一端側箇所及び他端側箇所のうちの一方に作用する駆動手段の作動を停止して、他方に作用する駆動手段を機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに前記左右姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記左右方向の一端側箇所に作用する駆動手段及び前記左右方向の他端側箇所に作用する駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成されている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、前記制御手段が前記ピッチング制御を実行する場合においては、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに前後姿勢変化速度検出手段にて検出される前後姿勢変化速度が設定値未満であれば上記したような片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角から外れたときに前記前後姿勢変化速度が設定値以上であれば上記したような両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するようになっているので、ピッチング制御において、姿勢変化速度が低い場合には機体本体の姿勢が不安定になることがなく姿勢変更操作を安定した状態で行うことができるものでありながら、姿勢変化速度が高くて急激に姿勢が変化したような場合における姿勢修正動作の追従性の向上を図ることが可能となる。
【0015】
そして、ローリング制御を実行する場合においても同様に、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに左右姿勢変化速度検出手段にて検出される左右姿勢変化速度が設定値未満であれば、上記したような片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに左右姿勢変化速度が設定値以上であれば、上記したような両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するようになっているので、ローリング制御において、姿勢変化速度が低い場合には機体本体の姿勢が不安定になることがなく姿勢変更操作を安定した状態で行うことができるものでありながら、姿勢変化速度が高くて急激に姿勢が変化したような場合における姿勢修正動作の追従性の向上を図ることが可能となる。
【0016】
このように、ピッチング制御及びローリング制御のいずれを実行する場合においても、姿勢変化速度が低い場合には機体本体の姿勢が不安定になることがなく姿勢変更操作を安定した状態で行うことができるものでありながら、姿勢変化速度が高くて急激に姿勢が変化したような場合における姿勢修正動作の追従性の向上を図ることが可能となり、請求項1を実施するのに好適な手段が得られる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記姿勢変更操作手段が、機体本体の左側前部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な左前側の駆動手段、機体本体の左側後部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な左後側の駆動手段、機体本体の右側前部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な右前側の駆動手段、機体本体の右側後部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な右後側の駆動手段からなる4個の駆動手段を備えて構成され、前記制御手段が、前記ピッチング制御において、前記片側駆動形式の姿勢変更操作として、前記4個の駆動手段のうち左側前部及び右側前部に位置する2個の駆動手段と左側後部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を作動停止させた状態で、他方の2個の駆動手段を機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させるように構成され、且つ、前記両側駆動形式の姿勢変更操作として、前記一方の2個の駆動手段及び前記他方の2個の駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように同時に作動させるように構成され、且つ、前記ローリング制御において、前記片側駆動形式の姿勢変更操作として、前記4個の駆動手段のうち左側前部及び左側後部に位置する2個の駆動手段と右側前部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を作動停止させた状態で、他方の2個の駆動手段を機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させるように構成され、且つ、前記両側駆動形式の姿勢変更操作として、前記一方の2個の駆動手段及び前記他方の2個の駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように同時に作動させるように構成されている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、前記姿勢変更操作手段が上記したような4個の駆動手段を備えて構成され、ピッチング制御における片側駆動形式の姿勢変更操作として、4個の駆動手段のうち左側前部及び右側前部に位置する2個の駆動手段と左側後部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を作動停止させた状態で、他方の2個の駆動手段を機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させることになる。一方、前記両側駆動形式の姿勢変更操作として、前記一方の2個の駆動手段及び前記他方の2個の駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように同時に作動させることになる。
【0019】
一方、ローリング制御においては、前記片側駆動形式の姿勢変更操作として、4個の駆動手段のうち左側前部及び左側後部に位置する2個の駆動手段と右側前部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を駆動停止させた状態で他方の2個の駆動手段を機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させることになる。一方、前記両側駆動形式の姿勢変更操作として、前記一方の2個の駆動手段及び前記他方の2個の駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように同時に作動させることになる。
ところで、前記各走行装置の接地部というのは、走行装置が接地している箇所、すなわち、走行路面に対して接触している箇所のことである。
【0020】
従って、ピッチング制御及びローリング制御のいずれの制御動作においても、例えば一つの軸芯周りで揺動しながら前後傾斜角や左右傾斜角を変更させるような構成に比べて、前記各駆動手段による昇降操作範囲、言い換えると走行装置の接地部に対する機体本体の昇降操作量を大きくしなくても機体本体の姿勢変化量を大きくとることが可能になり、例えば、機体本体の重心をできるだけ低い状態に維持させながら、機体本体の姿勢変更操作を良好に行うことが可能となり、請求項2を実施するのに好適な手段が得られる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記片側駆動形式の姿勢変更操作を実行するときは、機体本体における傾斜角変更方向に離れた前記一端側箇所、及び、機体本体における傾斜角変更方向に離れた前記他端側箇所が、前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあると、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を下降させる形態で前記複数の駆動手段の一部を作動させ、前記一端側箇所及び前記他端側箇所が、前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置にあると、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を上昇させる形態で前記複数の駆動手段の一部を作動させ、且つ、前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちのいずれか一方が前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置にあり、他方が昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあると、最下降位置にある一方の箇所を停止させて最下降位置よりも高い位置にある箇所を下降させる形態で、前記複数の駆動手段の一部を作動させるように構成されている点にある。
【0022】
第4特徴構成によれば、制御手段が片側駆動形式の姿勢変更操作を実行するときは、機体本体における前記一端側箇所及び前記他端側箇所が前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあると、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を下降させることになり、前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちのいずれか一方が前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置にあり、他方が昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあるときは、最下降位置にある一方の箇所を停止させて最下降位置よりも高い位置にある箇所を下降させる。又、前記一端側箇所及び前記他端側箇所の夫々が最下降位置にあるときは、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を上昇させることになる。
【0023】
つまり、片側駆動形式の姿勢変更操作を実行するときには、機体本体における前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちのいずれかを下降操作させることにより姿勢変更操作することが可能な状態であれば、その箇所を下降させることによって機体本体の姿勢を変更させるようにして、前記一端側箇所及び前記他端側箇所が共に最下降位置にあるときにだけいずれかを上昇操作させるようにして、下降操作を優先して実行するようにしている。このように下降操作を優先して実行する構成とすることで、機体本体の重心をできるだけ低い状態に維持させながら機体本体の姿勢変更操作を良好に行うことが可能となり、請求項1〜3のうちのいずれかを実施するのに好適な手段が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を農作業車の一例としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは左右一対のクローラ式の走行装置1L,1R、搭乗運転部2、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3、脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンク4等を備えた機体本体V、機体本体Vの前部に昇降調節自在に連結された刈取部10等を備えて構成されている。前記刈取部10は、先端部に設けた分草具6、分草具6にて分草された植立穀稈を引き起こす引起し装置5、引き起こされた穀稈の株元側を切断するバリカン型の刈刃7、刈取穀稈を徐々に横倒れ姿勢に変更しながら後方側の脱穀装置3の脱穀フィードチェーン3aの搬送始端部に供給する縦搬送装置8等にて構成されている。
【0025】
又、刈取部10は横軸芯P1周りに油圧式の刈取シリンダC1によって揺動昇降自在に設けられている。つまり、刈取部10の刈取部フレーム10aの基端部を、機体本体Vにおける主フレーム11の前部に位置する支持部11aに機体横向きの軸芯P1周りで回動自在に連結し、刈取部フレーム10aに一端側が連結している屈伸自在なリンク機構10bと、機体フレーム11とにわたって刈取シリンダC1を取付け、機体本体Vの原動部から刈取部10に動力伝達するように構成している。
【0026】
尚、上記分草具6の後方側箇所に、刈取部10の地面に対する高さを検出する超音波式の刈高さセンサ9が設けられている。詳述はしないが、この刈高さセンサ9は、下方側に向けて超音波を発信してから受信するまでの時間を計測することで、刈取部10の地面に対する高さを検出するように非接触式に構成されている。
【0027】
そして、このコンバインでは、左右の走行装置1L,1Rの接地部に対する機体本体Vの姿勢を変更操作自在な姿勢変更操作手段100が設けられている。以下、前記姿勢変更操作手段100の構成について説明する。
先ず、左右の走行装置1L,1Rの機体本体Vへの取付構造を説明する。尚、左右の走行装置1L,1Rは夫々同一構成であるから、そのうち左側の走行装置1Lについて以下に説明し、右側の走行装置1Rの構成の詳細についてはその説明を省略する。
図2に示すように、機体本体Vを構成する前後向き姿勢の主フレーム11に対して固定される支持フレーム12の前端側には駆動スプロケット13が回転自在に支持されている。そして、複数個の遊転輪体14を前後方向に並べた状態で枢支し、且つ、後端部にテンション輪体15を支持したトラックフレーム16が、後述するような四連リンク機構を介して前記支持フレーム12に対して上下動可能に装着されている。そして、前記駆動スプロケット13とテンション輪体15及び各遊転輪体14にわたり無端回動体であるクローラベルトBが巻回されている。
【0028】
前記支持フレーム12の前部側には水平軸芯P2周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される前ベルクランク17aが枢支され、支持フレーム12の後部側には水平軸芯P3周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される後ベルクランク17bが枢支されている。そして、前ベルクランク17aの下方側端部がトラックフレーム16の前部側箇所に枢支連結され、後ベルクランク17bの下方側端部は、ストローク吸収用の補助リンク17b1を介して、トラックフレーム16の後部側箇所に枢支連結されている。
一方、前後ベルクランク17a,17bの夫々の上方側端部には、夫々、駆動手段の一例としての油圧シリンダC2,C3のシリンダロッドが連動連結されている。前記各油圧シリンダC2,C3のシリンダ本体側は主フレーム11における横フレーム部分に枢支連結されており、前記各油圧シリンダC2,C3は夫々複動型の油圧シリンダにて構成されている。
【0029】
そして、前ベルクランク17aに対応する油圧シリンダC2(以下、左前シリンダという)を最も伸張させるとともに、後ベルクランク17bに対応する油圧シリンダC3(以下、左後シリンダという)を最も短縮させると、図2に示すように、トラックフレーム16が支持フレーム12に受け止め支持され、トラックフレーム16が主フレーム11に最も近づいてほぼ平行状態となる。この状態が下限基準状態である。
【0030】
そして、前記下限基準状態から、左後シリンダC3をそのままの状態に維持しながら左前シリンダC2を短縮作動させると、図3に示すように、機体本体Vの左側前部箇所に対応する左側の走行装置1Lの前ベルクランク17aの水平軸芯P2が位置する箇所と、左側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所との間隔を大きくする方向に姿勢変更することになる。この状態が前上がり状態である。
前記下限基準状態から、左前シリンダC2をそのままの状態に維持しながら左後シリンダC3を伸長作動させると、図4に示すように、機体本体Vの左側後部箇所に対応する左側の走行装置1Lの後ベルクランク17bの水平軸芯P3が位置する箇所と、左側の走行装置1Lの接地部の後部側箇所との間隔を大きくする方向に姿勢変更することになる。この状態が後上がり状態である。
前記下限基準状態から、左前シリンダC2を短縮作動させ、且つ、左後シリンダC3を伸長作動させると、図5に示すように、機体本体Vにおける主フレーム11が平行姿勢のまま離間する方向に姿勢変更することになる。この状態が上昇状態である。
【0031】
又、図2に示すように、右側の走行装置1Rにおいても同様に、機体前部側に位置する右前シリンダC4と、機体後部側に位置する右後シリンダC5とが夫々備えられ、左側の走行装置1Lと同様な動作を行う構成となっている。説明を加えると、前記下限基準状態から、右後シリンダC5をそのままの状態に維持しながら右前シリンダC4を短縮作動させると、右側の走行装置1Rの前ベルクランク17aの水平軸芯P2が位置する箇所と、右側の走行装置1Rの接地部の前部側箇所との間隔を大きくする方向に姿勢変更する前上がり状態になり、前記下限基準状態から、右前シリンダC4をそのままの状態に維持しながら右後シリンダC5を伸長作動させると、機体本体Vの右側後部箇所に対応する右側の走行装置1Rの後ベルクランク17bの水平軸芯P3が位置する箇所と、右側の走行装置1Rの接地部の後部側箇所との間隔を大きくする方向に姿勢変更する後上がり状態となる。又、前記下限基準状態から、右前シリンダC4を短縮作動させ、且つ、右後シリンダC5を伸長作動させると、機体本体Vにおける主フレーム11が平行姿勢のまま離間する方向に姿勢変更する上昇状態となる。
【0032】
左右両側の走行装置1L、1Rを共に下限基準状態にすると、機体本体Vが左右両側の走行装置1L、1Rの接地部に対して最も低い位置にて平行姿勢となる下限基準姿勢になる。左右両側の走行装置1L、1Rを共に前上がり状態にすると機体本体Vが前上がり姿勢になり、左右両側の走行装置1L、1Rを共に後上がり状態にすると機体本体Vが後上がり姿勢になる。又、左側の走行装置1Lを下限基準状態にして右側の走行装置1Rを上昇状態にすると機体本体Vが左傾斜状態になり、左側の走行装置1Lを上昇状態にして右側の走行装置1Rを下限基準状態にすると機体本体Vが右傾斜状態になる。
【0033】
従って、前記姿勢変更操作手段100は、機体本体Vの左側前部箇所(左側の走行装置1Lの前ベルクランク17aの水平軸芯P2が位置する箇所)を左側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所に対して昇降自在な左前側の駆動手段としての左前シリンダC2、機体本体Vの左側後部箇所(左側の走行装置1Lの後ベルクランク17bの水平軸芯P3が位置する箇所)を左側の走行装置1Lの接地部の後部側箇所に対して昇降自在な左後側の駆動手段としての左後シリンダC3、機体本体Vの右側前部箇所(右側の走行装置1Rの前ベルクランク17aの水平軸芯P2が位置する箇所)を右側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所に対して昇降自在な右前側の駆動手段としての右前シリンダC4、機体本体Vの右側後部箇所(右側の走行装置1Rの後ベルクランク17bの水平軸芯P3が位置する箇所)を右側の走行装置1Rの接地部の後部側箇所に対して昇降自在な右後側の駆動手段としての右後シリンダC5からなる4個の油圧シリンダC2,C3,C4,C5を備えて構成され、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を変更操作するピッチング作動、及び、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を変更操作するローリング作動を夫々実行するように構成されている。前記各走行装置1R,1Lの接地部というのは、実際に地面に接地している箇所のことである。
【0034】
前記4個の油圧シリンダC2,C3,C4,C5の夫々に対応させて、左右の走行装置1L,1Rにおける前記各ベルクランク17a,17bの回動支点部に対応する箇所に、その回動量に基づいて、各油圧シリンダC2,C3,C4,C5の伸縮作動したストローク量を検出するポテンショメータ形のストロークセンサ18,19,20,21が設けられている。これらの4個のストロークセンサ18,19,20,21は、夫々、機体本体Vの左側前部箇所と走行装置1Lの接地部に対する昇降操作位置、機体本体Vの左側前部箇所と走行装置1Lの接地部に対する昇降操作位置、機体本体Vの左側前部箇所と走行装置1Lの接地部に対する昇降操作位置、及び、機体本体Vの左側前部箇所と走行装置1Lの接地部に対する昇降操作位置、を各別に検出する4個の昇降操作位置検出手段として機能することになる。
【0035】
このコンバインには、機体本体の水平基準面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出手段300として、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を検出する左右傾斜角検出手段としての重力式の左右傾斜角センサ23と、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を検出する左右傾斜角検出手段としての重力式の前後傾斜角センサ24とが設けられている。又、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が変化するときの姿勢変化速度を検出する前後変化速度検出手段400として、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が変化するときの姿勢変化速度を検出する左右姿勢変化速度検出手段としての左右角速度センサ41と、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が変化するときの姿勢変化速度を検出する前後姿勢変化速度検出手段としての前後角速度センサ42とが夫々設けられている。
【0036】
前記左右角速度センサ41と前記前後角速度センサ42とは、詳述はしないが、夫々、光ファイバージャイロ等の角速度を検出することができる角速度検出手段によって構成されており、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角や左右傾斜角が変化するときの姿勢変化速度としての角速度を検出することができる構成となっている。
【0037】
図6に示すように、制御手段としてのマイクロコンピュータ利用の制御装置22が設けられ、この制御装置22に、前記各ストロークセンサ18〜21、刈高さセンサ9、左右傾斜角センサ23、及び前後傾斜角センサ24の各検出情報が入力されている
又、搭乗運転部2の操作パネルには、姿勢変更スイッチユニットSUと、前上げスイッチ40a及び後上げスイッチ40bが設けられ、それらの各操作情報も制御装置22に入力されている。そして、前上げスイッチ40aをオンさせると、前上げ操作(後傾斜指令)が指令され、後上げスイッチ40bをオンさせると、後上げ操作(前傾斜指令)が指令されるように構成されている。
【0038】
さらに、搭乗運転部2の操作パネルには、機体本体Vに対する刈取部10の地面に対する高さ即ち刈取高さを設定するボリューム式の刈高さ設定器39、刈取部10の上昇指令及び下降指令を指令する刈取昇降レバー28の操作に基づいて、刈取部上昇を指令する上昇スイッチSW1、刈取部下降を指令する下降スイッチSW2等が備えられ、これらの情報も制御装置22に入力されている。
【0039】
図7に示すように、上記姿勢変更スイッチユニットSUには、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を設定する左右傾斜角設定器25、後述のローリング制御を入り切りする水平自動スイッチ26、ローリング制御の入り状態を示す水平ランプ26a、ピッチング制御を入り切りする前後自動スイッチ27、ピッチング制御の入り状態を示す前後ランプ27a、ローリング制御及びピッチング制御の作動モードを上限基準モードと下限基準モードとに切り換える下げ基準スイッチ35、及び下げ基準モードであることを示す下げ基準ランプ35aが設けられ、さらに、十字レバー式の操作具36にて作動する、右上げスイッチ37a、左上げスイッチ37b、機体上げスイッチ38a及び機体下げスイッチ38bが設けられている。
【0040】
上記十字レバー式の操作具36の操作について説明すると、操作具36を左側に倒したときに、右上げスイッチ37aがオン作動して右上げ操作(左傾斜指令)が指令され、操作具36を右側に倒したときに、左上げスイッチ37bがオン作動して左上げ操作(右傾斜指令)が指令される。又、操作具36を後方側に倒したときに、機体上げスイッチ38aがオン作動して機体上げ操作(上昇指令)が指令され、操作具36を前方側に倒したときに、機体下げスイッチ38bがオン作動して機体下げ操作(下降指令)が指令される。
【0041】
又、上記左右傾斜角設定器25には、水平スイッチ25a、左傾斜スイッチ25b及び右傾斜スイッチ25cが備えられている。つまり、水平スイッチ25aを押すと、ローリング制御及び同時姿勢修正制御において設定左右傾斜角として水平状態に対応する傾斜角が設定され、左傾斜スイッチ25bを押すと、現在設定されている設定左右傾斜角が設定角度づつ左傾斜方向に修正され、右傾斜スイッチ25cを押すと、現在設定されている設定左右傾斜角が設定角度づつ右傾斜方向に修正される。そして、左右傾斜角設定器25にて設定されている左右傾斜角については、搭乗運転部2の前方側に設けた表示装置(図示しない)に、図8に示すように、1〜7の7段階(角度0の段階4が水平状態を表わし、プラスの角度が右傾斜方向、マイナスの角度が左傾斜方向を夫々表わす)のいずれであるかが表示される。尚、前後傾斜角については、ピッチング制御及び同時姿勢修正制御における設定前後傾斜角として傾斜角0(水平状態)が予め設定されている。
【0042】
そして、4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5に対する作動油の供給流量を制御するための流量制御弁29〜32が設けられ、これらの各流量制御弁に対する駆動信号が制御装置22から出力される構成となっている。一方、制御装置22からは、前記刈取シリンダC1を油圧制御するための油圧制御用の電磁弁33に対する駆動信号が夫々出力されており、制御装置22は、刈取作業中において、刈高さセンサ9の検出値が刈高さ設定器39にて設定された設定刈高さに維持されるように刈取シリンダC1を作動させる刈高さ制御を実行するように構成されている。
【0043】
前記制御装置22は、前記傾斜角検出手段300の検出情報に基づいて、機体本体Vの水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段100の作動を制御する姿勢変更制御を実行するように構成されている。そして、前記姿勢変更制御において、機体本体Vの水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに姿勢変化速度検出手段400にて検出される姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所及び他端側箇所のうちの一方を昇降停止して、他方を機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、前記複数の油圧シリンダの一部を作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、且つ、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに姿勢変化速度検出手段400にて検出される前記姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記一端側箇所及び前記他端側箇所を同時に機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、前記複数の駆動手段を夫々作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成されている。
【0044】
前記姿勢変更制御における前記各油圧シリンダC2〜C5に対する具体的な処理操作について説明を加える。すなわち、前後傾斜角センサ24の検出情報に基づいて、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角にすべくピッチング作動を実行するように姿勢変更操作手段を制御するピッチング制御、及び、左右傾斜角センサ23の検出情報に基づいて、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を設定左右傾斜角にすべくローリング作動を実行するように姿勢変更操作手段を制御するローリング制御を実行するように構成され、前記ピッチング制御において、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに、前後角速度センサ42にて検出される前後姿勢変化速度が設定値未満であれば、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち左側前部及び右側前部に位置する2個の油圧シリンダC2,C4と左側後部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダC3,C5とのうちのいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角から外れたときに前記前後姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記一方の2個の油圧シリンダC2,C4及び前記他方の2個の油圧シリンダC3,C5の夫々を、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように同時作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成されている。
【0045】
そして、前記ローリング制御において、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角から外れたときに左右角速度センサ41にて検出される左右姿勢変化速度が設定値未満であれば、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち左側前部及び左側後部に位置する2個の油圧シリンダC2、C3と右側前部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダC4,C5とのうちのいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角から外れたときに前記左右姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記一方の2個の油圧シリンダ及び前記他方の2個の油圧シリンダの夫々を、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように同時に作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成されている。
【0046】
又、制御装置22は、前記下げ基準モードが設定されているときに前記片側駆動形式の姿勢変更操作を実行するときは、次のような処理を実行する。つまり、機体本体Vにおける傾斜角変更方向に離れた前記一端側箇所、及び、機体本体Vにおける傾斜角変更方向に離れた前記他端側箇所が、夫々、前記走行装置1R,1Lの接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあるときは、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を下降させる形態で前記複数の油圧シリンダC2〜C5の一部を作動させ、前記一端側箇所及び前記他端側箇所が、前記走行装置1R,1Lの接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置にあるときは、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を上昇させる形態で前記複数の油圧シリンダC2〜C5の一部を作動させ、且つ、前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちのいずれか一方が前記走行装置1R,1Lの接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置にあり、他方が昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあるときは、最下降位置にある一方の箇所を停止させて最下降位置よりも高い位置にある箇所を下降させる形態で、前記複数の油圧シリンダC2〜C5の一部を作動させるように構成されている。
【0047】
又、制御装置22は、ピッチング制御を実行するときは、前後傾斜角センサ24の検出情報に基づいて、左側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所、左側の走行装置1Lの接地部の後部側箇所、右側の走行装置1Rの接地部の前部側箇所、及び、右側の走行装置1Rの接地部の後部側箇所の夫々が仮想平面上に位置する状態を維持しながら、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を目標前後傾斜角にするために、前後傾斜角センサ24にて検出される機体本体Vの現在の前後傾斜角と目標前後傾斜角との偏差が大であるほど高速となる形態で、前後傾斜修正用の目標駆動速度としての作動油の目標流量を各油圧シリンダ毎に求めるように構成されている。又、ローリング制御を実行するときは、左右傾斜角センサ23の検出情報に基づいて、左側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所、左側の走行装置1Lの接地部の後部側箇所、右側の走行装置1Rの接地部の前部側箇所、及び、右側の走行装置1Rの接地部の後部側箇所の夫々が仮想平面上に位置する状態を維持しながら、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を目標左右傾斜角にするために、左右傾斜角センサ23にて検出される機体本体Vの現在の左右傾斜角と目標左右傾斜角との偏差が大であるほど高速となる形態で、左右傾斜修正用の目標駆動速度としての作動油の目標流量を各油圧シリンダ毎に求めるように構成されている。そして、ローリング作動とピッチング作動とを同時に行う同時姿勢修正制御を実行するときは、各油圧シリンダ毎に求めた前後傾斜修正用の目標流量及び左右傾斜修正用の目標流量を合計して各油圧シリンダ毎の合計目標流量を求めるようになっている。
【0048】
次に、制御装置22による姿勢制御について図9〜図18のフローチャートに基づいて具体的に説明する。
図9に示すように、先ず、手動操作指令(左右傾斜、前後傾斜、上下昇降)がされたか否かを判断し、手動操作指令がされた場合には手動姿勢制御を実行する。
上記手動操作指令がされていない場合は、水平自動スイッチ26と前後自動スイッチ27の状態を調べ、水平自動スイッチ26だけがオンしている場合は、左右傾斜角センサ23の検出値と目標左右傾斜角に対応する信号値との偏差がローリング制御用の不感帯を外れていればローリング制御を実行し、水平自動スイッチ26と前後自動スイッチ27が共にオンしている場合は後述するような姿勢変更制御を実行する。尚、以下の制御は下限基準モードに設定されている場合について説明する。
【0049】
図10に示すように、手動姿勢制御では、左上げスイッチ37bにて左上げが指令されていれば右傾斜処理を実行する。尚、右傾斜処理では、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に達するまで、右前シリンダC4を伸長作動させるとともに右後シリンダC5を短縮作動させ、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されれば、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが上限位置に達するまで、左前シリンダC2を短縮作動させるとともに左後シリンダC3を伸長作動させる。
【0050】
又、右上げスイッチ37aにて右上げが指令されていれば、左傾斜処理を実行する。尚、左傾斜処理では、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2を伸長作動させるとともに左後シリンダC3を短縮作動させ、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に操作されれば、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、右前シリンダC4を短縮作動させるとともに右後シリンダC5を伸長作動させる。
【0051】
又、後上げスイッチ40bにて後上げが指令されていれば、前傾斜処理を実行する。尚、前傾斜処理では、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を伸長作動させ、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されれば、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を伸長作動させる。
【0052】
前上げスイッチ40aにて前上げが指令されていれば、後傾斜処理を実行する。尚、後傾斜処理では、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に達するまで、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させ、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されれば、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが上限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を短縮作動させる。
【0053】
機体上げスイッチ38aにて機体上げが指令されていれば、機体上昇処理を実行する。尚、機体上昇処理では、左前シリンダC2が上限位置になるまで短縮作動させ、左後シリンダC3が上限位置になるまで伸長作動させ、右前シリンダC4が上限位置になるまで短縮作動させ、右後シリンダC5が上限位置になるまで伸長作動させる。
【0054】
機体下げスイッチ38bにて機体下げが指令されていれば、機体下降処理を実行する。尚、機体下降処理では、左前シリンダC2が下限位置になるまで伸長作動させ、左後シリンダC3が下限位置になるまで短縮作動させ、右前シリンダC4が下限位置になるまで伸長作動させ、右後シリンダC5が下限位置になるまで短縮作動させる。
【0055】
次に、下げ基準モードが設定されているときの前記ローリング制御について説明する。
図12、図13に示すように、ローリング制御においては、左右傾斜角センサ23の検出値と目標左右傾斜角に対応する信号値との偏差がローリング制御用の不感帯を機体本体Vの左傾斜側に外れていれば、そのときの左右方向の姿勢変化速度、つまり、左右角速度センサ41の検出値が設定値以上であるか設定値未満であるかによってそれ以後の処理が異なる。
【0056】
すなわち、前記左右角速度センサ41の検出値が設定値未満であり変化速度が小であるときは、以下の処理を実行する。つまり、機体右側の前後に位置する各ストロークセンサ20、21の検出情報に基づいて、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、いずれも下限位置に操作されていなければ、左右傾斜角センサ23の検出値と目標左右傾斜角に対応する信号値との偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに従って両シリンダC4,C5の目標流量を演算にて求めて、いずれかが下限位置に達するまで、前記目標流量にて右前シリンダC4を伸長作動させるとともに右後シリンダC5を短縮作動させる。右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されれば、前記偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに従って左前シリンダC2及び左後シリンダC3の目標流量を演算にて求めて、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが上限位置に達するまで、目標流量にて左前シリンダC2を短縮作動させるとともに左後シリンダC3を伸長作動させる。
【0057】
そして、左右角速度センサ41の検出値が設定値以上であり変化速度が大であるときは、以下の処理を実行する。
すなわち、左右傾斜角センサ23の検出値と目標左右傾斜角に対応する信号値との偏差が大きいほど大となるように予め両駆動形式のものとして設定されているマップデータに従って右前シリンダC4と右後シリンダC5、及び、左前シリンダC2及び左後シリンダC3の夫々についての目標流量を演算にて求めて、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されていなければ、いずれかが下限位置に操作されるまで右前シリンダC4を伸長作動させるとともに右後シリンダC5を短縮作動させ、且つ、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが上限位置に達していなければ、いずれかが上限位置に達するまで左前シリンダC2を短縮作動させるとともに左後シリンダC3を伸長作動させる。つまり、左右方向の一端側箇所に作用する油圧シリンダ(C2,C3)及び前後方向の他端側箇所に作用する油圧シリンダ(C3,C5)の夫々を、同時に機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させるのである。
【0058】
又、上記左右傾斜角センサ23の検出値と設定左右傾斜角に対応する信号値との偏差がローリング制御用の不感帯を機体本体Vの右傾斜側に外れていれば、右傾斜側に外れている場合と同様に、そのときの左右方向の姿勢変化速度、つまり、左右角速度センサ41の検出値が設定値以上であるか設定値未満であるかによってそれ以後の処理が異なる。
【0059】
すなわち、左右角速度センサ41の検出値が設定値未満であり変化速度が小であるときは、以下の処理を実行する。つまり、機体左側の前後に位置する各ストロークセンサ18、19の検出情報に基づいて、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C3がいずれも下限位置に操作されていなければ、前記偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに基づいて両シリンダC2,C3の目標流量を演算にて求めて、両シリンダC2,C3のいずれかが下限位置に達するまで、目標流量にて左前シリンダC2を伸長作動させるとともに左後シリンダC3を短縮作動させる。左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に操作されれば、前記偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに基づいて各シリンダの目標流量を演算にて求めて、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、目標流量にて右前シリンダC4を短縮作動させるとともに右後シリンダC5を伸長作動させる。
【0060】
そして、左右角速度センサ41の検出値が設定値以上であり変化速度が大であるときは、以下の処理を実行する。
すなわち、左右傾斜角センサ23の検出値と目標左右傾斜角に対応する信号値との偏差が大きいほど大となるように予め両駆動形式のものとして設定されているマップデータに従って右前シリンダC4と右後シリンダC5、及び、左前シリンダC2及び左後シリンダC3の夫々についての目標流量を演算にて求めて、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが上限位置に達していなければ、いずれかが上限位置に達するまで左前シリンダC2を短縮作動させるとともに左後シリンダC3を伸長作動させ、且つ、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されていなければ、いずれかが下限位置に操作されるまで右前シリンダC4を伸長作動させるとともに右後シリンダC5を短縮作動させる。つまり、左右方向の一端側箇所に作用する油圧シリンダ(C2,C3)及び左右方向の他端側箇所に作用する油圧シリンダ(C4,C5)の夫々を、同時に機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させるのである。
【0061】
つまり、左右方向の姿勢変化速度が低いときは、片側駆動形式にて安定した状態で姿勢修正操作を行いながら、下降操作を優先して行うことにより機体本体Vの高さを極力低くすることができる。しかも、左右方向の姿勢変化速度が速いときは、両側駆動形式にてできるだけ追従性のよい状態で姿勢修正操作を行うことによって、機体本体Vの左右傾斜角と左右傾斜角設定器25にて設定された目標左右傾斜角との角度ずれが不感帯内に収まるようにローリング制御を実行するのである。
【0062】
そして、このローリング制御では、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所及び他端側箇所が、昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあるときにおける前記設定選択条件は、機体本体Vが右傾斜側に傾斜していれば機体本体Vの左側の箇所を下降させる条件であり、機体本体Vが左傾斜側に傾斜していれば機体本体Vの右側の箇所を下降させる条件である。又、前記一端側箇所及び前記他端側箇所が共に最下降位置にあるときにおける前記設定選択条件は、機体本体Vが右傾斜側に傾斜していれば機体本体Vの右側の箇所を上昇させる条件であり、機体本体Vが左傾斜側に傾斜していれば機体本体Vの左側の箇所を上昇させる条件である。
【0063】
図11に示すように、姿勢変更制御では、左右傾斜角センサ23の検出値と目標左右傾斜角に対応する信号値との偏差、及び、前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角に対応する信号値との偏差を調べ、左右傾斜角センサ23の検出値と設定左右傾斜角に対応する信号値との偏差がローリング制御用の不感帯内にあり、前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角に対応する信号値との偏差がピッチング制御用の不感帯から外れている場合には、ピッチング制御を実行する。このピッチング制御については後述する。左右傾斜角センサ23の検出値と設定左右傾斜角に対応する信号値との偏差がローリング制御用の不感帯を外れており、前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角に対応する信号値との偏差がピッチング制御用の不感帯内にある場合には、上記したようなローリング制御を実行する。
【0064】
そして、左右傾斜角センサ23の検出値と設定左右傾斜角に対応する信号値との偏差がローリング制御用の不感帯を外れており、かつ、前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角に対応する信号値との偏差もピッチング制御用の不感帯から外れている場合には、姿勢変更制御を実行する。
【0065】
次に、下げ基準モードが設定されているときの前記ピッチング制御について説明する。
図14、図15に示すように、前後傾斜角センサ24の検出値と、水平状態に対応する信号値との偏差がピッチング制御用の不感帯を機体本体Vの前傾斜側に外れていれば、そのときの前後方向の姿勢変化速度、つまり、前後角速度センサ42の検出値が設定値以上であるか設定値未満であるかによってそれ以後の処理が異なる。
【0066】
すなわち、前記前後角速度センサ42の検出値が設定値未満であり変化速度が小であるときは、以下の処理を実行する。つまり、機体後部に位置する左右のストロークセンサ19、21の検出情報に基づいて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC3,C5がいずれも下限位置に操作されていなければ、前記偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに基づいて両シリンダC3,C5の目標流量を演算にて求めて、両シリンダC3,C5のいずれかが下限位置に達するまで、目標流量にて左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させる。左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されれば、前記偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに基づいて左前シリンダC2及び右前シリンダC4の目標流量を演算にて求めて、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが上限位置に達するまで、目標流量にて左前シリンダC2及び右前シリンダC4を短縮作動させる。
【0067】
そして、前後角速度センサ42の検出値が設定値以上であり変化速度が大であるときは、以下の処理を実行する。
すなわち、前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角に対応する信号値との偏差が大きいほど大となるように予め両駆動形式のものとして設定されているマップデータに従って左後シリンダC3と右後シリンダC5、及び、左前シリンダC2及び右前シリンダC4の夫々についての目標流量を演算にて求めて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に達していなければ、いずれかが下限位置に達するまで左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させ、且つ、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のうちいずれかが上限位置に達していなければ、いずれかが上限位置に操作されるまで左前シリンダC2及び右前シリンダC4を短縮作動させる。つまり、前後方向の一端側箇所に作用する油圧シリンダ(C2,C4)及び前後方向の他端側箇所に作用する油圧シリンダ(C3,C5)の夫々を、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させるのである。
【0068】
前後傾斜角センサ24の検出値と、水平状態に対応する信号値との偏差がピッチング制御用の不感帯を機体本体Vの後傾斜側に外れていれば、そのときの前後方向の姿勢変化速度、つまり、前後角速度センサ42の検出値が設定値以上であるか設定値未満であるかによってそれ以後の処理が異なる。
【0069】
すなわち、前後角速度センサ42の検出値が設定値未満であり変化速度が小であるときは、以下の処理を実行する。つまり、機体前部に位置する左右のストロークセンサ18、20の検出情報に基づいて、左前シリンダC2と右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C4がいずれも下限位置に操作されていなければ、前記偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに基づいて両シリンダC2,C4の目標流量を演算にて求めて、両シリンダC2,C4のいずれかが下限位置に達するまで、目標流量にて左前シリンダC2及び右前シリンダC4を伸長作動させる。左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されれば、前記偏差が大きいほど大となるように予め設定されているマップデータに基づいて左後シリンダC3及び右後シリンダC5の目標流量を演算にて求めて、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、目標流量にて左後シリンダC3及び右後シリンダC5を伸長作動させる。
【0070】
そして、前後角速度センサ42の検出値が設定値以上であり変化速度が大であるときは、以下の処理を実行する。
すなわち、前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角に対応する信号値との偏差が大きいほど大となるように予め両駆動形式のものとして設定されているマップデータに従って、左前シリンダC2と右前シリンダC4、及び、左後シリンダC3と右後シリンダC5の夫々についての目標流量を演算にて求めて、左前シリンダC2と右前シリンダC4のいずれかが下限位置に達していなければ、いずれかが下限位置に達するまで左前シリンダC2と右前シリンダC4を伸長作動させ、且つ、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達していなければ、いずれかが上限位置に達するまで左後シリンダC3と右後シリンダC5を伸長作動させる。つまり、前後方向の一端側箇所に作用する油圧シリンダ(C2,C4)及び前後方向の他端側箇所に作用する油圧シリンダ(C3,C5)の夫々を、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させるのである。
【0071】
つまり、前後方向の姿勢変化速度が低いときは、片側駆動形式にて安定した状態で姿勢修正操作を行いながら、下降操作を優先して行うことにより機体本体Vの高さを極力低くすることができる。しかも、前後方向の姿勢変化速度が速いときは、両側駆動形式にてできるだけ追従性のよい状態で姿勢修正操作を行うことによって、機体本体Vの前後傾斜角と目標前後傾斜角との角度ずれが不感帯内に収まるようにピッチング制御を実行するのである。
【0072】
尚、上げ基準モードにおけるローリング制御やピッチング制御については、詳細な説明は省略するが、この上げ基準モードにおいては、基本的には、上述したような下げ基準モードの処理において各油圧シリンダを下限位置に位置するように操作する代わりに、上限位置に位置するように操作することになる。例えば、湿田を走行する場合などにおいて、機体の高さを極力高くしながら前後傾斜角を設定前後傾斜角に維持し、左右傾斜角を設定左右傾斜角に維持するように制御することになる。
【0073】
次に、前記同時姿勢修正制御について説明する。
図16に示すように、この同時姿勢修正制御では、先ず前後傾斜用演算処理を実行する。この処理について説明すると、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち、左前シリンダC2及び右前シリンダC4の2個の油圧シリンダと、左後シリンダC3及び右後シリンダC5の2個の油圧シリンダのうちのいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で他方の2個の油圧シリンダを駆動する形態において前記駆動する2個の油圧シリンダについて前後傾斜修正用の目標駆動速度としての作動油の目標流量を求める。
【0074】
説明を加えると、そのときの機体本体Vの姿勢の状況から、機体本体Vを前上がり姿勢にすることで前後傾斜を変更するのか、あるいは、機体本体Vを後上がり姿勢にすることで前後傾斜を変更するのかを決定して、例えば図19(イ)に示すように、左前シリンダC2及び右前シリンダC4の2個の油圧シリンダと、左後シリンダC3及び右後シリンダC5の2個の油圧シリンダのうちのいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動操作するときの目標流量を求めるのである。このとき左右傾斜は考慮しないので、2個の油圧シリンダの目標流量は同じであり、偏差の大きさに対応した目標流量を設定することになる。
【0075】
次に、左右傾斜用演算処理を実行する。
この処理について説明すると、前記4個のシリンダC2,C3,C4,C5のうち、左前シリンダC2及び左後シリンダC3の2個の油圧シリンダと、右前シリンダC4及び右後シリンダC5の2個の油圧シリンダのうちのいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で他方の2個の油圧シリンダを駆動する形態において駆動する2個の油圧シリンダについて左右傾斜修正用の目標駆動速度としての作動油の目標流量を求める。
【0076】
説明を加えると、そのときの機体本体Vの姿勢の状況から、機体本体Vを左傾斜処理を実行することで傾斜を変更するのか、あるいは、機体本体Vを右傾斜処理を実行することで傾斜を変更するのかを決定して、例えば図19(ロ)に示すように、左前シリンダC2及び左後シリンダC3の2個のシリンダと、右前シリンダC4及び右後シリンダC5の2個の油圧シリンダのうちのいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動操作するときの目標流量を求めるのである。このとき左右傾斜は考慮しないので、2個の油圧シリンダの目標流量は同じであり、偏差の大きさに対応した目標流量を設定することになる。
【0077】
次に、目標流量演算処理を実行する。この処理について説明すると、前記前後傾斜用演算処理によって各油圧シリンダ毎に求めた前後傾斜修正用の目標流量と、前記左右傾斜用演算処理によって各油圧シリンダ毎に求めた左右傾斜修正用の目標流量とをそのまま加算して合計して各油圧シリンダ毎の合計目標流量を求めるのである。このとき、図19(ハ)に示すように、4個の油圧シリンダC2〜C5のうちの1個の油圧シリンダを停止させた状態で残りの3個の油圧シリンダを同時に駆動させる形態における各油圧シリンダの合計目標流量が求められることになる。
【0078】
そして、次の駆動操作処理においては、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を目標前後傾斜角にするように、且つ、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を目標左右傾斜角にするように、目標流量演算処理にて求めた合計目標流量にて3個の油圧シリンダを駆動させるのである。
【0079】
又、制御装置22は、前記駆動操作処理において、各ストロークセンサ18,19,20,21の検出情報に基づいて、左側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所、左側の走行装置1Lの接地部の後部側箇所、右側の走行装置1Rの接地部の前部側箇所、及び、右側の走行装置1Rの接地部の後部側箇所の4箇所が仮想平面上に位置しているか否かを判別し、仮想平面上に位置していなければ、4箇所のうち仮想平面に対して間隔が大側に位置ずれしている箇所では、前記間隔が大になるようにその箇所に対応する油圧シリンダを操作しているときにはその油圧シリンダの合計目標流量を減速側すなわち減量側に補正し、前記間隔が小になるようにその箇所に対応する油圧シリンダを操作しているときにはその油圧シリンダの前記合計目標流量を増速側すなわち増量側に補正し、且つ、4箇所のうち仮想平面に対して間隔が小側に位置ずれしている箇所では、前記間隔が大になるようにその箇所に対応する油圧シリンダを操作しているときにはその油圧シリンダの前記合計目標流量を増速側すなわち増量側に補正し、前記間隔が小になるようにその箇所に対応する油圧シリンダを操作しているときにはその油圧シリンダの前記合計目標流量を減速側すなわち減量側に夫々補正するねじれ状態抑制処理を繰り返し実行するように構成されている。
【0080】
前記制御装置22は、前記ねじれ状態抑制処理として次のような処理を実行する構成となっている。尚、このねじれ状態抑制処理の説明においては、4本の油圧シリンダC2〜C5の夫々についての目標流量について説明しており、上述したように作動が停止される1本の油圧シリンダについては最終的な目標流量としては零が設定されることになる。
各ストロークセンサ18,19,20,21の検出情報に基づいて、左側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所、左側の走行装置1Lの接地部の後部側箇所、右側の走行装置1Rの接地部の前部側箇所、及び、右側の走行装置1Rの接地部の後部側箇所の4箇所が仮想平面に対してねじれる状態で位置ずれしているときのそのねじれ量Njを下記式にて演算にて求め、そのねじれ量Njが零でなければ前記4箇所が前記仮想平面上に位置していない状態であると判別するように構成されている。
【0081】
[数1]
Nj=(LF−LR)−(RF−RR)
(但し、LFは、機体本体Vの左側前部の左側の走行装置の接地部に対する高さ、
LRは、機体本体Vの左側後部の左側の走行装置の接地部に対する高さ、
RFは、機体本体Vの右側前部の右側の走行装置の接地部に対する高さ、
RRは、機体本体Vの右側後部の右側の走行装置の接地部に対する高さ)
【0082】
そして、前記ねじれ量Njが正の値であれば、機体本体Vの左側前部及び右側後部の夫々に対応する前記間隔が大側に位置ずれし、且つ、機体本体Vの左側後部及び右側前部の夫々に対応する前記間隔が小側に位置ずれしていると判別する。前記ねじれ量Njが負の値であれば、機体本体Vの左側後部及び右側前部の夫々に対応する前記間隔が大側に位置ずれし、且つ、機体本体Vの左側前部及び右側後部の夫々に対応する前記間隔が小側に位置ずれしていると判別する。そして、前記駆動手段の操作方向に応じて前記合計目標駆動速度を増速側に補正するか減速側に補正するかを判別するように構成され、更に、前記ねじれ量が大きいほど大となるように前記合計目標駆動速度に対する補正量を設定するように構成されている。
【0083】
以下、図17、図18を参照しながら前記ねじれ状態抑制処理の具体的な処理構成について説明する。
先ず、駆動対象となる3個の各油圧シリンダの夫々を前記合計目標流量にて駆動操作する。そして、その姿勢修正を行っているときにおける4個のストロークシリンダ18,19,20,21のうちの対応するものの検出値から前記ねじれ量Njを演算にて求めて、前記ねじれ量が零であるか、正の値であるか、負の値であるかを判定する。
図20に、上記数1のLF、LR、RF、RRの関係を模式的に示している。この図では、理解し易くするために、機体本体V側の各箇所を下側に位置させ、走行装置側の各箇所を上側に位置させる状態で示している。図20(イ)では、機体本体Vの左側前部及び右側後部の夫々に対応する前記間隔が大側に位置ずれし、且つ、機体本体Vの左側後部及び右側前部の夫々に対応する前記間隔が小側に位置ずれしている。従って、LF>LR、RF<RR、という関係が成り立つので、前記ねじれ量Njは正の値になる。図20(ロ)では、機体本体Vの左側後部及び右側前部の夫々に対応する前記間隔が大側に位置ずれし、且つ、機体本体Vの左側前部及び右側後部の夫々に対応する前記間隔が小側に位置ずれしている。従って、LF>LR、RF>RR、という関係が成り立つので、前記ねじれ量Njは負の値になる。このようにしてねじれ量Njの正負によりねじれ状態を判別できる。
【0084】
図20(イ)に示す状態となっており前記ねじれ量Njが正の値になっていると、そのねじれ量Njに所定の係数Kjを掛けて流量補正量Qhを算出して、そのときの機体本体Vの姿勢変更方向が地面に対して上昇している方向であれば、左前シリンダC3の合計目標流量QLFから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量VSLFとして設定し、右後シリンダC5の合計目標流量QRRから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量QRRとして設定し、左後シリンダC3の合計目標流量QLRに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QLFとして設定し、右前シリンダC4の合計目標流量QRFに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QRFとして設定する。
【0085】
そのときの機体本体Vの姿勢変更方向が地面に対して下降している方向であれば、左前シリンダC3の合計目標流量QLFに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QLFとして設定し、右後シリンダC5の合計目標流量QRRに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QRRとして設定し、左後シリンダC3の合計目標流量QLRから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量QLRとして設定し、右前シリンダC4の合計目標流量QRFから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量QRFとして設定する。
【0086】
又、図20(ロ)に示す状態となっており前記ねじれ量Njが負の値になっていると、そのねじれ量Njに所定の係数Kjを掛けて流量補正量Qhを算出して、そのときの機体本体Vの姿勢変更方向が地面に対して上昇している方向であれば、左前シリンダC3の合計目標流量QLFに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QLFとして設定し、右後シリンダC5の合計目標流量QRRに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QRRとして設定し、左後シリンダC3の合計目標流量QLRから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量QLRとして設定し、右前シリンダC4の合計目標流量QRFから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量QRFとして設定する。
【0087】
そのときの機体本体Vの姿勢変更方向が地面に対して下降している方向であれば、左前シリンダC2の合計目標流量QLFから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量QLFとして設定し、右後シリンダC5の合計目標流量QRRから流量補正量Qhを減算して減速側に補正し新たな合計目標流量QRRとして設定し、左後シリンダC3の合計目標流量QLRに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QLRとして設定し、右前シリンダC4の合計目標流量QRFに流量補正量Qhを加算して増速側に補正し新たな合計目標流量QRFとして設定する。
【0088】
但し、4個の油圧シリンダC2〜C5のうち操作が停止されている1個の油圧シリンダについては、合計目標流量は零に設定して操作されることがないようにしている。
【0089】
このように、ねじれ状態を判別しながら各油圧シリンダの合計目標流量を適切な値に補正することを繰り返しながら各油圧シリンダによる駆動操作を行い、機体本体Vが目標姿勢、つまり、機体本体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が目標前後傾斜角になり、且つ、機体本体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が目標左右傾斜角になると、各油圧シリンダの駆動操作を停止して姿勢修正動作を終了する。このようなねじれ状態抑制処理を設定周期毎に繰り返り実行することで、左側の走行装置1Lの接地部の前部側箇所、左側の走行装置1Lの接地部の後部側箇所、右側の走行装置1Rの接地部の前部側箇所、及び、右側の走行装置1Rの接地部の後部側箇所の4箇所が仮想平面上に位置している状態を維持しながら、機体本体Vの姿勢修正動作を実行することが可能となるのである。
【0090】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
【0091】
上記実施形態では、前記姿勢変更操作手段がローリング作動とピッチング作動とを夫々実行することが可能な構成としたが、ローリング作動のみを実行するものであってもよく、ピッチング作動のみを実行するものであってもよい。
【0092】
上記実施形態では、前記姿勢変更操作手段が、機体本体の左側前部箇所、機体本体の左側後部箇所、機体本体の右側前部箇所、機体本体の右側後部箇所の夫々を各別に走行装置の接地部に対して昇降自在な4個の駆動手段を備えて、前記各駆動手段の夫々が、前後傾斜角修正用の駆動手段と左右傾斜角修正用の駆動手段とを兼用する構成を例示したが、このような構成に代えて、前記姿勢変更操作手段が、前後傾斜角修正だけを実行する前後傾斜専用の駆動手段と、左右傾斜角修正だけを実行する左右傾斜専用の駆動手段と備える構成としてもよい。このとき、前後傾斜専用の駆動手段としては1個の駆動手段でもよく複数の駆動手段でもよく、又、左右傾斜専用の駆動手段としては1個の駆動手段でもよく複数の駆動手段でもよい。
【0093】
上記実施形態では、前記制御手段が、ローリング制御及びピッチング制御を実行するときに、姿勢変化速度検出手段の検出結果に基づいて、片側駆動形式の姿勢変更操作と両側駆動形式の姿勢変更操作とに切り換える構成としたが、このような構成に限らず、ローリング作動とピッチング作動とを同時に実行する同時姿勢制御を実行するときに、斜め方向の姿勢変化速度を検出して、その検出結果に基づいて片側駆動形式の姿勢変更操作と両側駆動形式の姿勢変更操作とに切り換える構成としてもよい。
【0094】
又、前記制御手段が、前記ローリング制御だけを実行する構成として、そのときに斜め方向の姿勢変化速度の検出結果に基づいて片側駆動形式の姿勢変更操作と両側駆動形式の姿勢変更操作とに切り換える構成としてもよい。又、前記ピッチング制御だけを実行する構成として、そのときに斜め方向の姿勢変化速度の検出結果に基づいて片側駆動形式の姿勢変更操作と両側駆動形式の姿勢変更操作とに切り換える構成としてもよい。
【0095】
上記実施形態では、左右両側の走行装置を、左右一対のクローラ式の走行装置で構成したが、これに限るものではなく、例えば、左右一対の車輪式の走行装置でもよい。
【0096】
上記実施形態では、前記各駆動手段の夫々を油圧シリンダにて構成したが、油圧シリンダ以外に、電動モータとネジ送り機構等からなる他の駆動手段にて構成してもよい。
【0097】
上記実施形態では、前後傾斜角検出手段及び左右傾斜角検出手段の夫々を重力式の傾斜角センサにて構成したが、これに限るものではなく、例えばレーザージャイロ等の角速度を検出するセンサの検出信号を積分して傾斜角を検出する手段でもよい。この場合には、前後傾斜角検出手段が前後姿勢変化速度検出手段を兼用することができ、左右傾斜角検出手段が左右姿勢変化速度検出手段を兼用する構成とすることができる。
【0098】
上記実施形態では、農作業車としてコンバインを例示したが、コンバインに限らず、苗移植機やトラクター等の他の農作業車でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】コンバインの前部を示す側面図
【図2】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図3】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図4】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図5】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図6】制御構成を示すブロック図
【図7】姿勢変更操作用のスイッチユニットの正面図
【図8】左右傾斜角の設定値を示す図
【図9】制御作動を示すフローチャート
【図10】制御作動を示すフローチャート
【図11】制御作動を示すフローチャート
【図12】制御作動を示すフローチャート
【図13】制御作動を示すフローチャート
【図14】制御作動を示すフローチャート
【図15】制御作動を示すフローチャート
【図16】制御作動を示すフローチャート
【図17】制御作動を示すフローチャート
【図18】制御作動を示すフローチャート
【図19】目標流量を求めるための説明図
【図20】ねじれ状態を説明するための説明図
【図21】姿勢変更操作の作用説明図
【符号の説明】
【0100】
1L,1R 走行装置
22 制御手段
23 左右傾斜角検出手段
24 前後傾斜角検出手段
41 左右姿勢変化速度検出手段
42 前後姿勢変化速度検出手段
100 姿勢変更操作手段
300 傾斜角検出手段
400 姿勢変化速度検出手段
C2〜C5 駆動手段
V 機体本体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に対する機体本体の姿勢を変更操作自在な姿勢変更操作手段と、前記姿勢変更操作手段の作動を制御する制御手段と、機体本体の水平基準面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出手段とを備えて構成され、
前記姿勢変更操作手段が、機体本体における傾斜角変更方向に離れた一端側箇所及び他端側箇所夫々を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な複数の駆動手段を備えて構成され、
前記制御手段が、
前記傾斜角検出手段の検出情報に基づいて、機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢変更制御を実行するように構成されている農作業車の姿勢制御装置であって、
機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から離れる方向に変化する姿勢変化速度を検出する姿勢変化速度検出手段が備えられ、
前記制御手段が、前記姿勢変更制御において、
機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに前記姿勢変化速度検出手段にて検出される前記姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体における前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちの一方を昇降停止して、他方を機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、前記複数の駆動手段の一部を作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、且つ、
機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角から外れたときに前記姿勢変化速度検出手段にて検出される前記姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記一端側箇所及び前記他端側箇所を同時に機体本体の水平基準面に対する傾斜角が設定傾斜角になるように昇降させるべく、前記複数の駆動手段を夫々作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成されている農作業車の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記姿勢変更操作手段が、
機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を変更操作するローリング作動、及び、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を変更操作するピッチング作動を夫々実行するように構成され、
前記傾斜角検出手段が、
機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を検出する左右傾斜角検出手段とを備えて構成され、
前記姿勢変化速度検出手段が、
機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角から離れる方向に変化する前後姿勢変化速度を検出する前後姿勢変化速度検出手段と、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角から離れる方向に変化する左右姿勢変化速度を検出する左右姿勢変化速度検出手段とを備えて構成され、
前記制御手段が、前記姿勢変更制御として、
前記前後傾斜角検出手段の検出情報に基づいて、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角にすべく前記ピッチング作動を実行するように前記姿勢変更操作手段を制御するピッチング制御、及び、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角を設定左右傾斜角にすべく前記ローリング作動を実行するように前記姿勢変更操作手段を制御するローリング制御を実行するように構成され、
前記ピッチング制御において、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角から外れたときに前記前後姿勢変化速度検出手段にて検出される前記前後姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体における前後方向の一端側箇所及び他端側箇所のうちの一方に作用する駆動手段の作動を停止して、他方に作用する駆動手段を機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定前後傾斜角から外れたときに前記前後姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記前後方向の一端側箇所に作用する駆動手段及び前記前後方向の他端側箇所に作用する駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように同時に作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成され、
前記ローリング制御において、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角から外れたときに前記左右姿勢変化速度検出手段にて検出される前記左右姿勢変化速度が設定値未満であれば、機体本体における左右方向の一端側箇所及び他端側箇所のうちの一方に作用する駆動手段の作動を停止して、他方に作用する駆動手段を機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させる片側駆動形式の姿勢変更操作を実行し、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角から外れたときに前記左右姿勢変化速度が設定値以上であれば、前記左右方向の一端側箇所に作用する駆動手段及び前記左右方向の他端側箇所に作用する駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように同時に作動させる両側駆動形式の姿勢変更操作を実行するように構成されている請求項1記載の農作業車の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記姿勢変更操作手段が、
機体本体の左側前部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な左前側の駆動手段、機体本体の左側後部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な左後側の駆動手段、機体本体の右側前部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な右前側の駆動手段、機体本体の右側後部箇所を前記走行装置の接地部に対して昇降自在な右後側の駆動手段からなる4個の駆動手段を備えて構成され、
前記制御手段が、
前記ピッチング制御において、前記片側駆動形式の姿勢変更操作として、前記4個の駆動手段のうち左側前部及び右側前部に位置する2個の駆動手段と左側後部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を作動停止させた状態で、他方の2個の駆動手段を機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように作動させるよう構成され、且つ、前記両側駆動形式の姿勢変更操作として、前記一方の2個の駆動手段及び前記他方の2個の駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角になるように同時に作動させるように構成され、且つ、
前記ローリング制御において、前記片側駆動形式の姿勢変更操作として、前記4個の駆動手段のうち左側前部及び左側後部に位置する2個の駆動手段と右側前部及び右側後部に位置する2個の駆動手段とのうちのいずれか一方の2個の駆動手段を作動停止させた状態で、他方の2個の駆動手段を機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように作動させるよう構成され、且つ、前記両側駆動形式の姿勢変更操作として、前記一方の2個の駆動手段及び前記他方の2個の駆動手段の夫々を、機体本体の水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角になるように同時に作動させるように構成されている請求項2記載の農作業車の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記片側駆動形式の姿勢変更操作を実行するときは、
機体本体における傾斜角変更方向に離れた前記一端側箇所、及び、機体本体における傾斜角変更方向に離れた前記他端側箇所が、前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあると、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を下降させる形態で前記複数の駆動手段の一部を作動させ、
前記一端側箇所及び前記他端側箇所が、前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置にあると、設定選択条件に基づいて選択した一方を停止させて他方を上昇させる形態で前記複数の駆動手段の一部を作動させ、且つ、
前記一端側箇所及び前記他端側箇所のうちのいずれか一方が前記走行装置の接地部に対する昇降操作範囲の最下降位置にあり、他方が昇降操作範囲の最下降位置よりも高い位置にあると、最下降位置にある一方の箇所を停止させて最下降位置よりも高い位置にある箇所を下降させる形態で、前記複数の駆動手段の一部を作動させるように構成されている請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の農作業車の姿勢制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−96135(P2006−96135A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283588(P2004−283588)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】